NII-Electronic Library Service
The/aPanese /eumat ef Psychenomic Science
1995
,
Vol.
141 No.
2、
75−
85視覚探索
に
お け
る
有 効視野特性
の
反 応
時間
と
眼
球
運
動
に よ
る
検討
熊
田
孝 恒
・ ロ ノ町康夫
。斎 田 真 也
1)生命
IL
学.
L
業技術研 究所The
Properties
of
Functional
Visual
Fields
on
Visual
Search
:Evidence
from
Manual
Reaction
Time
andSaccadic
Eye
Movement
Takatsune
KuMADA
,
Yasuo
KucHINoMAcHI
andShinya
SAIDA
National lnstitute of
Bioscience
andHuman −Technology
*
The
purpose of this study was to investigate the properties of functional visual fields invisual search processing
.
Subject’
s task was to search a target among distractors while EOGwas recorded
.
The
target wasdenned
by
the difference of the orientation of line segments.
The eccentricity of the target was an
independentvariable
and RT and the number of saccadcsduring the stimulus presentation were
dependent
variables.
Although
the meanRT
andthe
number of saccades increased as a function of the eccentricity
,
theincrement
ofRT
was notlinear
.
The area in which subjects could find a target within Qne saccade corresponded thechanging point of increment of the RT function
.
The area was thought as the preattentivesampling areas
for
the
goal of a saccade.
The RT increased as a function of eccentricity evenwhen no saccade was observed
.
The results were discussed in terms of the recent theory of visual search and visual attention.
Key
words :visual search,
functional
visualfield
,
saccadic eye movements,
feature search情報処理論的 な心 理学の観点に立っ た 研 究で は
,
人 間 の 視 覚情 報処 理 過程 は連 続する 2っ の 処理段 階か ら なっ て い る と考え ら れて いる(Neisser,
1967)、
入 力され た視 覚 情 報に対 し,
まず 前 注 意 的な過 程に よっ て並 列 処 理 が 行 わ れ る.
次い で,
逐次 的な処理過 程によ っ て視 覚 情 報の一
部分に注 意が集 中され る.
こ れ ら の処理過 程の 特性は主と し て視 覚 探 索 課 題 を用いた研 究によ っ て解 明 さ れて き た (Treisman & Gelade,
1980;Treisman &Gormican
,
1988).
視覚探索に関する研 究で は, 被験者に複数の妨害刺 激中か らあら か じめ決められた タ
ー
ゲッ*
Human
Informatics Department,
National Insti−
tute of Bioscience and Human
−Technology,1−1
Higashi
,
Tsukuba ,
Ibaraki
305
1
) 本 論 文 を 作 成 する にあた り貴 重なコ メ ン トを 頂 き ま し たNTT
基礎 研 究 所,
横 澤 彦研 究員,
生命 工学工業技術 研 究 所,
森田 ひ ろみ研 究 員に感 謝い た し ま す.
ト刺 激を探 索 する とい う課題 が課せ ら れ る.一
般的な実 験で は,
妨 害 刺 激の個 数を独立変数と し,
ター
ゲッ ト刺 激が発 見さ れ る まで の探 索 時 間が従 属 変 数と して計測さ れる.
ター
ゲ ッ ト刺 激が妨 害 刺激に対し, 単一
の特 徴 (例えば,
色や方 向な ど)の違い によっ て定義さ れて い る 場 合 (特 徴 探 索 条 件 )に は,
探 索 時 間は妨害刺 激 個数と は独 立で ほぼ一
定と な る.
こ のよ う な現 象は ポッ プア ウ トと呼ば れる.一
方,
夕一
ゲッ ト刺 激が妨 害 刺 激に対し て複 数の特 徴の組み合わ せ (例え ば,
色 と方 向)によっ
て定 義 さ れて い る場 合 (結 合 探 索 条 件 )には,
探 索 時 間 は妨 害 刺 激 個 数に と も なっ て 1項 目あ た り数 10ms 単 位で増 加する.
特 徴 探 索 条 件の結 果は視 野全体に対して 並 列 的に行 わ れた処 理 結 果に もと つい て ター
ゲッ ト刺 激 が探 索さ れ て い る と解 釈されて い る.
また,
結 合探索条 件の結 果は,
並 列 処理過 程の出 力に も とつ い て 夕一
ゲッ ト刺 激の検 出がで きない の で,
刺 激項日に対する逐次 的 N工 工一
Eleotronio Libraryな処 理 を行 うこ とに よ っ て タ
ー
ゲッ ト刺 激が探 索 さ れて い ると解 釈さ れて い る.
通 常の視 覚 探 索 実 験で は視 野 位 置の効 果が生じ ない よ うに中 心 窩 付 近に十 分な大 きさの 刺 激 が 提 示 されて い る.
そ の た め,
特 徴 探 索で の ポッ プア ウ ト が視 野 内の い かな る位置でも生 じ ること が確 認さ れ てい る わ け で はな い.一
般に視 野 全 体の中で,
特 定の視 覚 課 題 が 遂 行でき る視野範囲 が あ り,
有 効 視 野と呼ば れて いる.
視 覚 探 索 事態での有効視野範 囲を測定した研究に よ る と, 有 効視 野の大 きさ は視 覚 課 題の難 易 度 (Enge1,
1971;Ikeda &Saida
,
1978)や,
刺激提 示時間 (Chaikin,
Corbin,
&Volkmann ,1962
;Kumada ,
Kuchinomachi,
&Saida,
1994
;熊田・
ロノ町・
斎田,1994
)に依存するこ と が報 告 さ れて い る.
Kurnada et al.
や 熊 田 ら は 短 時 間 提 示 さ れ た刺 激 中か ら, 特 徴の傾きに よっ て定 義さ れ た ター
ゲッ ト刺 激が探索で き る視野範囲を求め視覚探索 有効視 野と定義し た,
視覚探索 有効視野範囲 は水平方 向に径の 長い楕円形と な り, 提 示時間に と も なっ て有効視野範囲 が広が るこ と が明らか と なっ た.
これ らの 結果は,
あ る 視覚 課 題が 遂行で き る視 野範囲には限 界が あ り,
その 形 は水平方向に径の長い楕 円形であ る とする他の有 効視 野 研 究の結 果 (Engel,
1971;Ikeda & Takeuchi,
1975)と致 する
.
し か し な が ら,
特 徴の傾きに よっ
て定義さ れ た ター
ゲッ ト刺 激の探 索 時 間が,
視 野 位 置によっ て異な るとい う結果は,一
般 的な視覚 探索課題を用い て妨 害刺 激 項 目数に対す る探 索 時 間の独立性とい う形で証明さ れ て き た特 徴 探 索の空 間 的な並 列 性の概 念とは一
致 しない もの である.
したがっ て,
視覚探索有効視野の結果は,
視 覚 探 索に関す るモ デ ル で あ る特 徴 統 合理論 (Treis−
man &
Gelade,1980
)や 誘 導 探 索モ デ ル (Wolre,
1994)か ら は
r
・
測で き ない.
ま た,
Kumada et al.
や熊 田らの実 験で用い ら れ た刺 激は,一
般 的な視 覚 探 索 課 題に比べ て妨 害 刺 激 項 目数が 多 く,
刺 激 要 素 間の距 離が小さ い,
刺 激 要 素 間の距 離が 刺 激サ イ ズの 2倍 以 内の距 離で あ れ ば前 注 意 的なテ ク ス チャ弁 別が行 わ れる とするJulesz
(1986〕の基 準に も 近い.
しか し,
特 徴に よ っ て異なるテクス チ ャ要 素は並 列 的に処 理さ れ る と されてお り,
視野 位置に よっ て探索 時 間が異な る視覚探索有効 視 野の結 果は説 明できな い.
テ クス チ ャ弁別と視 覚 探 索が異 な っ て いる 可能 性を 示唆 する研 究も あ る が (Welfe,
1992), テ クス チ ャ弁別にお け る前注 意 的な領域の分 離につ いて も視 覚探 索の ポッ プ ア ウ ト と 同様の説明 が な さ れて い る くTreisman & Gelade,
1980).
し た が っ て, テクス チ ャ 弁別と して見た 場 合にも,
視 覚 探 索 有 効 視 野の結 果は従 来の視 覚 探 索の モ デル からは予 測で きない.
Kumada et al,
や熊田 らの実 験で は,一
般 的な視 覚 探 索 実 験と は異な る方法が 用い ら れ ていた.
視覚探索実 験 で は,
視 覚 刺 激 を提 示 した後,
被 験 者の反 応 までの反 応 時 間が計 測さ れ る.
こ の間,
被 験 者は自 由に眼球運動を 行うこと が で き る,
これ に対し,
熊田 ら は, 他の有効視 野 実 験 と 同様に,
眼 球 運 動の影 響 を 除 去 する た め に,
刺 激を短 時問提示 し,
ま た,
その 直 後にマ スク刺 激を 提 示 し た.
さ ら に, 従属変数と して反応時 聞で は なく正答 率 を用いた.
これ らの 手 法の違い に よっ て,
視 覚 探 索 研 究 が問題 として きた もの と は 異な る 処 理 過 程 が 調べ ら れ る こと に なっ た と い う可能性は否定で き な い.
そこ で,
木 研究で は,
従来の視 覚探索実験と類似した実験パ ラダ イ ム を 用い ることによっ て,
視 覚探 索にお け る 処 理の空間 的な並 列性を検討す ること を試み る.
同時に眼球運動を 計測し,
視覚探索にお け る有効視野の特 性を,
眼球運動 との関係にも とつ い て考察す る.
眼球運動と有 効 視 野の 関係につ いて は, 短時 間 提 示さ れ た刺 激に対す る有 効 視 野がサ ッ ケー
ド問の 眼球の停留 中に行わ れてい る視覚情 報 処理の 空間 的 限 界を示してい る と考え ら れてい る (斎 田,1984
).
し た がっ て,
眼 球 運 動と有 効 視 野の関 係を 検 討す る ことによっ て,
視 覚 探 索 過 程にお ける有 効 視 野 の機 能的特 性にっ いて の有益 な情 報が得ら れる U∫能 性が あ る.
一
方,
視覚探索 実験で の眼球 運 動の機 能に関して これ まで明 確に は論じ ら れて きて いない.
そ れは,
探 索 刺 激 を短 時 間 提 示して眼 球 運 動の生 起を制 限し た場 合で も制 限 し ない場 合と同様の結 果が得られる こと から,
視 覚 探 索にお ける本 質は内 的な過 程であ り,
眼 球 運 動は視 覚 探 索 結 果 を決 定 する主 要な要 因で は ない と考えられて きた か ら で あ る(Treisman & Gormican,
1988).
と こ ろ が最 近,
眼 球 運 動を計 測 する ことに よっ て視 覚 探 索の特 性を 解 明 しようとする試みがなさ れて きて い る.
横 澤・
近 藤 (1994)は,
逐 次 探 索を生 じさ せ る よう な視 覚 探 索 刺 激を 用い,
そ の中に ポ ッ プ ア ウ トする特 徴 刺 激を妨 害 刺 激 項 囗として 1つ 入 れた場 合に,
探 索 時 間が延 長 する結 果 を 得た.
彼ら は,
同 時に眼 球 運 動 計 測 を 行い,
ポ ッ プ アウ トする妨害刺 激に対する眼 球 運 動が誘発さ れ るこ とを示 し た.
そ し て、
探索時 間の延長を妨害刺 激に対する注 意 の移 動に随 伴し た 眼球運動の 生 起に よる もの と して説明 して い る.
こ の よう に, 視覚探索課題の結果を 眼球運動 と関連付け て説明す る とい うアプロー
チ は,
視 覚探索過 程 を 解 明 す る う えで 有 効 な 手 段 と な るこ と が 予 想 さ れ る.
本 研 究で は,
反 応 時 間 を 従 属 変数と し た視覚 探 索事態NII-Electronic Library Service 熊 田
・
凵ノ 町 ・斎出:視 覚探索に お け る有 効 視 野 特 性の反 応時 間と 眼 球 運 動によ る検 討 77 での特 徴 探索の空 間 的 並 列 性を検討 し,
さ らに,
視覚 探 索に お け る有 効 視 野の機 能 を 解 明 するこ と を目 的と し た.
その た め に,
本 研 究で は,
ター
ゲッ ト刺 激の凝 視 点 位 置か らの距 離 (偏 心度)が反 応 時 間,
及び,
眼球運動 に及ぼ す 影響につ い て検 討 し,
視 覚 探 索にお け る有 効 視 野の機能につ い て眼 球 運 動 との関 係に もと つい て議論す る,
実 験 方 法 被 験 者 成人男性3
名, 女 性 1名.
いず れ も,
裸 眼 ま たは矯正によ り止常な視力 を 有して い た.
装 置 刺 激の 提 示 及び反 応時間の計 測は AV タ キ ス トス コー
プ (IS−701C,
岩通アイセ ル社 )を 用いた.
EOG の計測と分析は,Ag −
AgCl 電極 (ベ ッ クマ ン社 )を左 右 外 眼 窩,
及び,
左 眼上下に装 着し, テレメー
タ・
ユ ニ ッ トとAID
変 換ユ ニ ッ ト(MacLabl
を 介 して 接 続 さ れた
,
マ イ クロ コ ン ピュー
タ (Macintosh Ilfx,
Applc 社 )によっ て行 われ た
.
刺 激 刺 激は19
×19
の仮想格子の交点」:に配 置され た ター
ゲッ ト刺激 要 素 1個とデ ィ ス トラ クタ要 素 360 個の合 計361 の刺 激 要 素に よっ て構成さ れ た (Figure 1).
仮 想 格 子の中心は凝視点に あり, !セル は視角 ldeg に相 当し た.
ター
ゲッ ト刺激要 素は,
長さ.
35deg の 2 線 分 を組み合 わせ た横 転し たT
型CL
げ ま た は“
ド) で,
凝 視 点を中心 と し た 垂直,
水 平方 向,
及び,
斜め4 方 向の計8方 向 軸上 の 5位 置 (1,2,
4,6,8deg
),
ま た は,
凝 視 点 位 置の計 41 位 置の い ずれ かに提 示さ れた.
デ ィ ス ト ラ ク タ要素は 夕一
ゲッ ト刺激と同じ長さの斜め線 分 に よ り構 成さ れ た 4種類のL
型で,
仮 想 格 子の ター
ゲッ ト刺 激 位 置 以 外の全 交 点で あ る360 位置に提 示さ れて い た.
ま た,
凝 視 点と して,一
辺.
05
deg
の正 方 形 の み か らなる画 面を作 成し た,
手 続 き 被 験 者は あ ご台に よっ て頭部を固定 し,
50 cm 離 れたCRT
画 面を両 眼 視し た.1
試行は, まず, 凝 視 点が提 示され,
被 験 者が キー
を押す と凝視点が消え,
1500ms 後に刺 激が提 示さ れ,被 験者の反応まで提示さ れ 続 ける.
被 験 者の課題 は,
刺 激中の 夕一
ゲッ ト刺 激の 方 向 (矧”
また は“一”
)を右手の人 差し指と中指に割 り当てられた 2つ のキー
の・
方を押して答え るこ とで あっ た.
被 験 者が反 応を行 うと刺 激が消え,2000ms
後 に次 試 行の凝 視 点が提 示される,
被験 者に対して は,
各 試 行 開 始 時に は必 ず 凝 視 点 を 注 視 すること,
刺激が提示 さ れ た ら自 由に眼 球 運 動を して も構わ ない こ と, ター
ゲ ッ トを発 見し た ら で きるだ け 速 く かっ 正確に反 応 する こ と を教示 と して 与え た.
1ブロ ッ ク は,
ター
ゲッ ト刺 激 41 位 置につ い て 4同の繰 り返し か ら な り,
164 試行 か ら な る.
1名の被 験 者にっ い て,
全 10 ブロ ッ ク を2
囗間に分けて行っ た.
デー
タ 分析 EOG は垂 直,
水 ¥ 各チ ャ ンネル につ い て500Hz
の A〆D 変 換 値と その微 分 値が計 算 機上の メ モ rJ に記録さ れ た.
記録さ れた デー
タ にっ い て,
各 試行 ご とに刺激提 示中の サ ッ ケー
ド回 数,
及び,
第 1サ ッ ケー
ドの潜時 を求め た.
計 算 方 法は以 下の と お りであ っ た.
ま ず,
各 試 行にっ い て探 索 刺 激 提 示 直 前の 50 ms 分 の平 均 EOG 電 位を求め た,
次に ブロ ッ ク ご とに平 均EOG
電位の平均と標 準 偏 差 を 求め た.
こ の平 均 値か ら ±2SD 以 上 外 れ た 平均 EOG 電 位 を示 す 試 行は,
刺激提 示 時 点で凝視 点が注視さ れて いな かっ た もの と判 断し,
分 折か ら除外し た.
ド リフ トに よっ て基 線がシ フ トして い る試 行もこ の基準に よっ て 除外され る こ と になる.
次 に,
眼 球の 移 動 角度と EOG 電 位と の対 応 関 係を計 算し た.
各 試 行にっ いて,
探索 刺 激 消 失 時に は眼 球は ター
ゲッ ト刺 激 位 置を 注視して いると仮定 し,
各 試 行の刺 激 消 失 前 50・ms 間の平均 EOG 電 圧と実 際の 夕一
ゲッ ト刺 激 位 置の偏心度 との間の直線回 帰 を ブロ ッ ク ごとに行 い,
回 帰 直 線の傾き をEOG
電位を 眼球の移 動 角 度に対 応さ せ る た めの変 換 値と し た,
そ の際の相 関 係 数 は平 均.
902 で あっ た.
m サ ッ ケー
ド は,
40deg
/s 以上の 速 度を もつ眼 球 運 動 と定 義 した.
サ ッ ケー
ド潜時はサ ッ ケー
ド と判 定された 眼 球 運 動の速 度が10deg
/s を超え る ま での潜 時と し た.
眼 球運動の 速 度 が 40deg /s 以上とな っ た後,
初め て 10deg /s 以 ドと なっ た時 点を サッ ケー
ド の終 了とみ なし,1
回の サ ッ ケー
ド と して カ ウン トした.
さ らに,
第 1サ ッ ケー
ドの潜 時が 80ms 以 干 の もの は予期 的な サ ッ ケー
ドと見な し,
その試行は分析か ら除 外した.
ま た,
刺 激 提 示中に瞬目が生 じ た試 行 も分 析 か ら除 外 し た.
2
) 本実験で は被 験 者に対して特 別な眼 球 運 動に関す る教 示を与え ない,
よ り自然な刺 激 観 察 状 態で の サ ッ ケー
ドの生起と 夕一
ゲ ッ ト刺 激 位 置の関 係 を 検 討 する こと が目的であっ た.
通常 行わ れ るよ う な,
ター
ゲッ ト刺 激に対 して眼球運動をする よ う 教 示 を与 える,
キャ リ ブレー
シ ョ ンの手 続きを本 試行直前に行うこ とは,
本 試 行におい て被 験 者に ター
ゲッ ト刺激に対し て眼 球 運 動が生 起 し やすい よ う なバ イア スを 与え る口J
能 性 が あ ること が予 想 され た.
そこ で,
本実験では キ ャ リ ブレー
シ ヲ ン 試 行 を行わずに,
こ こ で 述べ た方 法 に よ っ て EOG 値の眼球 位 置へ の変換を行っ た.
N工 工一
Eleotronio Library結 果 反 応時間 結 果の分析に あ たっ て は
,
正答の試 行の み を 用いた.
誤答率 は各 被 験 者と も2% 以下と極めて低 く,
視野方 向 軸や偏 心度との間に関 連 性は認め ら れ な か っ た.
Figure
2
は ター
ゲッ ト刺 激の偏 心 度の関 数 と して の 反 応時間を,
ター
ゲッ ト刺 激の視 野 方 向 軸ご とに各被験 者にっ いて示 し たの もで ある,
ター
ゲッ ト刺 激の軸は, 凝視点か ら上方 向へ の軸をOdeg
と し,
時 計 ま わ り方 向 へ の角 度を軸方向と して示し た.
したがっ て,
右 水平方 向は90 deg,左 水 平 方 向は270deg
と な る.
垂 直 , 水 平 方 向4
軸と斜め方 向4
軸に分 けて 2要 因の分 散 分 析 を > V << V ( AV <》
A > 〉 >A >A < A V ) 〈 〉 〈 〉 ( 》 V ( 〉 ( V )V < <V > 〉 AV (A 》 VA ( >VVA < ( A > く く》
< >V 》 ( 〈 > VAA > A >A < VAA < VA <AVAV く く >V 〈AV 〈 〉 < < A > <V ( F ( > V > AAA ( ) A 〈 > V AV > > V 〈 〉 A < >>
> く )(
〈V ^
< < 〉 AVAV > VA > 〈 A > V く く 〉 < A > V <A < AVA 》VAAV > 〈 A く く V < A>
〉>
>>
〉 AA >VA < AV >V > V 〈 AA > VAA ) VAV > V > A 〈VA >>
(VA 〈 A 〈 〉(
V > A > VA>
> < AAA 〈 〉>
> v > vA>
< 〈 A (A 〈 〉 〈 V < 》VA (AV く く > > 〈 》 V 〈V 〈 〉 〈〉
く く >>
A > (>
> ( 〉 く 》〈 ) v》
A 《 》 VV > > くV くAVA < <V < > VA く く VA <VA > 〉 く ) <v >A > < A < V ) ( AV >>
A>
〉 > A > < A >>
〈 〉 Av > > 〈A>
〉 (A > 〈Av 〈 〉A − 一8 6 4 2 0 2 4 6
8degFgure
1.
An
example of stimulus configura−
tion
.
Thetarget
was atilted
T −
shape.
行っ た
,
垂直, 水 平 方 向 軸にっ い て は方 向 軸の キ 効果 [F
(3,9
)=10.
72,p
く.
Ol
],
偏 心 度の主 効 果 [F(4,
12)=
68.
70,
p
〈,
01
],
お よ び交互作用 [F(12,
36)=
2.
83,
P<.
01]がいずれ も有 意であっ
た.
また,
斜め方 向軸につい て は偏心度の 主効 果のみ が有 意で あっ た [F(4,
12)=
92.
02,
p
<.
Ol
コ.
いず れの軸方向につ い て も,
偏O
渡 の増 加に と も なっ て反 応 時 間 も増 加 する.
その増 加 率は一
定 で は なく, 中心に近い偏 心 度で は増 加 率 が小さく,
ある 偏 心 度以h
で は増加 率が大きくなる.
増 加 率の変 化点 と な る偏心度は個 人によっ て,
あるい は,
軸 方 向に よっ て 異な る.
ま た,一
般的な傾 向として は,
垂 直 方 向の変化 点が水 平方 向よりも小さく,
斜め方 向の 4軸に関して は, 顕 著な違い は認められない.
サッ ケー
ド回数Figure
3は 夕一
ゲッ ト刺 激 位 置の視 野 方向軸 別に,
1 試 行の刺 激 提 示 中に生 起 した サ ッ ケー
ド回数をO
,1
,2
以上の3
っ に分 類し,
そ の相 対 頻 度 を 偏 心度の関数と し て 不 し た もの で ある.
こ こで は,
1名の被験 者の 結果に っ い て示 した.
いず れの視 野 方 向軸上に お いて も凝 視 点 位 置,
お よ び その周 囲2か ら3deg の範 囲内に ター
ゲ ッ ト刺 激が あっ た場 合には,
サ ッ ケー
ドが ほ と ん ど生起し ない.
偏 心 度が大 きく な る に し た がっ て,
サ ッ ケー
ドO 回の試 行 が 減 少 し,
サ ッ ケー
ド1
回の試行が増加する.
さ らに偏 心 度が大 き く な る と サ ッ ケー
ド2
回以 ⊥の試 行 数が増 加す る.
他の3
名の被 験 者にっ い て も同様の傾 向が認められた.
2000 す1
詈
15°°S
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酬lliii
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D24681012 Eccentricity 20DO 十 315deg + 45deg + 225deg而
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13seleg す岳
15°Q島
D・・羣
墓
5° ° 匡o024681012 Eccentrjcity 30DO 富2500
詈
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‡ Sub亅eCtHM 3T5deg450eg22Sdeg135deg 2煎
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2’
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15。寡
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・・ 0246B』
]’
012 Ecee 口tricityS凵
bjeo↑HN 0246B1012 EocentricityFigure 2
.
Mean reaction times as a function of eccentricity.
The column showsindividual
subjects,
The upper row shows the
horizontal
or vertical meridians of target positions.
The lower row showsthe four oblique nleridians
,
The horizontal upper meridian wasdefined
as O deg.
Each meridianNII-Electronic Library Service 熊田
・
冂ノ町・
斎田:視 覚 探 索におけ る有 効 視 野 特 性の反 応 時 間 と眼 球 運 動によ る検 討 79 10竃
80 ぎ860
δ £ 40聲
20 器 [ SロbiecヒSKOdeg〔
邑 ♂ ⊂ ωコ
σ 9 」 Φ ξ 岱 匡 024681012 E≡ccentricity 〔deg) Do 00
0
0
∩
ハ
ロ(
δ ♂ 匸 Φ & Φ 匡 Φ ≧ 董 Φ 江 45deg Figure 3.
(MS ).
O O O O O− ぎ 三 。
匚
Φ⊃
ぴ Φ 虻 Φ》
冖
莖 oQ OO
O O
α
氣
)
ぎ 匚9
σ Φ i Φ ≧←
o 可 匚 D24681012 Eccentrici置y〔deg ) 27Ddeg・
10藝8。 ぎ
860
& 醒4。薯
2。 器 匚 90deg.
一
一
〇
No saccade−一●
一
一
〇ne saccad θ 一 Twoormoresaccad θs 135deg 0 2 4 6 8Ecoen ヒrici亡y〔deg)
225degr す12 10
盡
80奮
,。量
、D [ 0告
.
O,
,
0 0 0 0 8 6 4 2 1〔
訴〕
♂⊂
Φ ⊃ σ Φ」
」8
莖 Φ 2 4 6 8 10 12 Eccentricity〔deg) 1BOdeg 024681012024681 。 12
。 24681 。 12
0246
’
§1』
1す12Eccentricity{deg} E≡cCentriCity 〔deg} Ecじen 吐riGity {deg) Eccentricity(deg>
Relatjve frequencies of thc nurnber of saccades as a 工unction of eccentricity
fQr
one subjectEach panel corresponds one of eight meridians of target
positions
.
副
600亶
,。。岸
14
°° 塋300 600 0 1 2 3 Eccentricily〔deg〕 600 S凵b」ect SK豊
,。。程
臺
4°° 畠30 。一
つ一
2アOdeg−
●皿
90deg』
一
△−
edeg 十 180deg 0 1 2 3 4 5 Eceentriciry(deg) 700豆
6D。置
壽
‘°°8
400 Sub亅ect HM Subject MS豆
,。。ξ
1
”°° 畠300一
一
くF−
315deg + 45deg−
h−
225deg + T35deg 0 1 Eccentricity(deg } 2 3 600葺
,。。置
蟇
4°° 畠300 Subject SK 700 0 2 4 6 8 Eccenヒrici亡y(deg}Svbject HM 600 O
O O O 5
4
(
の E)
Φ EF 匚 O皿
ぢ 6 Φ 匚 600 Subject HN 0 1 2 3 Ecc巳ntricity @〔d巳9 0 1 2 3 45
Eccentricity (d
>
葺。
鵞 諱e °°塋
5deg
400 一つ一
−一一一 45deg + 225deg 135deg0 2 4 6 8 Eccentriydeg
〕 曾 冨E0
: 書 羣 400Subject
HNFigure
4. Mean reaction times as a function of eccentricity in no sacde
trials . individual subjects 、 The upper row shows the horizontal orvertical
meridians oftarge
@positions
. The lower row shows the fourobliq
meridians . @ 1 2 3 Eec tricity{deg > Th
@column
shows
ッ ケ ー ド回 数と反 応時 間の
関 係 本研究の 目的の1
は,探 索反応時 間 に お いて視 野位
置 の効果が 認め ら るか 否 かを ,眼 球 運動との関 係に
もと
つ い て検
討す こと であった.
そ こで,
サ ッ ケ ー ド回 数 がo
回で あ た 試行, お よ び1回 であった 試行
対象 と して反応 時 間 の 分析
を行 った.Figure
4
は サッケ ードが0
回 であ った 試行
におけ
る 平均反 時間 を 表 した
もので ある.各 ター ゲ ッ ト刺
激 位 置 つい て,50
% 以上の試 行でサ ッ ケー
ド が0 回
で あ た 位置 の み を分 析の対象
とした.こ れ は ,平 均 反応 間 のもと と なる粗デー タ 数が 少ない ほど 極 端 値 などのo
イ ア ス の 影響 を受 け や す いと考 え られ
る た め である、 垂直 水平
方向 の4
視 野 方向 軸 に っい て , 偏 心 度1 度と
2
度のター ゲ ッ ト刺激位 置における反 応時
間を用いて
, 繰 り返し のある2要因分
散分析
を行っ
た.そ
の結果
,方向 軸の
主 効 果[F
3
,9
)=10.34
,p〈
.01],及
び,偏心度 の主効
果 [F
(C3
)=17.40
,ρ
<.05]が有意で あり ,交 互作
用[
F
(3
9)−
3.08ns ] は有意では な かっ た .同様に, 斜 め方向の 4方 向 軸にっ い て
,
偏 心 度 1,
4度 と2.
8度の ター
ゲッ ト刺 激 位 置にお ける反 応 時 間 を用い て繰り返しのあ る2要 因 分 散 分 析 を 行っ た、
ただし,
被 験 者SK とHN にっ いて は,
2,
8度 位 置の デー
タがそれ ぞ れ 1っ ずっ 得 られ て いない.
これ は,
そ の位 置で サ ッ ケー
ド が 回の 試 行が全 体の 50% を超えなかっ た ためで あ る,
これ ら にっ て は欠 損 値 と して分 散 分 析 を行っ た結 果,
視 野 方 向 軸の 主効 果 [F(3,
9)=
.
15.
38,
p
<.
Ol],
及 び,
偏心度の主 効果 [F(1,
3)−
41.
92,
p
く.
05
]が有意であり, 交互作用 [F(3,
7)=
2.
11ns]は有 意で は なかっ た.
これ らの結 果か ら,
サ ッ ケー
ド が生 じて い ない試行において も,
偏 心度 の増 加に ともなっ て反 応時間が増 加 すること が明ら か と なっ た.
次に,
刺 激 提 示 中に サ ッ ケー
ドが 1回 だ け 生 起 して い る試行につ い て, ター
ゲ ソ ト刺激の 位置 別の反応時間, 及 び,
サ ッ ケー
ド潜時を求め た,
こ こ で も,
各ター
ゲ ッ ト刺 激 位 置につ い て,
50% 以上の 試行で サ ッ ケー
ドが 1 回で あっ た位 置のみ を分析の対 象と し た.
Figure
5
は被 験 者ご との 結果を示 し た ものであ る.
サ ッ ケー
ドが 1同 の試行につ い て も,
偏心度が大きくな るに し た がっ
て,
反応時間,
お よ び サッ ケー
ド潜 時と もに増 加 する傾 向が 認め ら れ る.
た だ し,
こ こ で は各 被 験 者と も十 分なデー
夕数が得 ら れて い ない の で統 計 的な検 定は行わなかっ た,
考 察 視 覚 探 索の反 応 時 間 特 性 本 実 験の結果,
ター
ゲ ッ ト刺 激が あ る偏 心 度を超え る と反 応時間が偏 心 度に と も なっ て急激に増加し た.
ま た その 内側の偏 心 度におい て も,
眼 球 運 動が生 じない場 合 に も反 応 時間 が偏心度に と も なっ て増 加 した.
これ らの 結果は, 反応時間関数の増加の変 化点と な る偏心度の内 側と外 側で異 なる探 索 処理 が行わ れて い るこ とを示 唆す る.
探索 処 理の モー
ドが 異なるこ と は,
眼 球 運 動の結 果 か ら明ら かであ る.
視 野の 中心付近で は,
サッ ケー
ド を 伴わずに ター
ゲッ ト刺 激が探索さ れ るの に対し,
その 周 辺 部 で は ター
ゲ ッ ト刺 激 に到達 す る ため に 1[日1
の サ ッ ケー
ド を必 要と す る.
さ らに, 周 辺部で は ター
ゲッ ト刺 激に到 達す る た めに数同の サ ッ ケー
ドを必要と す る,
Figure2
とFigure
3
を対比 す ることによっ
て,
反応時 間の 増 加 率の変 化 点と サ ッ ケー
ド2
回の範 岡が対応 し て い ること が わ かる.
視 野 周 辺で の 反応時 間の 増 加は サ ッ ケー
ドが 2回以 上 と な る試 行の割 合の増 加 と一
致 するの で あ る.
し た がっ て,
変 化 点と な る偏 心 度の外 側 の視 野 位 置で の探 索 反 応 時 間の遅 延は複 数 回の サッ ケー
Subject
MSSub
’
ectSK
800 800 Φξ
・。。島
・。ぎ
巷
匚匸 0 [匸 O: 2 4 6 8 10 2 Eccentric辻y
(deg
) ・』
箋
i ▲ k魂
_ 一 一
一
.
−t−
L 4 6 8 10 Eccentricity(deg) MRT SL・
・
一
一
〇一
.
一
一
一
一
●一
一
270deg,
90deg−一
{コー
一
一一
■一
一
一
〇deg,
1BQdeg +一
一
★一
一
一
315deg,
45deg、
225deg,
135deg くの の ∈ 6DO E60DL)
)
F40
°F40
°’
; 200’
昇 200 0 0 0: 0 【匸 0 2468to 2468 てσ
Eccentricity
(deg
)Eccentricity
(deg)Figure 5
.
Mean manual reaction times (MRT )and mean saccade latencies (SL)as a function ofeccentricity in one saccade trials for four subjects
.
The location in which one saccade trials are included more than 50% is plotted.
Two points onthc
samc axis are linkedby
aline.
NII-Electronic Library Service 熊田
・
冂 ノ町・
斎 田;視 覚 探 索にお け る有効 視野特性の 反 応 時 間と眼 球 運 動に よ る検 討81
ドが 生起す るこ とに よ る と考え ら れ る.
そ して,
こ の平 均 反応時 間の遅 延 は,
その偏 心 度 位 置 に 提 示 さ れた ター
ゲ ッ ト刺 激を探 索す るの に必要な平均サッ ケー
ド回 数に よ っ て決 定さ れ る と考え ら れ る.
サ ッ ケー
ドを2
回 以 上 必 要とする試 行にっ いて は,
第 1サ ッ ケー
ドを開 始する 以 前に は ター
ゲッ ト刺 激 位 置にっ い ての情報が得ら れ て お らず,
ランダムに,
あ るい は被験者の ス トラ テジー
に したが っ て,
夕一
ゲッ ト刺 激をサ ッ ケー
ド目標と しな い 探 索 的なサ ッ ケー
ドが生 起 する と考え られ る,
夕一
ゲッ ト刺 激 位 置につ い て の情 報が得ら れ る まで,
サ ッ ケー
ド が繰り返され,
最 終的に ター
ゲ ッ ト刺 激に到 達 す る.
し かし,
こ のよ う な探 索 的サ ッ ケー
ドがいか な る プロ セ ス に よ っ て誘 導されて い る のかにつ い て は,
本研 究の結 果 か らは明 確にする ことは でき ない.
視 覚 探 索 有 効 視 野 視 覚 探 索 事 態に お け る反 応時間,
およ び 眼球運動デー
タの 考察か ら,
眼 球 運 動の範 囲を 以下の3
種 類に分 類す ることが 妥 当で あること が示さ れ た.
サ ッ ケー
ド を伴わ ずに ター
ゲッ ト刺 激が探 索で きる視 野範囲と,
サ ッ ケー
ド が 1回で ター
ゲッ ト刺 激が探 索で き る視 野 範 囲,
さ ら に その外 側にある2回 以 上の サ ッ ケー
ドを必 要とする 視 野 範 囲である.
そ こ で,
それぞれの視 野 範 囲を眼 球運 動 回 数の頻 度 (Figure 3)に も とつ いて計 算し た.
夕一
ゲッ ト刺 激 位 置の視 野 方 向軸ご とに,
サ ッ ケー
ド0
國の 関 数,
および,
0回と1回を合わ せ た関数が,
そ れ ぞ れ 50% の相対 頻 度と なる偏 心 度を内 挿に よっ
て求め,
視 野 方 向 軸 上にプロ ッ トした ものがFigure
6
で あ る,
プ ロ ッ ト さ れ た範 囲 内の ター
ゲ ッ ト刺激が提示さ れ た場 合 に は 50% 以 上の試 行で サ ッ ケー
ドが0
回,
あ るいは, 1 回 以 内 とな るこ とを 示 して い る。
こ の結果か ら, サ ッ ケー
ド が 0回で ター
ゲ ッ ト刺 激が探 索で き る視野 範 囲 は,
凝 視 点の周 囲 半 径 約 3〜
4度 程 度で あ るこ と が明ら か と なっ た.
また,
サ ッ ケー
ドが1
回以内で ター
ゲッ ト 刺 激が探 索で きる範 囲は水 平 方 向に は 7 度か ら そ れ 以 上,
垂 直 方 向に 4〜
7度であっ
た,
視 野 範 囲の 形 態は,
サ ッ ケー
ドが 0回で ター
ゲッ ト刺 激が探索で き る範囲 が 円形で ある の に対 し,
サ ッ ケー
ドが 1回以内の範囲は 水平方向に径の長い楕 円 形 となっ た.
視 野 範 囲の形 態と い う点 か ら見ると,
サ ッ ケー
ド1
回 以 内の範 囲は,
有 効 視 野範囲 が水 平 方 向に径の長い楕 円形と なる と する従 来の知 見と
一
致 する (Engel,
1971;Jkeda & Saida,
1978}.
Viviani{1990)は
,
サ ッ ケー
ド問の停 留 中の情 報 処理 と して,
中 心 視 野で の視 覚 刺 激の分 析,
周 辺 視 野で の サ ンプ リング, 次のサッ ケー
ド の プ ランニ ン グの 3っ を あ げて い る.
こ の う ち視 覚 刺 激 を行 う中心 視 野とサ ッ ケー
ドの ため のサ ン プ リング を行う周 辺 視 野とい う2つ の 機能 的な区分を本実験の結果に当て は め る と,
以 下のよ う な解 釈が 可能で ある.
すな わち,
十 分に視 覚 刺 激の分 析を 行 うこ とがで きる視 野 範 囲に 夕一
ゲ ッ ト刺 激が ある 場合に は サッ ケー
ドを必 要としない と考 え られるの で,
この範 囲はサ ッ ケー
ド0
回 範 囲 と一
致 する,
また,
ター
ゲッ ト刺 激に対 す るサ ッ ケー
ド目標の計 算は サ ッ ケー
ド Subject MS t eg O NQ saccade ● One saGcade Subject SK deg:
昌
9
讖
器
乞
e $ublect HM e O No ・ OnNosa じcade Onesaccade Subied HN 膨 eg O NOS ・ OneNo saocade One
saccade
Figure 6
.
The areas of no saccade and one saccade as a
function
of meridians for feur subjects.
Thearea was calculated from the relative
rrequencjes
function
(Figure
3
).
前に終 了 し
,
サ ッ ケー
ドは弾 道 的 (バ リス テ ィッ ク)な 過 程に よっ て行わ れて い る と さ れて い るので,
サ ッ ケー
ド1回の範 囲は停 留中の周辺視 野でのサ ッ ケー
ド目標 の計 算の ための サ ンプ リングが 行われてい る範 囲 を 示し て い る と考え ら れ る.
しかしなが ら,
サ ッ ケー
ド潜 時と反 応時間の結果は, サ ッ ケー
ド0回の範 囲が,
十 分な視 覚 刺 激の 分 析 処理を 行うこ と が で きる限 界の範 囲で あ る と は考え ら れ ない こ と を示してい る.
Figure5
に示さ れ てい る よ う に, サッ ケー
ドが 1回 生 起 してい る試 行に お け る平均反 応時 間を偏 心 度4deg で み ると,
400−
600 ms 程 度であ るの に対 して,
それ らの試 行に お け る サ ッ ケー
ドの潜 時は 200−
300ms 程 度で あり,
両者の差は20
一
300
ms 程度 で ある.
サ ッ ケー
ド中の 眼 球 移 動時 間を 数 10ms と仮 定 すると,
サッ ケー
ド後に利用で き る時間は300ms
未 満で ある.
例えば 光 点の点 灯に対す る キー
押し反応の よ う な単 純 反 応時間が200ms 程度で あ るこ と,
ま た,
サ ッ ケー
ドが0
回の時の反 応 時 間が380ms
以上 と なっ て い ること (Figure 4)を考慮する と,
サ ッ ケー
ド後に 夕一
ゲッ ト刺激の方向を判 断す る た めの知 覚 的な処理 が 行わ れて い る と い え る ほ ど十 分な時 間は ない.
こ の点 を 明らかにす る た めに,
サ ッ ケー
ドが 1回であっ た試 行に つ い て,
反 応時 間か らサ ッ ケー
ド潜 時を減 じ た反応時 間 差を求め た.
Figure
7
は1
名の被 験 者における,
反 応 時 間差を 50ms 間隔で 区 切 っ た ヒス トグラム で ある.
250−300ms
の間が最 も頻 度が高 く,
400 ms 以 下の反 応 時 間差 と な る試 行が全 体の 7割 以 上 を 占め る.
他の 3 名につ い て も同様の 傾 向が得 られた.
こ れ ら の試 行で は,
サ ッ ケー
ド後に知 覚 処理 が行わ れ,
マニ ュ ァ ル反 応 が行 われ たの で はなく,
サ ッ ケー
ド前の情 報 処 理 結 果に も とつ い てマ ニ ュ ア ル反 応が行わ れ た可能 性が高い こ と 25 100(
衷
蜜
1
:
溶
9
8
亡 10 40L 雪叟
磊5
20 琵 石 5 nC ・ 1。。 2。。 3。。 、。。 5。。 6・・ 7。。 8。。。
85
Difference
ReactiQn
Time
(MRT −SL
>Figure
7Ahistogram
ofdifference
reactiontime between manual reaction time (MRT )
and saccadic latency (SL)of one saccade
trialS
.
S凵b’
ect MS.
一鹽
一
.
〆
印
/.
/.
/.
/.
/
.
.
が示 唆さ れ る.
これ らの結果か ら,
サ ッケー
ドが 1回 生 起 して い る試行において も,
必ず し もサ ッ ケー
ド後の情 報 処理に も とつ い て弁 別 課 題が遂 行さ れ たわ けで は な く,
弁別課題を 遂行する う えで十分な情 報が サッ ケー
ド 前に得ら れて いた可 能 性が あ る.
これ らの結 果か ら,
停 留 中の有 効 視 野 範 囲が,
その後 のサ ッ ケー
ド の生起の有 無に も と つい て,
中心 視 野にお け る視 覚 刺 激の処理 を行っ て い る範 囲とサ ッ ケー
ド目標 のサ ンプリング処 理 を 行っ て い る範 囲に明 確に区分でき る わ けで は ない ことは明ら かである.
サ ッ ケー
ド 1回の 範 囲はサ ッ ケー
ド目標の サ ンプリング処理 がで きる範 囲 と考え ら れ る が,
サ ッ ケー
ド0回の範 囲は必 ず し も視 覚 的な分析処理 の限 界を示 す 範 囲で はない.
Kumada et al.
(1994
)の結 果は視 覚 的な分 析 処理の限 界と なる有 効 視 野を示し たもの と考え ら れる.
こ の よ うな視 覚 的な分 析 処理の限 界と なる有 効 視 野は,
サ ッ ケー
ド0回とサ ッ ケー
ド1回の範 囲の間にある と考え ら れ るが,
そ の範囲 はサ ッ ケー
ド の生 起と は必 ず し も関 連 していない ことが 示された.
これ らの結 果 を解 釈 する た め には眼 球 運動と は独立な 注 意の配 分 を 考 えることが 有 効であろう.
視 野 内 を 眼 球 運 動 を 伴わずに注 意の焦 点が移 動し得る とい う現象にっ い て は古 くか ら知ら れ て い た が, Posner (1980)はこの よ うな注 意の現 象 を一
注 意のス ポ ッ トライ ト」に例え,
その時 間 空間特 性の解明 を行っ た.
注 意 を 空間的 な限ら れた範 囲に対する 「ス ポ ッ ト ライ ト」と して考え るこ と の妥 当 性につ いて は多くの研 究で検証 が な さ れ,
様々 な 批 判も あ る (Allport,
1989;熊 田 ・菊 地,
1988).
し か し なが ら,
注 意が眼 球 運動を伴わ ずに視野の一
部分に配 分 されるとい う基本的な知見を否定す る よ う な証拠は得ら れて い な い.
眼 球 運 動 と空間的 な 注 意の関 係につ い て,
Shepherd , Findlay
,
& Hockey (1986)は, 眼球 運 動を伴 わずに注 意の焦 点 を移動す ること はで き る が,
注 意の焦 点の移 動な しに眼球運動が生起す る とい う証 拠は得られ なかっ た と してい る.
こ の結 果か ら言え ること は,
眼 球 運 動が生 起してい る場 合に は,
そ れ に 先行して注意 が移 動して い る とい うことで あ る.
し た がっ て,
本 実 験で得 ら れ た サッ ケー
ド が 1回で到 達で き る範 囲は ター
ゲッ ト刺激に対して注 意を向け ること がで き る範 囲と考え る こ と がで き る.
さ らに本実験の結 果か ら,
注 意の配 分が 眼球運動の ための 前 駆 的な役 割を は た して いる だけで は な く,
注意 が配 分さ れ た位 置で の情 報 処理にも関 与 して い ること が示 唆さ れ た.
す な わ ち,
ター
ゲッ ト位 置に対 する眼 球 運 動が誘 発さ れ た後に もその位 置で は情 報 処 理 が進み,
眼球が その位 置に到 達す るこ と と は無 関 係にNII-Electronic Library Service 熊田