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保険給付の履行期に関する生命保険約款 の改正

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(1)

保険給付の履行期に関する生命保険約款 の改正

井 上 享

■アブストラクト

現在の生命保険約款における保険給付の履行期の規定は,保険会社による 事実の確認が必要である場合には,例外的に,その確認が終了するまで期限 を延伸する旨の但書を伴うことが通常であり,この点は損害保険約款と同様 である。ところが,平成9年の最高裁判決において,火災保険についてこの 但書の効力が否定され,これ以降,学界,保険業界ともに活発な議論が展開 されている。このようななか,保険法において,保険給付の履行期に関する 規律が新設された。そこで,生命保険約款の改正の方向性について,実務実 態にも鑑みて,主として事実の確認の明確化と履行期限の具体的明示という 観点から,検討を試みる。

■キーワード

履行期約款但書,必要な事実の確認,保険金の支払期限

はじめに

1.商法と約款

商法において,保険事故が発生した場合に保険者が保険金を支払う義務を 負うことについては保険契約の定義として定められているものの,保険金支 払義務の履行期については規律がないため,民法412条のデフォルトルール

*平成21年3月27日の日本保険学会関東部会報告による。

/平成21年7月30日原稿受領。

(2)

によることになる。学説においては,保険金支払義務は保険事故の発生を停 止条件とする条件付債務であり,条件が成就したときは,特約がない限り,

期限の定めのない債務となり保険者が履行の請求を受けた時から遅滞の責任 を負う(同条3項)という見解 が通説であろう。実際には,保険者は,こ の民法の任意規定とは異なる特約を約款におくことが通常であり,現在のと ころ,保険会社の一般的な約款規定は下表のとおりである。

これらの約款規定は,原則として請求手続きから5営業日 または30日以 内に支払うと定めた部分(以下 履行期約款本文 という。)と,例外とし

1) 田辺康平 保険金債務の履行期,履行遅滞の生ずる時期および消滅時効期間 の始期 損害保険研究56巻2号1頁(1994年),山下友信 保険法 533頁(有 斐閣・2005年),竹濵修 保険金支払債務の履行遅滞 立命館法学304号101頁

(2006年)ほか参照。

2) 第一生命・5年ごと配当付終身保険普通保険約款4条10項(平成19年4月2 日制定)。なお,下線部分は多くの生命保険会社の約款がこれとほぼ同様の表 現となっているが,住友生命・5年ごと利差配当付終身保険普通保険約款48条

(21.2)では, ただし,事実の確認が必要なときは,5営業日を過ぎること があります と規定している。もっとも,実質において異なるものではない。

3) ス ミ セ イ 損 害 保 険 ・ 一 般 総 合 自 動 車 保 険 普 通 保 険 約 款 4 章18条 5 項

(H20.4.7)。

4) 現在,生命保険の個人保険商品については,5営業日とするものと,単に5 日とするものとが並存している(さらにいうと,団体保険商品では7日とする ものが一般的である。)。5営業日は比較的最近の約款にみられるもので,住友 生命についていえば,平成15年3月以前に締結した約款は5日となっている。

生命保険会社の約款 損害保険会社の約款 保険金は,事実の確認のため

特に時日を要する場合のほか,

その請求に必要な書類が会社 の本社に到着した日の翌日か ら起算して5営業日以内に,

会社の本社で支払います 。

当社は,被保険者または保険金請求権者が 保険金の請求手続をした日からその日を含 めて30日以内に保険金を支払います。ただ し,当社がこの期間内に必要な調査を終え ることができない場合は,これを終えた後,

遅滞なく保険金を支払います 。

(3)

て事実の確認や必要な調査を要するときは,その確認または調査の終了時ま で履行を猶予すると定めた部分(以下 履行期約款但書 という。)とで構 成されている。なお,5営業日と30日とでは随分と差があることについては,

損害保険では損害査定に時間を要することがあるためであろう といわれて おり,これに対して,生命保険は定額保険であって保険金額が定まっている ために,特段の事実の確認を要しない場合において,純粋な事務処理期間と しては5営業日あれば足りるとの判断があったものと考えられる 。

2.裁判例

古い裁判例では,火災保険について被保険者が保険の目的物に対する放火 罪の刑事被告人として訴追されて審理中であった事案について,無罪判決が 確定するまで保険者は履行遅滞に陥らないとされたもの ,被保険者が放火 等の保険事故招致の容疑で捜査されていた事案で,放火では立件されず,別 件の詐欺横領についてのみ起訴された結果,保険金請求訴訟の訴状送達日の 翌日から履行遅滞とされたもの があった。もっとも,これらの裁判例は,

履行期約款本文または履行期約款但書の解釈を明らかにするものではなかっ た。また,従来の学説は,履行期約款但書については,保険者側の都合では なく,原因の調査のために客観的に調査を終えない場合にその効力を認める と解するもの が中心であったようである。

5) 山下・前掲(注1)533頁。

6) 生命保険会社の事務処理の効率化に伴って,この期間は段階的に短縮されて きたようである。住友生命の過去の約款を紐解いてみたところ,大正2年度よ り実施分の普通保險約款においては, 保險金ハ前二條ノ書類カ會社ノ本店ニ 到達シタル後壹箇月以内ニ之ヲ支拂フヘシ但會社ニ於テ調査ノ爲メ特ニ時日ヲ 要スル 合ハ此限ニアラス とあり,続いて,昭和2年6月1日より実施の毎 年配當附養老保險普通保險約款においては,下線部が 二週間 と改められ,

さらに,昭和8年1月31日認可の同約款では 一週間 と改められている。

7) 岐阜地判昭和2年12月23日法律新聞2830号11頁。

8) 岐阜地判昭和34年3月23日下民集10巻3号528頁。

9) 石田満 商法Ⅳ(保険法)改訂版 187頁注2,329頁(青林書院・1997年)。

(4)

ところが,近年,最高裁において,火災保険の約款について,履行期約款 本文を有効とする一方で,履行期約款但書の効力が否定された(最三判平成 9年3月25日民集51巻3号1565頁,以下 最判平成9年 という。)。もっと も,学説は,この判例に否定的な立場をとるもののほうが多いようである 。 この判例の既判力は疑いようのないところであろうが,その射程がどこまで 及ぶものか,特に生命保険契約については疑問が呈せられてきた 。

最判平成9年の後,生命保険契約における履行期約款但書の効力に関する 裁判例は,高裁判決に限っていえば3件存在する。うち2件は最判平成9年 に追随することなく裁判所が履行遅滞となる時を認定している。①口頭弁論 の終結により履行期が到来したとする裁判例 では,捜査の結果如何によっ ては,保険者において,保険契約者兼保険金受取人の故意による死亡事故招 致かまたは被保険者の自殺と同視すべき嘱託殺人に該当するとして免責事由 の存在を主張することも当然考えられ,警察の捜査がなお継続中の間は保険 者としては免責事由の存否の判断は困難であると判示された。また,②履行 期が到来したのは訴状送達日であるとする裁判例 では,契約締結から被保 険者の死亡までが短期間であったことから,保険者が告知義務違反の有無等 の調査を行ったところ,被保険者が不整脈の治療を受けていた事実を告知し ていなかったことが判明したという経過からすれば,本件は履行期約款但書

10) 山本哲生 批判 法学教室207号100頁(1997年),戸出正夫 批判 損害保 険研究60巻3号195頁,竹濵・前掲(注1)119〜122頁参照。山下・前掲(注 1)534頁も, この判例は,30日を超える部分に関しては無効であるといって いるのに等しく,約款の不当条項規制の観点からみれば,約款条項における透 明性の原則に照らして問題があることと,任意規定である民法の規定よりも合 理的な理由なく保険契約者側に不利益な内容となっていることから無効として いるものとみられ,重要な判例であると位置づけられるが,具体的判断として はあえて無効とするまでの必要があるかは疑問の余地がある とする。

11) 山下・前掲(注1)534頁は, 生命保険会社の保険では…5日を超える期間 について上記判例が同様に妥当するか否かは未確定というべきである とする。

12) 東京高判平成12年2月29日生命保険判例集12巻131頁。

13) 広島高判平成15年10月28日LEX/DB28090551。

(5)

に該当すると判示された。残る1件は,③最判平成9年の判示は生命保険約 款の解釈においても妥当するとして,保険者は請求を受けた日の5日後まで に保険金を支払う義務があり,以後は遅滞の責めを負うとされた 。③の概 要は,最判平成9年とあわせて後述したい。

3.保険法(平成20年法律第56号。同年6月6日公布,平成22年4月1日施行。) 保険契約の性質上,保険者は,保険給付をすべき事由について必要な調査 を行ったうえでなければ保険給付を行うことができないため,保険者が行う べき調査に必要な合理的な期間については,遅滞に陥らないこととすること が相当であるが,他方で,保険契約においては,迅速に保険給付が行われる べきであるという要請もあることから,たとえ期限の定めがある場合であっ ても,保険者が行うべき調査に必要な合理的期間を超えて保険者が遅滞の責 任を負わないとすることは相当ではない。そこで,保険法では,この両方の 要請を満たすように,民法412条の特則が設けられた (後述)。

4.本稿の目的

本稿は,保険法に新設された保険給付の履行期の規律を踏まえ,生命保険 約款を改正するにあたり,どのような考え方をもって,如何なる規定を置く べきかについて,裁判例等を手がかりとし,また,生命保険会社の実務実態 にも鑑みて,検討を試みようとするものである。なお,本稿では,裁判例の 評価,商法の解釈または保険法の立法経緯等については立ち入らない 。実 務家の視点で,今後の生命保険約款の一つの姿を具象化し,今後の議論の一

14) 福岡高判平成16年7月13日判タ1166号216頁,保険事例研究会レポート203号。

15) 萩本修編著 これ一冊でわかる 新しい保険法 57,58頁(金融財政事情研 究会・2008年)参照。

16) 最近の研究では,保険法制定以前の判例・学説,および保険法の立法経緯を 詳細に分析したうえで,約款規定の可能性について検討を加えたものとして,

後藤元 新保険法における保険金支払債務の履行遅滞 生命保険論集165号85 頁(2008年)がある。

(6)

助としたい 。

保険法の規律

1.保険法の規定

⑴ 期限の定めがある場合(52条1項)

立法担当官によると,契約自由の原則に鑑み,期限の定めがあるときは原 則としてその定めを有効としたうえで,その期限が,保険契約上確認が必要 とされる事項の確認をするための合理的な期間を超える場合には,当該合理 的な期間の経過時から保険者は遅滞の責任を負うものとし,保険契約者等が 迅速に保険給付を受ける利益が不当に害されないようにしている とのこと である。

(保険給付の履行期)

第52条 保険給付を行う期限を定めた場合であっても,当該期限が,保 険事故,保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認 をすることが生命保険契約上必要とされる事項の確認をするための相 当の期間を経過する日後の日であるときは,当該期間を経過する日を もって保険給付を行う期限とする。

この規定については不明確な点が残されているという指摘 もあるが,法 律規定としては多様な保険給付や調査事由などがあるため画一的な基準を定 めることが困難であるという理由で相当の期間とされた ものであって,各 保険契約の内容に応じて,保険給付を行うにあたってどのような事項を確認

17) 本稿における私見および約款規定案については筆者の個人的見解であり,所 属する組織の考え方および対応方針を示すものではないことをお断りしておく。

18) 萩本修=坂本三郎=富田寛=嶋寺基=仁科秀隆 保険法の解説⑵ NBL885 号27〜28頁(2008年)。

19) 後藤・前掲(注16)89〜90頁,注13。

20) 山下友信 新しい保険法―総論的事項および若干の共通事項 ジュリスト 1364号16頁(2008年)。

(7)

する必要があるかを約款等において明らかにしておくことが必要となる と されている。

⑵ 期限の定めがない場合(52条2項)

2 保険給付を行う期限を定めなかったときは,保険者は,保険給付の 請求があった後,当該請求に係る保険事故の確認をするために必要な 期間を経過するまでは,遅滞の責任を負わない。

⑶ 保険契約者等の調査妨害等(52条3項)

3 保険者が前2項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当 たり,保険契約者,被保険者又は保険金受取人が正当な理由なく当該 調査を妨げ,又はこれに応じなかった場合には,保険者は,これによ り保険給付を遅延した期間について,遅滞の責任を負わない。

これは,保険事故は保険契約者等の生活圏内で発生するのが通常であり,

保険契約者等が保険者による調査を妨害したり,必要不可欠な調査を拒んだ りした場合には,保険給付のために必要な調査が困難になったり,調査に余 計な時間がかかったりする場合がある ことから設けられた規定である。

2.期限の定めの有無による違いと約款との関係

保険の実務では例外なく約款に保険者の保険金支払義務に係る期限の定め があり,52条2項に該当するケースは,通常はありえない 。1項と2項の 違いについて,立法担当官によると,1項の 相当の期間 は,期限の定め がある場合の規律であるから,契約内容に照らしてその定めが合理性を有す るかどうかという観点から判断さえるものであるのに対し,2項の 必要な 期間 は,期限の定めがない場合の規律であるから,保険給付の請求ごとの

21) 萩本ほか・前掲(注18)28頁。

22) 萩本ほか・前掲(注18)28頁。

23) 山下・前掲(注20)18頁。

(8)

個別具体的な事情に照らして判断されるものである とか,2項は確認の対 象となる事項を,保険給付の請求者側が証明責任を負うこととなる事項に限 定しているものであるため,免責事由等の保険者側が証明責任を負うことと なる事項の確認をするための期間についても保険者が遅滞の責任を負わない こととするためには,1項の規律に基づいて約款等で期限の定めをすること が必要となる と説明されている。1項と2項との違いをイメージで表すと,

次の図のようになると考えられる。

上記を踏まえ,保険者のとるべき対応としては,1項の 相当の期間 を 想定した履行期を約款に定めることとなろう。しかし,後に 相当の期間 が約款に定めた期限よりも前にあると判断された場合には,約款によらずそ の期間の終期が履行期となる。逆に,理論上は, 相当の期間 が約款に定 めた期限を超えて続くことも考えられるが,その場合には当然ながら約定が

24) 萩本修 保険法現代化の概要 落合誠一=山下典孝編 〔別冊金融・商事判 例〕新しい保険法の理論と実務 18頁(経済法令研究会・2008年)。

25) 萩本ほか・前掲(注18)28頁。

(9)

優先されるため,結局のところ,保険法の規律は約定の履行期を短縮する方 向にのみ働くこととなる。もっとも,約款の定め方によっては,期限を定め たと認められず,2項の規律によって判断されることも考えられないわけで はない。約款で履行期を定めるにあたっては,客観的かつ合理的な規定であ ることの説明が求められよう。

判例と保険法

前述のⅠ2で取り上げた裁判例のうち,生命保険に係る履行期約款但書部 分の効力を認めた①②2件の高裁判決については,保険給付を行うために確 認をすることが必要な事項の典型例として,保険法施行後の約款規定の中に 体現していくべき内容であろう。問題は,最判平成9年および③の高裁判決 が履行期約款但書部分の効力を認めなかったことをいかに評価すべきかとい う点にあり,これらの判決は保険法施行後においても考慮を要する重要な事 例であろうことから,以下,保険法の規定との関係を確認していきたい。

1.最判平成9年

事案は,火災保険の保険契約者兼被保険者となっていた法人の代表者が,

火災の直後から放火の容疑者として逮捕され,取調べを受けたものの,結局 決め手を得るに至らず,放火事件については被疑者不詳のままとされ,火災 から7年の経過により公訴時効が完成したものである。

最高裁の判旨は前段と後段とに分かれており,まず前段においては,履行 期約款本文による30日の規定を 猶予期間の経過により保険金支払の履行期 が到来することを定めた保険金支払時期についての約定と解することができ る とする。他方で,後段においては,二つの理由を挙げて,履行期約款但 書は 法律上の権利義務の内容を定めた特約と解することはできず , 事務 処理上の準則を明らかにしたものと解するほかはない として,その効力を 否定した。二つの理由とはすなわち, <理由1>ただし書の 言は極めて 抽象的であって,何をもって必要な調査というのかが条項上明らかでないの

(10)

みならず,保険会社において必要な調査を終えるべき期間も明示的に限定さ れていない こと,および <理由2>一方的に保険契約者等の側のみに保 険金支払時期が延伸されることによる不利益を負担させ,他方保険会社の側 は支払期限猶予の利益を得るとするならば,それは前判示の損害保険契約の 趣旨,目的と相いれない ことであるとした。

2.福岡高判(前述Ⅰ2の裁判例③)

事案は,医療法人の副理事長が死亡保険金総額約40億円(災害死亡保険金 総額約56億円)の生命保険契約の被保険者となっていたが,ドライブ中,ガ ードレールの切れ目から,車もろとも約80メートルの崖下の海岸に転落し,

同乗者もろとも死亡したものである。マスコミ等によりこの事故と保険契約 との関係が取り沙汰され,警察・検察による捜査等が行われたものの,事件 から約1年2月後,検察庁から,事故と保険契約とは全く無関係であること が明らかになったとの異例の発表がなされた。第一審で保険金の請求が認容 されたが,遅延損害金の起算点について控訴されたのが本件である。

高裁は, 甚だ微妙なところではあるが としたうえで,最判平成9年の 判示が本件生命保険約款の解釈においても妥当するとして,保険金の請求書 類の到着から5日後の翌日から遅滞の責任を負う旨判示した。

3.裁判例と保険法

最判平成9年が履行期約款但書の効力を否定した根拠は,<理由1>の当 該但書の不明確性と,<理由2>の支払猶予の利益を保険会社が得ることの 不当性との2つであった。後者は,それでは,保険者が必要な調査を行って おり,未だ保険金請求権が確定していない間に,履行遅滞責任が発生する余 地を認めるようにも読めるものであり,このことは請求が可能となる時期と 履行遅滞となる時期を分ける考え方につながる可能性がある 。しかし,こ

26) 三村量一 最高裁判所判例解説 法曹時報51巻10号133頁(1999年)は,抜 本的な解決策として, 免責事由の有無の調査や損害の範囲の確定・損害額の

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れでは,判旨の前段で履行期約款本文の効力を認め,調査のために必要な一 定期間内は保険者が遅滞の責任を負わないとする一般論と相対立する内容と なっており,少なくともこれが同判決の主たる根拠であるとは言いがたく,

最判平成9年の主たる根拠は<理由1>であるという見解がある 。 保険法は,請求可能時期と履行遅滞時期を分ける考え方をとっておらず,

従って,保険法の下でも最判平成9年の考え方は維持されており ,改正後 の生命保険約款において,確認をすることによる場合の履行期を合理的な範 囲内で明確化できれば,遅滞責任についても猶予が認められることになろう。

なお,最判平成9年の力点は,後段の履行期約款但書の効力を否定する点に あり,前段で30日の猶予期間の合理性をいかなる理由で肯定したのかは必ず しも明らかにされておらず,保険法の規定における相当な期間の解釈に決定 的な意義を有するというように理解すべきではないであろうとの指摘がある。

相当の期間については,各種の保険契約における保険給付の履行のためにど のような手続きが踏まれ,それにはどのくらいの期間がかかるのかの実態を 十分に踏まえて解釈すべきものであり,約款の規定を作成するにあたっても,

なぜそこで定める履行期としたのかの十分な説明が必要である,という 。

評価に長期間を要する場合は,保険契約者等からの保険金支払請求手続の後一 定期間を過ぎた後は保険金に一定の利率の利息を付すべきものとして,保険金 に利息を付すべき時期と保険金の実際の支払をすべき時期とを,それぞれ別々 の観点から別個の条項で規定することが適切と思われる。 としている。

27) 後藤・前掲(注16)121頁。

28) 立法担当官の説明として, 保険法の規定は,この判決の基本的な考え方を 法文化したものであり,その内容を保険契約者等にとって後退させるものでは ない。 とある。萩本ほか・前掲(注18)28頁(注20)。なお,この(注20)は 最判平成9年の<理由1>の説明に対応したものである。

29) 山下友信 保険法と判例法理への影響 自由と正義Vol.60・No.1・28頁

(2009年)参照。なお,同頁(注5)では,福岡高判(前述Ⅰ2の裁判例③)

について, 保険金の種類でも事情は違うのであり,この裁判例が保険法の下 でそのまま意味をもつことはないものと考えられる。 とされている。

(12)

生命保険約款の改正案

1.生命保険会社の実務

現行の生命保険約款が,特段の事実の確認を要しない場合の事務処理期間 を想定して5営業日以内に支払うとしていることについては上述のとおりで ある。しかし,ひとたび何某かの事実の確認を行おうとした場合には,総じ て5営業日以内に支払うことが困難となることは想像に難くないであろう。

もっとも,損害保険会社のように一定程度の調査または確認を想定して30 日等の履行期を置くことが適当であるとも考えづらい。まさに,国会におけ る審議の中で,生命保険会社の参考人が 9割の請求を5日以内に支払って いる と回答 したとおり,既に,生命保険会社では,おおよそ遅滞なく支 払う態勢を確保しているからである。

⑴ 一般的な確認の必要性

住友生命の場合は,平成19年上期に,保険金支払いにあたって確認を行っ た件数は約1千件であり,これは同節の保険金支払件数約2万1千件に対し て5%弱である(これらの確認につき,かかった日数の平均を求めると,下 表のとおり。) 。ただし,この所要日数は確認の開始から完了までの日数で あって,実際には,請求書類到着後,5営業日の間に確認を要するものを峻 別し,また,確認完了後はその結果をもって社内において査定し,決裁の後 に支払うという手続きを踏む。このため,請求書が到着してから支払いを完 了するまでの日数は,下表の日数にプラス5〜10日を要している。

30) 衆議院法務委員会第10回会議(平成20年4月22日)における質疑・参考人質 問への回答。なお,会議の議事録は,国立国会図書館のウェブサイトから入手 可能である。

31) 死亡保険金,災害死亡保険金,高度障害保険金,介護保険金の合計。入院,

手術等の給付金は含まない。

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⑵ 特別な方法・手続きを要する確認の必要性

ア.確認事由全般にいえることであるが,病院または医師あての文書によ る照会が確認長期化の大きな原因のうちの一つである。医師は多忙であって 面談がかなわないことも多く,また個人情報保護の観点から電話で受療歴等 を開示することはまずないため,文書のやりとりに頼らざるを得ない。

イ.高度障害または要介護状態の判定にあたっては,請求書に添付された 診断書を作成した医師だけでなく,過去,被保険者の治療等にあたった別の 医師への確認を要する場合がある。これらの給付の特性から,複数の医師に 確認を行うことも多々あり,文書照会が増え,確認が長期化している。

ウ.災害死亡について,支払事由(不慮の事故)に該当しない可能性や,

故意もしくは重過失,または飲酒運転による免責事由等に該当する可能性が あった場合には,保険者の調査能力のみによって知りうる情報だけでは判断 できないケースが多く,第三者機関からの情報提供が必要不可欠となること がある。とりわけ,公的機関等が保持する情報を得るためには,通常,弁護 士法による照会を行うこととなり,確認の長期化が避けられない 。

32) 住友生命の実績をみると,主な照会先は,地方検察庁,警察署,市役所,鉄 道会社,病院となっている。照会の後,回答を得られるまでの期間は,事案に より,また照会先により千差万別である。例えば,飲酒運転の疑いであれば,

警察から検察へ送致(送検)された後に照会を行うこととなるため,照会から 回答までの期間は比較的短いものの,その前に,飲酒運転の可能性を知ってか ら送致を待つ間に相当の期間を要する。住友生命が弁護士法23条の2照会を行

確認事由別の所要日数の平均 所要日数(全体)ランク別の割合 告知義務違反の可能性 約29日 30日以内に完了 53%

モラルリスクの疑い 約31日 35日以内に完了 64%

支払事由 非該当の 可能性

災害死亡 約35日 40日以内に完了 73%

高度障害 約33日 45日以内に完了 80%

要介護状態 約37日 50日以内に完了 86%

55日以内に完了 88%

全体 約34日

60日以内に完了 91%

※平成19年上期中に確認を開始し,

かつ,確認を完了したもの。

(14)

エ.さらに特殊な事案として,モラルリスクの疑いで調査を継続する場合 には,上記ア〜ウに加えて,専門機関または専門家に対して,分析,鑑定等 を依頼することがある。例えば,変死(中毒,焼死,転落死等)のケースで は,医師の解剖を待った後,上記アの照会手続きをとることになる 。

2.約款改正案の構造−多段階適用による絞込み

上記Ⅳ1で述べたとおり,生命保険契約は,9割以上が5営業日以内に支 払うべき類型に含まれることになる。そこで,5営業日の期限は存置したう えで,確認を要する場合にはこれを延伸して,何のために何を確認するのか を具体的に明らかにするとともに,その場合の期限が何日か,具体的日数を もって定めることが合理的であろう。この考え方は,国会における審議の中 での法務省民事局長の発言内容 …保険契約上調査を必要とされる事項が書 かれていなければいけない…原則として五日以内に支払うと,ただし,死亡 状況の確認に特段の日時を要する場合は何日だと,保険契約に加入する前の 被保険者の病歴等を調べる必要がある場合には何日だと。さらには,殺人そ の他の嫌疑による刑事手続が開始された,それで怪しいというときは何日だ という具合に,具体的に調査を必要とされる事項についてそれぞれ期間を書 いていくというようなことが考えられる… にも整合的である。

次に,確認を要する場合を約款に定義するにあたり,上述した実務の実態 に鑑みると,保険者の調査能力の範囲で行う一般的な確認と,第三者の協力 が不可欠であること等の理由により方法を限定して行う特別な確認とでは,

類型を分けるべきではないか。前者は,割合が少ないとはいえ通期で相当件

った案件の,確認開始から支払いに至るまでの平均日数は約200日である。

33) 住友生命の実績をみると,専門の調査機関を活用したものは,不審死(事故 死を装った自殺免責期間中の自殺,保険金受取人の故殺等)をはじめ,診断書 偽造による不正請求の疑いなど,多岐にわたる。調査期間も一様ではなく,確 認開始から200日で支払いが完了しているものは,全体の8割に満たない。

34) 参議院法務委員会第13回会議(平成20年5月29日)における,公明党木庭健 太郎議員の質問への回答。

(15)

数の確認を行っているのに対して,後者の確認はごく僅少である。

以上から,約款改正案は,原則が第一段階の5営業日,一般的な確認が必 要な場合は第二段階で一定の期限を設けて調査を行い,さらに特別な確認を 行う場合は第三段階でより長期の期限を設けて専門性の高い調査を行う,と いう逆円錐形の構造をとりたい。段階が進むに従い履行期が長期化していく ことになろうが,同時に確認内容をより具体的かつ限定的に絞り込んでいく。

3.約款改正案

上記の検討を踏まえて,以下のとおり約款改正案を作成した。

第○条 保険金等の支払金は,請求日(会社所定の請求書およびその請求手続 きに必要な書類であって必要事項が完備されているものが会社に着いた日を いう。以下本条において同じ。)の翌日から起算して5営業日以内に,会社の 本社または会社の指定する支社で支払う。

第2項 会社は,保険金の支払いのために確認が必要な次の各号に掲げる場合 において,保険契約の締結から請求までの間に会社に提出された書類だけで は当該各号に定める事項の確認ができないときは,それぞれその事項の確認 を行う(会社の指定する医師による診断を求めることを含む。)。この場合に は,前項にかかわらず,保険金の支払期限は請求日の翌日から起算して【A】

日を経過する日とする。

1.保険金の支払理由発生の有無の確認が必要な場合

この約款に定める保険金の支払理由に該当する事実の有無 2.保険金の支払いの免責事由に該当する可能性がある場合

保険金の支払理由が発生するに至った原因 3.告知義務違反に該当する可能性がある場合

告知義務違反に該当する事実の有無および告知義務違反に至った原因 4.この約款に定める重大事由,詐欺または不法取得目的に該当する可能性

がある場合

第2号もしくは前号の事項または保険契約者,被保険者もしくは保険金 受取人の保険契約の締結(保険契約の復活を含む。)の目的もしくは保険金 請求の意図に関する保険契約の締結から請求までにおける事実

第3項 前項の確認をするため,次の各号に掲げる特別な照会手続きや調査が 不可欠な場合には,第1項および前項にかかわらず,保険金の支払期限は,

請求日の翌日から起算してそれぞれ当該各号に定める日数(各号のうち複数 に該当する場合には,それぞれに定める日数のうち最も多い日数)を経過す

(16)

る日とする。

1.前項各号に定める事項についての,医療機関または医師に対する照会手 続きのうち,照 会 先 の 指 定 す る 書 面 等 の 方 法 に 限 定 さ れ る 照 会 手 続 き

【B】日

2.前項各号に定める事項についての,弁護士法その他の法令にもとづく照 会手続き 【C】日

3.前項第1号,第2号または第4号に定める事項についての,研究機関等 の専門機関による医学または工学等の科学技術的な特別の調査,分析また は鑑定 【D】日

4.前項第1号,第2号または第4号に定める事項に関する,保険契約者,

被保険者または保険金受取人を被疑者として,捜査,起訴その他の刑事手 続きが開始されたことが報道等から明らかである場合における,送致,起 訴,判決等の刑事手続きの結果についての警察,検察等の捜査機関または 裁判所に対する照会手続き 【E】日

5.前項各号に定める事項についての,日本国外における調査 【F】日 6.前項各号に定める事項についての,災害救助法が適用された地域におけ

る調査 【G】日

第4項 保険金の支払期限を第2項または前項の日とする場合には,会社は,

確認が必要な事項の内容および支払期限を保険金の請求者に通知する。

第5項 第3項の支払期限を過ぎてもなお,第三者機関からの回答の遅延その 他の会社の責任によらない理由により第3項の事項の確認が終わらない場合 には,会社は,その確認が終わらなかった理由および確認が必要な事項の内 容を保険金の請求者に通知した上で,確認を継続する。

第6項 第1項から第3項までにより定まる支払期限の後に保険金等の支払金 を支払うこととなるときは,会社は,支払期限の翌日以後遅滞の責任を負い,

遅延利息を保険金等の支払金とあわせて支払う。

第7項 前項にかかわらず,第2項または第3項の確認に際し,保険契約者,

被保険者または保険金受取人が,正当な理由なくその確認を妨げ,またはこ れに応じなかったとき(会社の指定した医師による必要な診断を得ることに 応じなかったときを含む。)は,会社は,これによりその事項の確認が遅延し た期間について遅滞の責任を負わない。

4.論点1−支払期限となる日数の設定

保険法の趣旨からすると,確認事項に対する期限の定めの具体的日数は,

一般的にどの程度の期間が必要であるかが一つの目安であるようであり , 35) 萩本ほか・前掲(注18)28頁(注21)では, この規定の趣旨からすれば,

(17)

ここでは上記Ⅳ1で示した住友生命の実績を元にして検討する。

2項の一般的な確認を行う場合の期限の【A】日は,住友生命の実績から みると,確認所要日数の平均をとるとすれば,30日強(30日以内に完了した ものが53%)であるが,全体の6〜7割の確認が完了する日数をとるとすれ ば,平均よりも5日程度長くなる。さらに,請求書到着から支払い完了まで の日数を想定すると,これに5〜10日をプラスする必要がある。

続いて,3項の特別な方法・手続きを要する確認を行う場合の期限【B】〜

【G】日について,各号ごとに検討する。まず,1号の病院等への文書照会 は,住友生命の実績によると,2項よりも10日程度長くなるようである。

2号の弁護士法照会,3号の医学・工学等の科学技術的な鑑定等および5 号の国外調査については,Ⅳ1および注32,33で述べたとおり,実績値をと れば200日程度となろうが,十分な件数実績もないので,それぞれ数か月か ら半年程度の間で,実績値と想定される調査フローとを組み合わせて判断す べきであろう。

4号の刑事手続き結果照会については,まさに福岡高判(前述Ⅰ2の裁判 例③)のような特殊事例を想定したものである。実際のところ,年に1件発 生するかどうかというごくまれな事案ではあるが,一旦発生すれば,結果が 判明するまでに1年以上はゆうにかかっている。とはいえ,商法下の議論に は,刑事訴追が進行中であるというだけでは保険者自身の調査が必要である とはいえないとの見解が存在しており,また,法制審議会保険法部会の終盤 において,保険法の規定は警察・検察の捜査中はいつまでも履行遅滞となら ないということではないとの理解が示されていたことから, 無罪判決が確 定する日 を期限の定めとすることは許容されないと解すべきであろう 。 2号等と同様の観点から期限を定めるべきであって,期限が到来してもなお

約款等で保険給付の履行期を定めるに当たっては,それぞれの確認事項につい ての調査をするために,一般的にどの程度の期間が必要となるかを考慮して期 限を定めることが求められることになる。 とある。

36) 後藤・前掲(注16)124頁。

(18)

刑事手続きが進行中である場合の対応は,別途検討したい(後述Ⅳ5)。

6号の災害救助法適用地域での調査については,現実に当該事態が生じた 場合には相当の調査・確認の困難を伴うことが懸念される。他方で,真の大 災害ともなれば,保険金の請求書が出てきづらい状況となり,それにもかか わらず請求書が出てきたものについては,むしろ迅速な支払いに資するべく,

特別に緊急の支払体制を講ずるべきである(阪神淡路大震災等ではそうした 実績がある)。このため6号の規定は置かないという選択肢も考えられる。

このほか,3項1号については,2項に含める別の考え方も採りうる。確 認が長期化する類型を2項から抜き出して3項に定めた約款案ではあるが,

3項1号と,2号から5号までとは,確認の性質が異なるという評価もでき る。すなわち,3項1号は,情報不足のために支払いの可否判断がつかない 場合を想定しており,2項の範疇で実施されるべき確認との峻別が難しい面 があるが,2号から5号までは,ある程度不支払いとすべき理由の存在する 蓋然性が高いと睨んで確認を継続する場合を想定したものであり,通常想定 される2項の確認からすると明らかに特殊である。病院への文書照会を3項 に独立させることによって2項の日数短期化を図るのがよいのか,そうでは なくて,2項に含めることによって2項の日数が若干延びるとしてもなお,

理解しやすさが勝ると判断するのか,思案どころであるが,保険金請求者の 理解可能性と保険会社の実務運用の両面で評価して判断すべきであろう。

5.論点2−期限到来時に刑事手続きが進行中等の場合

上記約款案にはバスケット条項的な規定を置いておらず,一旦請求手続き がなされたからには,類型に応じて,具体的日数で定められた履行期が到来 することとなる。このとき,最も悩ましいのが,刑事手続きが進行中であっ て,履行期が到来してもなお,有罪とも無罪とも判断がつかない状態にある 場合の対応である。この場合で保険金請求訴訟が提起されたときは,保険者 は不支払いとすべき立証が十分にできず,請求を認容する判決が下される可 能性もある。その後,結果として無罪となった場合はよいが,有罪となって

(19)

事後的に免責事由該当が認められたとしても,保険金の返還請求は非現実的 であろう。

この点につき,保険金請求訴訟の受理裁判所に対して,刑事裁判の審理状 況を考慮して審理を進行してくれるように訴訟指揮上の配慮を求めるなどの 必要があろうとの見解 もあるが,そのような運営が当然に保証されるもの ではない。

このほか,保険金請求者に対する捜査・刑事訴追が行われている場合には,

その者は保険金請求訴訟を提起できない旨の約款規定(不起訴の合意)も可 能ではないかという斬新な提案 がなされているが,導入には課題も多かろ うと存ずる。

次善の策として,履行期が到来したからといっても保険金が直ちに支払わ れるとは限らず,保険者は確認を継続することがある旨の確認的な約款規定 を置いたのが5項である。ただし,これが履行期を際限なく延伸できるバス ケット条項であるとの誤解を防ぐために,6項に,既に遅滞の責任を負って いることをあわせて記載している。この案をもって保険金請求訴訟が提起さ れた場合の抗弁になるものではない(履行期を猶予する約定ではない)し,

法的効果としては当然のことをあえて書く必要があるのかという批判もあろ うかと存ずるが,少なくとも,履行期の到来と同時に須らく保険金が支払わ れるとは限らないという事実認識を伝えることができるのではなかろうか。

おわりに

本稿で提示した約款案は私案であって,考慮漏れもあろうが,現時点で考 えられる要素についてはひととおり盛り込んだつもりである。

また,筆者としては,最判平成9年の<理由2>への対応も検討したいと ころであった。すなわち,約款に従って確認を行ったものの,結果的に疑い が晴れて支払いとなった方について,必要な確認であったとはいえ,数か月

37) 三村・前掲(注26)132〜133頁。

38) 後藤・前掲(注16)129〜130頁参照。

(20)

間お待たせすることについて,何らの利息も支払わないとすることに依然と して若干の躊躇がある。最判平成9年の担当調査官からの提案(前掲(注 26)参照),または法制審議会保険法部会における民法的な発想としての発 言 にみられる考え方によると,保険者が一定程度以上の長期の調査継続を 行う場合であって,調査の結果保険金を支払うこととなったときには,保険 者は調査継続期間中の利息を負担する,という整理の仕方もあるのではない かと考えられる。保険法では採用されなかった考え方ではあるが,約定によ ってこれを行うことは可能であろう。

保険給付の履行期については,その他にもまだまだ未解決の問題が残って おり,今後の継続課題としたい。

(筆者は住友生命保険相互会社勤務)

39) 法制審議会保険法部会第11回会議(平成19年6月13日開催)議事録 29頁。

…民法関連で,保険会社の方では,事情によっては調査をしなければいけな いことが非常にたくさんあったり,調査に時間が掛かったりするということが ある…保険会社にとっては非常に必然的なことなのだけれども,さんざん調査 して,やはり有責だというふうなときに,…遅滞の責めは負わないというので 本当にいいのだろうか…,例えば借地借家法の地代等の増減請求権なんていう のは,自分が相当と思う額で頑張り通してよろしい,しかし,最後に判決で決 まると,その差額については1割の利息を払いなさいというふうなものが規定 になっているので,そういう意味ではちょっと保険会社にとっての必然性が当 然に遅滞の責めを一律に免責するのかというと,そうではなくて,やはり客観 的,合理的期間と,その後,その保険会社にとっては必然と思ったけれども実 は必然ではなかったというときの責任の取り方というのは,ちょっと分けて考 える方が,何か従来の民法学でやってきた発想にはなり得るのかなという感じ がいたします。 という発言があった。

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