今
月
の
特
集
低
線
量
放
射
線
被
曝
の
身
体
的
影
響
坂
本
澄
彦
氏
東北放射線科学センター理事長 東北大学名誉教授 いた、世界で最も信頼のおける四つの文献を根拠にお話を進めてまいります。 一つはICRP報告、二つ目にUNSCEAR報告、三つ目には米国アカデミーによる BEIR報告、最後に広島・長崎の原爆の記録です。以上、四つの文献は、膨大な量に及 ぶ も の で す。 こ れ を 見 れ ば、 低 線 量 被 曝 評 価 に 関 す る 世 界 の 現 状 が 分 か り ま す。 本 日 は、 これらの客観的データに最新のデータも入れながらお話したいと思っています。放射線規制に関与する国際機関について
先ずICRP(国際放射線防護委員会)が、設立された経緯についてご説明します。 一八九五年にレントゲンがエックス線を発見し、その後キュリー夫妻がラジウムを発見 しました。これによって、放射線の医学利用が急速に進みました。ところが、当時は現代 のように線量を測る測定機器もありませんし、線量を決める単位もありませんでした。こ のような状況下において、医療現場ではいいかげんな見通しで放射線を用いていたことに より、放射線障害がたくさん出てきて問題になりました。そこで、放射線の医学利用を進 めるにあたり放射線を安全に使うためにはどうすれば良いか、放射線障害の予防方法を検 討するラジウム委員会がイギリスで発足したのです。はじめに
ただ今ご紹介いただきました坂本です。 福島での事故以降、いわゆる「にわか専門家」がたくさん出てきてマスコミをにぎわせ ているのですが、私には放射線についてほとんど何も知らないままに物申している人が多 いような気がします。 そこで、本日の講演内容は、現在、低線量被曝や急性被曝に関する客観的データに基づそして、一九二五年に第一回目の国際放射線医学会議がロンドンで開催され、ここで初 めて放射線防護が国際的話題となり、国際的な放射線防護委員会が設立されることになっ たのです。つまり、国際放射線防護委員会は、そもそも医療放射線のために設立された委 員会であり、一般公衆の低線量被曝のために作られた委員会ではないのです。その後、少 しずつ活動範囲が広がっていって、現在のような一般の人たちの放射線防護に関する勧告 を行うようになってきたのです。 次に、 国連の科学委員会で ※ UNSCEAR (原子放射線の影響に関する国連科学委員会) の設立経緯についてお話します。第二次大戦後、世界中で行われた核実験によって、地球 環境に数多くの影響を及ぼしたフォールアウト(放射性降下物)の問題が起きました。そ こで、フォールアウトが人間と環境にどのような影響を与えるかについて、各国からデー タを集め調査研究を行いました。設立目的に「原子放射線」とあります様に、UNSCE ARは原子爆弾の影響を調査するために設立されました。 次 に、 B E I R 報 告 に つ い て お 話 し ま す。 B E I R と は、 「 Biological Effects of Ionizing Radiations (電離放射線の生物学的影響に関する委員会) 」のことです。一九八〇 年、 ア メ リ カ の 科 学 ア カ デ ミ ー が「 全 身 照 射 電 離 放 射 線 の 被 曝 に よ る ヒ ト 集 団 へ の 影 響 」 を テ ー マ に、 数 百 ペ ー ジ に 及 ぶ 報 告 書 を 出 し ま し た。 そ の 後、 新 し い デ ー タ を 加 え な が ら 改訂発行しています。 そ し て、 広 島・ 長 崎 の 原 爆 被 爆 者 に 関 す る 膨 大 な デ ー タ が あ り、 こ れ ら を 加 え た 四 つ を カ バ ー す れ ば、 放 射 線 の 影 響 に 関 す る 国 際 的 な 見 解 が 導 き 出 さ れ ま す。 本 日 は、 こ の 四 つ の 報 告 を ベ ー ス に、 新 た な デ ー タ も 加 え な が らお話を進めてまいります。
被曝による影響について
そ れ で は、 低 線 量 被 曝 に よ っ て ど の よ う な 影 響 が あ る の か 考 え て み ま し ょ う。 資 料 ① を ご 覧 く だ さ い。 一 つ 目 は 癌 が ん の 発 生 で す。 癌 と 言 っ て も い ろ い ろ な 癌 が あ り ま す が、 一 番 問考えられる影響
考えられる影響
1 癌の発生
1.癌の発生
白血病、乳癌、肺癌、甲状腺癌 など2.癌以外の疾患の発生
白内障 再生不良性貧血など 白内障、再生不良性貧血など3.遺伝的影響
原爆被爆生存者の調査では認められていない4 胎児被曝の場合の奇形の発生
4.胎児被曝の場合の奇形の発生
資料①題になるのは白血病です。そして乳癌、肺癌、甲状腺癌などが注目されています。二つ目 には癌以外の疾患の発生があります。例えば、白内障や再生不良性貧血が該当します。 三つ目として遺伝的影響があります。この遺伝的影響は、 昔から言われているのですが、 広島・長崎の原爆生存者を対象に行われた調査では、遺伝的影響は現在まで殆ど認められ ていません。 戦後、アメリカは、広島市の比治山に「放射線影響研究所(旧ABCC Atomic Bomb Casualty Commission )」という研究所を作りました。そこでは、原爆被爆者の血液をずっ とストックしています。これによって、個人の記録を過去にさかのぼっていつでも調査が できるようになっているのです。私が東京大学にいた時に助手をしていた人が、その施設 で遺伝的影響を研究する主任をしていたのです。研究の結果、今のところ遺伝的影響は全 く認められないという結論が出ていると云っておりました。 そして四つ目には、胎児被曝の場合における奇形の発生が考えられます。外部から被曝 する場合には、胎児はほとんど母体に守られますからあまり問題にはなりません。胎児被 曝において問題となるのは奇形の発生なのですが、これは外部照射、つまり外から放射線 を照射する場合における影響については、様々な研究がされているのですが、内部照射の 場 合 に は 今 の と こ ろ は デ ー タ が な く 分 か ら な い と い う の が 現 状 で す。 こ れ に つ い て は、 後 ほ ど 改 め て ご 紹 介 い た し ま す が、 例 え ば、 明 ら か に 奇 形 が 発 生 す る よ う な 被 曝 線 量 に つ い て は、 実 験 的 に は 分 か っ て い る の で す が 人 間 の デ ー タ と し て は 出 て き て い な い の が 現 状 で す。 た だ 今、 胎 児 に 対 す る 被 曝 の 影 響 に つ い て お 話 し ま し た が、 例 え ば、 被 曝 の 時 期 に つ い て 受 精 卵 の 状 態 で ま だ 胎 児 と し て 形 を な し て い な い「 胚 」 の 時 代、 そ し て 骨 格 が 出 来 始 め て い る 胎 児 の 時 代、 さ ら に そ の 後 の 三 つ に 分 け て み ま す。 資 料 ② を ご 覧 く だ さ い。 こ こ で は、 千 ミ リ シ ー ベ ル ト 被 曝 す る 場 合 を 例 に お 話 し ま す。 被 曝 時 期 が 受 精 後 ゼ ロ ~ 九 日 の 間
胎児に対する被曝の影響
胎児に対する被曝の影響
ガンマ線の場合1Gy=1Sv(1,000mSv)と考えてよい 資料②における胚死亡の発生は、今のところ認められていません。そして、被曝時期が二週~八 週においても同様に、骨格等の奇形は認められていないのです。ただし、被曝時期が八週 から十五週において、 精神発達遅滞が発生する確率は四掛ける十のマイナス一乗ですから、 千ミリシーベルト被曝すると約四十%の確率で精神発達に異常を来すということが分かっ ています。この資料にある「しきい線量」については、単位がグレイで表示されています が、ガンマ線の場合は、一グレイを一シーベルト(千ミリシーベルト)として考えていた だいて構いません。精神発達遅滞で百二十ミリシーベルトから二百ミリシーベルト、この ぐらいのところに 閾 しきい 値があるのではないかと言われているのです。 ただし、胎児に関しては研究を進めるのが非常に難しいのです。ですから、なかなかき ちんとしたデータが得られていない、というのが現状です。 被曝の影響にはさまざまありますが、その影響の程度は何によって左右されるのでしょ う か。 資 料 ③ を ご 覧 く だ さ い。 一 つ に は、 放 射 線 の 種 類 に よ っ て 違 っ て き ま す。 そ し て、 被 曝 し て い る 時 間 が 短 時 間 な の か 長 時 間 な の か( 線 量 率 )。 そ し て、 被 曝 し た 時 の 年 齢 に よっても左右されますし、被曝時の健康状態や、内部被曝か外部被曝かといった被曝の仕 方によっても変わってきます。被曝条件によって、体にどんな影響が表れるのか、ご説明 し た い と 思 い ま す。 資 料 ④( 次 ペ ー ジ ) を ご 覧 く だ さ い。 一 番 右 に あ る 線 は Ⅹ 線 を 表 し て い ま す。 真 ん 中 の 線 が 中 性 子、 そ し て 一 番 左 が α 線 で す。 α 線 の 特 性 と し て は、 非 常 に 密 度 が 高 い 放 射 線( 放 射 線 が 物 質 を 通 過 す る と き 単 位 長 さ 当 り に 与 え る エ ネ ル ギ ー が 大 き い 事 ) で あ る こ と が 挙 げ ら れ ま す。 こ の グ ラ フ か ら 言 え る こ と は、 α 線 は 少 な い 線 量 で あ っ て も 細 胞 生 存 率 へ の 影 響 が 大 き い と い う こ と で す。 こ の グ ラ フ は、 横 軸 に 線 量、 縦 軸 に 細 胞 生 存 率 を と っ て い ま す。 例 え ば、 横 軸 の 四 グ レ イ の 線 量 の と こ ろ を ご 覧 く だ さ い。 α 線 の 場 合 は、 お よ そ 十 の マ イ ナ ス 三 乗 の 細 胞 生 存 率 と な り ま す が、 中 性 子 の 場 合 は α 線 の 約 五 十 分 の 一 と 細 胞 死 亡 率 は 低 く な り ま す。 Ⅹ
影響の程度はどの様な条件で左右されるか
影響の程度はどの様な条件で左右されるか
1.放射線の種類(線質:LET)
1.放射線の種類(線質 LET)
2.被曝のスピード(線量率)
3 被曝時 年齢
3.被曝時の年齢
4.健康状態
4.健康状態
5.被曝の仕方
(外部被曝か内部被曝か)
資料③線 で は さ ら に 低 く な る の で す。 こ の よ う に、 放 射 線 の 種 類 に よ っ て 生 物 に 対 す る 影 響 は 随 分 異 な っ て き ま す。 私 た ち は、 こ れ を L E T ( Linear Energy Transfer /線エネルギー付 与) が大きい小さいと言っています。つまり、 ど う い う 線 質 で 被 曝 す る か と い う こ と に よ っ て 影 響 は 違 っ て く る の で す。 し か し、 放 射 線 は そ の 透 過 力 に よ っ て 及 ぼ す 影 響 が 異 な り、 α 線 の 場 合 は 透 過 力 が 小 さ い の で 影 響 は 皮 膚 表面に留まることになります。 次 に、 被 曝 す る 時 間 と 線 量 に よ っ て そ の 影 響 が ど の よ う に 変 化 す る か を 見 て み ま し ょ う。 資 料 ⑤ を ご 覧 く だ さ い。 こ の グ ラ フ は 一 時 間 あ た り の 被 曝 線 量 ご と に み た 細 胞 生 存 率 を 示 し て い ま す。 一 番 上 に あ る 線 は 〇・ 一 グ レ イ、 そ の 下 は 三 倍 の 〇・ 三 グ レ イ、 そ の 下 は五倍の〇 ・ 五グレイ、 一番下が二十倍の二 ・ 〇 グ レ イ 被 曝 し た 時 で す。 こ の よ う に、 線 量 率 が 上 が っ て い く と、 細 胞 生 存 率 も 低 く な っ て い き ま す。 こ れ は、 長 期 に 被 曝 し た 場 合 に も 言 え る こ と な の で す が、 放 射 線 が 照 射 さ れ る こ と に よ っ て 細 胞 が 損 傷 を 受 け つ つ も、 そ の 一 方 で、 生 体 が そ の 損 傷 か ら 回 復 す る 現 象 を 起 こ す の で す。 で す か ら、 線 量 率 が 低 い 場 合 に は 回 復 の 割 合 は 大 き く な り ま す。 線 量 率 が 高 い 場 合 は、 あ ま り 放 射 線 の 損 傷 か ら 回 復 し な い う ち に、 次 か ら 次 へ と 弾 を 撃 ち 込 ま れ る よ う に 被 曝 す る こ と か ら、 被 害 が 大 き く な る の で す。 時 間 を か け て ゆ っ く り 被 曝 す る よ う な 場 合 に は、 回 復 す る 度 合 い が 非 常 に 大 き
線量率の違いによる生物効果の差
細胞 傷 細胞は照射中(損傷) を受けながら、一方で その損傷から回復する その損傷から回復する 能力を持っているが、 線量率が高い場合は 損傷が大きく、回復する 力は弱められる。 資料④ 資料⑤い こ と か ら、 仮 に 線 量 が 大 き い 場 合 で あ っ て も 影 響 は 非 常 に 少 な い と い う こ と に な り ま す。 こ の よ う に、 線 量 率 の 違 い に よ っ て 生 物 への影響度も変わってくるのです。
内部被曝の経路とその影響
次に、 内部被曝の経路についてお話します。 資 料 ⑥ を ご 覧 く だ さ い。 先 ほ ど は、 内 部 被 曝 か 外 部 被 曝 か に よ っ て 体 へ の 影 響 は 変 わ っ て く る と 申 し 上 げ ま し た が、 内 部 被 曝 に は 経 路 が三つあります。 一 つ 目 は 経 気 道 摂 取 と い っ て、 呼 吸 器 を 通 し て 被 曝 す る も の で す。 こ の 場 合 は、 吸 入 物 の 粒 子 の 大 き さ や 形 状、 化 学 的 性 質 に よ っ て 影響が違ってきます。 現在、セシウムによる人体への影響が問題になっていますが、例えばセシウムが何かの 物質にくっついているか、それとも非常に小さな粒子として体内へ入り込むかによって影 響は違ってくるのです。加えて、粒子の形状が金平糖の様にギザギザになっているか、仁 丹のように表面がツルツルと丸くなっているかによっても違ってきます。その理由は、体 内に入り込んだ物質は、 血液中を通って体内を巡りますが、 形状によっては肺胞の末端(空 気と血液が触れ合う場所)で引っかかってしまい、そこで悪さをするからです。どのよう な形状のものを吸入するかによって、影響も違ってきます。さらには、粒子そのものが持 つ化学的性質についても大きく関係してきます。以上のように、単にセシウムを吸い込む とは言っても、どういう状態で、どういう大きさ・形状のものを吸い込んだのか等によっ て、人体に及ぼす影響は違って来ます。 二 つ 目 の 経 路 に 経 口 摂 取 が あ り ま す( 資 料 ⑦ 次 ペ ー ジ )。 こ れ は、 消 化 管 を 通 し て 被 曝 するというものです。つまり、飲料水や食べ物と一緒に放射性物質を飲み込むことによっ て被曝します。 三つ目は、経皮摂取と言って皮膚を通して被曝する経路が挙げられます。例えば、皮膚 に傷などがあった時に、その部分から放射性物質が入り込みます。内部被曝の経路(1)
内部被曝の経路(1)
1.経気道摂取(呼吸による被曝)
吸入する放射性物質の
吸入する放射性物質の
1) 粒子の大きさ
2) 粒子の形状
3) 粒子の化学的性質
3) 粒子の化学的性質
などによって及ぼす影響が異なる
資料⑥次 に、 放 射 性 核 種 を 体 内 に 取 り 込 む 際 の 侵 入 経 路 と そ の 影 響 に つ い て お 話 し ま す。 資 料 ⑧ を ご 覧 く だ さ い。 こ の 資 料 は、 呼 吸 器 を 通 す 吸 入 と 消 化 器 を 通 す 嚥 え ん げ 下 に よ っ て、 体 へ の 影 響 が ど れ く ら い 違 う か を 示 し て い ま す。 表 の真ん中に 「決定器官」 と書かれていますが、 例 え ば ヨ ウ 素 で あ れ ば 甲 状 腺 に 集 ま る、 放 射 性 鉄 で あ れ ば 造 血 組 織 に 集 ま る 等、 そ の 核 種 と 臓 器 が 容 易 に 結 合 す る「 親 和 性 」 が あ る 場 合、 そ の 親 和 性 の あ る 臓 器 を 決 定 器 官 あ る い は 決 定 臓 器 と 呼 ん で い ま す。 こ れ に つ い て は 後ほどご説明します。 こ の 表 の 上 段 に あ り ま す が、 ヨ ウ 素 一 三 一 ( I-131 ) を 飲 み 込 ん だ 時( 嚥 下 )、 吸 入 に よ っ て 体 内 に 取 り 込 む 量 を 一・ 〇 と す る と、 決 定 臓 器 で あ る 甲 状 腺 に は 〇・ 七 二 し か 届 き ま せ ん。 と こ ろ が、 こ の 表 の 下 段、 決 定 臓 器 が 全 身 で あ る ト リ チ ウ ム( H -3 ) の 場 合、 吸 入 量 を 一・ 〇 と す る と、 嚥 下 し た 時 に は 二・ 一 六 と 二 倍 以 上 も 上 回 る と い う こ と に な り ま す。 こ の よ う に、 ど の よ う な 核 種 を 飲 み 込 む か 吸 い 込 む か に よ っ て 影 響 が 異 な っ て く る の です。 資 料 ⑨( 次 ペ ー ジ ) を ご 覧 く だ さ い。 放 射 性 物 質 に よ っ て は、 特 定 の 臓 器 組 織 に 集 ま り やすい性質を持つものがあります。 これを 「組 織 親 和 性 」 と 言 い、 放 射 性 物 質 が 集 ま る 臓 器 を「 決 定 臓 器 」 ま た は「 決 定 器 官 」 と 呼 ん で います。 ヨ ウ 素 は 甲 状 腺 に、 鉄 は 造 血 組 織 に、 セ シ
核種の侵入経路と影響
核種の侵入経路と影響
核種を飲
核種を飲み込むか、吸い込むかで
身体の分布状態が異なる
身体の分布状態が異なる
核種
決定器官
吸
嚥
核種
決定器官
吸入
嚥下
131I
I 甲状腺
甲状腺
1 0
1.0
0 72
0.72
3H
全 身
1.0
2.16
内部被曝の経路(2)
内部被曝の経路(2)
2 経口摂取(消化管を通して被曝)
2.経口摂取(消化管を通して被曝)
食物、飲料水などと一緒に飲み込む
3 経皮摂取(皮膚を通して被曝)
3.経皮摂取(皮膚を通して被曝)
皮膚に傷などがあった場合にそこから
放射性物質が入り込む
資料⑦ 資料⑧ウ ム は そ の 六 十 % が 筋 肉 に 集 ま り、 カ ル シ ウ ム や ス ト ロ ン チ ウ ム は 骨 に 集 ま り ま す。 例 え ば、 甲 状 腺 に 集 ま る ヨ ウ 素 で す が、 日 本 の 大 人 は 放 射 性 ヨ ウ 素 を 吸 い 込 ん だ と し て も ほ と ん ど 問 題 あ り ま せ ん。 な ぜ な ら、 日 本 人 の 食 生 活 で は ヨ ウ 素 を 多 く 含 ん だ ワ カ メ や コ ン ブ を 食 べ て お り、 甲 状 腺 に 集 ま っ て い る ヨ ウ 素 の 量 は 飽 和 状 態 に な っ て い る の で、 仮 に 放 射 性 ヨ ウ 素 を 摂 取 し た と し て も 甲 状 腺 に 入 る 余 地 が あ ま り あ り ま せ ん。 一 方、 そ の よ う な 食 習 慣 が 日 本 よ り も 少 な い 外 国 人 の 場 合 は、 甲 状 腺 に ヨ ウ 素 が 集 ま る の で す。 事 故 後 に 言 わ れ た「 安 定 ヨ ウ 素 剤 の 投 与 」 で す が、 原 子 爆 弾 に よ る 被 爆 に 限 ら ず、 放 射 線 に か か わ る 事 故 が 発 生 し た 場 合、 安 定 ヨ ウ 素 剤 は 大 人 よ り も子どもに与えることが必要となります。鉄は造血組織に集まると申し上げましたが、鉄 は割と早く無くなってしまいます。なぜなら、造血組織は専門的には cell-renewal system ( 細 胞 再 生 系 組 織 ) と 言 い、 常 に 新 し い 細 胞 が で き て 古 い 細 胞 が 死 ん で い く と い う 新 陳 代 謝がいつも行われている臓器だからです。つまり、造血組織に集まったとしても次の細胞 へと変化し入れ替わってしまいます。人間には、赤血球や白血球など、体内で作り出され るさまざまな造血の血球がありますが、 変化して入れ替わるまでの時間(ターンオーバー) は個々に異なっても、いずれある時期に全部入れ替わってしまうのです。 よって、造血組織に放射性物質が入ったとしてもあまり問題はありません。しかし甲状 腺は、一度でき上がってしまうと造血組織のような細胞の入れ替えが行われないことから 問題になるのです。 またセシウムは、その六十%が筋肉へと集まります。筋肉は、一度でき上がると新しく 細胞と入れ替わるということが全くない組織ですので、あまり新陳代謝は期待できません が、筋肉は非常に放射線に対して抵抗力が強いという特徴があります。 以上のように、放射性物質が集まりやすい決定臓器ですが、それによって人体に影響を 及 ぼ す か と い え ば ケ ー ス・ バ イ・ ケ ー ス で あ り、 一 概 に は 何 と も 言 え ま せ ん。 な ぜ な ら、
放射性物質と組織親和性
放射性物質 組織親和性
放射性物質によっては特定の臓器組織に 集まりやすい性質を持っているものがある (決定臓器又は決定器官という) (決定臓器又は決定器官という) 例えば 例えば 1.ヨウ素(I)は甲状腺に 2 鉄(Fe)は造血組織に 2.鉄(Fe)は造血組織に 3.セシウム(Cs)は60%は筋に 4.カルシウム(Ca)は骨に 5.ストロンチウム(Sr)は骨に集まる。 5.スト ンチウム(Sr)は骨に集まる。 (しかし、集まった後体外に排出される速度はそれぞれ異なる) 資料⑨放射性物質と組織親和性
放射性物質 組織親和性
放射性物質によっては特定の臓器組織に 集まりやすい性質を持っているものがある (決定臓器又は決定器官という) (決定臓器又は決定器官という) 例えば 例えば 1.ヨウ素(I)は甲状腺に 2 鉄(Fe)は造血組織に 2.鉄(Fe)は造血組織に 3.セシウム(Cs)は60%は筋に 4.カルシウム(Ca)は骨に 5.ストロンチウム(Sr)は骨に集まる。 5.スト ンチウム(Sr)は骨に集まる。 (しかし、集まった後体外に排出される速度はそれぞれ異なる)放射性物質と組織親和性
放射性物質 組織親和性
放射性物質によっては特定の臓器組織に 集まりやすい性質を持っているものがある (決定臓器又は決定器官という) (決定臓器又は決定器官という) 例えば 例えば 1.ヨウ素(I)は甲状腺に 2 鉄(Fe)は造血組織に 2.鉄(Fe)は造血組織に 3.セシウム(Cs)は60%は筋に 4.カルシウム(Ca)は骨に 5.ストロンチウム(Sr)は骨に集まる。 5.スト ンチウム(Sr)は骨に集まる。 (しかし、集まった後体外に排出される速度はそれぞれ異なる)決定臓器に集まった放射性物質がどのようなスピードで排泄されていくかについては、そ れぞれ異なるからです。 例えば、セシウムは六十%が筋肉に集まりますが、比較的早く体から抜け出します。一 方、甲状腺の場合は一度体内に入るとなかなか抜け出しません。このように臓器によって 差があるのです。 それでは次に、有効(実効)半減期についてご説明します。内部被曝による身体的影響 を考える時に考慮すべきことは、 放射性核種の個数が元の半分になるまでの時間を示す 「半 減期」です。この半減期には、放射性物質そのものが持っている「物理的半減期」と、摂 取した放射性物質が排出されるまでの速度を考慮した「生物学的半減期」の二種類があり ます。仮に物理的半減期が長いものであっても、便などによってすぐに体の外へ排泄され るものである場合は、体への影響を大きく考慮する必要はありません。 こ の「 物 理 的 半 減 期 」 と「 生 物 学 的 半 減 期 」 の 両 方 を 加 味 さ れ た も の が「 有 効 半 減 期 」 あるいは「実効半減期」と呼ばれるものです。有効半減期とは、 そういった観点に立って、 摂取した核種がどれくらいのスピードで体内において減衰していくかということを示すも のです。低線量でも高線量でも、被曝についてはこの有効半減期が非常に問題となってき ます。
現れる影響についての考え方
次 は、 被 曝 し た 際 の 影 響 の 現 れ 方 に つ い て お話します。影響の現れ方については、 現在、 二 つ の 考 え 方 が あ り ま す。 一 つ は 閾 値 が な く て 線 量 の 増 加 と と も に 直 線 的 に 発 生 頻 度 を 増 す と い う 考 え 方、 も う 一 つ は 閾 値 が あ り、 あ る 線 量 を 超 え る と 直 線 的 に 発 生 頻 度 が 増 す、 という考え方です。 資 料 ⑩ を ご 覧 く だ さ い。 こ の グ ラ フ は、 閾 値 が な く 線 量 の 増 加 と と も に 障 害 の 起 こ る 確 率 が 直 線 的 に 高 ま っ て い く 場 合 を 示 し て い ま す。 白 血 病 及 び 其 の 他 の が ん、 遺 伝 的 障 害 な ど が こ れ に 当 て は ま り ま す。 こ の よ う な 現 象 資料⑩閾値なしで直線の考え方
閾値なし 直線 考 方
閾値なしで直線の考え方
閾値なし 直線 考 方
を I C R P で は 確 率 的 影 響 と 呼 ん で い ま す。 I C R P は、 こ の 確 率 的 影 響 に よ っ て も た ら さ れ る も の に は 閾 値 が な い、 と 仮 定 し て い る のです。 一 方、 閾 値 が あ っ て 線 量 の 増 加 と と も に 障 害 の 起 こ る 確 率 が 直 線 的 に 増 し て い く と い う の が 資 料 ⑪ で す。 こ れ は 脱 毛 や 白 内 障、 皮 膚 障害などが該当します。 閾 値 あ り と い う の は、 あ る 所 ま で は 被 曝 し て も 安 全 だ と 云 う、 安 全 線 量 域 が あ る の で す が、 そ れ を 超 え る と 影 響 が 現 れ て き ま す。 こ れ を I C R P で は 確 定 的 影 響 と 呼 ん で い ま す。 こ の 安 全 線 量 域 が 閾 値 な の で す が、 閾 値 が あ る も の に つ い て は、 閾 値 以 内 の 被 曝 で あ れ ば 全 く 問 題 は な い と い う 考 え 方 を す る わ け です。 次に、閾値なしで直線型についてですが、高線量被曝の場合には、被曝線量と発生頻度 には直線関係が認められていますが、低線量被曝の部分の明確なデータがないのです(資 料 ⑩( 十 八 ペ ー ジ ) 左 下 の「?」 部 分 )。 現 在、 I C R P で は 高 線 量 領 域 で 見 ら れ た 直 線 性については、線量が低い状態であってもずっと続いている(直線関係)と仮定して低線 量での被曝の影響を論じているわけですが、実際にはこの低線量での影響に関するデータ は今のところ得られていないのです。 従って、癌や遺伝的障害などに関して低線量の領域でも、被曝線量と障害発生の間に直 線関係が存在すると仮定しているのは、 あくまでも防護の立場に立っているからなのです。 実際には、この辺りの低線量のデータについて、ICRPはいろいろな勧告を行っていま すが、その勧告を受け入れるかどうかは各国に一任しており強制力がないのです。 又、別の研究では、放射線被曝による癌の発生などについては、全て閾値があり、ある 線量を超えると直線的に発生が増加し、しかも低線量領域では被曝によって、むしろがん の発生が抑えられると云う研究もあります。この考え方を「放射線ホルミシス」と呼んで い ま す。 「 ホ ル ミ シ ス 」 と い う 言 葉 は、 比 較 的 新 し い け れ ど も、 そ の 概 念 は 極 め て 古 く、 資料⑪
閾値ありで直線の考え方
ギリシャ語で「興奮する」という語源からきています。 「放射線ホルミシス」の研究については、 近年、 非常に盛んになっており、 多くの調査 ・ 研究結果が発表されています。この「放射線ホルミシス」の基本的な考え方としては、前 に申した通り、微量な放射線の被曝は健康維持にはプラスの効果をもたらすというもので す。もちろん放射線被曝は、ある線量域を超えればマイナスの効果が出てくることは明ら かではありますが、ある線量範囲内ではかえって良いのだという考え方です。 例 え ば、 塩 分 は 摂 り 過 ぎ れ ば 体 に 毒 に な り ま す が、 少 量 で あ れ ば 体 に 必 要 な も の で す。 こ れ と 同 じ 考 え 方 で す。 「 放 射 線 ホ ル ミ シ ス 」 に つ い て は、 世 界 的 に 注 目 さ れ 始 め て い る のですが、今この様な事を言っても、今の日本では聞く耳を持たない人が多いでしょう。 資 料 ⑫ を ご 覧 く だ さ い。 「 放 射 線 ホ ル ミ シ ス 」 を、 世 の 中 の 人 に 納 得 し て 貰 う た め に は もう少し客観的なデータを集める必要があるだろうと考えています。それには、大規模な 疫学的調査を行う必要があると思います。 しかし、大規模な疫学的調査を行うことは非常に難しいのです。 例えば、ある地域を対象に調査を行うとした場合、その地域で人の出入りがあるような 地域では疫学調査を行うことはできません。もう何代にもわたって、その地域から地域外 へ 出 な い 人 が 十 万 人 と か 二 十 万 人 と い う 規 模 で い な け れ ば、 代 々 に わ た る 疫 学 調 査 と い う の は で き な い わ け で す。 そ れ と 同 時 に、 比 較 対 照 群 と し て、 や は り 十 万 人、 二 十 万 人 と い う 人 口 が あ っ て ほ と ん ど 人 が 動 い て い な い も う 一 つ の 地 域 を 選 ぶ 必 要 が あ り ま す。 そ う い う 場 所 を 見 つ け る の も 非 常 に 大 変 な の で す。 現 在、 そ う い っ た 疫 学 調 査 の 適 地 と し て 挙 げ ら れ て い る の が、 中 国 と イ ン ド、 そ し て ブ ラ ジルなどです。
放射線発癌について
次 に、 各 組 織 の 放 射 線 発 癌 に 関 す る 感 受 性 に つ い て お 話 し ま す。 資 料 ⑬( 次 ペ ー ジ ) を ご 覧 く だ さ い。 こ の 表 に は、 放 射 線 発 癌 の 自ホルミシス効果の評価
ホルミシス効果の評価
線 領 被 客観的デ が 1.低線量領域の被曝に関しては客観的データが 無く、昔から議論になって居る所であり 無く、昔から議論になって居る所であり ホルミシス効果を否定するデータは無い。 2 ホルミシスの存在は 大規模な疫学的調査に 2.ホルミシスの存在は、大規模な疫学的調査に よって証明されると考えられるので、今後の 研究の成果が待たれる。 資料⑫然 発 生 頻 度 と 相 対 的 感 受 性 に つ い て、 癌 の 種 類 別 に 記 載 さ れ て い ま す。 例 え ば 乳 癌 の 場 合 は、 自 然 発 生 と 比 較 す れ ば 放 射 線 に よ る 乳 癌 の 発 生 は そ れ ほ ど 増 え て い な い こ と が 分 か っ ています。 このテーマを調査した人によると、 乳 癌 と い う の は 貧 困 層 に お い て 高 く 現 れ て い る と 言 っ て い る の で す。 こ れ は 別 に 放 射 線 に 限 る も の で は あ り ま せ ん。 放 射 線 で は な く、 自 然 発 生 の 乳 癌 は 貧 困 層 に 高 い の だ そ う で す。 一 方、 甲 状 腺 の 場 合 に は 放 射 線 に よ る 発 癌 が 自 然 発 生 よ り も 高 い こ と が 報 告 さ れ て い ま す。 特 に、 白 血 病 は 自 然 発 生 と 比 較 し て 放 射 線 発 癌 が 増 え て い る こ と が 特 異 な 点 と し て 挙 げ ら れ ま す。 そ れ 以 外 に 放 射 線 発 癌 で 特 異 的 な現象は見られません。 次 に 高 線 量 領 域 の 線 量 と 効 果 の 関 係 に つ い て お 話 し ま す。 資 料 ⑭ を ご 覧 く だ さ い。 こ れ は 広 島・ 長 崎 の デ ー タ で す が、 こ の グ ラ フ は 広 島・ 長 崎 の 原 爆 被 爆 者 に 発 生 し た 三 種 類 の 白 血 病 で の 被 曝 線 量 と 発 生 率 の 関 係 を 示 し た も の で す。 上 の 直 線 が 広 島 で、 下 の 直 線 が 長 崎 で す。 一 番 上 の グ ラ フ で 興 味 深 い こ と は、 長 崎 の デ ー タ を 見 る と 閾 値 が 存 在 し て い る と いうことが分かります。 一方の広島の場合は、 閾値がなくて直線関係にあります。 それでは、 な ぜ 広 島 と 長 崎 に は 閾 値 の 有 無 が 存 在 す る の で し ょ う か。 こ れ に つ い て は、 以 前 か ら さ ま ざ ま な 議 論 に な っ て い ま す。 理 由 の 一 つ と し て 考 え ら れ る こ と は、 長 崎 に 投 下 さ れ た 原 爆
高線量領域の線量と効果の関係
1.白血病の場合 1)広島、長崎の原爆被曝者に 発生した白血病の被曝線量 と発生率の関係を示したものである と発生率の関係を示したものである。 2)被曝した放射線はγ線と 中性子線である。 3)横軸の単位そのままmSvと考えて よく、約400mSv以下の線量域では 自然発生の白血病と発生率に差が 自然発生の白血病と発生率に差が あるデータは出ていない。 4)長崎の場合は、400mSv辺りに 明確な閾値が存在する 明確な閾値が存在する。各組織の放射線発癌に関する感受性
癌のタイプ又は部位 自然発癌頻度 放射線発癌に関する 備 考 相対的感受性 相対的感受性 主な放射線誘発癌 女子乳癌 ◎ 〇 貧困層で高い 甲 状 腺 △ ◎ 死亡率は低い 甲 状 腺 △ ◎ 死亡率は低い 肺(気管支) ◎ □ 喫煙の影響不確定 白血病 □ ◎ 特に骨髄性白血病 消化官 〇 □ 又は△ 大腸に特に多い 消化官 〇 □ 又は△ 大腸に特に多い 従たる放射線誘発癌 咽 頭 △ □ 肝、胆道 △ □ 腎、膀胱 □ △ 脳、神経系 △ △ リンパ腫 □ □ 皮 膚 〇 △ 死亡率低く、高線量 ◎ 非常に高い、 〇 高い、 □ 普通、 △ 低い 資料⑬ 資料⑭はプルトニウム爆弾であり、広島はウラニウム爆弾であったということです。ウラニウム 爆弾は中性子の成分が非常に多く、そのため閾値が余りはっきりしないのだということで す。一方、長崎に投下されたプルトニウム爆弾はγ線が多く、それによって閾値が存在す ると言われていますが、理由はそれだけではないようです。白血病というのは細かく分け るとたくさんの種類に分けられるのですが、この資料では全ての病型の白血病を一つにま とめたものと、急性白血病を一つにまとめたもの、慢性骨髄性白血病を一つにまとめたも のの三つについて示されています。白血病は長崎の場合は大体四百ミリシーベルトぐらい のところが閾値となっているようです。今よく言われているのは、原爆の場合には被曝し た回数は一度だけであとは当たっていない、一方の福島の場合はじわりじわりと一年間に わたって受けるわけです。だから、一度被曝するのと、じわりじわり被曝するのとでは影 響は違ってくるのではないかと言われています。この議論は後にします。そして、資料⑭ の二段目にある急性白血病、そして三段目にある慢性骨髄性白血病を見てみても、やはり 長崎の場合では閾値が出てきていることがお分かりいただけると思います。 最近では、 広島の白血病のデータを再検証してみると、 長崎ほど大きくはありませんが、 どうも白血病の閾値の存在を示唆する分析もあると聞いています。 資 料 ⑮ を ご 覧 く だ さ い。 こ れ は、 被 曝 し た 時 の 年 齢 と 被 曝 後 の 潜 伏 期( 経 過 年 数 ) 別 に 見 た 放 射 線 に よ る 白 血 病 誘 発 効 果 に つ い て 示 し た グ ラ フ で す。 奥 に 伸 び て い る 軸 が 被 曝 時 の 年 齢、 横 軸 が 潜 伏 期( 被 爆 後 の 年 数 )、 縦 軸 は 発 生 頻 度( 過 剰 危 険 率 ) で す。 例 え ば、 被 曝 時 の 年 齢 が 五 歳 だ と す る と、 二 ~ 三 年 で 白 血 病 の 発 生 が 始 ま り、 十 年 ぐ ら い 経 つ と ピ ークに達し、 その後だんだん減っていきます。 こ の グ ラ フ に あ る 山 の 黒 い 部 分 は 広 島、 山 の 内 側 に あ る 白 い 部 分 は 長 崎 の 発 生 率 を 表 し て い ま す。 こ れ を 見 る と、 広 島 と 比 べ て 長 崎 の 方 が 白 血 病 発 生 率 は 低 い と い う こ と が お 分 か りいただけると思います。 こ の 図 の 一 番 奥 に あ る 四 つ 目 の 山 を ご 覧 く
被曝時年齢および潜伏期別に見た
白血病誘発効果の模型図
白血病誘発効果の模型図
資料⑮ 被爆時年齢 被爆後の年数 過剰危険率だ さ い。 仮 に 五 十 歳 く ら い で 被 曝 し た と す る と、 約 十 五 年 の 潜 伏 期 で 白 血 病 の 発 生 が 始 ま り、 そして約三十年後にピークが来ています。 こ の グ ラ フ は、 こ の よ う な 読 み 方 を す る わ け で す が、 こ の グ ラ フ で 分 か る こ と は、 一 言 で 言 え ば 若 い 人 の 白 血 病 は 比 較 的 短 い 潜 伏 期 で 発生率も高いということなのです。 ち な み に、 放 射 線 被 曝 に よ る 癌 の 危 険 度 を 部 位 別 に 見 て み る と、 一 番 顕 著 な の は 白 血 病 と 多 発 性 骨 髄 腫( 血 液 の 腫 瘍 ) で す。 放 射 線 の 被 曝 に よ っ て、 こ れ ら の 部 位 の 癌 危 険 度 が 高くなることが分かっています。 こ こ で、 放 射 線 発 癌 に つ い て、 現 在 分 か っ て い る こ と を ま と め て み ま す。 資 料 ⑯ を ご 覧 く だ さ い。 一 つ は、 放 射 線 発 癌 と 自 然 発 生 癌 の区別はできません。癌の発生が放射線に起因するものかどうかについては、自然発生頻 度 を 上 回 る 統 計 的 な 増 加 が 見 ら れ た 場 合 に、 「 お そ ら く こ れ は 放 射 線 発 癌 で あ ろ う 」 と 推 定しているに過ぎないのです。 そして、原則として癌は体の全ての組織で放射線によって誘発される可能性があるとい うこと、さらには放射線による癌誘発の感受性というものは、組織や臓器、器官によって まちまちであるということです。白血病は非常に発生率が高いですが、他の癌はそれほど でもありません。白血病や、固形癌としての乳癌、甲状腺、肺あるいは消化器官などでの 癌は認められていますが、その他の癌はほとんど出ておらず、有意差がないということが 言えるのです。 続いて資料⑰(次ページ)をご覧ください。放射線発癌のリスクの主な原因は年齢であ るということです。例えば、放射線誘発乳癌の場合は、十歳から二十歳までの間に被曝し た女性の発生が多いということが分かっています。放射線発癌は、癌が発生するまでに潜 伏期があります。白血病は、被曝後およそ二、三年から三十年以内に大部分が発生して終 了します。また、 一般的には乳癌のような固形腫瘍は潜伏期が長いことが分かっています。 乳癌は、十年以内に発生することはまれで、およそ三十年以上経ってから発生することが