BSE検査体制の変更について
リスク評価と予防原則
「リスク(risk )」 「食品中の危害因子によってもたらされる 健康への悪影響の深刻さとその確率の関数 」(Codex 2003) リスク評価(risk assessment) 将来、発生する可能性のある事象に対する確率的な予測危害の存在 or 危害の程度に関して不確実性がある場合、それらの危害が
現実に甚大であることが明らかになるまで待つのではなく、予防措置の手
段をとり得る。
リスク評価に基づく管理措置(リスク回避):予防原則予防原則の適用条件
1、相応性:保護すべき水準に応じた措置であること 2、非差別性:原則の適用に区別をつけない 3、一貫性:同類の評価手法と一貫性を保つ 4、費用便益計算:潜在的な費用便益の検討を基礎にする 5、検証義務:新しい科学的データによる定期的検証 6、検証責任:科学的証拠を作り出す責任を持つ・
米国産牛肉の輸入に関しての応答
日本側は、全頭検査した肉でなければ安全性は確保できない
BSE検査なしの肉は輸入禁止!
・日本側の主張は、科学的に正当でない
・貿易障壁となるので、WTO(国際貿易機関)に提訴すると示唆。
・日本側は、20ヶ月齢超の若齢牛で検査陽性を摘発できるが、
20ヶ月齢以下の牛では、検査しても検出不可能という評価(2005年)
・20ヶ月齢以下で、特定危険部位除去を条件とした。
米国側の対応:
Michael Owen Johanns
ジョハンズ農務長官は、即座に、この評価は
科学的に正当でない!Scientific un-justify!
といった。
今回の諮問
1、国内措置 検査月齢:と畜場で20ヶ月超から30ヶ月超にした場合のリスク比較 月齢規制はない(肉) SRM範囲:頭部、脊髄、脊柱を全月齢から30ヶ月超にした場合のリスク比較 2、国外措置(米国、カナダ) 検査月齢:と畜場で検査はしない 月齢規制:20ヶ月齢以下から30ヶ月齢以下にした場合の輸入肉のリスク比較 SRM範囲:頭部、脊髄、脊柱を全月齢から30ヶ月超にした場合のリスク比較 国外措置(フランス、オランダ) 検査月齢:と畜場検査、72ヶ月齢超を実施している 月齢規制:輸入禁止を30ヶ月齢以下にした場合のリスクの比較 (オランダは12ヶ月齢以下、フランスは30ヶ月齢以下の輸入肉) SRM範囲:頭部、脊髄12ヶ月超、脊柱30ヶ月超(EU基準)を 全て30ヶ月超にした場合のリスク比較 *検査月齢は健康と畜牛の検査リスク評価
・リスク評価の方法は、いつも同一であることが
望ましい。
同類の評価手法と一貫性を保つ
・しかし、不確実性の多い問題や感染症の様に
背景のリスクが変動する問題では、評価の
対象とする課題や評価の方法が変化する。
・最新の科学データに基づく、新しい評価法の
導入が望ましい。
新しい科学的データ
による定期的検証
これまでのBSEリスク評価:1
①中間とりまとめ:日本人の vCJDリスクは?
EFSAの分析方法に従った
侵入リスク(輸入生体牛、肉骨粉、獣脂)、
国内安定性(増幅リスク:レンダリング、飼料規制)
*
暴露リスクは英国との比例計算(
0.1~0.9人)
②国内見直し:全頭検査と21ヶ月齢超の検査の差は?
定量分析と定性分析法(生体牛と食肉過程)
国内の規制(
2001年)の有効性は、潜伏期が長く、まだ読めない
汚染は続いているというワーストシナリオを取る
20ヶ月齢以下は、脳へのプリオン蓄積が検出限界以下
*
全月齢の特定危険部位除去をすれば
21ヶ月超に
変更してもリスクの差は極めて小さい。
英国 日本BSEの診断:検査方法
海綿状変性と花弁状プラーク 免疫組織染色 ELISA試験 ウエスタンブロット法 陽性牛 陰性対照 陽性対照 陽性牛 陽性対照 ・BSEの異常プリオン蛋白は神経系に限局している。生前診断は困難 ・ELISAでスクリーニング、確定診断は死後の病理組織検査、免疫組織診断、 ウエスタン・ブロット法で行う。マウスバイオアッセイ法や最近は 異常プリオン蛋白を人工的に増幅するPMCA法も検討されている。全頭検査の意義を巡る対立
BSE検査不要論 ・検査では検出できない ・検査は管理の有用性を見る指標 サーベイランス(監視) ・危険部位を除去すればいい BSE検査必要論 ・検査で検出可能 ・食肉検査で安全性を確保すべき スクリーニング(選別) ・危険部位を除去は補助手段 ・全頭検査は科学以前に政治主導で導入された! ・検査すれば、全て検出できるという神話 20か月齢以下では検出困難というリスク評価に対して ・3年間延長という政治判断 ・全頭検査は政争の具に利用され、地方自治体への責任転嫁 ・科学者の意見が分かれ、平行線をたどった ・議論の凍結!BSE検査の限界と有用性の再評価
BSE感染実験や自然発症例の研究により ①回腸遠位部から上向したプリオンが脳幹部で増幅したのち ②抹消神経系に下向することが明らかになった ③中枢神経まで達していない若齢牛のBSE検査はリスク回避にならず、無意味 ④他方、無症状末期牛では、BSE検査をしないで特定危険部位を除去するだけでは リスク回避できない。高齢牛ではBSE検査は有用! ⑤BSE検査の限界と有用性を科学的に説明しなければならない。説明がない! 回腸遠位部パイエル板 CMGC GMC 腸間膜動脈神経節、腹腔神経節coeliac and mesenteric ganglion complex
迷走神経 下神経節
閂部
交感神経
これまでのBSEリスク評価:2
③米国、カナダ:輸出条件を加味した安全性は?
生体牛リスク、屠畜検査、
食肉加工
米国、カナダの
BSE汚染は続いている(ワーストシナリオ)
日本のリスクとの比較(牛、飼料規制、屠畜、食肉加工過程)
*
実行前の輸出条件を加味した評価では、科学的な同等の安全性は
評価できない。
*
輸出条件が遵守されれば、全月齢の危険部位を除去した
20カ月齢以下の米国、カナダ産は国内産と同等の安全性
④14か国の評価:
BSE非発生国(新しい評価法)
情報不足を覚悟、定性評価がベースになる
EFSA評価の補正、レンダリング・飼料規制、と畜課程の半定量評価法
食肉加工過程の半定量評価法(時系列マトリクス表示)
*
評価をすませた国の牛肉等のリスクは非常にひくい
*
データ不備で評価できない国もあった
*
非定型
BSEのリスクを配慮した(機械回収肉)
振返り
・リスク評価方法は、同一が望ましいが、背景リスクの変化等により
異なる評価法を利用することもある
・新しいデータ(自然例、感染実験)により、若齢牛では検査陰性に
なることが再確認された。しかし、高齢牛では末梢神経にもプリオン
が広がることから、
高齢牛のBSE検査はリスク回避措置として有効
(非定型BSEのケースにも適用される)
・これまでは、
BSE汚染が継続していること
を前提に、食肉の安全性確保の
ためのリスク評価を行ってきた。しかし、
欧州はBSEの汚染が止まった
ことを評価の前提に入れる考えに変化した
。
・2013年5月の国際獣疫局(OIE)の総会で、国産牛でBSE陽性になった後、
欧州以外では、日本が最初の「無視できるリスク国」レベルに承認
されることを考えると、リスク評価は、
汚染が継続している前提
ではなく、汚染が終息したかどうかを確認し、リスク評価を行うべき
。
評価方法は適切だったか?
諮問通りに応えなければならないか?
今回のリスク評価の問題
・評価方法として④の方法を用いた。しかし④はBSE非発生国
を自ら評価するために開発した、半定量的評価方法。
・今回の評価は、諮問であるので、十分な科学データを入手で
きる。
BSE汚染が終焉したかどうか?
終焉したならいつか?
汚染が継続しているなら安全のためのリスク回避措置は?
その条件は?評価方法を明確にすべきだったのでは?
・今回、農水の諮問がなかったので
食品面からしか評価しない
。
・混入する脳脊髄、脊柱は30ヶ月以下なら安全としている、
汚染が少なく
種の壁が理由の1つ
。しかし非可食部分は
SRMでないなら規制緩和上、
牛に行く可能性もある。
・食品評価だけでよかったのか?
・波及するリスクは?
今回の評価で違和感を覚えたのは何故か?
今回のリスク評価のデータ
・世界的なBSE流行の終焉
・BSEの経口感染データ
・非定型BSEの分析
何故、これらの課題を分析したのか?
そして、どのようなプロセスで結論に達したか?
明確に説明する必要がある。
世界的なBSE封じ込め成功
何が明らかになったか?
明らかになったこと!
1、サーベイランス(監視:BSE検査)が有用
発生数の増減がわかる
2、封じ込め措置が有効
危険部位の除去と飼料規制が有効
3、国際流通の安全性が向上
各国の侵入リスクが減少した
明らかにすべきこと
・
BSEが終息していく国と、終息しにくい国では何が違うのか?
アイルランド、ポーランド、ポルトガル
BSE牛検出排除、危険部位除去、飼料規制・・・・
・封じ込めレベルに
米国、カナダと日本・フランス・オランダに違いはあるか?
日本のBSE対策
①危害分析(危害因子)
②重要管理点(CCP)の設定
③管理基準の設定
④モニタリング方法の設定
⑤改善措置の設定
⑥検証方法の設定
⑦記録の維持管理
HACCPの7原則
危害:BSEプリオン、経口暴露、致死性 BSEプリオンの蓄積部位(SRM) 全月齢の扁桃、回腸遠位部 脳、脊髄、脊柱等の排除 BSE検査、陽性牛焼却 SRM:焼却 牛の非可食部分はレンダリング・焼却 完全飼料規制、交差汚染防止 ピッシング廃止 輸入飼料規制 査察・肥飼料検査 記録保管義務BSE牛の生年月日と摘発年齢
・1995年前には汚染はほとんどない(92年生まれ2頭)。96年前半に高濃度汚染 ・1997,1998年には新しい汚染はない ・96年の汚染牛から99~01年の汚染につながった ・2002年の対策後の牛は汚染されていない *BSEの感染は 生後1年以内 (誕生年が重要) 90 95 00 05 国内汚染の侵入? 国内汚染の増幅? 年齢(歳) 0 5 10 (生年月日、確認年月日) BSE全頭検査開始(01年10月) A群 C群 リスク評価は、汚染が継続しているという仮説から、汚染が止まったという考えにシフトすべき5か国とも
「管理されたリスク国」
「2004年9月以後の生まれ牛にはBSEない!」
リスクレベルは本当に同じか?
日本のステータス
BSEの汚染は続いているか?とまったか?
根拠は?
いつとまったか?その根拠は?
①2001年に対策が取られなかった場合は グリーンの破線でBSE陽性例が出現した と予想される ②もし、2001年のBSE対策と措置が不完全 にしか遵守されなかった場合は(50%減) グリーンの実線となる ③実際には、赤の実線になった. 農家、食肉処理場、流通・販売、飼料工場 の関係者がBSE対策を遵守した結果、流行が とまった. 5歳齢でほぼ100%検出可能とすれば2007年 生まれまでは、有効性評価可能(汚染は終焉) ・1996年の飼料規制(反芻獣-反芻獣)は有効でない ・2002年(2001年末の完全飼料規制)で、BSEの増幅(R0)はゼロになったと考えてよい 1992 1996 2000 2004 2008 10頭 5 0振返り:日本のステータス
・日本の流行疫学
BSEの感染が1歳齢以内に起こるとすれば、
流行疫学的には、
感染牛の生まれ年が重要!
・2002年2月生まれ以後には、陽性牛は出て
いない。2001年の規制が遵守された。
・科学的に、汚染が止まったことを分析したのち
日本におけるリスク評価は、汚染が続いている状況
でのリスク回避ではなく、
汚染の終焉の時期
で
リスクを考える
べき。
・リスクシナリオを変える必要がある。
フランス、オランダのステータス
BSEの汚染は続いているか?とまったか?
根拠は?
いつとまったか?その根拠は?
フランス、オランダ
BSE検査結果の分析
/生まれ年によるデータで分析
/非定型BSE例は除き、補正する
ピークは95,96年生まれ
95 96 00 01 04 05 07 2000年完全飼料規制 レンダリング、飼料工場交差汚染防止(施設分離、ライン分離)、違反なし 2000年に流行が終焉したとすれば、その以後の牛にはリスクはない。 しかし、フランスでは2004年に、陽性例がある(無視出来るリスク国ではない) 何故EUのリスク評価では、SRMの規定が全月齢の扁桃、全腸、腸間膜、 12カ月齢以上の頭蓋、脊髄、30カ月齢以上の脊柱か? EU全体としては、まだ汚染がとまっていないという考え方か? オランダ フランスカナダのステータス
BSEの汚染は続いているか?とまったか?
根拠は?
いつとまったか?その根拠は?
カナダ:BSE検査結果の分析
生まれ年陽性数
98,01,02,03, 04年他
・1997年の飼料規制は有効でない
・2007年の飼料規制は有効か?不明
5歳齢でほぼ100%検出可能としても
完全規制の有効性評価は読めない
97 98 99 00 01 03 04 05 07最悪シナリオで止まっていない?というのがこれまでのルール
・2007年の規制が有効である理由は?
特定危険部位の扱い、レンダリング、飼料工場規制:遵守度は?
米国、カナダ 飼料規制 カナダ完全 飼料規制アメリカのステータス
BSEの汚染は続いているか?とまったか?
根拠は?
いつとまったか?その根拠は?
米国:BSE検査結果の分析
・1997年の飼料規制は有効でない?
有効であるとすれば根拠は?
・2009年10月の飼料規制は有効か?
(生まれ年陽性数)
5歳齢でほぼ100%検出可能としても 有効性の評価はまだ読めない (年間4万頭検査、異常牛のみ)/ 2009年規制が有効である理由は?
特定危険部位の扱い、レンダリング、
/ 飼料工場規制:遵守度は?
/ トレーサビリティのないシステムでの
30カ月齢の科学的意味は?
最悪のシナリオで止まっていない?
・97年は反芻獣(馬、豚以外の哺乳類)から 反芻獣を禁止(カナダは無効であった) ・09年はBSE陽性牛、30カ月齢以上の 牛の脳、脊髄等の家畜飼料利用禁止 ・30カ月齢以下であれば脳、脊髄も飼料使用はOK (BSE検査なし) ダウナーは?食用禁止。頭数、検査数4万、検査以外のダウナーは30カ月以下ならOK ・レンダリングは変更なし?3log減のレンダリングは5%のみ(低減効果は期待できない) ・レンダリングの交差汚染は?飼料工場は専用化(80%から98%)、違反は少ない?北米(カナダ、米国)の規制
2007年の飼料規制(米国は2009年10月)
30カ月齢以上の牛の頭蓋骨、脳、三叉神経、眼球、扁桃、脊髄
背根神経節、回腸遠位部(全月齢)を家畜・ペット飼料、肥料禁止
屠畜場に 来る牛 ダウナー、異常牛は 食用禁止。BSE検査3万/年 以外(20万頭)は検査なし 30ヶ月齢以下であれば 全月齢の回腸遠位部以外はOK 頭蓋、脳、三叉神経節、扁桃 脊髄、背根神経節は家畜、ペット 飼料、肥料以外は可。何に使う? 健康牛の非可食部分 30ヶ月齢以上は、SRMを除く レンダリングは不十分 (6工場はSRMも一緒に処理?) 重大な違反は2007年以後はない 飼料検査はしていない 30ヶ月齢以下のSRM(回腸遠位部以外)は 輸入拒否できない。29ケ月の脳脊髄、脊柱は OK。日本の牛に交差汚染すれば?種の壁は ない!食品以外のシナリオも評価対象にしな ければいけない(農水はどうするのか?)。「無視出来るリスク国」に申請・承認できる時期
オランダ:2012年(2013年承認)
日本:2013年(承認)
フランス:このままいけば2015年
カナダ:2007年の規制が完全なら2018年
米国???(2013年承認、韓国は反対!)
無視できるリスク国の承認
フィンランド(1)、スウェーデン(1)、デンマーク (15)に次いで、ベルギー(133)は欧州連合で 4番目にこのステータス(無視できるリスク国)を 得た(2012年)。 *()は陽性牛頭数汚染が続いている場合のリスク回避
経口感染実験データ:
30カ月齢の科学的意味は?
回腸遠位部パイエル板
CMGC GMC
腸間膜動脈神経節、腹腔神経節
coeliac and mesenteric ganglion complex
迷走神経 下神経節
閂部
交感神経
Martin H. Groschup et al., J. gen. Virol. 2007
汚染が続いていても、リスク回避の可能な月齢は?
上向経路で閂部に到達し、検出可能になる月齢は? ~30カ月? 閂部に蓄積し、下向経路で抹消神経に広がる月齢は? ~32カ月