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財務 会計 と管理 会計 の統 合 の現 状
田 中 良 三
1は じ め に
E財 務会計 と管理 会計 の関係 皿 管 理会計 と経営 管理 の関係 IV財 務会 計 と管理会計 の統合
1は じ め に
今 日,企 業 会 計 は,大 き く財 務 会 計 と管理 会 計 とに 区 別 され て い る。 財 務 会 計 と管 理 会 計 の統 合 の可 能性 を検 討 す る にあ た りまず 第 一 に考 え な け れ ば な らな い こ とは,財 務会 計 と管理 会 計 とを企 業 会 計 の二 つ の側 面 の機 能 と し
て と らえ るのか,そ れ と も相対 立 す る二 つ の企 業 会 計 ど して と らえ る のか と い うこ とで あ る。ASOBATに よれ ば,会 計 とは 情報 の利 用者 が よ く情 況 を 理 解 した うえ で 自己 の判 断 や 意思 決 定 が で き る よ うに,経 済 的 情 報 を 識 別 し,
(1)
測 定 し,か つ 報 告 す る プ ロセ スで あ る。 また会 計 情 報 を 外 部 利 用者 の た め の 会計 情 報 と内部 経 営 管 理 者 のた め の会 計 情 報 とに区 別 して考 察 して い る。
BiermanandDrebinは,財 務 会 計 と管 理 会 計 との ちが い を会 計 情 報 の報 告対 象 の ち が い に も とめ,前 者 は 企業 外 部 の利 害 関 係者 に た い す る報 告 を取 扱 うの に た い して,後 者 は企 業 内部 の経 営 管 理 者 にた い す る報 告 を取 扱 うと
く
の 見 解 を 示 し て い る ら
こ の よ う に,今 日 の 一 般 的 な 見 解 は,財 務 会 計 と 管 理 会 計 と を 企 業 会 計 の
二 つ の 側 面 の 機 能 と し て と ら え て い る と い う こ と が で き る 。 そ こ で,本 稿 の
(1)AAA,AStatement(ゾBasieAccountingTheoay(Evanston,AAA,1966) P・1・
(2)Bierma11,H.andA.RDrebin,FinancialAecounting,(NewYork, MacmillanCo.1972)pp.5‑6.
190 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
目的 は,企 業 会 計 の 二 つ の 側面 の機 能 であ る財務 会 計 と管 理 会 計 とは い か な る理 由 で分 化 して い った の か,財 務 会 計 と管理 会 計 とは どの よ うな関 係 に あ るの か,そ して最 後 に 財 務会 計 と管 理 会 計 の統一 の可 能 性 が あ る と した ら, そ れ は いか な る観 点 か らで あ るの か とい うこ とを 考 察す る こ とで あ る。
皿 財 務会 計 と管 理 会 計 の関 係
企 業 会 計 の機 能 の 二 つ の側 面 で あ る財 務会 計 と管 理 会 計 の関 係 を 考 察 す る うえ に,両 者 は 企業 会 計 の発 展過 程 の なか で どの よ うに分 化 して い った の か を検 討 す る こ とが必 要 で あ る。
AAAの1958年 「管理 会 計 委 員会 報 告 」 に よれ ば,会 計 は,そ の発 生 当 初 や初 期 の発 展 段 階 に お い て は もっぱ ら経 営 管 理者 に む け られ て お り,そ して 会 計 の基 本 的 目的 は,ほ とん どす べ て共 同事 業(jointventures)の 資産, 負債 お よび 成 果 に つ い て の会 計 とい う経 営 管 理者 の必 要 性 をみ た す こ とを 指 向 してい た 。 この よ うに,会 計 の初 期 の段 階 は,外 部 的要 求 とい うよ りは む しろ経 営 管理 者 の 内部 的 要 求 をみ た す こ とに 向け られ て い た ので あ る。 しか し前 世 紀 に は い る と これ まで とは ちが った 新 しい 事 態 が発 生 し,こ れ が 会 計 の発 展 に 重要 な影 響 を 及 ぼ し,財 務 会 計 とよばれ る もの が形 成 され る よ うに な った 。 財 務会 計 の 出現 を もた ら した要 因 と して,同 報 告 書は 会 社 形 態 の出 現 に よる所 有 と経 営 の 分 離,会 計 を通 じて の 第3者 保 護 の必 要 性,独 立公 認 会 計 士 の 出現,そ して企 業 の法 的統 制 を 目的 と した諸 法 令 の制 定 な どを あ げ て い る。
しか し近 年 に は い る と財 務 会 計 とは全 く別 個 に,企 業 内 部 の経 営管 理 上 の 諸 問題 を 解決 す るた め の会 計 情 報 の必 要 性 が認 識 され,従 来 の 財 務会 計 で は これ らの要 求 を み たす こ とが で きな い こ とか ら,新 しい管 理 会 計 が形 成 され
くの
る よ うに な っ た の で あ る 。
(3)"ReportofCommitteeonManagementAccouuting",(Accountin8 Revieω,VoL34,No.2,Aprill959)pp.207‑8,
西 沢 脩 稿 「AAA管 理 会 計 委 員 会 報 告 書 」(企 業 会 計 第11巻 第8号)pp.231‑3.
財務会計 と管理会計の統合の現状 191
またMcfarlandに よれ ば,歴 史 的 な観 点 か らみ た場 合,会 計 は所 有 主 の 財 政 状 態 を表 示 す る技 術 と して 成 立 した が,近 代 的 な管 理 会 計 は,経 営 管 理, 者 が 意 思決 定 の結 果 を容 易 に 評価 で きる よ うに経 営 活動 の損 益 を測 定 す る こ
とに あ る 。
以 上 の よ うに,1958年 管 理 会 計 委 員 会 報 告 お よ びMcfarlandは,ま ず 発
\
生 当 初 の会 計 を一 種 の管理 会 計 とみ な して い るが,こ の点 につ い て黒 沢教 授 は 「近 代 以前 に おい て も企 業 会 計 は,本 来 管 理 会 計 で あ った とい うの で は な く∫そ の 当初 か ら未 分 化 の状 態 で管 理 会 計 的 な もの と財 務 会 計 的 な もの とが
くの
併 存 して いた と考 え るべ きで は な いか 」 とのべ て い る』 また 山 辺 教 授 も これ と同一 の見 解 を示 し,つ ぎの よ うに のべ て い る。 会 計 はそ の発 生 当時 や初 期 の発 展 段 階 に あ って は,企 業 の 内部 的 な 計 算 にす ぎなか った が,そ の 内 容 の す べ てが 今 日的 な管 理 会 計 で あ った と断 定 す る こ とは誤 りで あ る。 そ こに は 利 害 関 係 者 に た い して 「見 せ る会 計 」 と経 営 管 理 者 が 「見 る会 計」 とが未 分 化 の状 態 に置 か れ て い た と推 定 され る。 しか し株 式 会社 制 度 の 発 展 に と もな
い資 本 と経 営 の分 離 の傾 向が 生 じ,こ れ を重 要 な基 礎 と して 財 務会 計 と管 理、
(6)
会 計 が 分 離 し,そ れ ぞれ が対 立 的 に考 え られ る よ うに な って きた の で あ る。
した が って発 生 当時 の会 計 は,い わば 会 計 管 理 の域 を 出 な い の で あ っ て, これ が後 日分 化 して 財 務会 計 と管 理 会 計 とに な り,こ の比 重 が 時代 と と もに 変遷 した と解 した 方 が 合 理 的 で あ る よ うに 思 わ れ る。
この よ うに,企 業 会 計 は,歴 史 的 発展 過 程 のあ る段 階 に至 達 す ると財 務 会 計 と管 理 会 計 に 必 然 的 に 分化 して い くわ け で あ るが ・つ ぎに両 者 の 目的 お よ
び 関 係 を 検 討 す る こ と に し よ う 。
Goetzは,財 務 会 計(七raditionalaccounting)と 管 理 会 計(managerial
accounting)の ち が い を 目 的(objectives),前 提(premises)し お よ び 方 法
(4)Mcfarland,W.B.,ConceptsforManagementAccountin8(NewYork,NAA, 1966)p.2.
(5)「 管 理 会 計 論 の 新 し い 動 向 」(企 業 会 計 第11巻 第8号)p.79.
(6)山 辺 六 郎 稿 「財 務 会 計 と 管 理 会 計 に お け る 基 礎 諸 概 念 の 異 同 」(産 業 経 理 第15巻 第5号)pp.6‑7.
、
192 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
(methods)に 区 別 して 検討 す る。 まず 第 一 に 目的 につ い て,財 務 会 計 は,企 業 外 部 の利 害 関係 者 に客 観 的 で 検証 可能 な会 計 資 料 に も とづ き,貸 借対 照表 お よび 損 益 計 算書 を提 供 す る こ とで あ る。 そ れ に た い して管 理 会 計 は,企 業 活 動 の計 画設 定 お よび統 制 に 必 要 な会 計資 料 を提 供 す る こ とで あ る。
第 二 に 前提 に つ い て,財 務 会 計 は,客 観 的 で 検 証 可能 な会 計 資 料 に も とづ き財 務 諸表 を作 成 す る こ とを 目的 と して い るた め に,資 産 お よび費 用 の評価 を取 得原 価 基 準 に も とめ てい る。 そ れ にた い して 管理 会 計 は,企 業 活 動 の計 画 設定 お よび統 制 のた め の会 計 資料 の提 供 を 目的 と して い るため に,異 な っ た 評価 方 法,原 価 分類 お よび原 価 概 念 が 必要 に な って くる。 そ こで 管理 会 計 に お い て は,取 替 原 価 や 機会 原 価 に も とつ く計 算 も しば しば 行 なわ れ るの で あ る。
第三 に方 法 に つ い て,財 務 会 計 は,取 引 に お け る原 始 証 愚 を基 礎 と して財 務 諸 表 を作成 す る こ とを 目的 と して い るた め に,ま ず 取 引 を 分 解 して仕 訳 帳 に記 入 し,そ れ を 元帳 に転 記 し,そ の 転 記 の正 確 性 を確 か め るの に試 算 表 を 作 成 し,そ の 後 に勘 定 の修 正 項 目が あ れ ば それ を修 正 し,最 後 に総 勘 定 元 帳 に も とづ き貸 借 対 照 表 お よび 損益 計 算 書 を作 成 す る。 そ れ に た い して管 理 会 計 では,傾 向分 析,原 価 差 異 分 析 お よび組 織 的 な経 営 監査 を通 じて問 題 な い し困 難 性 を発 見す る こ とか ら出発 し,経 営 方 針,資 源,組 織 お よび実 施 手 続 の吟 味 を 行 な って代 替 案 を 作 成 し,そ して各 代 替 案 を 増 分 原 価 や機 会 原 価 に も とづ き貨 幣数 値 で評 価 し,最 後 に 各 代替 案 の なか か ら最 も適 切 な代 替 案 を 選 択 す る とい うプ ロセ ス を と る。 選 択 した代 替 案 は これ を実 施 に移 す た め に 経 営 組 織 上 の各 責 任 領 域 別 に 区別 し,ま た 実 施 の結果 を報 告 し,そ の 良否 を
く ラ
判 断 す る た め の 資 料 を 提 供 す る 。 す な わ ち 管 理 会 計 で は,ま ず 問 題 の 発 見 か ら 出 発 し,そ の 問 題 を 解 決 す る た め の 計 画 設 定,そ の 計 画 を 完 全 に 実 施 す る た め の 統 制 の 全 過 程 を 研 究 の 対 象 と す る 。
(7)Goetz,B.E.,ManagementPlanningandControl,(NewYork,McGraw‑Hill, 1949)pp.268‑73.
小 林 靖 雄 稿 「経 営 管 理 会 計 の 性 格 」 飯 野 ・山 桝 編 集 会 計 学 基 礎 講 座 皿,(有 斐 閣, 昭 和43年)pp.4‑5.
財務会計 と管理会計の統合の現状 193 Goetzの 見 解 に したが えば,企 業 会 計 の 財務 会 計 と管 理 会 計 へ の分 化 の基 本 的要 因 は,目 的 に おけ る ちが いに あ り,こ の 目的 に おけ る ちが い か ら前 提 や 方 法 のち が いが 必然 的 に生 じて くる もの と考 え られ る ので あ る。
溝 口教授 は,財 務 会 計 を社 会 的 基 準 に したが って個 別 企 業 を 規 定す る制 度 会 計 と し,ま た管 理 会 計 を社 会 的 形 成 体 と して の企 業 の存 続 と発 展 の担 い 手 で あ る経営 管 理 者 に必 要 な 会 計 情 報 を提 供 す る もの と して い る。 す な わ ち, 財 務 会 計 は,個 別 企業 の立 場 を は なれ社 会 的 ・一 般 的 な立 場 に も とづ き,一 般 的 な承認 を 受 けた 社 会 的 基準 に した が っ て 個 別 企 業 を 規 定 す る もの で あ る。 そ れ に た い して管 理 会 計 は,企 業 の個 別的 立場 に も とづ き社 会 的形 成 体 と して の企業 が そ の存 続 と発 展 と い う本 来 の 目的 にね ざ した 行 動 の あ り方 を 目的 とす る と と もに,そ の担 い手 で あ る経 営 管 理 者 に 必要 な 会 計情 報 を提 供
ゆ
す る もので あ る。
この よ うに,溝 口教 授 は,財 務 会 計 と管理 会 計 を 「一 般 」 と 「個別 」 の 関 係 と して理 解 し,ま た両 者 を対 立 的 関 係 に お い て と らえ よ うと して い る。 そ れ にた い し番 場 教授 は,計 算 対 象 の側 面 か ら財 務会 計 と原 価 会 計 に 区 別 し,
また報 告対 象 の側 面 か ら外 部 報 告 会 計(狭 義 財務 会 計)と 内部 報 告会 計(管 理 会 計)に 区 別 して,つ ぎの よ うにの べ て い る。 企業 会 計 は,財 務 諸表 の作 成 を通 じて 企業 外 部 の利 害 関 係 者 に奉 仕 す る と と もに,会 計 記 録 や会 計報 告 を通 じて経 営 管 理 者 の計 画 設 定 や 統 制 に奉 仕す る こ とを 目的 と して い るた め に,前 者 を対 外報 告会 計,後 者 を 内部報 告会 計 と よぶ こ とに す る。
企 業 会 計 は,計 算 対 象 の ちが いに よ って 財 務会 計 と 管 理 会 計 に 区 別 され る。 財 務 会 計 は,(1}外 部 取 引 の 記録,② 財 務 諸 表や 報 告書 の作 成,(3)会 計 帳 簿 や 財務 諸表 上 の会 計 数 値 の比 較分 析 を そ の 内容 と して い るが,そ の利 用 目的 に よっ てつ ぎの2つ にわ け られ る。 財務 会 計 の結 果 が 財 務 諸表 を通 じ て企 業 外 部 の 利 害 関 係者 に 伝 達 され る 対 外 報 告 会 計 と して の 財 務 会 計 で あ
り,ほ か の一 つ は経 営 管 理 者 に 提 供 され る内部 報 告会 計 と して の財務 会 計 で あ る。
(8)溝 口 ・雄編 「管理会1{1講i義」(青 林書院新社,昭 和49年)p,18.、
194 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
そ れ に た い して 原 価 会 計 は,(1}内 部 取 引 す な わ ち 費 用(原 価)の 流 れ (結 合 と分 岐)の 記 録,② 原価 報 告 書 の 作成,(3)会 計 帳 簿 や 原価 報 告書 上 の原 価 数 値 の比 較 分 析 を そ の 内 容 とす る。
以上 の こ とか ら知 られ る よ うに,財 務 会 計 と原 価 会 計 は,企 業会 計 の領 域 (計 算 対 象)か らの区別 で あ り,ま た 対 外 報 告 会 計 と内部 報 告 会計 は,企 業 会 計 の利 用 目的(報 告対 象)か らの区 別 で あ る。 そ して これ らの関 係 を 図示
く ラ
す る と つ ぎ の よ うに な る。
第1図
計 算対 象 によ る区別 会計 デー タの伝達手 段 報告対象 に よる区別
一→ 外部的 財務 諸表 対外 報告会 計
財 務 会 計 一→ 内部的 財務諸表 内部報告会 計(管 理会計)
↑ その他の内部的財務纈
原 価 会 計 一→内部的原価報告書 内部報告会計(管 理会計)
企 業 会 計 は,報 告 対 象 の ちが いか ら外部 報 告 会 計(狭 義 財 務 会 計)と 内部 報 告会 計(管 理 会 計)に 区 別 され るが,外 部 報 告会 計 とは一 体 どの よ うな会 計 で あ ろ うか 。 一 般 的 に は 外 部 報 告会 計 とは,企 業 外 部 の利 害 関 係者 に企 業 に関 す る財 務 的 情 報 を伝 達 す る プ ロセ ス で あ る と定 義 され る。 しか しこの財 務 的 情 報 に は 二 つ の意 味 の情 報 が ふ くまれ て い る。 そ の 一 つ は 現在 の株 主 と 将 来 の株 主 との期 間 的持 分 権 の衡 平 化 に つ い て の情 報 で あ り,ほ か の一 つ は 外 部 情 報 利 用者 の意 思決 定 に役 立 つ情 報 で あ る。 そ して前 者 を制 度 会 計,後 者 を情 報 会 計(経 営 管 理 者 のた め の情 報 を ふ くむ)と よぶ ほ うが 妥 当 の よ う に 思 わ れ る。
この よ うに,外 部 報 告会 計 は,情 報 の利 用 目的 か ら制 度 会 計 と情 報会 計 に
(10)
区 別 さ れ る が,両 者 の ち が い を 武 田教 授 は,つ ぎ の よ うに の べ て い る 。 ω 制 度 会 計 は 利 益 計 算 を 会 計 目的 と した 体 系 で あ る 。 そ れ に た い して 情 報
会 計 は,情 報 利 用 者 の 意 思 決 定 モ デ ル に ふ く ま れ る 諸 変 数 を み た す よ うな (9)番 場 嘉一郎著 「棚卸 資産会 計」(国 元書房,昭 和42年)pp.1‑3.
(1(》武 田隆二著 「情報会計論」(中 央経済 社,昭 和46年)pp.17‑8.
財務会計 と管理会言1の統合 の現 状 195
情 報 の提 供 を 任務 と して い る。
② 制 度 会計 は,複 式 簿 記 機 構 か ら導 か れ る利 益 計 算 を 主 目的 と して い る こ とか ら,す べ て の 資料 が 貨 幣額 に よって 表 現 され る こ とが 必要 で あ る。 そ れ に た い して 情報 会 計 は,意 思 決 定 に ともな う不 確実 性 を減 少 させ る情 報 に あ る ので,計 量 的情 報 の み な らず 非 計 量 的 情 報 も重 視 す る。
以 上 の よ うに,企 業 会 計 は種 々 この観 点 か ら区 別 され るの で あ るが,そ れ らを 要 約 的 に 図 示 す る と下記 の よ うに な る。
第2図 (社会的な立場)
■ 驚 繋 犠
(管理 会計)翼 欝:
(企業 の立場)q青 報利用 者 の立場)
皿 管理 会計 と経 営 管 理 の関 係
管 理 会 計 は,経 営 管 理者 が 必要 とす る会 計 情 報 を提 供 す る ことを 目的 と し て い る。1958年 の管 理会 計 委 員会 報 告 に よれ ば,管 理 会 計 とは,一 ・企 業 が歴 史 的 お よび計 画的 な経 営 資 料 を処 理 す るに あた って,経 営 管理 者 が 合理 的 な 経 営 目的 の達 成 計 画 を設 定 し,そ れ を達 成 す るた め の知 的 な 意 思決 定 が で き る よ う援 助す るの に適 切 と思 わ れ る技 術 や概 念 を適 用 す る ことで あ る。 また 管理 会 計 の重 要 性 につ い て は,経 営 管理 者 が会 計 資 料 を利 用 す る点 に あ る こ とを 指摘 し,会 計 資 料 の利 用 方法 は,経 営 管 理 者 の経 営 管 理 機 能,す な わ ち 計 画設 定(planning)と 統 制(con七rol)に 関係 を もた な けれ ば な らな い こ と
くまり
を も の べ て い る 。
経 営 管 理 機 能 を 計 画 設 定 と 統 制 に 区 別 し て 考 察 す る の が 一 般 的 で あ う が, 1958年 の 管 理 会 計 委 員 会 報 告 は,(1)計 画 設 定 と し て 個 別 計 画 の み を 設 定
(1i)"ReportofCommi七 七eeonManagemen七Accounting",p.210.
}
196 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
し,期 間 計 画 の 存 在 を 全 く無 視 して い る。 ② 計 画 設 定 と統 制 の 関 係 お よ び 両 者 の 結 び つ き を 全 く取 扱 っ て い な い の で あ る。 そ こで つ ぎ に,経 営 管 理 機 能 の 二 つ の 側 面 で あ る 計 画 設 定 と 統 制 の 関 係 に つ い て検 討 す る こ とに し よ
う。
AAAの1955年 原 価 概 念 お よ び 基 準 委 員 会 が 発 表 した 「経 営 管 理 目的 の た め の 原 価 概 念 に 関 す る 中 間 報 告 」 は,経 営 管 理 機 能 を 計 画 設 定 と統 制 に 区 別 し,さ らに 計 画 設 定 をProjectplanningとperiodplahningに 区 別 して 両 者 を つ ぎ の よ うに 説 明 して い る 。projectPlanningと は,経 営 管 理 者 が 将 来 の 問 題 に 直 面 した 場 合,将 来 の 活 動 コ ー ス に 関 す る 意 思 決 定 が で き る よ うに' 各 代 替 案 を 評 価 す る プ ロ セ ス で あ る 。 そ れ に た い してPeriodplannin9と
は,経 営 管 理 者 が 特 定 期 間 に お け る 企 業 全 体 また は 企 業 の 機 能 別 部 門 に 関 す
(12)
る 一 組 の 承 認 さ れ う る 計 画 を 組 織 的 に 作 成 す る プ ロ セ ス で あ る 。
Anthonyは,AAAの1955年 原 価 概 念 お よ び 基 準 委 員 会 報 告 書 と ほ ぼ 同 一 の 観 点 か らprojectplanningとperiodplanningに つ い て ,つ ぎ の よ う に の べ て い る 。projectplanningと は,経 営 管 理 者 が 特 定 の プ ロ ジ ェ ク トま た は 提 案 に 関 して 意 思 決 定 が で き る よ うに 分 析 す る こ とで あ っ て,当 該 プ ロ ジ ェ ク トの 全 期 間 に わ た る 未 来 収 益 と 費 用 へ の 考 慮 を ふ くん で い る 。 ま た PeriodPlanningと は,未 来 の 特 定 期 間 に わ た る 費 用 ・収 益 ・資 産 お よ び 持
(13)
分 の 観 点 か ら,企 業 の 経 営 活 動 を 計 画 す る こ と で あ る。
AAAの1955年 原 価 概 念 お よび 基 準 委 員 会 報 告 書 やAnthonyは,経 営 管
ロの
理 機 能 を 計 画 設 定 と 統 制 に 区 別 し,両 者 を 対 立 的 に 把 握 し よ う と し た の で あ
⑫"TentativeStatementofCostConceptsUuderlyingReportsfor
ManagementPurposes",(AccountingRevieω,Vo1.31No,2April1956),p.184.
⑬Anthony,RN.ManagementAccounting(lllinois,Irwin,1959)p.325.
⑭ ク ー ン ッ=オ ド ン ネ ル は,経 営 管 理 機 能 を 計 画 設 定planning,組 織 化organizing, 人 事staffing,指 揮directin9お よ び 統 制controllin9に 区 別 す る が,人 に よ っ て は
さ ら に 経 営 代 表 機 能managerialrepresentingfunction,調 整 機 能co‑ordinating な い し 動 機 づ け 機 能motivatingfunctionを つ け 加 え る こ と が あ る.し か し な が
ヒ
ら,彼 等 の 区 別 方 法 に は,(1)総 合 的 で あ る こ と,② 論 理 的 分 析 を 行 な い う る よ う に 分 割 し う る こ と,(3)管 理 者 が 実 際 に 判 断 す る よ う に 合 理 的 な 正 確 さ を も っ て, 管 理 者 の 機 能 を 描 き 出 し て い る と い う意 味 に お い て 実 際 的 で あ る,な ど の 利 点 を 指 。
財務会計 と管理会計の統合の現状 197
る 。 しか し計 画 設 定 と統 制 は 経 営 管 理 機 能 の な か で 密 接 な 関 係 に あ り,両 者 を 区 別 して 考 え る こ とは 果 して 妥 当 か ど うか と い う問 題 が 生 じて く る の で あ る。 こ の 点 に 関 して 注 目す べ き 見 解 を 発 表 した の がBeyerで あ る 。
Beyerは,収 益 性 会 計 を 財 産 保 全 会 計(custodialaccounting),意 思 決 定 会 計(decisionacc6unting),お よ び 業 績 評 価 会 計(performanceaccounting)
に 区 別 し,財 産 保 全 会 計 は 財 務 会 計 の こ と で あ り,ま た 意 思 決 定 会 計 お よ び
く
業 績 評 価 会 計 は 管 理 会 計 の こ と で あ る と して い る。 意 思 決 定 会 計 と は,さ き に も の べ たprojectplanningの た め の 会 計 で あ り,ま た 業 績 評 価 会 計 と は periodplanningと 統 制 の た め の 会 計 で あ る。
山 辺 教 授 は,従 来 の 計 画 会 計 ・統 制 会 計 とBeyerの 提 唱 す る 意 思 決 定 会 計 ・業 績 評 価 会 計 の 範 囲 の ち が い を 下 記 の よ うに 図 示 し,さ らにBeyer体
ロ の
系 の 利 点 と して,つ ぎ の 二 つ を あ げ て い る 。
プ ロ ジ エ ク ト ・ プ ラ ン ニ ン グ ー 一 レピ リ オ ド ・ プ ラ ン ニ ン グ ー → コ ン ト ロ ー ル
ち カ へ り エ ロ コ り
計 画 会 計 意思決定会計
統制会計 業績評価会計
Beyer体 系 の 利 点
α)期 間 計 画 と 統 制 と は,経 営 管 理 の 不 可 分 な 二 側 面 で あ る 。 計 画 は 有 効 な 統 制 に 支 え ら れ な け れ ば 何 物 も な し と げ な い し,統 制 の 努 力 は,そ れ を 指 導 す る プ ラ ン な く し て は 無 目 的 で あ る 。 ま こ と に プ ラ ン ニ ン グ お よ び コ ン ト ロ ー ル は,い わ ば 「盾 の 両 面 」 を な し て い る 。
② 意 思 決 定 会 計 と 業 績 評 価 会 計 と は',会 計 実 体 を 異 に す る 。 意 思 決 定 会 計 で は 個 別 計 画 問 題 に つ い て の 計 算 が 行 な わ れ る の に た い し て,責 任 会 計(業 績 評 価 会 計)に お い て は 経 営 管 理 上 の 組 織 単 位 を 基 礎 と し て 計 算 菅 摘 して い る。
(Koonty,H.andC.O'Donnell,PrinciplesofManagement,NewYork, McGraw‑Hill,1964,p.viii).
・⑮Beyer,RandD.J.Trawicki,ProfitabilityAccountingseconded.(New York,Ronaldpress,1972)pp.4‑6.
⑯ 山 辺 六 郎 著 「管 理 会 計 」(千 倉 書 房,昭 和44年),pp.79‑81.
198 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
が 行 な わ れ る。
以 上 の よ うに,管 理 会 計 を 計 画 会 計 と統 制 会 計 に 区 別 して 体 系 化 を は か る か,そ れ と も意 思 決 定 会 計 と業 績 評 価 会 計 に 区 別 して 体 系 化 を は か る か は, ピ リオ ド ・プ ラ ン ニ ン グ を プ ロ ジ ェ ク ト ・プ ラ ン ニ ン グ の 終 点 と み る の か そ れ と も コ ン トロ ー ル の 出 発 点 とみ る の か と い うち が い で あ る。 山 辺 教 授 も指 摘 す る よ うに,ピ リオ ド ・プ ラ ン ニ ン グ と コ ン トロ ー ル と は 相 互 に 密 接 な 関 係 に あ り,両 者 を 別 々に 実 施 す る こ と は 不 適 当 で あ る の で,意 思 決 定 会 計 と 業 績 評 価 会 計 に よ る体 系 化 の ほ うが す ぐれ て い る と い わ な け れ ば な らな い の
で あ る。
IV財 務会 計 と管 理 会 計 の統 合
財 務 会 計(外 部 報 告 会 計)と 管 理 会 計(内 部 報 告 会 計)は,そ れ ぞ れ 自己 の 目的 を 追 求 して 著 しい 発 展 を とげ て きた の で あ る が,近 年 に な っ て 財 務 会 計 と 管 理 会 計 を 統 合 しよ う とす る動 き が あ らわ れ は じめ た の で あ る。
tG oetzは,経 営 管 理 者 の 経 営 管 理 機 能 を 計 画(planningenterpriseactiv‑
ities),統 制(controllingenterpriseoperations)お よび 社 会 的 諸 関 係 の 処 理(conductingsocialconducts)に 区 別 す る。 社 会 的 諸 関 係 の 処 理 と は, 社 会 的 形 成 体 で あ る 企 業 が 自 己 の 存 続 と発 展 を は か る た め に,企 業 外 部 の 利
害 関 係 者 で あ る 株 主,債 権 者,仕 入 先,政 府 お よ び 労 働 組 合 な ど に,企 業 の 計 画 や 経 営 状 態 に 関 す る 情 報 を 提 供 し,企 業 経 営 の 円 滑 化 を は か る こ と で あ
(i7)
る 。Goetzは,会 計 を 経 営 管 理 者 の た め の 会 計 と して 理 解 し,外 部 報 告 会 計 も 経 営 管 理 機 能 の 一 部 と して 把 握 す る こ と に よ っ て,財 務 会 計 と 管 理 会 計 の 統 合 を は か ろ う とす る も の で あ る 。Goetzと ほ ぼ 同 一 の 見 解 を と る も の と し てMcfarlandを あ げ る こ と が で き る 。
Mcfarlandに よれ ば,大 企 業 に お け る経 営 管 理 者 は,資 本 の 提 供 者 す な わ ち 株 主 お よ び 債 権 者 の 必 要 と す る会 計 情 報 の 提 供 を 執 事 た る 地 位(steward‑
shiPposition)に と も な う責 任 と して 認 識 す る と と も に,か か る会 計 情 報 の
⑰Goetz,B.E,of).cit.pp.1‑4.
/
財務会計 と管理会計の統合の現状 199
提 供 を企 業 の将 来 の資産 調 達 に お い て も必 要 な機 能 で あ る と認 識 して い る。
資 本 提 供 者 の必 要 とす る会計 情 報 とは,(1)企 業 に資 本 を提 供 す るか ど うか, また は 現在 の投 資 を継 続 す るか ど うか,② 経 営管 理 者 を選 任 で き る権 限 を も っ てい る場 合 に は,現 在 の経 営 管 理者 を支 持す るか ど うか,を 決 定 す るた め の もの で あ り,そ れ を要 約 的 に 示 す とそ の 企業 の収 益 性 と安 全 性 を分 析 す るた め の会 計 情 報 とい うこ とに な る。 企 業 の収 益 性 お よび安 全 性 に 関す る会 計 情 報 は,資 本 提 供者 の み な らず 経 営 管 理 者 に と って も必要 な情 報 で あ るが 個 々の資 本 提 供者 は 企 業経 営 に は参 加 しな い ので,経 営 管 理者 の よ うに詳 細
ゴく
な情 報 を 必要 と しな い の で あ る。
Mcfarlandの 見 解 に お い て注 目す べ き こ とは,外 部 的 財 務 報 告 書 とそ の 基 礎 とな る会 計 記 録 に た いす る責 任 は,主 と して経 営 管 理者 に あ り,こ の研 究 で は 「外 部 報 告 会 計 を管 理 会 計 の一 側面 」 とみ て い る ことで あ る。 す な わ ち 外部 報 告 会 計 と しての財 務会 計 を経 営 管 理 者 の 立場 に ひ き よせ る こ とに よ っ て,財 務 会 計 と管 理 会 計 の統 合 を は か ろ うとす る もので あ る。
しか しこの よ うに,財 務 会 計 の管 理会 計 化 に よ って,財 務 会 計 の すべ て が 管 理 会計 と一 体 的 に取 扱 うことが で き る よ うに は思 われ な い ので あ る。 さ き に ものべ た よ うに,財 務 会 計 に は 二 つ の 役 割 が あ り,そ の一 つ は 財 務会 計 を 社 会 的 基準 に した が って個 別 企 業 を 規定 し,現 在 の株 主 と将 来 の株 主 と の期 間 的 持 分 の衡 平化 を は か るた め の会 計 情 報 を 提 供す る制 度 会 計 と して の側 面 で あ り,ほ か の 一 つ は外 部 利 害 関係 者 の意 思 決 定 に必 要 な会 計 情 報 を 提 供 す る情 報会 計 と して の 側 面 で あ る。 した が ってMcfarlandの 見 解 は,情 報 会 計 と して の 財務 会 計 の側 面 で は な るほ どみ た して い るが,制 度 会 計 と して の 財 務 会 計 の側 面 に つ い て は全 く考 慮 が払 わ れ て い な く,こ の 点に 大 きな 欠 点 が あ る と いわ な け れ ば な らな い の で あ る。
財 務 会 計 と 管理 会 計 の 統 合 を は か ろ うと した も う一 つ の 見 解 は,会 計 を 情 報 シ ス テ ム と して 把 握 した も ので あ るが,か か る 見 解 を とる もの と して Beyer,ASOBATを あ げ る こ とが で き る。Beyerに つ い て は,さ き に も指
⑱Mcfarland,W.B,op.cit.pp100‑4.
200 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
摘 した よ うに,収 益 性 会 計 を 財産 保 全会 計,意 思 決 定 会 計 お よび 業績 評価 会 計 に 区別 し,財 産 保 全 会 計 を 財務 会 計,意 思 決 定 会 計 お よび業 績 評価 会 計 を 管 理 会 計 と して い る。Beyerは,財 務 会 計 と管 理 会 計 を統 合 す るた め に会 計 シス テ ムを 設 定 す る。 そ して この会 計 シ ス テ ムが 両者 に と って有 効 で あ るた め に は,ま ず シ ス テ ムの デ ー タ ・ベ ースが 財 務 会 計 目的 に と って も,ま た 管 理 会 計 目的 に と って も 役 に 立 つ 会 計 の イ ン プ ッ ト・デ ー タの す べ て を ふ く み,つ ぎに シ ス テ ムに イ ン プ ッ トされ た デ ー タが そ の 後 の各 目的 に応 じて 分 類 ・整 理 され うる よ うに,弾 力性 を 保 持 して いな け れ ば な らな い と して い
ノ
る。 そ して この よ うな統 合 会 計 情 報 シ ス テ ムが構 築 され る こ とに よって,財 務 会 計 と管理 会 計 はそ れ ぞ れ 他 を 犠 牲 にす る こ とな く して 自己 の 目的 とす る
、(19)
会 計 情報 を 自由 に取 り出 す ことが で き る よ うに な る と して い る。
AAAの1966年 「基 礎 的 会 計 理 論委 員会 報 告書(ASOBAT)」 は,直 接 的 に は 財務 会 計 と管 理 会 計 の統 合 を表 明 しては い な いが,会 計 の 本 質 を情 報 シ ・ ス テ ム と して理 解 し,財 務 会 計 と管 理 会 計 を 一 元 的 に 把握 しよ うと して い る の で あ る。 す なわ ち,ASOBATは,「 会 計 と は情 報 の利用 者 が よ く情 況 を 理 解 した うえで 自己 の 判 断 や意 思 決 定 が で き る よ うに,経 済 的 情 報 を識 別 し,
く ラ
測 定 し,か つ伝 達 す る プ ロセ ス で あ る」 と定 義 し,ま た意 思 決 定 者 の必要 な 情 報 と して,(1}限 りあ る資 源 を利 用 す るた め の情 報,② 組 織 内に あ る人' 的 お よび 物 的資 源 を 効率 的に 指 揮 ・統 制 す るた め の情 報,(3}資 源 を保 全 し, そ の 管 理 に つ い て の情 報,(4}社 会 的 な機 能 お よび統 制 を 容 易 に す るた め の
く ひ
情 報 を あ げ て い る 。 こ こ で ω お よ び ② は,さ き に の べ た 情 報 会 計 の 側 面 か ら の 会 計 情 報 で あ り,ま た(3)は 制 度 会 計 の 側 面 か ら の 会 計 情 報 で あ る と 考 え ら れ る 。 し か しASOBATは,制 度 会 計 上 の 会 計 情 報 と 情 報 会 計 上 の 会 計 情 報
と の 二 つ の 会 計 情 報 を 一 元 的 に 把 握 す る た め に,つ ぎ の4つ の 会 計 情 報 基 準 す な わ ち,(1}目 的 適 合 性(relevance),(2)検 証 可 能 性(verifiability),
⑲Beyer,RandDJ.Trawicki,op.cit・,PP.9‑10.
㈹AAA,A5tatementofBasicAccouutin8Theory,p.1.
②)Ibid.,P.4.
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財務会計 と管珪会計の統合の現状 201
(3)不 偏 性(freedomfrombias),(4)量 的 表 現 可 能 性(quantifiability)
く わ
をあ げ て い る。 これ らの諸 基 準 を み た す もの は,す べ て 会 計 情報 とい うこ と に な るが,す べ て の基 準 を 完 全 に み たす こ とは必 ず しも要 求 され ず,情 報 の 利 用 目的 に応 じて遵 守 され る程 度 もち が って くる ことに注 意 しなけ れ ば な ら
な い の で あ る。
ASOBATは,財 務 会計 情 報 と管 理 会 計 情 報 とに 適 用 され る4つ の基 準 を あげ て い るが,そ れ だ け で は 財務 会 計 と管 理 会 計 の統 合 が は か られ た とす る に は きわ め て不 十 分 で あ るた め に,会 計 理 論 の 拡大 の章 に お い て会 計 理 論 が 将 来,会 計 実 務 を 情報 シス テ ムの活 動 と して 取 扱 うこ とが で き る よ うに 拡 大
され るべ きで あ る こ とを提 案 し,つ ぎの よ うに のべ て い る。 す な わ ち,将 来 ・ の会 計 情 報 シス テ ムは,会 計 の イ ン プ ッ トと して どの よ うな 目的 で あれ,そ のた め に 収 集 され たす べ て の数 量化 され た デ ー タをふ くみ,ま た会 計 の ア ウ
トプ ッ トと して 基 本的 な公 表 報 告 書 の ほ か に,計 画,指 揮 お よび統 制 目的 の た め のす べ て の 内部 報 告 書 をふ くむ こ とが で きるで あ ろ う。 した が って,将 来 の会 計 情報 シス テ ムは,伝 統 的 な 分類 モデ ル に適 合 す る計 画 され た情 報 だ け で は な く して取 引に 関 係 の な い情報 で あ って も,そ れ が過 去 の もので あ ろ うと計 画 され た もので あ ろ うと,ま た企 業 内部 か ら収 集 され た もので あ ろ う と外 部 か らの もの で あ ろ うと,そ の よ うな こ とに係 わ りな く,経 済 主 体 の活
く ラ
動 を 指導 す るた め に有 用 な もの は す べ て,ふ くむ ことが で き るで あ ろ う。
ASOBATは,将 来 の会 計情 報 シ ステ ムが 財 務 会 計 シス テ ム と 管 理 会 計 シ ス テ ムを統 合 す る 統 合 会 計情 報 シス テ ム と して構 築 され る こ とを主 張 して い るが,そ の具 体 的 な シ ス テ ムを提 示 して いな いの で あ る。 そ こでわ れ わ れ は ASOBATの 主 張 す る 統 合会 計 情 報 シス テ ムの 一 つ の 具 体的 な例 示 と して,
(24)
GodfreyandPrinceの 会 計 情 報 シ ス テ ム を あ げ る こ と が で き る 。
鋤IbidリP・8.
㈲Ibid.,P.67。
㈲ 詳 細 に つ い て は,つ ぎ の 交 献 を 参 照,山 田 一 生 稿 「会 計 シ ス テ ム と 情 報 処 理 」 一 会 計 情 報 シ ス テ ム 構 築 へ の ア プ ロ ー チ ー(商 学 討 究 第24巻 第3号)pp .24‑31, 武 田 隆 二 著 「前 掲 書 」pp.41‑62.
、
、
202 商 学 討 究 第25巻 第1・2号
GodfreyandPrinceに よれ ば,フ ォ ー マ ル 。イ ン フ ォ メ ー シ ョン ・シ ス テ ム と は,一 つ ま た は そ れ 以 上 の オ パ レ ー テ ィン グ ・シ ス テ ム を ふ くむ コ ン ピ ュ ー タ ・ベ ー ス の 情 報 ネ ッ トワ ー クで あ り,そ れ は 意 思 決 定 者 お よび 意 思 決 定 グ ル ー プに た い して 目的 適 合 的 な 情 報 を 提 供 し,ま た プ ロ グ ラ ム化 され た 意 思 決 定 モ デ ル(programmeddecisionmodels)の な か の パ ラ メ ー タ お よ び 変 数 の 変 化 に も とづ き,こ れ ら 目的 適 合 的 な デ ー タ に た い す る 意 思 決 定 者 の 応 答 を 取 扱 うた め の 適 切 な メ カ ニ ズ ム を も ふ くむ も の で あ る 。 フ ォ ー マ 辱
ル ・イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・シ ス テ ム に つ い て の 上 記 の 定 義 の な か に は,つ ぎ の4つ の 重 要 な 要 素,す な わ ち(1)コ ソ ピ ュ ー タ ・ベ ー ス の 情 報 ネ ッ トワ ー ク,② 一 つ また は そ れ 以 上 の オ パ レ ー テ ィン グ ・シ ス テ ム,(3)意 思 決 定 者 お よ び 意 思 決 定 グ ル ー プ,(4)こ れ らの デ ー タ に た い す る 意 思 決 定 者 の 応
く
答 を 取 扱 う た め の 適 切 な メ ヵ ニ ズ ム,が ふ く ま れ て い る 。
そ し て こ れ ら の4つ の 要 素 が,フ ォ ー一マ ル ・ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ シ ス テ ム の な か で ど の よ う に 結 び あ っ て い る か に つ い て,GodfreyandPrinceは
伝 統 的 な 会 計 モ デ ル(traditionalaccountingmodel)と 会 計 情 報 シ ス テ ム
・ モ デ ル(accountinginformatiPnmodel)を 構 築 し て い る が,後 者 の 情 報
く
シ ス テ ム ・モ デ ル を 図 示 す る と つ ぎ の よ うに な る。
こ の 会 計 情 報 シ ス テ ム ・モ デ ル に は,つ ぎ の5つ の フ ィル タ ー ・プ ロセ ス
(27)
が あ る 。
(1}観 察 さ れ た 取 引 お よ び そ の 他 の 外 部 デ ー タ(B1‑B9) (2)財 務 会 計 諸 概 念 の 定 義 と 測 定(B10,Bll,Bl3‑B16.,B19) (3)'管 理 会 計 情 報 の 定 義 と 測 定(B11‑B13,B16‑‑B18,B28) (4}財 務 会 計 情 報 の 分 類 と 伝 達(B20‑‑B27)
(5)管 理 会 計 情 報 の 分 類 と 伝 達(B29‑B36)
㈲Godfrey,J・T・andT・R・Prince,"TheAccountingModelfroma11 InformatiomSystemsPerspective'
1971),pp.77‑8.
㈲Ibid.pp.86‑7.
鋤1うid.P.85.
(Accountin8Revieω,Vol.46No.lJan・
財務会計 と管理会計の統合の現状 203
第3図
B5
GodfreyandPrinceの 情 報 シ ス テ ム ・ モ デ ル の な か の5つ の フ ィ ル タ ー
・ プ ロ セ ス の う ち ,特 に 注 目 し な け れ ば な ら な い の は 第4と 第5で あ る 。 第 4の フ ィ ル タ ー ・ プ ロ セ ス は,B24〈 利 用 者 〉 がB22〈 分 類 と 処 理 〉 へ の フ
204 商 学 討 究 第?5巻 策1・2号
B21
Is29 B30
イ ー ドバ ッ ク ・ ル ー プ と 結 び つ い て い る だ け で は な く,B3〈 ア カ ウ ソ タ ン トに よ る 認 識 〉 へ の フ ィ ー ドバ ッ ク ・ ル ー プ と も 結 び つ い て い る こ と で あ る 。 こ の フ ィ ー ドバ ッ ク ・ ル ー プ は,デ ー タ が は じ め て シ ス テ ム に は い る 段 階 で 利 用 者 の 要 求 に た い し て 応 答 で き る よ う に シ ス テ ム を 設 計 す る こ と を 可 能 に し て く れ る 。 ま た 第5の フ ィ ル タ ー ・ プ ロ セ ス は,B28に お い て オ ン ラ イ ン で 貯 蔵 さ れ た デ ー タ を 取 り 出 し,そ れ ら の デ ー タ を 処 理 し,さ ら に 種 々 の 経 営 管 理 目 的(B30,B33,B36)の た め に 情 報 を 選 択 す る の で あ る 。 第
4の フ ィ ル タ ー ・ プ ロ セ ス と 同 じ よ う に 第5の フ ィ ル タ ー ・ プ ロ セ ス に も 情 報 利 用 者(B30,B33,B36)は,B17(モ デ ル の 選 択 ・,B1・ 選 択 さ れ
、
財務会計 と管理会計の統 合の現状 205
た 外 部 デ ー タ 源 泉 〉 お よびB3〈 ア カ ウ ン タ ン トに よ る 認 知 〉 へ の フ ィ ー一一・ド バ ッ ク ・ル ー プ と 結 び つ い て お り,こ こ で も 目的 適 合 性 の あ る情 報 が 提 供 さ れ る よ うに シ ス テ ム が 設 計 さ れ て い る。
GodfreyandPrinceは,会 計 情 報 シ ス テ ム ・モ デ ル を 上 記 の よ うに 説 明 す る が,そ の 特 徴 は つ ぎ の3つ,す な わ ち(1)利 用 者 指 向 的 で あ る こ と, (2}フ ィー ドバ ッ ク ・ル ー プ を も っ て い る こ と,(3)財 務 会 計 と管 理 会 計 を 会 計 情 報 シ ス テ ム の な か で 統 合 化 さ れ る こ と に 要 約 す る こ と が で き る 。 しか し
こ の 会 計 情 報 シ ス テ ム の 構 築 の た め の 前 提 条 件 と して は,コ ン ピ ュ ー タ の 利 用 が 考 え られ て い る こ と で あ る。 コ ン ピ ュ ー タ が 利 用 され た 場 合,収 集 され る会 計 情 報 の 多 くの も の は 〜複 合 的 な性 質 を も つ 必 要 が な く,よ り原 始 的 な 形 の 数 値 に 分 解 さ れ た 状 態 で 収 集 され る た め に,多 様 な 情 報 要 求 に 応 じて 収 集 さ れ た 情 報 を 処 理 し,再 構 成 した うえ で 情 報 ア ウ トプ ッ トが 伝 達 され る だ け で は な く,情 報 の 重 複 を 除 去 し,情 報 の 正 確 性,一 貫 性 お よび 統 制 機 能 を
改 善 す る こ と が で き る と い う長 所 も あ る。 、
以 上 の よ うに,ASOBATお よ びGodfreyandPrinceは,会 計 情 報 の 一 元 的 処 理 を す る 会 計 情 報 シ ス テ ム を 構 築 し,そ れ に よ っ て 財 務 会 計 と管 理 会 計 の 統 合 化 を は か ろ う と した の で あ る。 しか し統 合 の 問 題 は,果 して これ に よ っ て 解 決 した の で あ ろ うか 。 溝 口教 授 は,つ ぎ の よ うに の べ て い る。 す な わ ち,会 計 情 報 に は,基 礎 的 情 報 な い し デ ー タ段 階 の 情 報 と 諸 種 の 要 求 に 応 じて 方 向 づ け られ た 情 報 す な わ ち ア ウ トプ ッ トと して の 情 報 と が あ る。 低 次 の デ ー タ 段 階 で は,財 務 会 計 と管 理 会 計 と は 情 報 プ ロ セ ス ζ して は 共 通 の 基 盤 を も つ こ と に な る が,デ ー タ 段 階 の 情 報 は 本 来 の 情 報 で は な い の で あ る。
デ ー タ 情 報 が 本 来 の 情 報 に な る た め に は,目 的 適 合 性 に よ る判 断 を 必 要 とす る 。 財 務 会 計 と管 理 会 計 の 本 質 を 目的 の 観 点 か ら識 別 す る な らば,会 計 目的 と の 関 連 に お い て 設 定 され た 会 計 諸 概 念 を 媒 介 と して デ ー タ 情 報 が 目的 志 向 性 を 有 す る会 計 情 報 に 転 換 して い くこ と に 着 目 し,会 計 目的 一 会 計 概 念 一 会 計 情 報 と い う結 び つ き の うち に 財 務 会 計 と管 理 会 計 と の 識 別 が 認 め られ る べ
206商 学 討 究 第25巻 第1・2号
(28)
き で あ ろ う。
GodfreyandPrinceは,財 務 会 計 と管 理 会 計 の 統 合 化 を 会 計 情 報 シ ス テ ム ・モ デ ル の う ち で は か ろ う と した こ と は す で に の べ た と こ ろ で あ る 。 しか し こ の モ デ ル で 注 目す べ き こ と は,フ ィル タ ー ・プ ロ セ ス の な か に 第2の 財 務 会 計 諸 概 念 と 測 定 に つ い て の フ ィル タ ー ・プ ロ セ ス,第3の 管 理 会 計 情 報 の 定 義 と測 定 に つ い て の フ ィル タ ー ・プ ロ セ ス が 存 在 す る こ と で あ る 。 こ の 2つ の フ ィル タ ー ・プ ロ セ ス は,溝 口 教 授 の 指 摘 す る 財 務 会 計 と管 理 会 計 を 識 別 す るた め の フ ィル タ ー ・プ ロセ ス そ の も の な の で あ る 。 した が っ て 財 務 会 計 と管 理 会 計 を 統 合 化 した 統 合 会 計 清 報 シ ス テ ム に お い て も,そ れ らは 財 務 会 計 シ ス テ ム,管 理 会 計 シ ス テ ム と な り トー 客 ル シ ス テ ム の サ ブ シ ス テ ム を 構 成 して お り,シ ス テ ム の な か で は 明 確 に 区 別 さ れ て 存 在 して い る の で あ
る。
ま た 会 計 情 報 シ ス テ ム の 観 点 か らの 統 合 化 に つ い て の も う一 つ の 疑 問 が 生 じて くる。 管 理 会 計 は,意 思 決 定 会 計 と業 績 評 価 会 計 とに 区 別 され る が,こ の 意 思 決 定 会 計 とは 経 営 管 理 者 が 特 定 の 問 題 に 直 面 した 場 合,将 来 の 活 動 コ
ー ス に 関 す る意 思 決 定 が で き る よ うに 各 代 替 案 を 評 価 す る プ ロ セ ス で あ る。 GodfreyandPrinceが 構 築 した 情 報 シ ス テ ム は,フ ォ ー マ ル ・イ ソ フ ォ メ
ー シ ョ ン ・シ ス テ ム で あ り,そ の な か に は プ ロ グ ラ ム 化 さ れ た 意 思 決 定 モ デ ル の み しか ふ くま れ て い な い の で あ る。 経 営 管 理 者 が 直 面 す る特 定 の 問 題 の 多 くは,プ ロ グ ラ ム 化 さ れ な い 意 思 決 定 に 関 す る も の で あ る か ら,フ ォ ー マ ル ・イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・シ ス テ ム に よ っ て は 解 決 で き な い の で あ る。 した が っ て こ の よ うな 特 定 の 問 題 を 処 理 す る た め の シ ス テ ム が 開 発 され な い か ぎ
り,管 理 会 計 の す べ て を フ ォ ー マ ル ・イ ン フ ォ メ ー シ ョン ・シ ス テ ム の な か に ふ くめ る こ と は で き な い の で あ る 。
(1974.8.1)
/
鰺 溝 ロ ー 雄 稿 「管 理 会 計 論 の 動 向 」(会 計 第99巻 第3号)pp.71‑2.