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タイ国における肺結核の現状 : 肺結核外科を中心として [The Present Condition of Pulmonary Tuberculosis in Thailand from the Standpoint of Surgical Treatment]

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(1)

タ イ 国 に お け る 肺 結 核 の 現 状

- 肺 結 核 外 科 を 中 心 と し て

-寺

ThePresentConditionofPulmonary Tuberc山osisinThailand from theStandpointofSurgicalTreatment

by

TakashiTeramatsu,M.D.,

Iwasin Thailandfrom Dec.13,1964tillFeb.上 1965toinvestigatethe present condition ofpulmonarytuberculosisfrom thestandpointofsurglCaltreatment.

Astheresult,Ihavebeenabletoobtain thefollowing conclusion.

1) Itissaidfrom thereportofTuberculosis ControlDivision in Thailandthat about6% ofallThaipeopele show abnormalfindingsin X-ray ofchest,about4% needthetreatmentfortuberculosisandabout1%havetuberculous cavitiesorhave positivesputa.

2) From my investigation,itseems that chemotherapy would notbeeffective in abot30% ofthecaseinwhich cavitiesorpositive sputa are found,because the insufficientchemotherapy with only INH,PAS and Tblhastobeperformedbythe economicalcondition and mostoftheabovecaseshavecirrhotic cavitiesforwhich even themostexcellentchemotherapy areoften ineffective.

Therefore,toeradicateoftuberculosisin Thailand,itmay be necessary totreat thesecasessurgically.

3) Therearetwohospitalsforsurgical treatmentofpulmonary tuberculosisin Thailandandabout200casesperyearareoperatedsurgically.

However,mostofthel⊃edsintheboth hospitalsareoccupiedbythefar-advanced casesand itisnotsoeasy tofind outthe case with good indications for surgical treatments.

Astileresult,therotation ofbed for surgicaloperation isinsufficientand the function ofthesurgicaldivision ismuch disturbed.

4) Asiswellknown,methods available for surgicaltreatment ofp111monary tuberculosisare pulmonary resection,thoracoplasty and cavernostomy,andforthe far-advancedcases,cavernostomycan beavailable even when pulmonary resection andthoracoplastyareimpossible.

But,in Thaiand,Only pulmorary resection and thoracoplasty are being done. Thisisacauseofthosebedsfor slユrgicaltreatment are occupiedbypatientswith far-advancedtuberculosisandtherotation ofbedisapttobestopped,becausemany casesoffar-abvanced in Thailand have no indication for pulmonary resection or thoracoplasty,buthaveonly theindication forcavernostomy.

(2)

82-5) In fact,Wecan findtheindicationofpulmonary resection and thoracopasty inonlyabout10% ofallpatientsofCentralCIleStHospitalandontheotherhand,We canfindtheindicationforcavernostomyinover30% ofthesamegroupOfpatients.

6) Therefore,itcanbesaidthat,ifcavernostomyisperformedinsuitablepati -ents among these far-advanced cases,the rotationofbedin this h()spitalwillbe betterandthiswillhelptoeradicatetuberculosisin Thailand.

1 ま え が き 著者 は, 京 都 大 学 結 核 研 究 所 内科 第 1の前 川 暢 夫 助 教授 と と もに, 昭 和39年12月13日か ら昭 和40年2月 1日まで の50余 日の問 , タ イ国 にお け る肺 結 核 の現 状 を 特 に肺 結 核 外 科 な る

点 か ら調 査 した。 本 調 査 は 著者 等 の メ キ シ コで行 な わ れ た第 8回 国 際 胸 部疾 患学 会 出 席 お よび 欧米 視 察 旅 行 の帰 途 , 京 大 東 南 ア ジ ア研 究 セ ンター か らタイ回滞 在 費 の援 助 を うけて 行 な わ れ た も の で あ る。 その間 ,39年12月13日か ら25日まで は, 前川 助 教 授 と と もに, タ イ国 の紀 核 の現 状 につ い て バ ンコ ック の 結 核 予 防 部 (T.B.ControlDivision)や チ ョンブ リ (Cholburi)の 地方 支 所 の 資 料 を共 に して 検 討 し, あわ せ て タ イ田 の一 般 検 診 , 集 団 検 診 お よび巡 回 治 療 等 の 諸 業 務 につ い て 視 察 した。

ま た,12月26日か ら翌40年 1月16[】まで は, 前 川 助 教 授 と別 れ , ノ ンブ リ(Nondhaburi)の

中央 胸 部 疾 患 病 院 (CeutralChestHospital)で , 手 術 の 供 覧 ,講 義 お よび 視 察 等 を行 な った。

1月17Fl以 降 で は, バ ン コ ック車 内 のプ ラサ ミッ ト (Prasamit)病 防 で ,手 術 の 供覧 を 行 な い, さ らに コー ンケ - ン(Khonkaen)や チ ェ ンマ イ (Chiangmai)で結 核 予 防 郡 の地方 支 所 の 見 学 や 地 方 の結 核 事情 の調 査 等 を行 な った。 短 期 間 で 1人 ま た は 2人 の手 で 調 査 が 行 な わ れ た の で あ るか ら, そ の結果 が/不完 全 な もの に 終 って も致 し方 の な い処 で は あ るが, 著者 等 の場 合 には, 幸 に して 調査 に好 都 合 な 条 件 が

な って お り, 短 期 間 に予 期 以 上 の成 果 を収 め え た こ とは 望外 の喜 び で あ った。 これ に先 だ ち, 著者 は昭 和38年2月 に イ ン ドの ニ ュー デ リーで 開 かれ た第 7回 矧 祭胸 部疾 患 学 会 - の途 次 , バ ン コ ックに

1週 間滞 在 し, その間 バ ン コ ック郊外 の ノ ンブ リに あ る中央 胸 部疾 患 病 院 を訪 ね , 院 長 Dr. VaiChinachoteや夕掃射矢島 Dr.Sombat Padungchantanaと 識 り合 った。 京 都 大 学 結 核 研 究 所 長 の長石 忠 三 教 授 もニ ュー デ リーで 行 な わ れ た前 記 国 際学 会 か らの帰 途 , バ ンコ ックに立 ち寄 って お られ , その際 , 空

切 開術 につ い て の講 演 や 肺 外 科 手 術 の供覧 が 行 な わ れ て い る。 以 上 を き っか け と して ,翌39年 夏 前 記 Dr.Sombatが空洞切 開術 の 見学 を主 目的 と して 来 日 し, 我 々の研 究 所 に約 1カ月滞 在 して肺臓外 科 の研 修 を受 け る と と も に, 近 い将 来 に タイ因 を 訪 れ , 空洞 切 開術 の講 演 や 手 術 の供 覧 を行 な うこ とを 著者 に依 接 した。 - 8

(3)

3-東 南 ア ジ ア 研 究 第3巻 第 1号

また これ に さきだち, 同年春 , タイ国保健 局 の結核 予防 部 部長 の Dr.Prakorb や その配下 の Dr.Boonson が来 日 し,京都 に立 ち寄 り, 著者 が タイ国 を訪 問 す る際 には種 々の 協力 を惜 しま ぬ ことを確約 した。

今 回 の調 査 で は,著 者 等 の訪 問 に さきだ ち, タイ国 にお け る対 人 関係 が円滑 にい って い た上 に, 同国 で は, 昭和

2

6

年 頃か ら

UNI

CEF

WHO

の協 力下 に結 核 予防 部 が発足 して いて,紘 核 につ いて の調査 や, これ に もとず く結核 対 策 が行 なわれ て いたので,万 事好都合 で あ ったわ けで あ る。 以上 の よ うな好 条件 に恵 まれて, 著者 等 ほ短 期 間 の滞在 で あ った に も拘 わ らず, か な り満足 すべ き調 査 資 料 を手 にす ることがで き,二 ,三 の地域 につ いて は さ らに 自 らの手 に よ って調 査 を行 な うことがで きた次 第 で あ る。 また, 胸部外 科 医 の著 者 は, 中央 胸部疾 患病 院 の全 医師 の協 力 の下 に数 例 で は あ るが,我 々 の手術 を供覧 した り, タイ国 の肺 結核 外 科専 門 医 の手術 を見 学 した り,彼 等 と うち とけて度 々 討議 した りす る機 会 を持 つ ことがで きた。 その結 果 , 著者 は タイ国 にお け る肺 結核 や肺結 核外 科 医 の現状 の大 要 を把 握 す る とと もに, 同国 の肺結 核 対 策 の上 で肺結 核外 科 の 占め る役 割 や将 来 と るべ き方針 等 につ いて も, 著者 な り の見 解 を持 つ に至 って い る。 以下 , まず , タイ国 にお け る肺結核 や肺結 核外 科 の現 状 につ いて述 べ, つ いで 同国 の結 核 対 策 の上 で肺結 核外 科 の 占め る役 割 や将 来 占め るべ き役 割 につ いて述べ よ うと思 う。 但 し,結 核 や結 核対 策 の現状 につ いて は, 内科 の前 川 助教授 に詳 し く報告 して頂 くことに し, 著者 は外 科 的 な報 告 に必要 な最 少 限度 の関連 事項 に限 って述 べ ることにす る。

2

タイ国の肺結核 の現 状 1) 蔓 延 度

1

は,1),2)昭和

35

年 か ら

37

年 まで の期 間 にバ ンコ ックの あ る地 域 で,

WHO

UNI

CEF

協 力 の下 に タイ国結 核 予防部 によ り行 なわれ た予備調 査 の成 績 で あ る0 この裏 か ら, バ ンコ ック市 民 の約 6.4% が Ⅹ線写 真 上何 等 か の所見 を有 し,約 1%が排 菌 し て い るか空洞 を持 って い る こ とが推定 出来 る。 その他 , 罷患率 で は, タイ国人 と中国人 との間 に有 意 の差 が認 め られ,前者 が

5.

8

8%

,後者

7.

5

2%

とい うよ うに,後者 の方 が曜患率 が若 干高 い とい うことが いわれ て い た。 チ ェ ンマイで も, 昭和38年 か ら39年 にか けて 同様 な予備調査 が行 なわれ て お り, その成 績 に よ ると,市 街部 と郡 部 とで は若 干 差 が あ るが,平 均 して約

6%

が有 所見者 で あ るとい うことで 1) 『タイ国 におけ る結核問題』 海外技 術協力事業団, 昭和39年3月 2) 『結核 に関す る海外技 術協力 セ ミナー講演要 旨』海外技 術協力事業団, 昭和40年3月 - 8

(4)

4-年 令 タイ国 に お け る肺 結核 の現状 一 肺 結 核 外 科 を 「Ⅰコ心 と して- -蓑 1 バ ンコックにおける予備調査成績 居住人 口43,246人,受診者39,647人,受診率91.7% i 0-14 r 1.9 20∼29 4.9 1 50∼59 60∼ 0.1 4 7 2 4 1 " 5 1.6 0.1 2.0 0.3 6.4 0.6 1 ll.6 1.6 17.0 3.0 21.5 1.4 1 5.4 j o.6 1.8 2.3 4.9 8.7 12,8 23.0 25.8 6.4 l 1 8 7 4 7 4 0 0 0 1 2 4 3 註 重症 とは排菌陽性かまたは空洞を有するものを指す。人 口内分けはタイ人40%, 中国人60% で あ る. (``TIlailandTuberculosisProject1950-1963"よ り引用) 表 2 ツベルクリン反応陽性率 1- 6 . 16・6% : 32・92% 6∼14 40.4 69.08 15∼ 78.5 88,51 ("ThailandTuberculosisProject1950-1963"よ り引用) あ る。 1) 以上 の よ うに, タイ国 にお け る肺 結 核 の蔓 延 度 は か な りの もので あ り, この こと は表21)・2) に示 す ツベル ク リン反 応 陽性 率 か らも推 察 で き る。 と くに, バ ンコ ックで は, 1- 6才 の幼児 の陽転 率 は きわ めて高 く,32.92%に達 して い る。 2) 重 症 度 結 核 予 防 部 の 中央 胸部診 療 所 の 新患 を K.T,A.分類 に したが って 分類 す る と, 軽症 32.9% , 中等 度進 展34.2%,高 度進 展32.9% の通 りにな る。 表 3は,前 川 助 教授 がバ ンコ ックrf]'内の 1地 域 にお け る15才 以 上 の災 団検診 例2650

例r

fjの有 所 見 者176例 を結 核 病 学 分類に した が って 分 類 した成 績 で あ る。 この統 計 で は,有 所 見者6.64%,有 空

者2.11%, 要 治療 者4.83% とな って い る。 表 4は, 著者 が チ ェ ンマ イ にお け る集 団検診 例1938例 中 の有 所見 者 123例 を結 核 病 学 会 分類 に した が って分 類 した成 績 で , この集 団 にお け る比 率 は,有 所 見者 6.34%,有 空洞者 1.03%, 要 治療 者3.25% で あ る。 タイ国 側 で は,全 国民 の約 6%が X線写真 上 で の有 所 見者 ,約4%が要 治療 者 ,約 1%が排 -

(5)

85-東 南 ア ジ ア 研 究 第3巻 第1号 表 3 X線 有 所見 者 の病型 別分類 (結核病 学 会分類) - バ ンコ ックの分-= J 顔 1 】 15 .日日‖」孤 6 】 34 計 48 24 26 1 9 F 99 註 % は集 団検 診受 診 者2650例 に対 す る比 を示 す (判定 者一前川) 表 4 X線 有所見 者 の病型 別分類 (結 核病 学会 分類) - チ ェンマ イの分-Ⅲ 【 Ⅲ

l I

V i V

4 】 16 有 空洞 の重症 例 20 (1.03%) 要 治 療 例 63 (3.25%) 43

】 5

1 1

9 安 定 病 巣例 60 (3.09%) 有 所 見 例 123 (6.34%) 註 % は集 団検 診受 診者1938名 に対 しての もの (判定 者一寺松) 表 5 チ ェンマ イの要 治療 例 を病 巣 の硬 化性,非硬 化 性 によ って分類 した成績 18 】 31 15 13 (判定 者一寺 松) 菌 者 または有 空 洞者 と推察 して い る。 バ ンコ ックにお け る前 川 助教授 の調 査 例 で は重症 例 が若 干多 く含 まれ て お り, チ ェ ンマイ に お け る著者 の調 査 例 の方 が平 均 値 に近 い よ うで あ る。 表5は表4に示 す要 治療者63例 につ いて,化学 療法 の効果 の予 測 に便 利 な よ うに病 巣 が硬 化 性 か非硬 化性 かを調べ た もので あ る。 表 で判 るよ うに,要 治療者 の3割強 は硬化性空洞 を持 って い るので あ るか ら,少 な くともこ

(6)

タイ国 にお け る肺結核 の現状 - 肺結 核 外 科 を 中心 と して-れ等 は,化学 療法 の効果 を期待 しが たい症例 だ とい うことがで きよ う。 また, タイ国側 の見解 によれ ば, 現 在 タイ国で行 なわれ て い る

I

NH

単 独療法や

I

NH・

PAS

療法 によ り啄疾 中の結 核菌 が陰性 化 す るのは約 7割 とい うことで あ るか ら,化学 療法 を行 な っ て も結 核菌 が陰性 化せず ,外科的療法 の施 行 を考慮 しな けれ ばな らない症 例 は,要 治療者 の約 3制 位 か と推察 され る。 要 治療者 は全 人 口の約 4%とされて い るか ら,外 科 的療法 の施 行 を考慮 しなけれ ばな らな い 症 例 は全 人 口の1%強 と考 え られ る。 のみ な らず, これ等 の大 多数 は,我 々の調 査 によれ ば, 高度進 展 ない しこれ に近 い もので あよ る うに思 われ る。 この ことは, タイ国で は,重症 肺結 核 の治療 に好適 な外 科 的療法 が考慮 され ね ばな らぬ こと を示 す もので あ る。 3) 治療施 設 と治療方 法 結 核 予防部 は, バ ンコ ックに中央 胸部診療 所 と 2カ所 の支 所 とを持 って お り, チ ェ ンマ イ, コー ンケ- ンお よび チ ョンブ リ等 にそれぞれ地方支 所 と して 胸部診 療 所 を持 って い るO支所 に は ベ ッ ドはな く, そ こで は,外 来 治療 や巡 回治療 のみが行 なわれ て い る。 以上 とは別 に,保 健 局 は結 核病 院部 を持 って お り, ノ ンブ リに設 け られ た前記 の中央 胸部疾 患病 院 を管理 して い る。 この病 院 は約 400の ベ ッ ドを持 って お り, 胸部外 科 セ ンタ- と して今 後 さ らに充実 され る予 定 で あ る。 その他 , バ ンコ ックには,半官 半民 の結 核 予防会

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に属す るベ ッ ド数約 100床 の病 院が あ り, こ こで は外 科 的療法 も行 なわれて い る。 入学 病院や県 病 院 には結核 患者 用 の常設 ベ ッ ドはな く,外 科 的療法 も殆 ん ど行 なわれていな い。 以上 で判 るよ うに,外 科 的療 法 は主 と して前記の 2施設 で行 なわれ てお り.一般 病 院や一般 開業 医 の下 で は殆 ん ど行 なわれて い ない。 また, 化学療法 と して は,

WHO

の 方 針 に したが い,

I

NH

単 独療法や

I

NH・

PAS

また は

I

NH・

Tbl

2

者 併 用療法 が王 と して行 なわれて お り,

SM・

PAS・

I

NH

3

着 併用療 法 は殆 ん ど 行 なわれ て いない。 これ は患者 に貧 困な ものが多 く,公 費で治療 しな けれ ばな らない ものが多 いか らで あ る。 また,予防法 と して は, B.C.G.接種 が積 極 的 に行 なわれて い るが, これ につ いて は触れ ぬ ことにす る。

3

タイ国の肺結核外 科 の現 状 1) 沿 草 -

(7)

87-東 南 ア ジ ア 研 究 第3巻 第 1号 ノ ンブ リの 中央 胸部疾 患病 院 にお け る肺 結核外 科 の歴 史 ,す な わ ち タイ国 にお け る肺 結核外 科 の歴 史 だ と考 えて よい。 この病 院 は, 昭和

1

5

年, 医 療 局 によ り開設 され た もので あ るが, 開設 当初 には外 科 的療法 は 行 なわれて いな い。 昭和22年 に病棟 の拡充 や設備 の改新等 が行 なわれ た のを機 会 に, 気 胸療法 が始 め られ, きわ めて少数例 で は あ るが,外 部 か ら外 科 医 を招 いて胸成 術 が行 なわれ て い る。 また, 昭和27年 には, WHO の勧告 に したが い,結 核 の予防 と治 療 との協 力 態勢 を作 るため に, 当病 院 は保健 局 に移管 され た。 胸部外 科 や 血液 銀行 的 な仕 事 は これ を機 会 に開設 されて い る。 そ して,翌 昭和28年 か ら, タイ国人 医 師 によ る手術 や麻 酔 が行 なわれ るよ うにな って い る。 その後, 3名 の タイ国人 医師 が ニ ュー ジー ラ ン ド, オ ース トラ リアお よび 日本 等 で逐 次研 修 を うけ, 昭和33年 以 降で は,年 間100例以上 ,最 近 の 1, 2年 で は,年 間200例 近 くの胸部手術 が行 なわれ るよ うにな って い る。 その間, 昭和35年 は小 野勝 博 士 が 1カ年 問滞在 して外 科業務 の改善 や教 育 を行 な って お り, 昭和36年 以 降で は古賀 良平博 士 ,工 藤 裕是博 士 その他 日本 か ら派遣 され た方 々によ り,肺機能 検査 や 培養検査 その他 の習練 が行 なわれ て い る。 2) 医 師 タイ国 にお け る肺 結 核外 科 の総 師 は Siriraj大学外 科 の Kasan教授 の よ うで, 彼 の弟 子 に 当 る中央 胸部疾患病 院 の外 科 医長 Dr.SombatPadungchantana,Dr.SemarnTrakooltrinお よび Dr.Tamanoon Prapaiwong等 は それぞれ外 国留学 の経 験 を持 つ, す ぐれ た肺結核外 科 医で あ ると思 われ た。 また, 中央 胸部疾 患病 院 に は 2名 の専 属麻 酔 医が お り,彼等 の技 術 もす ぐれ て い るよ うに思 われ た。 3) 設備 と機能 タイ国 にお け る肺結核病 院 は,前 記 の よ うに, ノ ンブ リの 中央 胸部疾 患病 院 とバ ンコ ックの 結核 予防会 所属 の プ ラサ ミッ ト病 院 との 2つ で, ベ ッ ド数 は前者 400床,後者 約 100床 で あ る。 前者 の400床 中,成 人肺結核 患者 用 の ベ ッ ドは200床以下 で,残 余 の ベ ッ ドは小 児結核 患者 , 麻薬 常 習 の肺結 核 患者 お よび非結 核性 胸部疾 患 患者 用 にあて られ て い る。公称 の外 科 ベ ッ ド数 は50床 に過 ぎない。 プ ラサ ミッ ト病院 のベ ッ ドの振 り分 け は固定 的で はな く, 著者 が訪 ね た際 には, 大 部 分が成 人肺結 核 患者 用 に使 用 され て い た。 プ ラサ ミッ ト病 院 の外 科 医長 の席 は, 中央 胸部疾 患病 院外 科 医長 Dr.Sombatの次 席 の Dr. Semarnによ り兼 務 されて い る。

-8

(8)

8-タイ国における肺結核の現状 一肺結核外科を中心として-この病 院 の医 師 の多 くは,彼 と同様 に中央 胸部疾 患病 院 や Siriraj大学 との兼 務 医で あ る0 手 術 用 の設 備 は,両 病 院 と もによ く整 って お り, と くに中央 胸部疾 患病 院 の それ は水準 以 上 と思 わ れ た。 術 前 の諸 検査 用 の諸設 備 も一 応 揃 って お り, 血液 銀行 的 な仕 事 も, 1辛;の医rTTll]Jの下 に数 名の 助手 が いて,一 応 大 過 な く行 なわれ て い る。 しか し, 手術 例 数 の増 加 に連 れ て , 血液 の撰 択 や供給 能 力 の上 で将 来 問題 が生 ず るので はな か ろ うか と思 わ れ た。 4) 手 術 々式 と手 術対 象 表6は, 昭和33年 か ら39年 まで は, 中央 胸部 疾 患病 院 で行 なわれ た胸部手 術 例 を年 度 別,術 式別 に分 類 した もので あ る。 表 で判 るよ うに, 昭和37年 か ら手 術 件数 が飛躍 的 に増 加 して い るが, これ は, その頃 か ら, 専 門外 科 医 が増 加 し,設 備 も急 速 に充 実 され たか らで あ る。 手 術 々式 と して は,主 と して肺 切除術 と胸成術 とが行 なわ れ て お り, 総手 術例1070例申 ,

切 険術 例725例 (67.76%), 胸成術 例 271例 (25.33%)で ,残 余 の例 は試 験 開 胸術 その他 で あ る。 注 目すべ きは, 肺 切除 術例725例 中355例 (48.97%)が-側 肺 全 削除 術 で あ るとい うこ とで あ る。 京 都 大学 結核 研 究 所 で は, 昭和16年 創設 以 来 , 長石 忠三 教授 によ り)日用鎚外 科 が 開拓 され て き たが, その うち, 昭和24年 以前 の手 術 例 を除 き, 空 洞 切 開術 の研 究 に力が入 れ られ た昭 和24年 以 降 昭和39年 まで の15年 間 に行 なわ れ た肺結 核外 科 手 術 例 の統計 が昨年 秋 に と られて い る。 これ に よれ ば京 都 大 学 結核研 究 所 お よび関係 施 設 で行 なわれ た手 術 の総 数 は24,294例 で, そ 表 6 中央胸部疾患病院における手術 々式別手術例数

-

-

h

肺 切 除 術

)

空洞切 開術 ら

0

そ の 他 ∼ 2

l 1 5 ! 0 5 17 4 ・ 2 ・ 35

7

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5

(

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註 その他の中には心臓手術11例が含まれている. - 8

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(隻:73竪) 1070 (100%)

(9)

東 南 ア ジ ア 研 究 第3巻 第1早 の うち肺 切除術 例14,909例 につ いてみ ると,-側 肺全 易リ除術 例 は970例 (6.50%)に過 ぎない。 ノ ンブ リの中央 胸 部疾 患病 院 にお け る-側 肺全 易り除術 例 の比 率48.97% との間 に著 明 な差異 が あ るの は,我 々の研究所 で は重症 肺結核 が全 別除術 のみ な らず,空洞 切開術 や種 々の複合 術 式 によ り処理 され て い るためで もあ るが, ノ ンブ リの病 院 では重症 例 が極 めて多 いためで もあ る と思 われ る。 表 7は全病 院 に入 院 中の大人 の肺結核 患者 138例 の 胸部 Ⅹ線所見 を ま とめた もので あ る。 表 7 中央胸 部疾患病 院 の全成人肺結核138例 につ いての検 討成績 1) 性 別 男 97名 女 41名 2) 年 令 30才 以 下-42 31才∼50才-50 51才 ∼ 46 3) Ⅹ線 写真所見 ㊨

(

138 両側肺結核 109 1側 〝 29

有 空 洞 例 78硬 化 性 空 洞非硬化性空洞 726

N.T.A.分類 による病巣の拡が り 軽 度 11 中等度進展 22 高 度 進 展 105 表 で判 るよ うに,109例 (78.98%) で は両側 肺 がおか されて お り,78例 (56.52%)で は-刺 または両側 に空洞 が証 明 され て い る。病 巣 の拡 が りを N.T.A.分類 に したが って分類 す ると, 軽 度 は僅 か に11例(7.97%)で, 中等 度進展例 が22例(15.95%),高 度進展例 が 105例 (76.08%) とな って い る。 以上 の よ うに, この病 院 では,入院 患者 の

8

,

9

割 が重症 例 で あ り,肺切 除術 と胸成 術 とが 主 と して行 なわれ て い るこの病 院 で全 削除術 の比率 が高 いのは 当然 の ことと思 われ た。 この病 院 で は,肺切 除術 や 胸成術 の外 に, 昭和39年末 に空洞切 開術 が 2例行 なわれ てい るが, これ は著者 が Dr.SombatやDr.Semarnとと もに試 みた ものの一 部で, タイ国 にお け る空洞 切 開術 の第 1例 で あ る。 ちなみ に, 著者 は, この病 院 で, 昭和40年 1月,空洞 切 開術 その他 の手術 を 6例供覧 して い る。

4

タイ国 におけ る重症 肺結核 の治療 対 策 の一 つ と しての 外 科 的療 法, と くに空 洞切 開術 の応用 価値 重症肺結 核 につ いて論 じるには, まず , その定 義 を決 め る ことが先 決 で あ る。 タイ国 には,我 々の基準 に照 ら して も重症 肺結 核 の範暗 に入 れ るべ き もの も多 いが, 日本 と タイ国 とで は重症 肺結核 に対 す る概念 が違 って い るよ うで あ る。 タイ国で は,経 済 的理 由か ら, カナ マイ シ ンは勿論, ス トレプ トマ イ シ ンす らも充 分 に使 う - 9

(10)

0-タイ国 にお け る肺結 核 の現 状 一 肺 結 核 外 科 を 中心 と して-こ とが 出来 な い の で , 我 が 国 の よ うな徹 底 した化 学 療 法 は 行 な わ れ て い な い。 た め に, タ イ国 で は , 空 洞 や 排 菌 が 認 め られ る もの は , 日本 で は重 症 例 と思 わ れ な い もので ら,一 応 す べ て 重 症 例 と して 取 扱 わ れ て い る。 タ イ国側 の調 査 に よ る と, この よ うな意 味 の重 症 例 は , 全 人 口 の 約1%と され て い る。 この 標 準 に した が う と, タ イ国 の総 人 口は3,000万 で あ るか ら, うち30万 が 空 洞 や 排 菌 が 認 め られ る重 症 例 だ とい う こ と に な る。 ま た, バ ン コ ック にお け る前 川 助 教 授 の調 査 成 績 や チ ェ ンマ イ にお け る著 者 の調 査 成 績 か ら み て も, 空

が 証 明 され る症 例 の 多 くは , 硬 化 性 空 洞 を持 つ もの で あ り, 病 巣 の拡 が りか らみ て も N・T・A.分 類 に よ る 中 等 度 進 展 ま た は学 研 分類 の2以 上 に 相 当す る 重 症例 と考 え て大 過 な い よ うで あ る。 した が って , タ イ国 で は , 外 科 的 療 法 を要 す る症 例 が 多 い わ け で あ る。

核 対 策 の うち, 最 も重 要 な もの の一 つ は , い うまで もな く, 排 菌源の根 絶 で あ り, WHO の基 本 方 針 も こ こ に あ る よ うで あ る。 タ イ国 で は , 外 科 的 療 法 に よ り排 菌 源 の根 絶 を 図 るべ き症 例 が 約30万 あ るが , この 国 で は ,

結 核 外 科 的 療 法 を行 な い つ つ あ る病 院 は わ ず か2つ に過 ぎず , 手 術 例 数 も年 間 約200例 そ こ そ こで あ り, そ の 大 部 分 は バ ン コ ック ま た は そ の 近 郊 の症 例 で あ る。 した が って ,現 段 階 で は , 外 科 的 療 法 が タ イ全 体 の結 核 対 策 の上 で 大 き く役 立 って い る とは い い が た い 。 バ ン コ ックだ け につ い て み て も, そ の人 口200万 の うち, タ イ国 人 の い う重 症 例 は そ の1%, す な わ ち約2万 あ るわ け で あ る。 これ に対 して 年 間 200例 程 度 の手 術 で は , バ ン コ ックだ け の 排 薗 源 の根 絶 に も程遠 い とい わ ね ば な らな い。 それ で あ るか ら,外 科 的 療 法 の 価 値 を充 分 に高 め るた め には ,外 科 的 療 法 の た め の ベ ッ ドの 増 加 , 専 門 医 の増 員 , 設 備 の拡 充 等 が必 要 で あ るが , これ 等 は 現 実 的 には一 朝 一 夕 の問 題 で は な

い。

そ こで , 最 も手 近 な 現 状 の 改 善 策 は , と りあ え ず , 現 在 の病 院 の機 能 が 充 分 に発 捧 され る よ うにす る こ とで あ ろ う。 中央 胸 部疾 患 病 院 当 局 者 の悩 み は, 入 院 患者 の 多 くが超 重 症 例 で , 手 術 が 可能 な症 例 は1割 内外 に過 ぎ な い とい う こ と に あ った。 これ の一 つ の 原 閑 は , この病 院 を 含 め て バ ンコ ック全 体 の結 核 用 ベ ッ ドが500床 程 で , バ ン コ ックのみ の 患者 数 か らみ て も極 度 に ベ ッ ドが 不 足 して い るた め だ と思 わ れ る。 す な わ ち,冒 宅 療 養 が で きな い よ うな 重 症 例 を止 む を 得 ず 収 容 して きた た め に, た だ で さ- 少 な い ベ ッ ドが 重症 例 で 塞 が れ て 回 転 が 悪 くな り, これ が 原 因 で さ らに悪 循 環 を起 して い る と思 わ れ た の で あ る。 さ らに今 一 つ の原 因 は , この病 院 で は,肺 切 除 術 と 胸成 術 とだ け が行 な わ れ て お り, 重 症 肺 -

(11)

91-東 南 ア ジ ア 研 究 第3巻 第 1号 結核 に対 す る 外 科 的療法 と して欠 くことがで きない 空洞切開術 が 採 り 入 られ て いなか った こ と, す なわ ち,重症 肺結核 を外 科 的 に取 扱 う能 力 にお いて欠 くる処 が あ った とい うことを挙 げ な けれ ば な らない。 表

8

ほ この病 院 の大人 の肺結核 患者

1

3

8

名 につ いて,手 術 適応 の有無 及 び種 類 を調査 した成 績 で あ る。 表

8

中央胸部疾患病院の全成人肺結核

1

3

8

名における 手術適応の有無 とその種類 手 術 不 可 能 例 46 (手術適応例) 表 で判 るよ うに,肺 切除術 と胸成術 の適応 と思 われ たのは,

1

3

8

例 中

1

4

(

1

0.

01

%)

で, ♂ イ国側 の手術可能 例 は約 1割 とい う話 とよ く一 致 す る。 しか し,表 に も示 した よ うに,著者 は肺 切除術 と胸成 術 の適応 例以外 に, さ らに空 洞切 開術 の適応 例24例 と骨 膜外 充 填術 の適応 例 8例,計32例 の手術 適応 例 を見 出す ことが 出来 た。 肺結 核 の外 科 的療法 は,肺 切除術 ,外 科 的肺虚 脱療 法,切 開排 膿療法 の3つ に大別 され る。 肺 切除術 につ いて は説 明の必 要 はない と思 う。 胸成 術 (胸廓成 形術 の略) や骨 膜外 充 填術 (ポ リヴ ィニ ール フ ォル マール等 の強 力性 の合成 樹脂 を充 填物 と して使 用 す る) は外 科 的肺 虚脱療 法 で あ り,空 洞切 開術 は切 開排 膿療 法 の代表 的手 術術式 で あ る。 空 洞切 開術 は京都 大学結核研 究所 にお いて 昭和19年 よ り試み られ, 昭和24年 以 降で は特 に力 を入 れて検 討 され て きた術式 で,現 在 で は独 自の術式 の下 に,世 界 で最 も良 好 な成 績 が最 も多 数 の症 例 につ いて得 られて い る。 肺 切除 術 や胸成 術 の行 な いが たい重症 例 の うちに も,本 法 な らば行 ない得 るとい う症 例 が少 なか らず あ り, この意 味で,本法 は重症 肺結核 の外 科 的療 法 の一 つ と して な くて ほ な らない も の とい うことがで きる。 また,京都 大学結核研究所 にお いて創始 され た手 術 々式 の一 つ と して,空洞切 開術 の他 に, ポ リヴ ィニ -ル フ ォル マール または ウ レタ ンフ ォームを充 填物 と して使 用す る骨 膜外 充 填術 が あ る。本法 は手 術侵襲 が胸成 術 よ りもは るか に軽 いた め に,老令 や低肺機能 等 のため に肺切除 術 や胸成術 は行 ないが たい もので も行 ない得 る場合 が あ る。 - 9

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2-タイ国 にお け る肺結核 の現状 一 肺結 核 外 科 を 中心 と して一 従 って , 本 法 もまた重 症 肺結 核 の外 科 的療 法 と して不 可 欠 の もので は あ るが, 本 法 の適応 例 の数 は空 洞切 開術 ほ ど多 くは な い。 と もあれ, この 2つ の術 式 , 特 に空 洞 切 開術 を routineの術 式 と して 加 え る ことに よ って従 莱 , この病 院 で は,手 術 は で きな い と考 え られ て い た重 症 例 の うちに もか な りの手術 適応 例 を 見 出す ことが で きた ので あ る。 それ で は

,

肺 切除 術 や 胸成 術 は で きな いが ,空 洞切 開術 な らば行 な う ことが で き る重 症 例 は, タイ国全 体 で は どれ 位 あ るので あ ろ うか。 著者 が調 査 した チ ェ ンマ イの集 団検診 群 は, タイ国全 体 の平 均 値 に近 い有 所見 率 や 要 治療 率 を も って い るので , この有所 見 者123例 につ いて,手 術 適応 の有無 や種類 を検討 してみ た。 表 9は その成 績 で あ る。 表 の よ うに,123例 中42例 (34.14%) が何 等 か の外科 的療 法 の適応 とな る もので あ り, その 内分 け は全123例 中, 肺 切 除術 の適応 例 が,-側 肺 全 別 除術 4例 を含 めて32例 (26.lo劣), 胸成術 の適 応 例 は 4例 (3.25%)で,空 洞切 開術 の適応 は 6例 (4.87%) で あ る。 蓑 9 チ ェンマイの集団検診 による有所見者123例中の 要手術者の手術 々式別分類 肺 切 除 術 肺 全 削 除 術 4 32 肺 葉切 除 術 28 胸 成 術 空 洞 切 開

手 術 不 可 能 化学療法 のみ または無治療 一.(26.10%)

4

(3

.

2

5

%

)

6 42 (要手術例) (4.87%) 」 2 79 そ こで, 有 所 見 者 の約 5% が空 洞切 開術 の適応 を持 って い ると仮定 してみ る と, タイ国全体 で は9万 ,バ ンコ ックで は 6,000例 が空 洞切 開術 の適応 を持 って い ると して よいで あ ろ う。 勿 論 , この よ うな数 字 が どの程 度信頼 出来 るか は問 題 で あ るが, 何 れ に して も, タイEIiJで は 空

切 開術 の適 応 例 が非 常 に多 い とい う ことは いえ る と思 う。 そ して , 著者 が巌 も強調 した い ことは,全 国 で30万 ,バ ンコ ックで 2万 と推定 され て い る排 菌 患者 の約 1/3が肺 切除術 や胸成 術 は行 ない難 く,空 洞切 開術 のみ の適応 を持 って い る とい う こ とで あ り, 従 って排 菌 患者 の絶 滅 ま たは減 少 の た め に空 洞切 開術 が重要 な役 割 を演 じるで あ ろ うとい う ことで あ る。 特 に, 中央 胸部疾 患 病 院 で は, 垂 症 例 が多 く入 院 して お り, バ ンコ ックにお け るベ ッ ド事情 か ら考 えて, これ等 重症 例 を外 科 的 に処 理 して ゆ くことがで きな い場 合 には, ベ ッ ドの退 転 が 窮 屈 にな り, 胸 部外 科 病 院 と して の機 能 が大 巾に制 限せ られ る ことにな る。 そ して 前 場 の表8 - 93

(13)

-東 南 ア ジ ア 研 究 第3巻 第 1号 か ら判 るよ うに, この病 院 で は,現在 ,手術 適応例 の約6割 が空 洞切 開術 の独 自の適応 例 で あ るか ら, この病 院, ひいて は タイ国 の肺結 核外 科 に空 洞切 開術 が如何 に重要 な役 割 を 占め るで あ ろ うかが判 ると思 う。 それで あ るか ら, この国で の現在 の手術対 象 か ら考 えて巌 も必要 な のは空洞切 開術 で あ り, これ と肺切除術 や 胸成術 とを縦 横 に駆使 す る ことによ って, タイ国肺結 核対 策 の一 つ と して の 外 科 的療法 の有 用性 が初 めて充 分 に発揮 され ることと思 われ るのであ る。

5

結 論 以上 を ま とめて結論 とす ると次 の よ うにな る。

(1) タイ国結 核 予防部が WHO及 び UNICEF の協力 の下 に行 な って い る各種 ゐ調査成 績 か らす ると,全 国民 の約6% が X線 写真 か らみて肺 に何等 か の所見 を持 って お り,約 4% が結 核 と して何等 かの治療 を必要 と し, また約 1%が空 洞 を持 って い るか または排菌 して い ると推定 されて い るO (2) 結 核対 策 の原 則 か らす ると, この 約 1% の 排菌 例 に治療 の重点 が 置かれ るべ きで あ る が,著者 等 のみ た限 りでは, これ等 の多 くは硬化性 空洞 を有 す る毒症 例 で,化学療法 の充分 な 効果 は期 待 しが たい。 (3) さ らに, タイ国で は経 済 的理 由か ら充分 な化学療 法 は行 な いが たいので, これ等排菌 例 の多 くは可 能 な限 り外 科 的療 法 を行 な うべ きで あ ると思 われ た。 (4) しか し,結 核 のためのベ ッ ドは非常 に少 な く,外 科 的療法 のためのベ ッ ドも重症 例 で次 第 に 占め られて しま う傾 向が強 い。 この傾 向は,重症肺結 核 の外 科 的療 法 の一 つ と して,欠 く ことので きな い空 洞切 開術 が この国 で未 だ行 なわれて いなか った為 に,手 術可能 な症 例 が大 巾 に制 限 され て いた ことで一層 拍車 をか け られ て いた よ うで あ る. (5) そ こで著者 は タイ人 医師 と共 に, 中央 胸部疾 患病 院 の成 人肺結核 患者 を対 象 と して ,辛 術 適応 につ いて再検討 を行 な った。 その結果 ,肺 切除術 と胸成術 の適応 は合計 して約10%で あ るが, この2つ の療法 に空 洞切 開術 を入 れて考 え ると,手 術 の適応 例 は40%近 くに達 す る こと を知 った。 さ らに,著者 は その うちの数例 につ いて は実地 に手術 を供覧 し, これ等重症 例 に対 す る空 洞切 開術 の価値 を タイ側 に納 得 させ ることがで きた。 (6) また,空洞切 開術 は行 な えて も肺切除術 や 胸成術 は行 ないが たい重症 例 は,全有所見者 の約5%と推定す る ことがで きた。 従 って , タイ国全 体 で約9万 ,バ ンコ ックのみで 約 6,000 の空 洞切 開術 の適応 例 が あ る ことにな り, これ は排菌 患者 の約

1

/

3

にあた って い る。 (7) この よ うな ことど もか ら, タイ国 におけ る結 核対策 の一 つ と して,外 科 的療法 が重 視 さ れね ばな らな い ことは 明 らかで あ るが , その際 には,肺 切除術 や 胸成術 に空 洞切 開術 を も加 え て よ り多 くの重症 肺結 核 を外 科 的 に処理 す るよ うにす る ことが肝 要 で あ ると患 われ た。 - 9

参照

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