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社会学部紀要 120号☆/1.石盛

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はじめに

本研究では、Lewin(1951)の場理論における 生活空間の概念が人間行動や人間関係を分析する ためにどのように発展させられ利用されてきたの かについて、その理論的影響下にあるいくつかの システム論的アプローチを通じて考察する。その 目的のために、まず Lewin 自身がどのように生 活空間という概念をとらえていたのかについて、 彼の科学的認識論も含めて簡単に検討する。 Lewinの科学的認識論が新カント学派の哲学者 である Ernst Cassirer の影響を強く受けているこ とはたびたび指摘されてきた(e.g. Heis, 2013; 安村,1989)。実際、Lewin はベルリン大学の大 学院生として 1910 年に私講師であった Cassirer の講義を聴き、そして、それ以降急速に発展して きた心理学分野の研究者としてキャリアを積む中 で Cassirer の科学に対する基本的アプローチの力 と生産性をますます感じていた(Lewin, 1949)。 Cassirer(1910)は、物理学をはじめとする精密 科学の科学的基礎においては、科学者の思惟が決 定的に介在しながらも、主観と客観の対立を越え て、必然的かつ経験的真理をもつ法則が構成され ていると主張し、そのような法則の構成のために は、単純な措定の作用から次々に統合がなされ、 思惟形式の体系的統一が作り出され、考察の対象 の構成する多様性が産出されることを可能とする 関数概念の決定的な重要性を指摘した。このよう なカッシーラーの認識論的見解を支持した Lewin は、数学を社会科学に適用することに将来性を見 出し、数学的論理が質的および量的データに関す る基礎数学の論点に関わる測定の特殊な問題、さ らには、社会的および心理的場を表示する一般数 学の問題などについて助力をもたらす可能性が十 分にあると判断した(Lewin, 1949)。 そして、そのような認識論的基 盤 に 立 っ た Lewinが社会科学分野において実際に提唱したの が場理論と生活空間の概念である(Lewin, 1935, 1951)。Heider(1959)によれば、「境界」、「方 向」、「地帯」といった後の「生活空間」の概念に つながっていく諸概念が初めて試論的に述べられ たのは、Lewin が第一次世界大戦への従軍により 負傷して休暇をとっていた時に執筆され 1917 年 に出版された「戦場の風景」という論文(Lewin, 1917)であったという。もちろん、Lewin は心理 学者としてはゲシュタルト学派に属しており、そ の点も統合された力動的な場という概念の着想に 影響していることは明白である。ちなみに、心理 学としてゲシュタルト(全体的な形態)という概 念を初めて用いたのはオーストリア・グラーツ大 学の心理学者 C. V. エーレンフェルス(C. V. Ehrenfels, 1859 − 1932) と さ れ て い る ( 若 園 , 1933)。エーレンフェルスは 1890 年の『ゲシュタ ルト質について』と題した論文の中で、音楽のメ ロディーはそれを構成している音の要素をただ集 めたものとは異なるとして、その全体論的な性質 を『ゲシュタルト質』と命名している。

〈寄稿論文〉

生活空間における人間行動および

人間関係を分析するためのシステム論的アプローチ

──場理論、相互依存性理論、ソシオン理論、TEM を中心として──

** ───────────────────────────────────────────────────── * キーワード:場理論、生活空間、システム論 ** 追手門学院大学経営学部准教授 March 2015 ― 13 ―

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A f A,G sl ph +G BB C rf rf A,BA,B

場理論と生活空間

Lewin(1951)は、行動を理解し予言するため には、人とその環境とを、相互依存している諸要 因の一つの布置と見なければならないと主張し、 それら諸要因の全体性をその個人 の 生 活 空 間 (Lsp)と呼び、B=F(P, E)=F(Lsp)と規定し た。すなわち、生活空間(Lsp)という概念は、 人(P)とその心理学的環境(E)の両者を包含 するものであり、それゆえに、行動(B)を説明 するという課題は、1.生活空間の科学的表示法 を見出すこと、および 2.行動を生活空間に連結 する関数を決定することと同一課題になると考え た(Lewin, 1951)。 Lewin(1951)が生活空間の科学的表示法につ いて、トポロジー数学の適用を試みたことはよく 知られている。Lewin(1951)はトポロジーの空 間概念の適用により、行動を記述し、説明し、予 測することを試み、そしてさらにベクトルを用い ることにより、方向、距離、力、欲求、緊張、誘 因、葛藤状況など、従来の心理学的論では扱いづ らかった心理学的・力学的過程を扱おうとした (図 1)。また、場理論では、ユークリッド空間で はなく心理学的場の空間であるホドロジー空間が 用いられた。ちなみに、Lewin のホドロジー空間 の概念は、実存主義哲学者サルトルの、人と人と の触れ合いや交わりが体験される行動空間を意味 する人間的空間という概念にも影響を及ぼしてい る(山岸,2013)。 もちろん、Lewin の同時代においても、力や力 の場といった概念が、本来それがつくられた物理 学や数学の文脈から離れて使用されており、一種 の擬人的な概念となっているとの批判がなされて いる(London, 1944、日本語による紹介は船津, 1955を参照)。また、すでに知られている別の方 法で表現可能な心理学的状況を単に描写している だけであるといったトポロジー数学の心理学への 安 易 な 適 用 に つ い て も 批 判 が 行 わ れ て い る (French, 1937 ; Garret, 1939 ; Heidbreder, 1937)。

しかしながら Lewin のトポロジカルな概念が情 報の流れや集団メンバー間の影響を分析するのに 極めて有効であることは、Cartwright & Harary

(1956)などによるグラフ理論に基づく後の研究 からも証明されているといえる(Kelley, 1991)。 一方、Lewin が生活空間に関連する構成概念の 数量化をそれほど重視せずに、集団のダイナミク スの実験的生成に力点を置いたため、結果として 法則のダイナミクスを数量化するには至らなかっ たというのも事実である(Marrow, 1969)。これ は 1 つには主として一般心理学者であった彼が、 研究生活の最後の 10 年の間にだけ社会心理学の 課題と明示的に向き合ったという時間的な制約も 影響しているであろう(Kelley, 1991)。ちなみに Mahler(1966)は、心理学全般に対する Lewin の貢献として、1.科学の理論の観点からと同様 に人間の精神の観点から心理学に新たな基礎を与 えたこと、2.心理学的実験に対する科学的根拠 を創出したこと、3.諸概念の数学的フレームワ ークにおいて理論を位置付けたことという 3 点を 指摘している。 千野(1991)は、Lewin が本来システム論的現 象記述の原型である微分方程式から導かれる場の 概念を、広く心理学・社会科学などに導入したこ と(たとえば、子どもの回り道行動に、場の力や 障壁の概念を導入して説明したり、葛藤状況にお ける子どもの行動の説明に、同じく場の力や平衡 点の概念を導入したこと)を、彼のアイディアは すばらしかったと評価しつつも、Lewin のベクト ル心理学やトポロジー心理学の最大の難点は、そ の中心となる心理学的場の力を、十分操作的に定 義できなかった点にあると指摘している。その主 な理由として、千野(1991)は Lewin の時代に は、ベクトル場の客観的測定のために不可欠とな る心理学的尺度構成も、Thurstone(1927)によ 図 1 領域 A から物理的障害 ph と社会的障害 sl に 囲まれた領域 B に存在する目標 G へと向か う子ども C における推進力 fA, Gと規制力 rfA, B による葛藤状況(Lewin, 1951) 社 会 学 部 紀 要 第120号 ― 14 ―

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b.α-リミットサイクルによる集団分解過程 a.α-リミットサイクルによる集団形成過程 る 1 次元尺度までであり、2 次元以上の広がりを もつ社会的場のベクトル推定を行うところまで尺 度構成法も進んでいなかったという時代的制約を 挙げている。そして、千野自身は力学系における 特異点を心理学的障壁として心理学的解釈を行う アプローチを試みている(千野 , 1991, 2004 ; Chino & Nakagawa, 1990)。また特異点以外にも、 一般の非線形系における 2 種類のリミットサイク ル(渦状沈点または渦状源点の周りに閉軌道を伴 う)およびその分岐(ホップ分岐)を、小集団の 形成過程の文脈で、社会心理学的に解釈可能であ ることを示している。具体的には、図 2 のアルフ ァリミットサイクルやオメガリミットサイクルに おける特異点の周りの閉軌道は、小集団における ある時点での下位グループとそれ以外を分ける境 界と見なすことができ、とりわけ、アルファリミ ットサイクルでは、閉軌道の内側では中心の特異 点(渦状沈点)に向かう軌道特徴が見られ、閉軌 道の外側では閉軌道から遠ざかる渦状源点の軌道 特徴が見られるので、下位グループ以外の成員を 寄せ付けない閉鎖的な下位集団の形成過程と見な すことができるとしている(千野,1991)。しか し残念ながら、千野による力学系にもとづく場理 論の研究は、その数理的アプローチが社会心理学 者によってあまり受け入れられていないためか、 その後、大きな進展はみられていない。

相互依存性理論

集団の本質はメンバーの類似性や非類似性では なく、彼らの相互依存性であるという Lewin の 主張を受けて、対人関係における相互依存性理論 を 提 唱 し 研 究 を 進 め た の が Kelley & Thibaut (1978)である。Kelley(1991)は、目標への彼 らの移動における人物間の相互依存性は生活空間 に不恰好に表現されていた(図 3)と判断し、彼 らの理論的な研究において生活空間を用いなかっ たが、成果マトリックスの使用はまさに Lewinian の伝統に属するものであったと述懐している。 図 3 において Lewin(1951)は、夫婦間での相 互作用を、各人の生活空間と社会的場に分けて、 時系列的に検討している。時点 1 において、夫と 妻それぞれが自分の知覚する生活空間において相 手の移動を期待し、自分の行動を意図している。 しかしこの時点で、妻のおかれている位置につい て夫は D 領域ととらえているのに対し、妻自身 は E 領域として捉えているように齟齬が生じて いる。そして、時点 2 の社会的場においては、そ れぞれの意図に従って実際の移動が生じている。 夫は妻の移動を、妻の自分の期待に反して F の 領域に移動した“浮気”と解釈し、時点 2 の夫の 生活空間では、妻はさらに自分から遠ざかる G の領域へと移動すると予期するため、夫はそれを 追いかける F 領域への移動を意図する。それに 対して、妻は時点 2 における夫の B 領域への移 動を A 領域の間との往還的移動と解釈し、自分 が B 領域へと移行し、そこで落ち合うことを意 図する。ここでの夫と妻の行動の分析は、3 つの 段階を経て行われている。すなわち第 1 段階は、 時点 1 における夫と妻の心理学的事態を各々別 図 2 リミットサイクルに基づく小集団の形成過程の解釈(千野,1991) March 2015 ― 15 ―

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時点1における主人の生活空間 時点1における妻の生活空間 意図された移動 期待された移動 期待された移動 時点2における社会的場 実際の移動 意図された移動 時点2における主人の生活空間 時点2における妻の生活空間 意図された移動 期待された移動 期待された移動 意図された移動 妻の選択 夫の選択 ベッド ベッド 床 床 9 1 -8 -8 - 5 - 5 1 9 に、各自の次の行動をひき出すという目的で分析 する。第 2 段階は、時点 2 における、行動の結果 としてあらわれる社会学的・客観的事態を表現す る。第 3 段階は時点 2 における結果としてあらわ れた夫と妻の心理学的事態を、知覚の法則の助け をかりて導出する。第 3 の分析は、その事態に包 含される人々の心理学的事態の分析を行う基礎に なる。集団の相互交渉の分析に際しても、各集団 の生活空間の個々の分析から、全体的社会的場に おける集団行為へと移行し、そこから再度集団生 活空間に及ぶ影響の分析へと復帰するところの、 3段階の手続きに従わなければならないというこ とを意味する。Lewin(1951)は“知覚”の分析 から“動作”の分析へ、“主観”から客観へ、そ して最後旧に復帰するこのような分析手続きは、 科学方法論の勝手な要求でもなく、集団相互また は個人相互間の相互作用に限定されるものでもな く、集団生活の基礎的特性の一つを反映したもの と捉えている。 Lewinianの伝統に属しながらも、直接的には 生活空間の概念を引き継がなか っ た Kelley & Thibautは、相互依存性を描き、各人物が相手と どのような相互影響を与えるのかの方法と程度を 明らかにするのに適した方法として、ゲーム理論 を採用し研究を展開させた(Kelley, 1991)。相互 依存性理論に基づく対人関係へのアプローチ(Ar-riaga, 2013 ; Kelley, 1984 a, 1984 b, 1997 ; Kelley & Thibaut, 1978)では、例えば、夫婦間の具体的 な利益−関連状況の設定を表 1 のような成果マト リックスにより模式的に表現する。就寝問題の成 果マトリクス(表 1)では、森林レンジャーと結 婚した若い女性が直面する、自分はベッドで寝る ことを好むが、夫は床で寝ることを好むという、 葛藤的な利益−関連状況が表現されている。たと えば、夫と妻が一緒にベッドで就寝するという選 図 3 夫 H と妻 W の生活空間および両者を含む社会的場(Lewin, 1951) 表 1 就寝問題の成果マトリクス(Kelley, 1984 b) 社 会 学 部 紀 要 第120号 ― 16 ―

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択を行った場合には、妻は+9 という大きな利得 を得るが、夫は比較的小さい+1 という成果しか 得られないのである。ただし、だからといって、 夫が床に一人で就寝することを選択した場合に は、二人ともの成果が−2 となってしまう。この 葛藤状況の解決法のひとつは、毎週 3 日ずつを 2 人で一緒にベッドと床でそれぞれ寝て、残り 1 日 はお互い好きな方で別々に寝るというようなター ン・テイキングという選択であるかもしれない (Kelley, 1984 b) さらに Kelley(1984 b)は、ある状況において 取られた選択肢の結果、その状況が別の状況に変 化するという、状況と状況の変遷リストの提案 (表 2)を行った。表 2 の遷移リストで表現され ている、このエピソードの具体的なシナリオは次 のようなものである。ある日の午後、ある夫婦が 川の畔で別々の活動を楽しんでいた。妻はアウト ドア用品の最新カタログを読み、夫は川の浅瀬を 歩き回っていた。そのうちに、夫はより楽しむた めに川の深みへと泳ぎ出したが、深みにはまって 自分一人では抜け出せなくなってしまった。 表 2 によれば、夫がより大きな成果を求めて、 水泳という選択肢をとらない限りは、リスト L にとどまり続ける。その意味では、夫がリスト L からの遷移をコントロールしているといえる。し かし、いったんリスト M へと移行すると、夫の 選択肢は水泳以外になくなり、妻が状況をコント ロールすることになる。そして、妻が自分の成果 を犠牲にして救助という選択肢をとった場合に、 はじめて夫はリスト L の状況へと戻ることがで きる。この状況を処理するためには、感情が中核 的な要素となるとされる。具体的には、まず、妻 は苦境にある夫をかわいそうと思うと同時に、そ の状況に対処できるという自分の能力に対して自 信を感じ、これに対して夫は自分の行為について 恥ずかしく思うと想定される。そして、このよう にして状況から派生した直接的な感情は救助とい う自分の成果を考慮しない愛他的な行為を生じさ せる誘因となる。また、夫の恥ずかしいという感 情は、リスト L においてスイミングの成果を割 り引くというように、利益関連状況の変換へとつ ながるかもしれない。以上のように、利益−関連 状況が遷移していく中で、二者間に生じる社会的 感情がどのように機能し、遷移自体を方向付けて いるのかを検討することが可能である(石盛, 2005)。 相互依存性理論に基づく対人関係研究は、2×2 の成果マトリックスを対人関係の特質に基づいて 体系的に分類する方向へと進められ、その成果 は、Kelley, et al.(2003)による長大な Atlas(地 図書)の編纂へと結実した。ただし、対人関係の 相 互 作 用 の 時 間 的 な 展 開 の 研 究 に 関 し て は 、 Kelley(1984 b)の遷移リストによる検討が例外 的に存在するのみで、その後の発展はみられなか った。

Reis & Arriaga(in press)は、相互依存性理論 の持つ問題点を 3 点指摘している。1 つ目は、あ るケースにおいて関連変数の価値を特定すること についての内在的なあいまいさである。2 つ目 は、特定の状況で提供される対人的状況の変換に おいてどの人物要因がもっとも影響をもちそうな のかについて事前には何も述べないということで 表 2 救助エピソードの遷移リスト(Kelley, 1984 b) 結果 成果 推移 リスト 選択肢のセット 選択肢のペア 妻 夫 (次のリスト) L 妻(読書,うたた寝) 夫(浅瀬歩き,水泳) R R D D W S W S +2 +2 0 0 +2 +6 +2 +6 L M L M M 妻(読書,うたた寝,救助) 夫(水泳) R D H S S S +2 0 −5 −10 −10 0 M M L *R:読書、D:うたた寝、W:浅瀬歩き、S:水泳、H:救助 March 2015 ― 17 ―

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ある。3 つ目は、この理論が研究については高度 に生産的であるにも関わらず、相互依存性理論の 命題を直接的に検証する研究がほとんど存在しな いことである。遷移リストの研究に進展が見られ なかった理由の一つは、このような相互依存性理 論の実証的研究への移行の際に浮き彫りとなるあ いまいさが、遷移リストの検討においても顕著と なるためであったと考えられる。つまり、遷移リ ストに表現されるシナリオの妥当性を支える基盤 が不明確であったのである。Van Lange & Rusbult (2011)は、相互依存性理論に基づく今後の研究 の展開について、状況的構造の関数としての適応 の理解に向かっての進化論原理との統合、相互依 存性理論の社会的な心に関する神経科学的モデル への拡張、相互依存性理論のグループプロセスや 集団間関係への再拡張、が有望であると述べてい る。相互依存性理論のこのような研究の展開を有 効に進めるためにも、実証的研究への移行に伴う 曖昧さに関してはブレイクスルーが必要とされ る。

ソシオン理論

ソシオン理論は人間関係をニューラルネットワ ークのメタファーとして捉えた社会関係ネットワ ークに関する関係的モデル理論である。ソシオン 理論は、1990 年代に関西大学社会学部の同僚で あった社会心理学者の藤澤等、認知心理学者の雨 宮俊彦、社会学者の木村洋二の 3 名による共同研 究から構想された理論である。その理論の志向性 は共同研究者 3 名それぞれの専門分野を反映して 微妙に異なっているが、ここでは社会心理学者と して Lewin の場理論の影響を強く 受 け た 藤 澤 (1997)のソシオン理論について論じることとす る。ソシオン理論の特徴として、実際の人間関係 とは別にひとりひとりが想像した人間関係を個人 内認知として自分自身の中に持っているという特 徴がある。実際の人間関係を C ネット、ひとり ひとりの人間が内部に持つ人間関係についての認 知を P ネットと呼ぶ。個人にとって認識可能な のは、実際の人間関係である C ネットではなく、 自分自身の P ネットであるため、それぞれの人 間は自分自身の P ネットの情報に基づいて行動 する。しかし、P ネットと C ネットは完全に一 致していないため、人間関係における誤解やすれ 違 い と い っ た ダ イ ナ ミ ズ ム が 生 じ る ( 藤 澤 , 1997;小杉他,2006)。この P ネットと C ネッ トというアイディアは、図 3 において Lewin が 夫 H と妻 W の生活空間および両者を含む社会的 場をそれぞれ別に検討する際に、非常にプリミテ ィブな形であるが利用されていたものである。 ソシオン理論に基づく心理学的な実証研究は、 理論の提唱者である藤澤を中心とした研究グルー プで、家族システム論等の分野において行われて き た ( 石 盛 ・ 開 原 ・ 藤 澤 , 1999 ; 石 盛 他 , 2008)。しかしながら最近では、ソシオン理論に 基づく研究が当初の研究グループの枠を超えて展 開されるようになっている。例えば、田中・高橋 ・鳥海・菅原(2010)はソシオン理論とハイダー のバランス理論に基づいた学級モデルをコンピュ ータによるマルチエージェントモデルで構築し、 「班行動」、「出席停止」、「予防活動」等のいじめ 対策行動の効果について検証を行った結果、「予 防活動」がいじめ対策行動として最も適切である 学級運営手法との結論を得ている。また、大隅・ 大澤・今井(2014)は、ソシオン理論を用いて学 校のクラスの人間関係の移り変わりを再現したシ ミュレーションモデルを構築して検討を行い、同 調方略を実行する生徒が増加するといじめの発生 確率が増加する傾向を見出している。これらの研 究から、ソシオン理論がいじめ問題を扱う集団現 象のシミュレータの土台として使えるだけの表現 力が確認されるにいたっているといえよう。 さらにソシオン理論に関しては、時間的推移と 感情の描写、相互作用を含んだ人間関係の表現技 術の改良を目指して、ソシオン譜という方法論が 開発されている(小杉他,2012)。ソシオン譜で は楽譜のように、複数のパートが合わさって人間 関係が織りなされる様を表現している。ソシオン 譜の特徴は、1.プレイヤーズ・トラックとコミ ュニケーション・トラックという、個人の心理的 描写と社会的に表出された行動を同時に描く点 (これは個人からの観点と客観的(社会的、間主 観的)状況を同時並行的にとらえるべきであると するソシオン理論の主張をふまえた表現である)、 2.心理描写の中に描かれる意味を限定せず、た 社 会 学 部 紀 要 第120号 ― 18 ―

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だ正負・大小を表す対人関係の結合強度の変化だ けを描写するにとどめる点(ツールとしてのソシ オン譜は、最もシンプルな状態の推移で、その意 味を帰納的に表現できることを目指している)、 3.心理学的概念を、時間的幅をもった「一連の 流れ」として定義する点(一つの荷重操作が行わ れる間を心理時間の一単位として、表現してい る)である。 例えば、高橋留美子によるマンガ「めぞん一 刻」の主人公の五代と五代が思いを寄せる管理人 の音無とのやり取りの一場面をソシオン譜に書き 起こすと図 4 となる。 図 4 のシーン①のコミュニケーション・トラッ ク(一般的なソシオン理論の用語でいう C ネッ ト)で五代の恋のライバルである三鷹と音無の間 で相互に好意を持っているコミュニケーションが 生起する。しかしそれを直接見聞きしていない、 五代のシーン②のプレイヤーズ・トラック(一般 的なソシオン理論の用語でいう P ネット)では、 自分から音無への好意的な働きかけに対して返報 が行われたことに喜びを感じている。続く五代の シーン③のプレイヤーズ・トラックでは、シーン ①のコミュニケーション・トラックでの三鷹と音 無間の好意的なコミュニケーションが周囲から伝 達されることで、三鷹を含む三者関係の形成が想 起され、それが音無からの非好意への予期につな がり、不安が生じている。シーン④のコミュニケ ーション・トラックでは、シーン①のコミュニケ ーション・トラックでの三鷹と音無間の好意的な コミュニケーションが補強される。しかし、ここ での事実は、音無のシーン⑤のプレイヤーズ・ト ラックにあるように、音無の好意は三鷹の妹に向 けられたものであり、五代はそれを誤解している 状態にある。しかしながら、シーン⑤のコミュニ ケーション。トラックでのコミュニケーションの 不全(目の前を通過した電車の騒音による)によ って五代の誤解は解けず、シーン⑥のプレイヤー ズ・トラックにあるように、音無の非好意に返報 する形で、非好意的な二者関係を確定させてしま う。そして、シーン⑦のコミュニケーション・ト ラックでは、五代から音無への非好意を表明する に至る。最後のシーン⑧の音無のプレイヤーズ・ 図 4 書き起こされたソシオン譜(小杉他,2012) (図中の大きな○は人物を表し、内部の小さな○は、それが線でつながっている 相手への評価を表す。なお、○は好意的な評価を、●は非好意的な評価を意味する。) March 2015 ― 19 ―

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トラックでは、彼女にとっては唐突なシーン⑦の 五代からの非好意の表明を受けて、混乱が引き起 こされる。 ソシオン譜による分析は、相互依存性理論の遷 移リストでは妥当性が不明確であった点を、多く の人に共感されるという点で一定の生態学的妥当 性を示すマンガのシナリオ分析や現実のコミュニ ケーション事例の分析によって補うことが可能で ある。しかしながら、ソシオン譜による人間関係 の表現はまだ萌芽的な段階にあり、より多くの事 例を検討する中での描画ルールの精緻化が今後の 課題といえるであろう。

TEM

(Trajectory Equifinality Model)

TEM(Trajectory Equifinality Model)は、時系 列の中で、対象者の行為(可能だったが取られな かった非行為も含めて)に関わる意思決定のシー クエンスを描く手法である(サトウ・安田・木戸 ・ヴァルシナー,2006)。具体的には、人間の発 達や人生径路の多様性・複線性の時間的変容を捉 える分析・思考の枠組みモデルであり、その結果 は図 5 のような TEM 図によって描かれる(荒川 ・安田・サトウタツヤ,2012)。なお、近年の TEMに関連する方法論の発展に伴い、TEM は HSS(歴史的構造化サンプリング)と TLMG(発 生の三層モデル)という他のアプローチと合わせ て TEA(複線径路・等至性アプローチ)という 統合的な方法論として取り扱われるようになって いるが(Sato et al., 2014)、ここでは基本的に TEM という時系列の中で、対象者の行為を描写する方 法論に限定して議論を行うこととする。 すでに検討したように、Lewin(1951)は社会 的場面や個人の発達を理解するうえで、心理的力 のおよぶ領域として「場(たとえば図 1)」を提 唱し、t 時点から t+1 時点の場の変化を捉えるた めの心理学における力学を構成することを構想し たが、それは不十分なままであっ た 。 元 々 の Lewinの場理論の構想には、図 3 のように時間軸 上での一定期間の各個人の生活空間内での行動に ついても確実に含まれていたと考えられるが、 Lewin の時系列的観点そのものを受け継ぐ研究 は、その後ほとんど行われなかった。その一方 で、Lewin(1951)による、「ある一定の時点に おける個人の心理学的過去および未来についての 見解の総体」という時間的展望の定義を出発点の 一つとして、個人の過去や未来についての認知や 情緒が、現在の状況にどう影響を与えているかを 検討する多くの時間的展望の研究が展開された、 もちろん、時間展望という概念自体の研究テーマ としての重要性は否定されるものではないが、そ れは Lewin の時系列的な観点を十分に反映した ものとはいえない。むしろ Lewin が最も重点を 置いたのは、時間的展望そのものではなく、図 6 のような時間的展望の個人差を持つ個人が生活空 間内でどのように異なる行動をとり、結果として ダイナミックな社会的な出来事が展開されていく のかを統合された理論によって説明することであ ったと思われる。 筆者は、TEM という方法論は、人間の発達や 変容という側面に焦点化して、Lewin の場理論に おけるそのような時系列的な観点を引き継いだア プローチであるといってもよいと考えている。 TEMは、直接的には Valsiner の記号論的な文化 心理学(e.g. Valsiner, 2007)をその理論的バック ボーンとしているため、基本的には個人の認知シ ステムをそのモデルの中心に据えている(サトウ ・安田・木戸・ヴァルシナー,2006)。そのため 一見すると、Lewin の場理論や生活空間の概念と の直接的な関連はないように思われる。実際、 Valsiner が公刊している数多い著作 の 中 で も 、 Lewinの研究に対する言及はほとんど行われてお らず、彼独自の文化心理学の構築に対して大きな 影響を与えた研究者とはみなされていない。例外 的に、Valsiner & Rudolph(2012)において、心

図 5 TEM 図による発達における等至性の表現 (荒川・安田・サトウタツヤ,2012)

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理学にトポロジーという質的な数学的概念を導入 したゲシュタルト心理学の流れに属する研究者と して Lewin が言及され、好意的な評価が行われ ている程度である。また、システム論としての TEMには、von Bertalanffy(1968)の一般システ ム論からの直接的な影響、特に等終局性(equifi-nality)の概念が TEM の等至性の概念へと応用 さ れ て い る 点 が 言 及 さ れ て い る ( Sato et al. , 2014)。確かに TEM の理論的バックボーンは、 Valsinerの文化心理学であり、システム論として の直接的な影響は von Bertalanffy の一般システ ム論から受けているのであるが、その一方で、 TEMはサトウら(サトウ,2009;安田・サトウ, 2012)を中心にした研究グループによって、心理 学の分野にとどまらず、看護・福祉・保育といっ た複数の領域での研究事例を蓄積させ、発展して きた研究法という特徴も有している。筆者が 2014 年 2 月に福島県の飯坂温泉にて開催された TEM 研究会の席上で、サトウ本人に TEM への Lewin の場理論および時系列的な観点からの影響につい て尋ねたところ、「Lewin の影響を受けていない 社会心理学者はいない」との回答を得ており、そ れは TEM の方法論としての形成プロセスにおい て間接的ながらも Lewin(1951)の場理論および 生活空間の概念の影響があるとの認識を示すもの であった。 さてここでは、人間関係を描く際の TEM とい う方法論の特徴について、幼稚園児の木登りへの 挑戦場面を記録した映像を TEM により分析した 境・中西・中坪(2012)の研究を基に考察する。 発達を描く方法論としての TEM の特徴は、プロ セスでの個人の変遷を描くことが可能であるとい う点とそのプロセスの時期区分を明確化できると いう点に存在している。境・中西・中坪(2012) では、木登りへの挑戦が、「興味本位での挑戦と 挫折」→「保育者を介した再挑戦」→「他者から の学び」→「試行錯誤による知識の獲得」→「そ れらを総動員しての成功と満足」というプロセス として TEM 図が描かれ、さらにそのプロセス が、興味本位での挑戦(第 1 期)、保育者の依存 関係による開始と継続(第 2 期)、助言と応援を 支えとしたやや積極的な挑戦(第 3 期)、成功へ の手ごたえを感じての仕切り直し(第 4 期)と時 期区分されている。このように対象の内的変容や 対象場面の移り変わりを TEM 図として可視化し ていく TEM の分析は、特定の時間における人の 経験に寄り添い、その変容を追体験するようにと らえるうえでは有効である(境・中西・中坪, 2012)。また TEM では、可能だったが現実には 取られなかった非行為も可視化されるため、対象 者の意思決定上の葛藤についても視覚化できるの も利点といえる。 図 6 時間的展望の範囲が狭い a と広い b という 2 つの発達段階における生活空間(Lewin, 1951) March 2015 ― 21 ―

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しかしながら、TEM は基本的には一人の個人 の時系列的な変容を描く方法論であるため、相互 作用する他者は背景に退いてしまい、意思決定場 面でのサポート要因あるいは阻害要因として登場 するだけになってしまうために、相互作用過程を 生き生きと描くにはあまり適していない。その点 に関連して、香曽我部(2014)は、子どもの遊び の場面を TEM によって分析する利点として、視 覚では捉えることのできない社会的な状況、文化 的な背景が子どもたちの遊びに対して与える影響 について、可視化できることをあげている一方 で、時系列的に遊びの発展プロセスを各個人に整 理されることで、逸話記録や事例が持つ遊びにお ける子ども同士のやりとりの臨場感が薄れてしま う点は、TEM で分析する際に気をつけておかな ければならないだろうと指摘している。 確かに詩的な表現としては、あえて行為者たる 人物を明確には登場させずに状況の変化のみを描 写することで、受け手に多様なイメージを喚起さ せるということも効果を発揮するであろう。例え ば、芭蕉の句「古池や蛙飛び込む水の音」には、 行為者たる芭蕉はどこにも出てこず、ただ池に飛 び込む蛙とその結果生じた水音が表現されている だけである。しかしながら、この句の 1 つの解釈 としては、蛙が池に飛び込む原因となった、古池 のほとりを歩く人(芭蕉)を想像することも可能 である。そして、そのように芭蕉の姿を浮かび上 がらせることにより、閑かな古池とカエルが池に 飛び込む水音との対比の描写にとどまらないこの 句の詩的表現上の価値が生じてくるのである。そ れはさておき、社会科学的方法論としての TEM が、対人的相互作用の理解よりも、人間個人の発 達や人生径路の多様性・複線性の時間的変容を捉 える方法論を重視していることを批判するのは、 あまり生産的ではないであろう。それよりも、 Lewinの場理論を理論的源流の一つに持つ TEM を多様性・複線性の時間的変容を捉える特徴を持 つアプローチとして積極的に評価すべきと考えら れる。

おわりに

これまで論じてきたように、Lewin(1951)の 場理論および生活空間の概念は Lewin 自身の表 現においては時代的な制約もありプリミティブで 萌芽的な段階のものであったが、彼の理論はその 後の社会心理学における人間行動や人間関係を分 析するための理論やアプローチに直接的および間 接的に大きな影響を与え、この分野の発展に寄与 してきた。今後の研究の展開については、Van Lange & Rusbult(2011)が、相互依存性理論に 関して指摘しているように、その他の理論やアプ ローチでも、近年の社会心理学分野で急速に進展 している進化心理学的アプローチや神経科学的モ デルとの対応関係の検討が研究の方向性の 1 つと して重要となるであろう。またソシオン理論が、 いじめ問題を扱う集団現象のシミュレータの土台 としてその有効性を示しているように、グループ プロセスや集団間関係への理論やアプローチの適 用も可能性があるであろう。その他に、近年で は、ウエアラブルセンサを用いて、誰が誰と面会 しているかというデータを時系列的に記録し、ソ ーシャルグラフ上で人間関係の変化を捉えるとい うヒューマンビッグデータの蓄積に基づく研究ア プローチも登場している(矢野,2014)。そのよ うな膨大なデータの解析に、それぞれの理論やア プローチが独自の理論的貢献を行っていくことも 重要であろう。 引用文献 荒川歩・安田裕子・サトウタツヤ(2012).複線径路・ 等至性モデルの TEM 図の描き方の一例 立命館 人間科学研究,25, 95−107.

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Some Systems Theory Approaches for Analyzing Human

Behavior and Human Relations in Life Space:

Field Theory, Interdependence Theory, Socion Theory,

Trajectory Equifinality Model

ABSTRACT

The aim of this paper is to examine the effect of Field Theory and the concept of

Life Space proposed by Kurt Lewin regarding some system theories and approaches to

understand human behaviors and interpersonal relations. I start my study with an

over-view of Lewin’s theory and concept. It was pointed that Lewin’s epistemology and

philosophy of science was heavily affected by Ernst Cassirer. Lewin developed a

topo-logical approach to represent and analyze psychotopo-logical life space. However, his

ap-proach was primitive and insufficient due to the restraints of the era. Then, I

individu-ally examine Interdependence Theory, Socion Theory, and Trajectory Equifinality

Model (TEM) which are directly and indirectly affected by Lewin’s theory.

Interde-pendence Theory adopted outcome matrix from game theory to analyze interpersonal

relations. It did not use the life space in the theoretical work, but the use of the

out-come matrix was very much within the Lewinian tradition. Socion Theory tries to

visu-alize interpersonal relationships by Socion Score. TEM is a methodology to describe

human development within irreversible time. TEM focuses on the human experience of

transformation and expresses the idiographic life trajectories in an individual’s life

course. Finally, future challenges are discussed from the stand point of those system

theories and approaches.

Key Words: Field Theory, Life Space, Systems Theory

参照

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