Title
巻頭言 平和憲法は神様からの贈り物:改憲論議の中で思
うこと
Author(s)
中原, 俊明
Citation
沖縄キリスト教短期大学紀要 = JOURNAL of Okinawa
Christian Junior College(41): 1-2
Issue Date
2013-02-28
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/11282
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沖縄キリスト教短期大学紀要第 4 号(203)巻 頭 言 *
平和憲法は神様からの贈り物:改憲論議の中で思うこと
沖縄キリスト教短期大学
学長
中 原 俊 明 **
, 本学院短大の紀要の巻頭言を書くようにとの作田編集委員長からの光栄なご命令(?)であ る。掲載予定の論文リストを拝見したところ、テーマは宮良長包研究あり、平和への対話あり、 保幼小教育あり、で多岐にわたる実践的、実証的なアプローチによる研究の結実という印象で あり、期待したい。 2, さて、昨年末の自公政権の復活以後、憲法改正論議がにわかに現実味を帯びて来たので、 専門外ながら感ずるところを書いてみたい。本学院の教育の柱の一つが、「平和の実現者」 Peacemaker の育成であることをも踏まえつつ。 去る 月 22 日にはアメリカのオバマ大統領 2 期目の就任演説があったが、その中で、合衆 国憲法の不朽性、独立宣言や建国の理念に言及したほか、永続的な平和のために戦争を繰り返 す必要はない、と述べたあたりが印象深かった。 これとは対照的に、去る 月 28 日に行われた安倍総理の所信表明演説では、憲法への言及 はなく、30 日の衆議院本会議での答弁で、憲法 96 条の改憲発議要件の緩和(3 分の 2 から過 半数へ)に触れて憲法へ挑戦する姿勢が鮮明に出た。これに同調する他党も存在するので、改 憲は現実味を帯びて来たといえる。今や国民には、ほんとにそれいでいいのか、という問いが 投げかけられている。 3, わが国は、5 年戦争(太平洋戦争)で「天に代わって不義を討つ」として「鬼畜英米」等 を相手に戦い、自国でも周辺諸国でも多大な犠牲を出したが、その反省の中から現憲法の誕生 となった。それは、欽定憲法(つまり天皇が制定しトップダウンで国民に与えた)といわれた 明治憲法と違い、国民主権主義、基本的人権尊重主義、絶対平和主義の三原則に立つ憲法とし て国会が制定した。押しつけ論議があるが、これについては批判的に言及したことがある(拙 著『異風な目から:折々の思いと言葉を綴って』37 頁、沖縄タイムス社,2006 年)。今かま びすしい改憲論は、多かれ少なかれ,上記三原則への批判的,否定的スタンスに立つ。 4, 特に平和主義を規定した 9 条への反発は根強い。自民党草案では、自衛隊を国防軍にし、本 格的な軍隊にする意図が明確である。この 9 条に関し、多くの世論調査では改正反対が多数を 占めてきたが、最近は日中間の険しい情勢を自国中心に伝える政府見解、マスコミ,ネット情 報に影響されたのか、多少揺れも見える。ただ世論調査は、いつ、いかに、どのマスコミが実 施したかにより、数字にかなり開きが出るので要注意である。ついでに世界の報道の自由度ラ ンキングで日本は、韓国にも劣る 53 位となっていることも留意に値するだろう(沖縄タイムス、 *Foreword **Toshiaki Nakahara沖縄キリスト教短期大学紀要第 4 号(203)
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3/2//)。 ここで忘れてはならないのは、かねてより国内外で 9 条を高く評価する識者があったことで ある。その中から二人を紹介しよう。第一は、矢内原忠雄である。南原繁に次いで、戦後二代 目の東大総長を務めた無教会派のキリスト者である。彼は,平和憲法こそ日本国民に天から与 えられた道、つまり神からの贈り物として、これを守ることの大事さを説いた(矢内原『政治 と人間』38 頁,東大出版,973 年)。もう一人は、アメリカの故ウイリアム・フルブライト議 員である。上院外交委員長を務めたハト派の知日派で、ビル・クリントン氏が師と仰ぐ政治家 であったが、日本の平和憲法を高く評価した一人である。その自伝の中から,( 和文もあるが ) 原文のまま引用しよう。ぜひとも多くの方々にシェアして頂きたい。I applaud Japan’s U.N. centered, non-militaristic foreign policy and the peace constitution on which it is based. What I would like to see the Japanese do is to provide the knowledge, money, equipment, and personnel appropriate to its status as a great power in contributing to the world peace. I hope to see Japan show the way the United States also should follow to create and maintain peace without using military force.( J. W. Fulbright, Against the Arrogance of Power: My Personal History, pp.22-3, Nihon Keizai Shinbun, Inc. 99)
日本が、平和憲法を守って世界に貢献し、特にアメリカにも軍備によらない平和維持の模範 を示してほしいとのフルブライト議員の言葉は、性急に改憲に傾く政治家や世論に届いてほし いと願わずにはおれない。 なお、末尾ながら、本短大で永年教鞭をとって来られた Ross 先生がご病気からの回復が必 ずしも順調でなく、教壇への復帰が困難なため、今年度末をもって退職されることとなったの は至極残念である。学長就任後一度だけ来訪を受け、お会いする機会があったが、筆談による コミュニケーションによってもその誠実なお人柄と本学を愛するお気持ちが充分に伝わってき た。Ross 先生のこれまでのお働きに対して、衷心より感謝を申し上げるものである。(203/2/4)