ABSTRACT
—Characteristics of the deteriorated spaces, which were defined as the spaces that the degree of naturalness in vegetation was decreased from 1983 to 1996 at the urban green spaces, were evaluated from some indices such as their area, elevation, slope degree, naturalness, and so on by using the frequency distribution in Kitakyushu City. Most of the spaces were characterized by the woodlands, smaller than 5 ha in area, lower than 200 m in altitude and smaller than 3ß in slope degree, abutted on the urban green spaces of smaller than 600 ha in area. The ranks of naturalness, which were defined by the degree of naturalness in vegetation, were predicted by the single regression for choosing one of their indices that showed the highest correlation coefficient as the predictor variable. The map indicating the probability of the urban green spaces in the future were drawn by overlapping the ranks of naturalness and two kinds of spaces specified by the City Planning Law (the Urbanization Promotion Area or the Urbanization Control Area). The quantitative indicator for managing the urban green spaces in the city was showed by the map.は じ め に 近年、ヒートアイランド現象の抑制、生態系の保全、アメ ニティの向上、環境学習の場といった様々な目的で都市緑地 の保全が重要な課題となっている。 緑地の現状を把握するためには、景観構造の定量化が景観 分析の第一段階である(池上, 1998)。そのため、緑地分布、 緑地の質の把握、連続性といった緑地を定量的な指標で表す 多くの研究がなされてきた(加来ほか, 2003; 小林ほか, 2001; 鈴木ほか, 2004)。また、こうした指標と緑地環境の衰退との 関係を調べるために、市街地開発の進行状況や影響度を定量 的に把握しようという研究も存在する(小林ほか, 2003)。本 研究はこうした成果をふまえ、同様に緑地を定量的に扱うが、 緑地に加えられた人為の影響と関係の深い指標を探り、人為 の影響の大きさを直接的に予測するという点が従来の成果と 異なっている。また本研究では、その結果から都市緑地の変 遷を予測する地図の作成を試みる。地図の作成は、等質的な 地域単位を区分し、土地利用のための土地分類を行い、分類 結果に基づいて土地利用計画を行う(武内, 1991)のに利用で きるという点で地域の全体像を把握する成果として重要である。
植生自然度を用いた都市緑地の環境変化の予測に関する研究
−北九州市を対象として−
磯野 大
1・伊東啓太郎
1・真鍋 徹
2・梅野 岳
31Faculty of Engineering, Kyushu Institute of Technology, 1-1 Sensuicho,
Tobata-ku, Kitakyushu 804-8550, Japan
2Kitakyushu Museum of Natural History and Human History, 2-4-1 Higashida,
Yahatahigashi-ku, Kitakyushu 805-0071, Japan
3Graduate School of Civil Engineering, Kyushu Institute of Technology,
1-1 Sensuicho, Tobata-ku, Kitakyushu 804-8550, Japan
The forecast of the environmental changes in the urban green spaces by using
the index of the degree of naturalness in vegetation
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— A case study in Kitakyushu city —
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1九州工業大学工学部建設社会工学科 2北九州市立自然史・歴史博物館 3九州工業大学大学院工学研究科
(Received September 8, 2005; accepted March 9, 2006)
植生自然度 自然度ランク 6 4 7,8 5 9,10 6 表1 自然度ランク 1 1 2,3 2 4,5 3 図1 地域分類の方法 研 究 対 象 地 研究対象地には、緑地の変遷を都市計画に活かすことを方 針としている地域が、都市計画への反映や現状との比較とい う点で適している。そこで、1960年代以降に郊外の住宅開発 が急速に進んだことから市街地が大きく拡大し、市街地の内 外で緑地の減少が確認され、現在は緑地を含む自然的環境の 保全、復元、活用といった環境共生のまちづくりが進められ ている(北九州市, 2003)北九州市を選択した。 研 究 方 法 まず、緑地データには、自然環境保全の施策を推進するた めの基礎資料を整備するために(環境省, 1976)実施された自 然環境情報GISデータから、第3回∼第5回植生調査(1983∼ 1996)の植生自然度データを用いた。緑地データの定義の詳 細は、次の緑地に関する用語の定義に示す。また、市街地分 布が植生の低下に少なからず影響を及ぼしているという研究 (小林ほか, 2003)から、人為の影響のある地域として自然 環境情報GISデータの第3回∼第5回植生調査の植生自然度の 低下した地域を特定し、この地域を植生自然度低下地域とし た。また、緑地の減少に影響を与える要因として緑地自身の 持つ性質や地形条件が強いとの研究(小林ほか, 2001)から、 植生自然度低下地域において、面積、自然度、標高、傾斜の 4つの指標を選び集計を行った。傾斜については、植生自然 度低下地域の周辺1000mまでのエリア(バッファ)の平均標 高を200mごとに計算し、平均標高と距離による回帰直線の 傾きを用いた。標高や傾斜の集計には、国土地理院の数値地 図50mメッシュ(標高)を用いた。 これらの指標から、緑地に加えられた人為の影響の予測を 試みた。すなわち、次の緑地に関する用語の定義に詳細を示 す通り、植生自然度より求めた自然度ランクを、回帰分析よ り予測した。 今回使用した回帰式を(1)に示す。 y = a1x + a0 (1) a1 は回帰係数、a0 は定数項である。目的変数 y は、予測の 対象となる自然度ランクとした。説明変数 x は面積・予測前 の自然度・標高・傾斜の4指標から相関係数の最も高いもの を選択した。また、予測は植生自然度低下地の8割が5ha未満 であることを考慮し200m×200mメッシュ(4ha)を用いた。 自然度ランクの予測と法的規制から、対象地における緑地 の予測地図を作成した。まず、第5回植生調査から、200m× 200mメッシュの緑地レイヤーを予測の元となるレイヤーとし て作成した。次に、市街化区域は緑地の連続性が低く、市街 化調整区域では緑地の連続性が高いとの研究(加来ほか, 2003; 小林ほか, 2001)から、市街化調整区域のゾーニングが、都市 計画法の市街化の抑制により、緑地を法的に保護している地 域と捉え、その地図レイヤーを作成した。最後に、第5回植 生調査の自然度ランクから求めた予測値が1以下となり、人 為の影響から緑地の喪失が予測される地域を示す地図レイヤ ーを作成した。 これら3つのレイヤーの重ね合わせにより、緑地の判定、 法的な保護の判定、人為の影響で緑地が失われる地域の判定、 がなされ、5タイプの地域分類と予測地図が作られた。地域 分類のタイプについては図1にまとめた。 ま た 、 集 計 や 解 析 に は 、 地 理 情 報 シ ス テ ム( G I S 、 ArcView3.2)を用いた。 緑 地 に 関 す る 用 語 の 定 義 緑地に関する用語について以下のように定義した。 (1)「緑地」:植生自然度2∼10が占める地域 (2)「植生自然度低下地域」:土地に加えられた人為の影響 で緑地の質が低下する地域として、第3回∼第5回植生 調査までに植生自然度が低下した地域 (3)「生産緑地」:植生自然度2∼3が占める地域 (4)「自然緑地」:植生自然度4∼10が占める地域 (5)「森林」:植生自然度6∼9が占める地域 (6)「市街地」:植生自然度1が占める地域 (7)「背丈の低い草原」:植生自然度4が占める地域 (8)「周辺緑地」:ある地域に接する(距離が0である)「緑 地」 (9)「自然度ランク」:資料(環境省, 1976)で示された、自 然度の高さで同一ランクの土地利用区分Ⅰ∼Ⅵを、そ れぞれ1∼6点として数値化したもの。植生自然度と自 然度ランクの関係を以下の表1に示す。本研究では、数 量的な扱いをする回帰分析や、予測地図作成に用いた (10)「自然度ランクの予測値」:回帰式により予測した自然 度ランク 緑地ではない地域 (自然度ランク:1) 【地域分類 =1】 市街化区域 植生自然度低下後に緑地が失われる地域 (自然度ランク予測値<2) 【地域分類 =2】 植生自然度低下後に緑地が失われない地域 (自然度ランク予測値≧2) 【地域分類 =3】 植生自然度低下後に緑地が失われる地域 (自然度ランク予測値<2) 【地域分類 =4】 植生自然度低下後に緑地が失われない地域 (自然度ランク予測値≧2) 【地域分類 =5】 市街化調整 区域 緑 地 (自然度ランク:2∼6)
また、(3)∼(7)の、緑地の植生自然度の組み合わせによ る分類を、以下で緑地分類と呼称した。 (1)、(3)∼(7)の根拠は植生自然度が定義されている 自然環境保全調査報告書(環境省, 1976)における定義から、 (8)については、植生自然度低下地域の周辺に存在する緑 地の影響を検討するために定義した。(2)、(9)、(10)につい ては、今回の予測・解析の必要から定義した。 結果と考察 植生自然度低下地域の分布 植生自然度低下地域の分布を図2に示した。植生自然度低 下地域の総面積は655haであり、対象地の面積の1%程度であ った。第3回∼第5回植生調査における対象地の植生自然度の 変化は、森林の面積減少や、市街地、背丈の低い草原の面積 増加といった都市化の傾向が見られた。 植生自然度低下地域の特性 特性を把握するために植生自然度低下地域の緑地指標・地 形指標によるヒストグラムを作成した。相対度数の最も高い クラス(データの最頻値)を中心に相対度数の合計が7∼8割 を占めるクラスの幅を、各特性の持つ主要な数値として着目 し、以下に結果をまとめた。 面積 植生自然度低下地域の8割は面積が5.0ha以下であった(図 3)。また、植生自然度低下地域の周辺緑地の面積の8割は 600ha以下であった(図4)。 自然度 植生自然度低下前は8割が森林であった(図5)。植生自然 度低下後は5割が市街地、3割が背丈の低い草原、1割が農地 であった(図6)。 標高 植生自然度低下地域の7割は標高200mまでの地域に存在し た(図7)。また、植生自然度低下前には標高と植生自然度 の相関は認められなかったが、植生自然度低下により標高と 植生自然度にかなり相関がある(久志本, 1993)と認められ た(表2)。植生自然度低下は標高の低い地域ほど進行する ことが示された。 傾斜 植生自然度低下地域の8割は3度までの傾斜地に存在した (図8)。 図2 植生自然度低下地域の分布
図5 植生自然度低下以前の植生自然度 図3 植生自然度低下地域の面積 図8 植生自然度低下地域の傾斜度 図6 植生自然度低下後の植生自然度 図4 植生自然度低下地域の周辺に存在した緑地の面積 図7 植生自然度低下地域の標高 30 20 10 0 0 5 10 15 20 地 域 数 面 積 (ha) 50 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 地 域 数 植 生 自 然 度 50 0 0 100 200 300 400 500 600 700 800 地 域 数 標 高 (m) 30 20 10 0 0 500 1000 1500 地 域 数 面 積 (ha) 50 0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 地 域 数 植 生 自 然 度 50 0 0 5 10 15 地 域 数 傾 斜 角( °)
植生自然度低下後の植生自然度−標高 植生自然度低下前の植生自然度−標高 相関対象 相関係数 0.61 −0.17 表2 植生自然度低下前と植生自然度低下後の相関係数 回帰係数(a1) 定数項(a0) 4.50×10-3 1.34 表4 回帰係数・定数項 植生自然度低下前の自然度ランク 植生自然度低下地域の周辺緑地面積(ha) 標高(m) 傾斜角(度) 説明変数名 目的関数との 相関係数 0.08 0.02 0.59 0.18 表3 相関係数 表5 地域分類ごとの面積割合 1 2 3 4 5 16228 5276 12 13844 13128 分 類 北九州市域 面積(ha) 面積(%) 33 11 0 29 27 表6 各緑地分類に占める地域分類の面積割合 分類 生産緑地 (植生自然度2−3) 自然緑地 (植生自然度4−10) 森林 (植生自然度6−9) 1 2 3 4 5 -3248 12 6564 452 -32 0 64 4 面積(ha) 面積(%) -2472 4 9484 13000 -10 0 38 52 面積(ha) 面積(%) -2312 4 9160 11460 -10 0 40 50 面積(ha) 面積(%) 植生自然度低下後の自然度ランク予測 目的関数となる植生自然度低下後の自然度ランクとして、 植生自然度低下地域の第5回植生調査による自然度ランクを、 今回用いるデータの中で最も新しいことから選択した。各指 標の相関係数とその結果を表3に示す。 相関係数から、標高の指標の相関が他と比較して大きい(表 3)ことが示されている。相関係数が0.4∼0.7で、かなり相 関があるとの基準(久志本, 1993)があり、標高の指標の相 関係数を、エスミ社のEXCEL多変量解析Ver.4.0を用いて検定 した結果、判断を誤る確率は5%以下であることから、植生 自然度低下後の自然度ランクと標高には相関があると解釈で きる。目的関数の分布と回帰式の線形・係数を図9・表4に 示す。 予測地図の作成 作成した予測地図を図10に、対象地の地域分類ごとの面 積割合を表5に示した。この結果と予測地図から以下の(1) ∼(3)の特徴が示された。 (1)[分類5]は緑地が法的に保護され、人為の影響で緑地が 失われない地域として地域分類の中で最も価値が高い。 この[分類5]の地域は、企救、石峰、福智、貫山地と いった主要な山地の周辺に存在する。 (2)法的な保護がない地域(市街化区域内)は、ほぼすべ て、人為の影響で緑地が失われる地域([分類2])であ る。 (3)潜在的に緑地の保全が必要な地域は、人為の影響で緑 地が失われる地域にあたり、[分類2]と[分類4]の合 計で緑地面積の60%(対象地の面積の40%)である。 緑地の役割による指針を示すため、予測地図の生産緑地、 自然緑地、森林といった緑地分類ごとの面積を算出した(表 6)。生産緑地は最も価値の高い[分類5]の地域にあたる面積 が少なく、森林や自然緑地は、[分類5]の地域の面積割合が 生産緑地と比較して高い。生産緑地においては、人為の影響 で緑地が失われる地域([分類2]と[分類4]の合計)は96% 図9 植生自然度低下後の自然度ランクと標高との関係 もあり、潜在的な危険性が大きい。対象地を含め、地方都市 圏では耕作放棄地の増加問題があり(星ほか, 1998)、市街地 においては全国的に農地の宅地化が持続している(水口, 1997)、生産緑地の役割を活かした緑地の維持が重要な課題 である。 まとめと今後の課題 本研究により、緑地に加えられた人為の影響を予測する可 能性が示された。また、予測地図により、都市緑地の特徴の 5 4 3 2 1 0 0 200 400 600 800 自 然 度 ラ ン ク 標 高 (m)
図10 緑地の変遷予測 把握、緑地の確保についての検討、利用についての定量的な 指針が得られた。今回用いた手法は、全国を網羅した容易に 入手できる資料のみを使用しているという点で対象地を広く 選択でき、各地の都市緑地の概要を捉える手法として有用で あると考えられる。 今後の課題として、指標による予測について、目的関数と さらに高い相関係数を示す指標を検討し精度を増すことが挙 げられる。また、今後の展開として、地理的条件の近い別の 地域にて同様の解析を試み、今回試みた北九州市の解析結果 との比較や検証への取り組みが考えられる。 謝 辞 本研究を遂行するにあたり、北九州市公園緑地部の富山彩 佳氏には、資料提供等多大なご協力を頂いた。ここに厚く御 礼申しあげる。なお、本研究の一部は、平成15年度日本学 術振興会科学研究費(基盤研究(C):課題番号15570026 研 究代表者 真鍋 徹)及び平成15年度文部科学省地域貢献特別 支援事業(研究代表者 伊東啓太郎)によって行われた。 引 用 文 献 星 啓・森塚圭一・徳永幸之・須田 熈, 1998. 開設状況と利用状 況からみた地方都市圏における貸し農園整備の方向性. 都市計 画論文集, 33: 709-714. 池上佳志, 1998. 景観の量的把握. 国際景観生態学会日本支部会報, 4 (2): 26-29. 加来仁悟・伊東啓太郎・磯野 大・光田 靖・梅野 岳, 2003. 流域 を対象とした都市緑地の生態的ポテンシャル評価及び連続性に 関する基礎的研究−北九州市紫川流域を対象として−. 日本林 学会九州森林研究, No.57: 163-166. 環境省, 1976. 自然環境保全調査報告書(第1回緑の国勢調査)(昭 和51年度). 401 pp. 北九州市, 2003. 北九州市都市計画マスタープラン. 北九州, 6-9, 47-48, 69-72. 小林祐司・佐藤誠治・姫野由香, 2001. 都市における緑地分布変化の 要因分析−北九州市における緑地環境指標による変化要因につ いて−. 都市計画論文集, 36: 823-828. 小林祐司・佐藤誠治・姫野由香・金 貴煥, 2003. 空間相互作用モデ ルを応用した市街地分布影響モデルの導出と適用−ランドサッ トTMデータを利用した土地利用変化構造の把握. 都市計画論文 集, No.38-3: 403-408. 小林優介・福井弘道・石川幹子, 2001. 小流域を単位とした森林分布 の評価手法とその適用. 都市計画論文集, 36: 271-276. 久志本茂, 1993. 教育のための基礎統計学. 24 pp., 宝文館出版, 東京. 水口俊典, 1997. 土地利用計画とまちづくり 規制・誘導から計画協 議へ: pp. 208-210. 学芸出版社, 京都. 鈴木健夫・真鍋 徹・伊東啓太郎・梅野 岳, 2004. デジタル相関植 生図を用いた北九州市中央部域の景観変遷の解析. 北九州市立 自然史・歴史博物館研究報告A類, (2): 79-85. 武内和彦, 1991. 地域の生態学: pp. 23-38. 朝倉書店, 東京.