─ 20 ─ ─ 21 ─ 図1 技術士試験の仕組み
図3 徹底指導のようす 図2 学習計画書
技術士試験対策講座「西川塾」の設立
西川 弘太郎
津山工業高等専門学校 教育研究支援センター
1. 緒言
技術士は,国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者で,科学技術の応用面に携わる技 術者にとって最も権威のある国家資格である.筆者は,平成24年度技術士第二次試験に合格(平成22年度技術士第一 次試験合格)し,技術士(機械部門)として登録を受けた.そして平成25年度,技術士である筆者が全面的に指導を おこなう技術士試験対策講座「西川塾」を設立し,技術士第一次試験の受験指導をおこなった.本稿では,「西川塾」設 立初年度の成果について報告する.なお,「西川塾」の名は,塾生によって命名されたものである.
2. 技術士試験とJABEE
技術士試験は,技術士第一次試験と技術士第二次試験に分けて,文 部科学省令に定める技術部門ごとに1年に1回実施されている.技術 士試験の仕組みを図1に示す1-2).技術士になるには,技術士第一次試 験と技術士第二次試験に合格し,技術士として登録しなければならな い.具体的には,技術士第一次試験は,基礎科目・専門科目・適性科 目で構成される択一試験である.この試験を合格した後,技術士第二 次試験を受験するには,修習技術者となり所定の実務経験※1が必要 となる.そして技術士第二次試験は,筆記試験と口頭試験で構成され,
この両方に合格しなければならない.そして,技術士登録をおこなうこ
とで技術士となる.このように,技術士になるまでの道のりは長く,難関の国家試験となっている.
本校の2専攻課程(機械・制御システム工学専攻,電子・情報システム工学専攻)は,日本技術者教育認定機構(JABEE) により,社会の要求水準を満たしている技術者教育プログラムとして認定を受けている.このことにより,専攻科の技 術者教育プログラムの修了生は,技術士第一次試験合格者と同等とみなされ,技術士第一次試験が免除される.しかし,
専攻科に進学しなかった者は,技術士第一次試験に合格しなければならない.
※1 技術士第二次試験の実務経験年数は,技術部門により異なる.
3.「西川塾」のシステムと塾生
西川塾のシステムは,技術士第一次試験対策のフェーズ1と技術士第二次試験対策のフェーズ2で構成している.基 本的には,この2つのフェーズがセットになっている.今回は,フェーズ1である技術士第一次試験機械部門の受験指 導を5ヶ月間おこなった.塾生は,本校の高専5年生A(大学2年相当)と専攻科1年生B(大学3年相当)の2名で ある.塾生らの受験動機は,将来,技術士になって活躍するためである.塾生Aは,就職内定済みの高専生のため,技 術士第一次試験の合格が必須である.一方,塾生Bは専攻科生であるため,このまま技術者教育プログラムを修了すれ ば,技術士第一次試験が免除となる.しかし,技術レベル向上のために受験を決意した. なお,塾生らの学業成績は,
中位から上位である.
4. 「西川塾」における指導(フェーズ1) 4.1 指導スタイル・塾生の実力
まず,塾生らには学習計画書を提出させた.平成 25年度技術士第一次試験の試験日は,10月14日(月)
である.試験日から逆算して現在までに何をどうす ればいいのかを塾生らにまとめさせ,筆者が添削を おこなった.塾生Aの学習計画書を図2に示す.筆 者の経験上,合格するためには,正しい計画を正し く実行することが重要であると考える.この学習計 画書に沿って自主学習させ,進捗状況のチェックを
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図5 オリジナル問題 図4 模擬試験のようす
表1 模擬試験成績(選択した問題に対しての正答率)
毎日おこなった.
つぎに,教材は市販の技術士第一次試験対策本を利用した.ここでわかったことは,塾生らの応用力の低さである.
簡単な基礎問題は解けるが,応用問題となると手をつけようともしないのである.そして,技術士第一次試験対策本の 解説を理解できない.このままの実力では,合格は難しい.そこで筆者は,塾生らの前でホワイトボードを使用し実際 に問題を解いてみせた.その中で対策本の問題解説の過程で省略されている部分の解説や,より理解を深めるための参 考文献などを示した.このように,塾生らが理解するまで徹底的に指導をおこなった.そのようすを図3に示す.
4.2 過去問題全問解答・解説・テクニックの指導
対策本には,数年分の過去問題しか記載されていない.塾生らのレベルアップをはかるには,より多くの問題に触れ 応用力を強化する必要がある.そこで,過去問題を収集し,全問解答・解説をおこなった.また,技術士試験は時間と の戦いでもある.たとえば,専門科目では2時間以内で35問中25問を選択し,解答しなければならない.各問題の解 き方はさまざまであるが,より短時間で解答を導き出すテクニックを指導した.
4.3 オリジナル問題による模擬試験の実施 試験本番は,さまざまなトラブルが想定される.
トラブルとは,不合格になる要因が発生することで ある.たとえば,緊張して本来の実力が発揮されな かった,時間オーバになってしまった,指示を守ら ず失格になった,などである.このような事態にな らないように,試験慣れをしておく必要がある.そ こで模擬試験を実施し,試験本番の緊張感を塾生ら に体験させた.これにより,試験本番の緊張感・時
間感覚が理解できるようになる.この模擬試験を3回実施した.そのようすを図4に示す.模擬試験で使用する問題は,
筆者が作成したオリジナル問題とした(図5).これは塾生らの理解度を確認するためであり,過去問題の丸覚えになっ ていないのかを判断する.模擬試験の問題は,塾生らが理解していなければ解くことができない難易度に設定している.
模擬試験の成績を表1に示す.科目ごとの成績は,選択した問題※2に対しての正答率である.技術士第一次試験の 合格基準は,基礎科目・専門科目・適性科目の各々の得点が50%以上である.したがって,塾生らは概ね合格基準をク リアしている.ただ,第3回模擬試験の専門科目については,塾生Aは不合格であり,塾生Bはギリギリ合格の結果で あった.模擬試験の難易度は,段階的に上げている.したがって,問題の難易度を考慮すれば,健闘したと考える.一 方,基礎科目については,塾生Bが満点に近い成績を残すなど塾生らの応用力がアップしている.模擬試験の採点と解 答は即日実施し,お互いの得点を開示した.これにより,塾生らが良い意味でライバル関係となり切磋琢磨するように なった.この後,塾生Aは模擬試験の悔しさをばねに追い上げをみせた.
※2 専門科目:35問中25問を選択,基礎科目:1群から5群すべての問題群からそれぞれ3問題の計15問を選択,適 性科目:15問中15問を選択.
4.4 模擬試験の結果分析・面談の実施
模擬試験の結果から,塾生らの問題選択の傾向(得意分野・苦手分野)を分析し,得点をアップするための対策を成 績表にまとめた.その成績表をもとに,塾生らと面談をおこなった.
4.5 格言の送付
技術士試験は,決して楽なものではない.まさに己との戦いである.そこで,筆者は塾生らの精神的なバックアップ のために,定期的に塾生らの携帯電話へ“技術士試験に関する格言”を送付した.
模擬試験実施日 試験科目 塾生A 塾生B
専門科目(機械部門) 64% 60%
適性科目 67% 67%
第2回:9月7日 基礎科目 60% 60%
専門科目(機械部門) 32% 56%
基礎科目 53% 93%
第1回:7月14日
第3回:10月5日
─ 22 ─ ─ 23 ─ 表2 技術士第一次試験成績
5. 「西川塾」の成果 5.1 技術士第一次試験合格
塾生らは,平成25年度技術士第一次試験機械部門に合格した.合格発表は,12月18日(水)であった.公益社団法 人日本技術士会ホームページ・文部科学省ホームページ・官報号外第276号にて発表された.官報には受験番号のみで はなく,合格者の名前がフルネームで記載される.筆者は,塾生らの受験番号と名前を確認したとき,喜んだと同時に ホッとした.試験成績を表2に示す.塾生ABともに余裕をもって合格している.
5.2 塾生の学業成績・モチベーション向上
塾生らは,今回の技術士第一次試験の学習によって学業成績が向上した.とくに塾生Aについては,クラス順位が14 位から2位(38人中)に向上した.これは,定期試験のためだけに学習するのではなく,技術士第一次試験合格という 具体的な目標を持って継続的な学習をおこなってきた成果であると考える.塾生らは,現在も学習を継続しており,こ の合格が塾生らのさらなるモチベーション向上につながっている.
6. 結言
西川塾の初年度の成果として,全塾生が技術士第一次試験機械部門に合格した.これは塾生らの弛まぬ努力の成果で ある.この5ヵ月間,塾生らにとっては,厳しいカリキュラムであったのかもしれない.しかし,技術レベルと精神力 は,当初より見違えるほどである.だが,この技術士第一次試験は通過点にしか過ぎない.塾生らが次のステップであ る技術士第二次試験を受験するのは,数年先である.そのころには本校を巣立ち,社会で活躍していることであろう.
筆者は,塾生らに対しフェーズ2の受験指導を継続しておこなう所存である.
7. 謝辞
本活動は,平成25年度津山工業高等専門学校校長裁量経費の支援を受けて実施した.ここに謝意を表します.
<西川よりメッセージ>
学生ならびに技術職員向けの技術士講演は,ご用命ください.わかりやすく,ていねいに解説させていただきます.
【実績】津山工業高等専門学校 第3回先端技術特別講義 平成25年10月8日(火)
大分工業高等専門学校 技術士試験技術交流・情報交換会 平成25年12月16日(月)
熊本高等専門学校八代キャンパス 技術士試験技術交流・情報交換会 平成25年12月17日(火)
津山工業高等専門学校 工業倫理学 平成26年1月31日(金)予定
【連絡先】津山工業高等専門学校 教育研究支援センター 〒708-8509岡山県津山市沼624-1 TEL: 0868-24-8248,8242
参考文献
1) 公益社団法人日本技術士会,技術士制度について(平成25年4月),(2013),pp.3-pp.3
2) 日刊工業新聞社,技術士第二次試験「機械部門」完全対策&キーワード100,第2版(2009),pp.16-pp.17
技術士第一次試験科目 塾生A 塾生B 専門科目(機械部門) 64% 88%
基礎科目 87% 100%
適性科目 73% 73%
結果 合格 合格