• 検索結果がありません。

機械学習解析とイメージングサイトメトリー,これから

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "機械学習解析とイメージングサイトメトリー,これから"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Ⅰ.はじめに 近年の機械学習法の驚くべき進歩と,その強力さは 枚挙に暇がありません1) 。機械学習の目的は,計測に よって得られるデータや人の活動によって得られる情 報を用いて,観察データの特性を自動的に抽出し,機 械が人間のような知的情報処理を獲得することです。 機械学習は,確率・統計,情報科学,数理最適化,計 算神経科学,統計物理学など,多くの分野に関わって います。そして,自然言語処理,画像処理,情報推薦 受付日:令和 2 年 5 月 19 日 受理日:令和 2 年 11 月 9 日 1) 東京大学先端科学技術研究センター 2) JST,PRESTO 3) シンクサイト株式会社 4) 東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻 5) 理化学研究所 革新知能統合研究センター 6) 東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻

機械学習解析とイメージングサイトメトリー,これから

太田 禎生

1, 2, 3)

,佐藤 一誠

3, 4, 5)

,堀  遼一

2, 6)

Imaging fl ow cytometry and machine learning-based analysis

Sadao Ota 1, 2, 3), Issei Sato 3, 4, 5), Ryoichi Horisaki 2, 6)

1)

Research Center for Advanced Science and Technology, University of Tokyo, 4-6-1 Komaba, Meguro-ku, Tokyo 153-8904, Japan.

2)

JST, PRESTO, 4-1-8 Honcho, Kawaguchi-shi, Saitama 332-0012, Japan.

3)

Thinkcyte Inc., 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8654, Japan.

4)

Department of Computer Science, Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8654, Japan.

5)

RIKEN AIP, Nihonbashi 1-chome Mitsui Building, 15th fl oor, 1-4-1 Nihonbashi, Chuo-ku, Tokyo, 103-0027, Japan.

6)

Department of Information Physics and Computing, Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo, 7-3-1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8656, Japan.

Summary

Machine learning-based analysis has been recently applied to image data acquired in imaging flow cytometry technologies including both analyzers and sorters. Compared to analysis of conventional microscopy images, the largest difference appears when we have to complete the analysis within a limited time scale for accomplishing real-time analysis and subsequent cell sorting. In this article, we propose to categorize the analysis approaches into two groups based on the type of data modality, raw imaging signals or features explicitly extracted from images, being analyzed by a trained model. We hope that this review helps readers understand what kind of uniqueness, differences, and opportunities shows up depending on the way of implementing machine learning-based analysis in the recently developed “imaging” cell sorters.

Key words : イメージングフローサイトメトリー;イメージングセルソーター;機械学習;

マイクロ流体工学

総 説

(2)

システム,音声認識,バイオインフォマティクス,医 用画像分析,細胞画像情報の分析など,幅広い分野に おいて威力を発揮しています。 一方のイメージングフローサイトメトリー (IFC) は, 流路に細胞を高速に流して顕微画像情報を取得・解析 する技術の総称であり,光学顕微鏡の空間分解能と フローサイトメトリーの高速計測能を併せ持っていま す2, 3) 。1979 年に IFC の実験的実証がなされた後4, 5) , David Basiji氏が率いる Amnis 社によって開発された 実用的な商用 IFC システムが,生物学分野および臨床 医学分野における IFC 応用研究を後押ししてきまし た。たとえば,IFC を利用した細胞周期,病状,およ び細胞分裂の解析や,蛍光分子局在に基づく,DNA 損傷および修復プロセスに関する研究が行われてき ました6, 7, 8)。臨床分野においては,疾患細胞や癌細 胞,感染性病原体などの疾患細胞を検出するための有 用なツールになることも示されています9, 10) 。一方, Amnis社のシステムが広がったここ数十年の間に,他 の IFC システムのスループットは測定および分析技術 の進歩に応じて継続的に増加し,モダリティも多様化 してきました11, 12, 13)。そして IFC の画像データには, 既存の顕微鏡細胞画像の解析に向けた,機械学習手法 も取り込んだソフトウェア群が,数多く適用されてき ています。 しかし,なぜ IFC なのでしょうか。従来の顕微鏡を 使用して撮影した画像のハイコンテンツ分析と比較す ると,IFC は組織・臓器などにおける高次な細胞構造 情報を扱うのは苦手であり,動的情報を捉えられず, 空間分解能においても制限されます。一方,IFC の大 きな長所は,流路中の位置を制御された状態で,数多 くの単一細胞を迅速に撮影できる点です。 測定と分 析の両方が単純化されるため,バイアスを抑えた大量 画像データセットを簡単に生成でき,例えば機械学習 分析も比較的容易に実装できます。各 IFC 画像が単一 細胞を捉えるため,画像処理における細胞セグメン テーションの必要性が軽減されます。 これらの特性 は,特に血液,唾液,尿サンプルなどの懸濁液中の細 胞にとって有利です。 IFCのもう 1 つの重要な利点は,画像情報の分析に 基づいて細胞を選択的にソートできる事です。目的の 細胞を選択的に集めてくることにより,例えば治療用 途に向けた機能的な細胞の使用,ならびにオミクス解 析を含む様々な分子的な細胞解析と組み合わせられる 事になります。最近になって,高速な画像情報識別セ ルソーターの実用化には,高速な画像情報の計測と 識別の両立の実現が必要です。図 1A に示すように, CCDカメラ画像の分析に基づく細胞の選別のための先 駆的な取り組みは,(私たちの知る限りで) 2000 年代 初頭に始まっていました14, 15, 16) 。それが近年,図 1B と 1Cに示すように,一画素イメージングによって記録 された画像情報のリアルタイム分析の高速化が進み, スループットが大幅に向上しています13, 17, 18)。本稿で は,機械学習による細胞画像分析,そして IFC プラッ トフォーム実装に向けて進む研究開発を紹介します。 Ⅱ.機械学習の方法と,顕微鏡細胞画像分析 私たち人間は,過去の経験から学んだ知識に基づ いて,行動する方法を決定します。実際には,全ての 問題に対する全ての可能な解決方策を考えるとその候 補は多すぎますし,大量の情報があると有用な知識か ら問題を正確に解決することは難しくなります。した がって,与えられた情報を抽象化することで新たな観 測に対する決定を下す必要があります。この能力は 「汎化」 能力と呼ばれています。機械学習は人工知能 の 1 つの分野であり,「汎化」,つまり多数の観測デー タの背景にあるメカニズムを自動的に学習し抽象化す ることで,新たな現象を予測するシステムを開発する ことを目ざすものです。 機械学習の問題は,教師あり学習と教師なし学習の 2つの基本的な問題に分類されます (強化学習と呼ば れる問題もありますがここでは省略します)。教師あ り学習は,x を入力,y を出力として,入力と出力の 集合である訓練データから,入出力関係 y = f(x)を満 たす関数を学習します。教師なし学習は入力のみから 学習し,入力データ集合から,全データに共通する関 数 f と個々のデータに固有の表現 z に分解する方法を 学習します。すなわち,入力 x に対して x=f(z)とな るような 「全データに共通する関数 f」 と 「個々のデー タ x に固有の表現 z」 をデータから自動獲得します. なお深層学習は,多層ニューラルネットワークを使用 する機械学習方法の一つです19) 。 「深層」という表現は, しばしば 100 以上の層からなる,互いに積み重ねられ た人工ニューロンの構造に由来しています。端的に言 えば,深層学習とは,多数の単純な非線形関数を含む 合成関数 y=fL (....f5(f4(f3(f2(f1(x)) ) ) ) ) を大 量の訓練データから取得する手法です。 機械学習アルゴリズムの選択は,問題を具体的に解 決するように設計する必要があります。例えば,IFC の細胞画像分類において,深層学習ニューラルネット が,精度の点でブースティングと呼ばれるアルゴリズ

(3)

ムよりも優れていることが以前に報告されました。し かし,その結果を F1 マクロという指標で評価してみ ると,実はブースティングは深層学習ニューラルネッ トよりも優れている結果になっていることが実験デー タから分かります7) 。深層ニューラルネットがブース ティングより優れている,またはその逆であるという 理論的な理由づけはなく,各タイプの問題に対してど のようなアルゴリズムがより効果的に機能するかを知 ることが必要です。 機械学習を用いた顕微鏡画像細胞解析においては, 画像分類,画像セグメンテーション,オブジェクト追 跡,画像生成と言う,4 つの主な適用がなされてきま した1, 20)。現在は全てのケースが IFC 画像データに適 用できるわけではありませんが,今後の機械学習を用 いた IFC 画像データ解析の方向性を示していると考え られます。 まず画像分類の主な目的は,画像のラベル (カテゴ リなど) を予測することです。例えば,分化の蛍光マー カーを真のラベルとして,幹細胞が分化したかどうか を明視野画像から識別する報告がなされています1, 21)。 また,タンパク質の局在などの蛍光画像の空間パター ンを分類したり,特定したりする用途もあります22, 23) 。 次に,画像セグメンテーションは,画像を意味のある 「部分」に分割することが目的です。例えば,顕微鏡画 像で単一の細胞や,細胞構造を識別します24, 26)。さら に,セグメンテーションされた画像情報を用いて,オ ブジェクト追跡を行うことができます。最後に,訓練 データの特性を表す合成画像を行う,画像生成です。 通常は教師なし学習による深層生成モデルに基づいて おり,例えば細胞と核の蛍光画像ならびに細胞内構造 の位置を予測するモデルが作られています27, 28) 。 Ⅲ.機械学習とイメージングフローサイトメトリー 前述の,急速に進化する機械学習手法群は,IFC 画 図 1 機械学習技術のイメージングフローサイトメトリーへの実装アプローチ (A) 生成した 2 次元・3 次元画像から視認可能な画像特徴情報を抽出し,分析するアプローチ。上:訓練データセットの構築 (画 像データと,視認できる形態学的特徴評価のペア)。下:訓練したモデルによる,生成画像に基づいた,形態学的特徴を反映 するラベルの予測。 (B) イメージング計測信号 (ピクセルアレイ型または1画素検出器などの信号値など) に,直接分類モデルを適用し,状態や分類 などの細胞情報を予測するアプローチ。上:訓練データセットの構築 (イメージング信号と,バイオマーカーなど標識情報の 分析に基づく分類ラベルのペア)。細胞をバイオマーカーで標識した後,イメージング信号と標識情報を同時に測定するし, 標識情報から分類ラベルを得ている。下:訓練したモデルによる,イメージング信号に基づいた,標識情報に関連する形態 学的情報を反映するラベルの予測。 (C) イメージング計測信号 (ピクセルアレイ型または1画素検出器などの信号値など) に,直接分類モデルを適用し,視認可能な 画像特徴情報を予測するアプローチ。上:訓練データセットの構築 (イメージング計測信号と,視認した形態学的特徴ラベ ルのペア)。構造特異的に細胞を蛍光標識することで,視認したい構造の画像特徴情報を選択的に織り込んだイメージング計 測信号が得られる。下:訓練したモデルによる,イメージング信号に基づいた,形態学的特徴を直接反映するラベルの予測。 オリジナル[32](https://academic.oup.com/jmicro/article/69/2/61/5770847)のものを参考にして著者改変。

(4)

像データにも既に適用されています。教師あり機械学 習手法を効果的に適用するには,(i) 訓練データセッ トの構築,(ii) そのデータセットを用いたモデルの構 築,(iii) 新しいデータを分析するためのモデルの適 用,の 3 ステップが重要です。IFC と従来顕微鏡の大 きな違いは,ステップ (iii) に,画像データを高速リ アルタイム解析してセルソーティングを実行する際に 現れます。 この点において,アナライザーの場合には,大き な違いは生まれません。リアルタイム解析の必要は ないため,測定機器から画像データをローカルな計 算機にダウンロードし,オフラインで解析ができま す。この場合,CPU や GPU などの豊富な計算リソー スと時間をかけて,じっくりと処理することができま す。一方ソーターの場合には,画像データのリアルタ イム分析結果に基づいて細胞を分取するため,計算を 限られた時間内で完了する必要があります。例えば市 販の高スループットなセルソーターの流体デバイス内 では,細胞が測定部からソーティング部までを,1 ミ リ秒以内で流れ抜ける事は,よくあります。計算時間 や流速のばらつきを考慮すると,計算時間はそれより 大幅に短いことが望ましくなります。この要件を満 たすべく,最近の開発では,計算処理モデルは Field Programmable Gate Array (FPGA) や特殊な計算ハード ユニットに実装されています13, 17, 18)。しかし,ハイコ ンテンツ情報を,より多くの計算を通して精緻に解析 する情報処理ハードウェアの構築は容易ではありませ ん。従って,リアルタイム分析の速度と詳細さ,およ び画像情報のサイズは,今もトレードオフの関係にあ ります。そのため現在に至っても,商業用の FACS 並 みの非常に高いスループットで,オフラインで使用さ れる機械学習モデル (100 層以上で構築された非常に 深いニューラルネットワークなど) を実装する方法は 未解決の課題です。さらなる技術の進化が,オフライ ンとオンライン (リアルタイム) で使用できるモデル 間のギャップを埋めると期待されます。 それでは次のセクションから,IFC 画像解析におい て,特に教師あり機械学習画像分類がどのように実装 されているかを,解析されるデータのモダリティに基 づいて 2 グループに切り分けて説明します。第 1 のグ ループは,従来より続く標準的アプローチであり,二 次元や三次元の生成画像から形態的特徴量を抽出し, ラベルを画像情報に割り当てるものです (図 1A)。第 2の比較的新しいグループは,カメラのピクセル値や, 一画素カメラの計測信号波形など,画像を再構築せず に生のイメージング情報に,モデルを直接適用するも のです (図 1B, C)。そしてこの 2 つのアプローチから それぞれ生まれている,画像情報のリアルタイム分析 に基づくセルソーター群を紹介します。なお本稿では, 画像再構成の有無にかかわらず,これら画像情報に基 づいたセルソーターを 「イメージング」 セルソーター と呼んでいます。 Ⅳ.機械学習とイメージングアナライザー まず図 1A に示すのは,明示的な (人が視認できる) 特徴の抽出に基づく,第 1 の機械学習分類アプローチ の模式図です。例えば,蛍光標識されたタンパク質が 核または細胞質内に局在しているかどうかを区別した いとします。このワークフローでは,まず画像と,画 像から抽出した特徴量から得た情報のペアで構成され る,訓練データセットを構築します (図 1A 左)。次に このデータセットでモデルをトレーニングします。最 後に,このモデルは,新しい画像から画像特徴量を反 映するベクトル量を予測します (図 1A 右)。抽出され る画像特徴情報は,強度,サイズ,形状,テクスチャ, 相関,細胞内成分,およびそれら複雑な組み合わせが 含まれます。この特徴は,人の目または自動 (アルゴ リズムやソフトウェア) でアノテーションされ,評価 されます。従来の生物学的・臨床研究で最も一般的に 用いられるのは,人の目での評価です。しかし大量な IFC画像データに対して,大量の高度な専門家が,効 率的かつ意見や基準を完全に一致させて分析するのは 容易ではありません。そのため,人の目での認識と, ソフトウェアベースの認識を,相乗的に組み合わせる ことが合理的と考えられます。また,生物学的な細胞 の特徴を画像から抽出する目的に,現在最も適してい ると考えられるのは,非常に高い分子特異性と信号対 雑音比を有する蛍光や発光標識イメージング法です。 例えば蛍光タンパク質や抗体・抗原反応に基づいた標 識手法は,遺伝的または免疫化学的に目的分子の存在 を定量的に解析できる,強力なツールとして好例です。 一方,図 1B と 1C は,生の画像 (ピクセル強度) ま たは同等の画像データ (一画素カメラにより圧縮され たイメージング波形など) に,トレーニング済みモデ ルを直接適用することによりラベルを予測するため の,第 2 の機械学習分類アプローチの模式図です。言 い換えると,この直接的な画像データ分析アプローチ は,生の画像情報から形態学的特徴を明示的に抽出す ることなく (人が視認できる形にする事なく),画像 データ識別を実行します。この直接分析アプローチは,

(5)

例えば図 1B に示されるラベルフリー形態分析のよう に,細胞の状態,表現型,または機能を,効率的に画 像から特定する Criteria が明示的にわからない,また は容易でない場合において,特に強力です。例えば従 来顕微鏡画像を用いた最近の報告においても,生物学 的に意味のあるラベル (細胞分化状態,蛍光マーカー で評価) を,特徴が必ずしも視認し易くないラベルフ リーの明視野画像から直接予測しています21) 。この ような機械学習を用いた直接分析は,明視野画像と暗 視野画像だけでなく,位相や位相差画像,ラマン分光 画像など,いわゆるラベルフリー顕微鏡法によって取 得された画像モダリティの,生物学的解釈を広く可能 にするポテンシャルを有しています。 さらにこの直接分析アプローチを用いても,生の画 像情報や信号に含まれている,人に視認可能な形態的 特徴情報に基づいた分類は可能です。図 1C に示すよ うに,例えば特定の細胞内構造を蛍光標識した細胞サ ンプルを準備し,測定することにより,生の画像情報 や信号と,形態特徴ラベルのペアにより構成される訓 練データセットを取得できます。この訓練データを使 用して学習したモデルにより,新しい生の画像情報や 信号から,直接形態特徴ラベルを予測できます。様々 なオルガネラに特異的な染色,蛍光タンパク質の局在 など,目的分子や機能を高い信号対雑音比で効果的に 引き出せる多様な蛍光標識手法が,このアプローチを 可能としています。 繰り返しになりますが,これら直接分析アプローチ において,画像データは,人に視認可能な二次元や三 次元画像で表現されている必要はありません。これは 言い換えれば,画像を生成する必要も無いという事で す。次のセクションで説明されるように,画像解析を 画像再構成から解放する上で最大のメリットは,ソー ティングの高速化の律速となっていたリアルタイム画 像情報解析を,著しく高速化できたことでした13, 29, 30)。 Ⅴ.機械学習と「イメージング」セルソーター 2018年になって,前述の第 2 のアプローチ,第 1 のアプローチにそれぞれ基づき,機械学習を融合した 画像情報識別型のセルソーターの開発が続けて報告さ れました。 まず紹介するのは,従来より続く第 1 のアプローチ であり,生成した画像のリアルタイム解析に基づいた ソーティング技術です。図 2A に示すように,2000 年 代初頭から安田らによってカメラ (アレイ画素素子) を使用した,開発が進められました14, 15, 16) 。そして最 近になり,単一画素検出器を使用し,生成された画像 の解析に基づき,図 2B に示すようにセルソーターが 実現されました。6 層または 8 層の畳み込みニューラ ルネットワークを利用したリアルタイム分析とマイク ロ流体セルソーティングデバイスを融合し,タンパク 質の局在と細胞間の相互作用に基づく細胞分離が実証 されています17)。更に翌年には別のグループが,別 のタイプの単一ピクセルイメージング技術を用い,標 的分子および粒子の局在分析に基づいた細胞分類なら びにソーティングを報告しています18)。 再構成された画像に対する解析の利点は,ユーザー が画像に任意のアノテーションを付けられることで す。これは,画像から視認できる特徴を抽出したい場 合に特に役立ちます。顕微鏡細胞画像の解析用に開発 されてきた様々なソフトウェアやアルゴリズムも適用 できます。また,生成した画像を 1 枚ずつ確認し,ソー ティングの結果を確認する上でも便利です。さらに, 2Dまたは 3D 画像分析における既存のニューラルネッ トワークモデルの適合性が高い可能性もあるでしょ う。一方,報告されている限り,画像生成を含めた計 算処理時間はミリ秒よりも長く17, 18),スループットが 律速されているように見受けられます。この点は,ハー ドウェアユニットとアルゴリズムのさらなる開発がな されれば,軽減されうると期待されます。 次に紹介するのは,新しい第 2 のアプローチであり, 機械学習を利用して,画像は作らずに生の画像データ からを直接分析し,マイクロ流体技術によるソーティ ングに繋げたものです。図 2C に示すように,単一画 素素子で検出された圧縮イメージング時間信号に,学 習済み機械学習モデルを直接適用し,画像データを直 接高速解析しています。世界初のイメージフリー 「イ メージング」 サイトメトリーであるこの技術は,「ゴー ストサイトメトリー」 と名付けられました。ゴースト サイトメトリーは,細胞内構造など,異なる形態学的 パターンを示す細胞の画像データ情報の高速分類を実 証しています13, 29, 30) 。翌年には,別のグループから, 画像再構成をせずに,単一ピクセルイメージャーの 1 次元時系列信号を直接処理する,畳み込みニューラル ネットワークの開発が報告されています31)。 このアプローチの最大の技術的利点は,画像生成や 特徴抽出などの時間のかかるプロセスを回避している ため,画像データの総処理時間が大幅に短縮されるこ とです。ゴーストサイトメトリーの場合,推論にかか る時間は 10 マイクロ秒未満と,桁違いの短縮化を達 成しており,システム全体のスループットを律速して

(6)

いません。またこのアプローチは,画像再構成のプロ セスにおいて起こりうるアーティファクトの可能性を 軽減しています。さらに本手法は,十分に高い分類精 度を維持しながらサンプリング数を減らす事で取得時 間を短縮することもできるでしょう。また,画像再構 成を諦めることで,更にスループットを向上させるこ とが可能です。このアプローチは,細胞形態の特徴を 画像で簡単に視認できない,またはする必要も無い場 合には,実用的です (図 1B)。最近の研究30)では,圧 縮ラベルフリー画像情報波形と蛍光染色で得た生物学 的なラベルを使用してトレーニングしたモデルを用い て,生物学的ラベル (健康状態や分化など,細胞の様々 な種類や状態) を波形から直接予測しています。再生 医療における細胞製造など,蛍光標識が望ましくない 応用用途に可能性を秘めています。 Ⅵ.これから IFC画像データへの機械学習手法の適用32) により, 医薬・生物学研究の幅広いアプリケーションが模索さ れています。細胞内小器官,膜,および機能をラベリ ングする蛍光標識法や,蛍光タンパク質の使用は,細 胞の形態的特徴の高感度な抽出をするために,強力な ツールです。このような蛍光イメージングバイオマー カーに基づいた選択的ソーティングは,新たな細胞 図 2 リアルタイム解析するデータモダリティに基づいたイメージングセルソーターの分類 (A)ピクセルアレイ型検出素子(一般的なカメラ)で撮像した細胞画像に基づいて,細胞を識別するアプローチ。(B)1画素検 出素子で計測する時間波形信号から細胞画像を再構成し,この画像に基づいて細胞を識別するアプローチ。別(色や情報)モダリティ のイメージングデータは,複数の1画素検出素子でそれぞれ並列に記録できる。(C)1画素検出素子で計測する時間波形信号を, 直接解析して細胞を識別するアプローチ。別(色や情報)モダリティのイメージングデータは,複数の1画素検出素子でそれぞれ 並列に記録できる。 オリジナル[32](https://academic.oup.com/jmicro/article/69/2/61/5770847)のものを参考にして著者改変。

(7)

ベースの医療診断や表現型スクリーニングを実現する 可能性を秘めています。一方,ラベルフリー IFC デー タへの機械学習応用は,人間による視認や特徴量抽出 が難しい細胞形態データにおいても,細胞を分類しう る好例です。これらラベルフリーの高速細胞アナラ イザーおよびソーターは,高速・安価・迅速な細胞診 断技術だけでなく,分子標識が望ましくない特に細胞 治療および再生医療の分野での用途に,大きなポテン シャルを秘めています。 目覚ましい進歩を見せるこの IFC と機械学習の融合 技術分野ですが,根本的な課題が残されています。機 械学習ベースの細胞画像データ解析に正解ラベルを与 え,評価する上で,私たちの細胞画像自体への理解は 限られています。そのため,現在は既知の抗体やバイ オマーカー,そして視認しやすい評価に頼らざるを得 ませんが,果たして細胞形態データを活かし切って いるのでしょうか。一方で,細胞あたりの計測データ 量,計算処理の重さ,そして IFC システム全体のスルー プットを同時に向上させる解も得られていません。さ らに,顕微鏡技術と比較すると IFC にはできないこと も数多く存在しています。いずれにおいても鍵となる のは,計測データ構築や解析法設計を通し,データの 真価をいかに活かすかという課題でしょう。今後の研 究と技術革新で質問や課題に応えられれば,強力なス ループットと非破壊・迅速性を有する IFC 技術は益々 重要性を高めていくはずです。 References

1. Moen E, Bannon D, Kubo T, Graf W, Covert M, Van Valen D. (2019) Deep Learning for Cellular Image Analysis. Nature Methods https://doi.org/10.1038/ s41592-019-0403-1.

2. Basiji DA, Ortyn WE, Liang L, Venkatachalam V, and Morrissey P. (2007) Cellular Image Analysis and Imaging by Flow Cytometry. Clinics in Laboratory Medicine 27, 653-70.

3. Filby A. (2019) Imaging Flow Cytometry: A Brief Overview, iBiology https://www.ibiolog y.o rg/ techniques/imaging-fl ow-cytometry/.

4. Kay DB, Cambier JL, and Wheeless LL Jr. (1979) Imaging in fl ow. J. Histochem. Cytochem 27, 329-334. 5. Kachel V, Benker G, Lichtnau K, Valet G, and Glossner E.

(1979) Fast imaging in fl ow: A means of combining flow cytometry and image analysis. J. Histochem. Cytochem 27, 335–341.

6. Blasi T, Hennig H, Summers HD, et al. (2016) Label-Free Cell Cycle Analysis for High-Throughput Imaging Flow Cytometry. Nature Communications 7, 10256. 7. Eulenberg P, Köhler N, Blasi T, et al. (2017)

Reconstructing Cell Cycle and Disease Progression Using Deep Learning, Nature Communications 8, 463. 8. Thaunat O, Granja AG, Barral P, et al. (2012)

Asymmetric Segregation of Polarized Antigen on B Cell Division Shapes Presentation Capacity. Science 335, 475-79.

9. Doan M, Vorobjev I, Rees P, et al. (2018) Diagnostic Potential of Imaging Flow Cytometry. Trends in Biotechnology 36, 649–652.

10. Haridas V, Ranjbar S, Vorobjev IA, Goldfeld AE, and Barteneva NS. (2017) Imaging flow cytometry analysis of intracellular pathogens. Methods 112, 91-104.

11. Goda K, Ayazi A, Gossett DR, et al. (2012) High-throughput single-microparticle imaging fl ow analyzer. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 109 (29), 11630-11635. 12. Rane AS, Rutkauskaite J, deMello A., and Stavrakis S.

(2017) High-Throughput Multi-parametric Imaging Flow Cytometry. Chem 3 (4), 588-602.

13. Ota S, Horisaki R, Kawamura Y, et al. (2018) Ghost cytometry. Science 360, 1246-1251.

14. Takahashi K, Hattori A, Suzuki I, Ichiki T, and Yasuda K. (2004) Non-destructive on-chip cell sorting system with real-time microscopic image processing. Journal of Nanobiotechnology 2 (1), 5.

15. Yasuda K, Hattori A, Kim H, et al. (2013) Non-destructive on-chip imaging flow cell-sorting system for on-chip cellomics. Microfluidics and Nanofluidics 14 (6), 907-931.

16. Girault M, Kim H, Arakawa H, et al. (2017) An on-chip imaging droplet-sorting system: a real-time shape recognition method to screen target cells in droplets with single cell resolution. Scientifi c Reports 7, 40072. 17. Nitta N, Sugimura T, Isozaki A, et al. (2018)

Intelligent Image-Activated Cell Sorting. Cell 175, 266-276.e13.

18. Gu Y, Zhang AC, Han Y, Li J, Chen C, Lo YH. (2019) Machine Learning Based Real-Time Image-Guided Cell Sorting and Classification. Cytometry A, 95 (5), 499-509.

(8)

19. LeCun Y, Bengio Y and Hinton G (2015) Deep learning. Nature, 521, 436-444.

20. Xing F, Xie Y, Su H, Liu F and Yang L (2018) Deep Learning in Microscopy Image Analysis: A Survey. IEEE Transactions on Neural Networks and Learning Systems, 29, 4550-4568.

21. Buggenthin F, Buettner F, Hoppe PS, et al. (2017) Prospective Identification of Hematopoietic Lineage Choice by Deep Learning. Nature Methods, 14, 403-406. 22. P ä r n a m a a T a n d P a r t s L ( 2 0 1 7 ) A c c u r a t e

Classifi cation of Protein Subcellular Localization from High Throughput Microscopy Images Using Deep Learning. G3: Genes, Genomes, Genetics, 7, 5, 1385-1392.

23. Rumetshofer E, Hofmarcher M, Röhrl C, Hochreiter S and Klambauer G (2019) Human-level Protein Localization with Convolutional Neural Networks. International Conference on Learning Representations. 24. Ronneberger O, Fischer P, and Brox T (2015) U-Net:

Convolutional Netwo rks fo r Biomedical Image Segmentation. Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention, 234-241.

25. Falk T, Mai D, Bensch R, et al. (2019) U-Net: Deep Learning for Cell Counting, Detection, and Morphometry. Nature Methods, 16, 67-70.

26. Van Valen D, Kudo T, Lane KM, et al. (2016) Deep Learning Automates the Quantitative Analysis of Individual Cells in Live-Cell Imaging Experiments. PLoS Computational Biology, 11, 12.

27. Goldsborough P, Pawlowski N, Caicedo JC, Singh S, and Carpenter AE (2017) CytoGAN: Generative Modeling of Cell Images. Workshop On Machine Learning In Computational Biology, Neural Information Processing Systems.

28. Johnson G, Donovan-Maiye R, and Maleckar M (2017) Generative Modeling with Conditional Autoencoders: Building an Integrated Cell. arXiv: 1705. 00092.

29. Adachi H, Kawamura Y, Nakagawa K, et al. (2020) Use of Ghost Cytometry to Differentiate Cells with Similar Gross Morphologic Characteristics. Cytometry A, 97, https://doi.org/10.1002/cyto.a.23989

30. Ugawa M, Kawamura Y, Horisaki R, Sato I, Noji H, Ota S. (2018) Real-Time Optofl uidic Diffractive Imaging Cell Analyzer, The 22nd International Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences (MicroTAS 2018).

31. Li Y, Mahjoubfar Ata, Chen CL, Niazi KR, Pei L, Jalali B (2019). Deep Cytometry: Deep learning with Real-time Inference in Cell Sorting and Flow Cytometry. Scientifi c Reports, 9, 11088.

32. Ota S., Sato I., and Horisaki R. (2020) Implementing machine learning methods for imaging fl ow cytometry, Microscopy, 69, 61-68.

参照

関連したドキュメント

In numerical simulations with Model A of both the deSTS and ETS models, CFD showed the presence of a recirculation zone in the heel region, with a stagnation point on the host

Data are thus submitted to exploratory data analysis, to recover as much synthesized information as possible, in order to reveal any existing data structure and, in particular, to

We present the optimal grouping method as a model reduction approach for a priori compression in the form of a method for calculating an appropriate reconstruction layer profile for

This paper presents a data adaptive approach for the analysis of climate variability using bivariate empirical mode decomposition BEMD.. The time series of climate factors:

In the consequence, the bending solution branch at least once has been captured in an adequate parameter area near the singularity, which means that a part of the global

A linear piecewise approximation of expected cost-to-go functions of stochastic dynamic programming approach to the long-term hydrothermal operation planning using Convex

For staggered entry, the Cox frailty model, and in Markov renewal process/semi-Markov models (see e.g. Andersen et al., 1993, Chapters IX and X, for references on this work),

No analysis from the view- point of regular variation, until recently in [9], seems to have been made of positive solutions of sublinear type of equations.. Very recently a paper [6]