Title
垂直磁界中の超伝導薄板内電流前線への薄板列の影響
Author(s)
野田 稔
Citation
福岡工業大学研究論集 第42巻第2号 P123-P127
Issue Date
2010-2
URI
http://hdl.handle.net/11478/1007
Right
Type
Departmental Bulletin Paper
Textversion
Publisher
福岡工業大学 機関リポジトリ
FITREPO
垂直磁界中の超伝導薄板内電流前線への薄板列の影響
野
田
稔
(電子情報工学科)Current Fronts in Superconducting Thin Plates Aligned in Order
with Edge to Edge under a Perpendicular M agnetic Field
Minoru N
ODA(Department of Information Electronics)
Abstract
Alignment of superconducting thin plates,in order with edge to edge,under a perpendicular magnetic field,gives influence on a configuration of shielding current front in each plate.In the case of inverse aspect ratio α=0.01,and normalized interval between adjacent plates β=2.01∼3.0,two parameters,∇and ,included in an expression of the current front curve, are calculated numerically including current contributions up to the fifth adjacent plates. Effect of presence of adjacent plates is very large for β=2.01especially in very small magnetic field range,such that current region on axis,1− ,spreads into an inner area 0.5×10 times as fast as the case of a plate existed alone. Keywords:alignment of superconducting thin plates, perpendicular field, aspect ratio
shielding current front curve, interval between adjacent plates,
1. はじめに 超伝導テープを巻いてソレノイド・コイルをつくり,電 流を流すとコイル端部に斜め磁界が加わる。すなわち,テー プ面に垂直な磁界成 が現れる。垂直磁界が 流変化した 場合,超伝導薄板に発生する 流損失は,薄板の幅が大き いほど損失密度が大きくなるので,その影響を調べること は重要である。 これまでに,本研究では,超伝導薄板が単独に存在する 場合について,薄板内の電流 布をアスペクト比や外部磁 界の関数として数値的に決定してきた 。ソレノイド・コ イル形状では,テープが単独でなく,横方向に列をつくる。 そこで,超伝導薄板の横方向列を想定すると,薄板内の電 流 布がどのように変わるかを知ることは実際上の応用面 で重要である。 本研究では,超伝導薄板の横方向列の存在がどの程度薄 板内の電流 布に影響を与えるかを調べることを目的とす る。近接する薄板列の何列までの寄与をとれば,電流 布 パラメータが収束するか,薄板列どおしの間隔の影響はど うかについて調べる。電流 布を決定する際に用いる遮 条件は,平板中心での磁界ゼロとその付近での磁界変化の 2次微係数ゼロである。平板列の影響の度合いは,薄板幅 に対する板厚み,すなわちアスペクト比によっても変わる と えられるが,今回は,アスペクト比が100の場合に固定 した。数値計算には MATLAB を用いた。 2. 前線形状の式と遮 条件 直 座標 , , において, 方向に無限長で, 方向の幅 2 , 方向の厚み 2 を持つ超伝導平板が, 方向に等間隔に配置されている。隣接する平板の中心間隔 を とする。平板面に垂直な方向( 方向)に磁界 が かかる場合を える。平板内部を磁気遮 するための超伝 導電流は 方向に流れる。逆アスペクト比 αをα= / で与え,規格化座標 = / , = / を導入する。ま た,隣接平板の中心間隔 を で規格化したパラメー タを β= / とする。 図1に,規格化座標で表した平板列を示す。β>2である。 図1中の座標原点を中心にもつ平板①に対し,左右の = ±βを中心とする平板 ②,② を“第1近接平板”と呼ぶこ とにする。図1には描かれていないが,平板②,② の左右 外側を, =±2β,±3β,±4β,±5β,…を中心とする平 板があり,それぞれ“第2近接平板”,“第3近接平板”,“第 4近接平板”,“第5近接平板”,…と呼ぶことにする。 次に,外部磁界 の規格化量を = ╱ ; = 2/π (2.1) で与える。超伝導平板中を流れる超伝導電流の密度 は一 平成21年10月29日受付
定と仮定する。磁界 は,幅 2 の平板面に平行磁界が かかった場合における中心到達磁界 の 2/π 倍の値 をもつ量である。
座標原点を平板中心に持つ平板内の電流前線の規格化位 置 は,前報 に示したように,薄板の極限(Brandt& Indenbom , Yamafuji et. al. )の議論にもとづき,
= 1+ ∇/ (2.2) の形で与えられるとする。ここに, =tan π2 1− (2.3) である。また, は電流前線が 軸を切る位置であり,区 間 < <1では電流が板厚全体にわたり 布する。 と ∇は一般に規格化磁界 と逆アスペクト比 αおよび平 板列間隔パラメータ βに依存するパラメータであり,これ を数値的に定めることが電流 布の決定とみなせる。 電流前線で囲まれた被遮 領域内で磁界が完全にゼロと なるが,式(2.4)の電流前線は近似曲線なのですべてをゼロ にはできない。そこで,原点付近で 軸上の磁界を で展 開したときの初項と第2項がゼロとなるように与えること にする。すなわち,原点における磁界がゼロ,および原点 付近の磁界の2次微係数がゼロという条件を与えて,2つ の電流前線パラメータと を ∇定める。原点の磁界遮 条件は,前報(2.12)式より次式で与えられる。 = 1/2 1 (2.4) ただし, 1 は次式より与えられる積 量の 1極限で ある。 ≡ d ; (2.5) ≡ln 1+α+α +ln (2.6) ≡ β−1 +α β− +α × β+1 +α β+ +α (2.7) (2.6)式の右辺は,第1項が,平板が1枚単独で存在する ときの寄与であり,第2項 ln は,左右の平板列群か らの寄与を示している。(2.7)式において,番号 =1,2, 3,… が,第1,2,3,…近接平板の各寄与を表してい る。 軸上原点付近の磁界変化の2次微係数がゼロになる条 件は,前報 と同様に 0= − 1 (2.8) と表される。ここに, は次式より与えられる。 ≡ 1 1+α+ ; (2.9) ≡ ∑ 1 β−1 +α+ 1 β+1 +α (2.10) (2.9)式の右辺は,第1項が,平板が1枚単独で存在する ときの寄与であり,第2項 は,左右の平板列群からの寄 与を示している。(2.10)式における番号 =1,2,3,… が, 第1,2,3,…近接平板の各寄与を表している。 また, 1 は次式の 1極限より与えられる。 ≡ d (2.11) ≡ −α +α + (2.12) ≡ ∑ β− −α β− +α + β+ −α β+ +α (2.13) (2.12)式の右辺は,第1項が,平板が1枚単独で存在す るときの寄与であり,第2項 は,左右の平板列群か らの寄与を示している。(2.13)式における番号 =1,2,3, … が,第1,2,3,…近接平板の各寄与を表している。 3. 電流前線形状パラメータ ∇と の関係 本報告の計算では簡単のため,逆アスペクト比 α=0.01 に固定する。本節では,平板と平板の間隙を厚み半幅にし た場合,すなわち,β−2を αに等しくとる場合を える。 よって,β=2.01である。この場合, 軸上原点付近の磁界 変化の2次微係数がゼロになる条件式(2.8)を満たすよう に,前線形状パラメータ ∇と の組を数値的に求めた。 その結果の ∇と の関係を図2のグラフに示す。また, 横軸に 1− を,縦軸に ∇を両対数でプロットしたグラ フを図3に示す。 両図とも,曲線が6本描かれている。番号1の曲線は, 図1の平板①が単独で存在している場合(β=∞に相当)の 結果であり,(2.9)式と(2.12)式にて,それぞれの第2項を =0, =0とした場合に相当する。番号2の曲線は, 図1の中央の平板①と,“第1近接平板” ②,② の寄与ま 垂直磁界中の超伝導薄板内電流前線への薄板列の影響(野田) 図1 規格化座標で表した薄い超伝導平板列 124
で取り入れた場合の結果であり,(2.10)式と(2.13)式にて, =1の項だけ 慮した場合に相当する。また,番号3の曲 線は,図1の中央の平板①と,“第1近接平板”②,② ,お よび“第2近接平板”の寄与まで取り入れた場合であり, (2.10)式と(2.13)式にて, =1,2の項を 慮した場合に相 当する。以下,同様に行い,番号6の曲線は,“第5近接平 板”までの寄与 =1,2,3,4,5 を全部取り入れた場合 になる。 番号1の曲線より番号2の曲線が大きく離れており,単 独平板に比べると,平板列の影響は極めて大きい。特に 1 − が小さな部 では, の同じ値に対し,∇が劇的に 小さくなっており,図3から読み取ると,約300 の1に 減っている。これは,∇の同じ値で見ると, が2桁以上 大きくなったとも読める。 番号3以上になると,∇と の関係(図2)では,番号 2とあまり差がない。 が1に十 近い範囲を拡大した 場合(図3)では,番号2より番号3以上がやや小さくなっ ているが,番号3∼6の曲線はほぼ収束している。よって 平板列の影響は“第2近接平板”の寄与まで 慮すれば十 であることが かる。 図3より,1− が小さな微小磁界範囲において,全部 の曲線は,対数的に平行な直線群になっており,その直線 の傾きより ∇は 1− に比例することがわかる。前報 よ り,曲線1は十 低磁界で近似式 ∇= 0.7╱α 1− に より表される。番号3∼6の曲線は,曲線1よりも約3桁 下と見積もれるから, ∇= 0.7╱α 1− ×10 for <10 (3.1) と表される。 4. 前線パラメータの磁界依存性 α=0.01と β=2.01の 場 合 に,前 節 で 得 ら れ た 解 の 組 ,∇ を って(2.4)∼(2.7)の数値計算を行い,規格化 磁界 を求める。その組 ,∇, より,∇の磁界依存 性を表したグラフを図4に示す。また,1− の磁界依存 性を表したグラフを図5に示す。両図とも両対数目盛なの で十 低磁界までの結果を表している。図中,曲線6本の 番号の意味は,図2,図3と同じである。 図4によると,低磁界では曲線1よりも曲線2が小さく なるが,曲線3,4,5,6となるにつれ,曲線1にやや 近づいていく傾向が見える。 <10 の微小磁界範囲にお いて,∇の値は,単独平板(曲線1)より平板列(曲線6) の方が約1/2に減る。前報 より,曲線1は十 低磁界で直 線 ∇= あるいは ∇=tanh と一致するから,平板列(曲 線6)の場合は,次のように近似できる。 ∇= 1/2 又は ∇=tanh /2 (4.1) 図4のもっと高磁界側では,曲線1と6が接近し, > 10 の範囲では,両者はほぼ同じか,曲線6の方がやや大 きい。前報 の結果と合わせると, ∇= 1+0.3tanh tanh /2 (4.2) が, <3の範囲で良い近似を与える式だと えられる。 一方,図5によると,低磁界ほど曲線1よりも曲線2が 桁違いに大きくなっている。一つの 値に対する 1− の値が,単独平板(曲線1)よりも平板列(曲線2)の方 がはるかに大きいという理由を えてみる。 図1の中央にある平板①の電流 布は,左半 が奥向き ⃝ ×で,右半 が手前向き⃝・であるが,“第1近接平板”②, ② の中で,①に近い側半 領域の電流 布は逆になる。 よって,電流が座標原点の位置に作る磁界は,単独平板の 場合よりも“第1近接平板”を 慮するほうが小さくなる。 すると,中心点の磁界遮 度が下がるので,その下がり を補うために, 軸上の前線 が中心により近い位置に 入り,電流領域 1− を広げねばならない。このため, が小さくなり,1− は大きくなる。 曲線2から曲線3,4,5,6となるにつれ,ある曲線 図2 α=0.01,β=2.01の場合,前線形状パラメータ ∇と の関係。図中番号1は単独平板の場合。番号2∼6 は近接平板の寄与を入れた場合。 図3 図2と同様の条件で,横軸に 1− を,縦軸に ∇を とり,両対数目盛でプロットしたグラフ。曲線6本の 番号の意味は図2と同じ。
に収束してゆく傾向が見える。この曲線の値 1− は,十 低磁界では(3.1)式と(4.1)式に対応した次の直線に一致 する。 1− = α╱0.7 /2 ×10 (4.3) 前報 と比較すると,平板が単独に存在する場合に比べ,1 − は約 1/2 ×10 倍も大きくなる。 5. 平板列間隔の影響 本節では,平板列間隔パラメータ βを, β=2+Nα N=1,2,3,… (5.1) で与え,平板と平板の間隙 β−2を αの整数N倍にとった 場合を 察する。整数Nは,N=1,2,5,7,10,20,50, 70,100の9通りを選んだ。α=0.01なので, β=2.01,2.02,2.05,2.07,2.1,2.2,2.5,2.7,3.0 (5.2) となる。β=3は,間隙 β−2=1ゆえ,平板半幅だけ隔たっ ている場合である。すべて,“第5近接平板”の寄与まで計 算を行った。その結果を図6と図7に示す。 図6は,∇と の関係が,βによりどのように変化する かを示している。β=2.01の曲線は,図2の曲線6と同じも のである。β値が増加するにつれ,曲線は ∇値が大きくな る側にずれてゆく。そして,β=3の曲線は,図2の曲線1 とほぼ同じになっている。その理由は簡単で,平板半幅と 同じくらい β=3 隔てると,単独平板と変わらないくら い,∇と に対する平板間の影響が薄められるというこ とである。 図7は,1− の磁界依存性が,βによりどのように変 化するかを示している。β=2.01の曲線は,図5の曲線6と 同じものである。β値が増加するにつれ,曲線は 1− 値 が小さくなる側にずれてゆく。一番下がった β=3の曲線 は,図5の曲線1よりもまだ2倍ほど上にあるが,β値を増 すほど,単独平板の場合に近づく傾向は図6と同じである。 6. まとめ 本報告では,逆アスペクト比 α=0.01に固定した。平板列 間隔パラメータ βを α=2.01に設定して,電流前線のパラ メータ ∇, およびその磁界依存性が,平板列の影響を 図4 α=0.01,β=2.01の場合,横軸に規格化磁界 をと り,∇の磁界依存性を両対数目盛で表したグラフ。図 中の番号の意味は図2と同じ。 図5 図4と同様の条件で,1− の磁界依存性を両対数 目盛で表したグラフ。図中の番号の意味は,図2と同 じ。 図6 β値を 2.01∼3.0の範囲で変えた場合の,∇と の 関係曲線。β=2.01の曲線は,図2の曲線6と同じ。 図7 1− の磁界依存性に及ぼす平板列間隔 βの影響。 β=2.01の曲線は,図5の曲線6と同じ。 126 垂直磁界中の超伝導薄板内電流前線への薄板列の影響(野田)
どの程度受けるかを調べた結果, ⑴ 単独平板の場合に比べ,平板列の影響は非常に大きい。 ただし,その影響は“第2近接平板”の寄与まで 慮す れば十 である。 ⑵ <10 の微小磁界範囲において,次の近似式が成り 立つ。 ∇= 0.7╱α 1− ×10 (6.1) 単独平板の場合に比し,右辺に因子 10 がかかっている 点が特徴である。 ⑶ <10 の微小磁界範囲において,∇および 1− の 磁界依存性は,次の近似式が成り立つ。 ∇= 1/2 又は ∇=tanh /2 (6.2) 1− = α╱0.7 /2 ×10 (6.3) ⑷ 同一の微小磁界 値で見ると,単独平板の場合に比 し,平板列の ∇は 1/2倍,1− は 1/2 ×10 =500倍と なる。すなわち,平板列では, 軸上の前線位置 が速 やかに内部へ入り込み,電流領域 1− を拡大するとい う影響が出ている。 次に,平板列間隔パラメータ βを β=2.01∼3.0に変化さ せ,電流前線のパラメータ ∇, およびその磁界依存性 が,平板列間隙幅の影響をどの程度受けるかを調べたとこ ろ, ⑴ 平板半幅と同じくらい隔てる β=3 と,単独平板と変 わらないくらい,∇と に対する平板間の影響が薄め られる。 ⑵ β値が増加するにつれ,1− 値が小さくなる側に向 かい,単独平板の場合に近づく。ただし,β=3の場合で も,単独平板の場合より,1− 値はまだ2倍ほど上に ある。 という結果を得た。 参 文献 1) 野田 稔:垂直磁界下における超伝導平板中の遮 電 流前線Ⅱ, 福岡工業 大 学 研 究 論 集, 第35巻, 第 2 号, pp.225-230, 2003. 2) 野田 稔:超伝導平板中の遮 電流前線形状の磁界依 存 性, 福 岡 工 業 大 学 研 究 論 集, 第36巻, 第 2 号, pp. 193-199, 2004. 3) 野田 稔:垂直磁界中に置かれた超伝導平板内遮 電 流前線の平板アスペクト比依存性, 福岡工業大学研究論 集, 第37巻, 第2号, pp.177-183, 2005. 4) 野田 稔:垂直磁界中の超伝導平板におけるベクトル ポテンシャル 布, 福岡工業大学研究論集, 第38巻, 第 2号, pp.153-160, 2006. 5) 野田 稔:垂直磁界中における超伝導薄板内の電流前 線, 福 岡 工 業 大 学 研 究 論 集, 第41巻, 第 2 号, pp. 113-120, 2009.
6) The MathWorks, Inc.
7) Brandt E H and Indenbom M:Phys. Rev. B48 (1993) 12893-12906
8) K. Yamafuji, M. Noda, T. Fujiyoshi: Effect of the Aspect Ratio of a Superconducting Tape on the AC Loss in Perpendicular External Magnetic Field, Res. Bull. Fukuoka Inst. Tech. 40, pp.199-208, 2008