シンデレラ物語論攷
鈴
木
滿
〔初めに〕
論者は民話〔=昔話〕を基として文人により物語に仕立てられたシンデレラ譚を主として取り上げ、これらを紹 介、かつ、物語に投影された文化を理解するためできるだけ注を施してみた。こうした、口承文芸研究者にはおそ らくほとんど不要ではあろうが、一般の方方にとってはけっこう新知識といった性質の解説がこの物語の分析にど れほど役立つかは分からない。とまれかくまれ、アンナ・ビルギッタ・ルートがいみじくも述べているように「物 語 の 研 究 と い う 題 目 に 関 し て は、 多 く の 異 な っ た 見 解 が 提 唱 さ れ 得 る (( ( 」。 も っ と も、 物 語 の 全 分 野 と 生 涯 の 研 究、 すなわち物語のあらゆる分野からの研究を第一義とした、すなわち、ある孤立した話型ではなく、一纏まりの、相 互 に 関 連 あ る 話 型 を 研 究 す る こ と が 重 要 で あ る、 と 強 調 し て 已 ま な か っ た C・ W・ フ ォ ン・ シ ド ウ (( ( か ら す れ ば、 「 シ ン デ レ ラ 物 語 」 と い う 一 つ の 話 型 の、 そ れ も 民 話 を 素 材 と し た 物 語 を 並 べ て 些 細 な 事 項 ま で あ げ つ ら っ た 小 論 は、莫迦げた、非実用的な作業に過ぎないかも知れない。しかし、的外れでちっぽけな努力もひょっとして獅子に84 対する小鼠の貢献ほどになるまいものでもなかろう。とりわけ、文献として今に残っている九世紀唐代の完全なシ ン デ レ ラ 物 語 の 原 文、 訓 読 文、 訳 文 に は、 口 承 文 芸 お よ び 関 連 分 野 研 究 に ご 専 門 の 向 き も ま ず は ま あ ご 流 覧 く だ さって、いささかなりともご示教を戴ければ幸い、と存ずるしだい。 さて
─
。 アメリカの民俗学者、フィンランド学派の口承文芸研究家スティス・トンプソン(一八八五─一九七六)がその 著『民間説話』 The Folktal e (3 ( で、全世界に亘って汎く知られていて大量の資料がありながら、系統付けられていな い た め 大 き な 問 題 を 抱 え て お り、 そ の い ず れ も が 今 後 の 研 究 課 題 と な っ て い る、 と 指 摘 し て い る (4 ( 六 つ の 話 (( ( の 中 に 「シンデレラ(灰かぶり娘)がある。 『 シ ン デ レ ラ 』 と 題 し て シ ン デ レ ラ 物 語 の 最 初 の 重 要 な 収 集 を 行 っ た の は 英 国 の マ リ ア ン・ ロ ウ ル フ・ コ ッ ク ス ( 一 八 六 〇 ─ 一 九 一 六 ) (( ( で あ る。 た だ し、 お も し ろ い こ と に 英 国 に は 地 物 の「 シ ン デ レ ラ 」 は 存 在 し な か っ た よ う で、 英 国 現 行 の 話 は ペ ロ ー の「 サ ン ド リ ヨ ン 」( 後 述 ) の 移 入 で あ る。 次 い で 小 論 冒 頭 に そ の 名 を 挙 げ た ス ウ ェ ー デンのアンナ・ビルギッタ・ルート(一九一九─二〇〇〇)の研究『シンデレラ・サイクル 』 (( ( が出ている。これは A・B・ルートが師事したC・W・フォン・シドウの拠るフィンランド学派の立場から、正規のシンデレラ物語の み で は な く、 「 シ ン デ レ ラ・ サ イ ク ル 」 に 属 す、 と A・ B・ ル ー ト が 考 え た 五 つ の 話 型 を 巻 頭 に 掲 げ て 比 較 の 手 法 を 用 い か つ 総 合 的 に 分 析 し た 論 文 で あ る。 ち な み に A・ B・ ル ー ト は「 最 初、 マ リ ア ン・ ロ ウ ル フ・ コ ッ ク ス の 『 シ ン デ レ ラ 』 を 読 ん だ 時、 私 は、 収 集 さ れ た 多 量 の 資 料 と、 ミ ス・ コ ッ ク ス が 三 四 五 以 上 の シ ン デ レ ラ 物 語 を 再 話している、その伎倆と完璧さとに深く感銘を受け た (8 ( 」と記している。日本では『世界のシンデレラ物語 』 (( ( として 山室静に詳しい論考がある。フィンランドの民俗学者アンティ・アール ネ ((( ( (一八六七─一九二五)が一九一〇年出版した〔いかにも律儀な題 名 の 〕 業 績『 専 門 領 域 に お け る 知 友 各 位 の ご 支 援 を 受 け し 昔 メ ル ヒ ェ ン 話 話 型 索 引 』 Verzeichnis der Märchentypen mit Hülfe von Fachgenossen ( ド イ ツ 語 ) を 前 記 S・ ト ン プ ソ ン が 英 訳、 更 に 増 補 改 訂 し た『 民 話 の 話 型 』 The Types of the Folktale は 一 九 二 八 年 に 完 成 し た が、 S・ ト ン プ ソ ン は こ れ に 甘 ん じ る こ と な く、 更 に 膨 大 な 民 話 を 集 め、 類 別 し て、 更 に 改 訂 増 補 を 行 な い、 そ の 結 果 分 量 は 十 倍 に 膨 れ 上 が っ た。 こ れ が 現 在 あ る ア ー ル ネ / ト ン プ ソ ン 『 民 話 の 話 型 』 で あ る。 す な わ ち A T ((( ( ( Aarne/Thompson )。 こ こ で は 上 記 の よ う に シ ン デ レ ラ 型 は 五 一 〇 A と 整 理番号が付けられている。五一〇は「シンデレラと藺草頭巾」で、五一〇Bは「黄金のドレス、白銀のドレス、星 星のドレス(藺草頭巾) 」である。 ただしATの更なる増補改訂版が二〇〇四年に新たに出た。AT U ((( ( と略しておく。これがハンス=イェルク・ウ ター『国際的民話の話型』 Hans-Jörg Uther: The Types of International Folktales である。こちらでは五一〇「シ ン デ レ ラ と 驢 ポ ー ・ ダ ー ヌ 馬 皮 」 ((3 ( 、 五 一 〇 A「 シ ン デ レ ラ( チ ェ ネ レ ン ト ー ラ、 サ ン ド リ ヨ ン、 ア ッ シ ェ ン プ ッ テ ル )」 ((4 ( 、 五 一 〇 B「 驢 ポ ー ・ ダ ー ヌ 馬 皮 」( 以 前 の〔 す な わ ち A T に お い て は 〕「 黄 金 の ド レ ス、 白 銀 の ド レ ス、 星 星 の ド レ ス( 藺 草 頭 巾 )」 ) ((( ( 、 と分類され、五一〇B*「箱の中の王女 」 ((( ( が立てられている。 A T U 五 一 〇 A「 シ ン デ レ ラ( チ ェ ネ レ ン ト ー ラ、 サ ン ド リ ヨ ン、 ア ッ シ ェ ン プ ッ テ ル )」 の 筋〔 英 語 の 記 述 か ら 邦訳〕 ある乙女が継母と継姉妹たちに苛められ、召使いにされて灰の中で暮らさねばならない。姉妹たちと継母が舞踏
8( 会 に 行 く 時、 彼 女 ら は シ ン デ レ ラ Cinderella 〔「 灰 だ ら け っ 子 」 ほ ど の 意 の 綽 名。 cinder ( 灰 )+ el (縮小語尾) + a ( 女 性 形 )〕 に 不 可 能 な 仕 事( た と え ば、 灰 か ら 豆 を 選 り 出 す ) を 命 じ る。 乙 女 は そ の 難 題 を 鳥 た ち の 助 け で 果 た す。 美 し い 衣 装 を 何 か 超 自 然 的 存 在、 あ る い は 亡 き 母 の 墓 に 生 え た 樹 木 か ら も ら い、 名 を 知 ら れ ず に 舞 踏 会 に 出 る。王子が乙女に対する恋に落ちるが、彼女は早めに舞踏会を後にしなければならない。同じことが次の晩にも起 こる。しかし、三晩目に彼女は靴を片方失くす。 王 子 は、 靴 が ぴ っ た り 合 う 女 性 と だ け 結 婚 し よ う、 と 決 意 す る。 継 姉 妹 た ち は そ の 靴 に 足 が う ま く 入 る よ う に、 自分たちの足を一部分切り落とす。一羽の鳥がこのごまかしに注意を促す。初め王子に隠されていたシンデレラが 靴を試し、それがぴったり合う。王子は彼女と結婚する。 なお小論における〔 〕内は注におけるそれも含めて論者の補足である。
〔二〕ロドペーの伝説
ギ リ シ ア 人 の 大 地 理 学 者 ス ト ラ ボ ン ((( ( (? 前 六 三 ─ 紀 元 二 一 / 二 三 ) が 著 書『 地 ゲ オ グ ラ フ ィ カ 理 誌 』 で 述 べ て い る。 こ の こ と はヤーコプ・グリムによって夙に指摘されてい る ((8 ( 。 他の二つより遙かに小型だが、遙かに多額の費用を要した、とのエジプトのピラミッドについてのストラボンの 記 事 ((( ( 。( 前 略 ) 石 は 遠 方 か ら 運 ん だ も の で あ る。 す な わ ち、 エ チ オ ピ ア 地 方 の 山 か ら 出 し、 材 質 が 硬 く 加 工 し 難 い た め 工 事はひじょうに高くついた。 また、これはある遊女の墓で愛慕者たちが築いた、という。叙情詩人サッポーはこの遊女をドリカと呼んで、自 分の兄弟カラクソスから恋されていた女人だとし、兄弟の方はレスボス酒をナウクラティス市へ運んで来て商売を していた、としているが、女人の方をドロピス〔ママ〕という名で呼ぶ人びともいる。 伝説もあってそれによると、この女人が入浴している折一羽の鷲が履物の一方を侍女の手から掠うとメンピスま で運んで行った。そして、王が野天で裁きを下していたところ、鳥は王の頭上へ来るとその履物を王の膝へ落とし た。王は履物の格好の良さと不思議な出来ごとに心動いて地方へ使いをやり、これを履いていた当人を探させた。 女人はナウクラティスの市で見つけ出され、伴われて都へ上ると王の妻となり、死後この墓を造ってもらった。 以下はヤーコプ・グリムによる当該伝説の紹介。 彼 女〔 ロ ド ペ ー Rhodope 〕 が 沐 浴 を し て い た 時、 一 羽 の 鷲 が 彼 女 の 靴 の 片 方 を 攫 さ ら い、 メ ン フ ィ ス〔 上・ 下 エ ジ プト王国のうち下エジプトの大都。エジプト古王国時代の首都。カイロの南方にあった〕に持って行った。ここで エ フ ァ ラ オ ジプト王 が戸外〔=公明正大な裁きであることを示すため衆人が視聴できる場所〕で裁判を行っていた。すると 鷲は エ フ ァ ラ オ ジプト王 の膝へ靴を投げ込んだ。この椿事と靴の繊細さに勃然と心動かされた エ フ ァ ラ オ ジプト王 は全土に命令を下 し、この靴に合う美しい 足 ((( ( を探させた。そしてナウクラティス市〔エジプト北部ナイル河大 三 デ ル タ 角州 にあった古代ギ リシアの殖民都市〕でロドペーが発見され、 エ フ ァ ラ オ ジプト王 の妃とされた。
88 ロドペー、あるいはロドピスについては、古代ギリシアの大歴史家ヘロドトス(?前四八四─四二四)がその著 『 歴 ヒ ス ト リ ア イ 史 』 ((( ( ( 二 巻 一 三 四 ─ 一 三 五 節 ) で 記 し て い る。 こ れ に よ れ ば、 美 貌 一 世 に 轟 い た 前 六 世 紀 の 古 代 ギ リ シ ア の 白 し ら 拍 びょう 子 し ( 高 ヘ タ イ ラ 級 遊 女 ) で あ る。 生 ま れ は ト ラ キ ア だ が サ モ ス 島 の 金 持 ち に 売 ら れ、 や が て や は り サ モ ス 島 人 に 伴 わ れ て エ ジ プ ト に 到 来、 こ の 地 で 名 高 い 閨 秀 詩 人 サ ッ フ ォ ー の 兄 弟 の カ ラ ク ソ ス に よ っ て 身 請 け さ れ て 自 由 の 身 に な り、その後巨富を蓄えたとか。なおヘロドトスは、ロドペーが エ フ ァ ラ オ ジプト王 の妃になった云云については何も記して いない。
〔三〕
「
灰
ラ ・ ガ ッ タ ・ チ ェ ネ レ ン ト ー ラだらけのにゃんこ
(
竈
かまど猫
ねこ)」
La Gatta Cenerentola
十七世紀のジャンバッティスタ・バジーレ著『 お ロ・クント・デリ・クンティ 話中のお話 』( 五 イル・ペンタメローネ 日物語 ) ((( ( 第一日第六話。 ナポリのある大公の一人娘ゼゾッラ〔シンデレラ物語の女主人公に固有名詞があるのは珍しい〕は父親に溺愛さ れており、有能な針仕事の先生カルモジーナをつけてもらっている。この女の先生は令嬢をとてもかわいがる。大 公が再婚。新しい奥方は意地悪で継子を苛めだす。 ゼゾッラはしょっちゅうカルモジーナに継母の酷い仕打ちを訴え、先生がお母様だったらいいのに、と嘆く。そ のうちカルモジーナは令嬢にこう知恵を付ける。 今着ている服を汚したくないから、蔵の大きな櫃に入っている古服を出して欲しい、と継母に頼め。継母は継子 がみっともない身なりでいるのが好きだから、承知して衣装箱をかきまわすだろう。そしてその間蓋を支えているように、と言うだろう。継母が首をつっこんでいる時、蓋を落として、首を折ってしまえ。それから父親に、先生 をお母様にして、と願え、と。 ゼゾッラはやがて先生の指示通りに継母を殺すことに成功。更に父親にしきりに頼んで、カルモジーナを奥方に 迎 え さ せ る。 こ う し た 折、 ゼ ゾ ッ ラ が 独 り で 露 台 に い る と、 一 羽 の 鳩 が 飛 ん で 来 て、 願 い 事 が あ っ た ら、 サ ル ディーニ ャ ((3 ( の妖精鳩に言伝すれば、それが叶う、と言う。 カルモジーナは一週間ほどはゼゾッラをちやほやするが、やがて隠していた六人の娘を連れ込み、大公に巧みに 取り入らせる。大公はこの女たちにかまけ、ゼゾッラをかわいがらなくなる。すると彼女の立場は急転直下どん底 に 落 ち、 台 所 の 竈 かまど の 傍 で ぼ ろ を 着 て 働 か さ れ る 始 末 で、 竈 か ま ど ね こ 猫 ( ((4 ( ラ・ ガ ッ タ・ チ ェ ネ レ ン ト ー ラ La Gatta Cenerentol a ((( ( )という綽名が付く。 ある時大公は政務でサルディーニャ島へ赴かねばならなくなる。出発前に六人の義理の娘たちに、土産に何が欲 し い か、 訊 ね る。 最 後 に、 つ い で と い っ た 調 子 で、 実 の 娘 に も 質 問 す る。 ゼ ゾ ッ ラ は、 妖 精 鳩 に 自 分 の こ と を 伝 え、何か戴けますか、と言って欲しい、と頼む。大公はサルディーニャで公務を済ませ、六人の義理の娘たちへの 土 産 物 を 調 え、 船 に 乗 り 込 む。 と こ ろ が 船 は ど う し て も 港 か ら 出 ら れ な い。 疲 れ き っ た 船 長 の 夢 に、 妖 精 が 現 れ、 大公が実の娘との約束を守らないから船が出ないのだ、と告げる。船長が大公にこの旨を伝えると、大公は狼狽し て妖精の洞窟を訪ね、娘の挨拶を言伝し、何かお土産を、と願う。洞窟から美しい乙女が現れ、私に縋って元気を 出すよう、娘さんに伝えてください、と言い、金色の 棗 なつめ 椰 や し 子 の ((( ( 木、シャベル、缶、絹のハンカチをくれる。 父親からこれらを受け取ったゼゾッラは驚喜して、植木鉢に棗椰子を植え、毎日水をやり、ハンケチで拭く。四 日 す る と、 木 は 女 性 く ら い の 丈 と な る。 そ し て 木 か ら 妖 精 が 出 て 来 て、 望 み を 訊 く。 そ し て 呪 文 を 教 え て く れ る。
(( これを唱えると、ゼゾッラが欲しい物は何でも出て来るし、また、戻しもできるのである。 お祭がある。カルモジーナの六人の娘たちは着飾って出かける。ゼゾッラは呪文を唱え、女王のような衣装を纏 い、十二人の従僕を従えて、白馬に乗って行く。義理の姉妹たちはだれだか分からないまま、この乙女の美しさを 羨む。折しも王がそこに居合わせる。王は乙女に一目惚れし、供の者に命じて、跡をつけて名前と住まいを見つけ るように、と言う。ゼゾッラは金貨を一摑み投げて、召使いがそれを拾っている間に逃げる。王は怒る。 次の祭。ゼゾッラは従者とお小姓付きの六頭立ての馬車で出かける。王に命じられた召使いが追って来ると、ゼ ゾッラは真珠と宝石を一握り投げて、召使いがそれを拾っている間に逃げる。王は激怒して、次に行方を突き止め ないと、ひどい目に遭わせる、と召使いを脅す。 三回目の祭。大勢の従僕を従え、黄金の馬車に乗ったゼゾッラ。しかし、引き上げる際、王の召使いはその馬車 に 縄 で 体 を く く り つ け て し ま う。 そ こ で ゼ ゾ ッ ラ は 馬 車 を 疾 走 さ せ る。 馬 車 は 大 層 揺 れ、 召 使 い も 諦 め る が、 ゼ ゾッラの 木 ピ ア ネ ッ ラ 製の靴台 〔 ((( ( 別段、小さい、とは強調されていない〕が片方脱げて落ちてしまう。召使いはやむなくこれ を拾って持ち帰り、王に報告する。 王は 布 ふ れ 告 を出し、ナポリ中の女を王の名の下で催す祝宴に招き、宴が果てる頃、全員に例の靴台を履かせる。し かし合う者は一人もいない。そこで王は、明日もう一度全員が来るよう厳しく命じる。そこで大公が、娘がもう一 人いるが、惨めなろくでなしなので人前には出せない旨言上すると、王は、特にその娘を連れて来るよう言いつけ る。そこでゼゾッラも翌日は継母とその連れ子たちとともにやって来る。靴台がゼゾッラの前に置かれると、鉄が 磁 石 に 吸 い 付 く よ う に、 ゼ ゾ ッ ラ の 足 に 飛 び つ く〔 話 し 手 が 靴 台 に こ う し た 魔 力 を 持 た せ た の は 頷 うなず け る 〕。 王 は ゼ ゾッラと結婚する。六人の義理の姉妹は妬みで真っ青になって帰宅する〔この娘たちとカルモジーナへの懲罰は別
段記されていない〕 。
〔四〕
「
サ
ン
ド
リ
ヨ
ン
、
あ
る
い
は
小
さ
な
ガ
ラ
ス
の
上
履
き
靴
」
Cendrillo
n
((8 (ou la petite pantoufle de verr
e
((( ( シ ャ ル ル・ ペ ロ ー 作『 過 ぎ し 昔 の 物 語 あ る い は お 伽 話、 な ら び に 教 訓 』 ま た の 名『 鵞 鳥 お ば さ ん の お 伽 話 』 (一六九七) Charles Perrault: Les Histoires ou Contes du temps passé. Avec Moralitéz ( =Moralités )/Contes de ma mère l ,Oye ( =l ,Oie ) (=いわゆる「ペローお伽話」 ・「ペロー童話 」 (3( ( )収録。 ペ ロ ー が バ ジ ー レ の「 灰 ラ ・ ガ ッ タ ・ チ ェ ネ レ ン ト ー ラ だ ら け の に ゃ ん こ ( 竈 猫 )」 を 読 ん で い た か ど う か 不 明。 し か し、 ナ ポ リ 方 言 の イ タ リ ア語なので、仮に本が入手できたにしてもそれを読解した可能性は少な い (3( ( 。 な お、 女 主 人 公 は 継 母 が 連 れ て 来 た 二 人 の 娘 で あ る 義 姉 た ち に 苛 め ら れ る が、 純 真 無 垢、 優 し い 性 格 で あ り 続 け、最後に王子と結婚することになって、幸せになっても、義姉たちに復讐するどころか、それぞれを大貴族と結 婚させてやる。逆境にあってもめげてはならないが、順風満帆の境涯になっても謙虚にふるまうべきだ、とペロー は倫理を説いているわけ。 ある大貴族の一人娘。母が死に、父が再婚。継母は二人の娘とともに邸に来る。連れ子たちは顔は綺麗だが心は 良くない。母娘は女主人公を虐待し、下女として追い使う。夜になっても台所の炉の灰の上で寝なければならない の で、 着 物 の 尻 が 灰 で 汚 れ る。 そ こ で 邸 で は 彼 女 を「 キ ュ サ ン ド ロ ン 」( 灰 尻 っ 子 ) と 呼 ぶ。 連 れ 子 た ち の う ち い くらか言葉の丁寧な妹の方は「サンドリヨン」と呼ぶ。 サンドリヨンは父親に訴えたりしない。なぜなら父親は継母の言いなりなので、却って叱られてしまう、と察し(( ていたので。 王宮で舞踏会が催される。王子が国中の身分の高い人たちを皆招待。 継母の連れ子たちは舞踏会に行く仕度のため、サンドリヨンを手伝わせる。 義姉たちが出かけたあと、サンドリヨンは泣き崩れる。すると女の名付け親(代母)の 妖 フ ェ 精 が (3( ( 突然出現、援助を 提供してくれる。 妖 フ ェ 精 は、魔法の杖を使って、南瓜から馬車を、二十日鼠たちから馬を、立派な鬚を生やしている 鼠 か ら 御 者 を、 蜥 蜴 か ら 従 者 を 作 り 出 し、 サ ン ド リ ヨ ン の 汚 い 服 は 金 糸 銀 糸 の 刺 繍 を 施 し 宝 石 を 鏤 め た 衣 装 に し、 真 夜 中 に は 戻 る よ う、 十 二 時 を 一 分 で も 過 ぎ る と 皆 元 に 帰 っ て し ま う か ら、 と 堅 く 言 い 付 け る。 他 に ガ ラ ス 製 上 パ ン ト ゥ フ ル 履き靴 をくれる〔これは何かを変化させたのではないので真夜中を過ぎてもそのまま存在する〕 。 王子はこの美女と踊り、美味しい物を取ってくれる。サンドリヨンはそうした物を義姉たちに分けて、話相手に する。十二時十五分前に別れを告げる。 翌晩ももっと素晴らしい衣装を着て舞踏会に。王子は傍を離れない。真夜中を告げる鐘の音にびっくりしたサン ドリヨンは慌てて逃げ出し、片方の 上 パ ン ト ゥ フ ル 履き靴 を脱ぎ捨ててしまう。 その 上 パ ン ト ゥ フ ル 履き靴 にぴったり合う足の持ち主の女性と王子が結婚する、との布告。 国中の娘が試すが、足の 嵌 は まる者はいない。最後にサンドリヨンの父の邸にも靴が来る。連れ子たちが履くがだ め。サンドリヨンが嘲られながら試す。真実が判明。サンドリヨンは持っていたもう片方をも取り出して履く。そ こへ 妖 フ ェ 精 が現れ、 サンドリヨンの衣装を素晴らしいものに変える。義姉たちは 跪 ひざまず いて謝る。サンドリヨンは許す。 王子と結婚。
〔五〕
「灰だらけのフィネット」
Finette Cendron
オ マ ダ ム ・ ド ー ノ ア ー ノ ア 夫 人 作『 新 小 説 あ る い は 当 世 風 妖 精 た ち 』( 別 名『 名 高 き 妖 精 た ち 』) (33 ( ( 一 六 九 八 ─ ) Mme de Aulnoy:Contes nouvelles, ou les fées à la mode
(
Les illustres fées
) 収録。 これは両親に捨てられた子どもの幸運譚と継子出世譚が接続されたものだが、そうした物語が当時フランスの民 間に存在したのではなく、オーノア夫人の思いつきによる、と思われるし、また正確には継子話でもない。 貧しい王夫妻の三人の王女が捨てられる。二度までは名付け親の 妖 フ ェ 精 の力を借りた末妹フィネット〔シンデレラ 物語の女主人公に固有名詞があるのは珍しい〕の助けで、無事道を探し当てて家に帰る。三度目には姉たちが知恵 を 出 す が、 道 し る べ と し て 姉 た ち が 撒 い た 豆 は、 鳥 た ち に 啄 つ い ば ま れ て 無 く な り、 帰 り 道 が 分 か ら な く な る。 人 オ ー グ ル 食い鬼 の (34 ( 城に迷い込む。フィネットの活躍で人食い鬼夫妻は殺され、三人の王女は城を乗っ取る〔ペローの「親 指こぞう」 Le Petit Poucet +「長靴を履いた牡猫」 Le Chat botté 、およびKHM一五番「ヘンゼルとグレーテル」 KHM ((
Hänsel und Gretel
に似たモティーフ〕 。 しかし姉二人はフィネットを虐待し、汚れ仕事を押し付け、 「フィネット ・ サンドロン(灰だらけのフィネット) 」 Finette Cendron と綽名する。自分たちだけ舞踏会へ行く。 フィネットは 妖 フ ェ 精 の援助で宝石や美しい衣装、小さい靴を手に入れ、やはり舞踏会に行く。舞踏会一の美女。名 を訊かれ、 「サンドロン」と名乗る。 靴を道で落とす。王子がこれを拾い、持ち主の女性に憧れて恋煩いに陥る。靴のテスト。フィネットと王子の結
(4 婚。姉たちへの懲罰は無い。両親との再会。
〔六〕
K
カーハーエムH
M
(
い
わ
ゆ
る
『
グ
リ
ム
童
話
集
』)
(3((初
版
第
一
部
(
一
八
一
二
)
二
一
「
灰
か
ぶ
り
」
Aschenputtel
「最も知られたものの一つで、至るところで語られている 」 (3( ( というヤーコプ・グリムの注が付いている。 ある金持ちの男の妻が死ぬ。臨終に一人娘を呼んで、死んだら天国から見守っている〔援助者・守護者=亡き母 親 〕、 墓〔 亡 骸 を 安 置 し た 棺 を 人 の 身 の 丈 ほ ど の 深 さ に 埋 め、 そ の 上 に 土 を 盛 り 上 げ、 芝 で 覆 っ た も の 〕 に 木 を 植 えよ、欲しい物があったら、それを揺さぶれ、困ったことになったら助けを送る、と言う。娘はその通りにする。 木が二度目に緑になると、男は再婚。後妻は二人の 娘 (3( ( を連れ子にして来る。母娘は三人とも意地悪で、先妻の一 人 娘 を 下 女 同 然 に 追 い 使 う。 灰 色 の 古 い 上 着 を 着 せ る。 夜 に な っ て も 台 所 の 炉 の 灰 の 上 で 寝 な け れ ば な ら な い の で、服が汚れ、 「アッシェンプッテル 」 (38 ( (灰かぶり)と綽名される。 その国の王が王子の花嫁探しのために三日間舞踏会を開く。二人の高慢な義姉たちも招かれる。義姉たちは灰か ぶりを呼び付け、仕度の手伝いにこき使う。その挙句、おまえも行きたいか、と嘲る。灰かぶりは、行きたいが衣 装が無い、と答える。年上の義姉は、おまえなどが来たら、自分たちが恥をかく。帰って来るまでに一皿の 扁 ひ ら ま め 豆 を (3( ( 選り分けておけ、悪い豆が一粒もないように〔難題 〕 (4( ( 、と命じて出かける〔この場に継母は登場していない〕 。 義姉たちを見送った灰かぶりは、炉に豆を撒いて、選り分けを始める。膨大な量なので、夜中まで掛かり、眠れ ないだろう、母親がこれを知ったら、と嘆く。すると二羽の白い鳩が窓から入って来て、選るのを手伝おうか、と 灰かぶりに訊く。「ええ」と灰かぶりは答えました。 悪いのは餌袋へ いいのはお鍋の中 へ (4( ( す る と 十 五 分 で 選 り 分 け が 済 む。 そ れ か ら 鳩 た ち は こ う 言 う。 「 灰 か ぶ り、 姉 様 た ち が 王 子 様 と 踊 っ て い る の を 見 た い な ら、 鳩 小 屋 (4( ( に 登 っ て ご ら ん 」。 灰 か ぶ り が 鳩 小 屋 の 階 段 の て っ ぺ ん ま で 登 る と、 大 広 間 の 光 景 が 見 え る。 灰かぶりは下りて来て、辛い気持ちで灰の中に横たわって眠る〔三日間の舞踏会のうち一日目はこうして過ぎ、灰 かぶりは不参加〕 。 翌 朝 義 姉 た ち は 台 所 へ や っ て 来 て、 灰 か ぶ り を 羨 ま し が ら せ よ う と、 舞 踏 会 と 王 子 の こ と を 語 る。 灰 か ぶ り が、 自分も鳩小屋のてっぺんから見た、と言うと、年上の義姉は妬んで、鳩小屋を壊させてしまう。 灰 か ぶ り は ま た 義 姉 た ち の 仕 度 を 手 伝 わ ね ば な ら な い。 ま だ い く ら か 同 情 心 の あ っ た 年 下 の 義 姉 が「 灰 か ぶ り、 暗 く な っ た ら あ ん た も 出 か け て、 外 の 窓 か ら 覗 け ば い い じ ゃ な い 」 と 言 う。 年 上 の 義 姉 が、 そ う さ せ ま い と し て、 袋一杯 の (43 ( 蚕 そ ら ま め 豆 を明日まで選り分けするよう命じる。 灰 か ぶ り が 炉 の 前 に 坐 っ て 悲 し く 選 り 分 け を し て い る と、 例 の 鳩 た ち が 飛 ん で 来 て、 手 伝 い ま し ょ う か、 と 言 う。 〔以下繰り返し〕 すっかり済んでしまうと、鳩たちは「灰かぶり、あなたも舞踏会に出かけて踊りたい」と訊く。灰かぶりは、こ
(( んな汚い身なりでは出かけられない、と答える。すると鳩たちはこう言う。 「お母様のお墓の木のところに行って、 揺さぶって、綺麗な衣装が欲しい、と願い事をなさいな。でも、真夜中にならないうちに戻るんですよ 」 (44 ( 。 そこで灰かぶりは外へ出て、木を揺さぶって、こう言う。 かわいい木、ゆっさゆっさと揺れとくれ。 綺麗な衣装を投げとくれ 。 (4( ( 唱えた途端、素晴らしい銀の衣装と真珠、銀の刺繍が付いた靴下、銀の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 、 (4( ( それからその他の付属品が目 の前にある。体を洗って、着替えると、露に洗われた薔薇のように美しくなる。玄関を出ると、羽飾りを付けた六 頭 の 黒 馬 の 牽 く 馬 車 が あ り、 そ の 傍 に 青 と 銀 の お 仕 着 せ を 纏 っ た 従 者 た ち が 控 え て い る。 灰 か ぶ り が 乗 り 込 む と、 王宮指して疾駆。 王子は馬車が止まるのを見ると、よその国の王女が乗りつけた、と思い、自身馬車の踏み段を下ろし、灰かぶり が現れると、王宮へ案内する。だれもが灰かぶりを讃嘆。王子は灰かぶりを鄭重にもてなし、一緒に踊り、花嫁と してこれ以上のひとはいない、と思う。しかし、真夜中が来て、時計が十二時を打ち出すと、灰かぶりはお辞儀を して、これ以上留まれない、と言う。王子が下まで案内すると、馬車が待っていて、来た時と同様、壮麗に去って 行く。 灰かぶりは家に着くと、木のところに行き、こう唱える。
かわいい木、ゆっさゆっさと揺れとくれ。 衣装をまたまた取っとくれ 。 (4( ( そして灰だらけの着物を着て、顔を汚し、灰の中で眠る。 翌朝義姉たちはぷりぷりしてやって来て、黙ったままでいる。灰かぶりが〔実はからかって〕義姉たちにいろい ろ話す。 これで三回目だが、灰かぶりは義姉たちの仕度を手伝わねばならない。そのご褒美としてなんと、一皿の 豌 え ん ど う 豆 を (48 ( 選り分けるよう命じられる。 鳩との問答も同じ。 木への願い事も同じ。 衣装は前の物より遥かにすばらしく豪奢で、べた一面黄金と宝石で飾られている。それから黄金の刺繍を施され た 靴 下 と 黄 金 の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 Pantoffel 。 灰 か ぶ り が こ れ を 身 に つ け る と、 昼 の 太 陽 の よ う に 光 り 輝 く。 玄 関 の 前 に は、 頭に高い羽飾りを付けた六頭の白馬の牽く馬車と、紅と黄金のお仕着せを纏った従者たちが控えている。 王宮での王子の鄭重なもてなし。隅っこに立った義姉たちは妬みで蒼白な顔。 王 子 は こ の 王 女 の 素 性 を 知 り た か っ た の で、 通 り に 家 来 を 配 置 し、 ど こ へ 帰 る か 確 か め さ せ よ う と し、 彼 女 が さっさと立ち去れないよう、階段中に 松 ま つ や に 脂 を (4( ( 塗らせておいた。灰かぶりは王子と踊りながら嬉しさのあまり真夜中 のことを忘れていた。踊っている最中、鐘の響きを耳にし、びっくりして階段を駆け下りると、黄金の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 の 片方が階段にくっついてしまう。それが取れないまま脱ぎ捨て、階段を下りたところで、十二時が鳴り終わり、馬
(8 車 も 馬 た ち も 消 え て し ま う。 王 子 は 黄 金 の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 を 階 段 か ら 捥 も ぎ 離 し、 拾 い 上 げ る。 し か し 何 も か も 消 え て お り、見張りの家来たちは、何も見ませんでした、と答える。 王子は、 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 が花嫁探しの助けになるだろう、と考え、この黄金の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 がぴったり合う女性を花嫁にす る、 と 告 知 す る。 し か し、 だ れ に も と っ て も 小 さ 過 ぎ た。 い や、 二 つ 分 の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 が 一 つ に な っ て い た と し て も、 たいていの人は足さえ入れることができなかったろ う ((( ( 。とうとう、二人の義姉たちが試す番になる。二人とも小さ な美しい足の持ち主だったので、王子が自分たちの許に来ても、まずいことにはなるまい、と喜ぶ。母親が、もし それでも小さ過ぎたら、小刀で足をいくらか切り落とせ、と知恵を付ける。年上の義姉が自室で試す。爪先は入る が、踵が大き過ぎる。そこで踵を切り落とす。王子のところに行く。王子は、花嫁だ、と思い、馬車に伴い、連れ て行こうとする。すると馬車の屋根にあの二羽の鳩が止まっていて、こう叫ぶ。 うしろをごらんな、うしろをごらん。 お靴の中には血が一杯。 お靴がちっちゃ過ぎるもん。 ほんとの花嫁、まだおうち 。 ((( ( 王子が 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 に目を向けると、血が溢れているので、騙された、と気づき、偽の花嫁を家に戻す。母親が二番 目 の 娘 に 言 う。 「 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 を 持 っ て っ て、 小 さ 過 ぎ た ら、 足 の 指 を 切 っ た 方 が い い よ 」 と。 試 す と、 足 が 大 き 過 ぎ たので、娘は歯を喰いしばり、指をたっぷり切り落とし、 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 に足を押し込んで、部屋から出る。王子は、本
物だ、と思い、馬車で一緒に立ち去ろうとする。墓の傍を通る。しかし門のところに来ると、鳩たちがまた叫ぶ。 前掲と同じ唄(略) 王子は娘の足から血が溢れているのを見る。そこで母親に、これは本当の花嫁ではない、他に娘はいないか、と 訊く。 「いいえ」と母親は答える。 「まだおりますのはみっともない灰かぶりだけでございます。これは下の灰の中 に 坐 っ て お り ま し て、 こ の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 な ん ぞ 合 う わ け は あ り ま せ ん 」。 そ し て 王 子 が き つ く 要 求 す る ま で、 灰 か ぶ り を呼ばせようとしない。灰かぶりが呼ばれ、王子が来ていると知ると、彼女は顔と両手を綺麗に洗う。灰かぶりが 重 い 靴 シ ュー Schuh を ((( ( 左 足 か ら ((3 ( 抜 き、 足 を 黄 金 の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 に 乗 せ、 ち ょ っ と 押 し 込 む と、 鋳 型 に 嵌 め た よ う に ぴ っ た り 合 う。 灰 か ぶ り が 立 ち 上 が っ て お 辞 儀 を す る と、 王 子 は そ の 顔 を 覗 き 込 み、 あ の 美 し い 王 女 で あ る こ と に 気 づ く。 継母と二人の高慢な娘たちは仰天して、蒼白になる。王子は灰かぶりを連れ去り、馬車に乗せる。すると鳩たちが こう叫ぶ。 うしろをごらんな、うしろをごらん。 お靴の中にゃ血なんてないよ。 お靴はちっちゃ過ぎないもん。 ほんとの花嫁連れてくねえ 。 ((4 (
((( 〔これでおしまいとなり、継母と義姉たちへの懲罰は無い〕 。
〔七〕KHM決定
版
((( (二一「灰かぶり」
Aschenputtel
一八一九年ヘッセンの三つの物語を基に改作された。 市 い ち に 出 か け る 父 親 の 帽 子 に 最 初 に ぶ つ か る 木 の 枝( 榛 はしばみ ) ((( ( を 土 産 に 欲 し い、 と 主 人 公 が 願 い、 こ れ を 亡 く な っ た 母親の墓に植えるモティーフと、結びの主人公の結婚場面で、二羽の鳩によって、意地悪な義姉たちの両目がつつ き出されてしまう結び〔悪人への懲罰モティーフ〕が付け加えられる。 ある金持ちの男の妻が死ぬ。臨終に一人娘を呼んで、死んだら天国から見守っている、と言う〔援助者・守護者 =亡き母親〕 。 一年後男は再婚。後妻は二人の 娘 ((( ( を連れ子にして来る。母娘は三人とも意地悪で、先妻の一人娘を下女同然に追 い使う。灰色の短い上っ張りを着せ、重い木 靴 ((8 ( を履かせる。夜になっても〔暖を取るため〕炉の灰の中で寝なけれ ばならないので、服が汚れ、 「アッシェンプッテル」 (灰かぶり)と綽名される。 父親が市に出かける時、三人の娘たちに土産の希望を訊く。灰かぶりは、家への帰り途で最初に父親の帽子にぶ つかる〔偶然=神の摂理?〕木の小枝を求める。父親はその通りにして榛の枝を持ち帰る。 灰 か ぶ り は 枝 を 母 親 の 墓 に 植 え る。 枝 は 育 っ て 木 と な る。 灰 か ぶ り は 毎 日 三 度 づ つ 木 の 下〔 墓 前 〕 に 行 っ て 泣 く。 そ の た び に 一 羽 の 白 い 小 鳥〔 「 鳩 」 と は 記 さ れ て い な い 〕 が 来 て、 木 に 止 ま り、 灰 か ぶ り が 欲 し い 物〔 美 味 し い食べ物・飲み物などであろうか〕を願うと、それをくれる。その国の王が王子の花嫁探しのために三日間饗宴を行い、国中の美しい乙女を招く。灰かぶりも行きたがる。 継 母 は 一 皿 の 扁 豆 を 灰 の 中 に ぶ ち ま け、 二 時 間 で 拾 い 出 せ た ら、 行 か せ て や る、 と 言 う。 灰 か ぶ り が 裏 へ 出 て、 鳥たちに呼び掛けると、二羽の白い鳩を始め、たくさんの鳥たちがやって来て、一時間ほどで難題を片付ける。し かし、継母は約束を守らず、今度は、二皿の扁豆を一時間のうちに灰の中から拾い出す、という条件にする。この 難題も鳥たちの援助で三十分もしないうちに片付く。しかし、継母は約束を守らず、二人の娘とともに饗宴へ出掛 けてしまう。 だれもいなくなると、灰かぶりは母親の墓に行き、願い事を言う。 かわいい木、ゆっさゆっさと揺れとくれ、 黄 き ん 金 と銀とを投げとくれ 。 ((( ( す る と い つ も の 小 鳥 が 黄 金 と 銀 の 衣 装 を 投 げ 落 と す。 絹 と 銀 で 刺 繍 し た 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 も。 こ の 身 な り で 饗 宴 に 行 く。 継 母、 義 姉 た ち も ど こ か の お 姫 様 と 思 う。 王 子 は こ の 美 女 と し か 踊 ら な い。 日 が 暮 れ る。 灰 か ぶ り は 帰 ろ う と す る。王子が追う。灰かぶりは自分の家の鳩小屋に跳び込む。王子は灰かぶりの父親に、どこかの乙女がこの鳩小屋 に跳び込んだ、と言う。父親は、ひょっとすると灰かぶりかも知れない、と思い、斧で小屋を壊す。しかし、だれ も中にいないし、家に入ると、灰かぶりが汚い服を着て灰の中に転がっている。灰かぶりは小屋から抜け出し、榛 の木に駆けつけ、墓の上に服を置き、小鳥がそれを持って行ったのである。 二日目も同じ。衣装は前の日のよりずっと立派〔 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 の描写無し〕 。日が暮れて、灰かぶりが帰ろうとする。
((( 王 子 が 追 う。 灰 か ぶ り は 家 の 裏 の 梨 の 大 木 に 攀 よ じ 登 る。 王 子 が 父 親 に そ の こ と を 言 う。 父 親 は 斧 で 木 を 伐 り 倒 す。 だれもいない。 三日目。極めて豪華できらびやかな衣装。 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 は全部黄金でできている。日が暮れて、灰かぶりが帰ろうと する。王子はあらかじめ階段中に 松 ま つ や に 脂 を塗らせておいた。灰かぶりが駆け下りると 左 ((( ( の 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履き靴 が階段にくっつい てしまう。王子がそれを拾い上げると、小さく、優美で、全部黄 金 ((( ( 。 王子は二回乙女を見失ったあの家の男の許に行き、この黄金の 靴 シ ュー にぴったり合う女性と結婚する、と言う。 年上の義姉が自室で試す。母親も随いて行く。親指が大きくて入らない。母親は「親指を切っておしまい。王妃 様 に な っ た ら 足 で 歩 く 必 要 は 無 い よ 」 と 勧 め る。 娘 は そ の 通 り に し て、 足 を 靴 シ ュー に 押 し 込 む。 王 子 の と こ ろ に 行 く。 王 子 は、 花 嫁 だ、 と 思 い、 馬 に 乗 せ て 一 緒 に 乗 っ て 行 く。 墓 の 傍 を 通 る。 あ の 二 羽 の 鳩 が 榛 の 木 に 止 ま っ て い て、 こう啼く。 うしろをごらんな、うしろをごらん。 お靴の中には血が一杯。 お靴がちっちゃ過ぎるもん。 ほんとの花嫁、まだおうち 。 ((( ( 王子は娘の足から血が溢れているのを見る。そこで偽の花嫁を家に戻し、他の娘に 靴 シ ュー を履かせるように言う。 年 下 の 義 姉 が 自 室 で 試 す。 踵 かかと が 大 き く て 入 ら な い。 母 親 は「 踵 を 切 っ て お し ま い。 王 妃 様 に な っ た ら 足 で 歩 く
必 要 は 無 い よ 」 と 勧 め る。 娘 は そ の 通 り に し て、 足 を 靴 シ ュー に 押 し 込 む。 王 子 の と こ ろ に 行 く。 王 子 は、 花 嫁 だ、 と 思い、馬に乗せて一緒に乗って行く。墓の傍を通る。あの二羽の鳩が榛の木に止まっていて、こう啼く。 前掲と同じ唄(略) 王子は娘の足から血が溢れているのを見る。そこで偽の花嫁を家に戻し、他に娘はいないか、と男に訊く。男は 「 死 ん だ 妻 か ら 生 ま れ た ち っ ぽ け な で き 損 な い の 灰 か ぶ り し か も う お り ま せ ん ((3 ( 。 こ れ は 到 底 花 嫁 に は な れ っ こ あ り ません」と答える。 王子は、どうしてもその娘に会いたい、と言い張る。灰かぶりは両手と顔をきれいに洗い、王子の前に出る。王 子 が 黄 金 の 靴 シ ュー を 渡 す と、 灰 か ぶ り は 床 几 に 腰 掛 け、 重 い 木 ホ ル ツ シ ュ ー 靴 か ら 足 を 抜 き、 上 パ ン ト ッ フ ェ ル 履 き 靴 に 差 し 込 む。 ぴ っ た り 合 う。灰かぶりが立ち上がり、王子がその顔を覗き込むと、一緒に踊ったあの美しい乙女であることが分かる。そこ で彼は「このひとがほんとうの花嫁だ」と言う。 王子が灰かぶりを馬に乗せ、榛の木の傍を通り掛かると、二羽の白い鳩が啼く。 うしろをごらんな、うしろをごらん。 お靴の中にゃ血なんてないよ。 お靴はちっちゃ過ぎないもん。 ほんとの花嫁連れてくねえ 。 ((4 (
((4 それから鳩たちは灰かぶりの右肩と左肩に止まり、そこにそのままじっとしている〔婚礼の時にもそうしている のである〕 。 王子と灰かぶりの婚礼が行われることになると、義姉たちもやって来る。灰かぶりに取り入って、幸運のおこぼ れ を も ら お う、 と 思 っ て。 花 嫁 と 花 婿 が 教 会 に 入 る 時、 年 上 の 義 姉 が〔 花 嫁 の 〕 右 側 に、 年 下 の 義 姉 が 左 側 に 就 く。鳩たちがそれぞれの片目をつつき出す。教会から出る時、年上の義姉が〔花嫁の〕左側に、年下の義姉が右側 に就く。鳩たちがそれぞれのもう一方の目をつつき出す。こうして義姉たちは意地悪と偽りの罰として生涯目が見 えなくなってしまう。
〔八〕唐代の完全な文献シンデレラ物語「
葉
イエ限
シエン」
「 葉 イ エ 限 シ エン 」( 「 葉 しょう 限 げ ん 」) Yèxiàn は 中 国 唐 代( 六 一 八 ─ 八 九 八 ) 九 世 紀 の 文 献、 す な わ ち 当 時 の 文 人 に し て 高 級 官 僚 段 トアン 成 チョン 式 シ ー ( ((( ( ? ─ 八 六 三 ) 撰 の 大 博 物 誌・ 異 事 奇 譚 集 成『 酉 ユ ー 陽 ヤ ン 雑 ツァー 俎 ツ ー 』( 『 酉 ゆ う 陽 よ う 雑 ざ っ 俎 そ 』) 前 集 二 十 巻 続 集 十 巻 中〈 続 集 巻 一 支 し 諾 だ く 皐 こ う 上〉に収められてい る ((( ( 世界最古の完全な文献シンデレラ 譚 ((( ( である。なお、本論冒頭でもお断りしたが、以 下の原文、訓読文、訳文の〔 〕内は論者の補足である。 『酉陽雑俎』のテキストとしては、明の李雲鵠校訂 本 ((8 ( が知られているが、これには句読点が無い。 以下に方南生点校 本 ((( ( (底本は趙琦美本。明万暦年間)により現代中国の句読点および引用符号等が付されたもの を示す。原文。ただし、旧字は新字に改めた。 南 人 相 伝, 秦 漢 前 有 洞 主 呉 氏, 土 人 呼 為 呉 洞。 娶 両 妻, 一 妻 卒, 有 女 名 葉 限。 少 恵 善 淘 一 作 鈎 金, 父 愛 之。 末 歳 父 卒,為後母所苦。常令樵険汲深。時嘗得一鱗二寸余,赬 鬐 金目,遂潜養於盆水,日日長,易数器,大不能受,乃投 於後池中。女所得余食,輙沈以食之。女至池,魚必露首枕岸,他人至不復出。其母知之,毎伺之,魚未嘗見也,因 詐 女 曰「 爾 無 労 乎、 吾 為 爾 新 其 襦。 」 乃 易 其 弊 衣。 後 令 汲 於 他 泉。 計 里 数 百 一 作 里 也。 母 徐 衣 其 女 衣, 袖 利 刃 行 向 池 呼魚,魚即出首,因斫殺之。魚已長丈余,膳其肉,味倍常魚,蔵其骨鬱棲之下。逾日,女至向池,不復見魚,乃哭 於 野。 忽 有 人 被 髪 粗〔 李 雲 鵠 校 本 で は「 麁 」( 「 」 の 俗 字 )〕 衣, 自 天 而 降, 慰 女 曰「 爾 無 哭、 爾 母 殺 爾 魚 矣! 骨 在 糞 下, 爾 帰, 可 取 魚 骨 蔵 於 室、 所 須 第 祈 之, 当 随 爾 也。 」 女 用 其 言, 金 璣 衣 食 随 欲 而 具。 及 洞 節 母 往, 令 女 守 庭 菓。 女 伺 母 行 遠, 亦 往, 衣 翠 紡 上 衣, 躡 金 履。 母 所 生 女 認 之, 謂 母 曰「 此 甚 似 姉 也。 」 母 亦 疑 之, 女 覚 遽 反, 遂 遺 一 隻 履, 為 洞 人〔 所 〕 得。 母 帰, 但 見 女 抱 庭 樹 眠, 亦 不 之 慮〔 不 慮 之?〕 。 其 洞 隣 海 島, 島 中 有 国 名 陀 汗, 兵 強, 王〔 明 の 毛 晋 の 校 本 に 拠 る。 原 典 は「 三 」〕 数 十 島 水 界 千 里。 洞 人 遂 貨 其 履 於 陀 汗 国, 国 主 得 之, 命 其 左 右 履 之, 足小者履減一寸,乃令一国婦人履之,竟無一称者。其軽如毛,履石無声。陀汗王意其洞人以非道得之,遂禁錮而拷 略之,竟不知所従来,乃以是履棄之道旁,即遍歴人家捕之。若有女履者,捕之以告。陀汗王怪之,乃捜其室,得葉 限, 令 履 之 而 信。 葉 限 因 衣 翠 衣, 躡 履 而 進, 色 若 天 人 也。 始 具 事 於 王。 載 魚 骨 与 葉 限 倶 還 国。 其 母 及 女 即 為 飛 石 〔 所 〕 撃 死, 洞 人 哀 之, 埋 於 石 坑, 命 曰 懊 女 塚。 洞 人 以 為 媒 祀, 求 女 必 応。 陀 汗 王 至 国, 以 葉 限 上 婦。 一 年, 王 貪 求,祈於魚骨,宝玉無限。逾年,不復応。王乃葬魚骨於海岸,以用珠百斛蔵之,以金為際,至徴卒叛時,将発以贍 軍。一夕,為海潮所淪。成式旧家人李士元所説。士元本邕州洞中人,多記得南中怪事。
((( 訓読文。ただし、分かり易いように句読点を改めた箇所がある。 南 な ん じ ん 人 相 い 伝 う る に、 秦 し ん か ん 漢 の ((( ( 前 洞 ど う し ゅ 主 ((( ( 呉 ご し 氏 な る 有 り て、 土 ど じ ん 人 呼 び て 呉 洞 と 為 な す。 両 り ょ う さ い 妻 を 娶 め と れ る が、 一 妻 卒 しゅつ す。 女 むすめ 有 り て 葉 し ょ う げ ん 限 と 名 づ く。 少 おさな き よ り 恵 さ と く し て 善 よ く 金 き ん を 淘 よ な ぐ ((( ( 〔 あ る い は「 鈎 こ う す 」〕 。 父 之 こ れ を 愛 す。 末 ま っ さ い 歳 父 卒 す る に、 後 こ う ぼ 母 の 苦 し む る 所 と な る。 常 に 険 け わ し き に 樵 きこり し 深 き に 汲 ま し む。 時 に 嘗 か つ て 一 い ち り ん 鱗 の 二 に す ん よ 寸 余 な ((3 ( る を 得 た り。 赬 て い き 鬐 金 き ん も く 目 な り。 遂 つ い に 潜 ひ そ か に 盆 ぼ ん す い 水 に 養 う に、 日 ひ び 日 に 長 じ 、 ((4 ( 数 器 を 易 か う れ ど も、 大 に し て 受 く る こ と 能 あ た わ ず。 乃 すなわ ち 後 こ う ち ち ゅ う 池 中 に 投 ず。 女 むすめ 得 る 所 の 余 よ し ょ く 食 を 輙 すなわ ち 沈 め て 以 も っ て 之 に 食 わ し む。 女 むすめ 池 に 至 れ ば、 魚 必 ず 首 を 露 あ ら わ に し て 岸 に 枕 まくら し、 他 よ そ び と 人 の 至 れ ば 復 ま た 出 い で ず。 其 そ の 母 之 を 知 り、 毎 つ ね に 之 を 伺 うかが え ど も、 魚 う お 未 だ 嘗 て 見 あらわ れ ず。 因 よ り て 女 むすめ を 詐 いつわ り て 曰 く「 爾 なんじ 労 す る 無 き か。 吾 わ れ 爾の為に其の 襦 じ ゅ を ((( ( 新たにせり。 」と。乃ち其の 弊 へ い い 衣 を易う。 後 の ち 他 た せ ん 泉 に汲ましむ。 里 り を ((( ( 計るに数里〔 「百」はおかし い の で「 里 」 に 改 め た 〕 な り。 母 徐 おもむ ろ に 其 の 女 むすめ の 衣 ころも を 衣 つ け、 利 り じ ん 刃 を 袖 に し、 行 き て 池 に 向 か い て 魚 を 呼 ぶ に、 魚 即 ち 首 を 出 だ す。 因 り て 斫 き り て 之 を 殺 す。 魚 已 す で に 長 た け 丈 じ ょ う よ 余 、 ((( ( 其 の 肉 を 膳 く ら う に、 味 わ い 常 の 魚 に 倍 せ り。 其 の 骨 を 鬱 う つ せ い 棲 の ((8 ( 下 に 蔵 か く す。 日 ひ を 逾 こ え て、 女 むすめ の 至 り、 池 に 向 か う に、 復 魚 を 見 ず。 乃 ち 野 に 哭 こ く す。 忽 たちま ち 人 ひ と 有 り。 被 ひ は つ 髪 ((( ( 粗 そ い 衣 に し て、 天 よ り 降 く だ り、 女 むすめ を 慰 め て 曰 い わ く「 爾 哭 す る こ と 無 か れ。 爾 の 母 爾 の 魚 を 殺 せ り。 骨 は 糞 ふ ん か 下 に 在 り。 爾 帰 り て、 魚 ぎ ょ こ つ 骨 を 取 り て 室 し つ に 蔵 す べ し。 須 も と む る 所 第 た だ 之 を 祈 ら ば、 当 ま さ に 爾 に 随 わ ん。 」 と。 女 むすめ 其 の 言 げ ん を 用 う る に、 金 き ん き 璣 衣 食 (8( ( 欲 す る に 随 い て 具 そ な わ る。 洞 ど う せ つ 節 に 及 び 母 は 往 ゆ き、 女 むすめ を し て 庭 て い か 菓 を 守 ら し む。 女 むすめ 母 の 遠 き に 行 く を 伺 い、 亦 ま た 往 く。 翠 す い ぼ う 紡 の (8( ( 上 じ ょ う い 衣 を 衣 け、 金 の 履 く つ を (8( ( 躡 ふ む。 母 の 生 む 所 の 女 むすめ 之 を 認 め、 母 に 謂 い い て 曰 く「 此 こ れ 甚 だ 姉 に 似 れ り。 」 と。 母 亦 之 を 疑 う。 女 むすめ 覚 さ と り て 遽 にわか に 反 か え る に、 遂 に 一 い っ せ き 隻 の 履 を 遺 の こ し、 洞 ど う じ ん 人 の 得 る 所 と な る。 母 の 帰 る に、 但 た だ 女 むすめ の 庭 て い じ ゅ 樹 を 抱 い だ き て 眠 れ る を 見、 亦 之 を 慮 おもんぱか ら ず。 其 の 洞 海 か い と う 島 に (83 ( 隣 となり す。 島 中 に 国 有 り て 陀 だ か ん 汗 と 名 づ く。 兵 強 く し て、 数 十 島 水 界 千
里に王たり。洞人遂に其の履を陀汗国に 貨 う れり。 国 こ く し ゅ 主 之を得、其の 左 さ ゆ う 右 に (84 ( 命じて之を履かしむるに、足の小なる者 の履くに 一 い っ す ん 寸 を減ず。乃ち一国の婦人に之を履かしむれども、 竟 つ い に 一 い つ の 称 か な う者無し。其の 軽 か ろ きこと毛の如く、石を 履 む に 声 無 し。 陀 汗 王 其 の 洞 人 の 非 ひ ど う 道 を 以 て 之 を 得 る か と 意 お も い、 遂 に 禁 き ん こ 錮 し て 之 を 拷 ご う り ゃ く 略 す れ ど も、 竟 に 従 よ り て 来 た る 所 を 知 ら ず。 乃 ち 是 こ の 履 を 以 て 之 を 道 ど う ぼ う 旁 に 棄 て、 即 すなわ ち 人 じ ん か 家 を 遍 歴 し て 之 を 捕 ら え ん と す 。 (8( ( 若 こ こ に 女 おんな の 履 く 者 有 り (8( ( 。 之 を 捕 ら え て 以 て 告 ぐ。 陀 汗 王 之 を 怪 し み、 乃 ち 其 の 室 し つ を 捜 し、 葉 限 を 得、 之 に 履 か し む る に 信 まこと な り。 葉 限 因 り て 翠 す い い 衣 を 衣 け、 履 を 躡 み て 進 む に、 色 かたち 天 て ん に ん 人 の 若 ご と し。 始 め て 事 を 王 に 具 そ な う。 魚 骨 と 葉 限 を 載 せ て 倶 と も に 国 に 還 か え る。 其 の 母 及 び 女 むすめ は (8( ( 即 ち 飛 ひ せ き 石 の 撃 つ 所 と な り て 死 す (88 ( 。 洞 人 之 を 哀 れ み、 石 せ き こ う 坑 に 埋 め、 命 な づ け て 懊 お う じ ょ ち ょ う 女 塚 と (8( ( 曰 い う。 洞 人 以 て 媒 ば い し 祀 を ((( ( 為 し、 女 むすめ を 求 む れ ば 必 ず 応 ず。 陀 汗 王 国 く に に 至 り、 葉 限 を 以 て 上 じ ょ う ふ 婦 と ((( ( な す。 一 い ち ね ん 年 、 王 貪 むさぼ り 求 め、 魚 骨 に 祈 る に、 宝 玉 限 り 無 し。 年 と し を 逾 こ ゆ る に、 復 応 ぜ ず。 王 乃 ち 魚 骨 を 海 岸 に 葬 り、 以 て 珠 た ま ((( ( 百 ひ ゃ く こ く 斛 を ((3 ( 用 い て 之 を 蔵 し、 金 を 以 て 際 ふ ち と な す。 徴 ち ょ う そ つ 卒 の ((4 ( 叛 は ん す る 時 に 至 り、 将 ま さ に 発 あ ば き て 以 て 軍 ぐ ん を 贍 やしな わ ん と す。 一 い っ せ き 夕 、 海 潮 の 淪 し ず む る 所 と な る。 成 式 の 旧 き ゅ う か じ ん 家人 ((( ( 李 り し げ ん 士元 の説く所なり。士元は 本 も と 邕 ようしゅう 州 ((( ( 洞 どうちゅう 中 の人にして、多く 南 なんちゅう 中 の怪事を記し得たり。 訳文。 南方の人たちの間にこんな言い伝えがある。 秦・漢の時代の前〔=昔むかしのその昔〕現地部族の村である洞の領主に呉という者があった。土地の人間はこの 洞を呉洞と称した。呉は二人の妻を持っていたが、一人の妻は亡くなり、あとに娘が残された。葉限〔シンデレラ 物 語 の 女 主 人 公 に 固 有 名 詞 が あ る の は 珍 し い 〕 ((( ( と い う 名 だ っ た。 葉 限 は 小 さ い 時 か ら 聡 明 で 黄 金 を 採 る の が 上 手
((8 だった。父親はこの子をかわいがっていた。ところが父親が老年になって死ぬと、葉限は後の母〔=継母〕に苛め られるようになった。継母はこの娘にいつも険しい山で薪を採らせ、深い谷で水を汲ませるのだった。 ある時、水を汲みに行った場所で二寸余りの小魚を捕らえた。赤い 背 せ び れ 鰭 で目が金色〔という珍しい魚〕だった。そ こで水を入れた鉢でこっそり飼うことにしたところ、一日一日どんどん大きくなり、容れ物の鉢を幾つも取り替え たが、魚が大き過ぎて入らなくなった。そこで家の背後にある池に放したのである。娘は自分のもらう食事の食べ 余 し を い つ も 池 に 投 げ 込 ん で 魚 に 食 べ さ せ て や っ た。 娘 が 池 に 行 く と、 魚 は 必 ず 頭 を 水 面 に 出 し、 岸 に 載 せ る の だったが、余人が来た場合は出て来なかった。 継母はこのこと〔=魚の存在〕を知り、しょっちゅう様子を窺っていたが、魚が現れることは決してなかった。そ こ で〔 あ る こ と を 企 み 〕 葉 限 に こ ん な こ と を 言 っ て 騙 だ ま し た。 「 お ま え、 く た び れ て い な い か い〔 = お ま え、 日 頃 よ く 働 い て く れ る ね え 〕。 〔 そ の 褒 美 に 〕 あ た し は お ま え の た め に 短 か 上 衣 を 新 し く こ さ え て や っ た よ 」。 そ う し て こ れ ま で 葉 限 が 身 に つ け て い た ぼ ろ 着 物 と 取 り 替 え た の で あ る。 そ の 後〔 す ぐ に 〕〔 い つ も 水 を 汲 む 場 所 と は 〕 別 の 泉 に 水 を 汲 み に や ら せ た。 そ こ ま で の 距 離 は 数 里 だ っ た。 〔 こ う し て 葉 限 が い な く な る と 〕 継 母 は 悠 悠 と 葉 限 の 古 着 を 纏 ま と い、 鋭 利 な 刃 物 を 袖 に 隠 し、 出 か け て 行 っ て 池 に 向 か っ て 魚 を 呼 ぶ と、 魚 は す ぐ さ ま 頭 を 出 し〔 て 岸 に 載 せ〕た。そこで斬りつけて、魚を殺してしまった。もうその時には魚の大きさは一丈余りにもなっていた。料理し て食ったところ、その旨さといったら普通の魚の倍だった。骨は 堆 た い ひ 肥 の下に埋めて隠した。 翌日葉限が池にやって来て魚を呼んだが、魚の姿はとんと見えない。そこで〔 人 ひ と け 気 のない〕野原で声を挙げて泣い た。 す る と、 髪 の 毛 は ざ ん ば ら で 粗 末 な 着 物 の 人 が 天 か ら 降 り て 来 て、 葉 限 を 慰 め て こ う 告 げ た。 「 さ あ さ、 泣 く んじゃない。おまえの魚を殺したのはおまえの継母だ。魚の骨は堆肥の下にある。おまえ、家に帰り、魚の骨を掘
り 出 し て、 部 屋 に 隠 す ん だ よ。 欲 し い 物 が あ っ た ら、 骨 に 祈 る だ け で い い。 す ぐ 聞 き 届 け ら れ る か ら ね 」。 葉 限 が 言われた通りにすると、黄金でも宝玉でも衣服でも食べ物でも欲しい物はなんでも出て来るのだった。 やがて洞の祭日となると、継母は〔自分が生んだ娘を一緒に連れて〕これに出かけて行ったが、葉限には〔意地悪 をして〕庭の果樹の見張りを〔をして留守〕するように言い付けた。葉限は継母が遠くに行ったのを見澄まし、自 分 も 祭 に 赴 い た。 〔 魚 骨 に 祈 っ て 出 し た 〕 翡 か わ せ み 翠 の 羽 で 織 っ た〔 こ の 上 も な く 麗 し く 豪 奢 な 〕 上 衣 を 纏 い、 黄 金 の 履 き 物 を 履 い た 姿 だ っ た。 〔 日 頃 の 惨 め な 恰 か っ こ う 好 の 小 娘 と は ま る で 異 な る 素 晴 ら し い 身 な り の 絶 世 の 美 女 だ っ た が 〕 継 母の生んだ娘〔=葉限の腹違いの妹〕がこれに気づき、母親に「あの女の人、とっても姉さんに似てるわ」と言っ た。母親も〔、そういえば随分似てるわねえ、と〕怪しんだ。 〔そして傍にやって来そうになった〕 。葉限は、気づ か れ た、 と 悟 り、 慌 て て 逃 げ 出 し た が、 そ の 際 履 き 物 の 片 方 を 落 と し て し ま い、 洞 の 者 が こ れ を 拾 っ た の で あ る。 祭から引き揚げて来た継母は、葉限が(継母に、見張れ、と言い付けられた)庭の果樹を抱いて眠りこけ〔たふり をし〕ているのを目にし、 〔さっきの美女は別人だった、と納得して〕何も気にしなかった。 この洞の近くに海洋の島があった。島の中には国があり、 「陀汗国」といった。この国は兵力が強く、数十の島島、 千里四方に亘る〔要するに「広大な」 〕海域を支配下に置いていた。 〔葉限の履き物の片方を拾った〕洞の者はこれ を 陀 汗 国 で 売 っ た。 国 主 で あ る 王 が こ れ を 手 に 入 れ、 周 囲 の 婦 人 た ち〔 = 妻 妾 〕 に 履 か せ て み た と こ ろ、 〔 履 き 物 が 小 さ い の で だ れ 一 人 履 け ず 〕、 最 も 足 の 小 さ い 婦 人 が 履 こ う と し て も そ の 足 よ り 更 に 一 寸 も 小 さ か っ た。 そ こ で 王は陀汗国中の女に履かせたが、一人として履ける者はいない。そしてこの履き物の軽いことときたらまるで毛皮 の よ う、 ま た、 石 を 踏 ん で も 音 が し な い の だ っ た。 陀 汗 王 は、 〔 こ ん な 不 思 議 な 履 き 物 を 売 っ た 〕 呉 洞 の 者 は 何 か 悪事を働いてこれを奪ったのではないか、と考え、牢獄に閉じ込め、拷問して問い 糾 た だ したが、だれの持ち物だった
((( のか結局分からなかった。そこで〔王自身従者らを連れて呉洞まで出掛け〕この履き物を〔呉洞の〕道端に棄てさ せ、 〔 そ れ を ひ そ か に 監 視 さ せ、 拾 っ た 者 が い た ら 〕 す ぐ さ ま 家 家 を 巡 り 歩 い て〔 捜 索 し 〕、 〔 こ の 履 き 物 の 〕 関 係 者を捕まえようとした。するとある娘がこれを〔拾って無理に〕履いた。そこで〔監視していた者は〕この娘を捕 らえて、王に告げた。しかし陀汗王は〔どうもちゃんと足に合っていない、と〕怪しみ、その〔娘(=葉限の腹違 いの妹)の〕家を捜索させると、葉限がいた。葉限に履かせると〔足と履き物がぴたりと合い〕真の持ち主である こ と が 実 証 さ れ た の で あ る。 更 に 葉 限 は〔 一 旦 引 き 下 が り 〕 翡 翠 の 羽 で 織 っ た 上 衣 を 身 に つ け、 〔 も う 片 方 の と 合 わせ〕黄金の履き物を履いて〔王の前に〕歩み出た。その容色はさながら天女のように素晴らしく美しかった。そ して初めて詳しい事情を王に申し述べたのである。 王 は 魚 骨 と 葉 限 を 自 分 の 車 に 乗 せ て 一 緒 に 呉 洞 か ら 陀 汗 国 へ と 帰 っ た。 〔 し か し そ の 前 に 葉 限 に ひ ど い こ と を し た 葉限の継母と腹違いの妹の処刑を命じたので〕継母とその実の娘は投石で撃ち殺された。呉洞の者たちはこれを哀 れ み、 石 の 穴 に 埋 葬 し、 塚 を 築 い て「 懊 女 塚 」 と 名 付 け た。 供 物 を 供 え て お 祀 り を し、 女 の 子 を 授 け て く だ さ い、 と祈れば、必ず感応があって、女の子が生まれたのである。 陀汗王は国に到着すると葉限を〔愛し尊んで〕上婦とした。それからの一年、王は貪欲に魚骨に祈り、宝玉を限り な く 得 た。 け れ ど も 翌 年 に な る と も う 祈 っ て も 応 じ て は も ら え な か っ た。 そ こ で 魚 骨 を 海 岸 に 埋 葬 し、 〔 そ れ ま で に得た〕真珠百石でこれを覆い隠し、黄金を穴の縁に置いた。後、徴募した兵卒が叛乱を起こした時、これを掘り 出して軍〔鎮圧軍?叛乱軍?〕への物資支給に役立てようとしたが、ある晩高潮があって沈んでしまった。これは 私、成式が元召使っていた李士元なる者が語ってくれた話である。士元は元来邕州の現地部族の村の出身で、南中 国の不思議な事跡を数多く記憶している。
〔九〕朝鮮のシンデレラ物語「コンジ(豆っ子
)
((8 (・バッジ(小豆っ子)
」
(((( 女主人公コンジの援助者は天から降りて来た牝牛であり、食物を恵み、労役を代わって片付け、隣村の親戚の家 での盛大な祝宴に出かけるためのすばらしい衣装と花 靴 ( ((( ( を授けてくれる。彼女が宴会に行くのを妨げよう、と継母 が課した難題は、膨大な量の反物を織り上げること、広い部屋の掃除、各部屋の〔 温 オ ン ド ル 突 の〕焚き口の灰の除去〔こ こ で 灰 が 出 て 来 る 〕、 火 の 焚 き 付 け、 底 に 穴 が 開 い て い る 壺 へ の 水 の 汲 み 込 み、 稲 の 籾 五 石 を 搗 つ く、 な ど だ が、 一 部は雀や蛙が援助してくれる。宴会に出かけたコンジは継母とその連れ子である意地悪な義妹のパッジに嫉妬され て 追 い 出 さ れ る。 逃 げ る 途 中 花 靴 を 落 と す。 こ れ を 手 に 入 れ た 監 カ ム サ 司 が ( ((( ( 持 ち 主 を 訊 ね る と、 テ ス ト に パ ッ ジ ば か り か、既婚者である継母まで挑戦、大き過ぎて入らない足の横側を自ら包丁で削 ぐ ( ((( ( 。〔十〕日本のシンデレラ物語(民話と古典文学)
(1)民話「おうふとはげせ ん ( ((3 ( 」(これには履き物のモティー フ ( ((4 ( あり) 関 敬 吾 編 著『 日 本 昔 話 大 成 』 (((( ( で 見 る 限 り、 諸 モ テ ィ ー フ の 符 号 す る 類 話 は「 お う ふ と は げ せ ん 」〔 長 崎 県 北 高 た か 来 き 郡での採録〕に留まる。これは関が記している粗筋から推察すると、こんな話と思われる。 おうふは先妻の子で、後妻である継母に苛められる。継母の難題としては、 粟 あ わ を撒き散らしておいて、拾え〔雀 の援助〕 、砕け米を竈の灰に混ぜておいて、選り分けろ〔やはり雀の援助〕 、がある。その他の援助者はどこかの老 爺。遊びに行け、と言ってくれる。おうふが、着物が無い、と答えると、衣装を入れた風呂敷包みが天から落ちて((( 来る。これを来たおうふを老爺が馬に乗せて連れて行ってくれる。 沓 く つ を ( ((( ( 落とす。長者の息子が沓を拾い、それに足 の合う娘を嫁にする、と触れを出す。継母は実子のはげせんを連れて行き、無理に沓を履かせるので、はげせんは びっこになってしまう。おうふは沓のテストに合格、長者の家へ嫁入りす る ( ((( ( 。 (2)古典文学『 落 お ち く ぼ 窪 物語 』 ((8( ( (これには履き物のモティーフ無し) 平 安 時 代 中 頃 の 十 世 紀 終 わ り、 ほ ぼ 正 暦・ 長 徳 年 間( 九 九 〇 ─ 九 九 ) に 作 ら れ た、 と 考 え ら れ る『 落 窪 物 語 』 は、女主人公(亡き母が「 女 に ょ お う 王 」、母の祖父(祖母?)は「宮」 。従って帝の曾孫なので、貴族社会にあっても一際 高 貴。 か つ 美 し い ) が、 幼 い 時 か ら 実 の 父( 中 納 言 源 み な も と の た だ よ り 忠 頼 ) の 邸 に 引 き 取 ら れ、 み す ぼ ら し い 姿 で 継 母( 父 の 正 妻 =「 北 の 方 か た 」) の さ ま ざ ま な 虐 待 に 耐 え て 日 日 を 送 る う ち、 そ の 美 し さ と 性 格 の 愛 ら し さ、 清 ら か さ を 大 貴 族 の 若 君 で あ る 左 さ こ ん の し ょ う し ょ う 近 少 将 ( 道 み ち よ り 頼 ) に 見 出 さ れ、 忠 実 な 若 い 侍 女「 あ こ き 」( 阿 漕。 こ の 女 性 は 機 略 縦 横 の 上、 受 ず り ょ う 領 の妻となっている豊かなおばから必要な物品を入手できる身)の援助などにより、めでたく左近少将との結婚に至 り、やがて父の邸から脱出、夫道頼とともに幸せな生涯を送る、という継子話である。履き物のモティーフを欠く シンデレラ物語と言えよう。 本 論 冒 頭 で 紹 介 し た 日 本 に お け る 詳 し い 研 究『 世 界 の シ ン デ レ ラ 物 語 』 の 中 で、 著 者 山 室 静 は「 日 本 の 継 子 話 」 の一つとして『落窪物語』を挙げている(同書一一七ページ以降)が、これを殊更に日本のシンデレラ物語として 指摘してはいない。しかし論者はあえてそれに踏み切る。なぜなら以下に記すように六つものモティーフをシンデ レラ物語と共有している(ただし場合によっては⑥、すなわち継母とその実の娘たちへの懲罰を欠くシンデレラ物 語もある。文人が物語に仕立てたものはおおむねしかり。もっとも『落窪物語』では⑥がまた一通りでない)から