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鳴門教育大学学術研究コレクション

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Academic year: 2021

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子どもが抱える教育課題解決に向けた教育活動の生成と実践

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 久 我 直 人 教職実践力高度化コース 実習指導教員 藤 井 伊 佐 子 佐 野 恭 子 キーワード:勇気づけ,自己肯定感,自治的活動,メンター制 Ⅰ 課題分析 1.課題設定の理由 (1)置籍校の概要 置籍校は、児童数 311 名、学級数 15 学級 (内特別支援学級3学級)、通級指導教室1 教室がある町立小学校である。教職員数は町 支援職員を含めて 28 名で、町内の小学校で は一番規模が小さい(平成 30 年4月現在)。 「強く正しく朗らかに」を校訓に、「よく学 び、健やかで、心豊かにたくましく生きる子 どもを育成する」を教育目標に掲げている。 (2)置籍校の課題把握 平成 29 年度に実施した教職員聞き取りと 児童(4・5・6年)アンケートの集計結果 を分析し、置籍校における課題を整理した (表1)。 表1 置籍校の課題 児童が 抱える 課題 ・自分への信頼の格差 ・教員への依存 ・自主性・主体性の脆弱さ 教員が 抱える 課題 ・個を受容し価値づける指導・支援の弱さ ・多忙感 ・児童の自治自律に向けた指導・支援の不足 児童の行動面の課題と内面の課題の構造的 な関係を理解するため、児童アンケートの結 果を共分散構造分析ソフト Amos で分析し、 「児童の意識と行動の構造」を可視化した (図1)。 図1 置籍校児童の意識と行動の構造図 (3)実践研究の目的 児童が抱える教育課題解決に向け、効果的 な指導を組織的協働的に取り組むことによっ て、児童の変容と教職員の組織化、さらに教 員の指導の質的改善を同時に具現化すること を目的とした。 (4)実践研究の課題 本実践研究の目的を達成するため、次の課 題を設定した。 ① 置籍校の教育課題の可視化 ② 組織化と教育改善のためのプログラムの 構築 ③ 構築したプログラムの具体的な実践 ④ プログラムの効果の検証 2.実践研究の枠組 (1)実践研究の具体的な取組 久我(2014)は、子どもの意識と行動の構

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造を解明し、その構造に適合した効果のある 取組を開発している。本実践研究を実施する にあたり、その知見をもとに置籍校の子ども の意識と行動の構造に適合した効果のある指 導を構想した(図2)。 図2 課題解決に向けた取組構想図 ① 主体的な学びづくり ② 「聞くこと」を基軸に置いた規範づくり ③ 児童による自治的活動づくり ④ 多面的な勇気づけシステム ⑤ 組織の活性化、組織化を促す支援 (2)実践研究の基本的枠組 本実践研究を実施するにあたり、久我 (2013)「教師の主体的統合モデル」に基づ き、基本的枠組みを作成した(図3)。 図3 実践研究の基本的枠組み Ⅱ 課題解決 1.実践研究の実施 (1)Research 期 平成 30 年1月 11 日に全教員を対象とした 校内研修を実施した。組織的省察を促す本学 久我教授の講演、筆者による学校アセスメン トデータの報告に続き、全教員による組織的 省察(ワークショップ型研修)を行った。児 童の実態をもとに置籍校の教育課題を共有す るとともに、この教育課題解決に向けた具体 的な取組についてアイディアを出し合った。 (2)Plan 期 組織的省察の結果を踏まえ、教育課題を解 決するための具体的取組を提案した。それを 各分掌主任と検討し、展開計画をまとめた (図4)。 図4 組織的展開イメージ (3)Do 期 1)学びづくり 置籍校は研究指定を受けている「特別の教 科 道徳」(以下「道徳科」)の授業を中心 に、「主体的に学び合い、互いに高め合う子 供の育成」を目指し、授業改善に取り組んだ (図5)。 ① 「聞くこと」の指導の徹底 「主体的な学びづくり」の根幹として、 「聞くこと」の大切さを繰り返し指導するこ とを全校一貫して行った。学習活動において 児童が積極的に自分の思いや考えを伝え合う

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姿が見られた。 ② 主体的な学びを可能とする場の設定 全校を挙げて活動形態の工夫や ICT 機器を 活用し、「考えが深まる授業」を意識した授 業の実践を進めた。グループや全体で考えを 広げたり、それを共有する場を意図的に設定 したりすることにより、主体的に学習活動を 行う児童の姿が見られた。 図5 学習活動の様子 2)生活づくり 始業式をはじめ、定期的に集会等で校長や 生徒指導主事が「聞くこと」の大切さについ て話をすることで、学校全体でその価値に対 する共通理解を図った。さらに、各学級で継 続的な一貫した指導が展開された(図6)。 図6 「聞くこと」の指導と児童の姿 3)活動づくり ① 旧6年生 WS 及び新6年生組織づくり 児童が自校のよさや課題をとらえたり、新 しい取組を考えたりする場として、平成 29 年度の6年生による振り返りワークショップ を実施した。この成果物は5年生に報告さ れ、新6年生の組織づくりに生かされた(図 7)。 図7 6年 WS 成果物 ② 代表委員会の活性化 新6年生が司会グループとなり、各学級代 表と話し合い、合意形成することを目指し運 営され、イベントに児童のアイディアが反映 された。 ③ 縦割り班活動の活性化 平成 30 年度より休み時間に縦割り班で活 動する「うめの子タイム」が導入された(6 年児童発案)。教員に頼らず、6年生を中心 に、児童が自分たちで活動内容を決定し、実 施した(図8)。 図8 縦割り班活動の様子 4)多面的な勇気づけシステムの実践 ① よいところさがしの実践 道徳科の実践と連動し、児童相互の受容・ 承認の場として「よいところさがし」を各学 級で行った(図9)。

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図9 よいところさがし ② 勇気づけ掲示板 平成 30 年度より、児童の頑張りをより可 視化できる掲示スペースを設置した。児童の 日常の頑張りをクローズアップした写真とコ メントを掲示し、行動の価値づけを行った。 5)組織の活性化、組織化を促す支援 ① 校内メンター制の活性化 置籍校で取り組んでいるメンター制をメン ティ(採用3年未満の教員)のニーズに応え たものとするため、メンティの希望をもとに メンターが計画・運営した。メンティの希望 により、実技講習や「悩み相談会」を行った (図 10)。 図 10 メンターの会の様子 ② 教職員向けの通信の発行 若手の頑張りを伝えるメンター通信、筆者 の教職大学院での学びを伝える通信、勇気づ けに関する通信の3種類の通信を発行した。 2.実践研究の総括 (1)児童の変容 本実践研究を通して、置籍校の課題「自分 への信頼の格差」、「教員への依存」、「自主 性・主体性の脆弱さ」に関わる項目で、7月 実施の中間評価アンケートにおいて前年度よ り肯定意見の増加が見られた。「勇気づけ」 をはじめとする取組が、全教職員の共通理解 のもと推進された効果と考えられる。 (2)教員の変容 聞き取り調査から、「これまで以上に意識 してほめた」という教員が半数を占める等、 勇気づけ教育の促進が確認された。また、 「うめの子タイム」導入により、「児童を信 頼し、見守る」等、児童の自治促進の意識も 高まりつつあることがとらえられた。 さらに、こうした取組を組織的に行うこと やメンター制に関しても肯定意見が多く、教 職員の協働性や同僚性の高まりがとらえられ た。これらは、教育課題を全教職員で共有 し、組織的省察を行ったこと、メンターの会 等による若手の主体的な学びと人間関係の深 まりが要因であると推察された。 3.今後の展開の可能性 本実践研究では、児童の意識と行動の構造を 明らかにし、学校アセスメントや組織的省察に よって可視化された児童が抱える教育課題を全 教職員が共通理解したうえで、その課題解決に 向け組織的な取組を展開した。また、学校の活 性化と組織力の向上につながる方策として、若 手育成徳島 OJT システム(久我 2016)を活用 し、置籍校のメンター制の一層の充実を図っ た。 今後、本実践で明らかとなった成果と課題を もとに、さらなる継続を通して、置籍校以外の 学校にも汎用可能なモデルとして本プログラム を一層精緻化していくことが必要であると考え る。

参照

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