ア ミ ノ配 糖 体 系5薬
剤 の 臨 床 細 菌 学 的 評 価
清
水
保
夫 ・望
月
泉 ・土
井
達
朗
河
田
幸
道 ・磯
貝
和
俊 ・西
浦
常
雄
岐阜大学 医学部泌尿器科学教 室
渡
辺
邦
友 ・三
和
敏
夫 ・二
宮
敬
宇
上
野
一
恵 ・鈴
木
祥 一 郎
岐阜大学 医学 部微生 物学 教室
I は じ め に 最 近 開 発 さ れ たTobrarnycin(TOB),DIbekacIN (DKB),Amikadn (BB-K8)な どア ミノ 配 糖 体 系 抗 生 物 質 は,好 気 性 グ ラ ム 陰 性 桿 菌,と く にP. aeruginosa やKlebsiellaに 対 して す ぐれ た抗 菌 力 を も ち,さ ら にそ の ほ とん どが 活 性 型 の ま ま腎 か ら排 泄 され て,腎 組 織 内 濃 度 お よ び 尿 中 濃 度 が 高 くな る。 した が って,尿 路 感 染 症 の 化 学 療 法 剤 と して の 目的 にか な った 薬 剤 と考 え られ る。 しか し,そ の反 面,腎 毒 性 や 第8脳 神 経 毒 性 な ど の 副 作 用 の点 に 問題 が あ り,こ れ ら薬 剤 の投 与 量,投 与 方 法 に は お のず か ら限界 が あ る。 ま た ア ミ ノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 に共 通 す る抗 菌力 の 弱点,好 気性 連 鎖球 菌 や嫌 気性 菌 に対 す る感 受性 の 欠 除 に も注 意 を は ら う必 要 が あ る。 こ こ に お いて,わ れ わ れ は,前 記3薬 剤 に 加 え て,す で に市 販 さ れ て い るGentamicin(GM), Kanamycin (KM)を 加 え た ア ミノ配 糖 体 系5薬 剤 に つ い て,主 と して抗 菌 力 の面 か ら比 較 検 討 し,そ れ ぞ れ の 薬 剤 の 特 色 を 明確 に し,既 知 のDataと あ わ せ て これ ら薬 剤 に 評 価 を 加 え て み る こ と に し た。 ま た,菌 交 代 と し て の S.faecalisや 嫌 気 性 菌 感 染 症 の 発 生 の 可 能 性 に つ い て も 検 討 を 加 え て み た 。 II 実 験 材 料 およ び 方 法 1. 抗 菌 力 好 気 性 菌 は尿 路 感 染 症 由 来 のP. aeruginosa 52株, Klebsiella 50株,E.coli 53株,Proteus属52株,S. faecalis 26株 の 計233株 を供 試 菌株 と し,TOB, DKB, BB-K8,GM,KMの ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質5剤 に つ い て,そ の抗 菌 力 を最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)で 比 較 し た。 使 用 培地 は,増 菌 用 に は,ハ ー ト ・イ ン フ ユー ジ ョ ン ・ブ ロー ス(栄 研),薬 剤感 受 性 測 定 用 に は ハ ー ト ・ イ ン フ ユー ジ ョ ン寒 天 培 地(栄 研)を 用 い た 。抗 菌 力 の 測 定 は寒 天 平 板 希 釈 法 に よ った 。 ま ず,ハ ー ト噌 イ ン フ ユー ジ ョン寒 天 培 地 に2段 階 希 釈 した 薬 剤 を最 終 濃 度 が 100μg/mlか ら0.39μg/mlに な るよ うに加 え て平 板 と し,Ovemight broth cultureを 多 目的 アパ ラ ッツス で 点 状 に接 種 した。 判 定 は,37℃,20時 間 培 養 後,菌 の 発 育 の 有無 を 肉 眼 で行 な った 。 な お,Proteus属 の 場 合 は,遊 走 を防 ぐ 目的 で 寒 天 濃 度 が3%に な るよ うに調 製 し た。 嫌 気 性 菌 につ い て は17株 を 供 試 した が,こ の 菌 株 は 岐 阜 大 学 医 学 部 微 生 物 学 教 室 保 育 の 標 準 菌 株 を 主 と して 用 い た 。 この 場 合,使 用 培 地 と して,増 菌 用 に はGAM 液 体 培 地(日 水)を,薬 剤 感 受 性 測 定 用 に はGAM寒 天 平 板 培 地(日 水)を 用 い た 。 薬 剤 含 有平 板培 地 の 作製 や,菌 の 接 種 方 法,培 養 時 間,判 定 は好 気 性 菌 の 場 合 と 同 様 で あ るが,培 養 はCO210%,N290%の ガス 環 境 下 で ス チ ー ル ウー ル硫 酸 銅 法 に よ る 嫌 気 培 養 法 に よ っ た 。 ま た接 種 菌 液 は,24時 間 培 養 の 菌 液 を 滅 菌 した 0.05%Yeast extract水 でMc FARLAUD番 号1∼1/2 に な るよ うに希 釈 しだ)(こ の と きの生 菌 数 は105∼106/ ml個 で あ る)。薬 剤 最 終 濃 度 は,ア ミノ配 糖 体 抗 生 物 質 が 嫌 気 性 菌 に 耐 性 を 示 す2)3)4)こ とを 考 慮 し て,GM, DKB,BB-K8,KMで は1,000∼250μg/ml, 100∼0.78 μg/m1の2系 列 を 用 意 した 。 しか し,TOBで は1・000 μg/mlに 希 釈 され た原 液 が 提供 され た た め,100μg/ml か ら以 下 の濃 度 に つい て検 討 した 。 2. Biopllotometerに よ る 増殖 態 度 の検 討 TOBを 中 心 にDKB,B8-K8,GM,KMの5薬 剤 含 有 培 地 内 で の 細 菌 の 増 殖 態 度 を比 較 検討 した。 供 試 菌 株 と して は,E.coli NIHJ JC-2株,P.aeru-ginosa No.28株,K.pneumoniae PCI602株 を用 い た。 ま ず,こ れ らの 菌 株 に対 して1/4MIC∼4MICのTOB を 作 用 させ,薬 剤 濃 度 と細 菌 増 殖 の 関 係 を 観 察 した 。つ ぎに,前 記5薬 剤 の 濃 度 をE.coli,P.aeruginosaで は 5μg/ml,K.pneumoniaeで は1μg/mlと 一定 と して, この 際 の 細 菌 の 増 殖 態 度 を経 時 的 に観 察 した 。 BiophotometerはBio-LogII型 を 用 い,セ ル の 内容 はつ ぎの とお り構 成 した 。 培 地 はTrypt三case Soy Broth(BBL)8.9m1,薬 剤 溶 液 は100μg/mlの 原 液 を 作 製 し, そ れ をTrypticase Soy Brothで 希 釈 し て 最 終 濃 度 の10 倍 濃 度 を 作 製 し,そ の1ml菌 液 は,各 菌 株 のTryptic-ase Soy overnight broth cultureを 滅 菌 生 理 食 塩 水 で 10倍 に 希 釈 し て,そ の0.1mlを 加 え た 。 こ の 場 合,セ ル 内 へ の 接 種 菌 数 は2∼9×106/ml個 と な っ た 。 な お,薬 剤 溶 液 の か わ り にTrypticase Soy Broth 1mlを 加 え た セ ル をControlと し た 。 ま た,P. aeruginosaに つ い て は,菌 膜 の 形 成 を 防 止 す る 目 的 で,0.4% KNO3 を 培 地 中 に 添 加 し た 。 ま た,Biophotometerに よ る 実 験 終 了 後 に 得 ら れ た 全 菌 株 のMICを 前 記 測 定 方 法 で 測 定 し た 。 III 実 験 成 績 1. 抗 菌 力 1) P.aeruginosa(Fig.1):P. aeruginosa 52株 に 対 す る5薬 剤 の 抗 菌 力 はTOBが 最 も 優 れ て お り,以 下 DKB.GM,BB-K8の 順 で あ っ た 。 これ を6.25μg/ml 濃 度 に お け る 発 育 阻 止 率 で み れ ば,TOB98%, DKB 96%,GM92%で あ り,EB-K8は71%で あ っ た 。 BB-K8で は90%以 上 の 菌 株 の 発 育 阻 止 率 を 得 る た め に は,12.5μg/mlの 濃 度 が 必 要 で あ っ た 。 こ れ ら4剤 で は,感 受 性 の 分 布 は す べ て1峰 性 で あ っ た 。 ま た,KM で は,ほ とん ど の 菌 株 が100μg/mlな い し は そ れ 以 上 のMICを 示 す 耐 性 株 で あ っ た 。 2) Klebsiella(Fig.2):Klebsiella 50株 に対 す る抗 菌 力 で は,GM,TOBの 抗 菌 力 はほ ぼ 等 し くDKB, BB-K8,KMの 順 位 で続 い て い る。 この 場 合 に おい て も, TOB,GM,DKBの3剤 は6.25μg/mlの 濃度 で96% 以上 の発 育 を 阻 止 す るの に対 して,BB-K8で は88%, KMで74%で あ っ た。 ま た,前 記3剤 の 感 受 性 分 布 は 1峰 性 で あ るが,BB-K8で は3.13μg/mlと25μg/ml に2峰 性 の 傾 向 を 示 し,KMで は3.13μg/mlと100 μg/ml以 上 で明 らか な2峰 性 を 形 成 して い た 。 3) E.coli(Fig.3):E.coli53株 に対 す る抗 菌 力 は, TOB,GMが ほ ぼ等 し く,DKB,BB-K8,KMの 順 位 で あ っ た。6.25μg/ml濃 度 で の 発 育 阻 止 率 は, GM, Fig. 1 Minimal inhibitory concentration of
ami-noglycosides against 52 strains of P. ae-ruginosa
Fig. 2 Minimal inhibitory concentration of amino-glycosides against 50 strains of Klebsiella
Fig. 3 Minimal inhibitory concentration of ami-noglycosides against 53 strains of E. coli
TOBが それ ぞ れ100%,98%で あ り,こ れ を み る限 り で はP.aeruginosaやKlebsiellaと 同 様 の 成 績 で あ る が,E.coliで は 感 受 性 分 布 の ピー クが3.13μg/ml と高 濃 度 へ 移 動 して い る。DKBで は,6.25μg/mlで 阻 止 率 は81%と,や は り若 干 劣 っ て い る。BB-K8と KMの2剤 で は,MICが 低 い もの で も6.25μg/mlで あ った 。 4) Proteus sp. (Fig.4):Proteus sp.52株 に対 す る抗 菌 力 は,E. coliに 比 較 して も一 段 劣 る成 績 で あ っ た。 しか し,TOB,GM,DKBに は感 受性 を示 す 菌 株 も少 な くはな い 。Species別 の 抗 菌 力 で は,少 数 株 の 検 討 で は あ るが,TOB,GMでP. vulgarisが す べ て6.25μg/ ml以 下 のMICを 示 し,む し ろP.mirabilisに 対 して よ り抗 菌 力 が 強 い 。 5) S.faecalis(Fig.5):S.faecalis26株 に つ い て は,MICが 低 い 株 で もGM,TOBが12.5μg/ml, DKB25μg/ml,KM50μg/ml, BB-K8100μg/mlで あ り,臨 床 効 果 は 期 待 で き な い 。 6) 嫌 気 性 菌(Table1):嫌 気 性 菌17株 に 対 し て は, 嫌 気 性 球 菌 のP. saccharolyticus(14953),P .prevotti (9321),P. aerogenes(PL-4)株 が,TOBに 対 し て1.56 ∼3.13μg/ml,GMに3.13∼6.25μg/ml, DKBに3.13 ∼12.5μg/mlのMICを 示 し た が,そ れ 以 外 の 菌 種 で は す べ て耐 性 株 で あ っ た。 と くに嫌 気 性 桿 菌 で は,1,000 μg/ml以 上 のMICを 示 す 高 度 耐 性 株 が 少 な くな か っ た。 2. 交 叉 耐 性
MICを 測 定 した6菌 種 の うち, P.aeruginosa, Klebs-iella,E. coliの3菌 種 につ い てTOBを 中心 にMICの 相 関 をみ た(Fig.6,7,8)。 大 部 分 のTOB耐 性 株 は, 同 時 にGM,DKB,BB-K8,KMに 対 して も耐 性 を示 した が,Table2に 示 した3株 で はTOB耐 性, GM 感 性 を示 した 。 な お,P. aeruginosaの1株 は, TOB, GM以 外 の3剤 のMICが 測 定 さ れ て い ない た め,前 記P.aeruginosa抗 菌 力 の 検 討 で は 除 外 され て い る。 3. Biophotometerに よ る細 菌 の 増 殖態 度 の検 討 1) 1/4∼4MICのTOBを 作 用 させ た 場 合: E. coli NIHJ Jc-2株 に1/4∼4MIcのToBを 作 用 させ た 場 合(Fig.9),1/4MICで はControlと ほ ぼ 同 様 の 増 殖 曲 線 を示 して い る。1/2MICで も培 養 直 後 か ら増 殖 を 開 始 し,Controlに 数 時 間 遅 れ た だ けでFull
growthに 達 して い る。2お よ び4MICで は,濃 度 に
お う じて増 殖 抑 制 時 間 は延 長 して い るが,最 終 的 に は増 殖 を 開始 し,Full growthに 達 してい る。K. pheumoniae (Fig.10)に おい て も,E. coliの 場 合 とほ ぼ 同様 の増 殖 曲 線 を 描 い て い るが,こ の場 合,MICの 立 ち 上 が りが 早 い 。P. aeruginosa(Fig.11)で は,1/4∼2MICの 濃 度 で はE.coliと 同 様 で あ った が,4MICで は24時 間 ま で 増 殖 が 認 め られ て い な い 。 2) 供 試5薬 剤 の 濃度 を一 定 に した場 合: E. coli NIHJ JC-2株 に5μg/ml濃 度 の5剤 を作 用 さ Fig. 4 Minimal inhibitory concentration of
ami-noglycosides ar_inst 52 strains of Proteus
Fig. 5 Minimal
inhibitory
concentration
of
ami-noglycosides against 26 -tr. _ins of S. faecalis
せ た(Fig.12)。MICに した が って,そ の 高 い 薬 剤 か ら 順 次 増 殖 を 開始 して い る。 この場 合,こ の 濃 度 が その MICに 達 して い ない もの はKMとBB-K8で あ るが, 両 者 と も同 じMICで あ るに もか か わ らず,BB-K8で 明 らか に増 殖 が 遅 延 して い る。 この 増 殖 曲 線 は,MIC以 上の 濃 度 が 加 え られ て い るDKBに む し ろ 似 て い る。 Table 1 Minimal inhibitory concentration of aminoglycosides against anaerobes
Fig. 6 Correlation of minimal inhibitory concen-tration between tobramycin and one of the another aminoglycosides against P. aerugi-nosa
Fig. 7 Correlation of minimal inhibitory concen-tration between tobramycin and one of the another aminoglycosides against Klebsiella
P.aeruginosa No.28(Fig.13)の 場 合 も,E.coliと 同様, MICの 順 に したが っ て増 殖 を 開 始 して い る。BB-K8 は この 場 合 に も,1/2MIC以 下 の 濃 度 で あ るに もか か
わ らず,Fig.11に 示 され た1MICのTOBと 同 様 な増
頭 曲 綜 で あ っお。1μg/mlの 薬 剤 濃 度 で,K.pneumoniae Fig. 8 Correlation of minimal inhibitory
concentra-tion between tobramycin and one of the another aminoglycosides against E. coli
Fig. 9 Growth curve of E. coli in the medium with tobramycin
Biophotometric assay with Bio-Log II. organism : E. coli NIHJ JC-2
inoculum size : 2 •~ 106 cells/ml
Fig. 10 Growth curve of K. pneumoniae in the medium with tobramycin
Biophotometric assay with Bio-Log II. organism : K.pneumoniae PCI-602 inoculum size : 2 •~ 106 cells/ml
Fig. 11 Growth curve of P. aeruginosa in the medium with tobramycin
Biophotometric assay with Bio-Log II. organism : P. aeruginosa No-28
inoculum size 4 •~ 106 cells/ml
Fig. 12 Growth curve of E. coli in the media, with 5 pg/ml concentration of five ami- noglycosides
Biophotometric assay with Bio-Log II.
organism : E. coli NIHJ JC-2 inoculum size : 2 •~ 106 cells/ml
Fig. 13 Growth curve of P. aeruginosa in the media with 5 jƒÊ/ml concentration of five aminoglycosides
Biophotometric assay with Bio-Log II. organism : P. aeruginosa No. 28 inoculum size : 9 •~ 106 cells/ml
(Fig.14)を 培 養 した場 合 に おい て も,8B-K8の 増 殖 開 始 は や は り抑 制 され て い る。 ま た,こ の場 合GMで は ま った く増 殖 が 認 め られ ず,菌 は 陰 性 化 して い た 。 3) Biophotometerに よ る検 討 終 了後 に得 られ た菌 株 の耐 性 の上 昇(Table3,4): 1/4∼4MICのTOBで 培 養 後 の 菌 株 の 耐 性 上 昇 (Table3)に つ い て は,測 定 に よ って 生 ず る誤 差 を1/2 ∼2MICま で と考 え,そ れ 以 上 の変 化 を 示 した もの だ け を有 意 の 変 動 と して 検 討 す れ ば,1/4∼1MICま で の 低 濃度 に 接 触 した 菌 株 で は,耐 性 の 上 昇 は 認 め られ な い 。い っ ぼ う,2∼4MICに 接 触 した 場 合 に は,大 半 の菌 株 で4∼8倍,MICが 上 昇 してい る。 ま た,こ のMIC
Fig. 14 Growth curve of K. pneumoniae in the
media with 1 ƒÊg/ ml concentration of five aminoglycosides
Biophotometric assay with Bio-Log II.
organism : K. pneumoniae PCI-602 inoculum size 3•~106 cells/ml
Table 2 Minimal inhibitory concentration of aminoglycosides; strains resistant to Tobramycin and sensitive to Gentamicin
Table 3 Minimal inhibitory concentration changes: after biophotometric assay in the media with various concentrations of Tobramycin.
の上 昇 は,GM,DKB,BB-K8,KMに も 共 通 し て い た 。 一 定 濃 度 の5薬 剤 で そ れ ぞ れ培 養 した の ちの菌 株 の耐 性 上 昇 をTable4に 示 した。 成 績 は,MIC以 上 の 濃 度 を作 用 させ たTO8,GM,DKBに お い て は 耐 性 の 上 昇 が 認 め られ た 。 獲 得 した 耐 性 は,や は り他 の4剤 に 共 通 して い た 。 IV 考 按 化 学 療 法 剤 の評 価 が抗 菌 力 の比 較 か らの み行 ない 得 る の で あれ ば,今 回検 討 の対 象 とな った5剤 に対 し,評 価 を くだ す こ とは容 易 で あ る。 しか し,投 与 され た薬 剤 は 吸収 され,病 巣へ 送 られ る。 そ して,そ の 間 に も代 謝 さ れ,排 泄 され て い る。 した が って,感 染 病 巣 内 で の薬 剤 濃度 は常 に流 動 的 な もの で あ る。 だ が,ひ と く ちに病 巣 とい って も,罹 患臓 器 の 特殊 性,機 能,合 併 症 な どが=複 雑 に か らみ,個 々 の 症 例 で 条 件 は 同 一 で は な い 。 比 較 的 簡 単 に 行 な え る体 液 内 濃 度 を媒 介 に して,類 推 す る以 外 に方 法 はな い 。 また,病 巣 内 濃 度 に 直 接 影 響 を与 え る因 子 と して は, 投 与 量 が あ る。 と くに,ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 で は, 腎 毒 性,第8脳 神 経毒 性 な どの重 篤 な副 作 用 を発 現 させ る危 険 性 が 常 に つ きま と ってい るた め,投 与 量 には お の ず か ら限 界 が あ る。 す で に一 般 的 に使 用 され て い るKM とGMの 本 邦 での 成 人 の常 用 量 は,KMで は1∼2 9/day,GMで は80∼120xng/dayと,投 与 量 に 約10倍 以上 の ひ ら きが あ る。 この よ うに,諸 因子 に差 違 の あ る 薬 剤 を 同 一 の 条 件 で 比 較 す る こ とは不 可 能 と もい え る。 した が って,今 回 の 評 価 の基 準 を,一 応,つ ぎの もの と し た。 (1)明 らか に投 与 量 に差 違 の あ るKMは 参 考 とす る に と ど め,基 準 の 設 定 の 対 象 か らは 除 外 す る。KMに 関 して は,衆 知 の よ うに梅 沢 ら5)に よ って1957年 に 開 発 され た代 表 的 な ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 で あ り,そ の す ぐれ た抗 菌 作 用 か ら現 在 も常 用 され てい る薬 剤 で は あ る が,新 開発 の ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 の 母体 で あ るた め,Controlと して の地 位 を与 え るこ とと し た。 (2)病 巣 内濃 度 を血 中濃 度 で代 表 させ た。 (3)感 性 菌 の上 限 をMIC6.25μg/mlと した。 血 中 濃 度 は,体 液 内 濃度 中一 番 普 遍 的 な もの で あ り, TOB,GM,DKBで は1回50∼100mgの 筋 肉 内投 与 で5∼8μg/ml/maxの 血 中 濃 度 が 得 られ て い る6)7)8)。 Table 4 Minimal inhibitory concentration changes after biophotometric assay in the media with same
わ れ わ れ の臨 床 的 検 討9)に よ れ ば,こ の血 中濃 度 に ほぼ み あ うMIC6.25μg/m4以 下 の原 因 菌 に よ る尿 路 感 染 症 の治 癒 率 が,そ れ 以 上 のMICの もの に比 し高 か った こ とが そ の根 拠 で あ る。 した が って,血 中 濃 度 の ピー ク と,有 効 と したMICの 上 限が 重 な る結 果 にな った が, 尿 路 感 染 症 で は高 濃 度 に排 泄 され る尿 中 活 性 型 薬 剤 の 抗 菌 作用 も加 味 きれ るの で,他 科 領 域 の 感 染 症 よ り高 い MICを 示 す 原 因 菌 に ま で 除 菌 効 果 が お よぶ の で あ ろ う。 この 基 準 に したが っ て,各 種 薬 剤 の 抗 菌 力 を比 較 す れ ば,Table5に 一括 表 示 した よ うに,GM93%,TOB 90%,DKB80%,BB-K844%で あ っ た 。 し た が っ て,TOB,GM,DKBの3剤 で は,好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 に よ る尿 路 感 染 症 で は,1回50∼100mg1日2回 の 投 与 量 で 充 分 効 果 が 期 待 で き る。 しか し,そ れ に比 較 して,DKBで はや や 劣 り,BB-K8で は さ らに 劣 って い る。 この こ とに 関 して,DKBで は1回 投 与 量 を100 mgに して 臨 床 効 果 の 上 昇 をみ た との 報 告10)や, BB-K8 を1回200∼300mgに して 良 好 な臨 床 効 果 を 得 た との 報 告 もあ る11)。BB-K81回200mgの 投 与 に よ り20 μg/ml以 上 の血 中 濃 度 が 得 られ て お り12),25μg/ml以 下 のMICを 示 す 好 気 性 グ ラム陰 性 桿 菌 が86%存 在 す る こ とか ら も,今 回設 定 した基 準 が臨 床 効 果 とよ く相 関 してい る とい えよ う。以 上 よ り,今 回 検 討 したTOB, GM,DKB,BB-K8で は,安 全 性 も考 慮 して,適 正 な 投 与量 が それ ぞれ に定 め られれ ば,そ の 臨床 効 果 に は大 差 が な い もの とい え よ う。 つ ぎに,S.faecalisや 嫌 気 性 菌 な どは,こ れ ら薬 剤 に
Table 5 Summary of minimal inhibitory concentration of five aminoglycosides against 207 strains of aerobic gram-negative bacteria
感 受 性 を示 して い な い 。 この こ と は,こ れ らの 細 菌 に よ る感 染 症 が ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 の 適 応 外 で あ る こ と は 当然 と して も,菌 交 代 症 発 生 の 可 能 性 を も示 唆 して い る こ と を忘 れ て はな らな い 。 ア ミノ 配 糖 体 系 抗 生 剤 投 与 に よ り,嫌 気 性 菌 感 染 症9)13)14)15)や好 気 性連 鎖 球 菌 感 染 症9)15)6)が惹 起 され 得 る との 報 告 は 無 視 で きな い 。 耐 性 菌 に関 して は,お お む ね 交 叉 耐 牲 を示 して い る が,耐 性 の 交 叉 しな い 菌 株 も存 在 して い た(Table2) 15)。 こ の よ うな現 象 が どの よ うな 耐 性 機 序 に よ る もの か,ま だ 不 明 で あ るが,今 後 に残 され た 興 味 あ る問 題 で あ る。 投 与 方 法 の 基 礎 的 実 験 と して,今 回Biophotometer に よ る検 討 を試 み て い るが,ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 で は,MIC以 下 の 薬 剤 濃 度 で は ほ とん ど細 菌 の 増 殖 抑 制 効 果 は み られ な か った 。 この こ とは,同 一 条 件 で 行 な っ たPenicillin系 薬 剤 と は異 な って い る17)18)。Penicillin 系 薬 剤 で は,1∼2MIC以 上 の濃 度 で は,細 菌 の増 殖 は 完 全 に抑 制 され,MIC以 下 の 濃 度 に おい て も不 完 全 な が ら増 殖 抑 制 効 果 が 認 め られ て い る。 この 結 果 に 基 づ き,わ れ わ れ は,Penicillin系 薬 剤 の 低 濃 度 持 続 療 法 を 推 賞 して い るが19),ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 で は この 投 与 方 法 は不 適 当 とい わ ざ るを得 な い 。 V ま と め TOB,DKB,BB-K8,GM,KMの ア ミノ配 糖体 系抗 生 物 質5剤 の抗 菌 作用 を臨 床 細 菌 学 的 に 検 討 して,以 下 の 結 論 を得 た 。 1) 尿 路 感 染 症 由 来 の 好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌207株 の 抗 菌 力 は,TOB,DKB,GMで ほ ぼ 等 し く, BB-K8, KMで ゃや 劣 っ た。 2) 常 用 量 の投 与 で 得 られ る血 中 濃 度6.25μg/ml付 近 に お け る これ ら薬 剤 の 臨 床 分 離 好 気 性 グ ラ ム陰 性 桿 菌 207株 に対 す る 積 算 阻 止 率 はGMで は93%,TOB90 %,DKB80%,BB-K844%で あ っ た。 3) S.faecalisや 嫌 気 性 菌 の ほ とん どの 菌 株 が,臨 床 的 に 得 られ うる ア ミノ 配 糖 体 系 抗 生 物 質 濃 度 の 範 囲 で は,耐 性 を示 し た。 4) Biophotometerに よ る検 討 で は,こ れ らア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 は,PC系 薬 剤 と異 な って,2な い しは 4MICに お い て も,細 菌 の 増 殖 が 認 め られ た。 5) 通 常 で は,ア ミノ配 糖 体 系 抗 生 物 質 相 互 の交 叉 耐 性 が 認 め られ た。 しか し,3株 のTOB耐 性 株 で は,GM 他 に 感 性 を示 した 。 文 献 1) 渡 辺 邦 友,ほ か:嫌 気 性 菌 の 薬 剤 感 受 性 試 験 法 に つ い て 。 第3回 嫌 気 性 菌 感 染 症 研 究 会 講 演 記 録: 36,1973 2) 〓 自 覚:尿 道 常 在 菌 に 関 す る 研 究-特 に 無 芽 胞 偏 性 嫌 気 性 菌 に つ い て 。 日 泌 尿 会 誌65:158, 1974 3) 毛 泉,ほ か:尿 よ り 分 離 さ れ る嫌 気 性 菌(細 菌 学 的 検 討)。 第3回 嫌 気 性 菌 感 染 症 研 究 会 講 演 記 録: 86,1973 4) 清 原 宏 彦,ほ か:尿 路 に お け る 嫌 気 性 菌 第 一 報 臨 床 的 検 討 。 西 日泌 尿36:295,1974
5) UMEZAWA,
H.; et al.: Production and isolation of
new antibiotic, kanamycin. J. Antibiotics 10 A:
181, 1957
6) 河 盛 勇 造,ほ か:3,,4'-Dideoxykammycin Bに 関 す る2,3の 実 験 お よ び 臨 床 経 験 。Chemotherapy 22:840,1974 7) 上 田 良 弘,ほ か:新 半 合 成 ア ミ ノ グ リ コ シ ッ ド系 抗 生 物 質BB-K8(Amikacin)の 基 礎 的 臨 床 的 研 究 。Jap.J.Antibiotics27:354,1974 8) 清 水 喜 八 郎:第22回 日本 化 学 療 法 学 会 総 会 。 新 薬 シ ン ポ ジ ウ ム 。Tobramycin,1974 9) 清 水 保 夫,ほ か:抗 菌 ス ペ ク ト ラ ム の 面 か ら み た Tobramycinの 臨 床 的 評 価 。Chemotherapy23(3): 1282∼2289,1975 10) 磯 貝 和 俊,ほ か:泌 尿 器 科 領 域 に お け る3',4'-Dide-oxykanamycin Bの 臨 床 的 検 討 。Chemotherapy 22:927,1974 11) 磯 貝 和 俊,ほ か:新 合 成 ア ミ ノ 配 糖 体 抗 生 物 質 Amikacin(BB-K8)の 基 礎 的 な ら び に 臨 床 的 検 討 。 Jap.J. Antibiotics 27:328,1974 12) 河 盛 勇 造,ほ か:Amikadn(BB-K8)に 関 す る 基 礎 的 な ら び に 臨 床 的 研 究 。Jap.J.Antibiotics 27: 348,1974 13) 清 水 保 夫,ほ か:菌 交 代 症 と し て の 嫌 気 性 菌 。 第 4回 嫌 気 性 菌 感 染 症 研 究 会 講 演 記 録:130,1974 14) 馬 場 駿 吉,ほ か:ア ミ ノ 配 糖 体 抗 生 物 質 と 耳 鼻 科 嫌 気 性 菌 感 染 症 。 第4回 嫌 気 性 菌 感 染 症 研 究 会 記 録:98,197415) KLASTERSKY,
J.; et al.: Comparative clinical study
of tobramycin and gentamicin. Antimicr. Agents
& Chemoth.
5: 133, 1974
16) JAFFE, G.; et al.: Clinical study of use of the new
aminoglycoside tobramycin for therapy of
infec-tion due to gram-negative
bacteria. Antimicr.
Agents & Chemoth. 5: 75, 1974
17) 河 田 幸 道,ほ か:泌 尿 器 科 領 域 に お け るAmoxy-cillinの 基 礎 的 ・臨 床 的 検 討 。Chemotherapy 21:
1678, 1973
18) 野 村 恭 薄,ほ か:Pivampicillinの 臨 床 的 ・基 礎 的 検 討 。Chemotherapy 22;589,1974
19) 坂 義 人,ほ か:所 謂 大 量 療 法 に つ い て 。1.基 礎 的 検 討 。 第21回 日本 化 学 療 法 学 会 総 会 演 題 。1973
PRECLINICAL
ASSESSMENT
OF AMINOGLYCOSIDES
TOBRAMYCIN,
GENTAMICIN,
DIBEKACIN,
AMIKACIN
AND
KANAMYCIN
YASUO SHIMIZU, IZUMI MOCHIZUKI, TATSUO DOI,
YUKIMICHI KAWADA, KAZUTOSHI ISOGAI and
TSUNEO NISHIURA
Department
of Urology, Gifu University, School of Medicine
KUNITOMO WATANABE, TOSHIO MIWA, KEIU NINOMIYA,
KAZUE UENO and
SHOICHIRO SUZUKI
Department
of Bacteriology, Gifu University, School of Medicine
Five aminoglycosides (tobramycin, dibekacin, amikacin, gentamicin and kanamycin) have been
com-pared in vitro antimicrobacterial activity and the results are summarized as follows.
1) The antimicrobacterial activity of tobramycin, dibekacin and gentamicin against aerobic
gram-negative rods (207 strains) isolated from urinary tract infections were about equal and were greater than that
of amikacin and kanamycin.
2) At 6.25 ƒÊg/ml of these drugs, which could be attained in patients treated with usual dosis,
genta-micin inhibited 93 per cent of aerobic gram-negative rods (207 strains) and that of tobramycin was 90 per
cent, dibekacin was 80 per cent and amikacin was 44 per cent.
3) Most strains of S. faecalis and anaerobes were resistant to the blood concentration of aminoglycosides
which could be achieved in man.
4) By biophotometric assay, it was observed that aerobic gram-negative rods increased in the medium
with high concentration (2 or 4 times MIC) of these aminoglycosides.
5) Usually, cross-resistance among aminoglycosides has been observed, but 3 strains resistant to