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研究会和文題目 (14ポイント)

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(1)

T’構造銅酸化物 Pr

1.4

La

0.6

CuO

4

の磁気励起に対する還元アニール効果

Reduction annealing effects on the spin excitations

in T’-structured cuprate Pr

1.4

La

0.6

CuO

4

浅野駿(東北大院理)、鈴木謙介(東北大金研)、梶本亮一(J-PARC)、

池内和彦(CROSS)、藤田全基(東北大金研)

S. Asano (Dept. of Phys., Tohoku Univ.), K. M. Suzuki (IMR, Tohoku Univ.), R. Kajimoto (J-PARC), K. Ikeuchi (CROSS), M. Fujita (IMR, Tohoku Univ.)

銅酸化物高温超伝導体では、反強磁性秩序を示すモット絶縁体にキャリアドーピングを施す ことで超伝導を発現するため、磁性と超伝導との相関に興味が持たれてきた。Ce置換による電子 ドーピングと還元アニールの両方を施すことで超伝導が発現するT’構造銅酸化物R2-xCexCuO4 (R = Pr, Nd, Sm, Eu)では、双方の処理が磁気相関に与える影響を理解することが超伝導発現機構の 本質に繋がる重要な課題である。 T’構造銅酸化物母物質の磁気相関の起源と還元アニール効果を明らかにする目的で行われた、

Pr1.4La0.6CuO4に対する中性子非弾性散乱実験[1]では、6 Kにおけるas grown試料の磁気励起スペ

クトルが、モット絶縁体La2CuO4[2]と同様にS = 1/2の2次元Heisenberg模型の線形スピン波理論で

理解できることが示された。一方、還元アニールを施すと、分散形状はほとんど変化せず、磁気 励起強度が半減する。試料中の磁気体積分率は還元アニール前後で変化しないことから[1]、還 元アニールした試料 (annealed試料)では磁気モーメントサイズが減少したと理解できる。しかし、 モーメント縮小のメカニズムは完全には理解できておらず、annealed試料における磁気相関の起 源は未だ解明されていない。 我々は、還元アニールによる磁気散乱強度半減の起源を明らかにするため、J-PARCのMLFに

あるチョッパー型分光器「四季」を用いてT’構造銅酸化物Pr1.4La0.6CuO4のas grown試料とannealed

試料に対する中性子非弾性散乱実験をおこなった。還元アニール前後の磁気励起を磁気転移温 度以上で観測し、これまで注目されてこなかった温度に対する磁気相関の応答から、起源解明を 目指した。

Pr1.4La0.6CuO4のas grown試料とannealed試料の6, 300, 470 Kにおける磁気励起スペクトルを図に

示す。as grow試料とannealed試料ともに、TN以上においても磁気励起を観測した。分散曲線や動 的帯磁率の温度依存性はLa2CuO4と整合しており[3]、強い電子相関に由来した反強磁性相関が観 測したすべての温度で磁気励起の性質を支配していることが明らかとなった。 還元アニールによる磁気励起強度半減の起源は、Cu スピンの遍歴性が増したためか、Cu のス ピン密度分布拡大による Cu-O ボンドの軌道混成が増加したためか、結論が出ていなかった。還 元アニール前後の磁気励起スペクトルは、高温まで同様の温度依存性を示すことから、Cu スピ ンが遍歴性を増したためではなく、Cu-O の軌道混成が増加した可能性が高いことを示している。 参考文献

[1] K. Tsutsumi, Ph. D. Thesis, Tohoku Univ. (2015). [2] R. Coldea et al., Phys. Rev. Lett. 86, 5377 (2001). [3] M. Matsuura et al., Phys. Rev. B 95, 024504 (2017).

図 (a)–(c) 6, 300, 470 K におけ るPr1.4La0.6CuO4のas grown 試料とannealed 試料の 160 ± 20 meV を定エネルギーカット した磁気励起スペクトル。実線 はガウス関数による解析結果。 (d)–(i) 磁気励起スペクトル。 白点はピーク位置を示し、実線 はS = 1/2 の 2 次元 Heisenberg 模型から計算したスピン波(J = 133 meV)を表している。 300 250 200 150 100 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 (h, 0.5) (r. l. u) 8 6 4 2 0 x10 -4 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1.8 1.6 1.4 1.2 1.0 0.8 x10 -3 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 as grown annealed E n e rg y ( m e V ) Pr1.4La0.6CuO4 a b c 300 250 200 150 100 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 300 250 200 150 100 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 160 20 meV annealed (TN= 180 K) (0.5, k) (r. l. u.) as grown (TN= 270 K) f 470 K 300 K e d 6 K 470 K i 300 K h g 6 K (h, 0.5) (r. l. u.)

(2)

図1 プルシアンブルー類似体の構造の模式図[2]

Calc.

図 3 Co 2p XAS スペクトル(計算) Co[Cr(CN)6]2/3·zH2O humid(青色), dry(赤色)

Exp

図 2 Co 2p XAS スペクトル(実験) Co[Cr(CN)6]2/3·zH2O humid(青色), dry(赤色)

プルシアンブルー類似体における水分子吸着が金属サイトの電子状態に与える

効果の研究

Study on the effect of water adsorption on the electronic state of metal sites in Prussian

blue analogues

井上高延1、宮脇淳1,2,3、崔藝涛3、所裕子4、中川幸祐5、大越慎一5、原田慈久1,2,3

(1東大新領域、2東大物性研、3東大放射光、4筑波大院数物、5東大院理化)

T. Inoue1, J. Miyawaki1,2,3, Y. Cui3, H. Tokoro4, K. Nakagawa5, S. Ohkoshi5, Y. Harada1,2,3

(1Grad. Sch. Frontier Sci., The Univ. of Tokyo; 2ISSP, The Univ. of Tokyo; 3UT-SRRO; 4Grad. School of

Pure and Appl. Sci., Univ. Tsukuba; 5Dept. of Chem., Grad. School of Sci., The University of Tokyo)

金属イオンがシアノ基により交互に架橋され、面心立方構造を形成するプルシアンブルーの類似 体(図1)は様々な特徴を有しており、二次電池の正極材料や電子ペーパー材料などの様々な用途 に向けた開発が行われている。 プルシアンブルー類似体の1つである (CoxMn1-x)[Cr(CN)6]2/3·zH2Oは、湿度に応答 して磁化が変化する特異な機能を持つ[1]。 この特異な性質は、欠陥サイトの金属元 素にH2O分子が吸着/脱離することによる 配位構造の対称性の変化によって説明さ れる。しかしながら、磁気特性のミクロ な起源はまだ実験的に解明されていない。 本研究では、湿度誘起磁性の起源を電子 状態の観点から明らかにするため、x=1の 母物質であるCo[Cr(CN)6]2/3・zH2Oに水分 子 を 吸 着 さ せ て Co 2p X 線 吸 収 分 光 (XAS)スペクトルを観測した。 図2にCo 2p吸収の結果を示す。加湿に よ っ て 6 配 位 の Co 2 価 成 分 に 対 応 す る 776eVのピークが顕著に増大する様子が 捉えられている。 本発表ではクラスターモデル計算プロ グラム(CTM4XAS[3])を用いて行ったフ ィッティングの結果(図3)を中心に、さ らに同試料に対するエタノール吸着の結 果や格子欠陥を持たず分子吸着のない試 料との比較も交え、分子吸着による電子 状態および磁化の制御について議論する。

[1] S. Ohkoshi, K. Arai, Y. Sato, and K. Hashimoto, Nat. Mater. 3, 857 (2004). [2] H. Tokoro, & S. Ohkoshi, Dalton Trans.

40, 6825–6833 (2011).

[3] E. Stavitski, & F. M. F. de Groot, Micron.

(3)

オペランド顕微分光法を用いた GaN-HEMT における

電流コラプス現象の発生機構に関する研究

Study on the mechanism of current collapse in GaN-HEMT using operando

microspectroscopies

大美賀 圭一1, 舘野 泰範2, 河内 剛志2, 駒谷 務3, 永村 直佳4, 今野 隼5,高橋 良暢5,

小嗣 真人5, 堀場 弘司6, 尾嶋 正治7, 末光 眞希1, 吹留 博一1

(1.東北大学通研, 2.住友電気工業, 3.住友電工デバイス・イノベーション, 4.NIMS, 5.東京理科大学, 6.KEK/PF, 7.東京大学)

Keiichi Omika1, Yasunori Tateno2, Tsuyoshi Kouchi2, Tsutomu Komatani3, Naoka Nagamura4,

Shun Konno5, Yoshinobu Takahashi5, Masato Kotsugi5, Koji Horiba6, Masaharu Oshima7,

Maki Suemitsu1, Hirokazu Fukidome1

(1.Tohoku-Univ. RIEC, 2.Sumitomo Electric Industries, Ltd., 3.Sumitomo Electric Device Innovations, Inc., 4.NIMS, 5.Tokyo University of Science, 6.KEK/PF, 7.The University of Tokyo)

AlGaN/GaN 界面に二次元電子系を形成することを特徴とする GaN-HEMT(High Electron Mobility Transistor)は高電子移動度かつ高キャリア密度といった優れた性質を有している。ゆえに、GaN-HEMT は次 世代の大出力・高周波デバイスとして期待され、特にミリ波帯での高信頼性な高出力動作に向け研究が盛んに 行われている。このGaN-HEMT が抱える大きな課題の一つとして電流コラプス現象が挙げられる。電流コラ プス現象とは、高電圧ストレス印加により、オン抵抗が増加する現象である。この現象は、ゲート及びドレイ ンへの高電圧印加により発生する局所電界集中による表面準位の電子トラップにより引き起こされていると 推論されている。しかしながら、この推論は主に巨視的な電気的評価によるものであり、原因となる化学種の 特定や発生機構の解明には至っていないのが現状である。 本発表では、実動作下にあるデバイスの表面の電子状態を微視的かつ元素選択的に観察することができるオ ペランド顕微 X 線光電子分光測定[1]により、電流コラプス現象を引き起こす表面準位による電子捕獲過程を 明らかにすることを目的とした研究結果を報告する。本測定にはSPring-8 BL07LSU に設置されている空間 分解能70 nm を有する 3D nano-ESCA[2]を用いた。 図1にオペランド顕微X 線光電子分光測定結果を示す。Ga 3dの束縛エネルギーが、表面準位がない理想的 な表面から予想される変化よりもドレイン側に広がっ て緩やかに変化していることが明らかとなった。この変 化は高電圧ストレス印加に起因する表面準位への電子 捕獲によって発生する表面電位の変化で説明できる。ま た、捕獲された電子の密度は9.5×1012 [cm-2] 程度であ ることをデバイスシミュレーションから明らかにした。 また、SiN 膜のパッシベーションにより電子捕獲が抑制 されることを定量的に明らかにした。

[1] H.Fukidome et al., APEX, 7, 065101 (2014)

[2] K.Horiba et al., Rev. Sci. Instrum., 82, 113701 (2011) Fig 1. spectrum of the sample without and with SiN Changes in the binding energy of the Ga 3d passivation layer.

(4)

偏光変調型軟 X 線光源による磁気光学効果の研究

Magneto-optical effect using polarization modulated soft X-ray source

久保田 雄也1, 2,平田 靖透1, 2,田口 宗孝 3,宮脇 淳1,山本 達1, 2,保原 麗2

山 本 真吾1, 2, 山 本 航平 1, 2, 染 谷 隆史 1, 2, 田 久 保 耕 1, 横 山 優一 1, 2, 荒 木 実穂子 1

藤澤 正美1,原田 慈久1,角田 匡清4,和達 大樹1, 2,辛 埴 1,松田 巌1, 2

(東大物性研1,東大理 2,奈良先端大 3,東北大工4

Yuya Kubota1, 2, Yasuyuki Hirata1, 2, Munetaka Taguchi3, Jun Miyawaki1, Susumu Yamamoto1, 2,

Rei Hobara2, Shingo Yamamoto1, 2, Kohei Yamamoto1, 2, Takashi Someya1, 2, Kou Takubo1,

Yuichi Yokoyama1, 2, Mihoko Araki1, Masami Fujisawa1, Yoshihisa Harada1, Masakiyo Tsunoda4,

Hiroki Wadati1, 2, Shik Shin1, and Iwao Matsuda1, 2

(ISSP 1, the Univ. of Tokyo 2, NAIST 3, Tohoku Univ. 4)

磁気光学カー効果(MOKE)は光と磁性体の相互作用による現象であり、磁性測定手法の一つ として 19 世紀より利用されてきた。我々のグループは、SPring-8 BL07LSU にて図 1(a)に示すよ うな分割型クロス・アンジュレータ(BL07 ID)を整備し、偏光制御された高エネルギー分解能・ 高輝度の軟 X 線光源を実現した[1]。その光源を使って Fe 薄膜[Ta (2 nm)/Cu (2 nm)/Fe (30 nm)/MgO]の L 殻吸収端における共鳴 MOKE 測定を実施し、図 1(b)に示したカー回転角スペクト ルを得た。この結果を現象論、量子論それぞれに基づく計算と比較し、共鳴 MOKE に対する考 察を深めた。 さらに、BL07 ID を構成する電磁石位相器に交流電流を流すことで、左右の円偏光が連続的に 変化する連続偏光変調光源の開発に成功した。これは BL07 ID の特性を活かして初めて実現す る、世界唯一の放射光光源である。この変調光源を用いることで今まで可視光領域でしか実現し ていなかった MOKE 測定、光学遅延変調法[2]が軟 X 線領域で利用できる。我々は光学遅延変調 法を使って鉄薄膜のカー回転角のみならず、これまで測定が難しかった楕円率との同時測定に、 軟 X 線領域で初めて成功した。これら二つの磁性パラメータを測定することで、磁性体の重要 な物理量である 誘電率テンソル の非対角項を完 全に決定できる。 本講演では新し い変調光源とそ れを用いた手法 開発の詳細を述 べるとともに、 光学遅延変調法 の結果について 報告する。

[1] S. Yamamoto et al., J. Synchrotron Rad. 21, 352-365 (2014). [2] K. Sato, Jpn. J. Appl. Phys. 20, 2403 (1981).

図 1:(a) SPring-8 BL07LSU における MOKE 測定の全体図。挿入図は測定系

の拡大図。(b) L3殻吸収端における Fe 薄膜のカー回転角スペクトル。青

(5)

硬 X 線光電子分光による Ca

2

RuO

4

の電場印加下の電子状態観測

Observation of the electronic structure of Ca

2

RuO

4

under electric field using hard x-ray

photoemission spectroscopy

柴田 大輔、下中大也、川本雅人、大槻太毅、吉田鉄平 宍倉愛、Chanchal Sow、米澤進吾、前野悦輝(京都大学) 池永英司(JASRI/SPring-8) 中村文彦(久留米工大)

D. Shibata, D. Shimonaka, M. Kawamoto, D. Ootsuki, T. Yoshida A. Shishikura, C. Sow, S. Yonezawa, Y. Maeno (Kyoto Univ.)

E. Ikenaga (JASRI/SPring-8) F. Nakamura (Kurume Inst. Tech.)

層状ルテニウム酸化物Ca2RuO4はモット絶縁体 であり、温度、組成、圧力など様々な物理量に依 存して金属絶縁体転移を起こすことが知られて いる[1,2]。さらに電場によっても金属絶縁体転 移を起こすことが報告された[3]。このとき、必 要な電場はモットギャップより遥かに小さく、1 mm程度のサンプルならば乾電池程度の電圧で金 属絶縁体転移を起こす。同サイズの一般的な絶縁 体が絶縁破壊を起こすにはキロボルト程度の電 圧が必要であることと対照的である。このような 非常に弱い電場で誘起される金属絶縁体転移に おいて、電子状態がどのように変化するのか非常 に興味が持たれる。また最近、電流をかけた状態 で50 K以下の低温にするとグラファイトと同等 の巨大な反磁性が出現すると報告された[4]。こ のことからディラックコーンに似た電子構造が 生じている可能性が指摘されており、強相関、 非平衡、トポロジーといった様々な分野から興 味を持たれる。

本研究では、SPring-8 BL47XU にてCa2RuO4

に 電 流 を 印 加 し な が ら 硬 X 線 光 電 子 分 光 (HAXPES)を行い、電流印加によるスペクトル 形状の変化を観測した。ジュール熱の影響を排 除するため試料に温度計を取り付け、温度を監 視しながら測定を行った。図1に210 KでのEF付 近の光電子スペクトルを示す。0 mAから2 mAの 電流印加に付随して1.8 eVのピーク強度が下が り、ギャップが閉じていく。これは絶縁体状態 での軌道秩序が電流印加とともに融解し、金属 化が進んでいることを意味している。さらに10 mAの電流を加えると明瞭なフェルミ端が出現 し、電場印加による金属絶縁体転移が観測され た。図2に室温での電流印加に伴うギャップサイズの変化を示す。挿入図のように直線の切片を ギャップサイズとし、変化を見積もると電流の増加に伴いギャップが閉じている。この傾向は電 気抵抗測定の結果から指摘されており[5]、本研究によりモットギャップが閉じる様子が直接観 測された。 本発表ではCa2RuO4の電子状態について得られた光電子スペクトルから電場印加による金属 絶縁体転移と巨大反磁性の起源について議論する。 References

[1] S. Nakatsuji and Y. Maeno, Phys. Rev. Lett. 84, 2666 (2000). [2]P. Steffens, et. al., Phys. Rev. B 72, 094104 (2005).

[3] F. Nakamura et. al., Sci. Rep. 3, 2536 (2013). [4] C. Sow et. al., arXiv:1610.02222.

[5]R. Okazaki et al., J. Phys. Soc. Jpn. 82 103702 (2013).

図 1: Ca2RuO4 の EF近傍の光電子スペクトル の変化(T=210 K)。電流印加に伴いスペクトル 形状が変化し、10 mA では完全に金属化してい る。 図 2: Ca2RuO4 のギャップサイズの変化(T= 300 K)。電流印加に伴いギャップが閉じてい る。右上は EF近傍のスペクトル。

(6)

フェムト秒時間分解電子線回折を用いた

金属薄膜の格子ダイナミクスの研究

Ultrafast lattice dynamics of transition metal thin films

studied by femtosecond electron diffraction

高橋健吾,中村飛鳥,下志万貴博,中野匡規,岩佐義宏,石坂香子 東大工

K. Takahashi, A. Nakamura, T. Shimojima, M. Nakano, Y. Iwasa, K. Ishizaka Department of Applied Physics, University of Tokyo

近年、フェムト秒レーザーを外部刺激とした固体の励起緩和過程の観測から電子系と格子系の 分離が可能になりつつある。このような過渡現象を調べる「時間分解型」の実験手法として、電 子の応答を見る光電子分光や光学反射率測定、格子の応答を見る X 線回折や電子線回折などが 挙げられる。これらの実験手法は互いに相補的な関係にあり、固体の光応答を統合的に理解する ためには複数のプローブによる観測が必要である。これまで時間分解構造解析実験のプローブと して主に X 線が用いられてきた。近年ではレーザースライシング法や自由電子レーザーの開発 が進み、フェムト秒オーダーの超短パルス X 線が実用化されている。一方の電子線による構造 解析では、フェムト秒レーザーにより生成したパルス電子をプローブとして利用する手法が海外 から報告されている[1]。特に卓上サイズの装置によりフェムト秒の時間分解能を達成できる点 に特色がある。 我々は東京大学工学部においてフェムト秒時間分解電子線回折装置の建設を行ってき た。図 1(a)に本装置の概略図を示す。光学系で分岐されたレーザー光の一方は試料を励起し、 他方には遅延時間をつけてフォトカソードに照射しパルス電子を生成する。60kV に加速された パルス電子は透過型配置において薄片試料を透過し、得られた回折像の時間発展を計測する。本 装置では同じ励起条件において反射率及び透過率の時間分解測定もあわせて行うことができる。 本研究では、金属薄膜 Au、Mo、Cu の格子系および電子系のダイナミクスを時間分解電子線回 折および時間分解反射率測定を用いて観測した[2]。Au 薄膜の電子線回折強度は光励起により緩 やかに減少するのに対し[図 1(b)]、反射率は急激な減少を示した後に増大する振る舞いが見られ る[図 1(c)]。これは電子系から格子系へエネルギーが移動し両者が約 10 ps において準平衡状態 に到達することを示唆している。2温度モデルを仮定した解析から各元素における電子格子相互 作用定数を定量的に見積もることに成功した。講演では、光応答の励起密度依存性や電子格子相 互作用定数の元素依存性について議論する予定である。

[1] A. H. Zewail, Annu. Rev. Phys. Chem. 57, 65 (2006). [2] A. Nakamura et al., Struct. Dyn. 3, 064501 (2016).

図 1 (a) フェムト秒時間分解電子線回折装置の概略図。時間分解能は 750 fs である。(b,c) 光励起後の Au 単結晶薄膜における(6 0 0)回折強度の時間変化と反射率の時間変化。そ れぞれ格子温度と電子温度の時間発展を示す。

(7)

遷移金属ダイカルコゲナイド VTe

2

の超高速格子ダイナミクス

Ultrafast lattice dynamics of transition metal dichalcogenide VTe

2

中村飛鳥, 下志万貴博, 松浦正俊, 池浦晃至, 上谷学, 酒井英明A

, 石渡晋太郎, 石坂香子

東大工, 阪大理A

A. Nakamura, T. Shimojima, M. Matsuura, K. Ikeura, M. Kamitani, H. SakaiA, S. Ishiwata, K. Ishizaka

Univ. of Tokyo, Osaka Univ.A

近年、音響光学材料の開発を目的とした固体中の歪み制御技術に注目が集まっている。特にフ ェムト秒レーザーを用いた GHz-THz 領域の周波数を有するコヒーレント音響フォノンの生成メ カニズムが盛んに研究されている[1]。レーザー照射により生成された音響フォノンは一般に縦 波により固体中を伝搬する。これに横波成分(剪断歪み)を付加するためには、固体における対 称性の破れあるいは大きな面内異方性を必要とする。これまで一部の半導体や強誘電体の限られ た面方位においてのみ剪断歪み波の生成が検出されていたが、より振幅が大きく汎用性の高い材 料が求められていた。本研究では、時間分解電子線回折法を用いた格子ダイナミクスの直接観測 により、一次元鎖構造をもつ遷移金属ダイカルコゲナイド VTe2が室温において大きな剪断歪み 波を生成することを見出した。 VTe2は高温では三方晶の層状構造(1T)を有しており、480 K において面内に V 原子のジグ ザグ鎖を伴う単斜晶相(1T")への構造相転移を示す。室温における VTe2の透過型電子線回折か ら、面内の一次元鎖構造を反映した回折像が得られた[図 1(a)]。時間分解電子線回折法はフェム ト秒パルス電子をプローブに、フェムト秒レーザーをポンプとして用いることにより、多くの回 折点の強度・位置・広がりの時間発展を追跡することができる手法である。図 1(b)には、波長 1028 nm、励起密度 0.13 mJ/cm2のポンプ光を照射した 1T"-VTe2薄片の(3 1 0)及び(-3 -1 0)の回 折強度の時間依存性を示す。回折強度は約 35 ps の周期で振動しており、さらに両者の間で振動 の位相がπずれていることがわかる。このような回折強度変化の指数依存性はポンプ光によって 励起されたせん断 歪み波の生成を示 唆している。本ポ スター発表では、 さらに速い時間領 域における観測結 果も紹介し、本物 質におけるコヒー レント音響フォノ ンの生成メカニズ ムについて議論す る。

[1] M. Lejman et al., Nature Communications 5 4301 (2014).

図 1 (a)室温における 1T"-VTe2の電子線回折像。(b)(3 1 0)および(-3 -1 0)

(8)

光電子回折分光法で明らかにするマグネタイトの電子物性

Electronic properties of magnetite clarified by photoelectron diffraction spectroscopy

橋本由介、田口宗孝、松井文彦、松田博之、大門寛(奈良先端大) 松下智裕(高輝度光科学研究センター)

Yusuke Hashimoto, Munetaka Taguchi, Fumihiko Matsui, Hiroyuki Matsuda and Hiroshi Daimon (Nara Institute of Science and Technology, NAIST)

Tomohiro Matsushita

(Japan Synchrotron Radiation Research Institute, JASRI)

マグネタイト中のFe原子には2つの原子サイトFe(A)、Fe(B)がある(図1)。Fe(B)サイトには Fe3+Fe2+が存在しそれらがマグネタイトの電気伝導を担うと考えられているが、約122 Kで起 きる金属絶縁体転移機構について議論が続いている。またFe(B)サイトのFe3+Fe2+は常温にお いて価数揺動状態と言われている。我々はこれらの電子物性を理解するために光電子回折分光法 を用いて原子サイトごと、価数ごとの原子構造解析に取り組んでいる(図2)。オージェ電子がつ くる回折パターンを取得するとX線吸収分光およびX線磁気円二色性測定が可能となる。本発表 では、マグネタイトのFe 2p 内殻スペクトルおよびFe L 吸収端における光電子・オージェ電子 回折パターンの原子サイトごとの分光実験について報告する(図3)。 本手法はAuger電子が生成する回折パターンを利用することでX線吸収分光(XAS)やX線磁気 円二色性(XMCD)も応用できる。さらに硬X線を利用することで硬X線光電子分光(HAXPES)に も応用できる。混合原子価化合物の電子状態分析、局所原子構造の物性解明を目指す材料開発研 究者との共同研究を期待している。 図1 マグネタイトの結晶構造。 図2 (a) 原子サイト分離光電子分光法の概念図。 (b), (c) Fe(A)およびFe(B)原子の光電子回折パターン。 図3 (a) オージェ電子収量 X 線吸収分光による Fe

L

2,3 吸収端の

hv

-

E

k 測定。 (b), (c) hv = 710.4 eV および 711.0 eV のオージェ電子回折パターン。

(9)

硬 X 線光電子分光と軟 X 線吸収分光で調べる

銅酸化物母物質超伝導体 Nd

2

CuO

4

薄膜の電子構造

Electronic structure of superconducting parent cuprate Nd

2

CuO

4

studied by hard X-ray

photoemission and soft X-ray absorption spectroscopies

堀尾眞史1, Y. Krockenberger2, 山本航平1,3, 横山優一3, 田久保耕3, 平田靖透3, 坂本祥哉1,

輿石佳佑1, 保井晃4, 池永英司4, 辛埴3, 山本秀樹2, 和達大樹1,3, 藤森淳1

(東大理1, NTT 基礎研2, 東大物性研3, JASRI/SPring-84)

M. Horio1, Y. Krockenberger2, K. Yamamoto1,3, Y. Yokoyama3, K, Takubo3, Y. Hirata3, S. Sakamoto1,

K. Koshiishi1, A. Yasui4, E. Ikenaga4, S. Shin3, H. Yamamoto2, H. Wadati1,3, A. Fujimori1

(Dept. of Phys., Univ. of Tokyo1, NTT BRL2, ISSP, Univ. of Tokyo3, JASRI/SPring-84)

T’型結晶構造を持つ銅酸化物高温超伝導体の母物質は反強磁性的なモット絶縁体であり、元素 置換により電子をドープすることで超伝導が実現するとされてきた。しかし近年、T’型銅酸化物 の薄膜試料では母物質を還元アニールするだけでも超伝導が発現することが示され[1,2]、その電 子状態に興味が持たれていた。T’型銅酸化物では試料中の不純物酸素が超伝導を阻害しており、 薄膜成長後に還元アニールを施してその過剰酸素を取り除くことにより超伝導が発現すると考 えられている。T’型銅酸化物の母物質をアニールすることによって発現する超伝導状態を理解す るためには、超伝導発現の鍵となる還元アニールが及ぼす変化を正しく理解することが重要であ る。 本研究では、T’型銅酸化物高温超伝導体の母物質薄膜 Nd2CuO4の硬 X 線光電子分光(HAXPES) 測定と軟 X 線吸収分光(XAS)測定を行い、アニールによる電子構造の変化を調べた。図 1 に 得られた HAXPES スペクトルを示す。伝導電子が内殻正孔を遮蔽することにより現れる Cu 2p3/2 スペクトルのピーク[3]の強度がアニールによって劇的に増大しており(図 1(a))、伝導電子の 量が増加したことがわかる。一方で Nd 3d5/2ピークはアニールによって高束縛エネルギー側へシ フトした(図 1(b))。そのシフト量が、元素置換によって電子を 15 %ドープした際の化学ポテン シャルのシフト量[3]と同等であることから、アニールによって 15 %程度電子がドープされたこ とが示唆される。Cu L3端の XAS スペクトル(図 1(c))に見られる強度減少もアニールによって Cu 3d 軌道の占有度が増加したことを示しており、銅酸化物母物質超伝導体 Nd2CuO4は Ce 置換 されていないにもかかわらず、還元アニールの結果ハーフフィリングより多くの電子を含んでい ることを示唆している。

[1] A. Tsukada et al., Solid State Commun. 133, 427 (2005). [2] Y. Krockenberger et al., Sci. Rep. 3, 2235 (2013). [3] M. Taguchi et al., Phys. Rev. Lett. 95, 177002 (2005).

図 1. Nd2CuO4の内殻スペクトル。(a,b) Cu 2p3/2, Nd 3d5/2 HAXPES スペクトル。

(10)

Bi2212 における O

K

-edge 共鳴光電子分光の偏光依存性

Polarization Dependence of Resonant Photoemission Spectroscopy

at O K-edge on Bi2212

桃野浩樹,田口宗孝,松 田 博 之 , 橋 本 由介,深 見 駿 ,岡 本 隆 志 ,

田 中 一 光 ,米 田 允俊,比嘉友大,大門寛(奈良先端科学技術大学院大学)

Hiroki Momono,Munetaka Taguchi,Hiroyuki Matsuda,Yusuke Hashimoto,Shun Fukami,Takashi Okamoto,Ikko Tanaka,Masatoshi Yoneda, Yudai Higa and Hiroshi Daimon (NAIST)

Bi 系銅酸化物高温超伝導体 Bi2Sr2CaCu2Ox (Bi2212)は液体窒素よりも高い臨界温度 Tc(約 90K) で超伝導特性を示し、高価な希土類元素や毒素元素含んでいないことから様々な分野への応用が 期待されている。しかし、超伝導の発現機構は今だ明らかではなく、発見から 30 年近くたった 現在でもその解明のため超伝導材料の価電子帯に関する光電子分光実験が広く行われている。し かし、銅酸化物高温超電導体のフェルミ準位近傍の光電子強度は一般に低い。一般に、価電子帯 の低いスペクトル強度の問題を克服するために遷移金属のL吸収端での共鳴光電子分光が行わ れるが、銅酸化物高温超電導体は電荷移動型絶縁体であるためフェルミ準位よりかなり深い位置 に存在する下部ハバードバンドが増大されてしまう(1) そこで我々はこの問題を克服する一つの試みとして酸素K吸収端での共鳴光電子分光測定を 行った。実験は高分解能広立体角 2 次元光電子顕微分光器(DELMA)を用い SPring-8 東大ビーム ライン BL07LSU にて行った。Bi2212 に対し、 酸素 K 吸収端および銅 L 吸収端において共鳴光 電子分光の偏光依存性を測定した。その結果、大きな偏光依存性及びフェルミ準位付近で強い共 鳴増大が酸素の K 吸収端、P 偏光で確認された。さらに、酸素共鳴において

Binding エネルギ

ー14eV 付近の共鳴増大は Bi2212 の O-KVV オージェで、P 偏光でのみ増大する成分が

確認された。

(a)広範囲 (b)フェルミ準位近傍

図 1 共鳴光電子分光の信号強度比較

(1)L.H. Tjeng, C.T. Chen, S. Cheong, T.B. Laboratories, M. Avenue, and M. Hill, 45,

(11)

グラフト密度が高分子電解質ブラシ中の水の局所構造に与える効果

Graft density effect on local structure of water in polyelectrolyte brush

○山添 康介1、檜垣 勇次2,3、犬塚 仁浩2、宮脇 淳1,4,5、崔 藝涛5、高原 淳2,3

原田 慈久1,4,5

(1東大新領域・2九大院工・3九大先導研・4東大物性研・5東大放射光)

YAMAZOE, Kosuke1; HIGAKI, Yuji2,3; INUTSUKA, Yoshihiro2; MIYAWAKI, Jun1,4,5; CUI, Yi-Tao5;

TAKAHARA, Atsushi2,3; HARADA, Yoshihisa1,4,5

(1Grad. Sch. Frontier Sci., The Univ. of Tokyo; 2School of Eng., Kyushu Univ.; 3IMCE, Kyushu Univ. 4ISSP, The Univ. of Tokyo; 5UT-SRRO;)

【緒言】ポリマーブラシは、高分子の一端を基板表面に 固定した高分子薄膜である。ポリマーブラシが固定化さ れた表面では、摩擦特性や防汚性なども向上する [1]。 また、グラフト密度を向上させるとタンパク質の付着抑 制特性が向上すると報告されている [2]。水和膨潤した 高分子電解質ブラシ中の水は、数ナノメートルの高分子 鎖間隙に入り込む影響で構造化することが放射光赤外吸 収分光 [3] 等で報告されている。しかし、高分子電解質 ブラシ中の水の構造化のメカニズムや実際に形成される水素結合ネットワークと防汚性等 の機能との相関については、未解明な点も多い。そこで、グラフト密度が水の詳細な水素 結合構造に与える効果を明らかにするために、軟X線吸収・発光分光を用いて PMTAC ブ ラシ (Fig.1) 中の水の水素結合に関与する電子状態を測定した。 【実験手法】SPring-8 BL07LSU の超高分解能軟X線発光分光システム [4] に、大気圧下の 液体試料に直接軟X線を照射できる溶液フローセルを導入することにより、軟X線吸収・ 発光分光測定を実現した。 【結果】PMTAC ブラシ中の水の XES の結果において、ブラシ中の水が基本的に水素結合 し、しかし歪んだ水素結合ネットワークを形成していることが明らかとなった[5]。本発表 では、XES で得られた結果から PMTAC ブラシにおけるグラフト密度がブラシ中の水の 局所構造に与える効果について考察する予定である。 参考文献

[1] M. Kobayashi et al., Langmuir, 28, 7212 (2012). [2] Feng, W. et al., Biomaterials 27 847 (2006). [3] D. Murakami et al., Langmuir 29, 1148 (2013). [4] Y. Harada et al., Rev. Sci. Instrum. 83, 013116 (2012). [5] K. Yamazoe et al., submitted.

O O

n

N Cl

Fig.1 Chemical structure of poly [2-(methacryloyloxy) ethyl trimethylammonium chloride] (PMTAC).

(12)

硬・軟 X 線回折でみる La

1/3

Sr

2/3

FeO

3

薄膜の

電荷・磁気秩序の膜厚依存性

Thickness dependence of charge and magnetic orderings in La

1/3

Sr

2/3

FeO

3

thin films

measured by hard and soft x-ray diffraction

山本航平1,2, 平田靖透1,2, 堀尾眞史2, 横山優一1,2, 田久保耕1, 簔原誠人3,

組頭広志3,山崎裕一4,5, 中尾裕則3, 村上洋一3, 藤森淳2, 和達大樹1,2

(東大物性研1, 東大理2, KEK 物構研3, 東大工4, 理研 CEMS5)

K. Yamamoto1,2, Y. Hirata1,2, M. Horio2, Y. Yokoyama1,2, K. Takubo1, M. Minohara3, H. Kumigashira3, Y. Yamasaki4,5, H. Nakao3, Y. Murakami3, A. Fujimori2, H. Wadati1,2 (ISSP, Univ. of Tokyo1, Dept. of

Phys., Univ. of Tokyo2, IMSS, KEK 3, Dept. of Appl. Phys., Univ. of Tokyo4, CEMS, RIKEN5)

Perovskite 型の鉄酸化物である La1/3Sr2/3FeO3は転移温度190 K で電気抵抗率のとび

を示し、<111>方向に-Fe3+-Fe5+-Fe3+-Fe3+-Fe5+-Fe3+-という 3 倍周期の電荷秩序、

および6 倍周期の磁気秩序を示すことが知られている[1]。これらの秩序状態に対する膜厚によ る制御は、簔原らによる電気抵抗率の測定で調べられている[2]。この結果によると電気抵抗率 のとびは膜厚~13 nm で消失しており、膜厚による転移の抑制が示されている。しかし膜厚減少 に伴って電気抵抗率が増大しており、示された臨界膜厚近傍ではとびが不明瞭になっていること や磁気、電荷秩序を直接観測していない点などが課題として残っていた。我々は磁気、電荷秩序 をそれぞれX 線回折で調べることとした。

用いた試料はpulsed laser deposition により作成された La1/3Sr2/3FeO3(膜厚 5, 15, 17,

37, 78 nm)/SrTiO3(111)である。電荷秩序は KEK Photon Factory BL-4C で非共鳴の硬 X 線 (12.4 keV)によって、(4/3, 4/3, 4/3)の回折を用いて調べた。磁気秩序は BL-19B で共鳴軟 X 線散 乱(Fe 2p3/2→3d 吸収端、707 eV)を用いて、(1/6, 1/6, 1/6)の回折を用いて調べた。回折ピークの 半値幅の逆数として相関長を計算した結果を Fig. 1(a)に示す。磁気秩序の相関長が、膜厚によ る制限を受ける面直方向だけではなく、面内方向の相関長も膜厚に比例して変化することが分か る。これは秩序が等方的に広がっていることを示唆する。Fig. 1(b)に示される転移温度の膜厚依 存性は小さい。電荷および磁気秩序に由来する回折ピークは膜厚15 nm の La1/3Sr2/3FeO3薄膜 で観察され、膜厚5 nm の薄膜では観測されなかったことから、臨界膜厚は電荷秩序の相関長に 近い5-15 nm と分かった。これらの相関長の関係を Fig. 1(c)に示す。薄膜全体に広がった磁気 秩序は、薄くしていくにしたがって膜厚による制限を受けて相関長が減少していき、電荷秩序と 同程度となる膜厚が臨界膜厚を与えている。すれすれ入射による表面回折による結果からは、表 面近傍においても、バルクと同程度の相関長が観察され、臨界膜厚が表面由来ではないことも確 認された。この点も併せて報告する。

[1] J. Q. Li et al., Phys. Rev. Lett. 79, 297 (1997). [2] M. Minohara et al., J. Appl. Phys. 120, 25303 (2016).

(a) (b) La1/3Sr2/3FeO3/SrTiO3(111) 30 20 10 0 Correlation length (nm) 0 20 40 60 80 Thickness (nm) Magnetic ordeting In-plane Out-of-plane Charge Ordering In-plane Out-of-plane T = 130 K Charge disproportionation Average valence state

tc 220 200 180 160 140 Temperature (K) 80 60 40 20 0 Thickness (nm) Magnetic ordering Charge ordering Decrease thickness ξmag ξch ξch ξmag ξch ~ ξmag ~ thickness ξch < ξmag ~ thickness (c)

Fig.1 (a) La1/3Sr2/3FeO3薄膜の電荷秩序、磁気秩序の相関長。

(13)

軟 X 線域における内殻共鳴第二次高調波発生の観測

Core-level resonance of second harmonic generation in the soft X-ray region

山本真吾A、近江毅志B、久保田雄也A、高橋良暢C、鈴木雄太C、平田靖透A、山本航平A、湯

本博勝D、小山貴久D、大橋治彦D、大和田成起E、登野健介D、矢橋牧名E、繁政英治F, G、山本

達A、小嗣真人C、和達大樹A、有馬孝尚B,H、辛埴A、松田巌AA東大物性研、B東大新領域、

C東京理科大、DJASRI、ERIKEN 放射光科学研究センター、FUVSOR、G総研大、H理研CEMS)

Shingo YamamotoA, Tsuyoshi OmiB, Yuya KubotaA, Yoshinobu TakahashiC, Yuta SuzukiC, Yasuyuki HirataA, Kohei YamamotoA, Hirokatsu YumotoD, Takahisa KoyamaD, Haruhiko OhashiD, Sigeki OwadaE,

Kensuke TonoD, Makina YabashiE, Eiji ShigemasaF,G, Susumu YamamotoA, Masato KotsugiC, Hiroki WadatiA, Taka-hisa ArimaB,H, Shik ShinA, Iwao MatsudaA (AInstitute for Solid State Physics, The Univ. of

Tokyo, BDeparment of Advanced Materials Science, CThe University of Tokyo, Tokyo University of Science, DJASRI, ERIKEN SPring-8 Center, FUVSOR Facility, GSokendai, HRIKEN CEMS) 可視域の非線形光学効果は、これまで実験室系のレーザーを用いて物性研究への適用がなされ てきた。これらの中で2 次の非線形光学効果の一つである第二次高調波発生(Second Harmonic Generation, SHG)は、基本波のエネルギーに対してその 2 倍のエネルギーを持つ光が生成され る過程である。電気双極子の寄与のみを考慮した場合、SHG 測定は、空間反転対称性が破れて いる系のみの信号を得ることができる。そのため、この手法は表面・界面の研究で重要な役割を 果たしてきた。一方、短波長域でのSHG については、近年になって、X 線領域のレーザーであ

るX 線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser, XFEL)の登場によって、硬 X 線領域で初

めて観測された[1]が、軟 X 線域においては未だ SHG の観測はなされていない。今回、軟 X 線 域で日本のFEL である SACLA(図)を使って、初めて SHG を観測した結果について発表する。 硬 X 線の場合は、物質に対する透過能が高いため、透過配置で非線形回折を用いて位相整合 条件を満たすことで、SHG 測定が可能となっていた。一方、軟 X 線域では、光が物質に強く吸 収されるため、透過配置による測定は難しい。透過配置を取る場合は、対象は気体もしくは、非 常に薄くした固体にするといった制約が出てくる。そのため、今回の実験では、より広範な対象 への適用を期待できる反射配置での測定に挑戦した。反射配置では、透過配置に比べて、得られ るSHG 強度が小さいことが見込まれていた[2]。それは、透過配置では位相整合を利用するため に、物質内での基本波の光と、倍波の周波数成分を持つ分極成分がコヒーレントに相互作用して、 倍波の光が増幅されるが、反射配置ではこの過程がないためである。今回は、倍波の光のエネル ギーを、対象の系に含まれる元素の内殻の吸収端に合わせるように基本波を選ぶことで、共鳴効 果によるSHG 強度の増大によって初めての SHG 観測に成功した。軟 X 線域で共鳴下の SHG 観測は、この測定手法に元素選択性を付与し、空間反転対称性を持たない系の元素選択的な信号 を得ることを可能にした。発表では、軟X 線域での SHG 測定の詳細、この手法の将来展望につ いて述べる。 図 自由電子レーザーSACLA を用いた第二次高調波発生測定の模式図

[1] S. Shwartz et al., Phys. Rev. Lett. 112, 163901 (2014) [2] R. W. Boyd, Nonlinear Optics (Academic Press, 2008)

(14)

図 2: 776.5 eV で励起したスペクトルと クラスターモデル計算の比較

高分解能軟 X 線発光分光で観測した

LaCoO

3

薄膜のスピン状態とエピタキシャル歪みの関係

High-energy-resolution resonant inelastic x-ray scattering study

of epitaxial strain effects on spin states in LaCoO

3

thin films

横山優一1,2, 平田靖透1,2, 山本航平1,2, 田久保耕1, 宮脇淳1,2, 原田慈久1,2, 山崎裕一3,4,

藤岡淳3, 中村優男4, 田口宗孝5, 大門寛5, 川崎雅司3,4, 十倉好紀3,4, 和達大樹1,2

(1東大物性研, 2東大理, 3東大工, 4理研 CEMS, 5奈良先端大)

Y. Yokoyama1,2, Y. Hirata1,2, K. Yamamoto1,2, K. Takubo1, J. Miyawaki1,2, Y. Harada1,2, Y. Yamasaki3,4, J. Fujioka3, M. Nakamura4, M. Taguchi5, H. Daimon5, M. Kawasaki3,4, Y. Tokura3,4, and H. Wadati1,2

(1Institute for Solid State Physics, Univ. of Tokyo, 2Graduate School of Science, Univ. of Tokyo,

3Graduate School of Engineering, Univ. of Tokyo, 4RIKEN Center for Emergent Matter Science, 5

Nara Institute of Science and Technology)

ペロブスカイト型のLaCoO3は、Coの3d軌道に電子が6個あり、結晶場とフント結合および磁気

相互作用などからeg2t2g4の高スピン状態(HS)・eg1t2g5の中間スピン状態(IS)・eg0t2g6の低スピ

ン状態(LS)という3つのスピン状態を取り得る。バルク単結晶では、最低温度では非磁性体と なるためLSになるが、500 K以上の高温では絶縁体-金属転移を示し磁化率のキュリー定数から HSになると考えられている。その中間温度領域においては、X線吸収分光の実験とクラスター計 算による解析から、温度の上昇と共にHSの割合が徐々に増加すると報告されている[1]。 一方、LaCoO3を薄膜にした場合、バルクとは異なるスピン状態になることが報告されている。 エピタキシャル薄膜では、面内の格子定数が基板のものにロックされて一軸圧ではGPa程度の圧 力が必要なレベルの格子歪みを実現することが可能なため、歪みによるスピン状態の変化が起こ

っていると考えられる。例えば、LSAT(110)基板上(LSAT: (LaAlO3)0.3(SrAl0.5Ta0.5O3)0.7 )に成長

させたLaCoO3の薄膜は、絶縁体にもかかわらず強磁性を示すが、この起源はスピンと軌道の整 列に由来する[2,3]。これは、Coが低温でもLSとならず、ISとHSが共存していることを意味する。 一方、LSAT(111)基板上では周期の違う秩序があることが報告されている[4]。このように、基板 からのエピタキシャル歪みとスピン状態の間には関連性があり、基板を選ぶことによってCoの スピン状態を制御できると期待される。しかし、スピン状態と歪みの関係は未だよく分かってお らず、電子状態を直接観測することによる解明が望まれている。 我々は、SPring-8のBL07LSUにおいて放射光軟X線を用いた共鳴軟X線発光分光(RIXS)によ って、LSAT(110)とLSAT(111)基板上にエピタキシャル成長させたLaCoO3薄膜およびバルクの電 子状態を調べた。RIXSスペクトルの励起エネルギー依存性の結果を図1に示す。励起エネルギー が高い時は蛍光が非常に強くd-d遷移が埋もれてしまうが、A: 776.5 eVやB: 777.9 eVの励起エネ ルギーではd-d遷移のピークを分離して観測することに成功した。図2にA: 776.5 eVで励起したス ペクトルと理論計算による解析結果を示す。HSに対応する0.3 eVのピークとLSに対応する1.4 eV のピークの間に新たなピークが観測され、歪みによる新しいスピン状態に対応すると考えられる。 発表では、理論計算による解析結果から、基板がスピン状態に与える影響について議論する。

[1]M. W. Haverkort et al., Phys. Rev. Lett. 97, 176405 (2006). [2]J. Fujioka et al., Phys. Rev. Lett. 111, 027206 (2013). [3]Y. Yamasaki et al., J. Phys. Soc. Jpn. 85, 023704 (2016). [4]J. Fujioka et al., Phys. Rev. B 92, 195115 (2015).

Inte n sity (a rb . u n its) 4 3 2 1 0 -1

Energy Loss (eV)

h = 776.5 eV Calculations LaCoO3 /LSAT(110) 300 K 40 K HS (Oh) LS (Oh) HS (D2h) LaCoO3 /LSAT(111) LaCoO3 Bulk Strain 1.0 % 0.5 % 0 % HS (D2h) LS (Oh) HS (Oh) Inte n sity (a rb . u n its) 25 20 15 10 5 0 -5

Energy Loss (eV) Co 3d 2p emission 40 K D : 779.4 eV B : 777.9 eV A : 776.5 eV LSAT(110) LSAT(111) C : 778.4 eV E : 781.1 eV F : 793.8 eV 図 1: RIXS スペクトルの励起エネルギー依存性

(15)

Controlling the SPV relaxation time by modifying the

surface property of WSe

2

劉 若亞 (東大物性研究所)

Liu Ro-Ya (ISSP, Univ. of Tokyo)

WSe2, a member of a vast family of transition metal dichalcogenides (TMDs), is very suitable

for the solar cell devices due to its high optical absorption coefficient in IR and visible light regions. Recently, two-dimensional devices based on TMDs have attracted the attention in condensed matter physics community. Electron-hole carriers generated by photon excitation and its dynamics such as the carrier density, surface photonvoltage (SPV), carrier relaxation time, …etc, are important references for the design of solar cells [1]. By doping metals or other dopants, the electric field near the surface and the relative SPV shift can be engineered to make stable and affordable solar cell devices. Using time-resolved x-ray photoemission spectroscopy (TRXPS), the carrier dynamics can be investigated by the evolution of SPV change with the time resolution of sub-nanosecond. In this

study, we have examined the SPV relaxation of WSe2, K/WSe2, and C60/WSe2 by TRXPS to realized

the effect of two kinds of dopants on TMDs surfaces. SPV relaxation of WSe2 and K/WSe2 have

been measured by the shift of W 4f core level in TRXPS measurement. Alkai metal successfully

doped WSe2 and about 0.1 eV deeper band bending forms at K/WSe2 surface, which is proved from

the XPS and ARPES data. Also, the SPV amount of WSe2 has been enhanced from 0.06 eV to 0.1 eV

after K doping. However, the SPV relaxation time of WSe2 is dramatically decreased from 8 ns to 1

ns by K doping. The fast SPV relaxation of K/WSe2 can be explained by the fast electron-hole

recombination at the conduction band of the 1st layer WSe

2 [2].

[1] A. Jakubowicz, D. Mahalu, M. Wolf, A. Wold, and R. Tenne, Phys. Rev. B 40, (1989).

[2] J. M. Riley, W. Meevasana, L. Bawden, M. Asakawa, T. Takayama, T. Eknapakul, T. K. Kim,

M. Hoesch, S.-K. Mo, H. Takagi, T. Sasagawa, M. S. Bahramy, and P. D. C. King, Nat. Nanotechnol. 10, 1043 (2015).

(16)

酸素

K 端共鳴非弾性 X 線散乱を用いた Bi2223 高温超伝導の研究

Oxygen K-edge RIXS study on Bi2223 superconductor

Hao WangA,B, J. MiyawakiA,B, K. IshiiC, T. TohyamaD, S. AdachiB,E, T. WatanabeE, S. ShinA,B and Y. HaradaA,B

ADept. of Adv. Mat. Sci., UTokyo, BISSP, UTokyo, CQST, DDep. of App. Phys., Tokyo Univ. of Sci., EGrad. Sch. of Sci. and

Tech., Hirosaki Univ.

One of the ideal systems to study how to improve Tc is the Bismuth-based cuprates whose Tc become higher by

varying the number of the superconducting layer n from 1 to 3. However, the high quality single crystals are exceedingly difficult to synthesize [1] for n over 3 and meanwhile, Tc has started to decline. Among these layered materials, our research

interests focus on a hole-doped Bi2Sr2Ca2Cu3O10+δ (Bi2223) superconductor which has the highest Tc=110 K and more

notable three superconducting layers. Some researchers [2] believed that higher Tc resulted from the interaction between

superconducting layers, but the story seems much more complex. The inner layer is different from the outer layers spatially and essentially; the carrier density is different between the inner and

outer layers [3, 4], which is consistent with the decline of Tc with

superconducting layers over 3. Figure 1 shows the phase diagram of cuprates. Superconductivity phase often appears in the vicinity of the charge density wave (CDW) phase, and hence CDW and superconductivity are supposed to interplay or compete with each other [4]. Thus, Bi2223 provides us a unique opportunity to discuss the relationship between CDW and superconductivity. The early RIXS studies of La2-xBaxCuxO4 at the O K-edge [5] demonstrated the powerful

capability of resonant scattering methods to observe the charge order. This contrasts with the conventional non-resonant diffraction techniques, which are principally less sensitive to subtle electronic ordering

phenomena such as CDW. In addition, O K-edge RIXS has an advantage over the Cu L-edge in the hole-doped case, because the carriers (holes) are mainly on the Oxygen sites, thereby making O K-edge RIXS more directly accessible to CDW. Thus, we carried out an O K-edge RIXS study on a hole-doped Bi2223 high Tc superconductor to reveal the relationship between superconductivity and CDW.

In this presentation, we will present the observation of CDW tail at q=0.265 (r. l. u.) by O K-edge RIXS and discuss a relationship between CDW and superconductivity from the temperature dependence of this CDW signals. The observation of a charge excitation will also be talked about. Dispersive excitation was unexpectedly observed at the energy range of 500–900 meV. Since a spin-flip excitation is forbidden at O K-edge, low energy paramagnons are highly unlikely to be found. At the same time, two-paramagnons are also unlikely to be assigned to the observed excitation, because the dispersion of the paramagnon and two-magnon excitation do not generally reach up to 900 meV. Thus, we believe that the observed dispersive excitation mainly comes from the contribution of the charge. It is the distinctly important aims in the future to clarify the mechanism of CDW and whether it is related to the pseudogap and the high-energy charge excitation which we found in Bi2223.

[1] MPM Dean et al. Phys. Rev. B 90, 220506(R) (2014). [2] S Chakravarty et al. Nature 428, 53 (2004).

[3] H Kotegawa et al. Phys. Rev. B 64, 064515 (2001). [4] R Comin et al. Nature 375, 561–563 (1995) [5] P Abbamonte et al. Nature Physics 1, 155 (2005)

図 3  Co 2p XAS  スペクトル(計算)
図   1 : (a) SPring-8 BL07LSU における MOKE 測定の全体図。挿入図は測定系 の拡大図。 (b)  L 3 殻吸収端に おける Fe 薄膜のカー回転角スペクトル。青 線が実験値、赤線が量子計算による結果をそれぞれ示す。
図 1: Ca 2 RuO 4  の E F 近傍の光電子スペクトル の変化(T=210 K)。電流印加に伴いスペクトル 形状が変化し、 10 mA では完全に金属化してい る。  図 2:  Ca 2 RuO 4  のギャップサイズの変化 ( T=  300 K )。電流印加に伴いギャップが閉じてい る。右上は E F 近傍のスペクトル。
図 1 (a)室温における 1T&#34;-VTe 2 の電子線回折像。 (b)(3 1 0)および(-3 -1 0) の回折強度の時間依存性。
+4

参照

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