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育児支援を行うことが中心となる双子の祖母の生活

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育児支援を行うことが中心となる双子の祖母の生活

Lives of grandmothers of twins who are focused on childcare support

渡 部 香名映(Kanae WATANABE)

*1

耕 子(Kouko HAMA)

*2 抄  録 目 的 育児支援を行う双子の祖母の生活の実態を明らかにすることである。 対象と方法 A県内の多胎サークル等と多胎妊娠を扱う医療機関に研究協力を依頼した。育児支援を行う双子の祖 母6名を対象に半構成的面接調査を行い,質的記述的に分析した。 結 果 カテゴリー【孫二人の育児の繁忙さ】は<大人二人いても応えきれない二人の泣き><自分の育児と 異なり時間と手間がかかる授乳><連続する入浴><自分も母親だと思うほどの育児><加齢による身 体的負担>のサブカテゴリーから,カテゴリー【家庭生活に加え双子と娘への責務が重なる負担】 は<今まで通りの家庭生活における気遣いをしていくことの大変さ><娘への気遣い><同居家族の協 力の無さ>のサブカテゴリーから,カテゴリー【自分は二の次にする】は<趣味の時間の制限><仕事 量を調整する><自分で時間を自由に使えない不自由さ>のサブカテゴリーから,カテゴリー【双子の 発育状況や一児への思い入れの偏りから生じる自責感と家族の不協和音】は<双子の成長を比べてしま う自責感><自分に偏愛がある申し訳なさ><家族みんなが双子の一人を気にかけている><偏愛から 生じた家族の不協和音>のサブカテゴリーから,カテゴリー【娘の母親として力になりたい】は<母親 として娘の負担を減らしたい><親にしてもらったことを娘にもしてあげたい>のサブカテゴリーか ら,カテゴリー【自分にプラスになる】は<孫がなついてくれる><育児支援を行うことで娘との心理 的距離が近づく><娘や双子と過ごす中で得た楽しい経験><健康増進につながる>のサブカテゴ リーから,カテゴリー【今だけ仕方ないと思う】は<双子の成長と共に楽になるという見通しをも つ><現状の生活が限られた時間であるという予測>のサブカテゴリーから構成された。 結 論 双子の祖母は育児支援を行うことが生活の中心となっていた。 キーワード:育児支援,双子,祖母,実態 2019年6月26日受付 2019年10月30日採用 2019年12月27日公開

*1石川県立中央病院(Ishikawa Prefectural Central Hospital) *2石川県立看護大学(Ishikawa Prefectural Nursing University)

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Abstract Purpose

The purpose of the present study was to clarify the actual status of the lives of grandmothers who provide childcare support for twins.

Subjects and Methods

We requested research cooperation from multiple pregnancy groups among others as well as medical institutions that handle multiple pregnancies in Prefecture A. A semi-structured interview survey was conducted with six grand-mothers of twins who provided childcare support, and the results were qualitatively and descriptively analyzed. Results

The category [Busyness of providing support for raising two grandchildren] consisted of the subcategories <Crying from two children that cannot be responded to even by two adults>, <Breastfeeding that requires time and effort, unlike my own childcare experience>, <Continuous bathing>, <Providing childcare to the degree that I feel like I am the mother>, and <Physical burden due to aging>; the category [The burden of overlapping responsibilities toward the twins and daughter in addition to family life] consisted of the subcategories <Difficulty of giving the same degree of consideration to family life as before>, <Giving consideration to my daughter>, and <Lack of cooperation of family members living together>; the category [I come second] consisted of the subcategories <Restrictions on time for hobbies>, <Adjustment of the amount of work>, and <Inconvenience of being unable to use my time freely>; the category [Feelings of guilt and family discord arising from the developmental status of the twins and the bias toward one child] consisted of the subcategories <Feelings of guilt from comparing the growth of the twins>, <Feeling sorry that I have a bias>, <The entire family cares more for one of the twins>, and <Family discord resulting from bias>; the category [I want to provide support as my daughter's mother] consisted of the subcategories <As a mother, I want to reduce the burden on my daughter> and <I want to do for my daughter what my parents did for me>; the category [Being a positive experience for me] consisted of the subcategories <Grandchildren follow me>, <By providing childcare support, the psychological distance between my daughter and myself has decreased>, <Enjoyable experiences gained while spending time with my daughter and her twins>, <Experiences have led to health promotion>; and the category [I feel that it cannot be helped for the time being] consisted of the subcategories <Having the outlook that things will become easier with the growth of the twins> and <Prediction that current life situation is for a limited period of time>.

Conclusion

The grandmothers focused their lives on providing childcare support. Key words: childcare support, twin, grandmothers, actual life

Ⅰ.緒   言

1.背景 2008年,日本産婦人科学会が移殖する受精卵の数 に制限を設けたことにより,多胎児数は減少してい る。しかし,全体の出生数が減少しているにも関わら ず,多胎児数は一定数が保たれている状態である(大 木,2017)。多胎の母親は,妊娠高血圧症や切迫早産 のため管理入院が多いうえ,産後は育児量が増え,睡 眠不足・全身の疲労(大木,2009)等による身体的負 担が大きい。また,小さく産んだことで自責感が生じ たり,(加藤,2005),容易に外出ができない(大木, 2008)ため,社会的孤立や精神的健康への影響を招き やすい。多胎児は児童虐待のハイリスクグループとし て位置づけられ,多胎児家庭は単胎児家庭に比べて, 虐待死の発生頻度が4倍に高まる(Ooki,2013)。この ように育児負担の大きい多胎育児にとって,育児経験 者である祖母からの支援は重要である。しかし,祖母 からの育児支援を考える上で,祖母となった女性の生 涯発達を支援することも重要である。自身の子育て終 了後や退職後の人生に長い年月が残され,就労や余暇 活動など社会活動に参加する中高年が増加している現 代,祖母であることは一側面でしかなく,育児支援が 無条件の「よろこび」や「いきがい」とはならないとい う報告もある(田幡他,2012)。多胎児家庭では育児 に手が取られ,多胎の祖母は仕事や趣味の時間が少な くなることも考えられ,育児支援により自身の生活や 生きがいへ制約が生じることが考えられる。 双子の祖母に焦点を当てた報告(渡邊,2016)はあ るが,育児支援を通して体験した娘や夫,娘婿と

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いった家族や医療者への思いについては述べられてい るものの,双子の祖母自身の生活の実態については述 べられていない。 そこで,本研究では多胎児家庭の多数を占める双子 に焦点を絞り,また,実母と義母では育児支援を行う 生活の実態に相違があると考えられるため,本研究で は実母を対象とし,育児支援を行う双子の祖母の生活 の実態を明らかにすることを目的とする。 これを明らかにすることで,双子の母親(娘)が双 子の祖母と互いにより豊かな関係を結びながら育児が できるよう,妊婦健診や1か月健診,母乳外来などの 場において家族への保健指導に活かしていくことがで きるのではないかと考える。 2.用語の定義 双子の祖母:双子の母親の実母 育児:授乳,オムツ交換,入浴といった乳幼児の双 子の世話を行うこと 育児支援:娘が育児をするために双子の祖母が行う 支援

Ⅱ.研 究 方 法

1.研究デザイン 本研究は,育児支援を行う双子の祖母の生活の実態 について,双子の祖母の語りを通して探索するため質 的記述的研究デザインを用いた。 2.研究対象者 育児支援を行う双子の祖母6名を対象とした。 選定条件は,①双子の母親の実母で,②同居,また は近隣(移動所要時間が一時間以内)に居住し,週 1 回以上育児支援を行っていること,③これまでに双子 育児の経験がない,④双子以外はきょうだい(同胞) を有さないこと,⑤医療施設入院中に母子同室を 行っていること,⑥保育園入園前の双子の祖母である こととした。 3.調査期間 平成27年6月~平成28年10月に調査を行った。 4.データ収集方法 研究対象者は,3つの方法で募った。①研究者の知 人や,② A 県の多胎サークルの代表者に双子の母親 (娘)を紹介してもらい,研究者が口頭にて研究の内容 について説明した。その後,双子の母親(娘)を通じ て双子の祖母へ研究依頼を行った。双子の祖母の同意 が得られた場合,後日インタビューを行う際に,研究 者が依頼書を用いて研究依頼を行った。③A県の多胎 妊娠を扱う医療機関では,看護部長に文書にて研究依 頼を行った後,当該機関の倫理審査委員会の許可を得 て,双子の母親(娘)が母乳外来や1か月健診で病院に 訪れた際に参加の同意について依頼書を用いて研究依 頼を行った。同意が得られた場合,双子の母親(娘) を通して依頼書を用いて双子の祖母へ研究依頼を行っ た。双子の祖母が付き添いで来ていた場合は,双子の 祖母へ直接的に依頼書を用いて研究依頼を行った。 同意の得られた研究対象者に同意書を記入してもら い,半構成的面接を実施した。調査に使用した場所は 研究対象者の希望に合わせて,研究対象者の自宅か双 子のいる家庭,または喫茶店,B大学で行った。研究 対象者が娘の立ち会いを希望した時のみ,娘も同席し た。研究対象者の承諾を得て,面接内容はボイスレ コーダーで録音した。 調査内容は,研究対象者の概要(年齢,同居の有 無,双子の家庭までの距離,支援の頻度,支援の開始 時期,支援の時間,就労の有無,趣味の有無,病気・ 通院の有無),双子の概要(年月齢,在胎週数,出生 体重,性別,分娩形態,先天性疾患の有無),双子の 母親(娘)の概要(不妊治療の有無,里帰りの有無, 就労の有無)をインタビュー内で聴取し,出産後,育 児支援のために行っていることはどのようなことか, 育児支援を行う中で印象に残っている大変な場面はど のようなものか,育児支援を行うことで生活や生きが いに変化があったか,大変だと思うことにどのように 対応したか,自由に語ってもらった。 5.分析方法 質的記述的研究 双子の祖母の語りを録音した音声から逐語録を作成 し,グレッグら(2016)の方法を参考に育児支援を行 う双子の祖母の生活の実態に関連する研究対象者の言 葉 を 意 味 の ま と ま り ご と に コ ー ド 化 し た。 次 に, コード化したデータを類似性と相違性に着目して同じ 意味を持つ複数のコードを集め名前を付けてサブカテ ゴリーを抽出した。同様に,サブカテゴリーからカテ ゴリーを抽出した。その後,カテゴリー,サブカテゴ リー同士,および両者間の関連についても検討した。

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6.倫理的配慮 研究者が所属していた石川県立看護大学の倫理審査 委員会の承認を受けて行った。(看大第998号) A県の多胎妊娠を扱う医療機関の倫理審査委員会の 承認を受けて行った。(承認番号なし) 調査の概要,目的,プライバシーの保護のため研究 終了後,逐語録の電子データや紙媒体は処分するこ と,同意撤回の自由,研究結果を発表(学会,専門雑 誌)する際には匿名性を厳守することについて文書と 口頭で説明し,書面で同意を得た。面接は研究対象者 の負担を少なくするために希望される場所で行うよう 配慮した。面接内容は研究対象者の許可を得て録音し た。面接内容の録音記録や逐語録については,研究者 の責任の下に鍵のかかるキャビネットで管理した。 7.データの確実性,信用性,確証性 インタビュー終了後,研究対象者の発言の意図がわ からないと判断した2名のデータについて,該当する 研究対象者に連絡し,許可を得てメールで発言内容の 意図を確認した。分析過程では,女性看護学分野・子 どもと家族の看護学分野の研究者によりスーパーバイ ズを受けた。

Ⅲ.結   果

1.研究対象者,双子,双子の母親(娘)の概要 本研究の研究対象者に該当する6名より同意を得た。 平均年齢は62.6歳,同居が1名,別居が5名であった。 全員が出産後,医療機関退院後より育児支援を行った 時間と頻度は双子の年月齢で変化しているものの,調 査時も週に1日以上育児支援を行っていた。就労に関 しては,1名が自営業,1名がパートタイムであった。 インタビューの平均時間は86.5分であった(表1)。 双子の概要は,年月齢は 6 か月~1 歳 7 か月で,36 週以降に出生していた。出生体重は全員が2,000g以上 であった。先天性疾患の有無に関しては,1児に先天 表1 研究対象者,双子,双子の母親の概要 研究対象者 A B C D E F 研究対象者 の概要 年齢 59歳 65歳 62歳 58歳 64歳 68歳 同居・別居 別居 同居 別居 別居 別居 別居 双子の家庭までの距離 車で 10分 車で 30 分 車で 30 分 車で30 分 実家で仕事をしているので毎日 家に来る 支援の頻度 毎日~週 1 回 毎日 週 6 回 平日毎日 平日毎日 毎日 支援の開始時期 医療機関退院後 医療機関退院後 医療機関退院後 医療機関退院後 医療機関退院後 医療機関退院後 支援の時間 (同居の場合は内容) ①祖母が双子の家庭へ行 く ②双子の母親が祖母の家 へ行く 1歳頃まで 毎日 ② 夕食仕度 午後~夕食後①② 午前~23時 9時~17 時 朝~仕事終了時 ② インタビュー時 数時間~ 5日泊まる ② 就労 なし なし なし パートタイム なし 自営業 趣味 あり あり あり あり あり あり 病気・通院 なし なし 足痺れありリハビリ通院中 なし なし なし 紹介経路 多胎サークル 研究者知人 研究者知人 医療機関 多胎サークル 多胎サークル インタビュー時間(分) 79分 104分 73分 68分 119分 76分 双子の概要 年月齢 1歳 5 か月 1歳 7 か月 1歳 1 か月 6か月 6か月 8か月 在胎週数 37週 37週 36週 37週 36週 36週 出生体重(第 1 子/第 2 子) 2,520g /2,030g 両児とも 2,000g 以上 2,300g /2,500g 両児とも 2,000g以上 2,554g /2,662g 2,279g /2,491g 性別(第1 子/第2 子) 男/男 女/女 男/女 男/男 男/男 男/女 分娩形態 経腟分娩 帝王切開 帝王切開 帝王切開 経腟分娩 帝王切開 先天性疾患の有無 無 1疾患児に先天性心 無 無 無 無 双子の母親 (娘)の概要 不妊治療の有無 なし なし なし なし なし あり 里帰り あり あり あり あり あり 就労 なし なし (育休中)あり なし (育休中)あり あり

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性心疾患があり,入院期間は延長したが,入院期間中 に母子同室を行っていた(表1)。 双子の母親(娘)の概要は,不妊治療による双胎妊 娠は1 名で,同居を除く 5名全員が里帰りを行ってい た。就労については,3名がありと回答したが,その うち2名は育児休業中であった。就労している3名は, 実母とは別居していた(表1)。 2.育児支援が中心となる双子の祖母の生活 以下では,カテゴリーを【 】で示し,サブカテゴ リーを< >で示す。また,内容を表しているデータ の一部を“ ”で引用し,内容の理解が難しいと思われ る部分は( )で補足した。 双子の祖母は育児支援をすることが生活の中心と なっていた。育児支援が生活の中心となる祖母の生活 について,7カテゴリーと 23 サブカテゴリー,315 の コードが抽出された(表2)。 1)【孫二人の育児の繁忙さ】 【孫二人の育児の繁忙さ】を構成するサブカテゴ リーは,<大人二人いても応えきれない二人の泣 き><自分の育児と異なり時間と手間がかかる授 乳><連続する入浴><自分も母親だと思うほどの育 児><加齢による身体的負担>の5つであった。 以下,5つのサブカテゴリーについて説明していく。 <大人二人いても応えきれない二人の泣き> 祖母全員が,双子特有の同時泣きや交互泣き,連鎖 泣きの状況に子ども二人に対し,双子の母親(娘)と 祖母の二人がいても応えきれないことに繁忙さを感じ ていた。なかには,一人ならこんなに泣かせなくても いいのにと思う者もいた。以下は,双子が同時に泣い ている中,搾乳やミルクを作る状況について語ったE 氏の語りである。 “直母(直接授乳)じゃ足りなくて搾乳もしてたか ら。ミルクもやな。同時に泣いたらできないじゃない ですか?(E)” <自分の育児と異なり時間と手間がかかる授乳> 祖母は,直接授乳以外のビン哺乳や搾乳の解凍・保 温・保存,ミルク調乳を代行することが多く,さらに それを二人分行うということに繁雑さを感じていた。 また,出産後しばらくは,低出生体重児特有の哺乳力 の弱さで哺乳に時間がかかることも授乳の大変さを感 じる要因となっていた。これらは,自分が行ってきた 育児と違うことが繁忙さを感じる要因の一つとなって いた。以下は,自分の育児と異なる搾乳の保存や保温 方法に時間と手間がかかると感じたE氏の語りである。 “自分の子育ての時はそういうのをほとんど使わな いで子育てしてたので,搾乳を湯せんであっためてと か,何時間たった搾乳はもう使っちゃだめよとか,調 乳してとかっていうわからないのを一からして。(E)” <連続する入浴> 祖母は,一人入浴させたと思ったらもう一人入浴さ せなければならないという連続する入浴の手間にも繁 忙さを感じていた。以下は,連続する入浴に追われる 状況について語ったF氏の語りである。 “二人おるもんですから,一人入れて水変えて,そ の間に着せて,お茶のまいて,ほんで次の子も脱がし て準備せんなんもんで,おじいさんも応援に入って, お茶飲ましてもらっといて。(F)” <自分も母親だと思うほどの育児> 祖母のなかには,娘と共に孫二人の育児を行ううち に,自分はまるで母親として育児をしていると感じる 者もいた。以下は,おむつ交換や哺乳,寝かしつけを 行ううちに自分は母親のように育児をしていると感じ たD氏の語りである。 “育児だったね。ほとんど(おむつ交換や哺乳,寝 かしつけといった育児を)一緒にやった。母親が二人 みたいな。(中略)私は母親じゃないけど,私も母親か なと思う。はは(笑い)。孫というよりも母親と思う ときも。おばあちゃんじゃないな。一緒に子育てして るなって。(D)” <加齢による身体的負担> 祖母のなかには,双子をおんぶと抱っこすること で,下肢に痺れが生じ,リハビリ通院を行っている者 もいた。以下は,加齢による体力低下を実感し,それ によって育児支援が辛くなっていることについて 語ったC氏の語りである。 “50 歳にはじめて孫見た時はすごい元気やったん に。60 歳になったらこんなに疲れが残るのって。し かも双子ですから。(C)” 2)【家庭生活に加え双子と娘への責務が重なる負担】 【家庭生活に加え双子と娘への責務が重なる負担】 を構成するサブカテゴリーは,<今まで通りの家庭生 活における気遣いをしていくことの大変さ><娘への 気遣い><同居家族の協力の無さ>の3つであった。 <今まで通りの家庭生活における気遣いをしていくこ との大変さ> 双子の祖母は【孫二人の育児の繁忙さ】に加え,今 まで通りの家事,夫・娘への気遣いをしていくことに

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表2 育児支援を行うことが中心となる双子の祖母の生活を構成するカテゴリー,サブカテゴリー,コード カテゴリー サブカテゴリー コード(抜粋) 孫二人の育児の繁忙さ 大人二人いても応えきれない二人の泣き 同時に泣くと双子の一人を泣かせたまま授乳準備をし なければならない(E) 双子の一人が泣くともう一人が泣くので泣かさないよ うにしなければならない(C) 自分の育児と異なり時間と手間がかかる授乳 搾乳の保存と保温方法が自分の育児と違う(E) 二人分のミルク調乳と哺乳,搾乳の保温と哺乳,授乳 後のビン消毒が手間と時間がかかる(F) 低出生児特有の哺乳力の弱さ(G) 連続する入浴 一人入浴させたと思ったらもう一人入浴させなければならない(F) 自分も母親だと思うほどの育児 (D)自分も母親のように双子の世話をしていると感じる 加齢による身体的負担 加齢による体力低下を実感し,孫二人の世話が身体的につらい(C) 家庭生活に加え双子と娘への責 務が重なる負担 今まで通りの家庭生活における気遣いをして いくことの大変さ 今まで通りの家事(A)今まで通りの同居家族への気遣い(C) 娘への気遣い 育児がうまくいかない娘への配慮(A)娘の母乳に気遣った食事(E) 同居家族の協力の無さ 夫が家のことをしてから娘のところへ行けと言う(A) 自分は二の次にする 趣味の時間の制限 バレーができない(D)友人とのランチを断っている(A) 仕事量を調整する 喫茶店を休業した(F)パートを減らし,仕事後すぐに娘のところへ向かった (D) 自分で時間を自由に使えない不自由さ 美容院や友人との予定を組めない(C)夫や娘(双子の母)以外の子,双子以外の孫の世話もし なければならない(A) 双子の発育状況や一児への思い 入れの偏りから生じる自責感と 家族の不協和音 双子の成長を比べてしまう自責感 体重増加状況や成長発達に差がある(B)二人いると比べてしまいだめだと思う(B) 自分に偏愛がある申し訳なさ 接触が多い児に愛着がわきもう一人の子に申し訳ない と思う(B) 先天性心疾患で長生きできないという思いからその子 にだけ生じる愛しさ(B) 家族みんなが双子の一人を気にかけている 娘が双子一人をほったらかし偏愛があると感じる同居家族も偏愛がある(B) 偏愛から生じた家族の不協和音 家族の偏愛への娘の怒り(B)娘の態度への憤り(B) 娘の母親として力になりたい 母親として娘の負担を減らしたい 娘が可愛い(B)娘は睡眠時間がない(D) 親にしてもらったことを娘にもしてあげたい 自分の育児で母親がおかずを持たせてくれたことが助かったという嬉しさが残っているから娘に一品でも持 たせたいと思う(F) 自分にプラスになる 孫がなついてくれる 会いに行くと自分を歓迎してくれている(C) 育児支援を行うことで娘との心理的距離が近 づく 娘との会話が増え,距離が近づいたと思う(F) 娘や双子と過ごす中で得た楽しい経験 双子がいるから必要とされていつも行けないところに一緒に行け,食べられないものを食べられると思う(C) 健康増進につながる 気持ちのメリハリになる(F)病気したらダメだと心がける(B) 今だけ仕方ないと思う 双子の成長と共に楽になるという見通しをも つ 自分の子育て経験,孫育て経験から大きくなって(3 歳,保育園・幼稚園に入る)楽になる時が来るという 予測(D) 近所に住む双子の祖母,近所の保育園の先生から大き くなれば双子が二人で遊ぶから一人の子より楽だと助 言を受け楽しみにする(C) 現状の生活が限られた時間であるという予測 自分の時間は仕事復帰すれば持てるようになるという今後の予測(E) 双子の義祖母が双子をみるという予測(A)

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大変さを感じていた。以下は,家族のことも娘のこと も考えながら毎日買い物をするうちに気持ちがうつに 傾きつつあったことについてのC氏の語りである。 “赤ちゃん(双子)のお世話だけじゃなくて,ご飯も 食べさせなくちゃいけない。洗濯も家族が多いので。 お風呂は毎日洗いますよね。小さい子がいるから毎日 掃除機かけますよね。で主人がお魚食べたいから毎日 買い物行きますよね。そしたら,この子(娘)には おっぱい出すご飯を作ってあげたいし,お父さん (夫)にはお酒の鞘を作ってあげないといけないし, 孫(双子以外の孫)にはお肉を食べさせてあげたい しって,スーパー行っても毎日毎日考えてたら頭痛 が。娘がうつになるんじゃなくて私がうつになるかも なって。気持ちがだんだん。自由がほしいって。(C)” <娘への気遣い> 双子の祖母は,育児がうまくいかない娘への配慮や 娘の母乳に気遣った食事を作るといった娘への気遣い を責務であると感じていた。以下は,同時授乳がうま くいかない娘を気遣い,授乳を共に行うA氏の語りで ある。 “できることはないかと考えたら,どうしたらうま く吸わせられるか,こうしたら大丈夫じゃない?とか 言いながら,市販のクッション買ってきて使ってみた り。(A)” <同居家族の協力の無さ> 【家庭生活に加え双子と娘への責務が重なる負担】 は,同居家族の協力の無さによって増強していた。以 下は,夫が家のことをしてから娘のところへ行けと言 うことにプレッシャーを感じているというC氏の語り である。 “この子ら専用ではないので,うちの主人がどこで も行くなら家の事してから出てってくれって言うん で,それもプレッシャーで。夕飯の支度のために早く 帰ってこないと主人が嫌な顔するので。(C)” 3)【自分は二の次にする】 【自分は二の次にする】を構成するサブカテゴリー は,<趣味の時間の制限><仕事量を調整する><自 分で時間を自由に使えない不自由さ>の3つであった。 <趣味の時間の制限> 祖母は,育児支援を行うことで,趣味の時間に制限 がかかると感じていた。以下は,娘が双子を連れてう ちに来たり,双子をみてほしいと急に呼び出される生 活であるため,趣味の時間が持てなかったり制限され ることに不満を感じていたA氏の語りである。 “お母さんすぐ来てって,お母さんご飯用意してない のにーって。(中略)自分の時間もほしいーって。(A)” <仕事量を調整する> 仕事をしている祖母は仕事量を減らし,育児支援を 行うため時間を増やせるよう調整していた。以下は, 育児支援をするために,自宅で経営していた喫茶店を 休業することにしたF氏の語りである。 “(仕事を)もうだめやって限界感じてね。おっぱい 飲んどるときでもお客さんおいでたら飲んどるが置い て行かんなん。(中略)楽しんでしとったけど。(F)” <自分で時間を自由に使えない不自由さ> 祖母は,育児支援が生活の中心になっていることで 不自由さを感じていた。以下は,娘の予定を聞いてか ら自分の予定を組むことに不自由さを感じているC氏 の語りである。 “うちの主人がどこでも行くなら家の事してから出 てってくれっていうんで,(中略)美容院も,今までお 友達と遊んでたのも行ってもいいかしらって(娘に) 聞いて。だから自由(なよう)で自由がない。(C)” 4)【双子の発育状況や一児への思い入れの偏りから 生じる自責感と家族の不協和音】 【双子の発育状況や一児への思い入れの偏りから生 じる自責感と家族の不協和音】を構成するサブカテゴ リーは,<双子の成長を比べてしまう自責感><自分 に偏愛がある申し訳なさ><家族みんなが双子の一人 を気にかけている><偏愛から生じた家族の不協和 音>の4つであった。 本研究においてB氏は【双子の発育状況や一児への 思い入れの偏りから生じる自責感と家族の不協和音】 を感じていた。B氏の双子の孫は双子の一人に先天性 心疾患があり,入院中は二人と母子同室で母親(娘) が育児をしていたものの,先天性心疾患のある児は退 院が延期となり,一時母子分離になった。先天性心疾 患のある児は直接授乳ができず,祖母によるビン哺乳 のみであったが,双子の母親(娘)と共に退院した児 は直接授乳が可能であった。また,双子二人にはその 後の発育にも違いがみられ,先天性心疾患のある児の 方は身体が小さかった。このような状況から,B氏は 先天性心疾患のある一児に偏った思い入れをもち,そ のことに自責感を感じていた。また,家族が双子の一 人ばかりを可愛がると言って娘が家族に怒ったことに 対し双子の祖母は,こんなに手伝っているのになぜか 納得できない,もっと愛しげに世話をしてほしいと感 じていた。このように,互いに偏愛を抱く状況に嫌悪

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感をもち,家族の不協和音が生じていた。 <双子の成長を比べてしまう自責感> 体重増加状況や成長発達に差が生じる場合に,祖母 は二人いると比べてしまい,双子の成長を比べてしま う自責感を感じていた。 “I(双子の一人)は言葉がゆっくり。二人やと比べ るよ。Iは成長が生まれた時もあれだったからそうな のかなって。(中略)そうやって比べて比べちゃダ メーって思うじゃない?(B)” <自分に偏愛がある申し訳なさ> 母親による直接授乳ができず祖母などの家族が哺乳 ビンで授乳するために,祖母は,接触が多い児に愛着 を持ち,先天性心疾患がある子が長生きできないので はないかと思い,愛しくなることも重なって偏愛が生 じていた。そして,自分に偏愛がある申し訳なさを感 じていた。 “I は絶対(母親の)乳首を受け付けなかった。だか ら授乳の時はママとIIは(IIだけ直接授乳するので)一 心同体みたい。I に哺乳ビンで飲ますのは私の役目。 (中略)寝るときもIIは添え乳でIは私たちがおんぶし て。だから申し訳ないけどIが愛しい愛しい可愛い可 愛いって。II には愛しいとかそんなのなくなるのよ ね。だから可愛そうだったよ。気持ちがIIに行かない し。(B)” <家族みんなが双子の一人を気にかけている> 双子の曾祖母が家族の前で平気で一人の児だけを可 愛いと言っている状況がみられたり,娘が双子の一人 をほったらかしにしていると感じる状況があった。 “みんな Iって。こりゃII が忘れられたら大変やっ て。うちの母(双子の曾祖母)も Iっていうからダメ やーって言ってた。(B)” <偏愛から生じた家族の不協和音> 家族が双子の一人ばかりを可愛がると言って娘が家 族に怒ったことに対し双子の祖母は,こんなに手 伝っているのになぜか納得できない,もっと愛しげに 世話をしてほしいと感じていた。このように,互いに 偏愛を抱く状況に嫌悪感をもち,家族の不協和音が生 じていた。これは,双子の発育状況に差があることや 直接授乳ができず家族が哺乳ビンで哺乳するために, 接触時間が偏ることによって増強していた。 “私らがIばっかり可愛がるって言ってね。IIだって 可愛いわいねーって言って(娘が)泣きながら部屋飛 び出していった。(中略)こんなしてあげてるって言い 方はだめだけど,こんなしてるのになんでかねって, 言ってた。(中略)(娘は)もうIIばっかりさーっと上連 れてって,Iほったらかしにしてるからね。I愛しげに もっとあれしてほしいわって思ったことあった。(B)” 5)【娘の母親として力になりたい】 【娘の母親として力になりたい】を構成するサブカ テ ゴ リ ー は,<母 親 と し て 娘 の 負 担 を 減 ら し た い><親にしてもらったことを娘にもしてあげた い>の2つであった。 <母親として娘の負担を減らしたい> 祖母は,子ども二人の育児に奮闘する娘の姿を見た り,母親として娘の負担を減らしたい気持ちで育児支 援を行っていた。以下は,娘の睡眠時間が少なく なっている娘の姿を見て,母親として娘の負担を減ら したいと感じたC氏の語りである。 “普通ならできないと思うんですけど,どうしてし たかっていうと,孫も可愛いけど,娘が一番可愛いの で, 娘 の 力 に な り た い っ て。 ク マ は で き て る し, おっぱいを出さなきゃって気持ちがあるので夜も一人 起きてたら一緒に起きてなきゃいけないので,この子 みてたら寝る暇ないわって。(C)” <親にしてもらったことを娘にもしてあげたい> 祖母はこれまで自分の母親にしてもらい嬉しかった 経験を思い出し,その経験を娘にも行っていきたいと 考え,育児支援を行っていた。以下は,自分が母親に おかずを持たせてもらって嬉しかった経験を娘にもし ていきたいという気持ちで育児支援を行っているとい うF氏の語りである。 “母親は私が忙しいの知っとるから,晩のおかず 買ってきてでもどうのこうのちゅう母親でしたから, それがやっぱり一品でも助かったって嬉しさが,60 になっても残ってますから,一品でも持たしてやりた いなっていうのがありますね。(F)” 6)【自分にプラスになる】 【自分にプラスになる】を構成するサブカテゴリー は,<孫がなついてくれる><育児支援を行うことで 娘との心理的距離が近づく><娘や双子と過ごす中で 得た楽しい経験><健康増進につながる>の 4 つで あった。 <孫がなついてくれる> 育児支援を行う中で,孫がなついてくれるため,育 児支援が生活の中心とすることができていた。以下 は,娘と孫二人に会うまでは気持ちが重いが,自分が 会いに行くと孫二人が喜んでくれる姿を見て重い気持 ちが軽減しているC氏の語りである。

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“行くまでが気持ちが重いんやけど,行くとよかった なって。行くと両手挙げて抱っこしてってしてね,階 段から手だして待ってる。鍵がちゃって開けるだけで わかるみたい。そんなんされたら歓迎しとるし。(C)” <育児支援を行うことで娘との心理的距離が近づく> 祖母のなかには,育児支援を行うことで,娘との会 話が今までよりも増え,心理的距離が近づいているこ とに嬉しさを感じている者もいた。以下は,娘が双子 を妊娠してから娘と会話する機会が増え,心理的距離 が近づいたことを喜ぶF氏の語りである。 “お腹にきてから特に話すようになりましたね。(中 略)より近くなったね。母親としてはそんなん話せる ちゅうのは嬉しいね。(F)” <娘や双子と過ごす中で得た楽しい経験> 双子の母親は,外出時に人手を要するため,付き添 いが必要となる機会が多い。祖母は,このような状況 を負担に感じていたものの,楽しいと感じる経験を積 み重ねることで,【自分にプラスになる】と感じていた。 “プラスになる分もあった。最初は買い物もお母さ んもセット(付き添いで常に必要)っていうのもすご く苦痛だったんです。(中略)でもよく考えるとこの子 らがいるから私が必要とされていつも行けないところ に一緒に行けたり,食べれないものを食べに行けた りってプラスに思ったら楽しいじゃんて思って。なん か,買い物行ってもあの子ら着てるの(試着)見ても 面白くないでしょ?そしたら娘がじゃあお母さんも買 いたいの?選んであげるよって。(中略)そしたら自分 もちょっと楽しいかもって思ったのがきっかけかな。 で次,お母さんあそこ行ったことない?じゃあここラ ンチ行こうって連れてってくれたり。(C)” <健康増進につながる> 育児支援を行うことで,気持ちのメリハリになり, 病気をしないよう心構えや病気ができないと気を張る ので健康でいたいという気持ちになり,健康増進につ ながると思うようになっていた。 “孫もいない自分たちの生活。それは楽で楽しいか もしれないけど,一時かもしれんよ。お芝居見たり。 なんのあれもないと思う。こういうのがあって,ほん で温泉でも行っかっていっていった時の解放感。楽し みがまた違ってくる。人間てメリハリってどんなに年 いっててもないといけないなって。辛いけど明日あれ かと思うと頑張れるじゃない。(B)” 7)【今だけ仕方ないと思う】 【今だけ仕方ないと思う】を構成するサブカテゴ リーは,<双子の成長と共に楽になるという見通しを もつ><現状の生活が限られた時間であるという予 測>の2つであった。 双子の成長や,保育園・双子の父側の祖父母等の新 たなサポーターの出現が予測できることによって,双 子の成長と共に楽になる,現状の生活が限られた時間 であるという見通しをもつことができていた。 <双子の成長と共に楽になるという見通しをもつ> 祖母は,自身の経験や双子育児を知る他者の助言か ら,3歳頃になれば楽になる時が来るという見通しを もてるようになっていた。以下は,近所に住む双子の 祖母に助言を受け,今だけだと育児支援を行う生活を 頑張っていたというB氏の語りである。 “お友達に 3 歳までよって。大変だけど,幼稚園 入ったら双子ちゃんて二人で遊んであれするし,全然 手なんていらないし,一人の子より楽よって言われ て。それを楽しみに。(B)” <現状の生活が限られた時間であるという予測> のちに,今よりも自分で時間を自由に使えるように なるだろうと,現状の生活が限られた時間であるとい う予測をしていた。以下は,今後自分ではなく双子の 義祖母が支援するだろうという予測をすることに よって現状の生活が限られた時間であるという予測を しているA氏の語りである。 “(研究者:保育園に入って,娘さんが働いたりした らよりおばあちゃんの支援が必要になると思うんです が)向こうのお母さん(双子の義祖母)が近いから, 向こうの親がなんかするのかなと私たちは思ってるん ですけど。まあ,今だけかなと思ってます。(A)”

Ⅳ.考   察

乳児期における多胎児育児の大変さとして多く挙げ られるのが,天羽(2010)によると,児の泣きや授乳, 入浴である。これらは,双子の母親(娘)にとって大 きな負担となるが,その母親(娘)を支える双子の祖 母も巻き込んでいた。祖母は自分の生活スタイルを乱 すことなく行える育児支援を望んでおり,新生児の世 話など直接的な支援より,子育て相談や家事協力や外 出時の対応といった精神面のフォローも含めた間接的 な育児支援を手伝いたいと考えていることを岡津他 (2011)は報告している。しかし,双子の祖母の場合, 授乳や離乳食の場面,双子が同時に泣いた場合に,大 人二人が必要となるため,なかには,自分も母親だと

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感じる者がいるほど祖母も直接的な育児を行うことと なる。また,双子の同時泣き,交互泣き,連鎖泣きと いった双子の泣きの多さや手間のかかる新しい育児, および低出生体重児特有の哺乳力の弱さを感じること で自分の育児と比較し大変さを実感していた。これら のことから,助産師の行う保健指導では,双子の祖母 は直接的な育児が必要になること,自分の育児との違 いを感じることが多い泣きの多さや,低出生体重児特 有の哺乳力の弱さ,手間がかかる新しい育児の特徴に ついて伝え,出産後の育児について具体的にイメージ を膨らませておくことで,【孫二人の育児の繁忙さ】を 軽減することができるのではないかと考えられる。 このような【孫二人の育児の繁忙さ】に加え,双子 が出生する前と同様に家族の食事準備や掃除,洗濯も 行っていた。このような生活に負担を感じるととも に,趣味といった自分の時間を自由に使えず,【自分 は二の次にする】といった不自由さを感じていた。 これらは,これまでの祖母に関する報告(Maijala, et al. 2013:笠浪他,2010:久保他,2008:久保他, 2011:田幡他,2012:津間,2013)で見られたよう な,育児支援を行うことと自身の生活の二者のバラン スを模索するという単純な枠組みではなく,他の同居 家族と関係のバランスをとることも含め,今まで通り の家庭生活に【孫二人の育児の繁忙さ】が加わるとい う責務が重なる負担があることが明らかとなった。こ れは,双子の祖母に限らず,母親(娘)の育児を支え る祖母全般に生じ得ると考えられる。中高年の人々は 年上の世代と年下の世代に挟まれた世代(サンド イッチ世代)で,親の世話や子育ての責任が重なり苦 悩する状態がしばしば見られるとロイ(1976/2010)は 述べている。これまでは家族を対象者の背景として意 識し,対象者の援助のために家族の協力を得ているこ とが多かった。しかし,双子の祖母は双子や双子の母 親(娘)に大きな力を発揮するケアの提供者であると 同時に,双子や娘に様々な影響を受ける人でもある。 家族員各人への看護は看護者の重要な取り組みである (森, 2013; ロ イ, 1976/2010; Hanson, et al. 2010)。 祖母を双子とその母親(娘)を支える人的資源として 捉えるのではなく,看護ケアの対象であるという視点 をもって双子の祖母の生活全体を把握していく必要が あると考えられる。また,双子の母親(娘)が祖母や 家族にのみ支援を求めるのではなく,ファミリー・サ ポート・センターや保育ママといった社会資源の活用 を促していくことも祖母の育児支援の負担軽減を図る ことにつながるのではないかと考えられる。 本研究において,双子育児を知る他者からの助言 で,育児支援を行うことが中心となる生活は【今だけ 仕方ないと思う】ことができていた。地域多胎ネット ワークという,多胎児の妊娠・出産・育児を,市民グ ループ,行政,医療,研究者などが連携して支援する ための緩やかなネットワークが,いくつかの県で活動 している。ピアサポート事業や多胎サークル活動も行 われている。祖母にもこれらへの参加を促し,参加者 相互に双子育児の経験を聴く場を設けることにより, 育児支援を行うことが中心となる生活は【今だけ仕方 ないと思う】ことができるのではないかと考える。し かし,双子育児がはじまると育児量の多さから外出が 難しく多胎サークルへの参加も困難となる。そのた め,妊娠中から地域多胎ネットワークとの関わりの場 を促していく必要がある(田中,2010)。妊娠中から かかわる立場である助産師は,保健指導の場面など で,地域多胎ネットワークの情報提供を行い,双子の 母親と祖母といった支援者も含めて,つながりをつ くっておく必要があると考える。また,<同居家族の 協力の無さ>が【家庭生活に加え双子と娘への責務が 重なる負担】を増強していたことから,医療機関や多 胎サークルが開催する妊娠中からの母親学級では,家 族を巻き込んで出産後の生活について話し合う場を提 供する必要があると考えられる。 双子の祖母は,<現状の生活が限られた時間である という予測>をし,【今だけ仕方ないと思い】,育児支 援を行っていた。しかし,少子化時代に入り,専業主 婦世帯を共働き世帯が逆転する(厚生労働省,2013) という社会状況の中で,乳幼児期に限らず祖母は育児 の担い手としては期待されている(人口問題研究所, 2010)。一方で,祖母と育児方針の違いや言葉かけが 母 親 の ス ト レ ス と な っ て い る と い う 報 告(角 川, 2009;厚生労働省,2018)もあり,母親(娘)と祖母 の各々が求める育児支援のあり方について共に考えて いく必要があると考えられる。 また,【自分にプラスになる】と感じることで,育児 支援を行うことを生活の中心にしていた。これまでも 子世代や孫との関わりが祖母の生活に張り合いを持た せているという報告はいくつもあり(Maijala, et al. 2013;人口問題研究所,2010;笠浪他,2010;厚生労 働省,2013;久保他 2008;久保他,2011;田幡他, 2012;津間,2013),双子の祖母においても同様の結 果を得た。人が何をストレスとし,どのような対処の

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可能性をもつかは,その人が自分の状況をどのように 意味づけするかにかかっているとBenner(1989)は述 べている(p62-63)。助産師は双子の祖母が【自分にプ ラスになる】気づきや認識を高める援助を行っていく ことで肯定的側面を意識化することができるのではな いかと考える。母乳外来や赤ちゃん訪問などの場にお いて,育児支援を行うことが中心となる双子の祖母の 生活の意味や意図を問うことで,双子の祖母自身に体 験を振り返ってもらう機会となるのではないかと考え る。 また,これまで双子の母親は偏愛が生じ,自責感を 感じているという報告(加藤,2005)はあったものの, 双子の祖母も同様の状況が生じることが明らかと なった。これらは,双子の一人に先天性疾患があり双 子の発育状況に差があることや,直接授乳が双子の一 人しかできないため,祖母がミルクを飲む児との関わ りが増え,一児との接触時間に偏ることによって生じ ていた。このことから,直接授乳が双子の一人しかで きない場合,1か月健診や母乳外来で訪れた際に双子 の母親(娘),祖母の双子に対する感情や家族関係を 間接的に確認し,双子の母親(娘)や祖母が自責感を 感じていたり,家族の不協和音が生じている場合に は,傾聴し,成長の差は個性であることを伝えること で,【双子の発育状況や一児への思い入れの偏りから 生じる自責感と家族の不協和音】を軽減することがで きるのではないかと考える。

Ⅴ.研究の限界と今後の課題

双子の年月齢に幅があり,先天性心疾患を有する孫 であったり,同居,または近隣に居住し,週1回以上 育児支援を行っている者を対象とした。また,回顧的 な調査という点からは,研究対象者が実際の育児支援 を行うことが中心となる双子の祖母の生活の実態と異 なった見解を述べている可能性もある。今後は双子の 年月齢を揃え,先天性疾患を有さない双子の孫をもつ 祖母や遠方に住む双子の祖母にも調査を行っていく必 要がある。また,一点の調査ではなく,経時的に調査 していく必要があると考える。 本研究は双子の祖母に焦点を当てているため,双子 の母親(娘)との関わりによる相互作用を見ることは できなかった。今後,双子の母親(娘)と双子の祖母 の面接を通してより深く双方の体験から相互作用を明 らかにしていきたい。

Ⅵ.結   論

1. 双子の祖母は,育児支援を行うことが生活の中 心となっている実態が明らかとなった。育児支 援を行うことが中心となる双子の祖母の生活を 表すカテゴリーは【孫二人の育児の繁忙さ】【家 庭生活に加え双子と娘への責務が重なる負担】 【自分は二の次にする】【双子の発育状況や一児 への思い入れの偏りから生じる自責感と家族の 不協和音】【娘の母親として力になりたい】【自分 にプラスになる】【今だけ仕方ないと思う】で あった。 2. 二人の子どもの接触時間の偏りや先天性疾患が あることから【双子の発育状況や一児への思い 入れの偏りから生じる自責感と家族の不協和音】 が生じている者もいた。 3. 助産師は,祖母を背景としての役割や機能面と いう人的資源として捉えるのではなく,看護ケ アの対象であるという視点をもって双子の祖母 の生活全体を把握していく必要がある。また, 祖母や家族にのみ支援を求めるのではなく, ファミリー・サポート・センターや保育ママと いった社会資源の活用を促していくことも双子 育児の負担軽減を図ることにつながるのではな いかと考えられる。 4. 双子育児を知る他者の助言より【今だけ仕方な いと思い】,育児支援を行うことを生活の中心に していた。このことから,助産師による保健指 導では地域多胎ネットワークの情報提供を行い, 妊娠中から祖母に対しても双子育児を知る他者 との関わりを促していく必要があると考えられ る。 5. 本研究では,【自分にプラスになる】と思うこと で育児支援を行うことを生活の中心にしていた。 育児支援を行う祖母の生活の変化を聴きながら, その意味や意図を問うことで,【自分にプラスに なる】気づきや認識を高める援助を行っていく 必要がある。 謝 辞 本研究に協力していただきました研究対象者の皆 様,双子の母親の皆様,いしかわ多胎ネットの皆様, 研究に協力していただきました施設の病院長,看護部 長,病院スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。

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また,研究の論文作成に至るまで,丁寧にご指導を 賜りました石川県立看護大学の大木秀一先生,西村真 実子先生,諸先生方,および研究過程でご指導,ご協 力いただいたすべての皆様に深く感謝申し上げます。 本研究は,B大学に提出した修士論文の一部を加筆 ・修正したものである。 利益相反 本論文内容に関し開示すべき利益相反の事項はない。 文 献 天羽千恵子(2010).多胎児家庭の生活.チャイルドヘル ス,13(10),18-21.

Benner, P. & Wrubel, J. (1989). The Primacy of Caring-Stress and Coping in Health and Illness. pp.62-63, Boston, Addison-Wesley Publishing Company.

グレッグ美鈴,麻原きよみ,横山美江(2016).よくわかる 質的研究の進め方・まとめ方第2版 看護研究のエキ スパートをめざして.pp.64-84,東京:医歯薬出版. Hanson, S.M., Kaakinen, J.R., Gedaly-Duff, V., & Coehlo, D. P. (2010). Family Health Care Nursing, Theory, Prac-tice, & Research (4th Edition). pp.6-10, Pennsylvania: F.A. Davis Co.

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