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安全で快適な暮らしのための水環境と水質保全

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Academic year: 2021

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(1)

特集

環境保全に対する日立製作所の取組み

安全で快適な暮らしのための水環境と水質保全

WaterEnvironmentandQualityProtectionTechnologyforSafetyLifeandAmenity

依田幹雄*

益田利男**

馬場研二***

都築浩一****

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水質情報 I l + __._._._._.__ 増

浄化システム 集積プランクトン (赤潮・アオコ)

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● 湖沼

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ポンプ所 (雨水排水)

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下水処理場

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水環境と水質保全のためのシステム プランクトンの画像計測や気象情報など広域でのきめ細かい計測と監視,そして閉鎖性水域の浄化 などのシステムは,わが国での水質保全に貢献できる。

水は天と地を巡り,絶えることのない循環を繰り

返している。河川や湖沼などの水源から取水した水

は,浄水場で浄化・消毒されて都市に送られ,人類

の「命の源+として社会生活の中で利用される。一

方,都市で発生する生活排水や工場排水は,下水処

理場を経て河川や湖沼,そして海域に戻される。

しかし,水質の汚濁が進むと,植物性プランクト

ンが異常繁殖する富栄養化現象が発生し,異臭味問

題を招いたり,トリハロメタンなどの発がん性物質

が生じたりして,日常生活の安全性と快適性を脅か

すことになる。

水質保全のためには,広域での水循環を前提に,

プランクトンのようなミクロなものの計測から広域

的な監視,分析シミュレーション,そして,これら

の情報を統合利用した各種浄化システムによって管

理することが必要である。

*日立製作所人みか⊥場 **日立製作所土浦工場 ***R立製作所 日立研究所工学博士 ****日立製作所機械研究所

(2)

はじめに 地球は46億年もの旅を続けている人陽系にあって,唯 一「水の惑星+として′I三命をつくり育ててきた。人類は 生物や植物とともに水に支えられてチト命を維持し,水の 恩恵によって社会性活を営んでいる。 しかし,近年の急速な経済の発展と社会生活の高度化 は,地球規模での環境問題を招いている。わが国の水環 境も,今や地域によっては自然による浄化能力を超え, 河川や湖沼などの閉鎖性水域のili濁や汚染がIHT題になっ ている。これは,地球誕牛からの時間スケールからみる と正に劇的な変化であり,早急な対策による清らかな水 環境の凶復が望まれている。ここでは,水環境と水質保 全の現況と,日立製作所および日立グループが開発した 水質の計測と監視,そして浄化のための管理・制御テク ノロジーについて述べる。

水環境と水質保全

わが国の水環境は,戦後の著しい経消:発展と社会生柄 の高度化によって汚濁と汚染が進み,昭和40∼50年代を ピークに大きな社会問題となった。そ・の後,各省庁によ る水質保全対策によってマクロには回復の兆しが見えて いる。しかし,河川や湖沼・内湾・内海など滞留時間の 長い閉鎖性水域では,自然の浄化能力を超え,安全で快

適な暮らしが得難くなっている。富栄養化現象がもたら

す水道水の異臭昧,トリハロメタンなどの発がん性物質, 地下水の汚染,安全であったはずの井戸水の汚染,悪臭 国での最近の水環境と汚濁・汚染の状況を図lに示す。 特に湖i門などの閉鎖性水城の汚濁が回復しない状況にあ ることがわかる。 下水道の普及拡大は,水質保全を図る上で基本的かつ

効果的な手段である。平成3年度末の ̄F▲水道普及率は,

全国平均で45%,5■万人以下の市町村では8%と低い状

況にある。建設省では,重点施策として巧1・小市町村の

普及率向上と高度処理の推進による質的向上を掲げて

いる。 上水道は普及率94.9%(平成3年度末)に達している が,異臭味,トリハロメタン,農薬など新たな水質問題 がクローズアップしている。厚生省では,安全でおいし い水の供給をねらいとした高度浄水処理施設の導入促進 を推進している。これはオゾンと生物活性炭によって,

臭気や有害・有毒物質を除去するものである。

水質保全のための対応策を図2に示す。今後は,これ までの対応策に加えて,直接浄化や広域監視に期待が寄 せられている。

閉敵性水域の水質監視と浄化システム

3.1プランクトンの画像認識による水質監視システム 水質の汚濁が進むと,富栄養化現象による異臭昧問題 が発生する。現在この現象は,湖沼などの閉鎖性水城を

中心に顕在化している。異臭味の原因となるアオコや赤

潮(ミクロキスチスやウログレナなど)とは,植物プラン クトンの異常増殖現象である。したがって,これらのプ 公害対策基本法 (昭和42年) 水質汚濁防止法改正 (昭和53年) 湖沼水質保全特別処置法 (昭和59年) 水質基準の見直L (平成4年) 水道水源の水質保全対策 (平成5年) 水質汚濁 環境基準の達成率 ●河川:75% ●湖沼:42.2% (全窒素,全リン:31.3%) ●海域:80% (平成3年度環境庁) 海洋汚染 発生件数 ●油汚染:527件 ●赤潮発生:52件 (平成3年海上保安庁)

[垂可

●普級率:94.9% ●高度浄水処王里の推進 (平成3年度厚生省) 生活排水→ 流出雨水→ 下水処王里場 ポンプ所 → 下水道 ●普及率:45% ●普及拡大,質的向上 (平成3年度建設省)

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産業排水

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生活排水 。==壬:=:⊃

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浄水場 下水処理場

[頭評価基準超過率

●テトラクロロエチレン:1.4% ●トリクロロエチレン:0.8% (平成2年度環境庁)

¢鞄¢

治 水 ●治水整備率:44% ●雨水排水整備率:45% (平成3年度建設省) 図l水環境と汚濁・汚染の状況 湖沼などの閉鎖性水域の水質汚濁が問題となっている。また,治水対策や下水道整備が遅れている。

(3)

安全で快適な暮らしのための水環境と水質保全 551 農薬・肥料の適正使用 水質規制 排水規制 規制強化 森林の保護 分析シミュレーション アオコ・赤潮の抑制 直接浄化 産業排水処理 水質保全 開発規制 合流式下水道の改善 高度処理 河川・湖沼・ダム・海域 地下水・井戸 広域監視 プランクトン画像計測 浄化用水の導入 下水処理 普及拡大:中・小市町村 雨水排水 農業集落排水処理 合併処理浄化槽の整備 浄水処理 直結給水 高度浄水処王里 オ ゾ ン 生物活性炭 図2 水質保全のための対応策 二れまでの対応策に加えて,直接浄化や広域監視に期待が寄せられている。

ランクトンの増殖現象をヤ・期に検知できれば,アオコや

赤潮の発年を予測でき,浄化システムの運車云情報として

利用することができる。また,湖沼の生物現象や汚濁現 象の解明に役立てることができる。一方,将来的には浄

水場の高度浄水処理設備の運転情報としても利用するこ

とも可能である。

これらを目的に開発した水質監視システムの構成と画

像処理手順を図3に示す。このシステムは,顕微鏡を中

心とする撮像系と画像処理専用のVLSIを内蔵した高速

画像処理装置(HIDIC-IP)とで構成している。撮像系か

ら取り込まれた傾向像を,画像処≡哩装置によって二値化 lTVカメラーーー 顕微鏡 試料-×-Yステージ 注:略語説明 ITV(工業用 テレビジョン) qp X-Yステージ

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(a)システム構成 図3 システムの構成と画像処理手順 処理装置で構成している。 処理(濃挟を明と暗に区別)した後,各70ランクトンのラ

ベリング(番号づけ)と特徴量の抽出を行う。この特徴量

とあらかじめインプットされているプランクトン特徴量

の照合を行い,その識別・分類を行う。原画像とその識

別結果を図4に示す。このシステムは,星形(ホシガタケ イソウ),長方形(オピケイソウ)など形状特徴量によって 分類を可能とした。この分類結果を表1に示す。種類に よって形状が決まっているプランクトンは,図3(b)に示 す画像処理手順で得られる特徴量を組み合わせて6種類 に分類することを可能とした3)。 画像処理装置 ち ̄■叩野 開 始 画像取り込み 二億化処‡里 ラベリング 特徴量抽出 終 了 (b)処理手順 顕微鏡を中心とする撮像系と,画像処理専用のVLSlを内蔵した高速画像

(4)

クンショウモ オピケイソウ ホシガタケイソウ 水中顕微鏡からの 取り込み画像 特定プランクトンを 画像処理により識別  ̄ ̄・らき 壷一_-■ ・■≠・ ̄っど ̄ -∼■=-さ「ヲヲ■i_+・

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3.2 湖沼の浄化システム 水質汚濁が進んでしまった湖沼の浄化手段としては, (1)表層水の温度低下,(2)日光の遮断,(3)水の循環,(4)ば

っ気,(5)浄化用水の導入,などが有効である。

これらの手段に着日して開発した具体的な浄化システ ムの一例を次ページの図5に示す。 例えば,噴水システムは,湖上に設置した船体にポンプ を搭載し,水i采約10mの低温の湖水を大量に汲み上げ, 加圧して多数のノズルから噴射,降下させる。この水滴 によって,表層水の温度を低下させ,H光を遮断するた め,プランクトンの増殖を抑制し,湖沼の浄化を実現し

ている。なお,船体には,夜間照明設備と約30mの高さ

図4 原画像と識別結果 植物プランク トンが精度よく識別できる。二れから形状特 徴量を求めて分類する。

に吹き上げ可能な噴射ノズルを搭載し,景観の向上と水

に親しめる環境作-)を実現している。噴水システムの仕

様を表2に示す。 表2 噴水システムの主な仕様 船体は景観を考えて正八角 形としている。 項 目 仕 船体寸法 6.4mX6.4m(正八角形) 排 水 量 約30排水トン ポンプ出力 90kW 降 水 量 200mm/h 降水範囲 直径約50m 表l 形状特徴量によるプランクトン分業頁 特徴量を組み合わせて6種類に分類できる。 例えば,長方形のプランクトンの場合,面積/周囲長比と端点数を指標として分煙できる。 星 形 形 状 特徴量 面積・周囲長 小 円形1 円形2 大 線 形 長方形 大 不定形 大 只の面積割合 小 大 小 小 小 小 長軸・実豆軸 小∼中 小 大 中 円形状係数 大 大 端 点数 備 -●-細緑化

端点 注:-(不定を表す⊃)

(5)

安全で快適な暮らしのための水環境と水質保全 553 ム テ 仙” 水 噴 噴水 ポンプ コンクリートアンカ 電線・光ファイバ 噴水船 陸上操作盤 (遠隔操作用)

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▼ .ノ′-ノー11i 有光層 ′■ト レイクリ7む ワ・′ ㌢ 無光層 送気管 コンプ レッサ 電動機 ゝバズ .1勺

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(捌柵” 一こ≦一 フロート スクリュー ..曲「.†、 ハヤjこ グ ㈹抑桝 中シ 水 汚濁物質 の流入 水中ミキサ

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ばっ気噴水ポンプ (e) 浄化用水 導入システム

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図5 浄化システム 浄化には,表層水の温度低下(a),日光の遮断(a),水の循環(b),ばっ気〔(C)と(d)〕,浄化用水の導入(e)などが有効である。

(6)

現在 1週間後

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布 川1-O D O 分 H2・0 柑 川 0■5 D・0 線 流 図6 湖沼のシミュレ ーション結果の一例 有限要素法によって温 度分布,流速分布などを 計算し,水質の汚濁状況 を予測することができる。

棚㍑那1L■。.。.

布 地00 50 00 50 00 3.3 湖沼の水質シミュレーション技術

湖沼の水質保全には,自然の浄化作用と人工的な浄

化システムとの連携が必要になる。そのためには,自然

の浄化作用を踏まえた上で,湖沼のどこに,どの程度の

システムを設置し,どの程度運転するかが重要な課題と なる。

水質汚濁や浄化作用の効果は,三次元での温度分布,

流線,流速などの影響を受けて時間的・空間的に進行す

る。この進行スケールは数キロメートル,敷か月という 大きなスケールで,しかも,流れや水音且分布の影響を受 けるため計測モニタだけで予測することは困難であり, コンピュータシミュレーションによる予測技術の開発が 望まれていた。開発したシミュレーションは,有限要素 法による非定常,非圧縮性流動および物質拡散プログラ ムによって実現している。シミュレーション結果の一例 を図6に示す4)。このシミュレーションによって汚濁の

過程なども時間を追って検証することができる。風や地

形などが水質に及ぼす影響を予測することが ̄吋能とな

り,最適な水質改善システムの計画や設計に役克てるこ

とができる。

おわりに

地球環境問題の一つとして呼ばれている水質保全につ いて,特に湖沼などの閉鎖性水城での計測と浄化,およ びシミュレーション技術について述べた。プランクトン

の痢像認識による水質監視システムは,今後,撮像系も

含めたオンライン化が課題である。各種浄化システムは, いくつかのサイトですでに実用化され稼動している。湖 汀号の水質シミュレーション技術は,多くの計測結果と比

較検討することで知見を蓄積しながら,天候の変化や乍

物の連鎖的反応なども取り扱えるモテリレに拡張する必要 がある。 今後とも,清らかな水環境の回復のために,ミクロな 計測からマクロな監視,シミュレーション,そして,こ

れらの情報を統合利用した広域的なシステム構築を目指

して技術開発を進める考えである。

参考文献 環境庁:環境白書(平成4年度版) 建設省:建設白書(平成4年度版) 大淵,外:画像処理による植物プランクトンの識別,第4 回環境システム自動計測制御国内ワークショップ論文集 266-369(平4-9) 4)桑原,外:治水・利水システムの新技術,日立評論,73, 12,1141∼1148(平3-12)

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