Novel Respiratory Impedance-Based Phenotypes
Reflect Different Pathophysiologies in Chronic
Obstructive Pulmonary Disease Patients.
著者
松尾 裕美子
学位授与機関
滋賀医科大学
学位授与年度
令和元年度
学位授与番号
14202甲第864号
発行年
2020-03-10
URL
http://hdl.handle.net/10422/00012692
doi: 10.2147/COPD.S224902(https://doi.org/10.2147/copd.s224902)氏 名 松 尾 裕美子 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 博士甲第
864
号学 位 授 与 の 要 件 学 位 規 則 第
4
条 第1
項 学 位 授 与 年 月 日 令 和2
年3
月1 0
日学 位 論 文 題 目
Novel R esp irato ry Impedance-Based Phenotypes R e fle ct
D iffe re n t P athophysiologies in Chronic O bstructive
Pulmonary D isease P a tie n ts
( COPD
患者において新しい呼吸インピーダンスに基づいたフ ェノタイプは異なる 病態生理を反映する) 審 査 委 員 主査 教授 松 浦 博 副査 教授 西 英一郎 副査 教授 辻 川 知之別 紙 様 式
3
(課程博士 •論文博士共用)論 文 内 容 要 旨
"整 理 番号 汽 ・y
八 (ふ り が な ) ま つ お ゆ み こ8 7 3
氏 名 松 尾 裕 美 子学位論文題目
Novel Respiratory Impedance-Based Phenotypes Reflect Different
Pathophysiologies in Chronic Obstructive Pulmonary Disease
Patients
(COPD
患者において新しい呼吸インピーダンスに基づいたフエノタイプは異なる病態生理を反映する) 【研 究 の 目 的 】
慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患
(
Chronic obstructive pulmonary disease,
以下C O P D )
は、末 梢気道病変と気腫す生病変が様々な割合で複合的に作用し、気流閉塞をきたす疾患であ る。 従 来 、気 道 病 変 や 気 腫 性 病 変 は 吸 気C T
画像を用いた画像パラメターで評価され てき た が、近 年 、吸 気 • 呼 気C T
を用いた新規画像解析の有用性が期待されている。 その一*つに、disease probability measure (D P M )
が あ り 、gas-trapping
領 域 、emphysematous
領 域の全肺における割合を評価し得る。一 方 、気流閉塞の評価としてはスパイロメトリーを用いた呼吸機能検査が主軸とな る
0
強 制 オ シ レ ー シ ヨ ン 法(
Forced oscillation technique,
以 下F 0 T )
は呼吸機能 検査 と は異な り 安 静 呼 吸 で の 評 価 が 可 能 で 、非 侵 襲 的 な 機 能 的 指 標 と し てC O P D
の分 野 に お い て も 有 用 性 が 認 め ら れ て い る 。F 0 T
は 呼 吸 イ ン ピ ー ダ ン ス と し て 呼 吸 抵 抗(R r s )
と 呼 吸 リ ア ク タ ン ス(
X r s )
の2
つのパラメターを評価できる。 これまで、Rrs
やX r s
とD P M
パラメターとの関係については明らかにされていない。 そこで、今 回 はR r s
とX r s
を複合的に評価するために、両値に基づいたフヱノタイピ ングを行い、フ ヱ ノ タ イ プ ご と のD P M
を含めた画像パラメターや呼吸機能を評価する ことで、F O T
が ど の よ う なCOPD
の病態生理を反映し得るかを検討した。 【方 法 】 滋 賀 医 科 大 学 医 学 部 附 属 病 院 呼 吸 器 内 科 の 外 来 を 受 診 し たCOPD
患 者(
164
名 ) と、non-COPD
群(
2 2
名 ) を対象とし、F0T
、呼 吸 機 能 検 査 (ス パ イロメトリー) 、吸気・ 呼 気C T
を実施した。non-COPD
群 のR5 (Rrs at 5 H z )
と、X5 (Xrs at 5 H z )
値 の 各 第3
四分位数をカッ トオフとして、COPD
患 者 を4
つのフエ ノタ イプ 、R5
、X 5
共 に カ ッ ト オ フ 以 内 のN L
群(normal group)
、R5
だ け が 高 値 を 示 すRD
群(
resistance-dominant group)
、逆にX5
が 低 値 を 示 す
X D
群(reactance-dominant group)
、R 5
高 値 か つX 5
低 値 を 示 すMIX
群(mixed g ro u p )
に分類した。(備考) 1 . 論文内容要旨は、研究の目的•方法•結果•考察•結論の順に記載し、 2 千字 程度でタイプ等を用いて印字すること。
別 紙 様 式
3
の2
(課程博士.論文博士共用)(続紙) 定 量 的
CT
角 析は吸気CT
画像を用いて気月割生病変、気道病変の指標としてそれぞれLAV% (low attenuation volume)
、Aaw at PilO (the square root of the wall
area of a hypothetical airway with an internal perimeter of 10mm)
をg
十測し た。 また、131
名 のC0PD
患者において、吸 気• 呼 気CT
画像を用いてDPM
を解析し、 全月$ をボクセルごとに、normal
領域、gas-trapping
領域、emphysematous
領域に分類し、全ポクセルにおける割合をそれぞれ
DPMN
O
T
m
a
l
、DPMG
a
s
T
r
a
p
、DPMEnph(%)
とした。 【結果】^Aaw at PilO
は、RD
群 、XD
群 、MIX
群では、NL
群と比べて有意に高値を示した。XD
群 で はRD
群と比べてより気流閉塞の程度が強く、呼吸困難の自覚も強かった。DPM
は、
RD
群 とNL
群では有意な差は認められなかったが、XD
群 で はNL
群より有意にDPMGasTraP
は高値を示した。MIX
群 で は4
群の中で最も呼吸困難の程度が強く、LAV%
やDPMEmph
も高値を示した。また、気 流 閉 塞 の 重 症 度(GOLD)
が同程度であっても、F0T
のフヱノタイプは様々であることが示された。 【考察】
C0PD
では気流閉塞に伴い、R5
高値、X5
低値を示すが、今回の研究結果より、RD
群 、XD
群といったどちらか一方が目立って変化するフヱノタイプが認められた。LAV%
、^Aaw at PilO
、呼吸機能の結果から、F0T
フヱノタイプに従来の気道病変優位 型、気腫性病変優位型という
CT
フエノタイプを当てはめるとすると、RD
群 はCT
フ エノタイプの気道病変優位型に相当し、逆 にXD
群は、CT
フヱノタイプの気腫性病変 優位型に相当すると考えられる。 しかし、XD
群では,Aaw at PilO
も高値を示し、 さ らにDPM
も検討すると、DPMG
a
s
T
r
a
p
が高値となった。 このことから、R5
は純粋に気道病 変の進行のみを反映しているのに対し、X5
は単純に気腫病変のみを反映するのでは ないと考えられた。COPD
の病態生理をふまえると、末梢気道レベルの細気管支に付着 した肺胞実質が破壊されると、非可逆的に気腔が拡大し気腫性変化が生じる。 また、 気道を広げる力が弱まるため、末梢気道は虚脱してgas-trapping
が生じる。X5
はこ の複雑な病態を反映していると考えられた。 呼吸機能検査は気流閉塞の程度の評価には有用であるが、その原因となっている病 態を推測することは出来ないため、FOT
フヱノタイプを評価することは、 この点で有 用性が高いといえる。FOT
はスパイロメトリーの代わりとなる機能検査ではなく、異 なる視点で有用といえる。 【結論】F0T
のフヱノタイピングは、簡便かつ非侵襲的に、気道病変と気腫性病変が様々 な割合で複合的に作用するCOPD
の病態を反映し得る。 これは、今後病態に応じた治療介入を行う上での治療良好反応群を選定できる可能 性や、急 速 にCOPD
が進行する患者を予見できる可能性を示唆している。別 紙 様 式
8
(課 程 博 士 •論 文 博 士 共 用)学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
整理番号 873 氏 名 松 尾 裕 美 子
論文審査委員
(学位論文審査の結果の要旨) ※ 明 朝 体11ポイント、6 0 0字以内で作成のこと
本研究は、慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患(Chronic obstructive pulmonary disease, COPD)の病態
について、滋賀医科大学医学部附属病院呼吸器内科を受診したCOPD群 164例) と非
COPD群 22例) を対象として、強制オ シ レ ー シ ヨ ン 法(Forced oscillation technique,
FOT)を用いて解析を行った。非 COPD群 の5 HzのFOTで 得 ら れ た 呼 吸 抵 抗 R5)と
呼 吸 リ ア ク タ ン ス(X5)の値でカットオフ値を設定し、COPD群 を 、i)R5、X5共にカッ
トオフ値以内のNL群 、ii)R5だけが高値を示すRD群 、iii)X5が 低 値を示すXD群 、iv)R5
高 値 か つX5低 値 を 示 すMIX群 、の4群に分類した。その結果、以下の点が明らかとなっ た。 1)気道病変は、RD群 、XD群 、MIX群 で はNL群と比べてより有意であった。 2) XD群 で はRD群と比べてより気流閉塞の程度が強く、呼吸困難の自覚も強かった。 3) MIX群 で は4群の中で最も呼吸困難の程度が強く、気腫性病変も高度であった。 4)気道閉塞の重症度が同程度であっても、FOTのフヱノタイプは様々であった。 本論文は、COPDの 病 態 に お け るFOTによるフエノタイプについて新たな知見を与え たものであり、また最終試験として論文内容に関連した試問を実施したところ合格と判断 されたので、博 士 (医学) の学位論文に値するものと認められた。 (総字数5 9 7字) (令 和2年 1月2 9日)