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電力系統設計計画支援エキスパートシステム

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Academic year: 2021

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特集 座業分野におけるエキスパートシステム

電力系続

∪.D.C.〔る81.32.0る:159.95〕:占21.311・1・001・2

計計画支援エキスパートシステム

ExpertSYStemSforElectricPowerSYStemDesignandScheduting 電力系統の設計・計画業務を支援するために,知識工学を活用した各種のエ キスパートシステムを開発している。本稿では,これらの典型例として電力系 統の設計・解析,需給計画,電圧・無効電力運用計画,および変電所レイアウ ト設計への応用例を紹介する。 電力系統の運用計画や制御システムの設計を行うには,さまぎまな知識やノ ウハウが必要である。紹介するシステムでは,複雑に関連するアルゴリズムを 意識することなく,知識やノウハウを追加・修正して機能の向上を図ることが できる。また,適切な助言機能や自動解析計算機能など,ユーザーの実情に合 ったシステムを構成できる。

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言 設計や計画作業は,無限に近い可能性の中から最適(または 最適と思われる)解を選択したり,合成することを目的として いる。最適性の評価基準は,問題を解く人の主観に依存する 部分が大きい。そのため,設計や計画作業は, (1)専門家のノウハウや知識を多く必要とする, (2)評価・判断基準の変更が多い, (3)最適解までの繰り返し計算が多い, などのために,人間の創造的活動に属する本質的に難しい問 題と考えられている1)∼3)。 このような設計・計画作業に,計算機を利用して作業者の 負担を軽くしようとする支援システムとしては,従来からCAD

(Computer Aided Design)やCAE(Computer Aided En・ gineering)があり,一部は実用に供されている。 知識工学を応用したシステムは,従来のCADやCAEをより 高機能で使いやすいものにしようとする試みであり,特定の 設計・計画問題に専門家のノウハウや知識を直接に利用しよ うとするシステムである。知識処理システムは,従来の数値 計算に対して,記号処理と論理演算によって推論を行い,知 識を推論と独立した表現形式で記述できる。したがって,ア ルゴリズムを意識する必要がないこと,知識やノウハウを追 加・修正して機能の向上を図ることができるなどの特長があ り,ユーザーの実情に合ったシステムを構成しやすい。 そこで,電力系統の設計・計画業務を支援するために,知 識工学を活用した各種のエキスパートシステムを開発してい 田中秀雄* 赤根政男* 川上潤三** 工藤博之*** 小林康弘**** 狩野泰信***** 〟ぎdgβ 7滋乃αゑβ 〟αSαO A由氾g ♪(乃Z∂肋紺α々α椚才 +打ど和叩(々∼∬〟d∂ ‡1びαぁわ℃Å七ぁの悦gゐぎ yα5〟乃0∂〟助乃∂ る4)-9)。本稿では,電力系統の設計・解析,需給計画,電圧・ 無効電力運用計画,変電所レイアウト設計などに知識工学を 応用した例を紹介するとともに,その有効性について述べる。

設計・計画問題への応用事例

2.1知的対話形系統解析支援システム4)・5) 2.1.1開発のねらい 電力系統の運用計画や制御システムの設計を行うには,さ まぎまな知識やノウハウに基づく解析計算が必要である。そ こで,必要な知識を備え,適切な助言機能を持ち,初心者に も使える解析支援システムを開発した。このシステムは,解 析作業にかかわる知識やノウハウ,判断基準などの知識ベー スを備え,ユーザーは電力系統を表すグラフィックスと処理 手順のガイダンスに従い,対話形式で容易に解析できる。 2.l.2 機能の概要 本システムは,図1の構成要素から成る。 (1)数値解析部 (a)処理関数(タスク) データ入力,データベース変更および画面表示などに関 する関数と,解析プログラムから成る。これらは,インタ フェース管理プログラムによって呼び出される。解析70ロ グラムには,これまでに(i)短絡容量計算,山)直流法潮流計 算,(iii)交流法潮流計算,(iv)周波数特性計算,(Ⅴ)過渡安定度 計算のプログラムを用意している。このほかにも,ユーザ *束京電力株式会社 **日立製作所=一朗汗究所→二学伸上 ***日立製作所H+別汗先帝 ****臼_、土製作所ユネ′しキー研御子コザ「・什 ***** 日.)土製作所国分工場 59

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760 日立評論 VO+.71No.8(1989-8)

図l知的系統解析支援システムの構成 解析上のルールやノウハウを知識ペースとして 備え,解析者はディスプレイ上に作った系統図やガイダンスと対話しながら,各種の解析プロ グラムを使うことができる。. 幽 62 ′ヽノ N6

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自動雫行 場圧調整一) H11tr)Gり 力布国 F】…【:g) ∈匂d ⊥ て-. - -  ̄\、 ̄ ̄---図2 ディスプレイ表示例 ディスプレイ上のメニューや カイダンスに従って系統図およ ぴデータベースを構成し,複雑 なルールやノウハウを意識する ことなく解析できる。

(3)

ーの開発したフォートラン(またはC)プログラムを必要に応 じて組み込むことができる。 (b)系統データベース 電力系統の階層構造に基づくネットワーク形データベー スを採用しており,系統定数を各プログラムに共通にデー タベース化できる。さらに,グラフィックディスプレイ上 に描かれた系統のデータをディスプレイ上から容易に追加, 修正できる(図2)。 (2)知識処理部 (a)推論エンジン 推論を行うための制御管理部で,数値処理部との通信, 知識ベースによる推論を行う。(i)解析支援モード,(ii)推論 起動モード,(iii)自動操作モードの三つの実行モードを選択 できる。 (b)知識ベース 電力系統の階層構成に合わせたネットワーク形のデータ ベース構造を抹用している。ディスプレイ上に描かれる系 統データとシステム内の系統データベースとが一致するよ うに,データベース管理を行っている。 (3)インタフェース管理部 融通性のある対話処理を可能にするために,インタプリタ による逐次解釈方式を採用している。インタプリタは,すべ てライブラリとして登録されているタスクを必要に応じて呼 び出す。このインタプリタによるフロー制御方式には, (a)解析フローの追加,変更が容易であり,ユーザーの好 みに合わせたオーダメードなマンマシンインタフェースを 電力系統設計計画支援エキスパートシステム 761 作ることができる, (b)機能拡張は,タスクだけ改造または追加すればよい, (c)インタプリタ方式のため,知識処理部からの割り込み 時(ガイダンス表示など)の処理を管理しやすいうえ,自動 操作モードではタスク単位の操作ができる, などの利点がある。 過電圧対策に関する知識ベースを基に電圧調整を行う,自 動操作モードの一例を図3に示す。解析者が必要な知識を追 加することによって,適切なガイダンスを表示したり,解析 を自動化することが可能となる。潮流の計算結果をプリンタ イメージで表示したものと,矢印の太さと方向でグラフィカ ルに出力した例を図2(C),(d)に示す。後者は,解析者のマク ロな判断に有効である。 2.2 需給計画支援システム6)・7) 2.2.1開発のねらい 需給計画とは,想定した電力需要に対応して多様な電源の 運用計画(負荷配分)を立案する作業である(図4)。本システ ムは,発電機各ユニットの運転・停止スケジュールを決める ために必要な個々の電源ユニットの特性や,運用上の制約, 供給信頼度などの多くのパラメータを自由に組み合わせ,総 合的に効率性と経済性を追求する作業を支援する。 2.2.2 機能の概要 すべての制約を考慮して問題を一度に解〈ことは不可能な ので,計画策走者が行う手順に従って,次のようにステップ を踏み,概略決定から順次詳細な計画を立ててい〈。 (1)運転状況の決定

q/

/ / / / ヽ ′ ヽ、 / / / / 知識処理ウインドウ ヽ、 \ 潮流計算実行中 // l ガイダンス ここの母線に舟路 リアクトルを投入 してください

ーー\\\口\、、

知 識 ベ ー ス 推 論 機 構 潮涜計算フレーム l†計算後に過電圧あり Then電圧調整フレームを起動 状況認識:過電圧あり 対策:分路リアクトル 投入が必要 電圧調整フレームl lfV(母線)>1.12p,∪. Then分路リアクトルを投入 図3 知的支援の動作例(過電圧対策) 知識ベースに解析上の評価基準や対策などを入 れておくことによって,解析計算および評価の自動化を行うことができる。 61

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762 日立評論 〉OL.了INo,8(1989-8) 揚水 kW 火力 水力 予測電力需要 原子力 4/1 (a)予測電力需要の電源配分 4/2 火力停止計画 火力発電計画 (b)部分問題分割例 (1日2時点) (1日2時点■) (1日24時点) (1日24時点) 図4 需給計画の概要 予測電力需要に合わせて,■日2時点および24時点の各種発電ユニットの運転・停止計画を 決める。実際には規模が大きいため,部分問題に分割して解く。 発電機名称 4/14/2 4/3 昼夜昼夜昼夜 第一1 発電所 2 3 4 1 0 1 0 1 0 11 11 ** 1 1 1 1 00* *** * * 〔制約条件〕

縦形制約(例聖賢数)

横形制約(例証謂)

〔決定戦術〕 どの順序で升目を埋めるか

(;:悪㌫雷止)

図5 火力停止計画 知識ベース内のいろいろな制約条件や決定戦術を自由に組み合わせて,火 力ユニットの運転・停止を順次決めていく。 1日の需要のピーク時とオフピーク時の2時点に注目し, どの発電機を停止するかという運転状況を決定する(図5)。 制約条件としては,予備九ユニットごとの起動可能条件, 連続運転日数条件,発電所最低運転ユニット数条件などを考 慮する。 (2)ユニット出力の算定 (1)で定めた運転状況に対して,ELD(Economic Load Dispatching)計算を行って各ユニットの出力を求める。線路 潮流の条件をチェックして,もし違反しているものがあれば, 満足するよう出力の調整を行う。条件が満足できない場合に は(1)へ戻る。 需給計画には,必ずしも数学的に厳密に表現できない制約 や評価因子が多い。最適化手法のようなアルゴリズム開発が 可能としても,長期には電源構成の変動に従った既存の電源 の運転形態の変動,燃料事情の変化などの,制約や評価因子 を根本的に変化させるような事態も考えられる。したがって, 固定したアルゴリズムでは,せっかくのプログラムが使えな くなる危険性も大きい。そこで,計画策走者の手足となり, データ整備,結果の整理を行い,ルーチン的作業を代行し, 計画者の創造力を刺激するものを目指した。具体的には,計 画者の指示に従って所定の方法で制約条件を満足する計画案 を求め,制約条件を満足する案のないときはその原因を教え, 対策案を提示する必要がある。このような考察に基づいて試 作したプロトタイ70システムを,図6に示す。 本システムは,総合管理プログラム,知識ベース(ライブラ リ),入出力インタフェースプログラム,推論作業実行環境の 4ブロックで構成される。ライブラリには,計画作成のため の戦略や戦術(ノウハウ),制約条件,各種問題の統合された 戟略,各種数値計算プログラムが含まれている。総合管理プ ログラムに従って,ライフ0ラリから必要な戦略,戦術,制約

(5)

電力系統設計計画支援エキスパートシステム 763 マ7

l

l

負 荷 曲 線

l

発電機基本データ

l

 ̄ 一 ̄l 統 一∠ゝl:コ lユニット停止・DSS決定用統合戦略 】火力追加停止決定用統合戦略】 戟 l l 略 l l l 戦 術

l選定ユニット決定用戦術l

l選定日決定用戦術l

l制約条件検索方法決定用戦術11

佃l約条件検索方法決定用戦術2l

l l 制 約 条 件 l油火力停止決定用制約条件l hNG火力停止決定用制約条件

lDSS実施決定用制約条件l

l l l プ数 口値 グ計 l制約条件付き等入法プログラム1 l揚水発電電力量計算プログラムl l ラ算 l ム l l l 総合管理プログラム 総合推論プログラム 総合管理知識ベース

入出力インタ フェース

推論作業実行環境

一 -■■+ ー1  ̄ ̄ ̄「 一---+一 +NG火力の整合 油火力の停止 揚水発電

[堕葬

LNG l 追加停止l +■■■ 一 一 一 一 一 --■-■一+ __+_ -2

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「 油火力の停止 揚水発電電力算定 計画策走者条件指示

.p州凧

[垂]

●問題定義 ●戟略・戦術 制約条件

[車司

___ノ ___ J __ l 1 1 1 1 1 l ___ノ 火力ユニット等入法 _____+ 注:略語説明 DDS(Daily StartandStop 毎深夜起動・停止) +NG(液化天然ガス) 図6 需給計画支援エキスパートシステムの構成 計画問題ごとに知識ペース内の戦略,戦術や制約条件と,数値計算プログラムおよび系統 データを組み合わせて発電機の運用計画を策定する。 条件,推論プログラムや計算プログラムが選択され,基本デ ータから選択されたデータと組み合わされ,計画策走者の指 示に従った推論や計算を実行する。すなわち,計画老の意思 に従った自由な組み合わせの推論や計算が実行される。さら にライブラリ中の要素の追加,変更もその部分だけで容易に 扱うことができる。 本システムは,東京電力株式会社と日立製作所の共同研究 によって試作したものである。 2.3 電圧・無効電力運用計画支援8) 2.3.一 関発のねらい 系統ごとの需要と発電力の予想曲線に基づき,電力用コン デンサや分路リアクトル,変圧器タップなどの電圧・無効電 力制御機器の一定期間の運用計画を立案する作業を支援する。 本システムでは,電圧Ⅴと無効電力Qを適正な値にするだけで なく,動作頻度,制御の余裕といった多数の因子を考慮しな がら,運用計画者のノウハウを用いて立案できる。 2.3.2 機能の概要 運用計画の作成例を以下に示す。いま,図7の電力系統に ついて,2時間ごとの負荷の需要予測と,発電機G.,G2の出 力予測が与えられている。母線①と⑧の電圧は1.Op.u.(per unit)に固定されている。このとき,需要曲線を満足するとと もに,発電機の運転許容範囲や変圧器のt(タップ)とSC(電力 用コンデンサ)の制約などを考慮しながら,負荷が接続された 母線③と⑥の電圧を常に0.99∼1.01p.u.に制御する。 本システムでは,次のような潮流計算手法と電圧・無効電 力制御戦略を用いて計画を立案する。 潮流計算A:電圧制御対象母線をPV指定として,電圧制御 対象母線に必要な無効電力を求める(P:有効電力)。 潮流計算B:電圧制御対象母線を殉指定として,無効電力 制御機器の効果と対象の母線電圧が適正値か否かを確認する。 規則1:SCの全投入量が系統全体の無効電力不足量以下 ならば,もっとも無効電力が不足している母線に系統構成上 もっとも近いSCを1バンク投入する。 規則2:進相運転になる発電機があれば,もっとも無効電 力が余っている母線にもっとも近いSCを1バンク切り離す。 また,運用計画を作成する手順を以下に示す。 (1)潮流計算Aにより,母線③と⑥の2時間ごとの無効電力の 過不足量を求める。 63

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764 日立評論 VOL.71No.8(柑89-8) L2 (p.],) 2.0 1.0 0.0 2.0 1.0 0.0 負荷 (力 ② ⑤ ⑥ Gl SCl tl t2 t3 t4 SC2 G2 (a)対象とする電力系統 Pい PL2 Qい OL2 ③ ④ (∋ ⑧ Ll ′■\_/ Gl G2 発電機 0 2 4 6 8 1012141ei18 20 22 24 (b)負荷の需要予測及び発電機の出力予測(時) 注:略語説明 Gl,G2(発電機),+1,+2(負荷),tl-t4(変圧器タップ) SCl,SC2(電力用コンデンサ),PLl,PL2(有効電力負荷) QLl,OL2(無効電力負荷) 図7 対象系統の需要予測および発電機出力 負荷の需要予札 発電機出九変圧器タップ,電力用コンデンサなどを考慮しながら,母 線③と⑥の電圧を常に0.99∼l.OIp.∪.に制御する。 (2)規則1,2に従って,2時間ごとのSC投入量の案を作る。 (3)1日全体を通してSCの操作頻度が少なくなるように,SC 投入量を変更する。 (4)2時間ごとのタップ操作量を求める。 (5)タップの操作頻度が多い場合,(3)へ戻る。 tl l.O t2 0.98 t3 1.O t4 1.O SCl O.3 SC2 0.3 0 2 4 6 8 1012141618 20 22 24 (時) (a)クッ70ぉよぴSCの操作量 (p,].) 1.01

1,。l

0.99 1.01 1.0 0.g9 V3 V6 0 2 4 6 8 10 1214 16 18 20 22 24 (時) (b)母線電圧 図8 電圧・無効電力運用計画の作成例 負荷の需要予測に合わ せて,変圧器タップと電力用コンデンサの操作量および操作頻度を決め た。その結果,母線③と⑥の電圧変動を±l%以下に抑えた。 (6)潮流計算Bにより対象母線の電圧および発電機の無効電 力出力が適正な値であることを確認し,運用計画とする。 本システムにより作成したタップ動作値とSCの運用計画, および母線電圧を図8に示す。SCおよびタップの操作量は最 小限に抑えられており,電圧は目標の範囲内に制御されてい る。 さらに,このような計画例をデータベース化し,この中か ら曜日,季節,天候などの属性を用いて選定したものを,上 記(3)以下の手順に従って改良し,応用することができる。 2.4 変電所レイアウト設計支援システム8),9) 2.4.1開発のねらい 変電所の設計仕様,建設予定地の状況など前提として与え られる条件の下で,母線・変圧器・開閉装置・調相設備など の各種機器・設備をレイアウトする設計業務を対話的に支援 する。 2.4.2 機能の概要

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LayoutDesignforSubstation)9)は,制約条件を満足するレ イアウト案を自動的に作成する機能,レイアウト結果をコス ト・騒音などの観点から評価する機能などを持っている。主 な特徴は次の2点にある。 (1)標準的レイアウトの自動作成,およびレイアウト結果の 評価のために,知識ベースに格納した専門知識を利用してい る。知識ベースの構成は,システムに求められる機能を反映 して,表1のようになる。知識ベース内のルール数は約1,900 である。ここにはルールの例を分類項目ごとに示しているが, この分頬項目がシステムの基本的な機能にほぼ対応している。 (2)レイアウト自動作成のための前向き推論機能のほかに, レイアウト修正を支援するための推論機能を利用している。 この推論機能は,図9に示す計画修正の処理を実現する仕組 みであり,レイアウト途中で一度決定した機器の位置を修正 する場合に,二次的な矛盾が生じないようにしている。この 機能は,データの依存関係を利用した後戻り処理(Dependency DirectedBacktracking)による無効データの削除と,デモン (必要に応じて呼び出される処理)によるデータの再構成によ って実現している。 また,上記の特徴を持つレイアウトシステムⅩL-Sを大容量 変電所のレイアウト設計に試験的に適用し,設計支援システ ムとして有効との見通しを得た。使用者の入力したコマンド の処理に要したCPU時間〔性能約24MIPS(MillionInstruc-tionsPerSecond)の計算機使用〕は,通常1秒以内,最大3 秒であった。

設計・計画業務への知識処理応用の特色

以上の適用例から,次のような知識処理応用上のポイント を挙げることができる。 (1)対話環境 問題解決を対話的に進め,問題解決の要所に人間の判断が 入れられるように構成している。また,系統解析支援の例に 見られるように,専門家のメンタルピクチャに直接訴えるよ う表示を工夫している。求められる人間の判断としては,制 約条件や評価基準を変更するかどうか,代替案を探索するか どうか,問題解決の手順として次に何をしなければならない かなどである。 (2)問題解決手段の分割 扱う問題が大きいので,問題解決の流れを概略決定から順 順に詳細決定に移るよう部分問題に分割している。その分割 は,専門家の問題解決手順の流れに準じている。また,途中 で行き詰まったら適当な前の段階に戻り,決定をやり直すよ うになっている。例えば変電所レイアウトの場合,設計仕様 に基づく機器の構成,標準的な機器配置の決定,配置の修正 というように問題解決の流れが分割されている。 (3)問題の簡単化 電力系統設計計画支援エキスパートシステム 765 表l変電所機器レイアウト用ルール レイアウト自動作成に必 要な機能別に,】′925のルールを10種に分類した。機器領域の組立や配置 修正に関するルールが約4割と多い。 No. 分 類 割合(%) ル ー ル の 例 1 用 15 入力されたコマンドが領域組立なら領 域組立用知識モジュールを起動する。 2 初 期 入 力 7 変電所の電圧を入力するrノ 3 機器領域組立 21 電圧がUHVのGISは縦の長さを16.5m とする 4 機器領土或配置修正 18 トランス領域とGIS領土或は隣接配置と する。 5 ケーブル作成 10 電圧がUHVのケーブルはGICとする。 6 道 路 作 成 4 UHV用トランスの搬入路の幅は12mとする。 7 ル ート 探 索 4 ルート探索用のサブルーチンを起動す (5,6で使用) る。_, 8 鉄 塔 配 置 3 第1鉄塔はガントリーから120mの位置 に配置する〔、 9 配置案 評 価 3 緑化率=(敷地面積一外周道路内面積)/ 敷地面積×100 10 土量計算システ ムコントロール 15 使用者の指示に基づき,レイアウト結 果を登録するために標識パターン用フ アイル作成モジュールを起動する。 ルール総数=,925),モジュール数(406),LISPルstprocessor)関数(400) 注:略語説明 UHV(超々高圧:1,000kV) GIS(ガス絶縁開閉装置) GIC(ガス絶縁ケーブル) 問題解決の各段階の部分問題の詳細度に応じて,問題を簡 単化している。例えば需給計画では,本来連続量である発電 ユニットの出力を,最初の段階では運転か停止かの二つの状 態で扱い,最後に連続量で扱っている。また,発電ユニット 出力は本来時間的にも連続量であるが,これも最初の段階で は1日をピーク時,オフピーク時の二つの時点で扱っている。 (4)デフォルト値の利用 問題解決の各段階で,デフォルト値(ほぼ妥当な標準解)を 利用している。需給計画の例では,運転状況の決定に際し一 応すべてのユニットは運転という前提のもとで検討を進め, 順々に停止できるものを探していく。 (5)制約条件や評価基準の変更の扱い 設計・計画問題は,前述したように問題解決を行う人の主 観に依存する部分が大きい。このため,(1)で述べたように随 所に人間の判断が入るようにしてあるが,この人間の主観を どう表現し,計算機で扱うかが問題となる。先の例では,こ れを部分問題ごとの制約条件や評価基準の変更として扱って いる。需給計画の場合,制約条件が物理的に絶対的に規定さ れるものと,そうではないものに分けている。前者は技術や 法令によるため簡単には変更できないが,後者は良さそうな 解を探すための条件であるため,途中得た解を見て強めたり 弱めたりできるようにしている。 65

(8)

766 日立評論 VOL.71No.8(1989-8) (a)修正前 D鉄塔 変電用設備 鉄塔を変電用設備の上下 対称に配置

くフ

(b)一次修正後 ロ鉄塔 ---_一一一一一へ 変電用設備 騒音低減などのため,変 電用設備を右に移動 制御本館

くフ

(c)二次修正後 【;鉄塔 変電用設備 位置関係が不適当な機器 を削除 制御本館

くフ

(d)修正完了 ロ鉄塔 削除された機器の位置を デモンにより再計算 変電用設備 制御本館 図9 レイアウト計画修正の処理過程 機器の位置を修正すると, そのために配置済みの機器の位置が不適当にならないように再配置する 必要がある。 (6)数値計算プログラムとの融合 知識工学を応用しようとする設計・計画問題の多くは,従 来から計算機化され,数値計算プログラムの財産があるもの が多い。このようなプログラムの中で利用できるものは,取 り込んでいくべきであろう。系統解析支援の例では,処理関 数としてユーザープログラムを組み込めるようにしている。 これらの応用手法は,知識処理応用の目的,すなわち (a)探索空間の限定化(計算時間,必要記憶容量の低減) (b)柔軟な問題解決の達成など に効果的に作用している。例えば,(2),(3),(4)は探索すべき 可能性を少なくして,許容時間内にある程度の解を求めるた めのテクニックである。また,(1),(5)は計算機上に表現しに くい判断を人間に行わせ,かつ支援システムの適用範囲を広 げ,システムを柔軟にするためにとられた措置である。 ところで,知識工学を応用したシステムで得られた結果が 必ずしも最適解となっている保証はか、。多くの場合は,ほ ぼ妥当な解または準最適解が得られているに過ぎない。これ は,実効的な時間内で解を求めるように(2),(3)の手段が取ら れているためである。実際に扱われる開局は非常に大規模で 数学的な性質も悪く,計算時間をかけても真の最適解が得ら れない場合が多いため,妥当な解を実用的な範囲でうまく利 用していると言える。

結 言 設計・計画分野への知識工学の応用を,主に適用例を中心 に説明した。いずれの例も,人間の創造的活動に属する設計 や計画の問題を解決するのを支援することを目的としている。 すなわち,人間を単純作業や簡単な評価・判断作業から解放 し,できるだけ創造的活動に精力が注げるようにすることを 目指している。今後,この分野への知識工学の応用展開はま すます拡大していくものと思われる。 知識工学応用のポイントは,何を計算機に行わせ,何を人 間に見せ,何を人間が判断するかなど,現在その設計・計画 作業に従事している人の意見が反映できることである。その ためには,設計・計画作業に従事している人自らが容易に開 発できるような支援システムの開発が急務であり,その実現 に向けて必要な技術開発を進めている。 参考文献 1)関根二最近のエキスパニトンステム技術の電力系統への適用, OHM,75,12(昭63-12) 2)川上:エキスパートシステムの設計・計画への応用,電気学会 全国大会シンポジウム,S.15-3(昭62-4) 3)川上,外:エキスパートシステムの構築技術,電気学会全国大 会シンポジウム,S.14-4(昭63-4) 4)福井,外:知的会話型系統解析支援システム,電気学会電力技 術研究会,PE-87-101(昭62-7) 5) 6) 7) 8) 9) 福井,外:知識工学応用による安定度解析用プログラムジェネ レータ,電気学会電力技術研究会,PE-85-103(昭60-7) 大坂,外:需給計画支援エキスパートシステムの概念設計,電 気学会全国大会,1032(昭61-4) 大坂,外:需給計画支援のための知識ベースシステムの開発, 電気学会電力技術研究会,PE-87-1.67(昭62-7) 郎寸,外二電圧・無効電力運用計画用エキスパートシステム, 電気学会電力技術研究会,PE-86-135(昭61-7) 吉軋外:知識工学の変電所機器レイアウトCADへの応用, 日立評論,57,12,971-974(昭60-12) 10)武藤,外:知識工学的手法を応用した変電所レイアウト設計支 援システム,電気学会論文誌C,108,6,385∼392(昭63-6)

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