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世田谷区船橋地域「子どもぶんか村」の活動を通してみる世代間交流 : 子どもの側からみる大人との交流

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Academic year: 2021

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1.本研究の背景と目的 現在,様々な社会問題を背景として子どもたちが 育っていく上で,生活経験の少なさや社会性の無さ が指摘されている。地域社会のなかで教育を補おう とする試みとして,文部科学省も,2004年より緊 急 3か年計画で取り組まれた「地域子ども教室推進 事業」において子どもの居場所づくりとともに,世 代間交流を重視し始めている(全国学童保育連絡協議 会編 2007)。また世代間交流は,高齢者の生きがい 対策にも力点がおかれ,「幼保育に高齢者や学生 (主に大学生)」を参加させた交流イベントが多く企 画されており(青井 1999,福留 1997),福祉のテキス ト等にも登場するようになった。「地域子ども教室推 進事業」といった,時限付の予算によって企画され る交流活動のなかには,組織が安定しない活動のも のが多いが,一時的なものであってもその場で喜ば れることもあって,交流活動は多様に企画されている。 子どもの他世代との「交流」に関する研究は,教 育学(加賀谷 2001,村山 2006,猿渡 2004,大前 2004, 学苑人間社会学部紀要 No.820 15~21(20092)

Children lack sufficientlifeexperiencetosocializefruitfully with olderpeople.Although fostering socialinteraction between generations is not a primary goalof the ・Kodomo-Bunkamura・ in Funabashi,Setagaya Ward,the eventhas a positive effecton socializing betweenthedifferentgenerationsinvolved.Recognitionofthisfactmotivatesourresearch.

Survey Method:By observing the activities from 2005 to 2007 and conducting and analyzingaquestionnairesurvey,wediscoveredthefollowingpoints.

1.Diversesocialinteractionsbetweenpeopleofdifferentgenerationsandofdifferentsocial statuswereinitiatedandpromotedthroughongoingactivitiesatthe・Kodomo-Bunkamura.・ 2.Throughouttheactivities,childrenexperienced17differentsessionsofsocialinteraction.

Activitiessuch as・Experiencing theSameActivity,・・Children andAdultsStanding Face to Face,・ ・Working toward the Same Objective and Achieving it,・ ・Skinship,・ and ・Cooperating・ provide the sortofsocialinteraction thatmotivates children to remain involvedintheactivities.

3. Children have a positive impression of the socialinteraction between the different generationsthatisexperiencedthroughtheactivities.

Key words:Kodomo-Bunkamura(子どもぶんか村), differentgenerations(異世代), social interaction(交流),socialinteraction between differentgenerations(異世代交流), diversesocialinteractions(多様な交流)

世田谷区船橋地域「子どもぶんか村」の

活動を通してみる世代間交流

―子どもの側からみる大人との交流―

秋山展子天野寛子

SocialInteractionbetweenDifferentGenerationsEngagedinActivities at・Kodomo-Bunkamura・inFunabashi,SetagayaWard

―Children・sperspectivesoninteractionwithadults

HirokoAKIYAMA andHirokoAMANO

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桜井 2006,佐藤 2003,阿部 2003,草野 2006)や社会 学からの研究(高野 2004,斎藤他 2005,神川 2002, 棟尾 1981,山崎他 2004,安恒 2005)があるが,福祉 的視点はみられない。福祉分野の文献の検索では, 1990年以後の『社会福祉学』にはなく,唯一,『福 祉社会研究』に「世代間交流の実態調査報告―京都 市神戸市のアンケート調査より―」(築山崇黒澤 祐介草野篤子他 2007123129)において,世代間交 流について地域を限定し,交流内容効果に関する 調査結果が報告されている。しかし,数量的把握が なされているだけで,筆者らが行おうとしている質 的な捉え方はされていない。 筆者らは,福祉社会的観点から「世代間交流」を とらえることが重要と考えており,「特定の世代の ための交流企画」という考え方ではなく,地域にお いてどの世代もが日常生活的に交流できることが必 要であり,またそれができる状況を福祉社会の重要 な「要素」と捉えている。ここで「世代間交流」と は,「同世代間異年齢」「異世代間」の出会い挨 拶認知慣れ相互関係親しみ向き合う一 緒に行動する協力する等の意識的無意識的な 「関わりあい」を指している。 世田谷区船橋地区において青少年地区委員会が運 営する「子どもぶんか村」活動が行われているが, 秋山はこの活動を「子ども,親世代の大人,高齢者 等,多世代が関わっている活動」の事例として研究 対象とし,修士論文「東京都世田谷区『子どもぶん か村』の活動を通して見る世代間交流 ―福祉的視 点によるアプローチ―」としてまとめた。 本稿では,修士論文から,世田谷区船橋地区で行 われている「子どもぶんか村」の活動を通して,子 ども世代からみる世代間交流の側面に限定し,第 1 に,「子どもぶんか村」の世代間の交流の実態把握, 第 2に活動のなかで行われている「交流の組み合わ せと交流の粗密」「組み合わせと向かい合い方」,第 3に「子どもぶんか村」の活動に参加している子ど もの「交流」に関する声を明確にすることを目的と する。 2.研究方法 1) 研究対象「子どもぶんか村」について 「子どもぶんか村」の活動は,世田谷区船橋地区 において青少年地区委員会1が中心となり 2003年に 準備が始められ,船橋中学校長と希望丘中学校長か ら,青少年地区委員会の「文化的活動事業」として 提案されたことがきっかけとなり 2004年度より活 動が始まった。 「子どもぶんか村」活動の目的は次のように掲げ られている。①学校では取り組みにくい体験ができ る場,および好きな学習をさらに深める場にする。 ②子どもたち自身が大切な存在であると自分で感じ ることができる場にする。③子どもたちの持ってい る良さや力を自分で発見し,お互いの良さに気づき ながら,他者とのかかわりの大切さを学ぶ場にする。 ④子どもたちの成長を,地域で共に喜び合える豊か なまちづくりの拠点とする。 構成員子どもの参加者行われている 7種類の くらぶ2等については,「3.結果」において述べる。 指導者および講師は,主として活動に賛同した協力 可能な地域の人,および管内 5校の教員であるが, 必要に応じて専門家や技術者に指導してもらう。 「子どもぶんか村」が対象としている子どもは, 青少年船橋地区委員会管内 5つの区立小中学校(船 橋小学校,千歳台小学校,希望丘小学校,船橋中学校, 希望丘中学校)を中心にした地域の全ての小中学 生および高校生である。活動場所は,事務局を船橋 まちづくり出張所に置き,出張所 2階フロアー部分 と管内 5つの小中学校の施設,区民集会所および児 童館などを使っている。 活動の様子,予定等については,「ぶんか村だよ り」を毎月 25日に発行し,各学校および町会を通 して各家庭に配るとともにインターネットでも公開 発信している。 1 当青少年地区委員会で「子どもぶんか村」の活動を下準備したのは,駒井澄子氏である。 2 一般には「クラブ」と片仮名表記されるが,「ぶんか村」の場合は「くらぶ」とひらがな表記されているので,本 稿では,「ぶんか村」で使用されているひらがな表記を使用する。

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2)「子どもぶんか村」の活動を「世代間交流」の 研究対象とする理由 前述したように,本活動は文化活動を目的とした 青少年健全育成活動の一つであり,特に「世代間交 流」自体を目的とした活動ではない。望ましい子ど もの生育環境という側面から,親以外の大人も地域 の「子どもの成長」に関わることは望ましいことで あると言われながらも,現実的には多忙な大人が他 人の子どもの成長に関わることは少ない。仮に他人 の子どもの成長に関わることができる状況にあって も,「関係」ができていない地域生活のなかでは関 わることは難しい。同様に,高齢者の側からすると, 時間はあるが,孫世代の地域の子どもたちに日常的 に関わろうとしても,子どもの側からは,「普段か ら関係のない人」からの関わりを受け入れていくこ とは難しく,その具体的現実的方法が考え出され ているわけではない。こうした状況のなかで,特別 イベントとして「世代間交流」が企画されるのであ るが,わざわざ「交流目的」で実施される「交流」 が「わざとらしい交流」になることは参加した学生 ボランティアも感じている。継続的な地域における 活動のなかで相互の人間関係が育ち世代間交流も行 われていることがより望ましいことはいうまでもな い。 その意味から,特定世代の交流目的のイベントで はなく,地域の大人が関わりその地域の子どもが活 動する「子どもぶんか村」の活動を自然な形での 「世代間交流の活動事例」と捉えることとした。 3) 研究方法 研究方法は,「子どもぶんか村」の活動観察記録 を分析考察することと,「子どもぶんか村」の活 動に参加している子どもたちを対象に行ったアンケ ート調査の結果を分析することである。 ① 観察記録:「子どもぶんか村」の各「くらぶ」 が活動する日の開始時間から終了時間までを観察 し記録した。ときどきは観察者としてだけではな く,スタッフを手伝い参与観察となった場合もあ る。期間は 2005年 10月~2007年 7月までの毎 土曜日の 4~5時間,28回,延べ時間数約 120時 間である。 ② アンケート調査:アンケート調査は,「子ども ぶんか村」に参加している子どもを対象として, 子どもの生活の現状,子どもが両親以外の大人と 接する機会,子どもが何を求めて「子どもぶんか 村」に参加しているのかを把握するために実施し た。アンケートの対象は「子どもぶんか村」に参 加している子どものうち,調査の時点で 1年以上 参加している者に限定した。記入は,各「くらぶ」 の活動後もしくは活動前の時間を使い,活動場所 において,調査協力の承諾をした者のみに配布, その場で各自に記入してもらい,筆者らが回収し た。調査期間は,2007年 3月~7月3である。 3.結 果 1)「子どもぶんか村」の構成員と 7種類の「くら ぶ」活動 「子どもぶんか村」の構成員は,①子ども ②スタ ッフ(親世代一部前期高齢者を含む)③文化活動の 講師 ④高齢者 ⑤特に「子どもぶんか村」活動に参 加はしていないが活動を見にくる地域の人から成り 立っている。⑤の「参加はしていないが見にくるこ とで関わる人々」を除外して,活動に関わっている ①~④のメンバー総勢は約 320人である。 「子どもぶんか村」の登録子ども数は延べ 222人, アンケートの回答者数 103人(男 26,女 74,不明 3) である。学年状況は小学生 68人,中学生 32人,高 校生 3人である。回答者の家族員数の平均は 4.2人, 祖父母同居率は 10%である。 ぶんか村の活動は①映像くらぶ(映像を使った作 品づくり),②演劇くらぶ(演劇をとおして自己表現の 楽しさを体験),③音楽くらぶ(ジュニアコーラス,ジ ュニアオーケストラがあり,音楽の楽しさを体験),④ 伝統くらぶ(茶道,いけ花,日本刺繍),⑤ひまわり くらぶ(毎月,老人給食の後に喫茶店を開き,高齢者と の交流を主とした活動),⑥まち探険くらぶ(身近な 「まち」や近隣の「まち」を調査し,「まちづくり」を考 3 各くらぶの活動日はそれぞれに異なるため,一時期に実施することはできない。

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えて発信),⑦ものづくりくらぶの 7種類(10の活動) である(表 1)。子どもたちのなかには,活動日の重 複していない複数の「くらぶ」に参加しているもの も 40%いる。 どの「くらぶ」にも PTA活動等を経験したスタ ッフがつきそい,活動当日参加した子どもの受け入 れから活動終了まで事故がないように気を配ってい る。トラブルが発生した場合や子どもから相談され た場合は介入することもあるが原則的には活動に入 り込むことはなく「見守り」をし,準備片付け等に は子どもの参加を促し,指導する場合がある。 2)「くらぶ」別交流の組み合わせと交流の粗密― 観察記録分析から 「子どもぶんか村」のような文化活動のほうが主 目的である場合の各人の交流は,実際にはどのよう な組み合わせで行われているのか,またそれらはど んな意味をもっているのかを明らかにするため,観 察メモから組み合わせを整理した。その結果,「子 どもぶんか村」の活動における交流には 17の組み 合わせがあり,その組み合わせのなかでも交流の程 度に粗密があることが明らかになった(表 1)。「頻 繁に交流あり」の組み合わせ(◎),「交流あり」と いう組み合わせ(○),「特別な場合に交流あり」 (△)という組み合わせ,「交流が見られない」(無 印)という組み合わせが存在している。交流者の組 み合わせで頻繁に交流が行われているのは「講師と 子ども」「子どもと子ども(同級生)」「子どもと子 ども(他学年)」「中年スタッフと子ども」である。 表 1 交流者の組み合わせと「くらぶ」の関係 交流者組み合わせ 中年スタッフ×子ども 高齢スタッフ×子ども 講師×子ども 講師 スタッフ以外の大人(中年)×子ども 講師 スタッフ以外の大人(高齢)×子ども 子ども×子ども(他学年) 子ども×子ども(同級生) 子ども×子ども(他学校) 子ども×子ども(ぶんか村外の子) 中年スタッフ×中年スタッフ 中年スタッフ×高齢スタッフ 講師×中年スタッフ 講師×高齢スタッフ 中年スタッフ×他グループの高齢スタッフ 中年スタッフ×外部の高齢者 高齢スタッフ×他グループの高齢スタッフ 高齢スタッフ×外部の高齢者 くらぶ 活動名 ひまわりくらぶ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ まち探険くらぶ ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ ◎ △ △ ◎ ◎ ◎ ◎ △ いけ花 ○ ◎ ○ ◎ ○ ○ 茶 道 ○ ◎ △ △ ○ ○ ○ ○ 日本刺繍 ○ ◎ △ ◎ ◎ ◎ ○ 演劇くらぶ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ △ ○ 映像くらぶ ◎ △ ◎ ○ ◎ ○ ○ ◎ ○ ○ ものづくりくらぶ ◎ △ ○ ◎ ○ ◎ コーラス ○ △ ◎ △ △ ◎ ◎ ◎ △ ○ △ ◎ △ オーケストラ ◎ △ ◎ △ △ ◎ ◎ ◎ △ ○ △ ◎ △ ◎:「頻繁に交流あり」 ○:「交流あり」 △:「特別な場合に交流あり」 無印:「交流が見られない」 *交流の有無程度は,厳密な回数(頻度)を数的に把握した評価ではなく,観察者の判断による。

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「くらぶ」別に「頻繁な交流」がさまざまな組み合 わせで行われているのは,老人給食のあと開かれる 喫茶店「ひまわりくらぶ」の活動と「まち探険くら ぶ」の活動が抜群であり,かなり差があるがそれに 続くのが「オーケストラ」「演劇くらぶ」「コーラス」 である。「講師と子ども」の交流は頻繁にあるが他 の交流の組み合わせが比較的少ないのは「いけ花」 「茶道」「日本刺繍」であり,静かに心を落ち着けて 自分自身と向かい合うこと自体が目的となるもので ある。 3) 「くらぶ」 別交流者の組み合わせと交流内容 ―観察記録分析から 「子どもぶんか村」の活動は,文化活動が目的で あり,「○○と△△世代間交流」4と交流目的を限定 していないために,ここで見られる交流は様々であ り,各「くらぶ」の活動の性格によっても交流内容 は異なる。また交流者たちも「交流」自体を意識し てはおらず,自然な形で「結果的に」交流が行われ ている。観察を続けるなかで,「子どもとスタッフ」 の組み合わせであっても,一般的な意味で「ふれあ っている」場合,「真剣に向き合っている(対峙)」 場合,「同じ目的に向かって活動する(熟練達成)」 場合,「協力」等,「交流の質」とでもいうべき違い があることに気づかされた。 これら「交流の質」と交流の組み合わせがどの 「くらぶ」に特徴的にあらわれるのかという関係を まとめたものが表 2である。 「子どもと子ども」の組み合わせでは,どの「く らぶ」でも「同じ活動体験を」通して交流が行わ れ,またそこでは上級生と下級生の交流がある。 「子どもと中年のスタッフ」の組み合わせでは,ど の「くらぶ」もその「くらぶ」を世話するスタッフ との交流がある。「スタッフと子ども」が「真剣に 向き合う」(意見を言い合う)ことがあるのは「演劇 くらぶ」「映像くらぶ」「ものづくりくらぶ」であり, 「子どもと高齢スタッフ」が交流する場合がみられ るのは「ひまわりくらぶ」「まち探険くらぶ」「映像 くらぶ」「コーラス」「オーケストラ」である5。「子 どもと講師」の組み合わせでは,「ひまわりくらぶ」 と「ものづくりくらぶ」6以外の「くらぶ」に「ふ れあう」「真剣に向き合う」「子どもと講師が同じ目 的7に向かって」といった交流がみられる。「子ども と地域の人」の組み合わせでは,「ひまわりくらぶ」 「まち探険くらぶ」「茶道」「日本刺繍」「コーラス」 で地域の人との交流があり,「子どもと地域の人が 一緒に活動する」ことがあるのは「まち探険くらぶ」 「日本刺繍8」「コーラス」「オーケストラ」である。 「中年スタッフと高齢スタッフ」とが協力している のは「ひまわりくらぶ」と「まち探険くらぶ」であ る。 4)「子どもぶんか村」における交流を子どもはど う感じているか―アンケート調査から アンケートの結果から次の 5点が明らかになった。 第 1は,入会した後途中で退会した児童はほとん どなく,「不満な点は活動時間が短いこと」「もう少 し活動回数を増やしてほしい」と思っており,「子 どもぶんか村」が参加している子どもたちにとって 居心地のよい場所となっている。第 2に子どもたち にとっての「くらぶ」は,「楽しむところ」「新しい ことに挑戦できるところ」「いろいろな人に会える ところ」「仲間ができるところ」を多くがあげてい るように,楽しさのなかで「交流」が行われている 4 たとえば「高齢者と小学生との交流」といったことを指す。「高齢者と小学生との交流」であってもそれを企画運 営するさまざまな異年齢の大人が周辺に存在するはずであり,子どもはそうした大人からさまざまなメッセージを 受け取り,影響を受けている。すなわちそこでは「意図しない交流が行われている」のであり,それは子どもの成 長に「意図した交流」よりも大きな影響を与える場合もある。しかし,目的を「高齢者と小学生との交流」と限定 してしまうことによって,「高齢者と小学生」の関係だけが切り取られ,他の関係は無視されることになる。「子ど もぶんか村」の活動を観察する上では多様な世代の交流を重要視した。 5 特に「オーケストラ」では高齢スタッフがメンバーにもなって活動を支えている。 6「ものづくりくらぶ」は低学年が多く集まるくらぶである。 7 たとえば,コンサートや発表会のような目的のこと。 8 本調査の年に,地域の人の日本刺繍のワークショップがあり,子どもたちも参加し,地域の人との交流があった。

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(秋山92007:68)。第 3に「くらぶ」にくる目的は, 「いろいろな友だちと会える」「上級生や他校の友人 がいること」と同様に「いろいろな大人と会えるこ と」があげられていることから,異年齢交流世代 間交流が積極的に捉えられている(秋山 2007:69)。 第 4に,親族以外で一番話をする機会が多いのは 「学校の担任の先生」と答えているが,「もっと話し たい大人」としてあげているのもまた「担任の先生」 (25%)である点を見ると,学校内では担任の先生 との会話は,あまり満足できる状態にはないと思わ れる。次いで「もっと話したい大人」としてあがっ ているのは「『子どもぶんか村』で教えてくれる先 生」,「スタッフ」の順である(秋山 2007:76)。子 どもたちは大人と話をし,自分の話を聞いてもらえ るような機会を欲しており,「子どもぶんか村」活 動に参加している子どもたちには,「子どもぶんか 村」が大人と安心して交流できる場所として機能し ているということができる。 まとめ 「子どもぶんか村」活動を通した世代間交流,子 どもの側からみた「大人との交流」に視点を当て 3 点にまとめた。 1.「子どもぶんか村」の活動は,①交流する世代 9 秋山の修士論文に関してのみ,複数回引用されるので,文中に(秋山 年:ページ)をつける。以下同じ。 表 2「くらぶ」別にみた交流者組み合わせと交流の内容 くらぶ名 ひまわりくらぶ まち探険くらぶ いけ花 茶道 日本刺繍 演劇くらぶ 映像くらぶ ものづくりくらぶ コーラス オーケストラ 交流内容 子ども⇔子ども 子ども同士が同じ活動体験を通して向き合う ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 子ども(上級生)と子ども(下級生)がふれあう ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 子ども⇔スタッフ 子どもとスタッフ(中年)がふれあう ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 子どもとスタッフ(中年)が真剣に向き合う ○ ○ ○ 子どもとスタッフ(中年)が同じ目的に向かって活動する ○ ○ ○ ○ 子どもとスタッフ(高齢)がふれあう ○ ○ ○ ○ ○ 子ども⇔講師 子どもと講師がふれあう ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 子どもと講師が真剣に向き合う ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 子どもと講師が同じ目的に向かって活動する ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 子ども⇔地域の人 子どもと地域の人がふれあう ○ ○ ○ ○ ○ 子どもと地域の人が一緒に活動する ○ ○ ○ ○ スタッフ⇔スタッフ 中年スタッフと高齢スタッフが協力する ○ ○

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が,子ども世代親世代祖父母世代と三世代に わたり,継続的な活動のなかで世代や立場を超え て多様な交流が育っている,②「子どもぶんか村」 は大人が仕掛けたものであるが,子どもたちがの びのびと活動し,異年齢の子ども他校の子ども とも自然に交流し,関わっている大人高齢者世 代とも自然な交流があり,信頼関係を築いている。 2.活動を通じて,子どもたちは,17の組み合わせ の交流を経験しており,その「向き合い方」は 「同じ活動体験」「大人と子どもが真剣に対峙」 「同じ目標に向かって加速達成」「ふれあい」 「協力」等,複雑な向かい合い方を経験している。 それらがあいまって,活動に対する魅力が生まれ 緊張感をもって,子どもの活動が持続されている と思われる。 3.子どもたちは,一度入会すると「卒業」等の所 属変化以外は活動を継続しており,概ね満足し, 積極的な意欲をもちつづけていることから,本活 動で体験する世代間交流を肯定的に捉えていると みることができる。 今後,さらにこの「子どもぶんか村」の活動が継 続され,参加者の生活を文化的に豊かにすること, 子どもにとって,「子どもぶんか村」の大人の存在 が不可欠になり,地域が活性化され地域づくりにつ ながること,「子どもぶんか村」での交流が子ども が将来のビジョンを考えるときに良い影響を与える 存在となっていくことを期待したい。 引用文献 引用文献の表示はアルファベット順とする。 阿部淳子(2003)「地域の民俗文化の伝承を支える子ども たち―祭囃子の活動が伝承する要因の分析―」『日本女 子大学家政学部紀要』50,1 7. 秋山展子(2007)「東京都世田谷区『子どもぶんか村』の 活動を通して見る世代間交流―福祉的視点によるアプ ローチ―」昭和女子大学大学院生活機構研究科福祉社 会研究専攻平成 19年度修士論文(未刊行). 青井和夫(1999)『長寿社会を生きる―世代間交流の創造』 有斐閣. 福留強(1997)『まちづくり人づくり』学文社. 加賀谷真由美(2001)『子どもとつくる遊び場とまち―遊 び心がキーワード』萌文社. 神川康子(2002)「世代間交流に関する高齢者の意識」 『家庭科教育』76(12),17 23. 草野篤子(2006)「日本における世代間交流の歩みと今後 の展望」『社会教育』(3),58. 棟尾昭雄(1981)「世代間交流と社会教育事業」『社会教 育』(12). 村山祐一(2006)「地域社会の中の子どもと保育所幼稚 園の課題―子育て環境格差の広がりと一元的児童福祉 行政の推進―」『保育学研究』44(1),22 29. 大前衛(2004)「子どもの遊びと社会性の発達序論」『湊 川短期大学紀要』40,67 73. 斎藤哲瑯本郷健藤原昌樹(2005)「子どもの生活の現 状と課題―首都圏近郊の一都市調査の分析から―」『川 村学園女子大学研究紀要』16,95 112. 桜井智恵子(2006)「家庭教育政策における『地域社会の 中の子ども』 という論点の登場―1983年 OECD CERI家庭教育国際セミナーを中心に―」『保育学研究』 44(1),30 38. 佐藤匡(2003)「子どものあそびの変化についての二,三 の考察―三世代家族の事例―」『聖和学園短期大学紀要』 40,1 11. 猿渡智衛(2004)「放課後児童育成施策と地域づくり― 「子どもと大人を結ぶ」名古屋市トワイライトスクール の実践から―」『社会教育』(9),78 83. 高野由美子(2004)「児童館活動における地域の他機関, 団体,個人との連携―豊島区立雑司が谷児童館を事例 として―」『日本女子大学紀要』51,43 51. 築山崇黒澤祐介草野篤子他(2007)「世代間交流の実 態調査報告―京都市神戸市のアンケート調査より―」 『福祉社会研究』7,123 129. 山崎美佐子角間陽子草野篤子(2004)「異世代間にお けるネットワークの可能性―祖父母と孫の交流関係か ら―」『信州大学教育学部紀要』112,99 110. 安恒万記(2005)「都心における子どもの遊び環境につい て―「放課後の遊び場づくり事業」事例―」『筑紫女学 園短期大学紀要』40,39 51. 全国学童保育連絡協議会編(2007)『よくわかる放課後子 どもプラン』ぎょうせい,36 38. (あきやま ひろこ 学校法人武蔵野学院武蔵野中学校高等 学校.平成 19年度生活機構研究科福祉社会研究専攻修了生) (あまの ひろこ 福祉環境学科)

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