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舌癌の浸潤と外科的治療

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Tumor Tumor Tumor

Clear margin

Close margin

Positive margin

ษ㝖䝷䜲䞁 䠄 䠅 䠄 䠅 䠄 䠅 Ⅰ. 舌癌の標準的治療 舌扁平上皮癌(以下,舌癌)の標準的治療は,頭 頸部癌診療ガイドラインにおいて,表在性の T1―3 N0症例に対する組織内照射を除けば早期癌,進行 癌にかかわらず初回治療として外科的切除手術が推 奨されている1)。実際には組織内照射を行える施設 が限られていることから,ほとんどの施設において 推奨される初回治療は手術である。最新版の Na-tional Comprehensive Cancer Network(NCCN)の

ガイドライン2)においても,初回治療として手術が 推奨されている。手術後は切除癌組織を詳細に検討 し,adverse features(AF;予後不良因子)があれ ば追加治療を行う。AF には様々な因子があるが, NCCNガイドラインでは AF について詳細な分類が あり,AF の内容に応じた標準的追加治療が記載さ れているので参照されたい。 また NCCN ガイドラインでは手術切除のポイン トが述べられており,clear margin を確保する切除 の重要性が指摘されている。実際の手術では視診お よび触診にて確認できる腫瘍部分から 1.5∼2cm 程 度の切除安全域を付けて切除することが推奨されて おり,切除組織を組織学的に評価して 5mm 以上の 安全域があれば clear margin とし,5mm 未満の安 全 域 を close margin,断 端 陽 生 で あ れ ば positive

marginとするよう定義されている。この margin の 確保に癌の浸潤性が影響するのは明らかである。図 1に示すように境界明瞭な腫瘍であれば clear mar-ginを確保した手術は比較的容易であるが(A),腫 瘍の浸潤性が亢進し浸潤先進部位の境界が不明瞭に 佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座 くらとみゆういちろう みね さき あき みち しまざき え り こ

倉富勇一郎

峯 崎 晃 充

嶋崎絵里子

さいとう ま き こ もん じ みき お すず き く み こ

斎藤真貴子

門 司 幹 男

鈴木久美子

さ とうしん た ろう しま づ りん た ろう

佐藤慎太郎

島津倫太郎

キーワード:舌癌,浸潤,手術,ラミニン (A) (B) (C) 図 1 癌の浸潤性とマージン

A:境界明瞭な腫瘍では適切な安全域を確保すれば clear margin となる。 B:癌の浸潤性が亢進すると A と同様の切除では close margin となる。

C:癌の浸潤性が極めて強く境界が不鮮明になると,大きく安全域を確保しても positive margin となる可能性が高くなる。

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D㙐 E㙐 J㙐

䝷䝭䝙䞁

332

D3A㙐 E3㙐 J2㙐

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なれば,同様の切除をすると close margin となる (B)。さらに浸潤性が亢進すれば切除範囲をひろめ たとしても positive margin となる可能性が高くな る(C)。特に舌癌は発生した上皮の深部には分厚 い筋肉が裏打ちしているという発生部位の特徴があ り,筋肉内に浸潤した癌の先進部位をとらえるのが 難しい。したがって clear margin を確保した切除を 行うためには,舌癌の浸潤性を考慮した切除が必要 といえる。 そのためわれわれは,舌癌の浸潤性の評価やその 方法について,これまで基礎的,臨床的な研究を行 ってきた。癌細胞の浸潤性を誘導する因子としてわ れわれが特に注目してきたのが,癌細胞におけるラ ミニンγ2 鎖の発現である。 Ⅱ. 舌癌の浸潤とラミニンγ2 鎖発現 ラミニンは IV 型コラーゲンやプロテオグリカン などとともに基底膜を構成する細胞外マトリックス 蛋白であり,α,β,γ の 3 本鎖が特徴的な十字架構 造をとっている(図 2A)3)。最初に同定されたのは, マウス EHS 腫瘍の抽出物であるマトリゲルをさら に精製することで得られるラミニン 111 である4) マトリゲルやラミニン 111 はマウス腫瘍の増殖を促 進し5),ペプチドを用いた研究によりラミニン 111 にはマウスメラノーマ細胞の実験的肺転移を促進す る活性部位が存在することがわかっている6,7)。た だしラミニン 111 は胎生期に発現し成体にはほとん どみられない。成体の気道や消化管粘膜の基底膜に 豊富に存在し,癌に関連するのはラミニン 332 であ り,その構成鎖の一つがラミニンγ2 鎖である(図 2B)8) 1997年 に,マ ト リ ッ ク ス メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ (MMP)により切断されたラミニンγ2 鎖が強い細 胞遊走活性を示すことが報告された9)。またその前 後にはヒトの様々な癌におけるラミニンγ2 鎖の発 現が免疫組織化学的に検討され,ラミニンγ2 鎖は 癌の浸潤先進部位に発現し,その発現が強い癌は再 発や転移を生じ予後不良 で あ る こ と が 報 告 さ れ た10∼16)。そこでわれわれは,切除舌癌組織における ラミニンγ2 鎖の発現を免疫組織化学的に検討し, 臨床的経過との相関を調べた17,18)。舌癌におけるラ ミニンγ2 鎖の発現についてわれわれが注目してい るのが,発現の高低よりも発現のパターンである。 癌細胞同士が接着し胞巣を形成しながら増殖する場 合は,ラミニンγ2 鎖は胞巣辺縁細胞のみに発現し ており,これを辺縁性発現としている(図 3A)。一 (A) (B) 図 2 ラミニンの構造 A:ラミニンの基本構造はα 鎖,β 鎖,γ 鎖により形成される十字架構造である。 B:成体の気道,消化管粘膜の基底膜に主に存在するラミニン 332 はα3A 鎖,β3 鎖,γ2 鎖から 構成される。

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P=0.049 ⣼ ✚ ⏕ Ꮡ ⋡ 1 .8 .6 .4 .2 0 0 20 40 60 80 100 䠄᭶䠅 ㎶⦕ᛶⓎ⌧䠄19౛䠅 䜃䜎䜣ᛶⓎ⌧䠄11౛䠅 ほ ᐹ ᮇ 㛫 方,胞巣形成性の癌であっても浸潤先進部位では小 数の癌細胞が小胞巣を作り強く浸潤する場合があ り,その小胞巣のほぼすべての癌細胞にラミニンγ2 鎖が発現されている(図 3B)。さらには浸潤先進部 位で癌細胞間の接着が消失し,癌細胞が索状または 分散性に強く浸潤している場合があり,その際にも ほぼすべての癌細胞がラミニンγ2 鎖を発現してい る(図 3C)。そこで小胞巣または索状・分散性の強 い浸潤を示し,ほぼすべての癌細胞にラミニンγ2 鎖の発現がみられる場合をびまん性発現としてい る。舌癌の予後をこの 2 群間で比較した検討では, びまん性発現型の舌癌は辺縁性発現型の舌癌に比 べ,再発や転移を高率に生じ,有意に予後不良であ った(図 4)。すなわち,舌癌におけるラミニンγ2 鎖のびまん性発現は強い浸潤性と不良な予後に関与 し,高 悪 性 度 の マ ー カ ー と し て 有 用 と 考 え ら れ る18) 一方,舌癌の組織学的悪性度を HE 染色で評価す る方法としては分化度分類よりも,癌浸潤先進部位 における浸潤様式に基づく YK 分類が悪性度に関連 することが示されている19)。YK―1 型は境界明瞭で あり,YK―2・3 型と不明瞭になり浸潤性が強まる が,ここまでは癌細胞の接着が保たれており癌胞巣 が形成されている(図 5A)。YK―4C 型は浸潤先進 部位で小さな癌胞巣がみられ強い浸潤性を示すもの であり(図 5B),YK―4D 型は先進部位で癌細胞間 の接着が消失し,癌細胞が分散性の極めて強い浸潤 を示す状態である(図 5C)。これらをラミニンγ2 鎖の発現タイプと対比させると,YK―1∼3 型が辺 縁性発現であり,YK―4C・4D 型がびまん性発現に 相当する。したがって切除舌癌組織の HE 染色標本 の浸潤先進部位を検討し,YK 分類を行うことでラ ミニンγ2 鎖の発現が推測され,YK―4C と 4D 型は びまん性発現タイプの高悪性度群と推定することが できる。 Ⅲ. 血清中ラミニンγ2 鎖フラグメント 濃度の測定 切除舌癌組織の浸潤先進部位の YK 分類やラミニ ンγ2 鎖発現タイプ分類は悪性度評価に有用である が,切除後にしか判定できないという欠点がある。 悪性度,浸潤能を術前に評価し,浸潤能に応じた切 除範囲設定や治療方針の決定が可能であれば,clear marginを確保した切除につながり予後の改善に結 びつく可能性がある。浸潤能の術前診断としては画 像診断が指標の一つとなるが,腫瘍マーカーのよう A B C 図 3 舌癌におけるラミニンγ2 鎖の発現パターン A:癌細胞同士が接着し胞巣を形成しながら増殖する場合は,胞巣の辺縁細胞のみに(矢印)発現が みられる(辺縁性発現)。 B:浸潤先進部位において胞巣(矢印)から微小な小胞巣(矢頭)が強く浸潤する場合は,小胞巣の ほとんどの癌細胞に発現がみられる(びまん性発現)。 C:癌細胞間の接着性が消失し分散性,索状に浸潤する場合は,ほとんどの癌細胞に発現がみられる (びまん性発現)。 図 4 ラミニンγ2 鎖発現パターンによる舌癌の予後 びまん性発現型は辺縁性発現型に比べ有意に予後不 良である。

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Domain I/II

Domain III IV

V

MT1-MMP MMP-2MT1-MMP

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Domain III

Domain IV/V

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2㙐

に血液や尿による診断が可能であれば,実臨床では 極めて有用となる。 癌細胞で発現したラミニンγ2 鎖は MMP で切断 されフラグメントとなり20),血液中に運ばれること がわかっている(図 6)21)。そこでわれわれは頭頸部 癌患者を対象に,このフラグメントの血清中濃度を 測定し,びまん性発現型の血中濃度が亢進している かどうかを調べた。その結果として血清中濃度の正 常上限は 50ng/ml 程度であり,T 分類との相関は みられたが,発生部位,N 分類,病期分類には相関 がみられなかった。さらに最も期待していたラミニ ンγ2 鎖発現タイプによる濃度差はみられなかっ た22,23)。ラミニンγ2 鎖フラグメントの血清中濃度 は,おそらくラミニンγ2 鎖を発現する癌細胞の総 和を反映していると考えられるが,血清中濃度によ る悪性度判定は現状では困難と結論している。 Ⅳ. 当科における舌癌の治療方針 表 1 にわれわれの舌癌に対する治療方針を示して いる。舌切除の安全域は原則的に 1.5cm であり, 口内法切除は T1,2N0 と表在性の T3N0 症例で施行 し,予防的郭清は行わずに厳重に経過観察し,後発 頸部リンパ節転移が生じたら可能な限り早く頸部郭 清術等の治療を行う。また N+症例は T 分類にか かわらず全頸部郭清と pull through 法による舌切除 を行い,郭清組織とともに en bloc に切除すること を原則としている。一方,N0 であっても口腔底浸 潤が強く 1.5cm の切除安全域に顎舌骨筋が含まれ A B C 図 5 舌癌浸潤先進部位の YK 分類 A:浸潤先進部位の境界は不明瞭であるが,癌細胞が胞巣を形成している(YK―3)。 B:浸潤先進部位で微小な胞巣が強く浸潤している(YK―4C)。 C:浸潤先進部位で癌細胞間の接着性が消失し分散性,索状に強く浸潤している(YK―4D)。 図 6 MMP によるラミニンγ2 鎖の切断 ラミニンγ2 鎖は MMP(MMP―2 と MT1―MMP)により切断され,強い細胞遊走活性を示す。 われわれは頭頸部癌患者について,切断され血中に運ばれたフラグメント(ドメイン IV/V)の 血中濃度を測定した。

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る場合も,予防的頸部郭清を行って pull through 法 に よ る en bloc 切 除 を 行 っ て い る。T4 は pull through切除であり,下顎骨浸潤があれば下顎骨の 合併切除を行う。術前評価は視診,触診,頸部エコ ー,CT,MRI により行っているが,特に重視して いるのは MRI の軸位断に加えた冠状断,矢状断に よる癌浸潤の評価である。 また術後の組織学的評価で AF の有無を検討し追 加治療の方針を決めているが,われわれが独自に行 っているのは,病理診断レポートによるのではなく 術者が組織プレパラートを顕微鏡で観察して,浸潤 先進部位がラミニンγ2 鎖びまん性発現型に相当す る YK―4C・4D 型であれば,これを AF の一つとし て追加治療の指標としていることである。 Ⅴ. YK 分類による治療成績 2004年 7 月以降の当科における舌癌治療成績の 詳細な検討については別に報告する予定であるが, ここでは病期分類と YK 分類に基づいた現時点での 制御率と,非制御例の再発部位を表 2 に示す。制御 率は病期Ⅰ期:88%,Ⅱ期:78%,Ⅲ期:90%,Ⅳ 期:64% であった。注目すべきは,非制御例は YK― 3の 1 例(T1N0)を除いてすべて YK―4C または 4 Dであることである。さらには YK―4C については 23例中 7 例(30%)が非制御で 70% は制御できて いるが,YK―4D の 4 例は全例非制御であり,Ⅰ期 症例でも制御できていない。こうした非制御例の再 発の多くは副咽頭・下顎角部再発と遠隔転移(主に 肺転移)であった。すなわち当科における治療成績 の解析からも,先進部位で強い浸潤性を示す YK―4 C・4D 型は大きな予後不良因子であることがわか る。特に YK―4D 型は極めて予後不良であり,強い 悪性度を示す状態といえる。 Ⅵ. 副咽頭郭清における内側翼突筋切除術 ―予後改善へ向けて 当科における舌癌非制御例の主因は遠隔転移と副 咽頭・下顎角部再発であった。遠隔転移について は,現状では抗癌剤や分子標的薬などの薬剤治療 (化学療法)の発展に期待するしかないと言える。 副咽頭・下顎角部再発はいくつかの用語で報告され ている24∼30)が,いずれも頸動脈周囲の副咽頭間隙

4.N+症例は全頸部郭清+pull through 手術(en bloc 切除) 5.en bloc 切除後は遊離腹直筋または前腕皮弁で再建 6.術後病理で切除断端近接・陽性,節外浸潤等の AF があれば 術後化学放射線療法 7.浸潤先進部位がラミニンγ2 鎖びまん性発現型(YK―4C・4D 型)であれば 術後追加治療(化学療法または化学放射線療法) 表 2 当科における舌癌の YK 分類と予後

YK―1 YK―2 YK―3 YK―4C YK―4D 再発部位 Ⅰ期 制御 非制御 3 0 4 0 6 1 1 0 0 1 副咽頭(1),ルビエール(1) Ⅱ期 制御 非制御 0 0 1 0 8 0 5 3 0 1 副咽頭(2),肺転移(2) Ⅲ期 制御 非制御 0 0 0 0 4 0 5 1 0 0 副咽頭(1) Ⅳ期 制御 非制御 0 0 0 0 4 0 5 3 0 2 副咽頭(3),皮膚・肺転移(2)

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から下顎角裏面の領域にみられる再発であり,ここ では副咽頭・下顎角部再発とする。この再発は切除 範囲に含めることが可能な領域での再発であるが, 頸動脈浸潤などにより極めて制御困難な再発とされ ており,再発への対処よりも,いかにして再発を生 じさせないかが重要といえる。 当科における副咽頭・下顎角部再発例の画像を検 討したところ,図 7 のように内側翼突筋の表層に再 発が生じている状態が観察された。内側翼突筋は副 咽頭の外側下壁を構成しており,中咽頭癌の副咽頭 浸潤などでは確実な郭清のために内側翼突筋切除を 行うことが推奨されている31)。また微粒子活性炭を 用いたリンパ流の検討により,舌縁後部からは副咽 頭間隙前下部へ,前口蓋弓部からは副咽頭間隙外側 下部へのリンパ流があることが報告されている32) さらには自験例のうち,T4a 症例で術前 MRI にて 内側翼突筋周囲の異常陰影が疑われたため,扁桃摘 出・副咽頭郭清に加えて内側翼突筋切除を行った症 例があり,本症例では副咽頭再発がみられず制御で きた(図 8)。 以上のことからわれわれは,舌根部浸潤を伴う舌 癌で前口蓋弓に浸潤または近接している場合は,舌 切除術の際に従来から必要とされてきた扁桃摘出・ 副咽頭郭清に加えて内側翼突筋切除を行い,下顎角 部内側の軟部組織を徹底的に郭清することを提唱し ている33)。手技的には pull through 舌切除・扁桃摘 出・副咽頭郭清後に,頸部から内側翼突筋の下顎骨 内側の付着部を電気メスにより切離して軟部組織を 図 7 副咽頭・下顎角部再発の造影 CT 軸位断像 内側翼突筋表層に不整な再発腫瘍陰影がみられる (矢印)。

A:術前 MRI B:術後 MRI

図 8 副咽頭郭清・内側翼突筋切除術を施行した症例の術前後 MRI 画像

A:舌癌が舌根部に浸潤し,左内側翼突筋周囲に不整な陰影(矢印)が観察されたため,副咽頭 郭清に加えて内側翼突筋切除を行った。

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切除すればよく(図 9),時間的にも手技的にも特 に困難さはない。この術式により副咽頭・下顎角部 再発を抑制できるかどうかについては,現在までに 施行した症例の経過をみるとともに今後も症例を集 積し,検討したいと考えている。 Ⅶ. ま と め 1. 舌癌に対する標準的な初回治療は外科的切除 であり,その際には clear margin を確保した切除が 重要である。 2. Clear margin を確保するためには,舌癌先進 部の浸潤性を考慮する必要がある。 3. 舌癌浸潤先進部の評価にはラミニンγ2 鎖発 現の検討や YK 分類が有用である。 4. 浸潤先進部におけるラミニンγ2 鎖のびまん 性発現は YK―4C・4D 型に相当し,これらは強い浸 潤性と高い悪性度の指標となる。 5. 当科における舌癌 58 例中の非制御例 12 例は 1例 を 除 い て す べ て YK―4C・4D 型 で あ り,特 に YK―4D 型は早期癌を含めて全例非制御であった。 6. 舌癌浸潤先進部位におけるラミニンγ2 鎖び まん性発現や YK―4C・4D 型は大きな予後不良因子 (adverse features)であり,追加治療を検討する必 要がある。 7. 術前に浸潤先進部位を評価できる方法は,ラ ミニンγ2 鎖フラグメント血中濃度測定を含めて確 て,扁桃摘出・副咽頭郭清に加えて内側翼突筋切除 を行うことにより,副咽頭・下顎角部再発を防止し 予後の改善につながる可能性がある。 参 考 文 献 1) 治療:口腔癌(舌癌)頭頸部癌診療ガイドライ ン 2013 年版.日本頭頸部癌学会編:金原出版, 東京,2013,8―10.

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図 9 内側翼突筋切除 頸部郭清を行い,pull through 法により舌切除・扁桃 摘出・副咽頭郭清を行った後に,下顎角部内側の内側翼 突筋(矢印)の下顎骨付着部を電気メスにより切離し(矢 頭),下顎角部内側の軟部組織を全切除するように内側 翼突筋を切除する。

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図 8 副咽頭郭清・内側翼突筋切除術を施行した症例の術前後 MRI 画像

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