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Folia Endocrinologica Japonica Studies on the Treatment of Insulin Resistant Diabetes with Proteolytic Enzyme Shigeo KANEKO The 2nd Department of Inte

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(1)

Folia Endocrinologica

Japonica

607

Studies

on the

Treatment

of Insulin

Resistant

Diabetes

with

Proteolytic

Enzyme

Shigeo

KANEKO

The 2nd Department of Internal Medicine Kobe University School of Medicine,

Kobe, Japan (Director : Professor Shozo Tsuji, M.D.)

The insulin resistance in certain cases of diabetes seems to be related to many factors,

i.e., infection, humoral or hormonal antagonist and immunological inhibitors and so forth.

Therefore, the treatment of insulin resistant diabetes produces many clinical problems.

The author has discovered accidentally a marked therapeutic effect of

alpha-chymo-trypsin in the control of a case of insulin resistant diabetes with diabetic gangrene under

the anticipation of anti-inflammatory effect. Subsequently, a series of clinical and

labo-ratory investigations were made on the effect of a number of proteolytic enzymes (pronase,

bromelain and especially alpha-chymotrypsin) upon the diabetic patients with more or

less insulin resistance. Altogether 44 cases of various types of diabetics including 24 cases

of insulin resistant diabetes experienced the treatment.

The results of investigations are summarized as follows:

1) Clinically, among 44 diabetics a good effect of the treatment with proteolytic

enzyme was 7, fair on 11 and poor on 26, where "Good" means decrease of the urine and

blood sugar and improvement of the general condition, "Fair" means no marked change

in urine and blood sugar but marked improvement of the general condition and "Poor"

means no effect.

2) The favourable effect of proteolytic enzyme on diabetes was observed usually

3 to 4 days after the begining of treatment.

Oral and parenteral treatment were both

effective.

3) The most remarkable effect of this treatment on diabetes was observed in diabetes

mellitus with acromegaly.

And also some cases of diabetes having been treated with insulin

over a long period of time and cases with vascular or infectious complications responded

particularly well to this treatment.

4) No significant differences were observed on the function of the pituitary

adreno-cortical system between the effective and noneffective groups, when judged by the pattern

of serum ACTH-like activity and urinary steroids.

5) The levels of immunoreactive human growth hormone (HGH) and sulfation

factor (SF) in the serum from a case of diabetes with acromegaly were reduced parallel

with lowering of blood and urine sugar by this therapy.

6) The immunoreactive insulin (IRI) levels were higher in effective cases than in

noneffective cases. There were a few cases of which serum insulin-like activity (ILA) and

IRI levels increased after alpha-chymotrypsin treatment and this was particularly true

(2)

608 S. Kaneko

in a case of diabetes with acromegaly.

7) Pre- or co-exsistence of more or less insulin (exogenous or endogenous) in the blood

seemed to be one of the necessary conditions for the good effect of proteolytic enzymes,

because all these favourable cases were treated with insulin or had high levels of IRI.

8) Alpha-chymotrypsin itself, added directly to the incubation medium, increased

glucose uptake in rat diaphragm in vitro.

The optimal concentration of chymotrypsin

in vitro was 10'M.

9) In vitro treatment of 7 sera taken from insulin resistant diabetics with

alpha-chymo-trypsin brought about the promotion of ILA in terms of glucose uptake and lowering insulin

binding index (IBI) after Michel.

10)

The serum protein taken from a case responding favourably with insulin and

alpha-chymotrypsin for 10 days was fractionated by DEAE-Sephadex A- 50 liquid

chro-matography, and 4 fractions F1 to F., were obtained.

F1, F, and F., showed inhibitory

action upon glucose uptake of diaphragm and adipose tissue of rat, whereas F, did not.

After chymotrypsin treatment, there was glucose uptake in all fractions.

For comparison, a similar study was made on the same serum treated with

alpha-chymotrypsin in vitro under 25°C for 4 hours.

The most significant promoting effect

upon glucose uptake was seen on F1 (mainly containing gamma-globulin) particularly

on diaphragm.

However, upon the levels of IRI of all fractons, no noticeable effects after

the treatment of alpha-chymotrypsin were observed.

11) By intravenous injection of the serum from insulin resistant diabetes to the rat

after Armin's method, the blood sugar increased significantly as in the case of an injection

of anti-insulin serum (guinea pig). After treatment with alpha-chymotrypsin in vitro,

this serum did not show the hyperglycemic activity any more.

From the observations mentioned above, some of the proteolytic enzymes seemed to

act inhibitorily against the insulin antagonists and to have insulin-like effect itself

(3)

659

難治 性糖 尿病 の治療 に関す る研究

と く に イ ン ス リ ン抵 抗 性 糖 尿 病 の 蛋 白 分 解 酵 素 療 法 に 関 す る 臨 床 的 研 究

神戸大学医学部第二内科学教室(指 導

辻 昇三教授)

(昭和45年2月25日 受付)

治療 困 難 な イ ンス リン抵 抗 性糖 尿 病患 者 に その抵 抗 性 を除外 す る試 み の一 つ と して蛋 白分解 酵 素(主 と して α一chymotrypsin)を 投与 し,血 糖,尿 糖お よび全 身状 態 の 改善 され た症 例 を経 験 し,有 効 例 の 臨 床 的観 察 を行 なつ た.さ らに本 酵 素の 血 清 に対 す る直 接 的影 響 をinViVO,invitrOに お け る実 験 で 検 索 し,本 酵素 が イ ンス リン阻害 因 子 を抑制,除 去 す る一 方 イ ンス リン作 用 と類 似 また は協 調 す る作用 の あ るこ とを示唆 す る成 績 を えた. そ の1.臨 床 的 観 察 1い と ぐ ち 難治 性糖 尿 病 とい う意 味 は 色 々に解 釈 されて い るが,端 的 に予 後 の重 大 な 点か らい えぱ,直 接死 に到 る難 治性 の 合併 症,例 えば糖 尿病 性 腎 症,脳 梗塞 症 等 のた め に死 亡 す る重症 例 と,糖 尿病 性昏 睡 をお こした症 例 は最 も難 治 とい えよ う.し か しなが ら,こ れ らの症 例 で は治 療の 過 誤,患 者 管 理 の不 十 分 な こ と も多 い の で 傾 ちに難 治 性 として特 徴 づ け る こ と も出来 ない.次 に 糖尿 病 の治 療面 か ら難 治 性糖 尿 病,す な わ ち治療 の原 則 で あ る食事 療 法,イ ン ス リン療 法,内 服 薬療 法,運 動及 び 生活 規 制等 によ つ て もなお コ ン トロー ル出来 難 い糖 尿病 を難 治 性 とす る場 合 が あ る.中 で もイン ス リン抵 抗性 糖尿 病 は,糖 尿 病患 者 の イ ン ス リン治療 を行 な うに あた つ て最 も困 難 を感 じる問 題 の1つ で あ る.ま た,イ ン ス リン抵 抗 性 糖尿 病 に対 す る定 義 に は多 く の末解 決の 問題 が 含 まれ て い る. 先 ず1929年R。o量1)は 膵全 別 犬(体 重15∼16ポ ン ド)の イ ンス リン1日 必 要量(20∼30単 位)か ら計 算 し, 体 重150ポ ン ドの 人間 で は膵 全 別 に際 し,2oO単 位 の イ ンス リン を要 す る もの と した.こ れ に基 づ いてM・rtin2) は 糖尿 病 性のketoacidosis,感 染症 な どの合 併 症,さ らに は内 分 泌的 異常 が な くて1日200単 位 以 上 の イ ンス リンを要 す る状態 が48時 間以上 続 く もの をイ ンス リン抵 抗 性糖 尿 病 と定 義 してお り,1965年WHOの 用語 委 員会 にお いて も200単位 を規 準 として報 告 してい る. しか しなが ら,こ の 値 は大 巾 に修正 され な けれ ばな らな くな つ てい る.人 の膵 全 別 によ るイ ンス リン必 要 量 は4o∼50単 位 程 度 で あ る ことが 判 明 して きたか らで あ る3)4). した が つて この考 えか らみ れば50単 位 以 上の イ ンス リンを要 す る もの は何 らか の イ ン ス リン抵 抗性 を もつ て い る と考 えて よ い こ とにな る.Field5)ら は60∼80単 位 を もつ て イ ンス リン 抵 抗 性 とみて い るし,ま た平 田6)は1日100単 位 以 上 を もつ て イ ンス リン抵 抗 性 と し,日 木 人 に もこれ を基 準 とす るの が妥 当 と 述 べ て い る.著 者 らは 日本人 の 糖尿 病 にお い て は30∼40単 位以 上 の イ ンス リン を要 し,し か も臨 床 的 に食事 療 法,運 動 等 の生 活規 制 を充 分 に行 な う もなお コン トロールが 困 難 な場 合,と くに イ ンス リン投 与量 が 平 均60単 位以 上 を要 した場 合 を広 い 意 味で の イ ンス リン抵抗 性 糖尿 病 と した 方 が よい ので は ない か と考 えてい る. た とえ血 中 イ ンス リンの正 確 な1日 分 泌 量 を測 定 し えた と して も,分 泌 された イ ンス リンが す べ て合 目的 第46巻 第6号

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660 難 治 性糖 尿 病 の治 療 に 関す る研 究(金 子) 的 に有 効 に利 用 されて い るか ど うか わか らない.生 体 調節 機 構 の維 持 に有 効 に働 い て い る活 性 イ ンス リンの ほか に血 中蛋 白等 に結 合 した非 活 性 イン ス リン も存 在 す るた め治療 量 と しての 基 準量 を正 確 に表 現 出来 ぬ の は 当然 で あ ろ う. 一 方,イ ンス リン抵 抗性 の 本 態 は単 一 で は な く個 々の症 例 によつ て その発 現 の 要 因 は多 種 多様 で あ り,イ ン ス リン治 療 中 に 出現 して くる慢性 イ ンス リ ン抵 抗性 糖 尿病 もあれ ば,未 治療 の糖 尿 病患 者 で もketoacid-osisに お ちい った際 は イ ンス リンに抵 抗 し,大 量 の イ ンス リン注 射 を必 要 とす る もの が あ る. Pfe;ffer7)はイ ンス リン抵抗 性 の 定 義 を広 い意 味に と り,イ ンス リン抗体以外 にインスリン拮抗物質,ま た は イ ン ス リン作 用 抑制 因 子 に よつ て 惹起 され る もの で あ る とし,前 者 は高 血 糖 を もた ら し,主 と して イ ン ス リン拮 抗 性 ホ ル モ ン,す な わ ち脳 下 垂体,副 腎髄 質,皮 質,甲 状腺 ホ ル モ ン等 で あ り,後 者は血清申に含 まれ る蛋 白性 抑 制 因子 や 脂質 代 謝 産 物 な どで あ り,こ れ らが全 て外 因 性,内 因 性 イ ン ス リ ンの 作用 を低下 さ せ る と して い る. その ほか 感 染症 な どの 合併 症 と,昏 睡 な どに よ る急性 の イ ンス リン抵 抗 性,い わゆ る慢 性 イ ンス リン抵抗 性 糖 尿病 が あ るが,D・weke8)ら は イ ンス リン 抵抗 性 をイ ン ス リン作 用 の 低下 した 広義 の イ ンス リン抵抗 性 と狭義 の慢 性 イ ンス リン抵 抗 性 の2つ に大 別 してい る. しか し,こ の慢 性 イ ンス リン抵抗 性 糖 尿 病 は 日本 人糖 尿 病症 例 と しては 少 な く,欧 米 の ご と く数 百 か ら数 千 単位 の イ ンス リン を必 要 と した例 は きわ め て稀 で あ る.わ れわ れ は単 に抵抗 性 を生 じたか らといつ て投 与 量 を増 加 す るの みで は 本態 的 に問題 を解 決 す る もの で はな く,賢 明 な策 とはい い難 い と考 えて い る.著 者 ら は た また ま教 室 入 院糖 尿 病 性脱 疽 症 に抗炎 症 性 治療 として用 い た蛋 白分 解 酵素 が 糖 尿 病 本来 の 病像 に著 しい 好転 を もた らし,且 著 し くイ ン ス リン抵 抗 性 を弱 め た経 験か ら出発 して,前 述 した よ うに広義 の イ ンス リン 抵 抗 性 糖 尿病 に対 して,そ の抵 抗 性 を除外 す る対策 の1つ として蛋 白分 解酵 素 を使 用 し,血 糖,尿 糖 及 び全 身症 状 が 急激 に改 善 された 症 例 を経 験 し,症 例 を追 試 し,有 効例 につ い て の特 性 を観 察 し,作 用 機 序 につ い て若 干 の臨 床 的 検 討 を加 え,蛋 自分 解 酵 素療 法 の 可能 性 を確 め えた ので 報 告す る. H.臨 床 的 研 究 方 法 1.対 象: 前 述 した ご と く・ イ ンス リン を必 要 と し,さ らに 臨床 的 に食 事 療法,運 動 等 の生 活 規 制 を充 分 行 な う も, なお コ ン トロ ールが 困 難 な場 合 を広 い意 味 で の イ ンス リン抵抗 性 糖 尿 病 と定 義 し,か か る症 例24例 を含 む各 種 病型 の糖 尿 病 患者44例 に対 し蛋 白分解 酵 素 療 法 を行 な つた. 2.蛋 白分 解酵 素 の 種 類,投 与 法:

蛋 白分 解 酵 素 と しては α一chymotrypsinを 主 とし て使 用 し,少 数 例 にpronase,あ るい はbromelainを 使用 した. α・chymotrypsin:1日25CH・U(キ モ トリプ シ ン単 位,エ ー ザ イ)1回 筋注 ,ま たは 口腔錠 としては 1日100CH・Uを4回 に 分 け て投 与 し,腸 溶 錠 として は1日30oCH.U.を3回 に分 け て経 口投 与 した . pronasc:1日22.5mgを3分 し経 口投 与 した. bromela董n:1日200∼400mgを4分 し経 口投 与 した . 3.観 察 方法 と検 査項 目: 蛋 白分 解酵 素 の 投与 に際 して は その 効 果 判定 が可 能 とな る迄 は 既往 の 食事 療 法,イ ンス リン量,経 口糖 尿 病 剤 その 他投 与 薬 剤 量 は変 更 せ ず一 定 と し,投 与 前,投 与 期 間申,投 与 中 止後 の 血 糖,尿 申 アセ トン,自 覚 症状,一 般 状 態等 を注 意深 く観 察 し,更 に 合併 症,特 に イ ンス リン抵 抗 性 の 要 因 をな してい る もの と思 われ る合 併 症 に対 して は特 に経 過 を観 察 した.ま た,副 作 用 の発 現 に も注 意 をは らい,投 与 の 継 続 中止 を決 定 し た.有 効 例 に関 して は その 効 果発 現 時,イ ンス リン節 約 量 な ど を観察 す る と同時 にそ の代 謝 内分 泌 機 能 の背 景1こつ いて も検 討 を加 えた. 効 果 の 判 定 は明 らか に血 糖,尿 糖 の低 下 をみ,合 併 症 その 他 の臨 床 症 状 の改 善 され た症 例 を著 効(good) 第46巻 第6号

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 661

と し ・ 血 糖 ・ 尿 糖 が あ る程 度 改 善 さ れ るか,あ る い は 特 に 著 明 な 変 化 を み な くて も何 らか の 臨 床 的 改 善 の み ら れ た 症 例 を 有 効(fair)と し,何 ら変 化 を み な か つ た 場 合 を 無 効(poor)と し た.

血 申immunoreactiveinsulin(以 下IRIと 略 す),insulin-1ikeactivity(以 下ILAと 略 す)を 各 時 期 に お い て 測 定 し,特 に 末 端 肥 大 症 を 合 併 し た 糖 尿 病 に 対 し て はimmunoreactivehumangrowthhormone

(以 下HGHと 略 す)及 び血 清sulfationfoctor活 性 値 を 測 定 し た.

そ の 他 血 申ACTH-likeactivity,血 中11-OHCS,尿 申17-OHCS,17。KS等 を 測 定 し た.

ブ ドウ 糖 負 荷 試 験(GTT),イ ン ス リ ン 感 受 姓 試 験(ITT)1日 血 糖 ニ ボ ウ の 測 定 等 を 必 要 に 応 じ て 施 行 し た.

血 糖 はautoanalyzerに よ るHoffman法 に よ つ て 測 定 し,尿 糖 定 量 はHaines一 片 山 変 法 に よ つ て 測 定 し た.

GTTは509ブ ド ウ 糖1重,あ る い は2重 経 口 負 荷 に よ つ て 行 な い,ITTは レ ギ ュ ラ ー ・イ ン ス リ ン10 単 位 を 皮 下 注 射 し,1時 間 毎 に6時 間 採 血 し 血 糖 降 下 率 を 観 察 し た .

血 中ACTH。likeactiv圭tyは 教 室 安 井9)の 開 発 せ る方 法 で 測 定 し た .

血 中11-OHCSはDe《 《oor10)の 硫 酸 螢 光 比 色 法 に よ り,尿 中17-OHCSはPorter-Silber一 熊 谷 変 法, 17-KSはZimmerman一 三 宅 変 法 に よ つ て 測 定 し た.

血 中IRIは 教 室 小 川11)ら に よ るanion-exchangeresinを 使 用 せ るinsulinradioimmunoassay法1こ て 測 定 し ・ILAは 島 津12)ら に よ る ラ ッ ト横 隔 膜4分 割 法 及 び 媛 松13)ら に よ る ラ ッ ト副 睾 丸 脂 肪 法 に よ つ て そ れ ぞ れ 測 定 し た. HGHの 測 定 法 と し て はSchalch,P・rkerの 方 法 に 準 じ た 二 抗 体 法 を 用 い た ・4). 血 清sulfationfactor活 性 値 はDaughaday,Almqvist法 の 藤 沢 変 法 に よ つ た15) . 皿.臨 床 成 績 1.代 表 的 症 例: 蛋 白分 解 酵 素 療 法 を 行 な つ た 症 例 の う ち 特 に 代 表 的 な 有 効4症 例 に つ い て 記 載 す る . 症 例1.33才,未 婚,会 社 員(患 者 番 号No.1) 24才 の 時,糖 尿 病 を 発 見 さ れ,以 後 イ ン ス リ ン と ス ル フ ォ ニ ル 尿 素 剤 投 与 に よ る 治 療 を 受 け た .イ ン ス リ ン は 間 漱 的 に 投 与 さ れ,Chlorpropamideの み 本 院 へ 入 院 す る ま で 継 続 投 与 さ れ て い た. 入 院4ケ 月 前 左 第3趾 指 に 併 発 し た 糖 尿 病 性 脱 疽 の 切 断 手 術 を 受 け た が 手 術 創 の 治 癒 傾 向 は 不 良 で あ り , 糖 尿 病 の コ ン ト ロ ー ル 状 態 も悪 化 し入 院 治 療 を 行 な う こ と に な つ た. 患 者 は 身 長 や や 低 く,軽 度 肥 満 傾 向 に あ り,GTTで は 中 等 度 の 血 糖 曲 線 を 示 し た . レ ギ ュ ラ ー イ ン ス リ ン を1日30単 位 使 用 し,尿 糖 は か な り減 少 した. 入 院 後40日 目 に 感 冒 に 罹 患 し,尿 糖 排 泄 量 が 再 び 増 加 し た の で ラ ピ タ ー ドイ ン ス リ ン35単 位 に 切 換 えた が な お 効 果 は 不 良 で あ つ た.こ こ に お い て,α 。chymotrypsin25ch単 位 を イ ン ス リ ン 投 与 と 平 行 し て 毎 日 筋 注 し た と こ ろ ・3・4日 目 頃 よ り血 糖,尿 糖 が 速 に 減 少 し,尿 中 ア セ ト ン も 消 失 し た .そ の 後2回 に わ た つ て 空 腹 時 血 糖 が 上 昇 す る た び に 本 酵 素25ch単 位 筋 注,あ る い は 口 腔 錠100ch単 位 を1回25ch単 位 づ っ 4回 に 分 け て 投 与 し た が い ず れ の 場 合 も良 好 な 結 果 が 得 られ た . Fig.1に そ の 経 過 な ら び に 治 療 効 果 を示 す. 症 例2.男,44才,既 婚,電 車 車 掌,(患 者 番 号No.14) 体 格 は 大 き い が 栄 養 は や や 衰 え,四 肢 は 軽 度 未 端 肥 大 症 様 の 印 象 を もつ 糖 尿 病 で あ る.22才,第 二 次 大 戦 中 に マ ラ リ ヤ に 罹 患 し,28才 で 初 め て 糖 尿 病 を 発 見 さ れ た .そ れ 以 後 イ ン ス リ ン 治 療 を 受 け た がbrittle型 糖 尿 病 の 経 過 を と り,低 血 糖 と マ ラ リ ヤ 発 作 を 交 互 に く り返 し た.43才,四 肢 の 冷 感,終 痛 と共 に 特 発 性 脱 疽 が 両 足 第1,2趾 指 に 出 現 した.種 々 の 処 置 が 脱 疽 に 対 し て 行 な わ れ た が 軽 快 せ ず,空 腹 時 血 糖 は 常 に 200mg/dlを こ え て お り,治 療 は 困 難 を き わ め た . 第46巻 第6号

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662 難 治性 糖 尿 病 の 治療 に関 す る 研究(金 子) Fig.1

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 663 そ こでFig・2に 示 す よ う に α一chymotrypsyn25ch単 位 を イ ン ス リ ン と 併 用 し て 筋 注 した と こ ろ,そ の 効 果 は 顕 著 で 脱 疽 は 軽 快 に 向 い,捧 痛 も軽 減 し,そ の 上 尿 糖 が 消 失 し た の で,pronase22.5mg経 口投 与 に 切 換 え た が 再 び 増 悪 の 傾 向 が 現 わ れ た の で ま た もや α一chymotrypsinに 変 更 した.そ の 後 し ば ら くの 間 brittle型 の 血 糖 の 動 揺 を 示 し た 後,レ ン テ イ ン ス リ ン20単 位 とGlycodiazinelOoOmgで コ ン トロ ー ル さ れ,α 一chymotrypsin中 止 後 も良 好 な コ ン ト ロ ー ル 状 態 が 続 い た. そ の 後 約1年 経 過 し て 再 び 血 糖 が 上 昇 し て きた の でFig・3の 如 く前 年 同 様 イ ン ス リ ン 投 与 と 平 行 し て α一chymotrypsin療 法 を 行 な つ た.投 与 開 始 後 短 期 間 の み や や 有 効 の よ う に 見 え た が 間 も な く糖 尿 病 の コ ン トロ ー ル に 関 し て は 無 効 とな つ た.そ こ でpronase22.5mgを 経 口投 与 し た と こ ろ,血 糖 の 低 下 と共 に尿 糖 が 減 少 し た.再 び α。chymotrypsinに 変 更 し た と こ ろ,良 好 な コ ン ト ロ ー ル 状 態 が 持 続 し た.こ れ ら の 経 過 中 有 効 ま た は 無 効 時 の1日 血 糖 ニ ボ ウ を 検 索 した が,有 効 時 はFig.3に 示 す よ う に 明 らか に 血 糖 値 は 低 下 し て い る こ と を 知 つ た. 症 例3,男,37才,既 婚,会 社 員,(患 者 番 号No.9) 典 型 的 な 未 端 肥 大 症 を 合 併 し た 糖 尿 病 で あ る.1965年1月,1ケ 月 の 間 に4kg体 重 減 少 を きた し て 入 院 し て きた,Fig.4に 示 す よ う に,空 腹 時 血 糖 は300mg/dlを 越 え,尿 糖 排 泄 量 は60∼90g/dayで あ っ た. ITTで は イ ン ス リ ン に 敏 感 で あ つ た の で 直 ち に レ ギ ュ ラ ー ・ イ ン ス リ ン1o単 位 毎 食 前,計30単 位 の 投 与 が 開 始 され た が,何 ら効 果 な く,次 い で レ ン テ.イ ン ス リ ン50単 位,ラ ビ タ ー ド ・イ ン ス リ ン40単 位,ま た は レギ ュ ラ ー.イ ン ス リ ン30∼40単 位 とGlycodiazine1500mgを 併 用 す る も治 療 効 果 は 全 くあ らわ れ な か つ た. GTTとITTが 再 検 さ れ イ ン ス リ ン 抵 抗 性 の 発 現 が 認 め られ た.そ こ で α一chymotrypsi11を1日1回 筋 注 した と こ ろ,血 糖,尿 糖 の 著 明 な 減 少 を み た.次 い で25ch単 位 の 口 腔 錠 を1日4回 投 与 に 切 換 えて み Fig.3 第46巻 第6号

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664 難 治 性 糖 尿病 の 治療 に関 す る研 究(金 子) た が,同 様 の状 態 を持 続 して尿 糖 は殆 ど消 失 し,時 に は 低血 糖 症 状 さ え示 す に 至 つた.そ こで イ ンス リ ン を中 止 したが,そ の 後 もな お糖 尿 病 状 態 は 良好 に コ ン トロー ル され た.退 院 後 は4009の 糖質 摂取 で 食事 療 法 を行 な うの み で イ ンス リン を投 与 せ ず 日常 業 務 に従 事 す る こ とが 出来 た.各 治 療 時 期 の1日 血 糖 ニ ボ ウの 変 化 をFig.5に 示 す が イ ンス リン と α一chymotrypsinを 併 用 し てい る時 期 に お い て著 明 に血 糖 レベル が 改善 され て い た. また,本 酵素 投与 前 後 のGTTに よ る耐 糖 能 が 大 巾 に改 善 され て い る こ とが 明 らか とな つた. 症 例4,男,34才,既 婚,ク リーニ ング業,(患 者 番 号No.17) 本 症 例 も末 端肥 大 症 を合 併 した糖 尿 病 で,頭 部 レ 線 像 で は トル コ鞍 の 著 明 な 拡大 破 壊像 を認 め,血 申 ILA,IRI共 に高 値 で あつ た.ITTに よ る血 糖 降 下 率 は 一一26%で イ ン ス リン抵 抗 性が 認 め られ た.レ ギ ュ ラー ・イ ン ス リン30単 位 を食 事 療 法 と併 用 した が 効 果 な く,さ らに α。cymotrypsin25ch単 位 筋 注 を行 なつ た と こ ろ,投 与4日 目 頃 よ り急 激 な血 糖 降下 と尿 糖 の消 失 をみ た.(Fig.6) 酵 素 療 法 を中 止 し,レ ンテ イ ン ス リン20単 位 に切 Fig.4 Fig.5 第46巻 第6号

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 665 換 え て退 院 した が血 糖 値 は全 く正 常 で 低血 糖症 状 もあ り,つ い に イ ンス リンを も中 止 した が ・尿 糖 は全 く陰 性 で あ つた. 注 目す べ きは 全 経 過 を通 じて血 中HGHとsulfationfactor活 性値 を測 定 した が 蛋 白 分解 酵 素療 法 に よ る血 糖,尿 糖 の 低 下 と平 行 して そ の レベ ルが 低 下 した.ま たGTTに よ る耐糖 能 も治 療 後 は 著 明 な改 善 を 示 した. 2.有 効 症 例 の特 徴: 著 者 の経 験 した44例 の 糖 尿病 患者 に おい て 蛋 白分 解 酵 素 療 法 の 有 効 例 は 奮ood7例,fair11例 で あつ た (TablelTable2). 有 効 例 の 中 で も特 に末 端 肥 大 症 を合 併 した糖 尿 病,ま た は長 期 イ ンス リン治 療 を受 けて きた糖 尿 病 で イ ン ス リンに 対 し抵 抗 性 を示 し は じめ,比 較 的早 期 に本 療 法 を行 な つ た もの,及 び血 管 障 害,感 染 症 な ど を合 併 した症 例 等 が 多 く含 ま れて いた. 各 種 経 口糖 尿 病 剤 が単 独,あ るい は イ ン ス リン と併 用 し て投 与 され て い る.し か し本 酵 素療 法 に よ る有 効 例 の全 て が イ ン ス リン治 療 と平 行 して 行 な わ れ て い る事 実 は注 目す べ き点 で あ る.さ らに 有効18例 中17例 ま で が イ ン ス リン治療 に抵 抗 し コン トロー ル困 難 な イ ンス リ ン抵 抗 性 糖 尿 病 で あ つ た. 比 較 的有 効(fair)の 症 例 中 に は,血 糖,尿 糖 に は さ して 変化 を示 さなか つ たが,自 覚 症 状,一 般 的 身体 状 況 が蛋 白分 解 酵 素 投 与 申 改 善 され,投 薬 中止 後 再 び悪 化 をみ た症 例 もあつ た.そ の 他amenorrheaが 続 い た症 例(No.24)に お い て は投 与 後2週 間 目に 月 経 をみ,全 身 状 態 も著 明 に 改善 された 例 す らあつ た. 蛋 白分解 酵 素 投 与 に よ り,併 用 した イ ン ス リン必 要量 が どの程 度 減 少 す る こ とが 出 来た か を観 察 した が ・ goodと 判 定 され た症 例 中2例 をの ぞ き,い ず れ も10∼40単 位 に 及 ぶ イ ンス リン必 要 量 の 減 少 を みた.残 る 2例(No.25,No.43)に お い て は減 量 は 出来 な か つ たが 血 糖,尿 糖 は 明 らか に減 少 し,時 に は 低血 糖 症状 もあ らわ れ た. 本 酵 素 療 法 の 効 果が 投 与 中 止 後 もな お一 定 期 間持 続 した 症 例 が8例 み と め られ た. これ に対 し残 る10例 は投 与 中 止 後 比較 的短 期 間 に血 糖 レベ ル,尿 糖,そ の 他 一 般 的 身体 状 況 が 投 与 前 の 状 Fig.6 第46巻 第6号

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666 難 治性 糖 尿 病 の 治療 に 関す る研究(金 子) .N .。 Z 碧 台 口 国 り 哨卦 § 。 占 ﹄ り 写 吻 3 ヨ 。 Σ § 。 慧 唱o も ρ 8 § $ ﹄ 卜 .N 。 コ 第46巻 第6号

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 667

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668 難 治 性 糖尿 病 の治 療 に 関 す る研 究(金 子) 態 に もどつ た.主 として血 糖,尿 糖 に及 ぼ す 蛋 白分 解 酵 素 の 効 果 発 現 時期 は,大 体 にお い て入 院 患 者 にお け る観 察 で は投 与 開始 後3∼4日 目か らみ とめ られ,1∼2週 間程 度 で何 らか の 効 果 の 認 め られ な い時 は 無 効 の よ うで あ つた.但 し外 来 患 者 に対 して は,正 確 な効 果 発 現 時 期 を確 実 に観 察 す る こ とは 困難 で あつ た が, 上 記 の観 察 と大 な る差 は な き もの と考 え る. な お,ご く稀 にで は あ るが 蛋 白分 解酵 素投 与 中軽 度 の 発 疹,か ゆ み,不 快 感,あ るい は軽 度 の 出血 傾 向 を 認 め た例 が あつ た 他 は,特 記 す べ き副 作用 は み られ な か つ た. 最 も特 徴 的 な傾 向 と して末 端 肥 大 症 を合 併 した症 例6例 中good3例,fair2計5例 とい う成 績 で,治 療 後 のGTT1日 血 糖 ニ ボ ウ な どが 改善 され てい た こ とか ら,本 療 法 が 内分 泌 機 能 上如 何 な る意 義 を有 す るか を吟 味す べ く,2,3の 検 討 を行 なつ た. す な わ ち,α 。chymotrypsinを 投 与 し た症 例 にお い て,ACTH-1ikeactivity,血 中1猶DHCS尿 中17-OHCS,17-KSを 測 定 し下 垂体 一 副 腎皮 質 系 機 能 を観 察 したが,有 効 例,無 効 例 にお い て両 者 の 間 に特 に 認 むべ き差 異 は み られ な か つ た(Fig.7). しか し血 中HGHは,先 に示 し た代 表 的 症 例 の うちNo.17の 末 端 肥 大 症 を合 併 した糖 尿 病 にお い て は血 糖,尿 糖 の 低下 と共 に著 明 に低 下 し,血 中sulfationfactor活 性 値 もこれ に平 行 し て減 少 した.そ の 後症 例 を追 加 し,治 療 経 過 と血 申HGH,sulfationfactor活 性 値 の 推 移 をみ た が,血 糖 値 の低 下 と共 に そ の レ ベ ル は低 下 し,明 らか に相 関 を示 した こ とは注 目 され る.(詳 細 につ い て は 協 同研 究 者 に よつ て 後 刻 報 告 さ れ る予 定 で あ る.) 空腹 時 血 中IRIは 有 効 例 の方 が無 効 例 に比 して 明 らか に高 い こ とが 示 され た(Fig・8).ILAに つ い て は 特 に有 意 の 差 は認 め られ なか つ た. Fig.7 第46巻 第6弔 号

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 669 IV考 按 イ ンス リ ン抵 抗 性 糖 尿 病 は従 来 よ りなか な か コ ン トロー ル し難 い 疾 患 で そ の治 療 対 策 に苦 慮 す る こ とが 多 い.要 因 と考 え られ るhorm・nalfactor,immunologicfactorを 含 む 多 くの 未 知 の 要 素 を検 索 し,こ の anti-inSulinfaCtorを 除 去 し,イ ンス リン作 用 を増 強 せ しめ ん とし て多 くの 試 みが な され て きた. 現 在迄 に主 と して 問 題 と され 各種 対 策 の 目標 とさ れ て きた もの は慢 性 イ ン ス リン抵抗 性 糖 尿 病 で あ り,イ ン ス リン治 療 中 に発 現 して く る この疾 患 は 日本人 糖 尿 病 症 例 と して は む し ろ稀 で あ るが,本 邦 で は 村 上i6), 平 田6)他わ ず か の報 告 例 が あ るに す ぎな い.し か も欧 米 に み られ るeと く,数 百 か ら数 千 単 位 の イ ン ス リン を必 要 とす る よ うな 例 は きわ め て少 な く,治 療 によ つ て 大 量 の イ ンス リン投 与量 を 減ず る ことが 出 来 た症 例 もま れ で あ る.慢 性 イ ンス リン抵 抗 性 糖 尿 病 の原 因 と して は種 々論 ぜ られ て きた もの の,な お 今 日の 知識 を もつ て して は不 明 の 点 が 多 い.多 くの 場 合 イ ン ス リン治療 を 中断 す るか,間 漱 的投 与 に よつ て起 る症 例 が 多 い.そ の抵 抗 性 発 現 機 序 として 抗 体産 生が 最 も重 要 視 され て い るが,そ の ほか 注 射 部位 で の 中和 破 壊 な ど も 考 え られ,insulin-li3iの 吸収 率 で 抵 抗 性 の 何無 を 調べ る 報告 が あ る;7)18).更 に肝insulinasc活 性 増 加 説 もあ り,ま た,Fieldら は末 梢 に お け るinsulinsensitivityの 低 一Fを原 因 の1つ として い る5)19). そ の 他,慢 性 イ ン ス リン抵 抗 性糖 尿 病 患 者 血 清 中 に イ ンス リン中 和 物 質 が 存 在 す る とい う報 告 や20),か か る拮 抗 物 質 が γ。globulinfraction中 に 認 め られ る とい う報 告 な どが あ る21). Bers。n&Y・1。w4)は イ ンス リン治 療 後1∼3ケ 月 で 全 例 の 糖 尿 病 患者 に結 合 抗 体 の 存 在 を証 明 して い る. これ らの 抗体 は大 部 分 が 外 来 性 す なわ ち,ウ シ,ブ タ な どの イ ンス リンに対 す る もの で あ り,内 因 性 の ヒ ト ィ ン ス リン との影 響 は な い もの と され て い る.い ず れ にせ よ 抗 体 は大 きな要 因 を もつ もの で あ り,イ ン ス リ ン必 要 量 の 減 少 が抗 体 価 の減 少 に伴 つ て 観 察 され る こ とが しめ され て い る. さ らにBers。nら は イ ン ス リン抵 抗 性 糖 尿 病 の 患者 の イ ン ス リン結 合 力価 が50u/lな の に対 して 非 抵抗 性 患 者 で は20u/1で あ る こ とを認 め て い る22). Fig.8 第46巻 第6号

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670 難 治 性糖 尿 病 の 治 療 に 関す る研 究(金 子) これ に対 す る治療 法 もや は り抗 体 を念頭 に お いた もの が 多 い.例 えば イ ンス リン大 量 投 与,使 用 イ ンス リ ンの提 供 種 族 あ るい は投 与 法 の 変 更,あ るい は イ ン ス リンを化 学 的 に 種 々 の方 法 で処 理 し,分 子量 を変 え, 化 学 的,免 疫 学 的 な特 性 を変 えて 抗体 に対 す る親 和 性 を 減 じ,antigeneticactionを 減 少 せ しめ る方 法 な ど が 報 告 され23),さ らに イ ンス リン を静 注 す る こ とに よ り抵抗 性 が 除 去 され る こ とが あ り,し か も静 注 した レ ギ ュ ラ ー ・イ ンス リンは持 続 型 イ ン ス リン と同様 な 効 果 を みせ た とい う報 告 もあ る8).ま た 経 口糖 尿 病 剤 併 用 に よつ て イ ンス リン量 の 減 少 をみ る場 合 もあ る.他 にDBI,phenforminな どが 使 用 され 有 妨 で あ つ た と す る報 告 もあ るが,各 薬 剤 の 作 用 機 序 とイ ンス リ ン抗 体 に対 す る作 用 との 関 係 は な お明 確 に しが た い と考 え られ て い る. しか し最 も広 く応 用 され,抗 体 産 生 に 関 与 す る と考 え られ る治療 法 と して は,1951年How・rd24)が 初 め て 行 な つ た.steroid,ACTH療 法 で あ る.一一般 に糖尿 病 に対 して 禁 忌 と され て い るsteroidも 大 量 投 与 に よ つ て 抵 抗 性 を減 弱 せ しめ る と され,以 来 数 多 くの 症 例,特 に抗 体 の 証 明 され た症 例 に応 用 され て 来 た.本 邦 で も村 上16),平 田6)ら に よ りイ ン ス リン抵 抗 性 糖尿 病 に対 して,steroid治 療 の 有 効 例 が 報 告 され て い る. またnitrogenmustard,BAL,α 一methylDopa,6MPな ど も抗 体 生 成 を抑 制 し,有 効 で あ る とい わ れ,少 数 例 な が ら試 み られ て い る. その他 の要 因 として 合 併 症,例 えば感 染,末 端 肥 大 症 な どに よつ て 生 じた イ ンス リン抵 抗 性 に対 して は各 々 原 因 に対 す る対 策 が と られ て きた.特 に末 端 肥 大 症 な ど に は,下 垂 体切 除法,コ バ ル ト照 射 療 法,同 位 元 素 の下 垂体 注 入,cryohypophysectomyな どが 行 な わ れ てい る. 著 者 の対 象 と した イ ン ス リン抵 抗 性 糖 尿 病 は すで に述べ た よ うに感 染,ス トレス,代 謝 性 あ るい は ホ ル モ ン性 拮 抗 物 質,免 疫 抗体 を含 む広 義 の イ ンス リン抵 抗 性 で あ り,し か も日本 人糖 尿 病 にお け る常 識 的 な使 用 量 で あ る3o∼4σ単位 以 上,(平 均60単 位 以 上),を 使 用 し,な お コン トロー ル不 能 の場 合 を意 味 す る.わ れ わ れ は これ に対 して い たず らに イ ンス リン墨 を増 量 す るの みで は長 期 治 療 に は不 適 合 で あ り,突 発 的 な イ ンス リン作 用 の作 動 に よ る低 血 糖 の 危 険 もあ るの で,そ の前 に何 らか の 対 策 を と るべ きだ と考 えて い る. 以 上 の理 由 を含 めて,わ れ わ れが その 効 果 を認 め た蛋 白分 解 酵 素 療 法 は,日 常 しば しば経 験 す る症例 に対 して 簡単 に試 み られ る点 有 利 で あ り,イ ン ス リン必 要量 の減 少 はわ ず か で も全 身 症 状 の 改 善 が み られ る こ と もあ り,そ の機 作 の 検 討 を考 慮 しな が ら試 み て もよい方 法 と考 えて い る.中 で も著 明 な効 果 が 観 察 され た の は 末 端 肥 大 症 を合 併 した 糖尿 病 の症 例 で あつ た. 末 端 肥 大 症 患 者 の 内分 泌 的背 景 として は,,拍1中ACTH様 活 性,TSH様 活 性,insulin,corticoid値 は 高 値 を示 す こ とが 多 く2「)),尿巾GTH.estrogenは 低 い 傾 向 に あ り,HGHの 過 剰産 生 が み られ る.こ れ ら ホ ル モ ンの 代 謝 へ の銘 響 はGHの 代 謝 作用 を大 巾に 修 飾 して お り,糖 代 謝 異 常 は もつ と も顕 著 な 症候 とい え るで あ ろ う.こ れ らの 臨 床 所 見 はC・mpbel126)ら の行 なつ たGH投 与 に よ る実験 的糖 尿 病 の 推 移 と比 較 す る と極 め て 類 似 して お り,ま たEnge127)ら のGH,ACTH投 与 量 が単 独 で は影 響 が な い程 の 量 で も両 者 の 同 時 投 与 が 容 易 に糖 代 謝 異 常 を起 し,糖 尿 病 が発 症 しや す い とい う動 物 実 験 の成 績 か ら も裏 づ け られ る. GHの 有 す るdiabetogenicactionを イ ン ス リンに対 す る拮 抗 的 作 用 の面 か ら見 る と, (ε)イ ン ス リン抵 抗 性serumfactorの 出現 (互)GHの 末梢 に お け る糖 利 用 の 抑 制 (至)GHのadipokineticactivitylこ よ る解 糖 抑 制 (互)肝 に お け る糖 のoverproduction な どが 考 え られ る.

中で もイ ン ス リン抵 抗 性scrumfactorに 関 してB。rnstein28)ら やV・II・nce-Owen29)ら はinsulinanta-gonistに 対 す る検 索 を進 めGHが イ ン ス リン抑 制 因子 に作 用 す る現 象 はGHのbodypassagcの 結 果 イ

ンス リ ン作 用 を妨 げ るserumfactorsの 産 生 が 刺激 され るた め で あ る と述 べ て い る.こ の よ うな症 例 に イ ンス リン治 療 を行 な う と他 の糖 尿 病 よ り早 くイ ンス リン拮 抗 物 質 を生 じや す い と考 え られ30),事 実 前 述 した 症 例(No.9)に 早 期 に イ ンス リン抵 抗 性 が 認 め られ た.

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 671 結 局 末端 肥 大 症 を合 併 した 糖 尿 病 に対 し蛋 白 分解 酵 素 投与 中血 中HGHが 著 明 に 低下 した 事実 か ら, HGHレ ベル の低 下 が 第 一 の要 因 をな し,引 続 い て イ ンス リン結 抗 因子 が 低 下,あ るい は除 去 され,さ ら に イ ンス リン作用 の 増 大 へ み ちび か れ た と考 え られ よ う. ま た本 酵 素 の有 す るanti-inflammatoryaction,fibrinolyticactionが 感 染 症,脱 疽,な どの 合 併症 に有 効 に作用 し,か か る合 併 症 に生 ず るイ ンス リン抵 抗 性 に対 し好 結 果 を もた らす可 能 性 が充 分 考 え られ る. さ らに有 効 例 にお い て は血 中IRIレ ベ ルが 無 効 例 に比 して 高値 で あ つ た とい う事 実 は,全 有 効 例 が イ ン ス リン治 療 と併用 され て い た事 実 と共 に注 目すべ き点 で あ り,蛋 白分 解 酵素 療 法 に は 多か れ 少 なか れ,内, 外 因 性 の イ ンス リンの 存在 が必 要 な 条件 の1つ と思 わ れ た.以 上 の 臨床 的 観 察か ら,作 用 機 序 につ いて の解 析 を臨床 及 び 動物 実 験 面 よ り進 め るべ く計 画 した. V小 括 治 療 困難 な イ ンス リン抵抗 性 糖 尿 病患 者 を含 む 各種 病型 の糖 尿 病 に対 し蛋 白分 解 酵 素療 法 を行 な い,血 糖, 尿 糖 及 び全 身 状態 の 改 善 された 症 例 を経 験 した.有 効 症例 は殆 どが イ ンス リン治 療 に 抵抗 を示 した症 例 で, 特 に 末 端肥 大 症 を 合併 した糖 尿 病 に有 効 率 が 高 く,治 療 効果 発 現 と平行 して 血 中成 長 ホル モ ン レベ ルが 低下 した.そ の 他 長 期 にわ た りイ ン ス リン療 法 を受 け て イ ンス リン に対 して抵 抗 性 を示 し始 め,比 較 的早 期 に 本 療 法 を行 な つ た症 例,及 び感 染 症,血 管 合 併 症 を合 併 した症 例 等 に有 効 例 が み られ た.有 効 例 は全 て イ ン ス リン治療 と併 用 されて お り,且 つ,空 腹 時血 申IRIレ ベ ル は有 効例 が 無 効 例 に比 して 明 らか に高 値 を示 し, 本 酵 素 に お いて は 多か れ 少 なか れ 内,外 因性 イ ンス リンの存 在 が 必要 な条 件 の1つ と思 わ れた. そ の2作 用 機 序 に 関 す る 実 験 的 研 究 1い と ぐ ち 前 編 で も述べ た ご と く,イ ン ス リン抵 抗 性糖 尿 病 に蛋 白分 解 酵素 療 法 の可 能性 が,多i数 の 臨 床 的観 察 よ り 示 唆 され たが,そ の作 用 機 序 につ い て は未 だ 明 らか で な い.と くに イ ンス リン作 用 の 減弱 した状 態 が 蛋 白分 解 酵 素 療法 に よつ て,回 復,も し くは軽 快 した こ とは,血 中 の イ ンス リンの存 在 様 式 と作 用 様式 に本 酵 素 が 作 用 して い る こ とを示 唆 す る もの で あ り,本 療 法 の作 用機 序 につ い て の検 討 は,治 療 面 に お け る開 発 と共 に, 糖 尿 病 発症 理 論 にま で発 展 し う る と考 えて い る. そ こで前 編 の 臨床 的 成 績 を総 括 し,そ の 作 用機 序 の可 能性 につ い て考 えて み ると,次 の如 き条件 が挙 げ ら れ る. (1)血 申 イ ンス リン抗体 また は 拮抗 物 質 の 除外,ま た は そ の作 用 を阻止 す る. (2)血 申 イ ンス リン活 性 を高 め る. (3)蛋 白分 解酵 素 に よ りイン ス リン様 物 質 が 新 し く産 生 され る. (4)抗 体 をは じめ として,あ る種 の拮 抗 物 質 とイ ンス リン との 結合 物 に対 し,蛋 白分解 酵 素 が 働 き,遊 離 の活 性 イ ンス リンを分 離 す る. (5)蛋 白分 解 酵 素 自体 に イ ンス リン様作 用 が あ り糖 利 用 を促 進 す る. ㈹ イ ンス リン と蛋 白分 解酵 素 の協 調 作用 に よ る, 以上 の 予想 され る諸条 件 の う ち,主 として α一chymotrypsin自 体 の糖 代 謝へ の直 接 的影 響 と,α 一chymo-trypsinのinsulininhibitorも し くは拮 抗 物 質 に及 ぼ す影 響 に対 し検 討 を加 えた. H実 験 方 法 1.材 料:

蛋 白分 解 酵 素 と してSigma社 α一chymotrypsin及 び エ ー ザ イ研究 所 よ り入手 した α一chymotrypsin純 品 を使 用 した.後 者 は1mg当 り6.5キ モ トリプ シ ン単 位(ch・u)に 相 当 す る.

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672 難治 性 糖 尿 病 の 治療 に 関す る 研究(金 子)

2.血 清 の 蛋 白 分 解 酵 素 処 理 法:

患 者 血 清1mlあ た り α一chymotrypsinO.5mgの 割 合 で 添 加 し25℃ に て4時 間incubateし,処 理 前 と 処 理 後 のinsulinbindingindex(以 下IBIと 略 す)とILAを 測 定 し た.一 一方 対 照 と し て は 被 験 血 清 を57℃ に て2時 間 非 動 化 処 置 し た.

孟瀦

してSephadexlcよ

る 即1_用

いた.す なわち儲

血清2mlを9.。2M

phosphatebufferでequilibrateさ れ たDEAE-SephadexA-50をpackingし たcolumn(O・8×O・8× 12.5)にapPlyし,eluatingbufferのNac1濃 度 をO・02,0・07,0・17,0・38Mとstepwiseに 高 め て ・ そ れ ぞ れ の 段 階 に お い てeluateさ れ た 各 分 画 をF、,F2,F3,F4,と し,計4つ の 分 画 溶 液 を え た.

各 分 画 溶 液 は 凍 結 乾 燥 し て 保 存 し実 験 の 際 に はKrebs・RingerBicarbonatebufferに 再 溶 解 し てILA・ IRIを 測 定 し た.

4.IBI,IRI及 びILAの 測 定 法

イ ン ス リ ン結 合 抗 体 力 価 を あ ら わ すIBIの 測 定 はMitchel131)ら に よ るpaperstrip法 に よ り測 定 し た. IRIは 臨 床 観 察 編 で 述 べ た ご と く小 川 のResin法 を 用 い,ILAは 島 津 ら に よ る ラ ッ ト横 隔 膜4分 割 法 ・ 媛 松 ら に よ る ラ ッ ト副 睾 脂 法 を 用 い て 測 定 した. 5.患 者 血 清 の ネ ズ ミ 血 糖 上 昇 作 用 の 観 察 法: 患 者 血 清 を体 重1509前 後 のwister系 ラ ッ ト(オ リ エ ン タ ル 固 形 飼 料 に て 飼 育,24時 間 絶 食)ヘ エ ー テ ル 麻 酔 下 に て 大 腿 静 脈 よ り0.5ml静 注 し,15分 毎lc120分 ま で 採 血 し 血 糖 を 測 定 し た. 血 糖 はHagedorn-Jensen法 に よ つ て 測 定 し た. 対 照 と し て モ ル モ ッ ト抗 イ ン ス リ ン血 清 を 同 様 に し て ラ ッ トに 静 注 し て 比 較 し た. 6.モ ル モ ッ ト抗 イ ン ス リ ン 血 清 の 作 成: 体 重400∼8009の モ ル モ ッ ト(性 別,飼 育 方 法 は 特 に 制 限 し な か つ た.)を 用 い,抗 原 と し て はNPH-beefinsulin,「egular-deefinsulin,regularsPermwhaleinsulin(い ず れ も 清 水 製 薬 製)を 使 用 し,主 と し て 腹 腔 内 に 注 射 を 反 復 し て 作 成 し た. 血 清 は 最 終 注 射 後10日 内 至14日 目 に,cardiacpunctureに よ つ て 採 血 し,iち に 血 清 を 分 離 し て 凍 結 保 存 し た. そ の 免 疫 血 清 の 力 価 検 定 に は,Armin法32),《Aitchell31)ら のpaperstrip法 な ど を 用 い て 検 定 し ・ 結 合 抗 体 価 の 高 い も の を 使 用 し た. 皿 実 験 成 績 1.α 一chymotrypsinの ネ ズ ミ 横 隔 膜 組 織 の 糖 利 用 に 及 ぽ す 影 響:

α一chymotrypsinをKrebs。RingerBicarbonatebu伍erに200mg/dlの 濃 度 で91ucoseを 加 え たmedium 申 に 添 加 し,IO-5Mよ り10-8Mの 稀 釈 系 列 を つ く り,ラ ッ ト横 隔 膜,副 睾 脂 に お け る 糖 利 用 に 対 す る影 響 を み る と,副 睾 脂 に 対 す る糖 利 用 は 殆 ん ど 影 響 を もた ら さ な か つ た が,横 隔 膜 に 対 し て は10-6Mの 濃 度 に お い て 糖 利 用 の 増 加 す る こ と を 認 め た.(Fig・9)こ の 濃 度 はinvivoで 投 与 し た 場 合 の 血 中 濃 度 に 相 当 す る.

2.患 者 血 清 のIB置,置LAに 及 ぼ す α・chym。trypsinの 直 接 的 影 響:

7名 の イ ン ス リ ン 抵 抗 性 糖 尿 病 患 者 血 清1mlに 対 し α一chymotrypsinO・5mg/m1の 濃 度 で 添 加 し,25℃ .に て4時 間incubateし た 後,そ の 各 々 のIBIとILAを 測 定 し,処 理 前 の そ れ と 比 較 した.Fig・10の 右

に 示 す よ う に 直 接 α一chymotrypsinに て 処 理 し た 血 清 は 処 理 前 に 比 較 しIBIが 低 下 し,副 睾 脂 法,横 隔 膜 法 共 にILAが 増 加 し た.同 時 に 対 照 と して,同 一 血 清 を57℃ で2時 間 熱 処 理 し非 働 化 した 場 合 はFig・10

の 左 に 示 す よ う にIBIは 低 下 し た が,ILAは 副 睾 脂 法,横 隔 膜 法 共 に 低 下 し た. 3.α 一chymotrypsin治 療 前 後 の 血 清 蛋 白 分 画 中 に お け るILA,IRIの 変 動:

先 ずinvivoの 実 験 と し て,前 編 に 述 べ た 患 者(No.14)の 症 例 に 対 し α一chymotrypsin,25ch単 位 を

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 673

10日 聞 筋注 し,そ の 前 後 の 空 腹 時血 清 を採 取 し,DEAE-SephadexA-50に て4つ の 分 画(Fl∼F4)に 分 け,各 分画 のILA,IRIを 測 定 した結 果 をFig・llに 示 した.な お 図 の上 部 にCA膜 電 気 泳 動 に よ る血 清 蛋 白 分 画 と この4分 画 をCA膜 電 気 泳動 で同 定 した 結 果 を示 した. 投 与 前 の各 血 清 蛋 白分 画 に お い て は,F2に 軽 度 の 糖 利用 が み とめ られ た の みで 他 の3分 画 は ラ ッ ト横 隔 膜,副 睾 脂共 に糖 利 用 が 抑 制 され た.一 方 α一chymotrypsin投 与 後 の 血 清 に お い て は量 的 な 差 は あ つ て も∫ 全 分 画 に お い て糖 利 用 が 促 進 され た. IR1に 関 して億,馬,F3,F4に そ の存 在 が 認 め られ,特 にF4に 著 明 で あつ た. 本 酵 素 投 与 後 のIRIは 治 療 前 に比 して や や レベ ルが 低 下 した が 全 血清 申 のIRIは 治 療 前 は 測 定 出来 な か つ た が,治 療 後20μu/m1のIRIを 証 明 した.従 つ てILAとIRIは 必 ず し も平行 しなか つた. 次 にinvitroの 実 験 と して,こ の患 者 の 治 療 前 に お け る空 腹 時 血 清 を採 取 し,血 清lmlに 対 し α一chym。 Fig.9 Fig.11 F三9。1o Fig.12 第46巻 第6号

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674 難 治 性糖 尿 病 の 治 療 に 関す る研 究(金 子)

otrypsinO.5mg/m1の 濃度 で 添 加 し,25℃ に て4時 間incubatcし た後,同 様 に4つ の血 清 蛋 白分 画 に分 け, 各 分画 の 肌A,IRIを 測定 したが,F、 と全 血 清 に もつ と も大 き く糖 利 用 が 促 進 され た.

一 方IRIは ,F3とF,に わ ず か な が らIRIレ ベ ルが 増 加 した が,ILAに 比 較 して は著 明 な変 化 で は な か つ た.(Fig。12) 以上 の各 分 画 の 対 照 と して行 なつ た 血 清 そ れ 自体 のILA,IRIは,invitroinvitr◎ い ず れ の場 合 も治 i療後,あ るい は,incubate後 の レベ ル が増 加 した. す な わ ち,invitro及 びinv三V・ の成 績 よ りその 作用 機 序 につ い て は明 確 に し えな いが,い つ れ に して も α一chymotrypsinの 影 響 に よ つ て本 患 者 血 清 中 に ふ くまれ る イ ンス リン抑 制 作 用 が 軽 減,除 去 され た こ とが 示 唆 され る. 同時 に以 上 の 結 果 は 明 らか に この イ ン ス リン抵 抗 性 糖 尿 病 患者 血 清 中 の糖 利 用 抑 制 因 子 の大 部 分 はF、 及 びF4に あ り一)とくに横 隔膜 に対す る糖利用抑制が著 明であることが判明 し,更 にIRIは 大 部 分 がF4に, 一 部 はF, ,F3に あ ることが示 された. 4.α 一chymotrypsin単 回投 与 後 の 患 者 血 清 のILA,IRIに 対 す る直 接 的 影 響: 前 述 の よ うに α一chymotrypsin治 療 後 の 患者 血 清 のILA,IRIの レベ ル が 上 昇 して い るこ とか ら,本 酵 素25ch単 位 単 回筋 注 後 のILA,IRIの 時 間 的 変 動 を検 索 した. 患 者 は 本 療法 の有 効,無 効 の 関 係 な く,無 選 択 に6症 例 を選 んで 実 験 を行 なつ た. 横 隔 膜 法 に お け るILAは5例 中3例 に筋 注 後 の血 清 に糖 利 用 の 促 進 が み られ た. 副 睾 脂 法 に お い て は6例 中5例 に1時 間後 の 糖 利 用 の促 進 を認 め,そ の う ち3例 は そ の後 も糖 利 用 の 増 加 を認 め た. IRIに 関 して は4例 申2例 に そ の レベ ルの 上 昇 が み られ た. 代 表 的 な 症 例 と して は,本 酵 素療 法 にお け る著 効例 の うち,末 端 肥 大 症 を合 併 した症 例(患 者 番 号No.17) で は血 清ILA,IRI共 にcr-chymotrypsinの 単 回 筋 注後 明 らか な 上 昇 を 示 した.(Fig.13)

以 上,推 計 学 的 に は結 論 を 出 し えな い が,本 酵 素 の 単 回 投与 に よ つ て,ILA,IRIが 増 加 す る症 例 の あ る こ とを認 めた. 5.患 者 血 清 及 び イ ン ス リン抗 血 清 の ネ ズ ミ血 糖 上 昇 作 用 に及 ぼす α・chymctrypsinの 影 響: Armin32)ら は ネ コ,ウ サ ギ,ラ ッ トな ど に抗 イ ン ス リン血 清 を動 脈 内又 は静 脈 内 に 注 射 した場 合,著 明 な 血 糖 上 昇 を示 す こ とか ら,こ の 方 法 を もつ て抗 イ ン ス リン血 清 の力 価 検 定,あ るい は イ ン ス リン抗 体 の 証 明 法 と して い るが,著 者 もこのArm;n法 を利 用 して,α ・chymotrypsin処 理 後 の 患 者 血 清 が ラ ッ ト血 糖 上 昇 作 用 に いか な る影 響 を及 ぼ すか を実 験 し た.先 ず イ ン ス リン治 療 に抵 抗 を示 した糖 尿 病 症 例No.14よ り 早 朝 空 腹 時 に採 血 した血 清 を本 法 に よっ て ラ ッ トに Fig.13 Fig.14 第46巻 第6号

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日 本 内 分 泌 学 会 雑 誌 675 静 注 し た と こ ろ,著 明 な 血 糖 上 昇 を示 し た.そ の 血 糖 上 昇 率 は 本 法 に よ つ て,そ の 力 価 が 確 認 さ れ た モ ル モ ッ ト抗 イ ン ス リ ン 血 清 と 全 く 同 様 の 上 昇 率 を 示 し た. 一 方 正 常 人 及 び イ ン ス リ ン治 療 に 抵 抗 を 示 さ な い コ ン ト ロ ー ル 良 好 の 糖 尿 病 患 者 血 清 を 同 様 に ラ ッ トに 静 注 し た と こ ろ 何 ら 著 明 な 血 糖 上 昇 を 示 さ な か つ た. そ こで,次 に こ の イ ン ス リ ン抵 抗 性 患 者 の 血 清 にlmlあ た り α一chymotrypsinO・5mg/m1の 濃 度 で 添 加 し・25℃ に て4時 間incubateし た 後 の 処 理 血 清 を使 用 し,Armin法 に よ る 高 血 糖 作 用 が 認 め ら れ るか 否 か 調 べ た と こ ろ,全 く血 糖 上 昇 作 用 が み ら れ な か つ た. 以 上 の 諸 成 績 をFig・14に 示 す が,こ の 結 果 α一chymotrypsin処 理 に よ つ て 高 血 糖 因 子,す な わ ち イ ン ス リ ン 抗 体,あ る い は 拮 抗 因 子 の 作 用 が 抑 制 さ れ た か,又 は 破 壊 さ れ た こ と が 示 唆 され る . IV考 按

Rieser33)ら は 数 種 のpancreaticenzyme特 にchymotrypsinと,trypsinが3。o-91ucose,1-proline,

xyloseの ラ ッ ト横 隔 膜 筋 へ の 透 過 性 を 高 め,こ れ ら の 利 用 あ るい は 糖 原 合 成 を促 進 さ せ る と 報 告 し,こ の 際 同 時 に 対 照 と し て 行 な つ た イ ン ス リ ン 濃 度 はo.5u/m1(3・67xlo-6M)で あ り,酵 素 群 に お い て も この 10-6Mで イ ン ス リ ン と 同 様 の 作 用 を 認 め た.ま た,DFP(diisopropylfluorophosphate)に よ つ て 不 活 性 化 さ れ た 酵 素 は そ の 効 果 を 阻 害 さ れ る こ と,及 び イ ン ス リ ン 自 体 に も,proteolyticactivityの あ る こ と を 認 め た34).さ らに ア ロ キ サ ン糖 尿 ラ ッ ト 腹 腔 内 に 注 射 さ れ たtrypsin,chymotrypsinは 血 糖 を 低 下 さ せ, DFPで 処 理 さ れ たtrypsinとTPCK(L-1-tosylamido-2-phenylethylchloromethylketone)に よ つ て 処 理 さ れ たchymotrypsinは こ の 血 糖 降 下 作 用 を 認 め な か つ た と報 告 し た35). 以 上 の こ とか ら,Rieserは こ れ ら酵 素 の 本 来 の 蛋 白 分 解 作 用 と糖 利 用 の 活 性 基 と は 同 一 構 造,す な わ ち, serine,histidine残 基 に あ る と 予 想 し,血 糖 降 下 作 用 は 組 織 の 細 胞 膜 の 透 過 性 を高 め,糖 利 用 を 促 進 し,ま た,糖 原 合 成 が 促 進 さ れ る結 果 起 るの で あ り,α 一chymotrypsinと イ ン ス リ ン は そ の 構 造 上 類 似 し た 部 分 が 存 在 す る こ とか ら,こ の 両 者 の 生 物 学 的 作 用 に 共 通 し た 関 係 の 存 在 す る こ と を 確 認 し,イ ン ス リ ン の 作 用 機 序 解 明 に もな り う る と し て い る36). Dailey37)ら は ラ ッ ト横 隔 膜 に お け るD.xyloseのuptakeに つ い て 追 試 し,イ ン ス リ ン の 生 理 的 至 適 濃 度 範 囲 で あ る50∼500μu/m1の 範 囲 で は 比 例 的 にuptakeが 増 加 す る こ と を 認 め る が,trypsinやchym-otrypsinに 関 し て は,こ の 濃 度 に お い て は 殆 ど 効 果 を み ず,3・67×10『6M(0.5ulm1の イ ン ス リ ン に 相 当) の 濃 度 で 有 意 の 効 果 を 認 め,蛋 白 分 解 作 用 が 組 織 の 細 胞 膜 に 及 ぼ す 結 果 で あ る と し て い る.し か し な が ら, B・rnett38)ら はRieserら の 観 察 を さ ら に 拡 大 追 試 し,invivoの 実 験 と し て ラ ッ トの 腹 腔 内,イ ヌ の 静 脈 内 に 投 与 し たtrypsin,chymotrypsinは 血 糖 に 対 し て 有 意 の 降 下 作 用 が み ら れ ず,invitroで ラ ッ ト横 隔 膜,副 睾 脂 に 対 す る ブ ド ウ 糖 利 用 に 関 し て も,同 濃 度 の イ ン ス リ ン に 比 し て は るか に 及 ば な い と報 告 し, xyloseな ど に お け る 効 果 に 比 し て,ブ ド ウ 糖 利 用 に お け る効 果 を 観 察 し え な か つ た 理 由 に つ い て は 不 明 と し て い る.著 者 の 実 験 結 果 で は ラ ッ ト横 隔 膜 組 織 に お い て,や は り10-6Mの 濃 度 で ブ ド ウ 糖 利 用 の 促 進 を み て い る が,結 局 組 織 に 対 す る 蛋 白 分 解 酵 素 の 影 響 を 検 索 す る に 際 し て は 濃 度 差 に 対 す る 影 響 を充 分 に 考 え ね ば な ら な い こ と を 知 つ た. 少 な く と もinvitroに お い て は10-5∼10-7Mの 範 囲 内 で 検 討 す るべ き で,高 濃 度 に お い て は 組 織 あ る い は,イ ン ス リ ンが 本 酵 素 の 作 用 を 受 け 分 解 し て し ま う 可 能 性 が 大 き い と思 わ れ る. 特 に 脂 肪 組 織 に 関 し て は 著 者 も明 らか に そ の 傾 向 を 認 め て お り,Barnettら もtrypsinが そ の 至 適 濃 度 に お い て も 明 らか に 脂 肪 組 織 を 破 壊 し た こ と を 認 め て い る. 以 上 の ご と く 諸 家 の 成 績 も著 者 の 成 績 と一 致 し,臨 床 的 に み ら れ た 蛋 白 分 解 酵 素i療 法 の 作 用 機 序 の 一 端 を 示 し て い る と 考 え る.次 に 著 者 及 び 協 同 研 究 者 は ラ ッ ト肝 に 対 す る α一chymotrypsinの 影 響 を み る た め, 注 射 後 の 肝 内 酵 素 変 動 を 観 察 し,91ucokinaseは1時 間 後 増 加 し,serinedehydrase,91ucose-6-phosphatase は 明 ら か に 減 少 し,glucose-6-phosphatedehydrogenaseは 不 変 で あ つ た こ と を 確 か め て い る39)4o).す な わ 第46巻 第6号

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676 難治 性糖 尿病 の治 療 に関 す る研 究(金 子) ち,本 酵 素 は 肝 内 酵 素 に 対 し,直 接 的 あ る い は,間 接 的 に イ ン ス リ ン 作 用 と類 似 の 作 用 が あ る こ と を 示 唆 す る もの で 肝 のglUCOneOgeneSiSに は 少 な く と も影 ・響を 及 ぼ さ な い こ と を示 す と 考 え られ る. 従 つ て,そ の 作 用 機 序 め 面 で は イ ン ス リ ン と類 似 ま た は 協 調 す る面 も あ る と思 わ れ る が 酵 素 自体 の 作 用 は イ ン ス リ ン に は 及 ば ず,こ れ だ け を もつ て し て イ ン ス リン 抵 抗 性 に対 す る 臨 床 的 効 果 を 説 明 す る こ と は 出 来 な い. そ こで 血 清 に 対 す る直 接 的 影 響 を み,拮 抗 物 質 に 如 何 に 作 用 され るか 検 討 し た 訳 で あ る .こ の 目 的 を もつ て行 な つ た 患 者 血 清 を α一chymotrypsinで 処 理 し た 実 験 で 血 清 のIBIが 低 下 し,ILAが 増 加 し,対 照 の 熱 処 理 に て 非 働 化 し た 血 清IBI,ILA共 に 低 下 し た 事 実 は イ ン ス リン の 阻 害 因 子 を 阻 止 し た 可 能 性 を示 す もの で あ る.VallanceOwen4i)ら はinsulinantagonistが 血 清albumin分 画 中 に 存 在 す る こ と を 確 認 し, こ れ をsynalbuminantagonistと 称 し て い る が,Jens42)は 電 気 泳 動 に よ る 正 常 人 血 清 蛋 白 分 画 中album五n。 αr910bulinと β一γ一910bulinの2つ にILAのpeakを 認 め,糖 負 荷 後 に お い て は 前 者 にILAの 明 らか な 上 昇 を 認 め る の に 対 し,後 者 に お い て は 何 ら変 化 を み ず,albumin一 α、-globulin分 画 にproteinbound insulinが 存 在 す るか らで あ る と報 告 し て い る .

しか し,著 者 らの 実 験 成 績 で は,pr・teinboundinsulinに 対 す る作 用 効 果 だ け で は 説 明 出 来 な い 点 が 多 い ・ 実 験 に 使 用 し た 患 者 血 清 蛋 白 分 画 に お い てF2(albumin)を 除 く他 の3分 画 に 糖 利 用 抑 制 効 果 を 認 め, 治 療 後 は 全 分 画 に お け るILAが 増 加 し た.一 方,invitroで はF、 にILAの 増 加 を認 め た.

IRIは 主 と して,F4に 集 中 し て お り,特 に 注 目す べ き影 響 を示 し て い な い が この 分 画 に は 糖 利 用 抑 制 因 子 の ほ か,若 干 イ ン ス リ ン拮 抗 物 質 も含 ま れ て い る と 考 え ら れ る.

以 上 の 結 果 を考 察 し て み る と大 部 分 の 抑 制 因 子 はF、(γ 一910bulin)に 集 中 して お り,α 一chymotrypsinの 効 果 が こ のinhibitorに 対 し作 用 し た こ と を示 す もの で あ る.

GTH,ACTH・TSHさ らにILAな ど は 主 にF、(γ 一globulin)に そ の 生 物 学 的 活 性 が 確 認 さ れ て お り , 前 述 し た ご と く,末 端 肥 大 症 を 合 併 し た 糖 尿 病 に 対 す る 著 明 な 治 療 効 果 はhormona1なinsulinantagonist

(HGH及 びsulfationfactor活 性 値)が 本 酵 素 に よ り強 く影 響 さ れ た こ と を 裏 づ け る もの で あ る.さ ら に 患 者 に αーchymotrypsinを 筋 注 した 場 合 及 びinvitro処 置 に て もILAが 増 加 し,IRIも 又 経 時 的 に 増 加 し た 症 例 が あ つ た 事 実 は 本 酵 素 が 免 疫 抗 体 に 対 し て も こ れ を 抑 制 ま た は 破 壊 し た 可 能 性 を示 す もの で あ る. 窮 実Arlnin法 を利 用 し て イ ン ス リ ン抗 体 の 確 認 され た 患 者 血 清 が 本 酵 素 に よ り処 理 され た 後 は,全 く血 糖 上 昇 作 用 を み な か つ た こ と は これ ら の 考 察 を 裏 づ け る もの で あ ろ う. 以 上 の ご と き臨 床 成 績 と実 験 成 績,さ ら に 諸 家 の 報 告 等 を 合 わ せ て 考 え ら れ る各 種 生 物 学 的 要 因 が 相 伴 な つ て 治 療 効 果 を現 わ し た もの と推 定 され,イ ン ス リ ン 抵 抗 性 糖 尿 病 に 対 し,蛋 白 分 解 酵 素 の 新 し い 応 用 面 が 開 か れ た わ け で あ り,こ れ ら作 用 機 序 の 解 明 は 糖 尿 病 自体 の 本 体 究 明 に もつ な が る もの と考 え る. V.結 論 コ ン ト ロ ー ル 困 難 な イ ン ス リ ン 抵 抗 性 糖 尿 病 症 例 中 蛋 白 分 解 酵 素 療 法 に よ り著 明 に 血 糖 ,尿 糖 及 び 一 般 臨 床 症 状 の 改 善 さ れ た 症 例 を 見 出 し,24例 の イ ン ス リン 抵 抗 性 糖 尿 病 を含 む44例 の 各 種 病 型 の 糖 尿 病 患 者 に 蛋 白 分 解 酵 素 療 法 を 行 な つ た.治 療 成 績 は 著 効7例,イ ∫効11例,無 効26例 で あ つ た . 本 酵 素 療 法 に お い て 主 と し て α一chymotrypsihを 使 川 し て,k`効 例 に 対 し臨 床 的 観 察 を行 な い,さ ら に 作 用 機 序 に 対 す る検 討 を 行 な い 以 下 の 如 き結 論 を えた. ユ)治 療 効 果 は 一 部 を 除 い て は 投 与 開 始 後3∼4日 で 現 わ れ る こ と が 多 か つ た. 2)特 に 末 端 肥 大 症 を 合 併 し た 糖 尿 病 に有 効 で あ り,そ の 他 長 期 に わ た つ て イ ン ス リン療 法 を行 な つ て き た 糖 尿 病 患 者 で ・ 血 管 障 害 や 感 染 症 な ど を合 併 し,イ ン ス リ ン抵 抗 を示 し始 め た 初 期 の 症 例 に 有 効 率 が 高 い こ と を 認 め た. 3)下 垂 体 一 副 腎 皮 質 系 機 能 は 有 効 例,無 効 例 に お い て 認 む べ き差 異 は な か つ た が,血 中HGH高 値 を 示 し た 末 端 肥 大 症 に お い て は 治 療 に よ り,血 糖 降 下,尿 糖 の 消 失 又 は 減 少 と平 行 し てHGHの 血 申 レ ベ ル 第46巻 第6号

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日 フ仁rメ ヨ ・分2必ttje・ ・'会 雑 言ぎ 677 が 明 らに 低 下 し た. 4)有 効 症 例 は 無 効 症 例 に 比 し て 明 らか に 血 中IRIレ ベ ル が 高 く,又cr-chymetrypsin投 与 に よ つ て 血 中 のILA,IRIが 増 加 し た 症 例 を 認 め た.・ 5)有 効 症 例 は 全 て イ ン ス リ ン治 療 と 併 用 さ れ て お り,IRIレ ベ ル が 高 か つ た 事 実 と合 わ せ て 蛋 白 分 解 酵 素 有 効 例 に お い て は 多 か れ 少 な か れ 血 中 の 内,外 因 性 イ ン ス リ ン の 存 在 が 必 要 な 条 件 の1つ で あ る と 思 わ れ る.

6)α 一chymotrypsia臼 体 も 沁vitroに て ラ ッ ト横 隔 膜 の 糖 利 用 を 促 進 し,そ の 至 適 濃 度 はIO-6Mで あ る こ と を 確 め た 。 7)invitroで α。chymotrypsinで 処 理 さ れ た イ ン ス リ ン 抵 抗 性 糖 尿 病 患 者 血 清 は 糖 利 用 を 指 標 と す る ILAが 増 大 し,IBIが 低 下 し た . 8)invivoの 実 験 と し て,DEABSephadexA-50カ ラ ム に よ つ て え られ た 患 者 血 清 蛋 白 分 画Fユ ∼F, に 対 す る α一chymotrypsin投 与 前 後 の 影 響 はF2(主 と し てalbumin)を の ぞ い た3分 画 で は 投 与 前 に お い て ラ ッ ト横 隔 膜,副 睾 脂 に お け る 糖 利 用 の 低 下 お よ び イ ン ス リ ン作 用 の 抑 制 を み た.し か し 投 与 後 の 血 清 に お い て は 全 分 画 に 糖 利 用 の 増 大 が 認 め ら れ た 。 一 方invitroに お い て 同 一 血 清 を 直 接 本 酵 素 で 処 理 し た 後 の 各 分 画 に お い て はinvivOの 場 合 よ り そ の 作 用 は 明 確 で は な い が 類 似 し た 成 績 を 示 し,と く にF、(γ 一910bulin)に お い て 最 も 糖 利 用 が 促 進 さ れ た. IRIの 成 績 は 必 ず し もILAと 平 行 し な か つ た が,全 血 清 中 のILA,IRIは 共 に 投 与 前,あ る い は 処 理 前

よ り そ の レ ベ ル が 増 加 し た. 9)Armin法 に よ り イ ン ス リ ン抵 抗 性 糖 尿 病 患 者 血 清 を ラ ッ トに 静 注 し,モ ル モ ッ ト抗 イ ン ス リ ン鎗1濾 を 静 注 し た 場 合 と 同 様 の 著 明 な 血 糖 上 昇 作 用 を 観 察 す る こ とが 出 来 た.し か し α一chymQtrypsin処 理 後 の 同 一 患 者 血 清 は そ の 血 糖 上 昇 効 果 を 失 な う こ と を 認 め た. 10)以 上 各 種 の 検 索 の 結 果 蛋 白 分 解 酵 素 がinsulinantagonistに 対 し,そ の 阻 害 作 用 を 阻 止 あ るい は 除 去 し,ま た 直 接 的 生 物 学 的 作 用 に イ ン ス リ ン 作 用 と 類 似 あ る い は 協 調 作 用 の あ る こ と を示 唆 す る成 績 を え た. し た が つ て,イ ン ス リ ン 抵 抗 性 糖 尿 病 の 治 療 に 本 酵 素 の 新 し い 応 用 面 の あ る こ と を 認 め,こ れ ら の 作 用 機 序 の 解 明 は 糖 尿 病 自体 の 本 態 究 明 に もつ な が る もの と の 結 論 を え た 。 本 論 文 の 要 旨 は,第38回 口木 内 分 泌 学 会 総 会,第8回 日 本 糖 尿 病 学 会 総 会,theWorldCongressonDi-abetesintheTropics,Bombay,(1966),the3rdAsiaandOceaniaCongressofEndocrinology,Ma繍 nila,(1967)に お い て 発 表 し た .◎ な お 本 研 究 の 一 部 は 文 部 省 科 学 研 究 費 に よ つ て 行 な わ れ た. 稿 を 終 え る に 臨 み,終 始 御 懇 篤 な る 御 指 導 と 御 校 閲 を 賜 わ つ た 恩 師 辻 昇 三 教 授 に 深 甚 な る 謝 意 を 表 明 致 し ま す.ま た 終 始 研 究 に 協 力 し て 下 さ つ た 辻 内 科 糖 尿 病 研 究 班 の 皆 様 に 深 謝 の 意 を 表 しま す. IV文 献

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(23)

678 難 治 性 糖尿 病 の治 療 に 関 す る研 究(金 子)

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