2007 年 10 月 31 日
PNG のまぐろ漁業事情
目次 1. パプアニューギニアの概要... 1 2. PNG の沿岸・沖合漁業... 1 (沿岸自給自足漁業)... 2 (沿岸商業漁業)... 2 (内水面漁業)... 2 (沖合漁業)... 2 3. PNG のまぐろ漁業... 3 3-1. まぐろ漁業の概要... 3 3-2. 生鮮まぐろ延縄漁業 ... 5 3-3. Pump boat による手釣りまぐろ漁業... 6 4. PNG のまぐろまき網漁業と缶詰会社との関係... 8 4-1. 概要... 8 4-2. Frabelle PNG 社(Lae)... 10 (漁船勢力)... 10 (製品生産体制)... 104-3. RD Tuna Canners 社(Madang) ...11
(漁船勢力)...11
(製品生産体制)... 12
4-4. South Seas Tuna Corporation 社(Wewak)... 12
(漁船勢力)... 12 (製品生産体制)... 13 むすび... 13 参考文献... 14
極洋水産株式会社
技術士 川本太郎
改訂11. パプアニューギニアの概要
パプアニューギニア(Papua New Guinea 以下 PNG という)は、日本の南方約 5000km の中西部太平洋域、南緯 1∼12 度、東経 141∼157 度に位置し、世界 で2番目に大きな島であるニューギニア島の東側半分と、同島の東側に広がる 600 以上の群島域から成り立っている。 国土面積は約46.2 万平方キロメートル(日本の約 1.25 倍)、海岸線総延長は 1.7 万 km、排他的経済水域は約 240 万平方キロメートルに及ぶ。 2004 年時点の人口は 562 万 人(世銀報告)、民族はパプア人、 ニューギニア人、そして多種多 様な高地族など独自の文化を持 つ 500∼700 の部族から構成さ れていると言われている。その ため使用される言語の数も多く、 公用語の英語をはじめとして、 ピジン語、モツ語等、パプアニ ューギニア全土で800 以上に及 ぶとされている。 また同国は政府の下に19 の州があり、各州政府が半自治権を有する分散統治 制度を採用している。特に沿岸域の漁場開発と資源管理については各州政府が 大きな影響力を持っている。 2. PNG の沿岸・沖合漁業 PNG の漁業は、まぐろ漁業と まぐろ以外を対象とした沿岸・ 沖合漁業に大別できる。2 章で は後者の概要について述べ、ま ぐろ漁業については 3 章以降で 説明する。
FAO Fishery country profile 2002 と PNG 政府が取りまとめ たTuna Fisheries Report 2007 を総合すると、1999 年の沿岸・ 沖合漁業による漁業生産(外国 漁船等による漁獲を除く)は、右 表の通り合計で約4.6 万トン、5450 万 US ドルと推定される。さらに沿岸・沖 Misima Lae Kavieng Rabaul Wewak
Port Moresby Alotau Vanimo Manus Madang
PNGの沿岸・沖合漁業(1999年推定値)
ジャワ鯉、ニジマス、ティラ ピア等 サメ延縄漁業 エビ漁業、ロブスター漁 貝類採取(高瀬貝、真珠 貝)、なまこ漁 リーフ魚、浮魚類漁業 リーフ内採取、手釣り、銛 漁、刺網、カゴ漁等 25∼50万人が従事 特徴 2,000 26,000 沿岸自給自足 漁業 不詳 1,123注1 沖合漁業 2,100 5,500 沿岸商業漁業 5,450 46,123 合計 1,350 13,500 内水面漁業 (養殖含む) 生産額 万US$ 生産量 トン 漁業種別 ジャワ鯉、ニジマス、ティラ ピア等 サメ延縄漁業 エビ漁業、ロブスター漁 貝類採取(高瀬貝、真珠 貝)、なまこ漁 リーフ魚、浮魚類漁業 リーフ内採取、手釣り、銛 漁、刺網、カゴ漁等 25∼50万人が従事 特徴 2,000 26,000 沿岸自給自足 漁業 不詳 1,123注1 沖合漁業 2,100 5,500 沿岸商業漁業 5,450 46,123 合計 1,350 13,500 内水面漁業 (養殖含む) 生産額 万US$ 生産量 トン 漁業種別出典:FAO Fishery country Profile, April 2002
合漁業は次の4つに分類される。 (沿岸自給自足漁業) PNG の沿岸自給自足漁業としては、環礁内の採取や銛による漁業、小型カヌ ーによる手釣り漁業などが挙げられる。この種の漁業は量的にも金額的にも PNG 国内漁業の中核を占めているが、漁獲物は部落内で物々交換に供されるな どその実態は良く解明されていない。また年間漁獲量は2.6 万トン以上、生産額 は約2,000 万ドル、平均単価 0.77$/kg と見積もられ、PNG 全土で 25∼50 万人 が沿岸自給自足漁業に従事していると推定されている。 (沿岸商業漁業) 前述の自給自足を目的とした沿岸自給自足漁業の他に、エビトロール漁業、 ロブスター漁、高瀬貝や真珠貝採取、なまこ漁、リーフ魚や沿岸性浮魚類を対 象とした刺し網漁などが商業目的に行われている。1999 年の沿岸商業漁業によ る漁獲量は5,500 トン、2,100 万ドルと推定されている。 (内水面漁業)
FAO Fishery country profile によれば 1999 年の PNG の内水面漁業生産は約 1.35 万トン(生産額 1,350 万ドル) と見積もられている。 漁業活動 は Sepik 河流域と、Fly∼Purari デルタの2つの地域に集中して行 われている。対象魚種はナマズ類 やコイ科淡水魚で、PNG 全土で 約 12.5 万人が自給自足目的でこ のような漁業に従事している推測 されている。また、近年はジャワ 鯉、ニジマス、ティラピア等の養 殖も開始された。 (沖合漁業) 前述の通りPNG では、まぐろ漁業以外の漁業の多くが沿岸部もしくは内水面 で行われているが、唯一の例外としてサメ延縄漁業が挙げられる。
PNG の Tuna fishery Report によれば 2006 年は 9 隻の漁船が沖合部で操業 し、1,234 トンの漁獲が報告されている。このうち 91%に相当する 1,123 トン がサメ類で占められ、残りがまぐろカジキ等の混獲である。 Fly デルタ Wewak Madang Lae Port Moresby Purari デルタ Sepik河流域
3. PNG のまぐろ漁業 3-1. まぐろ漁業の概要
PNG 最大の水産資源はまぐろ類である。FAO の Fishery country profile(2002 年)によれば、同国漁業水域におけるまぐろ類の MSY は年間 30∼40 万トン、 水揚時評価額は少なくとも3.8 億ドルと推定されている。 PNG のまぐろ漁業は下図の通り(1) 生鮮まぐろ延縄漁業、(2) 手釣りまぐろ 漁業、そして(3) まぐろまき網漁業の3つに大別できる。
PNGまぐろ漁業の概要
(3) まぐろまき網漁業 (1) 生鮮まぐろ延縄漁業 (2) 手釣りまぐろ漁業 漁獲量:3,300トン(1%) 漁船:19トン型FRP27隻 漁獲物:生鮮キハダ、メバチ等 漁獲量:約200トン 漁船:Pump boat (カヌー型) 漁獲物:生鮮キハダ、メバチ等 自国まき網船 PNG基地外国船 外国船 海 外 刺 身 市 場 6隻 33隻 28万トン (67%) 13万トン (32%) PNG 缶詰工場 (5万トン市場) ※BKK市場 (70万トン市場) (2006年漁獲量:41万トン) 136隻 ※タイ、バンコク缶詰市場 また、(3) まぐろまき網漁業はさらに「PNG 船籍まき網船」、「PNG 国内に操 業基地を持つ外国船」そして二国間協定、米マルチ協定1、FSM 協定2等の入漁 協定による「外国船」の3つに分類されている。 日本をはじめとして多くの国では、自国漁船による漁獲量を漁業生産量と定 義し漁獲統計を取りまとめている。 しかしPNG の場合は、沿岸国としての立 場から自国漁船の漁獲量に加えて、自国経済水域内の外国船による漁獲量も自 国の漁業生産量として取り扱っているところに基本的考え方の相違がある。 1 米マルチ協定:米国と FFA 加盟国の間で締結された包括的な入漁協定、米国漁船はこの 協定により加盟国の200 海里全てに入漁可能となる。 2 FSM 協定:自国の漁業振興を目的とし、認定した漁船に加盟国内の EEZ の操業を単一許 可で認める協定、PNG、ナウル、キリバス、ミクロネシア、マーシャル、パラオ、ソロモ ンの7ヶ国が加盟この基準に基づき漁業種類別の登録隻数と漁獲量をまとめると下表の通りと なる。すなわち2006 年の登録漁船数は自国船外国船を含めて 221 隻、PNG 経 済水域内における漁獲量は約41.5 万トンと推定されている。 PNG漁業水域内のまぐろ類漁獲量(2006年) 単位:トン 隻数 まぐろ類 漁獲量 1隻平 均 比率 合計 221 414,982 1,878 100% まぐろ延縄漁船 27 3,356 124 1% まぐろ手釣り漁船 10 200 20 0% サメ延縄漁船 9 110 12 0% PNG船籍まき網船 6 PNG基地外国まき網船 33 136 276,613 2,034 67% 台湾 91,620 韓国 77,854 フィリピン 32,554 うち 日本 26,263 バヌアツ 25,484 FSM協定船 11,369 米国 7,586 中国 3,883 注1:手釣り漁船の漁獲量は聞き取りによる推定値 注2:サメ延縄漁業によるまぐろ類漁獲量、総漁獲量は1234トン 出典:Tuna Fisheries Report Papua New Guniea, July 2007
134,703 3,454 32% 外国まき網船(PNG200海里内 の漁獲量) 注 注 一方下図に示した通り、過去5年間のPNG 水域におけるまぐろ類漁獲量の推 移を見ると、2003 年以降概ね 30∼40 万トン前後で推移しているが、そのうち 約6∼7 割は外国まき網船による漁獲量で占められていることがわかる。日本の 海まき船は2006 年 4 月に 19 年ぶり2国間協定が締結され、2006 年に 30 隻、 2007 年には 34 隻が入漁している PNG漁業水域のまぐろ類漁獲量の推移 0 100 200 300 400 500 2002 2003 2004 2005 2006 千トン 外国まき網船 PNG船+基地船 まぐろ延縄漁船 5 7% 69% 65% 60 % 67 % 以下各漁業の概要について述べる。
3-2. 生鮮まぐろ延縄漁業 PNG では自国のまぐろ延縄漁業を保護するため、外国漁船の入漁を認めてい ない。国内のまぐろ延縄漁業は前述の通り、主として日本の19 トン型まぐろ延 縄漁船(氷蔵)によって行われている。 漁獲物の多くは首都Port Moresby で 水揚げされ主として日本やオーストラリア等の刺身市場に空輸されている。 近年の輸出ピークは2004 年で、2,111 トンが輸出され 9.6 百万 US$の外貨を 獲得した。しかし 2005 年には輸出量が 866 トンに急減し、輸出額も 3.5 百万 US$に減少したが、近年延縄の生産量は回復しているようである。 こ れ らの 漁 業に 従事 し てい る主 な 企業 体と し ては 、Equatorial Marine Resources 社と Sanko Bussan (PNG) Limited 社との合弁会社が挙げられる。 2007 年 9 月 11 日付けの Pacific Tuna Supplement によれば、同社は現在 14 隻 の延縄船を運航しており、1月に250∼300 トンの生鮮まぐろを日本等の海外市 場に輸出しているとのことである。
PNG Tuna Fishery Management Plan によればまぐろ延縄漁船の許可枠は 100 隻(1 隻1日あたり 1,200 針まで)、漁獲量はキハダ、メバチ合わせて年間 10,000 トン以下と規定されているが、PNG Tuna fisheries Report によれば、 2007 年の小型まぐろ延縄船の登録隻数は 42 隻、実稼働は 26 隻のみと報告され ている。 2007 年 3 月の調査時点においては 13 隻の小型まぐろ延縄漁船が Port Moresby 港内で確認され、そのうち 3 隻が漁獲物の水揚げを行っているのが確 認できた。 港内で水揚中のまぐろ船 PNG生鮮まぐろ輸出の推移 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 2001 2002 2003 2004 2005 M T 0 2 4 6 8 10 12 百 万 U S $ 輸出量MT 輸出額:百万US$
3-3. Pump boat による手釣りまぐろ漁業 Pump boat による手釣りまぐろ漁業 は、フィリピンの伝統的漁業の一つで ある。フィリピン南部のジェネラルサ ントスでは約 2,500 隻が操業している と言われている。
2007 年 Tuna Fishery Report によれ ば、PNG にこの漁法が初めて導入され たのは2002 年で、当初フィリピンから 2 隻が持ち込まれ試験的に操業を行っ た。その後 PNG 政府(水産行政を担 当 し て い る National Fisheries Authority 以下 NFAという)はこの漁業によるまぐろ資源開発の可能性を認め、 2006 年には 15 隻分の許可を発給したとされている。しかし 2007 年時点の稼働 隻数は10 隻のみでその全てが PNG の Lae を基地に操業している。
Pomp boat 事業を主体的に行ってきたのは Lae を基地にまき網事業とまぐろ 缶詰生産を手がけているフィリピンのFrabelle 社である。Frabelle 社の主力事 業は缶詰生産事業であり当初生鮮まぐろ事業のノウハウは持っていなかった。 そのため同社がPNG で刺身まぐろ事業に着手するにあたって、フィリピンのジ ェ ネ ラ ル サ ン ト ス で 既 に 同 事 業 の 経 験 が あ る Frascomar 社 と 合 弁 会 社 (Frabelle-Frascomar 社)を設立した。
Pump boat 漁業開始にあたっては、Lae 周辺の複数の部落と交渉、建造資金 と乗り出し費用を同社が各部落に貸し付け、さらにフィリピンより熟練した乗 組員を派遣して操業を開始した。 2006 年現在同社所管の Pump boat は 10 隻となったが、船は全て異なる部落 により管理されている。Pump boat1隻あたりの乗組員は 4∼6 名で各部落の中 から優秀な者が選抜されて乗船している。 また、Pump boat の主機はトラック の中古エンジンを流用しており、1隻 あたりの建造コストは約 4.2 万キナ、 また漁具や燃料費餌代等の乗出し資金 を合わせると事業の開始には約 5 万キ ナの資金を要するとのことであった。 当初この資金は同社が漁民に貸し付け ていたが、現在は政府所管の金融機関 National Development Bank による 融資に切り替わった。
LaeのPump boatの水揚げ
写真提供:Frabelle Frescomar Corp.
漁民にPump boatの建造資金を貸し付けている National Development Bank
Frabelle-Frescomar社のPump boat事業
Frabelle-Frescomar社 10隻 漁獲物 (年間約200トン) YF: 93% BE:2% ALB:5% Aグレード:輸出向け Bグレード:国内向け Cグレード:缶詰原料 14kg以下:2.5K/kg 1534kg:4K/kg 35kg以上:5K/kg 選別 買取価格 1隻の建造コスト:4.2万K 乗り出し費用:0.8万K 合計: 5万K 政府から融資 部落1 部落2 部落3 部落10 水揚高 (返済) ツナステーキ加工 米国向け輸出 1K(PNGキナ)=43.5円(2007年4∼9月平均レート)www.oanda.comPump boat の漁場は Lae から 5∼10 海里沖合域で、操業は専ら固定パヤオを 利用した手釣り操業である。一航海は 3∼10 日を要し一隻あたり最大で約2ト ンのキハダやメバチ、また季節的にはビンナガを漁獲する。同工場への一ヶ月 あたりの平均搬入量は10 隻合計で平均約 18 トンとのことで、年間約 200 トン の生鮮まぐろの搬入が見込まれている。 このようにPump boat により漁獲された生鮮まぐろは、工場で3つのグレー ドに選別され、A グレードは輸出向け、B グレードは国内向け、そして鮮度の 悪い C グレードは缶詰原料として利用される。漁獲物の買い取り価格は定額制 で輸出向けのAグレードの 場合1尾あたりの魚体重量 が 14kg 以下の場合 2.5 キ ナ/kg、15∼34kg で 4 キナ /kg、そして 35kg 以上の魚 は5 キナ/kg であった。 選別された漁獲物は工場 内で裁割、凍結、バンドソ ーによるカット、整型、パ ック詰め加工され出荷され る。ツナステーキの製品歩 留まりは約 50%であるの で、同社では年間約100 ト ン製品を生産していると推 測される。
ツナステーキ製造工程
選別 裁割 カット 凍結 パック詰め 出荷4. PNG のまぐろまき網漁業と缶詰会社との関係 4-1. 概要 PNG には 2007 年現在下記3つのまぐろ缶詰もしくはロイン生産拠点がある が、いずれもフィリピンや台湾などの外国資本によって運営されている。
PNGのまぐろ缶詰(ロイン)会社
まき網船14隻 (うち12隻はFCF所属) 従業員1600名 まき網船14隻 2007年から缶詰生産 も開始した まき網船14隻 従業員3500名 備考 日産(ロイン) 100トン Lae Frabelle (PNG) limited (フィリピン資本) 日産(缶詰) 150トン Madang RD Tuna Canners LTD. (フィリピン資本) 日産(ロイン) 110トン Wewak South seas Tunacorporation (台湾資本) 生産能力 (原魚ベース) 基地 会社名 まき網船14隻 (うち12隻はFCF所属) 従業員1600名 まき網船14隻 2007年から缶詰生産 も開始した まき網船14隻 従業員3500名 備考 日産(ロイン) 100トン Lae Frabelle (PNG) limited (フィリピン資本) 日産(缶詰) 150トン Madang RD Tuna Canners LTD. (フィリピン資本) 日産(ロイン) 110トン Wewak South seas Tuna
corporation (台湾資本) 生産能力 (原魚ベース) 基地 会社名
Source : Hooks & Baits Issue No.6, 8, National Fisheries Authority Pacific Tuna Supplement, Sept. 11, 2007
PNG 政府は自国のまぐろ産業振興の一環として、缶詰工場の建設等外国資本 による陸上投資を奨励しており、奨励策の一環として缶詰工場等に原料供給す るためのまき網漁船許可の発給や、外国船には許可されていない「群島水域」 への入漁を許可するなどの優遇策を講じている。このようにPNG のまぐろまき 網漁業と缶詰会社は密接な関係を持っている。 以下PNG のまぐろまき網漁業の概要について述べる。 PNG のまき網船は「外国船」と「PNG 船籍船並びに PNG を基地としている 外国船」の2種類に大別される。PNG 政府にとって前者は基本的に入漁料収入 を得ることが目的であるの対し、後者は基本的に自国の缶詰工場への原料供給 が目的である。
Tuna Fisheries Report 2007 によれば、後者に属する漁船として PNG 船籍船 6 隻、PNG 基地の外国まき網船が 33 隻、合計 39 隻のまき網船が操業している。
PNG の操業区域は「群島水域」と群島水域外の「200 海里水域」に大別され る。日本船をはじめとする外国漁船の場合「200 海里水域」のみ操業が許可され ているのに対して、これら39 隻については、前述の通り「200 海里水域」と「群 島水域」の両方の操業が許可されている。
PNG操業区域と固定FAD’s敷設位置
Anchored FAD locations in PNG waters in 2002 (Kumoru 2002) 一部改変 群島水域 200海里水域 200海里水域 PNG ミクロネシア連邦 ソロモン諸島 Lae Madang Wewak 固定FAD’s 敷設位置 群島水域内で操業している漁業者の話によれば、群島水域内はSepick 河など の大河から栄養塩類が豊富に供給されるため、域外に比べ海洋生産力が高く、 まぐろ類資源が特に豊富な海域とされている。 そのため域内の操業許可を 持つ PNG 基地船は上図に示 した通り群島水域内外に多数 の固定FAD’s(右図参照)を敷 設し、これらを巡回しながら操 業する形態をとっている。 NFA の 発 行 し た FAD’s Policy によれば、FAD’s の敷 設数は最大1500基と定められ ているが、Kumoru(2002)によ れば、2002 年時点で 800 基の FAD’s がリストアップされて おり、実際にはその2倍以上の数の FAD’s が敷設されているのではないかと述 べられている。 Anchored FAD’s アンカー ヤシの葉 竹いかだ アンカー ヤシの葉 竹いかだ フィリピンやPNGでパヤオと 呼ばれる固定式FAD’s 主として沿岸漁民の手釣り まぐろ操業や大型まき網船 の操業に活用されている。 固定FAD’Sのフロート
4-2. Frabelle PNG 社(Lae) Lae は PNG 第2の都市で、ニューギニア島の東岸に位置し、首都ポートモレ スビーからは空路約50 分、人口約9万人を擁するモロベ州の州都である。 空港は Lae 市の中心部から北東側 に車で約40 分の距離にある。また市 内中心部の南側海岸沿いには商港が あり地域物流の拠点となっている。 Frabelle 社の主力事業は、まぐろ 類ロイン生産事業とまき網事業であ る。さらに近年はこれらの事業に加え て、フィリピンの伝統漁業の一つであ るPump boat による刺身まぐろ事業 をPNG に誘致し、主として米国市場 向けの刺身まぐろ(ツナステーキ)生 産にも着手している。 以下各事業の概要について述べる。 (漁船勢力) まず同社の漁業生産体制として、フ ィリピン船籍(PNG 基地) まき網船 9 隻、PNG 船籍 5 隻、合計 14 隻で、 その他に運搬船 6 隻、火船等の支援 船が12 隻、合計 32 隻の漁船が PNG 海域で操業を行っている。2006 年の 漁獲統計によれば1隻あたりの年間 漁獲量は約3500 トンである。 同社 所属のまき網船数は14 隻であるので、 同社の漁獲量は年間約5 万トンと推定される。 (製品生産体制) 一方、生産拠点として同社は Lae 商港の東側、車で約 5 分の位置にロ イン工場を有している。右図に示した 通り、同社工場は商港に近いという点 で立地条件は良く、同社製品はこの商 港から各地へ輸出されている。 下図は Frabelle 社ロイン工場の配 置図である。生産施設としては、ロイ Lae空港 Frabelle社ロイン工場 Lae市中心部 商港 商港地区 Frabelle社ロイン工場 まき網船:Amaryllis まき網船:Cherry Blossoms 88 漁獲物運搬船 Lae沖に停泊中のFrabelle社所属船
ン工場本体、原料および製品保管用の冷蔵庫(600 トン)、加工時に発生する残滓 を有効利用するためのミール工場、そして汚水処理施設がある。 また2007 年 4 月からは従来のロイン生産に加えて、缶詰生産にも着手する予 定で、敷地内に製缶工場を建設既に試験生産が開始されていた。 また、同社工場の敷地は海には面しているものの、漁獲物水揚げ用の岸壁は なく、水揚げ時に漁船を水深の深い沖合に停泊させ、冷蔵庫近くの岸辺まで総 トン数 40 トンの運搬船を往復させて漁 獲物を冷蔵庫まで運んでいる。そのため 水揚げ効率はあまり高いとは言えない。 一方現状で工場の生産能力は、1日あ たり原魚ベースで最大約100 トン、将来 的には150 トンまで拡大予定とのことで あったが、調査時点の生産量は概ね1日 約 40 トンとのことであった。年間稼働 日数を約300 日と仮定すると、現在の年 間の原料需要量は約1.2 万トンであるの で、残りの約3.8 万トンは、他社に売却したりバンコク等の海外市場に輸出され ているものと推定される。 しかし同社の計画通り日産 150 トンまで生産能力が向上すれば、年間原魚需 要は4.5 万トンとなり、自社所属船の漁獲能力とほぼ釣り合うこととなる。 4-3. RD Tuna Canners 社(Madang)
Madang はビスマルク海に面しポートモレスビーから空路で約一時間の位置 にある。人口は約3万人で沖合には小さな島々が点在し、数多くのダイビング スポットがあることで有名でありPNG でも有数のリゾート地となっている。 (漁船勢力) RD 社の主力事業は、まぐろ缶詰生産 事業とまき網事業である。 NFA のホ ームページ等によれば、RD 社のまき網 船として27 隻が登録されているが、同 社幹部によれば 2007 年現在の漁業許 可数は 18 隻さらに実際可能な隻数は 14 隻(大型まき網船 12 隻、小型まき 網船 2 隻)との事である。前述の通り 1 隻 あ た り の 平 均 漁 獲 量 を 年 間 約 3500 トンと仮定すると、同社の年間漁獲量は約 5 万トンでと推定される。 漁獲物水揚用のクレーン 運搬船の魚をこのクレーンで陸揚げする Madangの岸壁に停泊中のRD社所属船
(製品生産体制) 同社の本拠地はPNG の Madang にあり、 海岸沿いに水揚げ岸壁、2000 トン冷蔵庫 (-20℃)、製氷装置(40t/day)等の漁獲物水 揚げ基地を、また海岸から約 24km 内陸に 入ったところに、缶詰工場および製缶工場を 有している。従業員数は両施設合わせて約 3500 人である。 同社は 1995 年 9 月に Madang で缶詰工 場の建設を開始,1997 年 7 月に日産 20 ト ンで生産開始し、順次設備の増強を図り現在 は原魚ベースで日産 150 トンまで生産能力 の拡大を図ってきた。当時は製品の約 7 割 をEU(主としてドイツ)に輸出していたと のことである。 缶詰工場の生産能力を日産150 トン、年間稼働日数を 300 日と仮定すると年 間の原魚需要は約4.5 万トンとなる。 同社の缶詰生産量が年間約 1800 コンテ ナ(320 万ケース:3.2 万トン)との事なので、製品歩留まりを約 63%とすると、 製品から逆算した原魚需要量(約 5 万トン)は1日あたりの生産量から計算し た数字とほぼ一致する。 今後同社では、さらなる事業拡大を図るため海岸地区に5000 トンの冷蔵庫と 新 た に 缶詰 工 場を 増 設す る 計画 が あり 、 新た な事 業 展開 と の一 つ とし て Frabelle 社同様 Pump boat 事業にも着手する計画との事である。
4-4. South Seas Tuna Corporation 社(Wewak)
Wewak は East Sepik 州の州都であり、ニューギニア島の北岸では最大の町 である。第2次世界大戦中は日本軍の空軍基地が置かれていたことで知られて いる。South Seas Tuna Corporation 社(SSTC)は 1999 年に PNG の Wewak に設立された。同社の主力事業はまき網事業と加工用ロイン生産事業である。 (漁船勢力) PNG 水産局の資料によれば、SSTC 社所属のまき網船は合計 14 隻でうち 12 隻が台湾の漁業会社 FCF 社からの チャーター船であるとされている。 FFA の登録リストと照合してみると 14 隻のうち 13 隻がバヌアツ船籍であ った。 Wewakの岸壁に停泊中のSSTC社所属船 RD社缶詰工場 Madang市街 RD社水揚基地
(製品生産体制)
Pacific Tuna Supplement (2007 年 9 月 11 日発行)によると、SSTC 社は 2004 年に総額 24.2 百万米ドルを投じ てロイン工場と 4000 トン規模の冷蔵 庫(-23 度)を完成させた。当初は 240 名の従業員を雇用し日産2トンで操業 開始したが、徐々に生産体制を整備し、 現在は従業員数2500 名、最大生産能力 日産 110 トン(原魚ベース)まで事業 を拡大してきた。製品の多くはアメリ カ向けであるが一部イタリアやオース トラリア等に輸出されている。 将来的には4000名の従業員を確保し日産 200トンレベルまで事業拡大を計画 であるとのことである。 むすび 冒頭で述べたとおり、PNG 水域におけるまぐろ類の漁獲量は 2006 年には約 40 万トンに達し、中西部太平洋の約 20%、世界全体の漁獲量の約 10%を占め るまでに拡大してきた。 漁獲量の内訳を見ると、現状では全体の6割強が外国入漁船による漁獲で占 められている。同国ではまぐろ資源からもたらされる利益の最大化を目標にま ぐろ漁業の現地化を積極的に推進している。その具体的な現れが、フィリピン や台湾資本を誘致して PNG 各地に建設された缶詰やロイン工場である。 下 図はPNG 冷凍まぐろ類の品目別輸出量の推移を示したものである。 PNGの冷凍まぐろ・缶詰ロイン輸出量の推移 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 2002 2003 2004 2005 2006 トン 缶詰・ロイン(原魚換算) 冷凍まぐろ(Round) 出典:NFA records, 缶詰歩留0.63, ロイン歩留0.5で試算 同図から明らかな通り原料としての冷凍まぐろ類の輸出が減少し、缶詰やロ SSTC社ロイン工場 水揚岸壁 ロイン工場 (冷蔵庫・事務所併設) まき網船
イン製品の輸出が増加している。PNG 国内にある3カ所の缶詰・ロイン工場の いずれも生産規模の拡大を計画しており、今後現地工場の原魚需要はますます 高まることが予想される。そのため従来外国船に発給してきた漁業許可数を削 減し、自国を基地とする漁船数の拡大を図る動きが大きくなりつつある。さら にこのようなまぐろ産業自国化の動きは PNG だけでなく、バヌアツやマーシ ャル諸島等他の島嶼国にも広がりを見せている。 このような国際情勢を考慮すると、日本のまき網漁業もこれまでの様に入漁 料を支払って漁獲し、漁獲物は全て日本に持ち帰るという操業形態だけでは、 かって遠洋トロール漁業が漁場の縮小により撤退を余儀なくされたのと同じ道 を辿りかねない。漁場確保の観点から、今後従来にも増して島嶼国との関係が 重要になることは間違いない。我が国も目に見える形での協力を積極的に推進 して行くことが急務であると言えよう。 以上 参考文献 FAO Fishstat+
FAO Fishery country profile Papua New Guinea, April 2002 Frabelle-Frascomar 社プレゼンテーション資料
NFA website: http://www.fisheries.gov.pg/
Pacific Tuna supplement 2007 年 9 月 11 日号
PNG National Fisheries Authority 発行 Hooks & baits
The development, design and recent status of anchored and drifting Fads in the WCPO (David Itano, Siosifa Fukofuka and Deirdre Brogan)
Tuna Fisheries Report- Papua New Guinea(L. Kumoru and L Koren), WCPFC SC3-2007