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著者 桑原 尚史, 西迫 成一郎, 森上 幸夫

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(1)

公正感が適切さの基準および問題解決空間に及ぼす 効果 : 行動規範の決定過程に関する研究(2)

その他のタイトル The effects of self‑consciousness,

self‑monitoring, empathy, locus of control and justice on the criterion of behavior and the space of problem solving : A study about

determination process of criterion of behavior (2)

著者 桑原 尚史, 西迫 成一郎, 森上 幸夫

雑誌名 情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要

巻 16

ページ 1‑25

発行年 2002‑02‑22

URL http://hdl.handle.net/10112/6799

(2)

自己意識セルフモニタリング,共感性,.統制感,公正感が 適切さの基準および問題解決空間に及ぼす効果

I)

一行動規範の決定過程に関する研究( 2 ) ‑ 桑原尚史 西迫成一郎 森上幸夫

要 旨

本研究においては,自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,統制感そして公正感と いった特性と適切さの基準およぴ問題解決空間との関係を検討するとともに,公正感の低下が自 己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,統制感といった特性とどのように関係して,適 切さの基準および問題解決空間に影響を及ぼすのかが検討された.その結果, 1)公的自己意識,

感情的暖かさ,感情的冷淡さ,統制感および公正感といった特性が適切さの基準に強く影響を及 ぼすこと, 2) 社会的不安および感情的被影響性が問題の認識を強めること, 3) 統制感が低い 個人が不公正な事態を認知すると,組織的承認性および生活秩序性に関する基準が低下すること,

4) 統制感の高い個人が不公正な事態を認知すると,性格領域およぴ対人領域において問題をよ り強く認識する傾向にあることがみいだされた.

The effects of selfconsciousness, selfmonitoring, empathy, locus  of control and justice 

on the criterion of behavior and the space of problem solving 

‑ A study about determination process of criterion of behavior (2)  ‑ Takashi KUWABARA*, Seiichiro NISHISAKO**, Yukio MORIKAMI*** 

Abstract 

In a preceding paper, we studied the interrelations between  personal characteristics  (anxiety, locus of control, selfesteem) and the recognition of problems to solve. The first  purpose of this paper is to examine the interrelations between personal characteristics (self 

* Faculty oflnformatics, Kansai University  **  Faculty of Letters, Souai University 

***  Faculty of Human Science, Kansai International Women's University 

1)

本研究の一部は,関西大学学術研究助成基金(協同研究)の助成を受けた.

(3)

consciousness, self-monitoring, empathy, justice) and the recognition of problems to solve.

The second purpose of this paper is to examine the interrelations between personal characteristics (self-consciousness, self-monitoring, empathy, justice, locus of controD and the criterion of behavior. The third purpose of this paper is to examine the effect of lowering of justice on the recognition of problems to solve and the criterion of behavior. Investigation and experiment were carried out by using 200 undergraduate students. The data show that 1) public self-consciousness, emotional warmness, emotional coldness, locus of control and justice regulate the level of the criterion of behavior, 2) social anxiety and emotional influencability influence the recognition of problems to solve, 3) the lowering of justice lowers the criterion of internal control person, and 4) the lowering of justice increases the recognition of problems of internal control person.

(4)

人は,行動を通して何らかの事柄を達成しようとしている.それは,自己の状態および自己を 取り巻く環境を自己にとって望ましい方向に変化させるために行われる.このような視点から人 の行動を捉えれば,人の行動は,すべて,問題解決行動とみなすことができる.すると,人の行 動を説明するには,人がいかなる問題を認識するのか,そしてそれをいかに解決しようとするか が重要な論点となる.

この点に関して,森上・西迫・桑原

(1998)

は,個人が解決すべきと考えている問題群を 問 題解決空間 と呼ぴ,問題解決空間が,

1)

自己の性格特性や行動傾向に対する問題の認識であ る性格領域

2)

対人的相互作用場面における自己の行動に対する問題の認識を示す対人領域,

3)

自己の知的能力あるいは知的活動に対する問題の認識である知的領域,

4)

日常の生活に対 する問題の認識である生活領域という

4

つの領域より構成されることを示している.

さて,それではこのような問題を人はいかなる時に認識するのであろうか.

DuvalWicklund  (1972)

および

Wicklund(1975)

の提唱した客体的自覚理論

(objectiveselfawareness theory), 

またその精緻化を試みた

Carver(1979)

および

CaverScheiner (1981)

の制御理論

(control theory)

は,人はそれぞれ適切さの基準

(standardsof correctness)

を有しており,自己の行動 に対する評価はこの適切さの基準に照合されて決定されるというモデルを提出しているこれら のモデルに従えば,問題の認識は,行動が適切さの基準に照合され,その照合された行動がこの 基準に達していないと判断されたときになされると考えることができる.すると,個人がいかな る問題を認識するかは,その個人がいかなる適切さの基準を有しているかによって強く規定され るということになる.

この適切さの基準について,西迫•森上・桑原 (1999) は,因子分析を行い,適切さの基準が 次のような

6

因子より構成されることを示している.それは,

1)

共同社会の中で他者に対して 最低限果たすべき責任あるいは遵守すべき行為から構成される対人的道徳性という因子,

2)

個 人的行動に対する基準より構成される個人的規律性という因子,

3)

集団を維持するために,ま た個人が集団に適応するために遵守すべき行為より構成されている組織的道徳性, 4) 個人が集 団において承認されかつ賞賛を獲得するのに必要な行為より構成される組織的承認性, 5) 社会 的関係において遵守すべき行為より構成される社会関係的道徳性,

6)

生活に秩序をもたらす基 準より構成される生活的秩序性という因子である.

桑原・森上・西迫

(2000)

は,この適切さの基準と問題解決空間との関係を分析し,両者が強

い関係にあることをみいだしている.また,不安,統制感,および自尊感情が問題の認識を高め

ること,それに対して,統制感は適切さの基準は高めるが,適切さの基準と不安,自尊感情との

間には顕著な関係がないことをみいだしている.この結果は,個人がいかなる問題を認識するか

は,その個人がいかなる適切さの基準を有しているかによって強く規定されることを示すと同時

に,適切さの基準が高い程問題が認識される確率が高<,そしてその際不安が高いほど,また自

尊感情を高いほど,また自己統制感が低いほど,問題を強く認識する傾向にあることを示すもの

である.すると,問題の認識過程を明らかにするためには,その主たる規定要因である適切さの

(5)

基準がいかに決定されるかが重要な問題となる.そこで,この適切さの基準を規定する要因を考 えてみれば,自己意識

(selfconsciousness)

特性,セルフモニタリング

(selfmonitoring)

傾向,

共感性

(empathy)

,統制感

(locusof control)

そして公正

(justice)

感といった特性をあげる ことができる.

自己意識特性とは,自己に対して注意が向きやすいか否か,また自己に注意を向けた場合,そ れが自己のいかなる側面に注意を向けやすいのかといった特性である.

Fenigstein,Scheier, 

Buss (1975)

は,自己意識特性には,自己の内的な側面に対して注意が向きやすい私的自己意識 特性と,他者に自己がどのように捉えられているのかという公的な側面に注意が向きやすい公的 自己意識特性があるとしている.この自己意識が高い個人は,自己の行動および特性に注意が向 きやすい為,高い適切さの基準を有していると考えられる.そして,この私的自己意識特性が強 いか公的自己意識が強いかによって,有している適切さの基準が質的に異なることは十分に予測 されるところである.

セルフモニタリング傾向とは,

Snyder(1974)

が提唱した概念であり,状況や他者の行動を手 がかりとして自己の行動が適切かどうかを判断し,それに応じて自己の行動を適切な方向に変化 させてゆく能力を指す.このセルフモニタリング傾向が強い個人は,自己の行動を正確に観察す ることができるが故に,高い適切さの基準を有していると予測される.

共感性とは,他者が表出する言語的行動や非言語的行動を手がかりとして,他者の心理過程を 正確に判断し,それを共有する能力である.適切さの基準の多くは,他者との関係性,集団内に おける行動に関わるものから構成されている.すると,他者の心理過程について鋭敏に反応する 共感性の高い個人は,対人的行動に関して高い適切さの基準を有していると推測される.

統制感とは,自己の能力や努力,そして自分の行動によって環境や自己が得る結果を統制でき ると捉えるか,それとも統制できないと捉えるかという認知的特性であり,

Rotter (1966)

は , この統制感が強い個人を内的統制

(internalcontrol)

型,それに対して自己を取り巻く環境や自 己が得る結果が他者や運などの外的要因によって決定されていると帰属しやすい個人を外的統制

(external control)

型と呼んでいる.この内的統制型,すなわち統制感の高い個人が,高い適切 さの基準を有していることはすでに報告されている(桑原・森上・西迫,

2000).

公正感とは,自己を取り巻く環境を公正と捉えているか,それとも不公正と捉えているかとい う認知的要因である.公正感の高い個人は,正しい行いをすれば良い結果が起こるだろうという 信念をもっているが故に,高い適切さの基準を有していると予測される.

このように,自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,統制感そして公正感といった 個人的特性は個人が有する適切さの基準に強い影響を及ぼすと予測される.そこで,本研究にお いては,これらの自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,統制感そして公正感といっ た特性と適切さの基準との関係を検討することを第

1

の目的とする.

しかし,これらの特性は適切さの基準ばかりではなく,問題の認識にも直接影響を及ぼすこと

も予測される.たとえば,自己意識特性に関しては,自己の行動に対して注意を向ける傾向があ

(6)

るが故に,セルフモニタリング傾向に関しては,自己の行動の適切性を正確に判断しうるが故に,

共感性に関しては,他者の心理過程を正確に判断しうるが故に,統制感に関しては,自分の行動 によって環境や自己が得る結果を統制しうると思うが故に,公正感に関しては,正しい行いをす れば良い結果が起こるだろうという信念をもっているが故に,問題を認識する確率が高いと推測 される.そこで,本研究においては,これらの自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,

統制感そして公正感といった特性と問題解決空間との関係を検討することを第

2

の目的とする.

さて,本研究はまずこの

2

点を検討するが,その際注意を払っておかなけれればならないこと がある.それは,自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,統制感といった特性は,比 較的安定した特性とみなすことができるが,公正感を安定的な特性と扱ってよいのだろうかとい う点である.確かに,公正感を,

Lerner(1980)

がいうように,良い人には良いことが,悪い人 には悪いことが起こるという公平世界仮説

(justworld hypotheis)

としてみなせば,それは信念 として安定的な特性とみなすこともできるだろう.ところが,公正感を個々の社会事象に対する 正義に関する認知的判断の結果,得られる実感と捉えれば,それはきわめて変動的な要因である と見なす必要がある.そこで,本研究においては,不公正な事態を呈示し,公正感を実験的に操 作することによって,不公正な事態の認知が自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,

統制感といった特性と共に,適切さの基準および問題の認識に及ぽす効果を検討することを第 3 の目的とする.

方 法

被験者 男子

100

名,女子

100

名の計

200

名の大学生を被験者として用いた.そのうち,男子

50

名,女子

50

名を実験群に割り当て,残りを統制群に割り当てた.

要因の操作 公正感に関して実験的操作を行った.実験群の被験者にのみ,現代社会において 公正感が著しく損なわれている現実を記述した文章(付表 1) を呈示するとともに,操作をチェ

ックする項目(付表

2)

に回答を求めた.

材料

個人の自己意識特性,セルフモニタリング傾向,共感性,統制感そして公正感といった 特性を測定するために,自己意識尺度,セルフ・モニタリング尺度,情動的共感性尺度,

Locusof  Control

尺度,および公正感尺度を用いた.

自己意識尺度は,

Fenigstein,Scheier, & Buss (1975)

の自己意識尺度をもとに,岩淵・田渕.

中里・田中

(1981)

が作成したものを用いた(付表

3)

.この尺度は,私的自己意識特性を測定

する

11

項目,公的自己意識特性を測定する

5

項目,社会的不安を測定する

6

項目の計

22

項目より

構成される.セルフ・モニタリング尺度は,

Snyder(197 4)

によるセルフ・モニタリング尺度を

もとに,岩淵・田中・中里

(1982)

が作成したものを用いた(付表

4)

.この尺度は

25

項目から

構成される情動的共感性尺度は,加藤・高木

(1980)

MehrabianEpstein  (1972)

の情動

的共感性尺度をもとに作成したものを用いた(付表

5)

.この尺度は,感情的暖かさを測定する

(7)

10

項目,感情的冷淡さを測定する

10

項目,そして感情的被影響性を測定する

5

項目の計25 項目より 構成される.

Locusof Control 

(LOC) 尺度は,鎌原・樋口•清水 (1982) によって作成された ものを用いた(付表

6)

.この尺度は1

8

項目から構成される.公正感尺度は,

RubinPeplau 

(1973)

による

Justworld scale

を,・斎藤

(1988)

が邦訳したものを用いた(付表

7)

.この尺度 は1

5

項目より構成される.

そして,これらの特性を測定する尺度と共に,行動の適切さの基準を測定する項目と各個人が 有する問題を測定する項目を用意した.

行動の適切さの基準を測定する質問項目には,西迫•森上・桑原 (1999) が行った適切さの基 準に関する因子分析において,彼らが抽出した

6

因子に負荷した

50

項目を質問項目として用いた

(付表

8)

.これは,対人的道徳性を測定する

16

項目,個人的規律性を測定する

11

項目,組織的 道徳性を測定する

8

項目,組織的承認性を測定する

7

項目,社会関係的道徳性を測定する

5

項目,

生活的秩序性を測定する

3

項目より構成される.

各個人が有する問題群を測定する項目には,森上・西迫・桑原

(1999)

がおこなった問題解決 空間に関する因子分析において,彼らが抽出した

4

因子に負荷した

40

項目を質問項目として用い た(付表

9)

.これは,性格領域問題を有する程度を測定する

12

項目,対人的領域問題を有する 程度を測定する

13

項目,知的領域問題を有する程度を測定する項目

8

項目,日常生活領域問題を 有する程度を測定する項目 7項目より構成される.

手続 適切さの基準と問題解決空間を測定する項目と,各尺度項目について評定を求めた.そ の際,適切さの基準と問題解決空間を測定する項目に対しては

7

段階で評定することを求めた.

また,自己意識尺度およぴセルフモニタリング尺度に対しては

5

段階で,情動的共感性尺度に関 しては

7

段階で,統制感尺度に対しては

4

段階で,そして公正感尺度に関しては

6

段階で評定す ることを求めた.なお,実験群の被験者には,この評定の前に公正感を低下させる操作を行った.

結果および考察

各被験者ごとに各尺度およびその下位尺度の

1

項目あたりの平均評定値,そして適切さの基準 およぴ問題解決空間を構成する各因子の

1

項目あたりの平均評定値を算出した.自己意識尺度,

セルフモニタリング尺度,情動的共感性尺度,統制感尺度および公正感尺度の

1

項目あたりの平 均評定値は

Table 1

に示すとおりである.また,適切さの基準を構成する各因子の

1

項目あた りの平均評定値は

Table 2

に示すとおりである.そして,問題解決空間を構成する各因子の

1

項目あたりの平均評定値は

Table 3

に示すとおりである.以下,これらの値を用いて,

1)

各 特性と適切さの基準との関係性,

2)

各特性と問題解決空間との関係性,

3)

適切さの基準と問 題解決空間との関係性,そして

4)

実験要因としての公正感が適切さの基準に及ぼす効果および

5)

実験要因としての公正感が問題解決空間に及ぼす効果を分析してゆく.

(8)

各特性と適切さの基準との関係性

まず,ここでは,自己意識,セルフモニタリング,情動的共感性,自己統制感,公正感といっ た特性と,行動の適切さの基準を構成する対人的道徳性,個人的規律性,組織的道徳性,組織的 承認性,社会関係的道徳性および生活秩序性との関係性についてみてみる.

1)

自己意識特性と適切さの基準との関係性 まず,私的自己意識と行動の適切さの基準を構 成する各因子との間において相関分析を行ったところ,

Table4

に示すように,対人的道徳性,

個人的規律性,組織的道徳性,社会関係的道徳性との間には有意な相関関係は認められなかった.

しかし,組織的承認性との間に正の相関関係が,また生活的秩序性との間に負の相関関係が認め られた.次に,公的自己意識と行動の適切さの基準を構成する各因子との間において相関分析を 行ったところ,

Table4

に示すように,個人的規律性,社会関係的道徳性,生活的秩序性との間 には有意な相関関係は認められなかったが,対人的道徳性,組織的道徳性,組織的承認性との間 に正の相関関係が認められた.次に,社会的不安と行動の適切さの基準を構成する各因子間にお いて相関分析を行ったところ,

Table 4

に示すように,組織的道徳性との間にのみ正の相関関係 が認められた.この結果は,私的自己意識特性が高い個人は,組織,集団において他者から承認 を得なければならないと考え,逆に,私的自己意識特性が低い個人は規律正しい生活をしなけれ ばならないと考える傾向にあること,また,公的自己意識特性が強い個人は,組織・集団におけ る調和を大切にし,他者と友好的な関係を築き,他の成員から承認を得る必要があると考える傾 向があること,そして,社会的不安特性の高い個人は,組織における調和を重視する傾向がある

ことを示している.

2)

セルフモニタリング傾向と適切さの基準との関係性 セルフモニタリング傾向と適切さの 基準を構成する各因子との間において相関分析を行ったところ,

Table 4

に示すように,対人的 道徳性,個人的規律性,組織的道徳性,組織的承認性,社会関係的道徳性との間においては有意 な相関関係は認められず,生活的秩序性との間においてのみ負の相関関係が認められた.この結 果は,セルフモニタリング傾向の低い個人ほど生活に規律を求めることを示している.

3)

共感性と適切さの基準との関係性 まず,感情的暖かさと適切さの基準を構成する各因子

との間において関係について相関分析を行ったところ,

Table4

に示すように,生活的秩序性を

除いて,すなわち,対人的道徳性,個人的規律性,組織的道徳性,組織的承認性,社会関係的道

徳性との間においてすべて正の相関関係が認めれた.次に,感情的冷淡さと適切さの基準を構成

する各因子との間において相関分析を行ったところ,

Table4

に示すように,個人的規律性と組

織的道徳性との間には有意な相関関係は認められなかったが,対人的道徳性,組織的承認性,社

会関係的道徳性および生活的秩序性との間において負の相関関係が認められた.そして,感情的

被影響性と適切さの基準を構成する各因子との間において相関分析を行ったところ,

Table 4

示すように,個人的規律性,社会関係的道徳性および生活的秩序性との間には有意な相関関係は

認められなかったが,対人的道徳性,組織的道徳性,組織的承認性との間において正の相関関係

(9)

が認められた.この結果は,感情的暖かさを強く有する個人は,行動の適切さの基準を構成する すべての基準を強く有していること,感情的冷淡さを強く有している個人は,対人的道徳や社会 的道徳を軽視し,組織において承認を求めようとせず,自己の生活に秩序を求めない傾向にある こと,感情的被影響性を強く有している個人は,集団および社会において他者との関係性を重視 していることを示している.

4)

統制感と適切さの基準との関係性 統制感と行動の適切さの基準を構成する各因子との間 において相関分析を行ったところ,

Table4

に示すように,組織的道徳性と生活的秩序性との間 には有意な相関関係は認められなかったが,対人的道徳性,個人的規律性,組織的承認性,社会 関係的道徳性との間において正の相関関係が認められた.このことは,自己に対して統制感を強 く有している個人は,対人的ルールを遵守し,自己の向上を目指し,他者からの承認を得ようと し,伝統的な道徳性を尊重する傾向にあることを示している.

5) 

公正感と適切さの基準との関係性 公正感と適切さの基準を構成する各因子との間にお いて相関分析を行ったところ,

Table

4に示すように,対人的道徳性,個人的規律性,組織的道 徳性,組織的承認性,社会関係的道徳性および生活秩序性,すべての因子との間において正の相 関関係が認められた.このことは,公正感を強く有している個人は,行動の適切さの基準を構成 するすべての基準を強く有していることを示している.

各特性と問題解決空間との関係性

次に,ここでは,自己意識,セルフモニタリング,情動的共感性,自己統制感,公正感といっ た特性が,問題解決空間を構成する性格領城問題因子,対人領域問題因子,知的領域問題因子,

生活領域問題因子とどのように関係しているのかをみてみる.

1) 

自己意識特性と問題解決空間との関係性 まず,私的自己意識と問題解決空間を構成す る性格領域問題因子,対人領域問題因子,知的領域問題因子,生活領域問題因子との間において 相関分析を行ったところ,

Table 5

に示すように,いずれの因子とも有意な相関関係は認められ なかった.次に,公的自己意識と問題解決空間を構成する各因子との間において相関分析を行っ たところ,

Table5

に示すように,性格領域問題因子とは有意な相関関係は認められなかったが,

対人領域問題因子,知的領域問題因子,生活領域問題因子との間において正の相関関係が認めら れた.そして,社会的不安と問題解決空間を構成する各因子との間において相関分析を行ったと ころ,

Table 5

に示すように,生活領域問題因子以外のすべての因子,すなわち,性格領域問題 因子,対人領域問題因子,知的領域問題因子との間においてすべて正の相関関係が認められた.

この結果は,私的自己意識特性は問題認識とは関係がなく,公的自己意識特性が強い個人および 社会的不安特性が強い個人は問題をより強く認識する傾向があることを示している.

2)

セルフモニタリング傾向と問題解決空間との関係性 セルフモニタリング傾向と問題解決

空間を構成する性格領域問題因子,対人領域問題因子,知的領域問題因子,生活領域問題因子と

(10)

の間において相関分析を行ったところ,

Table 5

に示すように,生活領域問題因子との間におい てのみ正の相関関係が認められた.この結果は,セルフモニタリング傾向が高い個人は生活領域 において問題を強く認識する傾向にあることを示している.

3)

共感性と問題解決空間との関係性 まず,感情的暖かさと問題解決空間を構成する性格領 域問題因子,対人領域問題因子,知的領域問題因子,生活領域問題因子との間において分析を行 ったところ,

Table 5

に示すように,感情的暖かさは問題解決空間を構成するどの因子とも有意 な相関関係は認められなかった.次に,感情的冷淡さと問題解決空間を構成する性格領域問題因 子,対人領域問題因子,知的領域問題因子,生活領域問題因子との間において分析を行ったとこ ろ ,

Table 5

に示すように,感情的冷淡さも問題解決空間を構成するどの因子とも有意な相関関 係は認められなかった.そして,感情的被影響性と問題解決空間を構成する各因子との間におい て相関分析を行ったところ,

Table 5

に示すように,問題解決空間を構成するすべての因子との 間に正の相関関係が認められた.この結果は,感情的暖かさや感情的冷淡さは問題の認識とは関 係ないが,感情的被影響性が強い個人ほど,問題を強く認識する傾向にあることを示している.

4)

統制感と問題解決空間との関係性 統制感と問題解決空間を構成する性格領域問題因子,

対人領域問題因子,知的領域問題因子,生活領域問題因子との間において分析を行ったところ,

Table  5

に示すように,生活領域問題因子との間においてのみ負の相関関係が認められた.この 結果は,自己に対して統制感を強く有している個人は,生活領域の問題を強く認識しない傾向に あることを示している.

5)

公正感と問題解決空間との関係性 公正感と問題解決空間を構成する各因子との間におい て分析を行ったところ,

Table 5

に示すように,対人領域問題因子と知的領域問題因子との間に おいては有意な相関関係は認められなかったが,性格領域問題因子およぴ生活領域問題因子との 間においてそれぞれ有意な負の相関関係が認められた.この結果は,公正感を強く有している個 人ほど,自己の性格およぴ生活に関して問題を認識しない傾向にあることを示している.

行動の適切さの基準と問題解決空間との関係性

ここでは,問題解決空間を構成する性格領域問題因子,対人領域問題因子,知的領域問題因子,

生活領域問題因子と行動の適切さの基準を構成する対人的道徳性因子,個人的規律性因子,組織

的道徳性因子,組織的承認性因子,社会関係的道徳性因子および生活秩序性因子との間において

それぞれ相関分析を行った.その結果,

Table 6

に示すように,性格領域問題因子および生活領

域問題因子については,適切さの基準を構成するいずれの因子とも有意な相関関係は認められな

かった. しかし,対人領域問題因子については組織的道徳性との間においてのみ有意な正の相関

関係が認められたまた,知的領域問題因子に関しては,行動の適切さの基準を構成する対人的

道徳性因子,個人的規律性因子,組織的道徳性因子,組織的承認性因子との間おいてそれぞれ正

の相関関係が認められた.この結果は,知的領域問題に関しては,適切さの基準と強い関係があ

(11)

ることを示しているが,他の領域の問題の認識に関しては適切さの基準とほとんど関係がないこ とを示すものである.

4  不公正の認知と各特性が行動の適切さの基準に及ぼす効果

ここでは,実験要因として操作した不公正の認知と各特性が行動の適切さの基準に及ぼす効果 を検討するために,各特性の分散を考慮しつつ,各特性についてそれぞれ被験者を高群と低群と に分け,実験条件と統制条件における各群の被験者の適切さの基準を構成する各因子の

1

項目あ たりの平均評定値を算出した.その結果は,

Table 7

に示すとおりである.そして,実験要因と して操作した公正感を第

1

要因とし,各特性を第

2

要因とする

2

要因の分散分析を行った.いず れも被験者間要因とした.

1)

不公正の認知と私的意識特性が適切さの基準に及ぼす効果 不公正の認知と私的自己意識 特性が適切さの基準に及ぼす効果を検討するために,適切さの基準の各因子について不公正の認 知を第

1

要因とし,私的自己意識を第

2

要因とする

2

要因の分散分析を行った.その結果,不公 正の認知の主効果は,対人的道徳性

(Fo. 1611  = I. 71),個人的規律性 (F(J.167)=I.29),組織的道

徳性

(Fo. 16;1  =O. 20),組織的承認性 (Fo. 1a;1  =O. 01),社会関係的道徳性 (Fo. 167)  =O. 02),生

活秩序性

(Fo. 16n =O. 24),いずれの因子においても認められなかった.次に,私的自己意識特

性の主効果については,組織的承認性

(F(I.  /67)  =4. 64,  p<05,)においてのみ認められ,対人的道

徳性

(F{J.16n=I. 75),個人的規律性 (F0.16;/ =I. 13),組織的道徳性 (Fo. 16;)  =O. 67),社会関

係的道徳性

(Fo. 16;1  =O. I 3),生活秩序性 (F{I,/67)  =3. 73.)においては認められなかった.そして,

不公正の認知と私的自己意識特性との交互作用については,対人的道徳性

(Fo. 16;1  =O. 03),個

人的規律性

(F(I.167)=0. 09),組織的道徳性 (Fo. 16;1  =O. 35),組織的承認性 (Fo. 16;)  =3. 05), 

社会関係的道徳性

(Fo. 161)  =O. 02),生活秩序性 (Fo. 1a;J  =O. 02),いずれの因子においても認め

られなかった.この結果は,私的自己意識特性の強い個人は,組織的承認性に関する基準を高く 有していることを示している.

2)

不公正の認知と公的意識特性が適切さの基準に及ぼす効果 不公正の認知と公的自己意識

特性が適切さの基準に及ぼす効果を検討するために,適切さの基準の各因子について不公正の認

知を第

1

要因とし,公的自己意識を第

2

要因とする

2

要因の分散分析を行った.その結果,不公

正の認知の主効果は,対人的道徳性

(Fo. 1191  = I. 24),個人的規律性 (Fo.1191 =I. 29),組織的道

徳性

(Fo. 119)  =O. 28),組織的承認性 (Fo.1191 =O. 49),社会関係的道徳性 (Fo. 1191  =O. OJ),生

活秩序性

(Fo. 1191  =O. 00),いずれの因子においても認められなかった.次に,公的自己意識特

性の主効果については,個人的規律性

(Fo.1191 =O. 22),社会関係的道徳性 (Fo. 1191 =O. 0 I)およ

ぴ生活秩序性

(Fo.1191 =O. 00.)

においては認められなかったが,対人的道徳性

(Fo.1191=7.14, p<Ol), 

組織的道徳性

(Fr1.119J  =11. 06,  p<OOJ)および組織的承認性 (Fo. 119)  =I 7.  95,  p<.001)において

認められた.そして,不公正の認知と公的自己意識特性との交互作用については,対人的道徳性

(12)

(F o.119! =O. OJ),個人的規律性 (Fo. 1191  =O. 05),組織的道徳性 (Fo.119! =O. OJ),組織的承認

(Fo.  1191  =O. 40),社会関係的道徳性 (Fo. 119!  =O. 02.),生活秩序性 (Fo. 1191  =O. 00),いずれ

の因子においても認められなかった.この結果は,公的自己意識特性の強い個人は,対人的道徳 性,組織的道徳性およぴ組織的承認性に関する基準を高く有していることを示している.

3)

不公正の認知と社会的不安が適切さの基準に及ぼす効果 不公正の認知と社会的不安が適 切さの基準に及ぼす効果を検討するために,適切さの基準の各因子について不公正の認知を第

1

要因とし,社会的不安を第

2

要因とする

2

要因の分散分析を行った.その結果,不公正の認知の 主効果は,対人的道徳性

(F(l.156)1.22

),個人的規律性

(Fo. 156) =I. 00),組織的道徳性 (F(I.156)

=I.32),組織的承認性 (F(l.156)=0.02)

,社会関係的道徳性

(Fo. 1s6! =O. 12),生活秩序性 (F(I.I56)

=I. 19),いずれの因子においても認められなかった.次に,社会的不安の主効果については,組

織的道徳性

(Fr1.1s6!  =JO. 13,  p<Ol)においてのみ認められ,対人的道徳性 (Fo.  156!  =O. 64),個

人的規律性

(Fo.156)=0.56),組織的承認性 (F(I.156)=0.21),社会関係的道徳性 (F0.156! =O. 99), 

生活秩序性

(F(J.156)0.II)においては認められなかった.そして,不公正の認知と社会的不安

との交互作用については,対人的道徳性

(F(l.I邸)=0.04),個人的規律性 (Fo. 156!  =O. 42),組織

的道徳性

(F(1,156)I.  37),組織的承認性 (Fo.156! =O. 00),社会関係的道徳性 (Fo.1s6! =O. 87), 

生活秩序性

(Fo. 1s6!  =O. JO),いずれの因子においても認められなかった.この結果は,社会的

不安特性の強い個人は,組織的道徳性に関する基準を高く有していることを示している.

4)

不公正の認知とセルフモニタリングが適切さの基準に及ぽす効果 不公正の認知とセルフ モニタリングが適切さの基準に及ぼす効果を検討するために,適切さの基準の各因子について不 公正の認知を第

1

要因とし,セルフモニタリングを第

2

要因とする

2

要因の分散分析を行った.

その結果,不公正の認知の主効果は,個人的規律性

(F(1.103)=3.82)

,組織的道徳性

(Fo.1031 =2. 06), 

組織的承認性

(Fo. 103)  =2. 26,)およぴ社会関係的道徳性 (F(1,103)2.70)においては認められなか

ったが,対人的道徳性

(F0.1031 =9. 54,  p<Ol)および生活秩序性 (F0.1031 =4. 21,  p<05,)におい

て認められた.次に,セルフモニタリングの主効果については,生活秩序性

(Fo.1031=6.43, p<.05) 

おいてのみに認められ,対人的道徳性

(Fo.  1031  =O. 57),個人的規律性 (Fo. 1031  =3. 39),組織的

道徳性

(Fo.  1031  =I. 21),組織的承認性 (Fo. 103!  =2. 31),社会関係的道徳性 (Fo. 1031  =O. 02.)に

おいては認められなかった.そして,不公正の認知とセルフモニタリングとの交互作用について は,対人的道徳性

(F0.1031 =I. 36),個人的規律性 (Fo.  1031 =O. 24)

,組織的道徳性

(Fo. 1031 =O. 71), 

組織的承認性

(Fo. 103!  =O. 12),社会関係的道徳性 (Fo. 1031  =O. 22),生活秩序性 (F0.1031 =I. 15), 

いずれの因子においても認められなかった.この結果は,不公正の認知が対人的道徳性および生 活秩序性の基準を上昇させる効果があること,そしてセルフモニタリング傾向の強い個人は,生 活秩序性に関する基準を高く有していることを示している.

5)

不公正の認知と感情的暖かさが適切さの基準に及ぼす効果 不公正の認知と感情的暖かさ

が適切さの基準に及ぼす効果を検討するために,適切さの基準の各因子について不公正の認知を

1

要因とし,感情的暖かさを第

2

要因とする

2

要因の分散分析を行った.その結果,不公正の

Table 4 自己意識,セルフモニタリング,情動的共感性,統制感,公正感と適切さの基準との相関関係 対人的道徳性個人的規律性組織的道徳性組織的承認性社会関係的道徳性生活的秩序性全 体 自己意識尺度 セルフ・モニタリング尺度 情動的共感性尺度 統制感尺度 公正感尺度私的自己意識公的自己意識社会的不安セルフ・モニタリング感情的暖かさ感情的冷淡さ感情的被影響性統制感公正感. 067 . 166 * . 069 ‑. 075 . 403 *** ‑. 269 *** . 194 ** . 218 **  . 30
Table 8 公正感およびその他の特性が問題解決空間に及ぼす効果 ‑‑‑‑‑ー特性因子条件性格領域実験条件統制条件対人領域実験条件統制条件知的領域実験条件統制条件生活領域実験条件統制条件全体実験条件統制条件 私的自己意識 公的自己意識 社会的不安 セルフモニタリング 感情的暖かさ 感情的冷淡さ 感情的被影響性

参照

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