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第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化

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Academic year: 2021

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(1)第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内 企業の財務構造変化 著者 権利. シリーズタイトル シリーズ番号 雑誌名 ページ 発行年 出版者 URL. 北野 浩一 Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア 経済研究所 / Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization (IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp 研究双書 522 発展途上国の企業とグローバリゼーション 155-194 2002 日本貿易振興会アジア経済研究所 http://hdl.handle.net/2344/00012257.

(2) 第4章. チリ:電力・一次産品加工業における 域内企業の財務構造変化.   はじめに  ラテンアメリカ地域でいち早くグローバリゼーションを開始したチリ企業 は,19 90年代の後半から変革の時期を迎えている。チリ企業は,対外直接投 資にかんする資本規制が緩和された1 9 9 0年を契機に,積極的にラテンアメリ カ域内諸国へ対外進出を繰り広げた。経済規模では域内の中位国であるが, 域内の企業間競争では優位にたち,有力企業の多くがラテンアメリカ各国に 展開する大企業へと成長した。しかし,そのような大企業がアジア通貨危機 以降海外拠点からの撤退や企業買収にあうケースが多くなっている。  1 990年代にチリ企業が海外に進出したのは,自国の市場規模が小さいこと と併せて,周辺国が遅れて自由化・規制緩和を進めたことを背景にしている。 チリ政府は,1 98 0年代から公企業,公益事業の民営化を進め,それにとも なって規制枠組みも整えてきたが,周辺国では1 9 90年代に入ってから料金設 定などチリの規制枠組みを導入するかたちで民営化,規制緩和を進めた。そ のため,すでに十数年の経営ノウハウの蓄積があったチリの企業は,周辺国 の市場に参入するにあたり経営面での優位性があったといえる。同時に,マ クロ経済が安定していたことや,民間年金基金()によって国内資本市 場が発達していたことも,企業の資本調達の優位性をもたらした。  しかしながら,19 9 7年のアジア通貨危機の影響がチリ経済にも影を落とし.

(3)   . はじめるころから,企業の海外進出の状況に変化が現れてきた。危機以降こ れまで域内企業に成長していた大企業が,欧米のグローバル企業に買収され るケースが目立っている。それは,電力をはじめテレコム,金融,流通など, ネットワーク産業と呼ばれる分野において顕著にみられる。その反面,一次 産品加工産業ではネットワーク産業とは対照的に,1 99 0年代後半にかけて国 内の天然資源量の制約から資源確保を求めて海外へ進出する傾向がより強 まっている。すなわち,国際展開は産業ごとに二分化の様相をみせている。  企業の海外進出と産業特性との関係は,これまで ・ダニングによって折衷 。国連ラテンアメリカ・カ 理論による説明がなされてきた( [1993] ) リブ経済委員会()の直接投資報告書では,この枠組みをラテンアメ リカの直接投資分析に適用して,域内の直接投資を効率性追求,天然資源確 保,市場の確保という三つの要因で説明している。[1 9 99  60]では, 一次産品加工産業が海外進出を行う要因を天然資源確保型とし,一方ネット ワーク産業などサービス業はおもに市場確保型と分類している。しかしなが ら,近年の企業の海外進出と撤退,あるいは企業所有の移転パターンの分析 を行うにはこれだけの枠組みでは十分とはいえない。これまでの枠組みでは, 海外進出の要因は説明しても,先進国企業に買収されて子会社化している現 状を説明できていないからである。海外進出と進出後の先進国企業による買 収を併せて説明するためには,上記の枠組みでは看過されている別の要因に 注目する必要があると思われる。そのような要因として,海外進出のファイ ナンスをどのような手段で行ったかという財務管理をとりあげる。  チリのネットワーク産業の例は,規模の経済性の強い産業における途上国 企業の成長過程の典型的なパターンといえる。資本の国際化が進んでいる今 日では,経営・資本の相対的な優位性によって域内企業へと成長しても,よ り規模が大きい企業に買収される可能性が高く,途上国資本による経営権の 保持は困難であることを示している。企業規模の拡張と財務管理の失敗によ る破綻は,20 01年末の米国企業エンロン社の例にもみられるが,途上国企業 の場合にはより資金力のある欧米企業によって買収されるという傾向がみら.

(4)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   . れる。  本章では,チリ企業の海外進出とそのファイナンスに焦点をあて,近年の 企業所有における変化の要因を探ることを目的とする。とくに,海外進出が 財務面に与えた影響に着目し,電力など規模の経済が強く働く産業において は所有の移転を招き,一方一次産品加工業では所有の面での変化がないのは, 財務管理の違いが重要であることを示す。まず,マクロ統計を用いて,チリ 企業の海外進出の特徴を概説する。続いてセクター別に企業の海外進出の状 況,海外子会社の収益,および企業の負債比率の増加をみる。最後に電力産 業から2社,一次産品加工産業から1社をとりあげ,両者の海外展開の動機, 資金調達,所有の変化を分析する。.   第1節 チリ企業の海外展開の進展  1.チリ企業の海外進出.  チリ企業の海外進出が活発になったのは,1 9 9 0年代に入ってからのことで 19 96年の6 4億 ある。図1には,チリ企業の対外投資の推移を示してあるが, 図1 対外投資額推移 (100万ドル) 7,000. 6,368. 6,000 4,731. 5,000. 4,158. 4,000 2,795. 3,000. 2,244. 2,000 1,000 0. 15 1990. 671. 742. 1992. 1993. 1,417. 192 1991. (出所) CCS[2000b: 31] .. 1994. 1995. 1996. 1997. 1998. 1999年.

(5)   . ドルをピークとして1 99 0年からの6年間で年平均9 2%増加している。1 9 97年 にはアジア通貨危機が発生し,その影響はラテンアメリカ諸国にも伝播した が,これを契機としてチリの対外投資も減少に転じ1 99 9年には1 4億ドルにま で落ち込んでいる。  海外進出を行ってきたチリ企業の業種別のシェアは,工業など製造業企業 を中心とするアジア諸国と比べ,際立った違いをみせている。チリの対外投 資分野別の199 0年から2 0 0 0年第1四半期までの累計では,エネルギー関連が 431 %,ついで工業の3 15 %,そしてスーパーマーケットの進出などの商業が 94 %を占めている(図2)。チリの対外投資は周辺国の公共事業への参加を中 心とし,電力などエネルギー関連の比率が高いのが特徴といえる。  これらの企業の多くはラテンアメリカ地域へ進出し域内企業として成長を 遂げた。もっとも積極的に海外投資を行ってきた電力部門の企業は,チリ企 業全体の売上高のなかでもトップクラスに属する。売上高のランキングをみ ると1位は電力事業持ち株会社のエネルシス社であり,その子会社である発 電事業を行うエンデサ社は3位である。また, 2位のコペックは1 9 99年時点で 発電事業のヘネル社の持ち株会社であり,ヘネル社も1 2位に位置している。 エンデサとヘネル社は,まずアルゼンチン,ついでブラジル,コロンビアな どの電力民営化事業に参加し,ラテンアメリカの電力部門のリーダー的企業. 図2 分野別対外投資 (1990年から2000年第1四半期の累計) 銀行 6.8% 商業 9.4%. 年金,保険 2.3%. その他 6.9%. 工業 31.5% (出所) CCS[2000b: 32] .. エネルギー 43.1%.

(6)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   . となった。  一方,工業部門の対外投資では一次産品加工が主である。チリは1 9 80年代 の後半から通貨の切下げ政策や政府による輸出促進政策によって,農水産品 の加工,製紙業に強い国際競争力を有するにいたった。海外から技術・設備 を積極的に導入し,先進国市場をターゲットとした輸出による拡大戦略を とったことが奏功している( [1997] )。おもに南部の水産・森林        . 資源や農作物を原料としていたが,1 9 9 0年代に入ると,環境問題や後述する 少数民族の土地所有問題が発生して国内の資源制約が大きくなってきたため, 自然環境が近い周辺国への生産拠点の拡大が目立つようになっている。  直接投資の進出先では,図3にあるように隣国アルゼンチンが群を抜いて 多く, 199 0年から20 0 0年第1四半期までの累計で1 2 5億ドルに達している。つ いでペルー,ブラジルが3 5億ドルでほぼ並んでいる。投資先のほとんどがラ テンアメリカ諸国であり,チリ企業が主として域内企業として成長したこと がわかる。. (100万ドル) 14,000 12,555 12,000. 図3 国別対外投資額 (1990年から2000年第1四半期の累計). 10,000 8,000 6,000 3,573. 4,000. 3,523 1,345. 2,000. 1,087. 373. 240. 177. 85. ボ リ ビ ア. 米 国. ド ミ ニ カ 共 和 国. メ キ シ コ. 0 ア ル ゼ ン チ ン. ペ ル ー. ブ ラ ジ ル.   (出所) CCS[2000b: 32] .. コ ロ ン ビ ア. ベ ネ ズ エ ラ.

(7)   .  2.海外進出と企業所有の変化.  チリ企業の強みは,他のラテンアメリカ諸国に比べてとくに資金調達の面 で有利であった点があげられる。メキシコに端を発する1 9 8 2年対外債務危機 は,当時国際収支面での問題を抱え多額の累積債務を抱えていたチリにも波 及した。銀行融資が停止するとともに国際金利は上昇し,交易条件が悪化 する一方,は1 4%減少するなど国内需要は急速に落ち込んでいる。しか し,その後の産業の国際競争力強化,および経済運営における規制を重視す る政策を実施したことにより,1 9 8 0年代後半から安定した経済成長を継続し ている。その結果,チリでは他のラテンアメリカ諸国に先駆けて1 990年代初 めから資金の流入が活発となり,国内における外貨の調達が容易になってい る。一方で,チリ企業にたいする国際的な信用も高まり,ニューヨーク証券 市場におけるの発行や,債券の発行による外貨の調達も盛んに行われる ようになった。このような資金調達面での有利さは,周辺国が有していな かったものである。  しかしながら,アジア通貨危機以降企業が直面する状況は一変している。 アジア通貨危機の影響は二つの経路を通じて伝播した。一つは貿易を通じて であり,アジア向け輸出の割合が305 %のチリはラテンアメリカのなかで飛 び抜けて大きく,アジア市場の冷え込みの影響はもっとも甚大であった。と くに,チリにとってアジア市場は,1 9 9 0年代に急速に成長した非伝統的輸出 品の新たな市場と位置づけられるために,長期的な成長軌道の修正の必要も 懸念された。もう一つの経路は金融市場を通じたものである。海外の投資家 はエマージングマーケット証券のリスクを嫌って資金を引き揚げたが,その 結果アジアだけではなくラテンアメリカ諸国でも株や債券価格の暴落が引き 起こされた。チリはマクロ経済が安定していたため直ぐにアタックの対象に なることはなかったが,ブラジル,アルゼンチンなど周辺国の通貨不安が高 まるなかで,連鎖的に外貨流入は減少した。中央銀行はこれに対処するため.

(8)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   . 銀行間金利を年率145 %にまで引き上げて対処している。こういった一連 の金融市場の変化が,チリ企業の国内外での資金調達を困難にする結果と なった。  アジア通貨危機による資本調達コストの増加を契機として,チリ企業は海 外展開の見直しを迫られている。一時はラテンアメリカの電力部門のリー ダー企業といわれたエンデサ社は,1 9 9 7年にスペイン企業に,そしてヘネル 社は2001年1月に米国企業に買収されたことは,驚くべき変化である。同様 の例は,電気通信,スーパーマーケットにもみられる。電気通信の分野は, 早くから国際競争の波が押し寄せ,最大のは19 90年半ばにスペインのテ レフォニカ・エスパーニャ社によって買収されている。また,国内第2位で 長距離通信最大手のエンテル()社は,コロンビア,メキシコなどへ 進出しているが,現在イタリアの     社の傘下となっている。一方,スー パーマーケット・チェーンは1 9 8 0年代後半からアルゼンチンなどへ進出した が,最大手の&は19 9 9年にアルゼンチン子会社を売却し撤退を決めてい る。また第2位のサンタ・イザベルは,すでにオランダの大手である  が経営権を握っている。  これは,アジア通貨危機以降の資本調達コストの増加に加えて,国内市場 での需要の低下,そしてこれに1 9 9 8∼9 9年の旱魃による電力供給停止が重 なったことも影響している。アジア通貨危機への対応は産業ごとに異なって おり,国内外の投資計画の見直し,コストの引下げ,そして国内外の他企業 との戦略的提携といった戦略がとられている。  1 999年から20 00年にかけて,チリ企業の在外子会社の外国企業への売却は 7億74 00万ドルに達しており,2 0 0 0年前半だけでも2億5 1 0 0万ドルになると 見込まれている。これは,直接的な売却のみの数字であり,もしチリの親会 社が外国企業に買収され,その在外子会社が外国企業の所有になったケース を加えると27億ドルにも達する。そのなかでは,スペインなどの企業による 電力,銀行,年金基金などの買収が典型的である。  海外での資産売却の金額をセクター別でみると,電力と小売業がそれぞれ.

(9)    図4 在外子会社買収額(セクター別,1999年) (100万ドル) 12,000 10,306 10,000 7,516. 8,000 6,000 4,000 1,622. 2,000. 2,251. 550 0 銀 行 ・ 金 融. A F P ・ 保 険. エ ネ ル ギ ー. 工 業. 商 業.   (出所) CCS[2000a]のデータをもとに作成。. 図5 セクター別海外投資額・海外子会社収益率. 収 益 率 ︵ % ︶. 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 0 −0.50 −1.00. 2,000. 4,000. 6,000. 8,000. 10,000. 12,000. 投資額(100万USドル)  AFP・保険  銀行・金融  商業  エネルギー  工業 (出所) CCS[2000a]のデータをもとに作成。. 35%と34%を占めている。小売り業の高い数字は,アルゼンチンにおける スーパーマーケット・チェーンの売却が要因として大きい。買収側は提携し ていた現地や海外企業であることが多い。  チリの親会社が外国企業に買収されたためにチリ国籍ではなくなった海外 子会社の所在国は,全体の4 2%がアルゼンチンであり,ついでペルーが2 8%.

(10)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    表1 海外子会社の収益額ランキング (単位:100万ペソ) 企業名(親会社) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40. 収益額. エンデサ・エネルシス 372,669.9 35,004.0 CELARAUCO 18,337.5 CGE 7,845.2 CMPC      5,224.9 EMELSA    3,679.5 GAS STGO   3,513.0 METROGAS S.A. 2,999.7 PIZARRENO   2,839.0 LABCHILE   2,427.0 REBRISA    2,099.3 EMEC     1,809.8 ENERQUINTA 1,673.3 BANMEDICA  1,376.4 CINTAC    1,175.3 MOLYMET   1,140.2 MASISA    1,128.3 コペック   1,011.8 P&S      970.6 Minera Valpo  823.2 CALICHERA  744.3 CTI       623.9 AGUNSA    569.9 TRICOLOR   431.4 SIPSA     331.3 LONCOLECHE 283.1 MINERA DEL PACIF. 248.5 SAESA S.A.   171.1 SANTANA   131.7 CHOLGUAN   122.5 DUNCAN FOX 103.1 E.VERDE,NORGEN. 74.0 ANDINOS    49.3 BESALCO    40.4 CAP       40.0 COPEFRUT    15.4 SOQUIMICH   8.5 FALABELLA   −1.8 CTC       −2.4 EMELAT     −2.5 INVERNOVA. 分野 電力・ガス・水道 林業   電力・ガス・水道 林業   電力・ガス・水道 電力・ガス・水道 電力・ガス・水道 工業   工業   サービス 電力・ガス・水道 電力・ガス・水道 サービス 建設   鉱業   林業   電力・ガス・水道 サービス 鉱業   工業   工業   運輸・通信 工業   工業   工業   鉱業  . 企業名(親会社) 41 42 43 44 45 46 47 48. 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 電力・ガス・水道 67 68 サービス 林業   サービス    69 電力・ガス・水道 70 71 工業   72 建設   73 工業   農・水産業 74 75 鉱業   76 サービス 運輸・通信 電力・ガス・水道 77 サービス. CB TI     MADERAS   CHILQUINTA IPAL     NEDESA    CONOSUR   INDALUM  METALPAR, MERVAL   LUZYFZA   ALMENDROS SODIMAC  FASA     SINTEX    ZALAQUETT POLPAICO  CHISPAUNO CORESA    ENAEX     SIEMEL    TELEXCHILE ALUSA VAPORES  EL VOLCAN IQUIQUE   STA ISABEL IANSA CERVEZAS  SANTA CAROLINA CARROZI   COCHRANE  LAN    ENTEL     ヘネル EMBOT.ARICA LUCCHETTI PACIFICO V REGION MADECO           . (注) 1997年から1999年の3年間の平均値。親会社ごとに集計。 (出所) Estrategia[2001: 68−69]のデータをもとに作成。. 収益額. 分野. −3.6 −3.7 −4.1 −6.8 −16.6 −19.6 −96.3 −122.6. サービス 林業 電力・ガス・水道 工業 電力・ガス・水道 サービス 建設 工業. −294.4 −295.1 −334.0 −392.4 −395.4 −480.4 −498.6 −577.9 −626.7 −755.9 −895.7 −1,202.3 −1,256.6 −1,637.6 −1,907.6 −2,062.9 −2,224.7 −2,251.3 −2,359.5 −2,388.1. 電力・ガス・水道 電力・ガス・水道 サービス 工業 工業 工業 工業 電力・ガス・水道 工業 工業 サービス 運輸・通信 工業 運輸・通信 工業 農・水産業 サービス 工業 工業 工業. −2,543.1 −2,909.0 −4,103.3 −4,598.1 −4,803.7 −6,991.5 −10,194.2 −16,810.4. 工業 工業 運輸・通信 運輸・通信 電力・ガス・水道 工業 工業 鉱業. −27,556.2 工業.

(11)   . を占める。セクターとしては,エネルギー,商業の比率が高い(図4)。とく に2 00 0年上半期には電力のエネルシス社がスペイン企業へ売却されたことに ともない,多くの子会社がスペイン企業の所有となったため,エネルギーの 買収額の比率が82%へと増加している。チリ企業が海外子会社を売却する動 機となっているのは,子会社の収益率が低いことや,親会社の資金流動性を 高めたり債務支払いを履行するためといった財務上の理由があげられている。  チリ企業の海外投資額と,海外子会社の収益率には相関がみられる。図5 には,セクター別の海外投資額と海外子会社の収益率が示してあるが,海外 での収益率の低い・保険,および銀行・金融セクターは海外投資額も低 い。その一方で,エネルギーは海外子会社の収益率が高く,投資額も大きく なっている。ただし,工業セクターは収益率は低いものの投資額は大きい。  海外子会社の収益額を企業別にみたものが表1である。これは,海外子会 社の19 98年と199 9年の収益額の平均値を親会社ごとに金額順に並べたもので あるが,上位にはエンデサ・エネルシス社や,などの電力企業 が並んでいることがわかる。とくに海外子会社の数・規模の大きいエンデサ・ エネルシス社は2位以下を大きく引き離し3 72 7億ペソの収益をあげている。 そ の 一 方 で,収 益 額 の 低 い 企 業 に は,工 業 部 門 の 企 業 が 並 び,金 属 の ,食品のルケッティー,飲料の     . .

(12).   など,周辺国の 経済停滞の影響による業績の悪化が目立っている。.   第2節 電力産業の事例  1. 電力産業の産業構造.  電力産業の民営化は,サッチャー政権下のイギリスにおける民営化と時期 や手法を同じくして実施されている。チリでは,国家エネルギー委員会 9 8 0年から開始され,発電・配電・送電事業を行う企業がそ ()により1.

(13)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    表2 チリ電力部門民営化プロセス 年. 方法. 民営化企業. 1980   一般入札. 南部発電社(SAESA).  . 国境発電社(FONDEL). 1983   エンデサ社とチレクトラ社の 顧客からの償還金を公開株式. チレクトラ社の2配電企業の10%を株式市場 で流通. に転換 1986∼87 一般入札. 民営化  Empresa Chilena de Generacio´n Ele´ctrica 社   の小規模水力発電所3カ所(20MW) 。  エンデサ社の2水力発電所;ピルマイケン   水力発電所(39MW);プジュンケ水力   発電所(45MW). 1987. 労働者への一定割合を確保し. 配電企業. た,部分入札.  チレクトラ・メトロポリターナ社;チレク   トラ・キンタ・レヒオン社 チルヘネル発電企業. 1988∼89 労働者への入札。EMEL社の. エンデサ社の発電業子会社:. 場合は,全株式がエンデサ社. アタカマ電力社 (EMELAT);メリピージャ,. とその子会社,およびコルブ. コルチャグア, マウレ電力社 (EMELAT);. ン社の労働者に割り当て。労. コキンボ電力社(EMEC);アリカ電力社. 働者は,購入に退職金を充当. (EMELARI);イキケ電力社(ELIQSA);. することが可能。. アントファガスタ電力社(ELECDA). 1988∼89 「大衆資本主義(カピタリス. エンデサ社(送電システムを含む:500∼220. モ・ポピュラール)」と呼ば.  と154キロワットの幹線)。. れる株式の一般公開。AFP 等の機関投資家へ25%の配 分。外国人投資家への販売。 1996. 一般入札. コルブン社(91.25%) アイゼン電力社(EDELAYSEN) 北部発電・送電システム(EDELNOR)(46.5  %). (出所) Moguillansky[1999: 174−175] ..

(14)   . れぞれ独立して民営化された(表2)。  発電事業では,19 8 6年にチルヘネル社とエンデサ社の小規模発電所が,一 般入札によって民営化されている。売却は,企業所有の集中を防ぐという目 的で, や従業員への売却という方法がとられた。1 98 7年には首都圏と第 5州の配電会社であるチレクトラ・メトロポリターナ社とチレクトラ・キン タ・レヒオン社の部分売却が開始され,また1 9 8 8年から1 9 90年にかけては「大 衆資本主義」( )という方法で,地方の配電会社やエンデ      .    

(15) サ社の発電子会社が民営化され,多くの小株主を生んだ。しかしながら,近 年一般投資家の所有比率は次第に低下し,その一方で機関投資家や少数の投 資グループに所有が集中する傾向がみられる。  現在の発電事業は,北部の大北部電力網システム( )と,第2州から 第1 0州まで網羅する中央電力網システム( )の二つの電力網に統合されて いる。また,第11州と第1 2州は社と国営の社が発電・ 配電事業を実施している。 はアリカからアントファガスタまでを包含し, 北部で盛んな鉱業がおもな需用者である。鉱山が所有する発電所も に 接続されている。いくつかの小規模な水力発電所を除いておもに石炭・ ディーゼル・重油による火力発電所である。 は第3州のタルタルから第 10州のチロエ島まで2 0 0 0キロメートルに及ぶ地域を網羅し,人口の9 3%,  全発電能力の66%を占める。6 6 4 6メガワットの発電能力のうち5 8%が水力で あり,残りは火力発電である。発電量では中部はエンデサ社が5 0%を超える 最大企業であり,ついでヘネル社が2 0%となっている(表3)。  送電システムは,すべて発電所の所有となっている。 と ではエン デサ社の子会社であるトランスエレック社とエデルノール社が配電システム の大半を所有している。 には,国有銅鉱山企業コデルコ社の自社発電の 配電システムも含まれている。現在発電量の6 0%は配電会社によって一般消 費者に供給され,残りの4 0%は自由価格によって大企業や鉱山に売られてい る。一方,自家発電の比率は全発電量の2 0%である。  電力部門の規制枠組みの根拠となっているのは, 1 9 82年の.  である。.

(16)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    表3 発電量 (1) 中部電力網(SIC) 企業名. 1989年. (単位:MW,かっこ内%) 1993年. 1996年. 1998年. 1999年. 2000年. 1). エンデサ社 1,730.9 (59) 2,440 (63) 2,866.7 (59) 3.330 (53) 3,772 (56) 3,632 (55) コルブン社. 490 (17) 489 (13). 527 (11) 1,750 (28) 1,067 (16) 1,067 (16). ヘネル社1). 578.4 (20) 756.4 (19) 1,060.4 (22). 756 (12) 1,453 (22) 1,439 (22). その他2). 142.9 (5) 203.1 (5) 404.4 (8). 438 (7) 389 (6) 508 (8). SIC合計. 2,942(100) 3,889(100) 4,859(100) 6,275(100) 6,682(100) 6,646(100). (注) 1)子会社を含む。     2)Ibener, Pilmaiquen, E. Verde, Arauco, Aconcagua, G.Vieja, Capullo, G.S. Andes, Carbomet   など。. (2) 大北部電力網(SING) 企業名 エデルノール社. 1993年. (単位:MW,かっこ内%) 1996年. 96.21 (12) 290.73 (25). 1998年 472 (32). エレクトロ・アンディーナ社 613.5 (78) 627.5 (55) 629 (43). 1999年. 2000年. 465 (19). 674 (20). 629 (25) 1,009 (30). セルタ社. 0 (0). 24 (2). 165 (7). 165 (5). ノルヘネル社. 0 (0) 132.4 (12) 277 (19). 274 (11). 274 (8). 0 (0). ノペル社. 0 (0). 0 (0).  .  . 554 (22). 554 (17). ヘネル社. 0 (0). 0 (0).  .  . 414 (17). 641 (19). 74 (5). 0 (0).  0 (0). エンデサ社 SING 合計. 74 (9) 97.75 (9). 783.7(100) 1,148(100) 1,476(100) 2,502(100) 3,317(100). (3) 全国 電力綱 SING. (単位:MW,かっこ内%) 1993年. 1996年. 1998年. 1999年. 2000年. EDELMAG. 783.7(16.6) 1,148.4(18.9)1,476(18.9) 2,502(27.0) 3,317 (33.0) 3,890(82.2) 4,858.5(79.9)6,275(80.1) 6,682(72.1) 6,646(66.2) 10.65 (0.2) 12.65 (0.2) 17 (0.2) 17 (0.2) 17(0.2) 46.41 (1.0) 60.248 (1.0) 64 (0.8) 64 (0.7) 64(0.6). 総計. 4,731(100) 6,080(100)7,832(100) 9,265(100) 10,045(100). SIC EDELAYSEN. (出所) SEC[cited 1 October] , (http://www.cne.cl/electricidad.htm;INTERNET) .. この法律は,価格体系を定め,電力の規制価格と発電,送電,配電のコスト とのマージンにより企業が一定の収益を確保できるようになっており,その 後電力部門が発展するうえで重要な基礎となった。.

(17)   .  電力価格はが1 9 8 0年に定めたシステムにもとづいている。  1 に よる規定は,価格決定の基準,価格規制の監督機関,そして価格計算の手続 きや形式を定めており,電力システムの最適な拡大のための電力供給の限界 費用と発電能力開発計画を根拠としている。法規では2メガワットを基準に 小規模需要家と大規模需要家を区別し,小規模需要家には規制価格,大規模 需要家には自由価格を適用している。大規模需要家に自由価格を適用するの は,彼らには自社発電所を建設するという選択肢があり,また発電企業にた いしても交渉力を有しているからである。一方小規模需要家にたいしては,  を通じて規制価格によって供給することが義務づけられている。 の 35%が自由価格で売られており,公定価格は自由価格から1 0%以上乖離する ことは認められていない。  法律では,発電・送電部門と配電部門が分離していることを前提としてい るため,配電企業の顧客にたいする価格の規制は2段階に分かれている。ま ず,配電会社がエネルギーを購入する高圧分岐点における電位と電力の公定 価格であり,が半年ごとに見直しを行う。配電網の各地点での電圧(キ ロボルト)と電力(キロワット)需要を満たすための将来限界操業費用の加重. 平均値に対応している。このようにして得られた価格は,操業コストに加え, 発電・配電事業への設備投資のための自己資本となる1 0%の剰余を生むよう 設計されている。一方,配電価格とは,によって4年ごとに決められる。 価格は,新規投資の年1 0%の利益率と配電企業の投資,操業,設備維持コス トをもとに計算される。人口密度が高い都市,中程度の都市,そして人口密 度の低い農村の3区域の消費密度に対応している。  チリの電力価格制度で,近年電力事業民営化が実施された他のラテンアメ リカ諸国と異なるのは,発電,配電,送電事業の垂直統合を認めていること である。これは,サービスの質と供給のレベルを管理し,生産性と効率性の 上昇のメリットを消費者に移転することを困難にしている。企業側は消費者 側には利用可能でない内部情報,移転価格を調整することで高い利益をあげ ることができる。.

(18)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   .  チリの民営化された電力企業の特徴は,その経営権が1 9 80年代軍政期に実 施された民営化プログラムの政策担当者に移転していることである。 「大衆資 本主義」の名のもとに実施された,公務員および国営企業職員にたいする株 式購入の優遇措置により,投資グループを形成して,民営化後も旧経営陣は 継続性を確保している。  民営化後の各企業は,積極的に関連事業に進出し,まもなく発電,配電, 送電の各事業に進出した。また,エンジニア,建設,情報処理,電力関連機 材の各分野にも積極的に投資している。さらに,アルゼンチン,ペルー,ブ ラジル,コロンビア,メキシコなど周辺のラテンアメリカ諸国へも進出して いる。しかし,急速な設備投資と企業の拡張による資産の増加は,一方でそ れをファイナンスする負債・資本の規模および構成を大きく変化させること となった。以下では,電力企業大手であるエンデサ社とヘネル社の設備投資 とそのファイナンスに注目して分析を行う。.  2. エンデサ社のケース.  エンデサ社は,194 3年に産業振興公社( )下の株式会社として発電,送 電,配電事業を行うことを目的に設立された。その後4 2年間国営企業として チリ最大の企業として成長し,電気事業の基礎を形成した。  1 98 0年代の半ば,軍事政権による民営化政策により配電事業が分離され, 年金基金や一般投資家が経営に参加する道をひらいた。株式公開は1 9 87年に 開始され,19 89年に完全に所有が民間に移転している。これにともない大幅 な組織変更があり,エンデサ社はいくつかの子会社を有する持ち株会社へと 変貌した。  1 99 2年からは国際化を開始し,アルゼンチンのコスタネラ発電所,1 9 9 3年 9 9 5年にはペルーの   社, にチョコン水力発電所を買収した(表4)。1 1996年にはコロンビアのベタニア水力発電所と,つづく1 9 97年にはスペイン  のエンデサ・エスパーニャ社(         以下社と略)と組んでコロン.

(19)    表4 エンデサ社の海外進出 年. 社名. 進出国. 投資額 資本参加率 発電能力 (MW) (100万ドル) (%). 1992 コスタネラ発電所. アルゼンチン. 46. 24. 1992 Edesur. アルゼンチン. 56. 6. ―. 1993 チョコン水力発電所. アルゼンチン. 123. 37. 1,320. 1994 ブエノスアイレス火力発電所 アルゼンチン. ―. 24. 220. 204. 26. 689. 1,260. 1995 Edegel. ペルー. 1996 ベタニア水力発電所. コロンビア. 226.27. 75. 510. 1997 Emgesa. コロンビア. 809.8. 22. 2,495. 715.2. 92. 658. 1997 カショエイリーニャ・ドゥラ ブラジル ーダ発電所 (出所) エンデサ社年報(各年),Moguillansky[1999] 。. ビアの   社を買収した。また同年にはブラジルのカショエイリーニャ・ ドゥラーダ発電所を購入した。  現在,エンデサ社の株式はチリ,およびニューヨークの市場で取引され, 海外5カ国での発電量は8 31 2に達する国際企業へと成長している。また, その事業領域は発電だけではなく,天然ガス輸送,インフラ建設エンジニア リングと拡大している。  1 99 0年代のエンデサ社のとくに海外への進出は,工場や用地など固定資産 の取得を通じて資産額を飛躍的に増加させている(図6)。コロンビアとブラ ジルへの大規模な進出を実施した1 99 8年は,資産が1 73 %,固定資産は182 % 増加している(図6)。エンデサ社は投資資金のほとんどを株式の発行ではな く,長期負債によって調達しているという特徴があるが,とくに1 99 7年から 199 9年にかけての負債の増加は,ほとんどが海外市場において1 0年から3 0年 という長期の債券発行によって調達されている。また,注目されるのはエン デサ社の経営権をスペインの社が握った20 0 0年の変化である。この年に 0 0%公開売却を決定し,カナダ は子会社である全国送電会社(       )の1 のケベック国際水力発電会社へ所有権を渡した。この結果資産規模は減少し, 同時に長期負債も減少に転じている。.

(20)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    図6 エンデサ社資産の推移(1997∼2000年) (2000年実質値) (10億ペソ) 7,000 資産 6,000 5,000 固定資産 4,000 長期負債. 3,000 2,000. 資本. 1,000 0. 1997. 1998. 1999. 2000年. (出所) エンデサ社年報(各年)。.  このような財務構成の変化は,表5に示す財務指標の変化に表れている。 99 7年から19 9 9 総資本経常利益率(),株主資本利益率()のいずれも1 年にかけて低下し,20 0 0年には上昇に転じている。これは,1 9 9 7年から利益 が減少しているうえに,資産・資本規模が大きくなっているためである。と くに,利子支払いなどの金融コストが大幅に増加し,非営業収支が700億ペソ の赤字から,172 6億ペソの赤字へと膨らんだことが影響している。資産に占 める自己資本の割合は1 9 9 7年で2 87 %と低いが,投資を拡張した1 9 9 8年以降 よりいっそう低下し,債務への依存体質が生まれていることがわかる。  19 99年4月13日に,それまでエンデサ社の株式の2 5.3%を有し最大株主で あったエネルシス社は,株式所有数の上限を現行の2 6%から6 5%に引き上げ ることを前提に流通株式の公開買付けを行った。4月8日の特別株主総会で これが承認されたため,5月1 1日にサンチャゴ証券取引所における公開買付.

(21)    表5 エンデサ社の財務指標(1997∼99年)(名目値) (単位:10億ペソ) 1997. 1998. 1999. 2000 5,670.0. 4,475.0. 5,249.9. 5,742.0. 流動資産. 291.3. 406.0. 320.0. 301.6. 固定資産. 3,762.6. 4,451.9. 4,949.2. 4,986.0. 421.1. 392.0. 490.8. 382.3 3,143.2. 資産. その他. 2,213.3. 2,715.4. 3,398.2. 流動負債. 197.5. 381.4. 554.7. 542.5. 長期負債. 2,015.8. 2,334.0. 2.843.5. 2,600.7. 負債. 976.2. 1,241.1. 1.209.4. 1,230.2. 1,285.5. 1,293.3. 1,134.4. 1,296.6. 資本金. 911.5. 911.5. 935.2. 979.2. 準備金. 227.1. 224.8. 989.4. 252.5. 内部留保金. 146.9. 157.1. −790.2. 64.9.  当期利益. 122.4. 45.2. −176.7. 108.2. 少数株主持分 資本. 財務分析指標. (%) 1997. 1998. 1999. 2000. 総資本経常利益率(ROA). 2.7. 0.9. −3.1. 株主資本利益率(ROE). 9.5. 3.5. −15.6. 1.9. 28.7. 24.6. 19.8. 22.9. 資産増加率. …. 17.3. 6.8. −5.9. 固定資産増加率. …. 18.2. 10.8. −5.8. 長期負債増加率. …. 15.8. 18.7. −12.6. 資本増加率. …. 0.0. 0.0. 0.0. 自己資本比率. 3.8. (出所) エンデサ社年報(各年)。. けで,流通株の30%を取得した。また,1 4日にはさらにニューヨーク株式市 場において流通株の47 %を取得した。株式所有上限を6 5%に引き上げ たことから,エネルシス社を通じてその親会社であるスペインの社は,エ ンデサ社を過半数支配し経営権を掌握することが可能となった(図7)。  社によるエンデサ社,およびその親会社であるエネルシス社の買収の 経緯は複雑である。エネルシス社は民営化されたチレクトラ・メトロポリ.

(22) AFP各社 26%. ADR 13%. エネルシス社 25%. (注) 1) エネルシス社は,1999年よりエンデサ・エスパーニャ社の子会社。     2) シティーバンクは,ADRの引受け銀行。 (出所) エンデサ社年報,1998年および2000年。. (内訳) 所有企業             所有株式数  所有率(%) Depo´sito Central de Valores(AFPs) 2,247,637,742 27.40  (AFP Provida) 512,290,427 6.25  (AFP Habitat) 413,833,910 5.05  (AFP Cuprum) 395,984,131 4.83  (AFP Santa Marı´a) 262,276,665 3.20  (その他AFP) 663,252,609 8.07 エネルシス社1) 1,609,563,843 19.62 2) シティーバンク(ADR) 1,080,071,730 13.17 マンソ・デ・ベラスコ社 463,916,112 5.66 グアルディア・ビエハ社 107,226,197 1.31 その他 2,693,338,956 32.84. 自然人 10%. その他 26%. 所有比率(買収前,1998年末). エネルシス社 60%. 所有企業           所有株式数  所有率(%) エネルシス社1) 4,919,488,794 59.98 2) シティーバンク(ADR) 783,194,850 9.55 AFP. Habitat 242,888,236 2.96 AFP. Prroteccio´n 187,497,814 2.29 AFP. Cuprum 180,519,703 2.20 AFP. Provida 154,373,515 1.88 AFP. Santa Marı´a 136,316,420 1.66 AFP. Summa Bansander 123,327,638 1.50 その他 1,474,147,610 17.98. ADR 10%. その他 9%. 所有比率(買収後,2000年末) 自然人 8% AFP各社 13%. 図7 エンデサ社の株主構成の変化.  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   .

(23)   . ターナ社の引継ぎ母体として19 8 8年に設立された企業で,翌年には1 0 0%民 間へ移転された。民営化以前に,チレクトラ・メトロポリターナ配電社とい う子会社を設立し,また民営化後はシナプシス,マンソ・デ・ベラスコ不動 9 89年に 産,電子機器販売社( )の3子会社を設立している。また,1 はチレクトラ・メトロポリターナ配電社から,リオ・マイポ電力社を切り離 し,サンチャゴ首都圏の農村部,および近郊都市に配電・売電を行っている。 海外の電力事業にも積極的に参入し,1 9 9 2年のアルゼンチンをはじめとして ペルー,ブラジル,コロンビアへの進出を果たしている。  社とエネルシス社の関係は,1 9 9 7年のブラジル・コロンビアへの進出の 際に交わした戦略的提携に遡る。多額におよぶ投資資金の調達が困難であっ たエネルシス社は,社の資金力を求めて戦略的提携の道を選んだ。これは, 社によるエネルシス社株式の3 2%の購入という合意条項を含んでいた。 さらに,1 999年には社がこの年実施した株式買付けで株式の3 2%を獲得 し,19 97年に購入した株式と合わせて過半数を獲得している。これは,1 4億 500 0万ドルの投資額にのぼる。  社は,内での電力自由化による競争の激化をうけて,海外への拡張戦 略をとったが,言語や制度の面で類似性の強いラテンアメリカはそのター ゲットとなった。エネルシス社を子会社としてからは,ラテンアメリカにお ける電力事業の中核と位置づけ,同社を通して投資を行っている( [19 99] )。社によるエンデサ社の支配もやはりエネルシス社を通じて行わ. れ,19 99年に所有していた2 5%の株式に加えて新たに3 5%を購入して合わせ て6 0%の株式を獲得し,過半数支配を行っている。.  3. ヘネル社のケース.  ヘネル社の起源は1 9 2 1年に設立され1 9 7 0年に国有化されたチリ電力会社  9 8 1 (           .  .

(24). .       )まで遡ることができる。まず,1. 年にはチリ電力会社は一つの親会社と三つの子会社に分離され,ヘネル社の.

(25)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   . 前身となるチレクトラ・ヘネラシオン社は,その子会社の一つである。おも に発電業務を行い,翌年には商業ベースで事業を展開するようになった。  民間への移転は,19 82年から徐々に政府保有株式が民間に売却されるかた ちで実施された。19 8 8年には,当時政府企業を所有していた  から100% の民間移転を完了した。この民営化の過程では,後にヘネル社の社長に就任 するブルーノ・フィリッピが指揮を執り,投資家としてはが重要な役割 を果たしている。は,安定した投資先として電力会社の民営化に積極的 9 8 9年の株式総会で,会社名をチルヘネル株式会 に関与した。民営化後の1 社と変更した。当時,5 7 9メガワットの発電能力で,発電所はサンチャゴ首都 圏と第5州のみであった。それから, 8年後の1 9 98年3月には,名前をヘネル と改名した。積極的な国際化を果たし,チリを意味する   がそぐわなく なったからである。  ヘネル社の主力事業は発電である。エンデサ社に次ぐチリで2位の発電能 力をほこり,火力発電では首位にたっている。チリの第3州から第1 0州まで, 人口の90%を所轄する中央送電網( )へは,水力,石炭発電により電力を 供給している。また,関連会社のエレクトリカ・サンティアゴ社はに よって,エレクトリカ・グアコルダ社は2基の石炭発電で,そして,エネル ヒア・ベルデ社は2基のコージェネレーション・プラントで発電し供給して いる。さらに,大北部送電網( )へは関連会社のノルヘネル社とテルモ アンデス社が電力を供給している。前者は,トコピジャ市に2基の火力発電 機を有し,後者はアルゼンチンのサルタ市で天然ガスを用いて発電し,これ を関連会社のインテルアンデス社の送電線でチリに送電している。同時に, ヘネル・グループは多くの子会社を通じて,送電,蒸気エネルギー供給,石 炭の探鉱と採掘,天然ガスの採掘と輸送,港湾サービスの提供,上下水道事 業なども行っている。国内発電量第2位のヘネル社はエンデサ社と同様, 1992年に     .    

(26)   をはじめとしてアルゼンチンに進出した。その 後もアルゼンチンへの投資は続いたが,1 9 9 6年にはコロンビアの   社, 1 997年にはペルーの  社,そして1 9 9 9年にはドミニカ共和国の   社.

(27)    表6 ヘネル社の海外進出 年. 社名. 進出国. 投資額 資本参加率 発電能力 (100万ドル) (%) (MW). 1992 Central Puerto. アルゼンチン. 61.37. 31.0. 1,009. 1993 Hidroele´ctrica Piedra de Águila. アルゼンチン. 89.21. 15.8. 1,400. 1993 Central Neuque´n. アルゼンチン. 4.50. 15.0. 370. 1996 Chivor. コロンビア. 643.70. 99.9. 1,000. 1997 Projecto Pontal do Sul. ブラジル. 600.70. 51.0. 700. 1997 Projecto Lageado. ブラジル. 1,000.00. 25.0. 1,000. 1997 Egenor1). ペルー. 373.55. 20.4. 421. 1999 Itabo. ドミニカ共和国. 103.30. 50.0. 586. (注) 1)Egenor 社は,1999年に,米国国籍の Duke Energy に売却。 ~o) (出所) Gener, Memoria anual(cada an , Moguillansky[1999]より作成。. への資本参加を果たしている(表6)。  図8にはヘネル社の資産の推移を示している。1 996年からは資産規模が拡 大しているのが観察されるが,年平均で2 7%の増加率に達する。またそのほ とんどは,流動資産ではなく国内の設備や土地,そして海外での投資である。 2720億ペソを要した1 9 9 6年のコロンビアの   発電所買収だけでも,企業 の資産規模を43%拡大させている。  企業規模の拡大は,負債および資本の構成を大きく変える結果となった。 199 7年に一度21 00億ドルの増資を行い資本増強を図ったが,それ以外のほと んどは銀行からの長期融資や長期債の発行で資金調達している。また,1 9 99 年は長期の負債が困難となり,短期の銀行融資や手形などによるファイナン スへの依存が増加している。  ヘネル社の財務諸表をみると,財務の悪化が如実に表れている。表7には, 1994年から199 9年までのいくつかの財務指標があげられている。そこに示さ れているように,ヘネル社の収益性を示すやが19 9 8年から急速に低 下している。とくに,大幅な資産の増加のあった1 996年以後,1 9 9 7年を除い て収益は低下しているのにたいして長期負債は大幅に増加し,それが債務依 存を引き上げて経営を圧迫していることが明らかである。企業の健全性をみ.

(28)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    図8 ヘネル社資産の推移(1994∼99年) (10億ペソ) 2,500. 2,000. 資産 1,500 名 目 値. 固定資産. 1,000 資本. 500 長期負債. 0 1994. 1995. 1996. 1997. 1998. 1999 年. (出所) ヘネル社年報(各年)。. る自己資本比率も50%をきり, 1 9 9 9年には, 4 05 %まで低下している。このこ とは,格付機関の評価にも現れ,海外市場においてヘネル社が起債を行う際 の評価は,スタンダード・アンド・プアーズ社による評価が−から+ へ,ムーディー社は,  1から  2へと,それぞれ引き下げられている。  以上のような企業業績の悪化をうけて,最大株主のコペック社はさらなる 増資に反対し,アメリカの電力会社である  . 

(29) への売却を支持 した。社は全世界に展開する電力企業で,ラテンアメリカにもアルゼン チン,ブラジル,パナマ,ドミニカ共和国に1万4 8 3の発電力を有する.

(30)    表7 ヘネル社の財務指標(1995∼99年) (名目値) (単位:10億ペソ) 1995. 1996. 1997. 1998. 1999 1,960.6. 638.8. 1,039.1. 1,375.8. 1,642.5. 流動資産. 53.6. 53.5. 244.9. 291.4. 200.3. 固定資産. 452.8. 802.5. 853.1. 1,000.1. 1,388.7. その他. 132.4. 183.1. 277.9. 351.0. 317.6. 資産. 198.4. 558.3. 624.4. 828.6. 1,068.1. 流動負債. 41.9. 75.1. 183.7. 140.2. 242.0. 長期負債. 156.5. 483.2. 440.6. 688.4. 826.0. 少数株主持分. 12.7. 13.8. 15.6. 37.5. 98.2. 427.7. 467.0. 735.9. 776.4. 794.4. 資本金. 289.4. 308.5. 541.8. 565.1. 584.3. 準備金. 92.1. 110.4. 116.6. 120.7. 124.0. 内部留保金. 46.3. 48.1. 77.5. 90.6. 86.1.  当期利益. 46.1. 41.9. 71.3. 43.7. 6.4. 負債. 資本. 財務分析指標. (%) 1995. 総資本経常利益率(ROA). 1996. 1997. 1998. 1999. 7.20. 4.00. 5.18. 2.29. 0.33. 10.80. 9.00. 9.69. 5.63. 0.81. 自己資本比率. 67.0. 44.9. 53.5. 47.3. 40.5. 流動資産/流動負債. 128. 71. 133. 208. 83. 株主資本利益率(ROE). 資産増加率. 4.2. 52.6. 24.6. 14.5. 16.3. 28.6. 66.3. 0.0. 12.4. 35.3. 負債増加率. −1.0. 164.0. 5.2. 27.2. 25.6. 資本増加率. 5.4. 2.4. 48.3. 1.2. −0.3. 固定資産増加率. 格付け 1995. 1996. 1997. 1998. 1999. スタンダード&プアーズ社. …. …. A−. BBB+. BBB+. ムーディーズ社. …. …. Baa1. Baa1. Baa2. ~o)より作成。 (出所) Gener, Memoria anual(cada an.

(31)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   . グローバル企業である。社が提示してきた条件は,ヘネル社の80%の株 式(発行済の100%,およびチリ国内の61 57%)を公開買付けによって買い 付ける,というものであった。その額は1 3億ドルにのぼる。  コペック社が企業提携ではなく買収案を支持したのは,チリを代表する企 業グループであるアンヘリーニ( )家の意向が強く働いている。同社   は燃料,および林業,製紙業を主とするコングロマリットであるが,電力部 門への参入は,主力の林業・製紙業が国際価格の変動による企業収益の変動 が大きいため,安定した収益を確保することを目的としていたとされる。コ ペック社は,199 6年からヘネル社に資本参加し,1 99 7年には20%の株を所有 しているが,近年経営方針をめぐってヘネル社経営陣との意見の食い違いが 明らかとなっていた。チリにおいては,電力企業の成長はすでに終わった と判断し,撤退を表明していた。  また株式の3分の1を所有するも,アンヘリーニの推す売却案の方の 支持にまわった。は,電力部門の民営化をファイナンスの側面から支え, ブルーノ・フィリッピ( )氏の経営方針を支持してきたが,株式  . の収益率という観点からは,電力株は今後の価格上昇は見込めず,高額での 株の売却益を選択している。  ヘネル社は,定款で株式所有率を最大2 0%と定めている。このため,買収 にはまず定款の変更が必要になる。経営陣の反発にもかかわらず,これは 2 000年12月12日に最大株主であるコペック社の提議が通り,株式所有率上限 の撤廃が実現している。こうして買収の準備が整い,は1 2月28日の株式 公開買付けでサンチャゴ株式市場に流通するヘネル社の615 %を買い取り, 翌日にはニューヨーク市場で流通する同社のを1 0 0%買い取り,これに より同社の865 %を所有し実質的に子会社化した(図9参照)。.

(32) AFP各社 33.4%. ADR 16.2%. 1,110,830,547 911,439,972 510,840,939 392,427,565 379,577,943 289,750,887 258,413,077 229,904,174 55,726,024 52,293,620 40,312,469 34,087,689 1,364,957,850. 19.7 16.2 9.1 7.0 6.7 5.1 4.6 4.1 1.0 0.9 0.7 0.6 24.2. (注) 1) Copecの子会社。     2 )ADR引受け銀行。     3) AES Corporation の子会社。 (出所) Gener, Memoria anual 1999, およびEstrategia紙。. Servicios de Combustibles Ltd.1) CitiBank N.A.2) AFP Provida S.A. AFP Habitat S.A. AFP Cuprum S.A. Valores Security S.A. AFP Santa Marı´a S.A. AFP Summa Bansander S.A. AFP Planvital S.A. AFP Magister S.A. Larraı´n Vial S.A. Citicorp Chile S.A. その他. (内訳) 所有企業           所有株式数 所有率(%). その他 30.6%. Copec 19.7%. 所有比率(買収前,1999年末) その他 4.3%. AES Corporation 95.7%. 所有比率(買収後,2001年1月). Inversiones Cachagua Limitada3) 3,466,600,000 Mercury Cayman Co. III Ltd.3) 1,960,246,404 Citibank N.A. 27,093,172 Bice 14,128,908 Larraı´n Vial S.A. 13,998,481 その他 190,673,145. 61.1 34.6 0.5 0.3 0.3 3.4. 所有企業           所有株式数 所有率(%). 図9 ヘネル社の株主構成の変化.   .

(33)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   .   第3節 製紙・林業の事例  1. 製紙・林業の産業構造.  製紙・林業は,チリのの3%を占めるにすぎないが,年7%という高 い成長率をほこる産業である。同時に輸出財としても著しい伸びを示してお り,その輸出額は199 0年に全輸出額の10%にすぎなかったが,19 94年には 1 4%にまで増加している。おもな輸出先は日本が255 %で圧倒的に大きく, ついで米国(11 ,韓国(11 5%は国の中 3%) 3%)が続いている。原材料の8 南部の植林で,ラディアタ松,ユーカリなどの針葉樹を中心としている。  チリが製紙・林業で競争優位を有するのは,そういった植林の成長が速い ためである。チリでは,パルプ用の木材の成長に2 0∼2 2年しか必要としない のにたいし,スイスでは6 0年もかかる。とくに短繊維種のパルプの原料とな るユーカリではチリは8∼9年で生育するのにたいし,北ヨーロッパでは2 0 年以上必要とされる( 237])。 [1997   政府は林業にたいして19 3 0年代から補助政策を実施してきた。最初に施 行されたのが「森林法」 ( )で,これは植林投資への課税を免除     .  することで,とくにラディアタ松の植林を促進することを目的としたもので ある。また,政府機関の  によって,チリの林業発展のために米国から専 門家を招聘し,また世界銀行から融資を受けるなどのセクター振興政策を 行っている。同時に,直接会社の設立にも乗り出しており,民間企業にたい し融資を実施するだけではなく,1 9 6 0年代にはピルピルコ林業やラミンサ社 やマシサ社等の企業への資本参加を行っている。  このように,林・製紙業にたいして政府の補助は増してきたが,1 9 73年の 軍事クーデターにより状況は一変する。これまで,政府主導の森林開発は行 われてきたが,民間企業による植林事業は進んでいなかった。それは,不安 定な政治経済情勢を背景とした度重なる政策の変更や,伐採前の若木の取引.

(34)   . 市場がないために投資の回収期間が2 0年以上と長いなど,投資リスクが民間 企業にとっては大きすぎたためである。最初の政策の変更は民間による森林 開発を目的としたものであり,1 9 7 4年の7  0 1によって植林費用の最大7 5% までの助成と,林業企業にたいし不動産税と法人税の減免を定めた。これに より,民間企業による植林面積が飛躍的に拡大している。  この優遇措置は19 9 6年1 2月に失効した。しかし,小規模企業による植林事 業を助成するため,1 9 9 8年に新たな1  9 5 6 1が発布された。これは,1 9 96年 からの15年間,小地主による森林地または痩せた土地への植林事業にたいし て,植林コストの75∼9 0%の助成金が一度にかぎり支給されるというもので ある。また,原生林を含んだ土地で森林地の認定を受け植林助成金を受けて いる場合は,その土地にかかる不動産税が免除され,さらに相続・指定・贈 与税も免除されるというものである。  現在の林業・製紙業の特徴は極端な寡占化が進んでいることである。パル プ生産では業界1位のアラウコ社が529 %,2位の社が471 %と2社が 完全に市場を支配している。また,製紙では,社が1社で市場の7 26 % をおさえている。一方植林では,アラウコ社が2 75 %,社が2 04 %と, 2社で約半分のシェアを握っている。  こういった林業・製紙業の成長の一方で,今後の成長の懸念要因として2 点指摘されている。一つは,おもにチリ中南部に居住する少数民族のアラウ 9 9 3年設立の先住民開発公社( コ族の土地所有問題である。1 )に より先住民にたいし土地を配分することが決められた。しかし,土地の値段 が高騰するなどで配分が進まないためアラウコ族を中心に,植林地への放火 や占拠,また林業施設の破壊などが行われるようになっている。これにたい し,民間企業は政府に取り締まるよう圧力をかけているが,このような運動 は元々の土地所有権に根ざしているために解決に時間がかかるとみられてい る。  もう一つは環境主義者による原生林伐採の反対運動である。チリの第1 0州 以南ではレンガなど良質の原生木が存在し,木材生産の5 7%は原生木を用い.

(35)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化   . ている。これにたいし,環境保護の観点から先進国や国内のをはじめと する団体が,大規模な伐採反対運動を行っている。政府も,対カナダとの自 由貿易協定にみられるように外交上の圧力もあり,環境保護にたいして積極 的な姿勢を示している。こうした動きは,民間企業の林業への投資のリス クを高める結果になっている。  チリ国内のこうした事情もあり,林業・製紙企業は周辺国に生産拠点を拡 張している。とくに隣国のアルゼンチンは同じような自然条件を有し,また 紙製品需要の約半分を輸入でまかなっているため,チリ企業の進出先として はもっとも選好されている。アラウコ社による1 9 97年のアルト・パナマ州の 土地15万200 0ヘクタールの買収をはじめ,社,マシサ(    )社な どが,4 2万ヘクタールの土地を所有している。  以下では,林業・製紙業における代表的企業社を事例として一次産 品加工産業における企業行動を分析する。とくにどのように海外展開を図り, それが財務面および所有の面でどのように影響したかに焦点を当てる。.  2. 社の事例 ―― 一次産品加工産業の企業行動  チリを代表する企業グループの海外進出の例として社をとりあげる。        . .  

(36)    .     .   は,  (紙・厚 紙 製 造 会. 9 2 0年設立と長い歴史を有する, 社)の略であるが,この林業・製紙会社は1 売上額がチリで第10位の企業である。チリを代表する財閥の一つであるマッ  . という持ち株会社を中心 テ(   )グループが母体となり, とする,かつては金融・保険,鉱業なども傘下に有する多角化の進んだ財閥 であった。近年では,林業に経営を集中することで,競争力を高めている企 業である。チリには,マッテグループのほかにも,アンヘリーニやルクシッ クなど伝統的な大財閥が存在しているが,経営資源の得意分野への集中は今 日の世界規模での競争環境のもとにあっては,重要な生き残り戦略といえる。  はホールディングが親会社となっている企業で,セルロース,.

(37)   . 製紙,植林,ティッシュ事業などで,それぞれ株式会社化されている。林業・ パルプ産業は規模の経済性の大きい装置産業といえるが,そのため,チリの 市場が狭隘であることは,早くから成長の制約要因となっていた。1 9 53年に 世界銀行からの融資を受けて工場をさらに拡張し,1 95 8年には,アルゼンチ ン,ボリビア,エクアドル,ペルー,パラグアイ,ウルグアイにたいして新 聞用紙の輸出を始めている。  社の海外進出もやはり19 9 0年代の後半からである。アルゼンチンで は,19 95年にブエノスアイレスの北1 00キロメートルのサラテに, 8 00 0万ドル でティッシュ工場を設立した。さらに1 9 9 6年にはパペレラ・デル・プラタ社 を買収,これによりアルゼンチンのティッシュ市場の5 0%を獲得した。また, セルロース工場の設立を視野に入れて,コリエンテ地方に4万ヘクタールの 植林を行っている(表8)。 29 0万ド  ウルグアイでは,1 9 9 4年8月,ウルグアイ製紙工業(   )社を1 ルで購入し,96%の資本参加を行っている。またペルーでも1 5 0 0万ドルの投 資を実施し,ティッシュとセメント袋の製造プラントを始動している。これ らのほかにも,製紙会社として  をアルゼンチンとパラグアイ,ペルーに, また販売会社をヨーロッパとアジアに有している。その結果,現在は5 5カ国 にセルロース,紙製品,材木,その他を輸出する大企業に成長している。  このの強みは,まず,主力分野への集中があげられる。林業・製紙 業といった競争優位のある部門に経営資源を集中させている。その反面, これまで所有していたカレナ発電所,および送電所を売却するなど多角化戦 略の修正がみてとれる。   社の資産が大幅に増加したのは1 9 9 7年である(図10)。この年, 社は子会社のインベルシオネス・ティッシュ社を通じてシェル社とシティー バンクが所有するサンタフェ木材工業社の株式8 0%を購入し,同社を完全子 会社化している。サンタフェ木材工業社は未公開企業でチリのナシミエント に工場を有し,おもに輸出により年間約1億5 0 00万ドルの売上げをほこる企 業である。.

(38)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    表8 CMPC社の海外進出 社名. 進出国. 年. 資本 資本金 利益 参加率 (1,000ペソ) (1,000ペソ) (%). LA PAPELERA DEL PLATA. アルゼンチン 1929. IPUSA. ウルグアイ. 1937. 4.446,388. PLANTACIONES      MESOPOTAMICAS. アルゼンチン 1945. 573,854. FORESTADORA CAABI PORA. アルゼンチン 1975. 1,755,486. 305,002 100.0. AGROPECUARIA. アルゼンチン 1984. 825,743. −26,663 100.0. CMPC INVESTMENTS. イギリス. 1991. 35,878,228. −926,302 100.0. CMPC EUROPA. イギリス. 1991. 356,466. 31,907 100.0. CMPC ASIA. 日本. 1991. 288,070. 24,134 100.0. CMPC INVERSIONES DE ARGENTINA. アルゼンチン 1992. 58,021,695. −6,769,397 100.0. PROJETCOTS AUSTRALES. アルゼンチン 1993. 18,897,897. −956,511 100.0. BASERRI. アルゼンチン 1993. 351,701. −5,990 100.0. 1995. 5.363,379. −1,462,446 100.0. NASCHEL. アルゼンチン 1996. 1,657,953.  140,787 100.0. FABI BOLSAS INDUSTRIALES. アルゼンチン 1996. 7,374,178. −1,105,670 100.0. FABI. ペルー. 1996. 5,409,557.  67,677 100.0. FORSAC. ペルー. 1996. 122,399.  424,778 100.0. INVERSIONES CMPC CAYMAN. ケイマン. 1997 164,374,236 −93,283,733 100.0. CMPC CARTONES DO BRASIL. ブラジル. 1997. 16,382.  4,976 100.0. PAPELERA DEL RIMAQC. ペルー. 1997. 1,131,696.  737,239 100.0. FORSAC ARGENTINA. アルゼンチン 1998. 27,457.  21,592 100.0. TISSUE CAYMAN. ケイマン. 1999. 13,318,787. −216,270 100.0. PROPA CAYMAN. ケイマン. 1999. 5,519,490. −338,788 100.0. PRODUCTOS TISSUE DEL PERU ペルー. 53,482,791 −10,563,235 100.0 133,144. 99.6. −9,700 100.0. (出所) CMPC社年報(各年)。.  また同年,インベルシオネス・社はシンプソン・ペーパー社と国際 34  8%の株式を 金融公社( )がセルロサ・パシフィコ社に所有していた5 買い取った。その結果,これまで社が完全子会社のフォレスタル・レ ナイコ社を通じて所有していた465  2%の株式と合わせて,セルロサ・パシ フィコ社を完全子会社とした。興味深いのは,この買収にあたり,ケイマン に有するインベルシオネスケイマン社を通じていることである。同社.

(39)    図10 CMPC社資産の推移(1995∼2000年) (2000年実質値) (10億ペソ) 2,500 資産 2,000. 固定資産 1,500. 1,000. 長期負債. 500. 資本 0 1995. 1996. 1997. 1998. 1999. 2000年. (出所) CMPC社年報(各年)。. は投資にかかわる金融業務を行うためにタックス・ヘブンのケイマン島に 19 97年に設立されたものである。の1 0 0%子会社で,資本金は16 44億 ドルに達する。  このような企業規模の拡大,そして海外進出は財務面での変化もともなっ 9 9 7年に318 %と大幅に増加し,また,工場など固定 ている(表9)。資産は1 資産は50%以上の増加である。そのファイナンスは,増資はまったく行われ ずおもに負債と内部留保の積み増しによってなされている。大規模な投資が.

(40)  第4章 チリ:電力・一次産品加工業における域内企業の財務構造変化    表9 CMPC社の財務指標(1995∼2000年) (名目値) (単位:10億ペソ) 1995. 1996. 1997. 1998. 1999. 2000 2,263.0. 1,265.5. 1,420.7. 1,989.8. 1,987.1. 2,066.9. 流動資産. 332.6. 293.0. 408.9. 315.7. 391.6. 460.5. 固定資産. 818.3. 909.3. 1,468.6. 1,561.1. 1,574.7. 1,690.5. その他. 114.6. 218.3. 112.4. 110.3. 100.7. 112.0. 資産. 256.6. 332.6. 807.1. 646.7. 638.5. 660.6. 流動負債. 165.4. 180.4. 582.0. 181.7. 177.3. 255.5. 長期負債. 91.2. 152.2. 225.1. 465.0. 461.2. 405.1. 少数株主持分. 51.6. 56.6. 61.5. 47.0. 48.7. 54.5. 957.3. 1,031.5. 1,121.2. 1,293.5. 1,379.7. 1,547.8. 負債. 資本 資本金. 70.9. 75.6. 80.3. 83.8. 86.0. 90.0. 準備金. 346.0. 361.9. 395.8. 428.9. 455.2. 508.5. 内部留保金. 540.4. 593.9. 645.0. 780.8. 838.6. 949.3.  当期利益. 78.5. 42.7. 47.3. 159.7. 42.6. 118.0. 財務分析指標. (%) 1995. 1996. 1997. 1998. 1999. 2000. 総資本経常利益率(ROA). 9.8. 5.0. 2.4. 12.2. 3.6. 株主資本利益率(ROE). 8.2. 4.1. 2.4. 12.3. 3.1. 7.6. 自己資本比率. 59.6. 61.0. 50.3. 60.6. 63.8. 68.4. 資産増加率. 4.6. 9.2. 11.1. 5.3. 31.8. −4.3. 1.4. 固定資産増加率. 5.7. 4.3. 51.9. 1.9. −1.7. 2.5. 長期負債増加率. 114.1. 56.5. 39.2. 98.0. −3.3. −1.61. 0.0. 0.0. 0.0. 0.0. 0.0. 0.0. 資本増加率. (出所) CMPC 社年報(各年)より作成。. 実施された199 7年は銀行など金融機関からの短期融資で3 5 00億ペソ調達し, 翌1 998年には長期融資への借換えと長期債の発行による長期資金へのシフト を行っている。しかし,前出の電力2社と比較して社は,資産増加後 の財務管理で際立った違いをみせている。まず特筆されるのが内部留保の大 きさである。それぞれ海外進出を始める前年で比較すると,社の内部 留保金は資産の4 2%であるのにたいし,エンデサ社・ヘネル社はそれぞれ.

(41) グループ企業 56%. (出所) CMPC社年報,1998年および2000年。. 111,059,696  4,423,000  3,523,377  3,309,907  3,245,611  2,579,588  2,124,992  (130,266,171). 55.5 2.2 1.8 1.7 1.6 1.3 1.1 34.9. 111,049,696 7,784,997 4,477,294 4,252,718 3,309,907 3,124,925 2,634,530 63,365,933. 55.5 3.9 2.2 2.1 1.7 1.6 1.3 31.7. グループ企業 AFP Provida AFP Habitat AFP Cuprum サンタマリア建設 AFP Santa Maria AFP Summa Bansander その他. AFP各社 11%. 所有企業       所有株式数    所有率(%). グループ企業 55%. グループ企業 AFP Cuprum AFP Provida サンタマリア建設 AFP Habitat AFP Santa Maria マイポ・カナル その他. AFP各社 7%. その他 33%. 所有比率(2000年末). (内訳) 所有企業       所有株式数    所有率(%). その他 38%. 所有比率(1996年末). 図11 CMPC社の株主構成の変化.   .

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