本施設は,南京市で二番目の都市ごみ焼却施設であり, 施設建設は南京市から事業権を取得した上海環境集団が 設立した南京再生能源有限公司(SPC:Special Purpose Company)が行い,荏原グループはごみ焼却関連設備(ご みピット~煙突)全体の基本設計を行うとともに,焼却 炉,及びその周りの主要機器類を納入したものである。 焼却炉設計に際しては,これまでの中国での経験を活か し,高含水率かつ灰分が非常に多いという中国特有のご み組成に対応した設計としている。
2.南京市の概要
南京市は,中国江蘇省の省都であり,江蘇省の政治, 経済,文化の中心で交通の要衝であり,面積6597 km2, 人口 818 万人の都市である。また,古くから長江流域・ 華南の中心地であり,六朝古都とも言われ,2600年以上 の歴史ある都市である。 南京市は,温暖湿潤気候に属し,夏は非常に蒸し暑く, 重慶市,武漢市と並び,中国で三本の指に入る暑い都市 (三大火炉)としても知られている。 図2に,中国大陸における南京市の位置を示す。 中国江蘇省南京(ナンジン)市に処理規模2000 t/d(500 t/24 h×4基)のストーカ式焼却炉を納入し,2016年3月に 性能試験を完了した。荏原環境プラント㈱及び青島荏原環境設備有限公司は,現在までに中国大陸において,既に流動床 式焼却施設2件,ストーカ式焼却炉5件の合計7件の納入実績があり,その内3件についてエバラ時報で報告した。本焼却 炉はそれらに続く8件目であり,施設規模が最大のプラントとなる。 中国で求められるごみ焼却技術は年々高度化し,2014年には中国の国家基準が改定され,ごみ焼却施設の排ガス規制値 が強化された。本稿では,厳しい排ガス規制値に対応するため採用した高度な排ガス処理設備の運転状況,性能試験結果 等について報告する。Ebara’s grate-type incinerators with a treatment capacity of 2 000 t/d (500 t/24 h × 4 lines) were delivered to Nanjing City, Jiangsu, China, and their performance test was completed in March 2016. Ebara Environmental Plant Co., Ltd. and Ebara Qingdao Co., Ltd. have already delivered incinerators to seven facilities in China: fluidized-bed incinerators to two facilities and grate-type incinerators to five. Three of them have been reported in past issues of the Ebara Engineering Review. This paper reports on the delivery of incinerators to the eighth facility in China, the plant capacity of which is the largest among the eight facilities.
In China, there is a need for ever-more-sophisticated waste incineration technology; in 2014, the relevant national standard of China was revised, and more stringent emission regulation of waste incineration plants were imposed. This paper reports the operating conditions, performance test results, etc., of the sophisticated flue gas treatment facility to meet the more stringent emission regulation.
Keywords: China, Nanjing, Municipal solid waste, Grate-type incinerator, EGR, SCR, Sodium bicarbonate injection
高度排ガス処理付き焼却炉設備の納入・運転状況
-江蘇省南京市-
Report on Delivery and Operational Condition of Grate-type (Stoker-type) Incinerator
with Advanced Flue Gas Treatment System in China – Nanjing City, Jiangsu Province –
黒 澤 和 重
*張 志 宝
**王 正 兵
** Kazushige KUROSAWA Zhibao ZHANG Zhengbing WANG* 荏原環境プラント㈱ ** 青島荏原環境設備有限公司
1.は じ め に
2016年3月に,中国江蘇省南京市にストーカ式焼却設 備を納入し,性能試験を実施,引渡しを完了した(図1)。 図 1 南京市ごみ焼却施設3.施設概要・特徴
南京市のごみ低位発熱量・ごみ組成を表1に,設備フ ローを図3,設備仕様を表2に示す。 公害防止基準値を表3に示す。O211%換算値は煙突出 口排ガス基準値であり,O212%換算値は,日本で使用さ れる単位,標準酸素濃度に変換した値である。 哈爾浜市 哈爾浜市 北京市 北京市 呼和浩特市 呼和浩特市 太原市 太原市 青島市 青島市 威海市威海市 上海市 上海市 廈門市 廈門市 南昌市 南昌市 江蘇省南京市江蘇省南京市 漳州市 漳州市 納入済みストーカ式焼却炉 納入済み流動床式焼却施設 図 2 中国大陸における江蘇省南京市の位置 表 1 設計ごみ低位発熱量・ごみ組成 項目 低質ごみ 設計ごみ 高質ごみ 低位発熱量 4187 kJ/kg 6699 kJ/kg 8374 kJ/kg 水分 56.1% 48.4% 43.2% 可燃分 25.2% 33.4% 38.9% 灰分 18.5% 18.1% 17.8% 表 3 煙突出口排ガス基準値 項目 O211%換算値 O212%換算値 ばいじん ≦8.0 mg/m3(NTP) ≦7.2 mg/m3(NTP) 硫黄酸化物 ≦50 mg/m3(NTP) ≦15.8 ppm 窒素酸化物 ≦80 mg/m3(NTP) ≦35.1 ppm 塩化水素 ≦10 mg/m3(NTP) ≦5.5 ppm 一酸化炭素 ≦50 mg/m3(NTP) ≦36.0 ppm フッ化水素 ≦1 mg/m3(NTP) ≦1.0 ppm ダイオキシン類 ≦0.1 ng-TEQ/m(NTP) ≦0.09 ng-TEQ/m3 (NTP)3 排ガス再循環通風機 循環ガス再加熱器 無触媒脱硝 プラットホーム ごみ運搬車 ごみピット ごみクレーン 焼却炉 焼却炉 ボイラ ボイラ 灰押出装置 焼却灰 半乾式 反応塔 バグフィルタ 飛灰 誘引送風機 排ガス再加熱器 触媒反応塔 押込送風機 空気予熱器 ごみ ホッパ 活性炭 重曹 タービン発電設備 アンモニア アンモニア水気化器 煙突 主蒸気 消石灰スラリー 図 3 設備フロー図 表 2 設備仕様 項目 形式・仕様 焼却炉 エバラHPCC型 ※1 ストーカ式焼却炉 処理量:2000 t/d(500 t/24 h×4基) ボイラ※3 過熱器付自然循環式水管ボイラ 蒸発量:47.0 t/h(最大51.7 t/h)×4缶 蒸気条件:400 ℃×4.0 MPa(ゲージ圧,過熱器出口) 蒸気タービン 発電設備※4 蒸気タービン(復水式)+発電機 タービン定格:18 MW ×2基 発電機定格:20 MW×2基 排ガス処理 設備※3 集じん方式:バグフィルタ HCl・SOx除去方式:半乾式有害ガス除去(消石灰 スラリ噴霧),乾式有害ガス除去(重曹噴霧) 脱硝方式:無触媒脱硝(SNCR)※2,触媒脱硝(SCR)※2 ダイオキシン類・水銀対策:活性炭噴霧方式 煙突※3 外筒:鉄筋コンクリート造,内筒:鋼製 高さ:80 m※1:HPCC:High Pressure Combustion Control ※2:SNCR:Selective Non Catalytic Reduction
SCR:Selective Catalytic Reduction ※3: 荏原グループ所掌:基本設計
SPC所掌:購入
4.納入範囲,性能保証と建設スケジュール
中国におけるごみ焼却施設の建設は日本国内向け施設 と異なり,ごみ処理事業を請け負ったSPCが自ら行うた め,当グループはごみ焼却関連設備(ごみピット~煙突 まで)の基本設計(一部詳細設計を含む),焼却炉周り の主要機器(ストーカ,油圧装置,バーナ,自動燃焼制 御装置,ごみホッパレベル計)の納入,さらにスーパー バイザの派遣を担当した。保証事項を表4に示す。 建設スケジュールを表5に示す。契約から引渡しまで 3年2箇月であった。5.本施設の特長
5-1 乾式重曹噴霧方式の採用 南京市は安徽省との省境に近く,他省への有害ガス拡 散抑制のため,非常に厳しい排出基準が課せられている。 本施設のように,塩化水素濃度10 mg/m3(NTP)以下 の排ガス基準に対応するには,有害ガス除去性能に優れ た湿式洗煙装置の採用が有効であるが,湿式洗煙装置は 必要な補給水量・排水量が多く,蒸気タービンでの発電 量も低下することから,SPC判断で,採用しないことと なっていた。 そこで,当グループでは南京市の厳しい排出基準に確 実に対応するため,SPC指定の半乾式有害ガス除去装置 に加えて乾式重曹噴霧をバックアップとして設置するよ うに基本設計段階で提案設計し,採用されたものである。 本施設における排ガス処理設備(半乾式有害ガス除去 +重曹噴霧)入口と煙突出口の HCl濃度を図4に,SOx 濃度を図 5 に示す。HCl は保証値 10 mg/m3(NTP)に 対して5 mg/m3(NTP)程度を維持しており,除去率は 約 98.5%と非常に高い。また SOx は保証値 50 mg/m3 (NTP)に対して約3 mg/m3(NTP)程度を安定的に維 持しており,除去率は91%程度であった。 5-2 排ガス循環(EGR)による NOx 発生抑制策と触 媒脱硝装置(SCR)の採用 2014年に改訂された中国の国家基準「GB18485-2014 生 活ごみ焼却汚染抑制基準」では,新設の都市ごみ焼却プ ラントのNOx排出基準値は250 mg/m3(NTP)O 211%換 算(約110 ppm O212%換算)と定められている。 50 40 30 20 10 0 500 400 300 200 100 0 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 排ガス処理設備入口 塩化水素濃度 mg/m 3(NTP) (O 2 11%換算値) 排ガス処理設備入口,平均=325.6 mg/m3 (NTP) 煙突出口,平均=4.9 mg/m3 (NTP) 時間 h 煙突出口 塩化水素濃度 mg/m 3(NTP) (O 2 11%換算値) 図 4 排ガス処理設備入口と煙突出口のHCl濃度 表 4 保証事項 項目 保証事項 年間累計運転時間 8000時間以上 運転範囲(焼却量負荷) ただし,110%負荷は2 h/d以内 60 ~ 110% 炉出口温度 850 ℃以上,2秒間以上 灰の熱灼減量 3%以下 ボイラ効率 80%以上 火格子交換率 運転時間 8000 h 4%未満 16000 h 11%未満 24000 h 15%未満 32000 h 18%未満 表 5 建設スケジュール 項目 スケジュール 契約 2013年1月 機器据付け 2013年7月~ 2014年9月 試運転(ごみ焼却) 2015年1月~ 2016年3月 引渡し 2016年3月しかしプラントの立地条件や客先の要求で,中国の国 家基準よりも厳しい排出基準が求められる場合があり,排 出基準値に応じて適切な脱硝技術を採用する必要がある。 本 施 設 に お け る NOx 規 制 値 は,80 mg/m3(NTP) O211%換算(約35 ppm O212%換算)以下であり,日本 国内の一般的な規制値と比較しても厳しい規制値であっ たため,当グループではまず基本設計段階において,排 ガス循環方式(EGR:Exhaust Gas Recirculation)採用 による低空気比運転でNOx発生抑制を図ることを提案し た。さらに無触媒脱硝方式(SNCR)に加えて触媒脱硝 装置(SCR)を採用し,確実に規制値を満足するよう提 案した。その結果SPCは3号炉にだけSCRを採用するこ とを決定した。SCR は触媒を用いて NOx をアンモニア と反応させて還元除去するものであり,日本国内のごみ 焼却施設では,一般的なものであるが,中国では近年導 入が始まったばかりであり,本施設はSCRを採用した先 進的な事例となった。
6.性能試験結果
性能試験では,一部顧客事情によって検証できなかっ た項目を除き,全ての項目で保証値を満足することがで きた。性能試験の結果を表6に示す。 排ガス再循環の効果の詳細については前号2)の記載に 譲るものとし,本施設におけるSCR使用時の運転データ を図6に示す。SCRは3号炉にだけ設置されているため, 図6は3号炉のデータを示している。3号炉はSPC側の事 情によって,排ガス再循環機能が発揮できなかったため, SCR前(ボイラ出口)のNOx濃度は100 mg/m3(NTP) 50 40 30 20 10 0 8:00 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 16:00 硫黄酸化物濃度 mg/m 3(NTP) (O 2 11%換算値) 排ガス処理設備入口,平均=29.0 mg/m3 (NTP) 煙突出口,平均=2.7 mg/m3 (NTP) 時間 h 図 5 排ガス処理設備入口と煙突出口のSOx濃度 120 100 80 60 40 20 0 18 15 12 9 6 3 0 9:00 10:00 11:00 12:00 13:00 14:00 15:00 窒素酸化物,一酸化炭素濃度 mg/m 3(NTP) (O 2 11%換算値) ボイラ出口酸素濃度 vol% ボイラ出口窒素酸化物濃度,平均=100.8 mg/m3 (NTP) ボイラ出口酸素濃度,平均=4.2% 煙突出口一酸化炭素濃度,平均=4.3 mg/m3 (NTP) 煙突出口窒素酸化物濃度,平均=47.6 mg/m3 (NTP) 時間 h 図 6 SCR前後のNOx濃度程度となっているが,SCR後(煙突出口)のNOx濃度は 50 mg/m3(NTP)程度まで下がっており規制値を十分 に下回っている。SCR の脱硝率は 50% 強を示しており, 今後NOx規制値が更に厳しくなった場合でもSCRの設置 によって十分に対応可能であることを示すことができた。