ベンタナ
OptiView PD-L
1
(
SP
142
)
使用目的
ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)は、ホルマリン固定パラフィン 包埋標本において、免疫組織化学染色法によりがん組織又は細胞中 のPD-L
1
発現率の測定を行う体外診断用医薬品として承認を受けて います。 ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)によるPD-L
1
発現率の測定は、 扁平上皮非小細胞肺癌患者におけるアテゾリズマブ(遺伝子組換え) の投与可否を判断するにあたって、実施することが望ましいとされて います。 ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)を用いてPD-L
1
発現率を測定 することができない場合には、アテゾリズマブの添付文書等を参照の 上、投与の可否を適切に判断してください。ベンタナ
OptiView PD-L
1
(
SP
142
)の特徴
免疫療法を含む治療の選択を検討する際に、PD-L
1
の発現を確認 する場合には、適切な検査法によって検査を実施することが重要です。 ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)は、アテゾリズマブの臨床試験 において開発当初から使用されている検査法です。 腫瘍細胞への染まりのみを評価する他の一般的な免疫染色とは 異なり、腫瘍細胞(TC
)に加えて、腫瘍浸潤免疫細胞(IC
)についてもPD-L
1
の発現を評価します。 ウ サギモノクローナ ル 抗 体 で あるクローンSP
142
と、高 感 度 の ベンタナOptiView DAB
ユニバーサルキットに加えてタイラマイド の増感法を原理とするベンタナOptiView
増感試薬を組み合わせる ことで、視覚的なコントラストを高め、腫瘍微小環境内の免疫細胞 への染まりが観察しやすくなるよう設計されています。Rabbit
Monoclonal
IHC antibody developed by
Spring Bioscience Corporation
Fully
Automated
With specific and
robust signal
Highly
Reproducible
Accurate scoring and
educational resources
PD-L
1
とは
PD-L
1
(プログラム細胞死リガンド1
)は別名B
7
-H
1
およびCD
274
と しても知られ て いる45
-
55
kDa
のⅠ型 膜 貫 通タンパクで、CD
274
遺伝子によってコードされています。 一方、PD-
1
(プログラム細胞死受容体1
)は、活性化T
細胞上などに 発現する受容体で、過剰な免疫反応や正常細胞への攻撃を防ぐため の免疫抑制機構である免疫チェックポイント分子の一つです1。PD-L
1
は、PD-
1
やB
7
-
1
といった 受 容 体と結 合 す ることにより、 活性化T
細胞を不活化し、免疫応答を抑制に導きます2。PD-L
1
は抗原提示細胞(ADC
)などの免疫細胞のみならず、腫瘍細胞 にも発現し、腫瘍が免疫機構から逃れるための役割を果たします3。PD-L
1
とPD-
1
の結合を阻害することで、活性化T
細胞の不活化を 防ぎ、腫瘍免疫を維持させることができます。肺癌について
日本においても、毎年、約11
万人が新たに肺癌と診断されています。 また、肺癌は死亡率が高く、がん対策情報センターのデータによると、10
年相対生存率は、乳癌が79
.
3
%
であるのに対し、肺癌では女性は 約31
%
、男性ではわずか18
%
であると報告されています。組織型と しては、非小細胞肺癌(NSCLC
)が肺癌全体の約80
∼85
%
を占め ますが、その中でも腺癌が最も割合が多く、肺癌全体の約40
%
を 占めています5, 6。 分子標的治療薬などの登場により、診断や治療の選択肢が広がって いますが、すべてのステージで生存率が低く、過去30
年間で、肺癌は 他のがんと比較して、最も生存率が改善していないことが示されて います7。 新たにNSCLC
と診断された患者の半数以上が、転移巣を伴って おり、生存期間が短くなっています。遠隔転移を有するNSCLC
の5
年 相対生存率は、4
.
7
%と報告されています8。NSCLC
の多くは、切除不能なステージ ⅢB
∼Ⅳで見つかることが 多いと言われています。 切除不能な肺癌症例において、病因となる分子的変異への理解を深 めることや、新しいバイオマーカーの特定および新しい治療を開発す ることが、生存率や生存期間を改善するかもしれません。PD-L
1
の働き
腫瘍細胞は免疫介在性の 異物排除機構から逃れるために PD-L1の発現を増加させる 腫瘍細胞上のPD-L1発現は、 発癌シグナルによって発現が増加される T細胞受容体(TCR)へのMHC抗原複合体の結合は T細胞シグナル伝達を誘発する 腫瘍浸潤免疫細胞上の PD-L1は、活性化T細胞の抑制を 引き起こすことができる PD-L1はT細胞表面上の B7-1およびPD-1受容体と結合する MHC TCR B7-1 (CD80) PD-L1 PD-L1 PD-1 B7-1 (CD80) PD-L1 PD-1 PD-L1腫瘍細胞
腫瘍浸潤免疫細胞
PD-L2 PD-1T
細胞
PD-L1がPD-1受容体に 結合することにより、 T細胞が不活化される PD-1はPD-L1と PD-L2の両方に 結合する腫瘍微小環境
腫瘍の生存・増殖における役割 肥満細胞 マクロファージ 樹状細胞 制御性T細胞 細胞傷害性 T細胞 顆粒球 B細胞 骨髄由来免疫抑制細胞 ベンタナ OptiView PD-L1
(SP142
)に よる染色で免疫細胞のPD-L1
発現の 多様性が強調されます。 大部分はリンパ球、マクロファージ、樹状細胞 および顆粒球です。 腫瘍細胞 血管内皮細胞 周皮細胞 線維芽細胞 好酸球 NK細胞 血小板 腫瘍微小環境(TME
)とは? 近年の研究から、腫瘍細胞及びその周囲の微小環境(腫瘍微小環境;TME
)には、種々の免疫抑制因子が関与し腫瘍に対する免疫反応を 妨げる「がん免疫逃避機構」が存在すること、その中心的な経路の 一つとして、T
細胞の免疫機能抑制に関わる免疫チェックポイントが 存在することが明らかになってきました9,10。TME
におけるPD-L1
の役割PD-
1
/PD-L
1
経 路は免 疫チェックポイントの一 つであり、抗 腫 瘍 免疫反応の制御に重要な役割を果たしていると考えられています。 この機構は本来、自己に対する過剰な免疫反応を制御する機能と 考えられていますが、腫瘍細胞では、腫瘍細胞上に発現したPD-L
1
がT
細胞上のPD-
1
又はB
7
-
1
と結合することで、免疫回避がもたらさ れると報告されています11。 そのため、T
細胞上の抑制性受容体であるPD-
1
やB
7
-
1
とPD-L
1
の 結合を阻害することで、腫瘍特異的T
細胞応答を再活性化できること が示唆されています。 また、腫瘍微小環境における免疫細胞のPD-L
1
発現は、肺癌患者に おいて、抗PD-L
1
抗体薬であるアテゾリズマブが有効な患者群を 評価するための補助となりえます。適切な染色結果を得るために
適切な染色結果を得るためには、正しい試薬の組み合わせおよび染色条件で検査を実施することが重要です。ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)は一次抗体と検出キットの組み合わせにより体外診断用医薬品として承認されています。 必要な試薬など ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)の各構成試薬は、ベンタナベンチマークシリーズ用に最適化されています。 体外診断用医薬品製造販売承認番号:23000
EZX
00005000
商品コード 製品番号 製品名 包装単位 一次抗体 518-114329 741-4860 ベンタナ PD-L1(SP142)RxDx 50テスト 陰性コントロール試薬 518-111182 790-4795 陰性コントロール ウサギモノクローナル抗体用 250テスト 検出試薬 518-111427 760-700 ベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット 250テスト 増感試薬 518-113742 760-099 ベンタナ OptiView 増感試薬 50テスト 推奨プロトコール ベンチマークULTRA, XT, GX
専用プロシージャによる染色が必要となります。 【プローシージャ名】ULTRA VENTANA PDL
1
(SP
142
)XT VENTANA PDL
1
(SP
142
)GX VENTANA PDL
1
(SP
142
) プロトコールステップ 設定内容 Baking (ベーキング) 必要に応じて選択 Antibody (一次抗体) VENTANA PD-L1(SP142) もしくは Negative Control を選択 Counterstain (核染色) Hematoxylin Ⅱ−4 min Post Counterstain(色出し) Bluing Reagent−4 min
コントロールスライド ベンタナ
OptiView PD-L
1
(SP
142
)の染色を行う場合には、必ず同時に精度管理用コントロールスライドの染色を行い、染色操作が適切に 行われていることを確認してください。 自家製精度管理用コントロールスライド 扁桃組織は陽性組織と陰性組織の両方を含んでいるため、ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)の特異的反応と非特異的反応を確認する ためのコントロール組織として適しています。 −胚中心などに存在するマクロファージやリンパ球が陽性となります。 −表層扁平上皮や濾胞間域に存在する免疫細胞は陰性となります。PD-L
1
発現率が既知の肺癌症例を用いることも可能です。ベンタナ
OptiView PD-L
1
(
SP
142
)のスコアリング
ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)による免疫染色は、図1
に示す腫瘍細胞(TC
)だけでなく、図2
に示される腫瘍浸潤免疫細胞(IC
)にも 染色性を示します。 ベンタナOptiView PD-L
1
(SP
142
)で染色された患者組織について、TC
およびIC
を評価します。TC
は、腫瘍細胞全体に対して、染色強度にかかわらず細胞膜に茶褐色の染色が認められる腫瘍細胞の割合を算出します。 また、IC
は、腫瘍領域に対して、染色強度にかかわらず細胞膜に茶褐色の染色が認められる腫瘍浸潤免疫細胞(腫瘍組織内及び腫瘍組織の 辺縁部に局在する免疫細胞)の割合を算出します。 なお、腫瘍領域以外の免疫細胞にもPD-L
1
陽性となる可能性がありますが、判定対象とはなりません。 詳しくは、弊社が提供する添付文書および検査ガイドを参照ください。 図1
中程度∼強い染まりの全周性
TC
染色(非小細胞肺癌、対物レンズ×20
) 図2
暗褐色の点状・線状の
IC
染色(非小細胞肺癌、対物レンズ×20
) 表1
肺癌におけるPD-L
1
発現率のスコアリングアルゴリズム 腫瘍細胞におけるPD-L1発現率(TC) スコア 染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の50%以上に認められる TC3 染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の5%以上50%未満に認められる TC2 染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の1%以上5%未満に認められる TC1 PD-L1の陽性反応が認められない 又は,染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の1%未満に認められる TC0 腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現率(IC) スコア 染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の10%以上に認められる IC3 染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の5%以上10%未満に認められる IC2 染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上5%未満に認められる IC1 PD-L1の陽性反応が認められない 又は,染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の1%未満に認められる IC0TC
染色とIC
染色の鑑別TC
染色はIC
染色と関連して観察される場合があります。高倍率で観察することに加え、HE
染色スライドを確認することが、TC
とIC
を鑑別する ために有用です。 図3
、4
にTC
とIC
が混在する症例を示します。 図3
細胞膜への強い染色を示す
TC
と、間質(腫瘍細胞の間)に わずかに認められるIC
(非小細胞肺癌、対物レンズ×20
) 図4
細胞膜へ弱∼中程度の染色を示すに多く認められる
IC
(非小細胞肺癌、対物レンズ×TC
と、間質(腫瘍細胞の間)20
) 間質におけるICの凝集 強い染まりのTC IC染色が腫瘍細胞の間に認められる 弱い染まりのTC HE染色スライドにおいて、 TCの間に多数のICが 認められるReferences
1. Blank, C and Mackensen, A, Contribution of the PD-L1/PD-1 pathway to T-cell exhaustion: an update on implications for chronic infections and tumor evasion. Cancer Immunol Immunother, 2007. 56(5): p.739-745.
2. Butte MJ, Keir ME, Phamduy TB, et al. Programmed death-1 ligand 1 interacts specifically with the B7-1costimulatory molecule to inhibit T cell responses. Immunity.
2007;27(1):111-122.
3. Dong H, Zhu G, Tamada K, Chen L. B7-H1, a third member of the B7 family, co-stimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion. Nat Med. 1999;5(12):1365-1369.
4. Herbst RS, Soria JC, Kowanetz M, et al. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patients. Nature. 2014;515(7528):563-567.
5. がん情報サービス, ganjoho.jp, 2012年データ
6. 全国がん(成人病)センター協議会, zangankyo.ncc.go.jp, 2017年データ
7. Siegel R, Naishadham D, Jemal A. Cancer Statistics, 2013. CA Cancer J Clin. 2013;63(1):11-30.
8. Howlader N, Noone AM, Krapcho M,et al.(eds). SEER Cancer Statistics Review (CSR),1975-2012. National Cancer Institute. http://seer.cancer.gov/csr/1975_2012/. Published 2015-04-23. Updated 2015-11-18. Accessed 2016-02-08.
9. NCI Dictionary of Cancer Terms. Tumor microenvironment.
http://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms?cdrid=561725 10. AACR. The Function of Tumor Microenvironment in Cancer Progression.
http://www.aacr.org/Meetings/Pages/MeetingDetail.aspx?EventItemID=73#.V6pCFPkrKaE
11. Blank, C and Mackensen, A, Contribution of the PD-L1/PD-1 pathway to T-cell exhaustion: an update on implications for chronic infections and tumor evasion. Cancer Immunol Immunother, 2007. 56(5): p.739-745).