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Academic year: 2021

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生態学事典序文 1

日本生態学会は 1953 年に発足して,今年でちょうど 50 周年を迎える.会員数は年々 増加の一歩をたどってきた.毎年の大会の会場は若い研究者であふれている.日本の生物 学分野では,かなり大きな学会に成長した. この生態学事典は,50 周年記念事業の一つとして編纂され,松本忠夫さん,菊沢喜八 郎さんと私の3名を編集委員として共立出版から上梓されることになった. 生態学は現在急速な発展期にあたる.ことに,20 世紀後半に明らかになった地球環境 の大きな変化とそれに対する一般社会の関心は,生物的自然のはたらきを理解しようとす る生態学に対する期待を高めることになった.たとえば地球環境問題のもっとも重要な側 面に生物多様性の喪失があるが,それは生態学が中心となって対応するべき問題である. 環境復元に関連して,土木工学や景観計画学の多くの専門家が生態学を学ぼうとしている. 生態学はまた,地球環境に関する科学として地球化学や気象学などの地球物理学との接点 があるとともに,森林科学,水産資源管理学,狩猟動物学などとの結びつきは,ますます 強まっている.その一方で,地球上の生物多様性をつくりだした進化を理解するには,生 態学は欠かせない研究領域である.また分子生物学の発展とともに遺伝学的手法が生態学 研究にふんだんに取り込まれ,社会的相互作用や生物種間相互作用の分子生物学が生命科 学の先端分野として脚光をあびるようになった. 本事典を編集するにあたっては,生態学を学ぼうとする学生や教師だけでなく,以上 のような幅広い関連他分野の研究者や学生,また環境問題や野外の生物に関心をもつ市民 が,生態学の教科書や文献を読んだり研究を進めたりするときに助けになることを念頭に おいた. 本事典での用語やその表記の選択については,「現時点において生態学分野で標準的に 用いられている用語のレンジを読者に伝え,文献や教科書にあたったときに戸惑わないよ うにする」ということを編集方針とした.初出の文献を調べたりその語の本来の意味を考 えたりするよりも,現在の日本生態学においてもっとも普通に用いられている用語を優先 して採用した.またこれまでの事典(岩波書店の生物学辞典(第4版)や築地書館の生態 学辞典など)や教科書,参考書などの文献を参考にし,過去の使用例との継続性に配慮し ながら用語を拾い上げた.項目名にならなくても,現在でも用いられている用語は「○○ ともいう」という形で述べ,索引に含めることによって引けるように工夫した. 私たちは,「権威ある委員会において用語集の決定版を作成し,一般に流布している使 用法の誤りをただす」という方針はとらなかった.そのようにした理由は,科学の発展と 学術用語の変遷に関する次のようなものの見方に基づいている.――用語の選択は,もの の見方や理論と同じく,時代とともに変わっていくものだ.現在使われている用語が少々 不合理に思えても,多くの人が使用し多くの文献がそれで書かれている限りは,それらを 用いて書かれた教科書や文献を読めるように事典を編纂することが望ましい.ことに,他 分野の人が生態学を学ぶ都合を考えればそれが必要である.本当に不適切な用語は時代と ともに消えていくだろう.とすれば,編集委員が用語の適切さを判断するよりも,いわば

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生態学事典序文 2 言葉の「自然淘汰」に任せる方が望ましい. このあたりのものの考え方,また整理の手際については批判も多々あろうと思うが, すべて私たち編集委員の責任である. 最初に項目のリストアップ作業を,30 名あまりの方にご協力をいただいて行った.そ のときの便宜のために,本書の巻末にかかげたような階層的区分をおこなった.しかし階 層的配置には無理がある.たとえば内容的に近い項目が,基礎生態学にも,バイオームの 区分にも分類群の区分にも現れてくる.そのため事典ではすべての項目を 50 音順で並べ ることにしたが,多数の索引語をあげて,どこからでも引けるように工夫をした.また各 項目はある程度まとまった長さ(約 800 文字程度)の文章を執筆者に書いていただいて, その中で小項目となる用語を多く取り上げて索引でひけるようにした.より長い説明が必 要と感じたものは,約 1600 文字もしくは約 3200 文字でお願いした. 項目の原稿は,執筆者が直接データベースに書き込んでいただき,それぞれに匿名の 査読者がついてコメントを述べ,編集委員の判断も含めて必要ならば執筆者に改訂をお願 いするというふうにした.これらの作業はすべて京都大学大学院農学研究科に置かれたコ ンピュータ上で行った.そのデータベースは,長谷川成明さんが作成し,それに基づいて 鈴木牧さんが編集作業を行った. 最終的に約 300 名にもわたる方にご執筆いただいた.またその中の 150 名の方には査 読をお願いした.内容の点で日本生態学会会員では執筆や執筆が困難と感じた項目には, 会員以外の方にもお願いした.人名項目の選定には常任委員会や全国委員会メンバーの協 力を得た.お忙しい中を快くご協力いただいた方々に深く感謝したい. 内容に明らかな誤りがある場合や,表記上の統一をはかる必要は別として,執筆内容に ついては,原則として執筆者の判断を尊重するという編集方針をとった.そのため項目に よって意見や論調が異なることがある.この生態学事典は,日本生態学会としての公式見 解を発表する場ではない.項目は,原稿の最後に記名された執筆者が,査読者や編集委員 のコメントを参考にして書かれたものである.また異なる項目に同じことの説明が現れて いることもあるが,重要な事柄の説明は繰り返し現れてもよいと考えて,あえてそのまま にした.多数の方に執筆をお願いしたために,それぞれの文章の違いにも個性が出ていて 面白みがある.このバラツキも含めて21世紀初頭における日本生態学会の意見分布を表 している.結局,編集作業を通じて生態学を学び,執筆者のものの見方を一番楽しんだの は,私たち編集委員であるように感じている. 編集作業全体を通じて,共立出版編集部ことに信沢孝一部長には感謝します.発案して から2年間でこの事典の編集作業を終えることができたのは,50周年記念大会に合わせ たいというタイムリミットのおかげもあるが,信沢さんをはじめとする関係者各位,およ び執筆者,査読者の皆様の献身的なご協力のおかげである.ここに深く感謝したい. 2003年3月21日

巌佐

巌佐

巌佐

巌佐

日本生態学会会長,編集委員を代表して

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