奈良教育大学学術リポジトリNEAR
奈良県における水稲晩期栽培の実態
著者 石井 滋規
雑誌名 奈良学芸大学紀要
巻 7
号 2
ページ 59‑74
発行年 1957‑12‑15
その他のタイトル On the Actual Conditions of the Late
Plantation of Lowland Ricein Nara Prefecture URL http://hdl.handle.net/10105/4884
奈良県における水稲晩期栽培の実態
石 井 滋 規 (作物園芸学教室)
(昭和32年10月1日受理)
ShigekiIsHIl:On the Actual Conditions of the Late Plantation of Lowland Ricein Nara Prefecture
序
最近略全国的に水稲の早晩期栽培に関する試験研究が盛になり,その栽培面積も急速に増大し て各地に新な作付体系を確立しつ⊥ある。これは我国農業生産の主要基盤たる永田の多角経営・
災害回避・労力調整・或は地力保全等を目標として起ったものではあるが,然し一一万戎場合には,
早期栽培における裏作価値・水利慣行・雀害・品質低下等,或は晩期栽培における前後作価値・
収量低下等がその普及上の障害になっていることも否めない。けれども元来,耕地面積狭小な我 国農業生産力増加の為に計り得る現実的な途としては結局,これ等の障碍を克服して,現在夏作 の大部分を占めている水稲の生育口数短縮と栽培季節移動による,水田の多角的経営の可能性を
より促進することの他には安全な方法はないと思われるのである。
奈良県における早期栽培の面積は昭和31年度約70町歩(県下の全水稲栽培面積の約0.3%),
32年度は230町歩(同前約0.8%)にしてその急増振りが伺えるが,県当局の調査によれば,その 将来の普及見込地として計上される総面積は約1,200町歩(約4.9%)に達するという。これに対 する晩期栽培面積は現在略400〜450町歩(約1.5〜1.8%)で,年による著しい増減はない。只上 記の早期栽培普及見込面積の実現の可能性がどの辺にあるかほ疑問であるが,何れにしても,早 期栽培が晩期栽培に比して,将来より大きな普及性を有っていることは疑えないようである。然 し一方の晩期栽培も奈良県においてはその歴史が古く,その換金性前作物が農家所得に及ぼす影 響から見て,非常に重要な作付様式であることに変りはない。現に県農業試験場においても,所 謂西南地方生産力増強試験の一環としてゞほあるが,昭和28年度より水稲の晩期栽培に関する試 験研究が新に始められ,その成果も次第に挙げられて来ている現状である。
私はこゝ数年来作物の生産効率に関する研究を続けて行き度く念願していたが,水稲において も生育期関短縮と栽培季節移動の問題に注冒し,その基礎的資料の一つとして,昭和32年4月以 降試験場その他を通じて県下の水稲晩期栽培の現状を若干調査したので,簡単ながらこゝに報告 させて頂く。然し種々の事情に制約された為とは云え,報告としてほ非常に不備で,特に数量的 な資料に乏しく,多く定性的たらざるを得なかったことを残念に思う。これと同様の調査には昭 和28年度「奈良県における水稲晩期栽培の実態調査」が県農業試験場において行われているが,
当時と比べてその栽培法には可成の変化が見られ,尚若干の事項について不備の点も見られたの で,一にはそれを補足する意味で行ったものである。従ってこれと平行して同場発行のサイエン ス,昭和29年4月号を参照して頂ければ幸である。
調査は主に水稲晩期栽培の中心地帯である郡山市・磯城郡西部・天理市・北葛城郡南部地方の 4地域に亘って行い,面積の上では可成の広さを有する奈良市周辺地方は,特に新しい動きは見 られぬのでこの調査から省かれたが,その栽培法は略郡山乃至は天理地方の在来の方法に準ずる
(60)
石 井 滋 規ものと見られる。
この調査の為に農業試験場・県庁の各技師,現地普及技術員,及び一部実際栽培農家の方々に 多数御世話になったが,微力にして十分その労に応えること得わず,呉々も申訳なく思っている。
然しこれだけの報告の為にも,それ等の人々の熱心な教示と,特に農業試験場技術課長岡島技師,
及び京都大学農学部作物学教室長谷川教授の懇な援助と指導とがあったことを附記して,深謝の 意を衰せずにはいられない。
調 査 結 果 工 普及地域
奈艮県における水稲晩期栽培の普及地域は殆ど大和平野の平坦地に存するものであるが,大体 奈良市西南部周辺に80〜90町歩,郡山市南部旧昭和村方面に約20町歩,天理市西部に100〜150町 歩,磯城郡西部田原本町方面に160〜170町歩,更に北葛城郡南部新庄町方面に約10町歩,とその 主な内訳が見られるであろう。これ等晩期栽培の正確な面積は,年々戎程度変動することの他に,
前作物に対する税金への思惑から過小申告される傾向が強く,その実数を正確に掴むことが困難 である。
一般にこれ等晩期栽培地帯は県下でも最も交通の便と肥沃な地味とに恵まれた高度の集約栽培 地帯に属するが,この点現在までの早期栽培が主として早害・秋落・早冷害若しくは風水害等の 不良環境に対する保護策として普及しているのとは非常に対庶的である。
Ⅱ 前作物
県下の晩期栽培水稲の前作物として面積の上で最も多いのは甜瓜及び西瓜であるが,蕃茄及び 胡瓜の栽培面積も比較的多く,その他一部には菓豆・茄子の他に採種用人参・玉葱等も僅かなが ら栽培されている。これ等の前作物について,その種類別の面積・栽培地域の他に二三の耕種事 項の基準を略記すれば大体第1表のようである。
第1表 奈艮県における晩期栽培水稲の前作物 栽培面積
(町歩〕
160 110〜180
70−80 40
5へ・・6
3−・4
栽 培 地 域
酉磯城,天理.奈良,郡山 天理,奈良,西磯城 酉磯城,奈良,郡山,天理 西磯城,北葛南部,天理 酋磯城(田原本町)
西磯城(田原本町)
定 植 期 収穫末期
4月上〜中旬 4月上一中旬 4月上〜下旬 3月下〜4月下旬
3月下旬(播種〕
4月上一下旬
7月10−25日 8月5日頃 7月下旬 7月5−20日 7月上旬 7月末〜8月初
施肥量(反当貰)
N I P205l K90
3′}6
5・−・7
5′−10
5〈′10
2.5〜3 5〜・10
即ち西磯城地方は主として甜瓜と蕃茄,大理地方では西瓜と甜瓜,奈良市周辺は西瓜並に蕃茄
・甜瓜を栽培し,その他郡山市南部に蕃茄,及び北葛城郡南部に新庄町を中心とする胡瓜の集団 産地がある。第1表に掲げた栽培面積は必ずしも厳密な数値ではなく,県下における果読菜類の 栽培面積と現地普及技術者よりの聴取とから推定されたもので,これに関する正確な数値の記載 はない。一般に甜瓜を除いては,こゝに示された作物の種類の県下における全栽培面積は略その 数値の3〜5倍位であるが,只甜瓜のみは約2分の3乃至3分の4倍に当るものと見られる。
前作物の収穫末期若しくは収穫切上時期は年によって可成の変動を示し,天候と市況に恵まれ
た年には遅くまで収穫が続けられて,時にはその為に後作水稲の予定を変更することさえも行わ れる。特にこれは西瓜・茄子の如く後期に収穫されるものにおいて見られる現象である。然し逆 に天候不順或は市況不良の年においては,それだけ早く収穫を切上げて後作の水稲に転換するこ とになり,甚だしい時には,全然収穫を放棄することさえも止むを得ぬ状況となる。一般に早期 収穫終了のものとして7月上旬から甜瓜・胡瓜があり,最晩期収穫切上げのものとしてほ8月初 旬に西瓜と一部に茄子がある。奈良県における晩期栽培水稲の前作物としての収穫切上げの最晩 期限界は一般には8月5〜7・8日頃とされているのが現状である。
施肥量は概して著しく多く,所により相異はあるが,県農業試験場指示の基準量に比しても可 成多施される傾向がある。特に聴取の結果では燐酸・加里の供給が優っているようである。窒素 は西瓜・蕃茄・茄子において特に多く,胡瓜も収穫を比較的早期に切上げる新庄地方は別として,
共に反当7〜8貫或は9〜10貫施用している。これ等の前作物は収穫切上真際まで数乃至時には 十数回にも亘って追肥される為に,後作への残効も当然大きいものと考えられる。その肥料の種 類としてほ,基肥に綿実粕を中心に油粕・魚肥・草木灰等の有機質肥料が当てられ,一部これを 単肥叉は配合・化成肥料等の無機成分によって揃うが,追肥には主として後者を当てる。この他 重要な役目を果しているものとして堆厩肥の供給がある。勿論作物の種類や農家の実状によって 異なり,殆どこれを施きぬ場合もあるが,一般には反当200〜500貫位の鋤込みが行われている。
1Ⅱ 水 稲 1.品 種
晩期栽培用水稲の品種はその定植期や育苗方式又は地方の慣行によって戎程度変化している。
定植期の関係から云えば,大体7月20〜25日頃までの定植では各地域を通じて暖地型(第Ⅱ群)の 晩乃至中生種を用い,それ以降7月末から8月5日頃までの定植においては同じ暖地型の中乃至 早性種を多く採用している。育苗方式との関係より見れば,仮植育苗法においては無仮植晩播育 苗法に比べて,稗遅い定植期まで晩乃至中生種を使用する傾向がある。地方或は農家によっては,
定植期の如何に拘らず普通期栽培の品種をそのまゝ用い,何等晩期栽培用品種として選択をして いない場合も可成見受けられるが,然しこれ等も次第に,試験場等によって推奨される晩期栽培 用品種を改めて考慮するようになっている傾向がある。殊に西磯城地方と天理地方の一部におい ては,定植苅が遅れるに従い晩生種から中生,更に早生種へと,採用する水稲の品種を適宜に取 換えている所もある。
各地域を通じて奈良県奨励品種たる晩生種のアケポノ・東海旭が最も多く,特に前作物の収穫 終了期が・早心、程そうである。定植期が遅れるにつれて金南風・新金南風等の中生種から,更に早 生の晩種に相当する黄金錦が多く用いられる。その他にはユウバエ・ミホニ㍉/キの晩生種,畝傍
・ノ、ツレモの中生種が一部栽培され,更に一部には豊千本・日の丸・近畿51号・東山38号等の中 晩生種が,また天理地方においては桓早生に相当する銀河2号が少数ながら栽培されている。
簡単に地域別の主要栽培品種を纏めてみると次の通りである。
郡山地方 ⑦東海旭・○アケポノ
西磯城地方 ◎アケポノ・⑦東海旭・金南風・新金南風t O黄金錦 天理地方 ⑦アケポノ・ミホニシキ・金南風・○黄金錦
新庄地方 ◎アケポノ・○東海旭(色印・○印は最も代表的なものを示す)
尚県農業試験場による品種の適性試験の成績を附表−1,2に示しておく。
2.栽培方法
栽培方法は移植栽培法と直播栽培法に分れ,その中間的方法として短く一部ながら簡易移植栽
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石 井 滋 規培法も見られる。勿論大部分は移植栽培を行うが,天理方面では或範囲に亘って直播栽培法が行 われており,その面積は10町歩前後と見られる。この他西磯城地方にも一部,数町歩に亘って直 播栽培若しくは簡易移植栽培が行われている。これ等直播又は簡易植栽培法は西瓜の跡作におい て比較的多く用いられ,一部西磯城地方で蕃茄・茄子等の跡作にも用いられている。
A.移植栽培法
(1)育 苗
育苗方法は仮植育酋法と無仮植青首法とに分れ,後者は更に振匿と晩播の画法に分けられる。
仮植育苗法は普通期と略同時期に苗代に播種した首を,定植直後の普通期の本田(これを仮植母 田という)の哩株間,或は特別に設けられた仮植専用田に仮植して,晩期栽培の定植用苗とする 方法である。据置無仮植育苗法は略同時期に稗薄目に播種された首を,仮植することなくそのま ゝ苗代に据置いて,60〜70日,甚だしい時には80日もの苗代日数を経過させて定植するものであ る。この方法は今では多く7月前半頃までの定植期に限られて用いられるが,以前にはその後の 定植においても相当の範囲に亘って見られたようである。例えば昭和28年度の実態を調査した前 記農業試験場の報告を見ても,その定植首の約二割弱が66〜84日の苗代日数経過のものである。
これに対し晩播無仮植育苗法は農業試験場よりの奨励により最近になって次第に普及するように なったもので,言葉の如く,定植期に対して苗代適日数が得られるように前以て播種期を普通期 より遅らせる方法である。以前には殆どが据置首の他は仮植西を用いていたが,この方法によれ ば労力過大で,天候により定植期の柿傷みが甚だしくなり易く,その為に収量は必ずしも安定的 ではない。従ってその改良方法として晩播無仮植用品種と栽培法が研究されるに至った訳である。
そして将来はこの方式による栽培法が一層普及して行くべき運命にあるが,現在では尚一般に,
そして特に定植期が晩期の定植となるにつれて,仮植方式が収量安定的であると信じられている。
郡山・新庄地方は殆ど皆この方法により,奈良・天理地方でもこの方法が一般的である。只西磯 城地方においては所により少くとも3−一4割,多きは6〜7割程度に亘って晩播無仮植苗を用い ており,天理地方でも所によっては2分の1位の面積がこの方法によっている。然しこれ等の地 方においても,定植期が遅れるにつれて仮植酉を用いる傾向が強く,また一部には直播乃至は簡 易移植栽培法がそれ等に代っている。
仮植式育苗法の主な数的事項を示すと第2表の如くである。
第2表 仮 植 育 苗 法 の 概 要 (1)
2.5−3
2 − 3
5 −・10
即ち百代播種量は所によれば坪当4〜5台の極く密播もあるが,一般に戦前に比してほ相当薄 播化されている。特に4Hクラブ会員等の間では2合播てさえ厚目と考えられている。苗代施肥 量は,普通期栽培における県平坦地区の平均3要素量坪当夫々8・5・・5匁(昭和30年度,県農 業改良課)であるに比較すれば,可成多用されている。中でも燐酸・加里の施用が比較的目立っ ているようである。苗代日数は40〜50日が多く,所により55〜60日の老熟苗が移植されている。
仮植密度は地域によって種々変化し,また仮植専田と仮植母田で植方が異なる。概して母田は 専用田に比して粗栂である。そして母田の植方には2通りあり,4−5寸前後の畦株間で取残株
と抜取株の区別なく−・面に植込みを行い,後これを適宜に間抜いて定植首にする方法と,一旦定 植された普通期本田の条問に仮植苗のみを別に植込みしておく方法がある。後者は郡山地方に多
く見られる方法であるが,天理・北葛城地方にも一部は見られる。これに対して仮植専用田を設 ける所は西磯城地方には比較的多く,天理・郡山地方にも一部は見られる。この方法による方が 労力も却って効果的で,特に酋抜取後ゐ仮植田の生育が母田のそれに比して優るという。
仮植田の施肥量は所により本田施肥量の20〜30%増し,或は略それと同等位の相異がある。昭 和28年度普通期栽培における購入肥料の施用量は平坦地区において3成分夫々反当2.2・1.8・1.
5貫(農林省作物統計調査所)である。それに比すれば稗加里の比率が廃っているが,然し尚晩 期栽培の理想から云えば,加里の増施を更に心懸ける必要がある。尚仮植田の面積は晩植本田1 反歩に対し密栂の場合で1.5〜2.0畝(仮植専用日D,粗植の場合で5〜5.5畝(仮植母田)と可 成の開きがある。一般にこれ等の仮植苗は定植期までに大体1株10本前後の茎数に達する。
無仮植育商法の中指置酉によるものは,前述の如く唯若干の薄播を心懸ける他には特別の処置 を施さないが,晩播無仮植苗によるものは定植期・苗代日数及び品種の間に密接な関係があり,
特別な注意を要す。現在西磯城或は一部天理地方においてこの育苗法が用いられているのは,一 般には7月25日頃までの定植期においてゞあり,それ以降にも定植期がなる時には主として仮植
酉を用い,一部において直播または簡易移植栽培,そして更に晩播無仮植苗利用の移植栽培も採 用されている状態である。そして晩播無仮植方式に用いられる品種としては,7月20日頃までの 定植においては,アケポノ・東海旭の晩生種の他に金南風(中生種)・黄金錦(早生の晩種),一 部に新金南風・黄金千本の中・早生種とその他の普通期栽培用品種も少例ながら見受けられる。
定植期が7月25乃至7月末日頃までに遅れるにつれ次第に中生種から早生種が多く,就中黄金錦 が主として利用されるようになる。苗代目数は品種との関係よりすれば,晩生種では一般に55〜
60日,中生種で50〜55日,早生種で40〜50日が多く,定植期との関係は明らかではないが,それ が後れるにつれて苗代日数は稗減少される傾向がある。例えば西磯城地方の戎研究会等では,完
(64)
石 井 滋 規植期が約10日遅れるにつれて前代日数を略5日短縮する必要があるという結果を得ているが,こ の点は必ずしも一般には守られておらず,また県農業試験場の成績を見てもその断定は困難であ る。このことは例えば第3表の試験成績によっても云えることである。
第3表 晩期栽培における品種・苗代日数及び定植期と収量との関係(昭和30年度,奈良県農業試験場)
(註)播種密度坪当1.5合,承植密度坪当75株5本栂,1但し仮植苗のみ50及び75株の1本栂
只これ等農業試験場の試験成績は播種密度が坪当1.5合の薄播であることが大きな影響を有っ ており,一般農家の如き坪当2〜3台程度の密度においては,矢張り定植期が遅れるに従い苗代
(1)
日数も次第に短縮される必要があると思われる。(この点に関しては,薦田によれば,香川県に おける晩期栽培用品種及び苗代日数として,寒地型(第工群)品種の苗代日数20日前後の若苗を 奨めているが−但し播種密度坪当3合,品種及び育苗法上尚最も検討を要する問題であろう。)
晩播無仮植育苗法による播種期は普通5月下旬乃至6月上旬である。播種密度は所により非常 に違い,天理地方では普通期の播種密度と大差なく大凡坪当3合である,西磯城地方では少きほ 1.5〜2.0合,多きは4〜5合とその粗密に著しい相異がある。然し概して普通期乃至は仮植式晩 期栽培の播種密度は3〜4台,晩播無仮植式晩期栽培では2〜3台が普通と云えよう。苗代面積 もそれにつれて反当15〜10坪から5〜6坪まで変化し,普通10坪前後となる。苗代肥料は前者の それに比して一般に施用稚少く,3要素夫々坪当6〜8・6〜8・6〜10匁位が多い。これは普 通期首代施肥量の60〜80パーセント程度で,只燐酸と加里の施閂が窒素に対して比率上稗高い価 を有していることが一つの特色である。所によっては3成分10・11・10匁(中窒素2匁追肥)程 度の施用もあるが,一般に尚特に加里成分の施用に留意する必要がある。
尚奈良県平坦地区における苗代の種類は普通期栽培では水苗代80.2・陸苗代11.5・折衷苗代 8.2パーーセント(昭和28・29年平均,農林省作物統計調査所)であるが,晩期栽培の無仮植育苗 法では多く陸曹代を用い,また前期を水苗代とするものも後期には陸甫代に転換することが多い。
(2)定 植
定植期は既述の如く前作物の収穫終了期によって決定され,それに従ってまた品種・育苗法或 は栽培法等が左右されるが,一般に定植は出来るだけ高温強日照を避け活着を促進する目的で夕 刻近く,出来ればまた曇雨天の日に急いでなされることが多い。只,これ等ほ水利或は共同作業 等による労力上の問題や,出来るだけ定植を急ぐ為等の理由によって必ずしも守られているとは
云い難ら 特に酋取りは日中高温多照下にも行われることがあるようである。
定植に先立って,前作物の茎葉・株等を全部搬出し,敷革・敷薬類も一部天理地方では鋤込み をしているが,その他の地方では多くこれを徹去して軽い鋤起しを行う。耕起は深いよりも寧ろ 浅い方がよく,このことは特に定植期が遅れるについて云えるという。また整地・港水後の代援 等も簡単に行う方が定植後の水稲の生育に良好であるという。
(1)薦田快夫:水稲の早期栽培と晩期栽培,82−85,1957
定植に離しては水利の許す限り2〜3寸位の深水とし,坪当仮植苗30〜50株(特に多い場合は 65株も一部にある)▼一普通40〜45株,無仮植苗50〜65株・2〜7本植一普通50〜56株・4〜5本 植の密度で定植される。この栽植密度は一般に戦前に比すれば相当密植されているようであるが,
理想的には尚租植に過ぎる。例えば仮植苗であるが,昭和28・29年の奈良県平坦地区の普通期栽 培の坪当株数の分布を見れば次の通りで(農林省作物統計訝査所),
坪当株数 25ノ〜30 30〜35 35〜40 40〜45 45〜50 50〜55 55〜60
パーセント
2.3 10.4 49.6 28.8 7.5 1.0 0.4 14.3 36.2 36.7 10.6 2.2
平 均 40.0株
晩期栽培の栽植密度も普通期栽培のそれと殆ど変らぬことになる。前掲第3表の農業試験場の成 績を見ても,坪当75株にして初めて苗代適日数を与えられた晩播無仮植苗(坪当75株)に匹適す る収量を得ている。これは縛極端かと思われる例であるが,少くとも仮植苗で50株以上,晩播無 仮植苗で60株以上(試験場では75株位を奨励している)の密度であれば,一層安定した収量が得
られようと思われる。
尚畦株問距離の比率については,矩形乃至は並木植よりも正方形椿の方が定植後の生育良好で あるという。然しこの点についても問題があり,例えば薦田(同前)等によっても正方形植より も並木植の方が奨められている。また定植に際し,活着促進の目的で菓先窮除等の特殊処理は余 りなされていない。只一般に水苗よりも畑西が多く,或は所により苗代末期に坪当0.4〜2匁程 度の窒素肥料の追施または定植前乃至その後の本田に対する窒素その他の成分の基肥乃至は追肥 をすることがあり,これ等が活着促進の仇きをなしている,ということはある。尚また定植直後 の管理として,水利の便に恵まれている所は数乃至10日昼間深水・夜間浅水,または掛流漸慨等 の調節を行うが,実樵にこれを行っている所は比較的少いようである。
β)本田の管理及び生育経過
定植時または定植後の潅漑水の管理は大体前述の通りであるが,その他では特別に管理の為に 注意されていることは少い。中耕除草も回数少く,定植後1週間頃から軽く1〜2回行われる程 度で,定植期が7月中旬位までの時は2,41)も使用される。
本田の施肥量は共通的に少く,無肥栽培が多い。前作物が甜瓜・菜豆等の如く比較的少肥栽培 されるものでは,反当3成分夫々1.0〜1.8・0.8〜1.6・1.0〜2.0貫程度の施用がなされることが 多いが,所によっては燐酸・加里を非常に多く(反当3〜5貰)施し,反対に殆ど無肥,または 窒素のみ根附肥として0.5貫前後施すこともある。西瓜では無肥又は窒素のみ0.5貫前後が多く,
所により燐酸・加盟をも夫々1・5〜1・6・2・0〜2・5貫施す場合がある。蕃茄及び胡瓜は無肥叉は窒 素のみ0.5〜0・7貫根附肥として施されること多く,時に各成分1貰前後の施用がなされることも ある。概括的に,甜瓜等を除いては多く無肥又は窒素のみ反当0.5〜0.6貰前後,所によっては3 成分夫々1・0・1・0〜1・5・1・0〜2・0前後の施用をなすことがある,と云えよう。尚肥料の種類は 速効性にして,基肥として施されるのが普通である。一般に全作物の残効大きく,後作水稲への 施肥−特に窒素成分の施用大きい時は,生育遅延・病虫害発生等の誘因となるが,只加里肥料
の施喝だけは更に普及的に心懸けられる必要があると見られる。薦田(同前)によれば晩期栽培 水稲への施肥は普通期栽培の2乃至3割滅,只特に加里のみは反当3貰以上の施用が望ましい,
という。
移植時の植傷みによる生育遅延は移植が高温強日照下に行われる程強く,その他品種・苗代日
(66) 石 井 滋 規
数・育苗法等によっても大きく影響を受ける。首代日数においては若苗は老熟苗より発根力強く,
品種の点では寒地型乃至早生種程暖地型乃至晩鐘種匿比して発根力最大の苗代日数が短い。また 育苗法からすれば畑苗は水酉に比べて発根力大きく,晩播無仮植苗は仮植苗に比して植傷み少く,
また薄播首は厚播苗に比して当然強健である。これ等の条件により活着目数少きほ3〜5日,多 きは10〜14日に亘って植傷みの現象を呈するという。従ってこれを出来るだけ短期間に止める為 には,それ等種々の条件に関与する操作を得る限り理想的な状態において行うよう工夫すべきで あるが,濾漑水・定植時刻及び若干の施肥等について考慮が払われている他は,特に積極的にこ の問題について工夫されている点は少い。畑苗代の如きも,必ずしも活着乃至はその後の生育促 進に対する顧慮からではなく,単に前作物の周辺に苗を準備しておくことの便利性から来る,水 利上の理由の為に過ぎないことが多い。尤も,晩期栽培用苗として畑酉が水酉に比して有利であ るか否かほ問題で前述薦田は畑首よりも水菌を推奨している。然し一方,稲熱病に対する抵抗性
(1.2.3)
等を別にすれば,古くからまた最近にかけてなされている水・隆替の生育比較試験を見ても,殊 に晩期栽培における畑首の効用は尚研究の余地があると思う。尚また活着促進肥料として窒素の
(4)
みが施用されていることが多く,これは佐藤等の研究によってもその理由が明らかであるが,一
(5,6)
方園芸作物等における′/Starter〝としての燐酸の効果等から考えても,燐酸が晩期栽培水稲の 活着促進効果を現わすことも大いにあり得るのではないかと見られ,これ等の点についても改め
(7)
て検討してみる必要があろう。また近藤及び五十嵐によれば,不良環境における稲苗の発根力増 大に対して低濃度の合成植物ホルモンが顕著な促進作用を有するというが,これ等の点について
も,晩期栽培水稲に対する実用性の面から新しく研究してみる価値があろう。
活着槙の生育相の推移ほ定植期・品種・育苗法及び苗代日数・栽培密度・肥料或はその他気象 状況等によって変化するが,地方によっても著しく違って受取られており,その正確な調査が必 要と考えられる。何れにしても,晩期栽培水稲の生育相は普通期のそれに比して可成後にずれ,
晩播無仮植苗を基準にすれば,有効分薬限界期は7月中旬頃までの定植では7月20〜27日,7月 末の定植では8月10日過ぎ(普通期7月15〜20日),最高分乗期は前者で7月未乃至8月初,後者 で8月15〜20日(普通期7月20〜25日),幼穂形成期は前者で8月10〜20日,後者で20〜27日(普 通期8月5〜15日),出穂期は前者9月7〜12・3日,後者8〜17・8日(普通期の早生種8月25
〜30日,晩生種9月6〜7日)位が大体の範囲になり,仮植苗はこれより1〜5・6日前にずれ ると見ることが出来よう。そして成熟期は7月中旬頃までの定植では普通期と殆ど変らず,早生 種で10月末,中晩生種で11月上旬,7月末以降の定植では早生種11月10〜20日,中晩生極15〜20
日となる。仮植餞は普通期と殆ど変らぬか或ほ数日遅延する程度が多いが,定植期・苗の素質・
天候等に恵まれぬ時は10日内外の遅延を見ることもある。
今第3表の県農業試験場の試験について,その出穂期・成熟期等を普通期のそれと比較すれば 第4表の如くである。
(1)川島武:農業及園芸,17(9),1942;18(9),1943 位)佐藤健吉:朝鮮農学会誌,1,1942;2,1943
(3)YAMAD N.&Y.6TA:日本作物学会紀事,25(3),1957
(4)佐藤健吉:朝鮮農業試験場彙報,9(4),1937
(5)BAKER,C.E.:Proc.AIner.Soc.Hort.Sci.,35,1938
(6)SAYRE,C.B.: ,59,1952;60,1952;62,1953.etc.
(7)近藤頼巳,五十嵐憲蔵:農業及園芸16(9),1941
第4表 普通期及び晩期栽培の出穂及び成熟期の比較(昭和30年度,奈艮農試成績より)
ロ F川コ
金
(註)昭和30年は天候に潜まれた為か,晩期栽培の成熟期が平年に比して早くなっている。
尚病虫害の発生に関しては,二化嬢虫は殆ど問題ではないが,稲熱病及び稗蝿が稗発生し易く,
稲熱病は特に定植期が遅れるにつれて多く,また前作物が殆ど窒素多施の作物であることや,或 は奈良県においては晩期栽培において水酉よりも畑苗乃至は折衷酉を用いることが多い等の理由 の為に,稲熱病の発生はより促進されているものと思われる。
縫)収量及び品質
収量も勿論前作物・定植期・水稲品種・栽培法・土壌或は気象等によって大きく影響されるが,
一般的に云って,定植期が7月5日前後の晩期栽培では普通期栽培と殆ど変らぬか或は精多い目 の収量(反当3.3〜3.8着)が挙げられ,10〜20日頃の定植で普通期と略同量乃至はその約85パー セント(3.0〜3.4・5石),25〜26日頃の定植で80パーセント前後(2.8〜3.0着),8月3日前後 の定植では約60〜70パーセント(2.0〜2.5石)の収量が得られている。然しこれ等の収量も気象 条件の悪化に伴い,分乗不足・1穂顕乗数減少及び登熱不十分等の影響を受け易く,収量は著し
く減少することになる。従って晩期栽培水稲の玄米品質は稗もすると普通期栽培のそれに比して,
青果・腹白米等の増加によって低下する傾向がある。特にこのことは定植期の遅れる場合に著し く,また前作物に対する窒素肥料過施の際にも顕著に現われることで,これ等の場合には品種並 びにその栽培法に特別の顧慮が必要である。
一般に奈良県においては晩期栽培用品種として暖地型(第Ⅱ群)の中晩稲が多く用いられ,定 植期が遅れるにつれて次第に多くその早生種が用いられているが,これに対して北方型(第工群)
の品種は定植期が8月初旬の最晩期となる時には,総籾数の不足の他に,暖地型品桂よりも却っ て登熱不良の現象を起し易く,収量安定的な品種として用いることは出来難いという。只平年な ら定植期7月25〜26日頃まで,8月極初の定植でも殊に天候に恵まれた年は,大体完全な登熟を なして戎程度考慮に値する成績を示すが,その場合でも,一般に総粗数の劣少は免れ難く,暖地 型早中生種に匹敵する収量を確実に期待することは出来ないという。この点については改めてそ の基礎的な研究から検討してみる必要があると考えているのであるが,兎も角現在県下の実際栽 培家達に受容れられているのは,7月末から8月初旬にかけての定植には,普通期栽培における 中早生種を仮植薗方式で育苗することが最良である,とする考方である。これについては(2)
青首の項でも述べた如く,県農業試験場では仮植方式の比較的な収量の安定性を認めつ上も,品 種・栽培法の工夫によっては,労少くして而も仮植方式に時には優りさえする収穫を挙げること が出来る,と説明している。即ち暖地型の早乃至中生種を坪当1〜1.5合位の薄播にして,苗代 日数50日前後の租老熟苗として用いるというのがその骨子である。
次に第3表の他に,かゝる場合の一一例として第5表を示す。
第5表 晩期栽培水稲の収量及びその構成要素の比較(昭和31年度,奈良県試)
B.直播栽培法及び簡易移植栽培漣
晩期栽培水稲の定植期が7月20〜25日以降にもなるような場合には,移植栽培における長期の 植傷みや前作物の収穫遅延に伴う水稲の生育障害,その他多大の労力節約等の目的で天理或は酉 磯城地方で一部行われている方法であるが,播種期は5月中旬から下旬にかけて,前作の両岐宿 に各2〜3条宛計4〜6条,条間0.9〜2.0尺,播種機または手で条播乃至点播される。点播の場 合は株問3〜8寸,1点5〜10粒宛播下しされる。播種量は麦問直拝よりも硝多く反当3〜5升,
前作との混作期間は60〜75日程度である。播種巾は前作物の種類によって異なり,蕃茄・茄子・
菜豆等は直播水桶の利用面積広く,西瓜の如き広畦栽培のものでは水稲の利用面積は逆に締小さ れる。この欠点を揃う為に一部西磯城地方で行われているのが簡易移植栽培である。即ちそれは 一旦畦肩に梢密に直播しておいて,前作物収穫の後にこれを間引き,畦の中央乃至時には満都に も移植を行う方法である。只西瓜の如きその収穫切上時期が8月初句にも及ぶような作物は,後 作に水稲を栽培することが必ずしも固執される訳ではなく,全然水稲の栽培を放棄するか,栽培
しても畦の中央部はそのまゝ里芋等の如き他の換金性作物の栽培に当てるようなことも多い。
一般に晩期栽培における直播水稲の生育は前作物の収穫切上げが早い程良く,またその前作物 の単性が立性よりも葡萄性の,光線透過量大なる少蔓性作物が艮いが,これと水稲の播種巾率の 大小とは必ずしも並行せず,却って立性の作物が有利となることもある。或はまた西瓜等の多聾 性の作物でも,これを密植整枝栽培することによって早生化し,直播水稲をその後作とする方法 も一部には考えられているが,西瓜及び水稲の経済性の面から,合わせて検討してみる必要があ る。尚また,前作物の単性が同じ立性の場合でも,作物の種類によって直播水稲の生育の様相が 異なり,例えば,蕃茄は茄子に比べて水稲の初期生育を抑制するが,後期には却って壌鴛するに 至らせる,というようなこともある。
晩期栽培において直播が移植に比して不利と見られる点は,前作物の種現により発芽歩合・成 薗歩合が低下し,混作期間中の成長が軟弱になること,或はまた戎種の前作物においては播種巾 を減じ,また敷革敷菜によるケラの喰害促進等の他に,一般の直播栽培に見られる雑草・峡虫・
出穂不斉い等の被害が若干伴う点にあるが,然し一方では,例えば第6表に示すような実際栽培 家の試験成績も出ている。
第6表適期移植・晩期移植並びに薗播栽培における収量及びその構成要素の比較(豊芸謡翳海票部)
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91,3: 94.4[225.8196.6
2崇13:;:;(註)試験区の概要
区 別 前作物 播種期 移植または濯水時 適期移植 裸 麦 5月8日 6月27日(移栂)
晩期移植 早熟蕃茄 5.13 7.24 (ク〕
直 播 ク ク ク (湛水)
数
株 7 4 9 当 4 4 5
坪 施肥量(寛一/反)
N P205 K20
3 nU O 2 1 1
0
0
0 2 つ
⊥ l
(70) 石 井 滋 規
別に県農業試験場において調査された直播栽培の成績を第7表に示すが,通じて7月25日前後 水稲作一本への切換えが可能な直播栽培では,大体3石前後の収量を得ることが出来るようであ
る。然しそれより更に晩期に収穫の臥ヒげを行う西瓜の場合になると,単に両畦肩に直播してお くだけで,畦の中央や溝の部はそのまゝとする方法では,略1.5石前後の収量しかないという。
何れにしても,直播栽培が移植栽培に対して,前作物の種類に拘らず決定的に優利な栽培法か呈 かを断定出来る段階ではないが,前作物の種類に応じた栽培法を更に研究する等によって,一層 安定した有利な栽培法となし得る可能性があると見られる。
第7表 奈良県における晩期直播水稲の一例(昭和28年度,奈良薦試調査)
結 貫
既述の如く,奈良県における晩期栽培水稲の品種としては,主として第工群の西南地方の晩乃 至早生種が前作物の収穫終了期の早乃至晩期に従って用いられでいるが,この点に関して尚未だ
問題が残っていない訳ではない。只比較的早乃至中期頃までの晩期栽培においては問題は少いと しても,末期の晩期栽培においては,現在主として用いられている暖地型の早乃至中生種が必ず しも常に最適であるとは云えない。現在のところ,基本栄養生長性及び感温性・苗代日数感応度 合小さく,生育遅延度の少いそれ等の品種が用いられているけれども,問題は単に適期出穂と適 期成熟の2点にのみある訳ではなく,耐病・耐虫性等の重要特性を別にしても,同一期間におけ
る生育速度の問題,吸収及び同化養分の利用効率,或は日照の多寡長短・温度の高低に伴う栄養 生長と,頴花の分化・減数分裂に始まる生殖生長前期と出穂開花に始まる後期の登熟の問題,
等を各品種についてその栽培法との関連において綿密に比較検討して,その上で初めてより終極
(1.2.etc)
的に決定出来る問題である。一般に前記薦田他若干の記述と試験報告等を除いては,西南地方に おける晩植水稲の適性品種の特性としては,奈良県農業試験場の成績と一致するものが多いが,
(3.4.5etc)
一方同じこれ等の成績においても,所謂北方型の第工群の品種が好成績を収めている場合も見ら
れ,決して一方的に断定し得るものではない(附衷一・1.2を参照)。
これ等の問題に関しては,現在農林省及び各府県の試験場で綜合的に試験研究されているもの であるが,一方,特に水稲の晩期若しくは早期栽培の点からではないが,最近殊に盛になってい る水桶の養分吸収と生長との関係・光合性・登熟機構の解明等の研究をこの面に応用することに より,次第にその中心的特性が綜合的に理解され,それによって品種の育生と既存乃至創生品種 の選択と栽培とがより効果的に行われるであろう。奈良県トの水稲晩期栽培において現在特に問 題となるのは,より好適な新品種の再生(これは既に農業試験場において,昭和32年度より新に 着手されているが)を別にすれば,大体前述の基本線に沿った品種の採択とその育苗法の問題,
定植時の活着促進とその後の穂数確保の問題,及び幼穂分化に始まる登熟作用の促進がその根本 的命題であると思われる。
そしてこれ等の研究が捜みなく続けられるにつれて,戎精農家が私に語っていた,若し将来,
水稲の定植を7月末乃至8月初めまで遅らせても,確実に現在の普通期栽培と略同等の収量が挙 げられるに至るならば,晩期栽培の普及面積は飛躍的に増化するであろうという言葉が,勿論容 易ではないにしても,やがてはこの所謂西南地方の一般的現象として見られる臼のあることを,
心から念願して止まないのである。
(1)滋貧農試:西南地方水田生産力増強に関する試験成績書 昭和31年度.1957 位〕長野農試:同 昭和31年度,1957
(3)岐阜薦試:昭和31年度試験成績書.1957 撞)東海近畿農試:昭和31年度試験成賦書,1957
(5)瀬古秀生:戸刈・松尾編,稲作講座工 品種編,1957
そ の 他 の 主 要 文 献
(1)朝限純隆:畷地における水稲晩期栽培法,農及図 31(7),1956
(2)安孫子孝一他:実用作物品種解説,1955
(3)石塚義明:水稲の生育経過に関する研究(第2〜4報),土肥雑 23(2,3),1952, 53;25(4),1954
(4)平野哲也他:晩植水稲の生育相,自作紀 25(1),1956
(5)本田親義:水稲移植期遅延による減収要素について(第1報),薦及園15(9),1940
(6)仮谷桂・池隆韓:水稲の晩植適応性の解析,農及図 25(10),1950
(7)岐阜県農業試験場:水稲品種の感温性及び感光線に関する試験 昭31試験成績雷,1957
(8)近藤頼巳・五十嵐窟蔵:晩揮晩楢による水稲の生育障害及びその品種間差異,自作紀18(1),1949
(9)松尾大五郎:稲作 J 診断編,1950
囲 松島省三:水稲収塁の成立と予察に関する作物学的研究.濃技研報A5,1957 的 −−:水稲収塁の科学(1−9),薦及園 32(1−9),1957
個 盛永俊太郎他:作物と温度及び光I,農及図13(7),1938;Ⅳ.23勉,1948;Ⅴ,23(3),1949;
IV,23(5),1948
任$ 奈良県農業試験場:作物品極の特性解説 改訂第三版,1956
(14) :奈良県における晩期栽培の実態調査,奈良蔑試編,サイエンス 昭29(4)
的 ;西南暖地生産力増強に関する試験成績書,昭28−31度
仕6)野口弥吉:水稲の栄養生理に関する研究(1〜3),農及園,24C9,10,11),1949
(17)農林省奈良統計調査所:奈良県の農林統計,1954及び,55年版 仕8)戸刈義次編:稲作新説,1950
(L功 ,松尾孝嶺編:稲作講座 u\]Ⅲ,1954 幽 一他:作物の生理生態,1957
位1) ,武田友四郎他:作物の瓦斯代謝に閑する研究1,Ⅱ,自作紀23(3),1955;]宜,24(1)
1955;Ⅳ,24(3).1956;Y,24(4),1956;Ⅷ,25(4),1957
eZ2)YAMADA,N・,Y・MURATA.etc.:Photosynthesisof RicePlant(工),自作紀23(3),
1955;(Ⅱ),24(2),1955;(Ⅲ),24(4),1956;(Ⅳ),25(3),1957 幽 山本健吾:水稲の成熟現象に関する研究I一皿,農及園 29〔9−11),1954
附表一1 水稲晩期栽培品種選定試験成績 その1 (昭和30年度,奈良県試)
(註)定植期8月2日,坪当75株4本植苗代播種量 坪当1.5合,折衷苗代
(註〕定柿期7月26日,坪当75株5本植
勤如池澤料云ふ㌫雷雲竪琴洋並白元遠
b 多 棟 区