技術論文 抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の * 新しい異種金属接合法 1) 1) 2) 3) 3) 橋村橋村徹徹勝間勝間秀人岩谷二郎二郎 New Method for Dissimilar Metals Joining of Steel Sh

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技術論文 結果を考察する.前述図5 のように基礎実験での自己主体感 は,人―道具系の相互相関係数は1.00 に近ければ近いほど得 られやすいことが分かった.このバーチャルリアリティ技術 を用いた心理実験では相互相関係数が0. 02 刻みとなるように 設定したが,もちろん精査には更に実験回数を増やすことが 必要ではあるが,その刻み幅でも操作者はその違いを主観的 に感じることができていた.自己主体感の成立の観点から実 車実験を鑑みると,この繊細な感覚が実車実験での相互相関 係数0.99 と 0.98 や 0.97 の違いを言い当てているとも言える. なお,加速度とアクセル開度との間の相互相関を求めるこ とを試みたが,図6 ,図 7 の速度の傾きから察せられるよう に加速度はほぼ一定値となり2 変量の相互相関係数は低かっ た.このことは,ドライバは発進時の車両の出だしを評価する 際は加速度の大きさ評価ではなく速度の時間的変化の様を評 価している可能性を示唆する.今回の実験では,アクセル操作 終了(開度全開)以降の加速の伸びの影響がどのくらい自己主 体感に影響しているかなど不明な点が多い.今後,この示唆を 精査,検証していきたい. 荒いアクセルペダル操作をした場合,相互相関係数は小さ くなることが分かった.本稿で着目した時系列波形の一致性 は人間の操作と制御対象の動きの関係性であるので,車両挙 動から見れば,ドライバが時系列波形の一致性を乱す操作を したか,あるいは車両挙動と時系列波形の一致性を高めるよ うに操作したかどうかの評価にも使える可能性がある.例え ば,直進安定性の評価である.すなわち,車両挙動としては直 進状の挙動を示しているが,その中でドライバが頻繁に微小 な修正操舵を繰り返している状況である.このとき,車両デー タの横変位量はほぼ皆無であるが,操作入力データは小刻み に変動し,その結果,この二つの時系列波形は一致せず相互相 関係数は低い値になることが予想される.このような状況で は,車両データのみを用いて高い直進安定性であると結論付 けるのではなく,本手法のように系全体としてのドライバ― 車両系を評価することで,新たな観点での車両改良の方向性 を提案できるようになると思われる. ここまで述べた実験は解析手法に合わせるように,すなわ ち1 入力 1 出力の関係を評価できるように,発進加速の実験 条件を考案した.続いて先に述べたようにステアリング操作 においても,適応できるのかを見極めるために,今後1 入力 1 出力の関係を再現するような操舵実験モードを開発せねばな らない.さらにはそれが不十分であるなら複数入力複数出力 での解析方法ならびに適切な実験方法を考案せねばならない と考える.このように諸所の懸案が想定されるが,本解析方法 は従来のドライバ―車両系評価を,系の評価という視点から 補完するものと考えている. 人には知覚的もしくは認知的に,1s に満たない車両挙動全 体の振る舞いである時間的変動を車両挙動としてとらえるこ とができる能力があり,また人には時間そのものを評価する 能力がある(9).今後,ドライバ―車両系の評価において時間変 動に着目した研究や評価手法の開発を進めて行くことが,よ りよいクルマ作りの実現へ重要であると考えられる. 7.ま と め 本稿では,人―道具系の基礎的な心理学実験を例に挙げ,人 間側の操作と制御対象との間の時系列波形の一致性が,道具 を自身の制御下に置いている印象を与えることを述べた.そ して,その知見を実車運転での発進加速におけるドライバ― 車両系評価に展開しその適用を検証した.その結果,アクセル 操作と車両速度の間の時系列波形の一致性の度合いが車両と の身体性構築に影響していることが示唆され,時間成分に着 目することでドライバ―車両系を評価できる可能性を見出し た. 参 考 文 献 (1) 野倉邦裕,深谷真啓:TG オリジナルグリップの考察,豊 田合成技報,Vol.54,p.35-42(2012) (2) 西川一男,農沢隆秀,阿部治彦,古川浩二,宮本克己, 宮崎透:ペダル操作における人間特性の研究,マツダ技報, No.23,p.71-76(2005) (3) 土居俊一:ヒューマンダイナミックスを考慮した車両評

価,豊田中央研究所R&D レビュー, Vol. 30,

No.3,p.3-15 (1995)

(4) Masato Akagi : Perception of fundamental frequency fluctuation, HEA-02-003-IP, Forum Acousticum Sevilla 2002 (2002)

(5) Shaun Gallagher: Philosophical conceptions of the self: implications for cognitive science, Trends in Cognitive Sciences, Vol.4, No.1, p.14-21 (2000)

(6) Chlöé Farrer, G.Valentin & J.M.Hupé: The time windows of the sense of agency,Consciousness and Cognition,Vol.22, Issue 4, p.1431-1441 (2013)

(7) Toshiki Kataoka, Kenji Funahashi, Koji Tanida & Katsuya Yashiro : A study of sense of self-agency focused on cross-correlation and delay between action and effect in continuous operation, ICAT-EGVE 2016, ISBN 978-3-03868-027-7 (2016) (8) Kenji Funahashi, Daisuke Kubotani, Yuji Iwahori & Koji Tanida : Virtual Scissors in a Thin Haptic and Force Feedback Environment, JACIII, Vol.13, No.3, p. 283-288 (2009)

(9) Koji Tanida, Ernst Pöppel: A Hierarchical Model of Operational Anticipation Windows in Driving an Automobile, Cognitive Processing, 7, Issue 4, p.275-287 (2006)

抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の

新しい異種金属接合法

橋村 徹1) 勝間秀人2) 岩谷二郎3)

New Method for Dissimilar Metals Joining of Steel Sheet and Aluminum Alloy Using Resistance

Spot Welding and Dimple Shape, Dimple Spot Welding (DSW)

Toru Hashimura Hideto Katsuma Jiro Iwaya

In order to advance multi-materialization of automotive body structure, we developed a new dissimilar metal joining method of steel and aluminum alloy sheet named Dimple Spot Welding (DSW). DSW has a laminated structure of Fe-Al-Fe, and is a welding method of dimple and backing plate. As a result of tensile shear tests and cross tensile tests using steel and aluminum specimens joined by DSW, the following results were found out: 1) Joining strength of DSW depends on combination of dimple height of steel sheet, and hole diameter of aluminum alloy sheet. 2) Bonding strength of DSW was equal to or higher than that of conventional mechanical joining methods such as SPR, FDS®, Clinching, and so on.

KEY WORDS: Materials, Steel materials, Aluminum alloy, Dissimilar metals joining, Resistance spot welding (D3) 1.ま え が き CO2排出規制に伴う自動車の環境負荷の低減を目的にした 車体の軽量化は重要な課題の一つである.また衝突安全性の 向上も同様に重要な課題である.しかしながら,衝突安全性 を高めようとすると車体構造を強化する必要があるため,車 体重量は重くなりがちである.車体軽量化と車体構造の強化 は相反する課題であるため,両立させるには材料と構造を合 理的に検討する必要がある.そこで,重要になるのがマルチ マテリアル化による適材適所の考え方(1)である.例えば、高 強度が必要な部分には高強度鋼板を使って軽量化し,一方大 きく軽量化が期待できる部位にはアルミニウム合金(以下, アルミ,またはAl と記す)などの軽量化材料を使う.この様 なマルチマテリアル化の際には,複数の異なる材料が共存す るため,それら異種材料を接合する技術が必要不可欠となる. 特に,車体のベース材料である鋼板と,軽量化材料の中でも比 較的低コストなアルミ板との接合は重要な接合技術である. ところが,鋼板とアルミ板の異種金属接合(2-4)は融点や熱 伝導率の違いにより溶融接合は難しく,さらに接合ができた としても鋼板とアルミ界面に脆弱な金属間化合物層が生成さ れるため強度特性が低くなるなど技術的課題は多い.このた め,鋼板とアルミ板の異種金属接合では,機械的接合法が使 われることが多い.例えば,SPR(Self-Pierce Riveting)やブラ インドリベットに代表されるリベットを使った接合法やねじ を使った接合法がある.またポンチとダイスを使い金属板同 士をかしめて接合するクリンチングも利用されている.しか しながら,現在の車体溶接で使用される主要な設備は,抵抗 スポット溶接機やアーク溶接機であるため,これらの機械的 接合には新規の設備投資が必要になる. そこで我々は,既存設備である抵抗スポット溶接機を用い て,プレス成形したダボと呼ばれる小さい突起形状を付与し た鋼板とアルミ板の異種金属の新しい接合法を開発した.こ

の新しい接合法をダボスポット溶接(Dimple Spot Welding, 以

下,DSW)と呼ぶこととする.本報告では,DSW 工法と継手 強度の評価,および他の工法との強度の概要比較について報 告する. 2.実 験 方 法 2.1. 供試材 図1(a),(b)の供試材は,板厚 1.4mm の 590MPa 級の合金化 溶融亜鉛めっき鋼板(以下,GA590)で,(a)にはダボ形状を 付与し,(b)は何も加工を施さずにそのまま使う(以下,当て

板,backing plate).(c)の供試材は,板厚 2.0mm の A5052 ア

ルミ板材で,(a)のダボを勘合させるための穴を予め空けてお く.表 1 に供試材の機械的特性を示す. *2017 年 1 月 25 日受理.2016 年 10 月 19 日自動車技術会秋季 学術講演会において発表. 1)・2) ㈱神戸製鋼所 自動車ソリューションセンター (651-2271 神戸市西区高塚台 1-5-5) 3) ㈱神戸製鋼所 鉄鋼事業部門薄板商品技術部 (451-0045 名 古屋市西区名駅2-27-8) Unit: mm

Fig.1 Specimen for dimple spot welding

橋村 徹1) 勝間 秀人2) 岩谷 二郎3)

201340 20174764

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抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の新しい異種金属接合法

Table 1 Mechanical properties of test specimen Materials Thickness(mm) (MPa)YP (MPa)TS Elongation(%)

GA590 1.4 405 622 28.2 Al-A5052 2.0 213 261 12.2 2.2. 鋼板ダボ形状とアルミ板穴形状 ダボ形状は,図2の金型を用いたプレスで成形加工される. パンチの突き出し量を変えることにより,ダボ形状の高さ(図 3)を変更できる.本試験では,ダボ高さは 2.0mm と 2.2mm, 2.4mm を用いた.Al の穴径は,φ= 10.0mm,10.5mm,11.0mm とした.

Fig.2 Schematic cross section drawing of dimple forming die

Fig.3 Schematic cross section drawing of dimple shape after forming

2.3. 試験片形状とDSW 工法 4 (a) にJIS Z3136に倣った引張せん断試験片形状を示す. 長さ82.5mm×幅 40mm の GA590 とアルミ板の端部 40mm を重 ね合わせ,GA590 に付与されたダボ形状をアルミ板の穴に勘 合させ,アルミ板を挟み込む様にして図1(b)に示す当て板を 被せて鋼-Al-鋼の積層構造にする.積層した部位にあるダボ形 状と当て板との間で鋼板間どうしのスポット溶接を施すこと により,鋼板とアルミ板の異種金属接合試験体を作ることが できる.この試験片を用いて,試験速度を5mm/min として引

張せん断強度(Tensile shear strength(以下,TSS))を求めた.

また図4 (b)に JIS Z3137 に倣った十字引張試験片を示す.図 4(a)と同様に,長さ 150mm×幅 50mm の GA590 の中央部のダ ボ形状とアルミ試験片中央部の穴を勘合させ,アルミ板を挟 み込む様にして当て板を被せて鋼-Al-鋼の積層構造にする.そ の積層した部位にあるダボ形状と当て板との間で鋼板間どう しのスポット溶接を施す.この試験片を用いて,試験速度を 5mm/min として十字引張強度(Cross tension strength(以下, CTS))を求めた.

(a) Test specimen for tensile shear test

(b) Test specimen for cross tension test

Fig.4 Test specimens for tensile tests according to JIS standard 2.4. 溶接接合方法

5 に本試験で用いた定置型抵抗スポット溶接機の外観を,

6 に電極形状を示す.溶接電極はクロム銅(Cr-Cu)製で

DR 形(元径:Φ19.0mm,先端曲率半径:9.5mm,先端径: Φ6.0mm)である.接合は専用の治具を使って行った.

Fig.5 Resistance spot welding machine

Fig.6 Shape of electrode tip (DR type)

Unit: mm Unit: mm

Unit: mm

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抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の新しい異種金属接合法

2.5. 抵抗スポット溶接の溶接条件

溶接条件は加圧力を4.5kN 一定(図 7)とし,通電条件は

up-slope なしで初期電流 8.5kA で通電時間 10cycles/60Hz,続い

10.5kA-10cycles,最後に 11.5kA-10cycles と段階的に上げ

た(図8).図 9 はその抵抗スポット溶接施工をおこなう DSW

試験体の概略図である.図10 は図 9 の A-A 断面の写真例であ

る.この工程で製作された DSW 試験体の溶融径は平均約

5.8mm であった.

Fig.7 Electrode force diagram for dimple spot welding

Fig.8 Current conditions diagram for dimple spot welding

Fig.9 Drawing of spot welding process of DSW test specimen

Fig.10 Macro-photograph of cross section A-A in Fig.9 3.実 験 結 果 3.1. 引張せん断強度(TSS) 2 に各供試材(ダボ高さと穴径の組み合わせ)の試験後 の破断形態を示す.表中の B は母材側の破断形態を示し,P はプラグ破断,I は界面破断のことを示す.図 11 に引張試験 後の破断形態の模式図,図12 に継手母材が破断した外観例を 示し(破断形態B),また図 13 に十字引張試験後の破断携帯 の模式図,図14 に同じく継手溶接部の破断面の外観を示す.

Table 2 List for test conditions and fracture appearances

No. GA590 Al

dimple height Al-hole diameter Tensile shear test Cross tension test

(mm) (mm) ( N=2 ) ( N=3 ) 1 2.0 10.0 I ,P I I ,I 2 10.5 B ,B P ,P ,P 3 11.0 B ,B P ,P ,P 4 2.2 10.0 I ,I I P ,P 5 10.5 P ,I P I ,P 6 11.0 B ,B P P ,P 7 2.4 10.0 I ,I I ,P ,I 8 10.5 P ,P P I ,P 9 11.0 B ,P I P ,P

Test items / Fracture appearance

B: Base metal fracture,P: Plug fracture,I: Interface fracture

Base metal fracture (B)

Plug fracture (P) Interface fracture (I) Fig.11 Schematic drawing for fracture states of tensile shear tests

No.3, dimple height: 2.0mm, Al-hole diameter: 11.0mm Fig.12 Base metal fracture appearance after tensile shear test

Plug fracture (P) Interface fracture (I) Fig.13 Schematic drawing for fracture states of cross tension test

(a) Plug fracture (b) Interface fracture (a) No.3: dimple height 2.0mm, Al-hole diameter φ11.0mm (b) No.1: dimple height 2.0mm, Al-hole diameter φ10.0mm 4.5 kN

11.5 kA 10.5

8.5

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抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の新しい異種金属接合法

15 に試験で得られた TSS と 2.2 で示したダボ高さ,Al 穴径の関係を示す.TSS 値はダボ高さに関係なく Al 穴径が大 きくなるほど高くなった.穴径 φ11.0mm のときダボ高さ 2.4mm の一部を除いた試験体では Al 材の破断となった.一方, 穴径φ10.0mm のとき TSS 値は低く,溶接部の破断形態は界面 破断であった.穴径φ10.5mm と φ11.0mm においては,ダボが 高くなるほどTSS 値は低くなった.

Fig.15 Effect of dimple height and Al-hole diameter on TSS

3.2. 十字引張強度(CTS) 16 に試験で得られた CTS と 2.2 で示したダボ高さ,Al 穴径の関係を示す.ダボ高さ2.2mm を除いて Al 穴径が大きく なるほど,CTS 値は高くなることが分かる.またダボ高さの 違いによって,Al 穴径が CTS 値に与える影響に差があった. ダボ高さ2.0mm のとき,CTS 値の最大最小差は約 5.0kN であ った.一方ダボ高さ2.4mm では,CTS 値の最大最小差は約 1.2kN であった.破断形態は,穴径が大きくなるにつれ界面破 断からプラグ破断に移行した.

Fig.16 Effect of dimple height and Al-hole diameter on CTS 4.考 察 4.1. DSW の想定接合メカニズム 想定している接合メカニズムについて説明する.DSW の開 始時は,図17 (a)に示す状態である.ダボ形状と当て板は点接 触であるため通電可能であり,さらにダボ形状,当て板とも に鋼板であるため,通常の抵抗スポット溶接ができる.DSW の始めは,通電部位に局所的な高密度の電流束が発生するこ とで高熱となり,この高温発熱により接触部位から溶融が始 まる.さらに上下の電極の加圧によって溶融部周辺の軟化し た鋼板が変形し易くなっているため,接触部位面積が増大す る(図17(b)).ここで,軟化した部位が拡がる(図 17(b) 横矢印)タイミングで段階的な電流の上昇が必要となる.こ れは,接触部位面積の増加に伴う電流束密度の低下を抑える ためである.電流束密度を高く保つことで増大した接触部位 を溶融させることができる.そこでさらに,電極で加圧保持 すること(図17(c))によって,溶融した接触部位を固めて 接合させることができると考えている. DSW においては,ダボ形状の変形プロセスを理解し,ダボ 高さと穴径の適切な量を把握することが必要である.次節以 降ではこの二つのパラメータの最適値とダボ変形プロセスに 着目して考察を進める.

(a) Start (b) Middle (c) End Fig.17Image of dimple spot welding process

Fig.18 Schematic cross section drawing for difference of dimple height 4.2. 引張せん断強度(TSS) Al 穴径 φ11.0 のときダボ高さ 2.4mm の一部を除いた試験体 で,Al 穴径 φ10.5mm ではダボ高さ 2.0mm のとき Al 材が破断 した.このときのTSS 値は,Al 材の強度に依存していると考 えることができる.その結果,ダボ高さに関係なく同様のTSS 値(約10.0kN)となった.一方,Al 穴径が φ10.0mm のとき, 界面破断となった.この原因は,Al 穴径が小さければダボ形 状と当て板の溶接される面積が小さくなるため,界面破断と なってTSS 値が低下したと考えられる.本引張せん断試験結 果より,穴径φ10.5mm の場合,最適なダボ高さは 2.0mm であ り,穴径φ11.0mm の場合の最適ダボ高さは,2.0mm から 2.2mm の範囲に存在することが推量できる.

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抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の新しい異種金属接合法

4.3. 十字引張強度(CTS) 16 から分かる様に,CTS 値の最大値と最小値の差は,ダボ 高さ2.0mm のときが約 5kN に対してダボ高さ 2.4mm のとき は約1.2kN である.この差が生じた原因は抵抗スポット溶接 をした接合部の鋼板どうしの結合力の違いによるものと考え ている.まず,穴径φ10.0mm のとき,すべてのダボ高さで界面 破断となり,CTS 値が低い.この原因は 4.2.でも示したとおり, 穴径が小さいために必要なサイズの溶接の面積を確保できな かったためと考えられる. 次にダボ高さ 2.0mm のとき,ダボ頂点部と当て板は図 18 に示す様に点接触状態である.この状態で通電すれば,鋼板 が軟化して溶接部を段階的に大きくでき,結果として積層して いるアルミ板を強固に挟み込むことができる.このため,穴径 を大きくするほどCTS 値が大きくなったと考えられる. 一方,ダボ高さ2.4mm のときは,ダボの断面線長がダボ高2.0mm のときよりも長くなっている(図 18).断面線長の 長いダボを適正サイズのダボ高さ2.0mm と同じ溶接条件で溶 接をすれば,線長の長い分を圧接するための電流や加圧力が 不足する.このためダボ高さ2.4mm のときはダボが潰しきれ ておらず,接合力が不十分で,積層しているアルミ板を強固に 挟み込むことができていない.この結果として,穴径に関わら,全般に鋼板とアルミ板間のCTS値が低くなったと考えられ る. 以上検討した範囲から, DSW 接合では,ダボ側の板とアル ミ板,当て板との間に隙間がなく,かつダボ形状と当て板は 点接触している状態が,溶接前の姿として好ましいことが推 定される. 4.4. 他の異種金属接合技術との強度比較 表3 に,鉄鋼会社各社の公開技報やウェブサイトで公開さ れている鋼板とアルミ板の異種金属接合技術データを示した. これらの文献を用い,図19 および図 20 に DSW 法と, 他の溶 融接合法および自動車に用いられるリベット系の代表的な接 合法(SPR,ImpAcT(5)FDS®(6)FSSW,Clinching),更に 接着剤を使ったTSS と CTS それぞれの概要値の比較を示す. ここで, DSW の TSS および CTS は,図 15, 図 16 より破壊形 態が比較的安定し,また高い強度を有していることからダボ高2.0mm で Al 穴径は φ11.0mm と φ10.5mm の平均値を代表値 とした. なお,DSW 継手と文献データである表 3 の鋼板とアルミ板 の材質や板厚等,板組みは統一されていない.一般的にスポ ット系溶接法ではTSS および CTS は板厚の影響(9-10)を受け る.また,ナゲット径と接合強度に相関があると言われてい るが,ここで示したRSW-A,RSW-B は鋼板とアルミ板を抵 抗スポット溶接で直接異種金属接合したものである一方, DSW は鋼板どうしのスポット接合であるため, ナゲット径で の直接比較の意味は小さい.このためナゲット径等での無次 元化の操作は行わず,ここでは表3 に示す材料強度が低い方Al 材の板厚で除算してスポット一点当たりの強度とし, DSW 継手強度も同様に処理して図 19,20 に比較して示した. リベット系接合法もリベット径や材質,板厚などの板組みが 異なり一様ではないが,それぞれの接合法固有の得意な板組 みが存在し,文献にはそれらの強度が代表値として掲載され ているものと考え,同様にAl 板厚での無次元のみ行い, 強度 の概要比較として,図19,20 に示した. 19 から DSW の TSS は機械的接合法と比較して同等以上 の強度であることが分かる.また図20 の DSW は FDS よりも0.3 kN/mm 劣るものの,機械的接合法の大方と較べて同等 以上の継手強度を持つと言える. 4.5. 本接合法の課題と展望 DSW の継手強度が従来工法である機械的接合法の継手強 度と同等以上であれば,設計上DSW の接合点数を機械的接合 法の点数よりも少なくできるメリットがある.一方で,DSW はダボ形状をプレス成形する必要があること, かん合させる Al 穴を必要とする.これらの作業は工程増となるが,ダボ形 状とアルミへの穴加工の多くは, 板のプレス工程と同じ工程 で対処することができる. 鋼材とアルミの接触部に生じる電食の抑制は今後の検討課 題であるが,機械的接合方法と同様に, 接着剤を両金属間に塗 付することで対策可能と考えている.ただし,溶接条件(加 圧力と通電条件)の最適化設定は別途検証が必要である. 本技術は高張力鋼板とアルミの接合部への展開や,アルミと ステンレス,アルミとチタン等他の異種金属接合への応用も 可能である.なお,電源をスポット溶接以外のものとするこ とも可能で,更に発展性があるものと考えている.

Table 3 Material combination in various dissimilar metals joints Material Thickness (mm) SPCC 1.0 Al- 6K21 1.0 Alminized steel 1.0 Al- 6K21 1.0 GA590 1.4 Al- 5000series 2.0 SPC590 1.0 Al- 5000series 1.2 H340LAD 2.0 AlMg3 1.2 AC300 (Al) 1.5 AC300 (Al) 3.0 Super Dyma 0.7 Al- 6000series 1.0 CR270 unknown

Al- 5000series unknown

Adhesive SPC270 0.8

bonding Adhesive (3)(8) Al- 6000series 1.2 Mechanical joining SPR (3) ImpAcT (5) FDS®(7)* FSSW (3) Clinching (3) Spot Welding RSW-A (4) RSW-B (4) DSW

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抵抗スポット溶接とダボ形状を用いた鋼板とアルミニウム合金の新しい異種金属接合法

Fig.19 TSS/Al-thickness of various dissimilar metals joints

Fig.20 CTS/Al-thickness of various dissimilar metals joints 5.ま と め 鋼板とアルミの異種金属接合において,ダボ形状と抵抗ス ポット溶接を使った DSW 技術を開発し検証した.以下に, DSW 技術の特徴と今後の課題および期待を記す. 1) DSW は鋼板をプレス成形したダボ形状と鋼用抵抗ス ポット溶接機を用いた新しい異種金属接合法である. 2) DSW 接合構造体は鋼-Al-鋼の積層構造であり,ダボ側 の板とアルミ,当て板との間に隙間がなく,かつダボ 形状と当て板は点接触している状態が,溶接前の姿と して好ましい. 3) DSW の継手強度はダボ高さと Al 穴径の関係に大きく 影響を受ける. 4) DSW 技術の TSS および CTS は従来の機械的接合法と 同等以上の強度を持つ. 5) 電食対策は接着剤塗布により対応できると考えるが, 溶接条件の最適化を別途行う必要がある. 6) DSW 技術は高張力鋼板とアルミなど異種金属接合へ の適用が期待される. 参 考 文 献 (1) 橋村徹:自動車マルチマテリアル化技術の進展,自動車技 術会フォーラムテキスト,No.16 FORUM-Y5, p.43-46 (2016). (2) 宮本健二ほか:抵抗スポット溶接による鋼とAl 合金の異 種材料接合,溶接学会論文集,第32 巻,第 2 号,p.83-94 (2014). (3) 崎山達也ほか:自動車ボディにおける鋼板とアルミニウム 合金板との異種金属接合技術,新日鉄技報,第393 号,p.91-98 (2012). (4) 岩瀬哲ほか:溶融アルミめっき鋼板を用いたアルミニウム 合金と鋼材との異種金属接合, R&D 神戸製鋼技報,Vol.57, No.2,p.56-60 (2007).

(5) BÖLLHOFF: RIVTAC® Automation P,

https://media.boellhoff.com/files/pdf1/rivtac-automation-p-en-6810. pdf , (参照 2016.03.03). (6) EJOT: FDS®, http://www.ejot.com/Industrial-Fasteners-Division/Products/FDS%3 Csup%3E%26reg%3B%3C-sup%3E/p/VBT_FDS, (参照 2016.03. 03).

(7) Mercedes-Benz: “H.Schubert, et al.: Flexible material joining technology for tomorrow’s innovative lightweight design, Bad Nauheim, (2012).” ,

http://www.european-coatings.com/content/download/106836/1948 837/file/016_schubert.pdf, (参照 2016.03.03).

(8) Dow Automotive: Technical Datasheet,Dow Europe GmbH, Edition 03,p. 1-3,(2012).

(9) 山崎一正ほか:超高強度冷延鋼板のスポット溶接継手の強

度特性,溶接学会論文集,第17 巻,第 4 号,p.553-560 (1999).

(10) 船川義正,樺沢真事:十字引張強さの推定式の導出,溶

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