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中 国 の 地 域 経 済 を ど う説 明 す るか?1
HowtoUnderstandRegionalEconomyinChina
岡 本 信 広2
NobuhiroOKAMOTO
は じめ に
中 国 の 地 域 経 済 と聞 い て どの よ う な イ メー ジが わ くで あ ろ うか.一 般 に は,所 得 水 準 が 急 上 昇 し高 級 車 や 高 層 マ ン シ ョ ンが あ ふ れ る沿 海 部 の 大 都 市,水 牛 と麦 わ ら帽 子 をか ぶ っ た農 民 が の ん び り農 業 を して い る 内 陸部 の 農 村,高 級 ブ テ ィ ッ ク が進 出 す る上 海,出 稼 ぎ農 民 工 に よ る広 東 の パ ソ コ ン工 場,大 地 震 に よ っ て 「お か ら工 事 」 とい う言 葉 で有 名 に な っ た 四 川 省,イ ン フ ラ建 設 や 資 源 開 発 ラ ッ シ ュ で景 気 が 回復 し て い る新 彊 ウ イ グル や 内 モ ン ゴル な どが イ メ ー ジ され るか も
しれ な い.
中国 の地 域 経 済 を紹 介 す る もの と して,各 省 の経 済 的 特 徴 を紹 介 す る小 島[2002]が も っ と も 一 般 的 な もの と位 置づ け ら れ る.ま た,加 藤[2003]は 中 国 の 地 域 経 済 を研 究 す る入 門書 と して 最 適 で あ る.そ れ 以外 は 研 究 者 の 専 門 的研 究 成 果 が 本 ・論 文 と し て発 表 され て きた.
それ で は,専 門 的研 究 成 果 は 中国 の地 域 経 済 に つ いて,ど の よ うな 貢 献 を果 た して きた の で あ ろ うか.
経 済 学 の 発 展 と と も に,実 証 研 究 の対 象 と して 中 国 の 地 域 経 済 が選 ば れ,多 くの 分 析 が な さ れ て き た.胡,郡,李[1993]は,伝 統 的 な経 済 地 理 学 の 分 野 か ら中 国 の 地 域 経 済 の 状 況 を報 告 し て い る.収 穫 逓 増 の モ デ ル を組 み込 ん だ新 し い経 済 地 理 学(あ る い は 空 間 経 済 学)は,LuandTao
[2009]やChen[2009]な ど に見 られ る よ うに,地 域 経 済 を 「集 積 」 と い うキ ー ワー ドで 解 明 し て き た.内 生 的経 済 成 長 理 論 の 分 野 か らは 「収 束 」(あ るい は収 敏)と い う地 域 格 差 の分 析 が 進 展
して きて い る(例 えば 牧[2001],SakamotoandIslam[2008]な ど).貿 易 論 の 視 点 か ら は, 世 界 経 済 の グ ロー バ ル 化,自 由 貿 易 化 に 伴 っ て,国 境 が どれ だ け 地域 間 の取 引 を妨 げ て い る の か,
「国 境 効 果 」 につ いて 分 析 が行 わ れ,中 国 の地 域 間 交 易 に も 「境 界 効 果 」 と して 応 用 さ れ て き て い る(Poncet[2005]な ど).
1今 川 瑛一 先 生 の代 表 作 『東 南 ア ジ ア現代 史』 『続 ・東 南 ア ジア 現代 史 』(と もに亜 紀 書房)は,東 南 ア ジ アの 動 向100年 とい う歴 史 を細 部 に もれ の ない 包括 的 現 代 史 を示 して い る.先 生 は,ア ジ アの政 治経 済 の 動 向 を丁 寧 に追 い な が ら,そ れ を洞察 し全体 像 を示 す とい う研 究 ス タ イル で あ っ た.本 稿 は先 生 の 力 量 に は及 ば な い もの の,今 川先 生 の 師 恩 に感 謝 を示 しつ つ,先 生 の研 究 ス タ イ ル を意 識 し,現 時 点 に おけ る中 国 の地 域 経 済 を包括 的 に 説 明 す る試 み で あ る.
2筆 者 は1991年 か ら1993年 まで 大学 院 博 士 前期 課 程 に お い て今 川先 生 の 研 究 ご指 導 を仰 い だ.そ の 後先 生 の 出 身 であ るア ジ ア経 済研 究 所(現 ・独 立 行 政 法 人 日本 貿 易振 興 機 構 ア ジ ア経 済研 究 所)に1993年 か ら13年 間在 籍 し,2006年 よ り大 東文 化 大 学 国 際 関係 学 部 准教 授 と して着 任 して い る.
・8季 刊 創 価 経 済 論 集Vol .XXXIX,No.1・2・3・4 一 方 で,定 性 的 な地 域 経 済 の分 析 も平 行 して 進 ん で き て い る.地 域 戦 略 とい う観 点 か らは,中 国 国 内 の代 表 的 な もの と して 陳[2000]が あ る.英 文 で はGolley[2007]が 簡 易 的 な数 量 分 析 を 活 用 して,中 国 の 地 域 経 済 を明 らか に しよ う と した.日 本 国 内 に お い て も地 域 経 済 の 理 解 は 進 ん で い る.広 大 な 中 国 の 一 部 の 地 域 に 着 目 した小 川[2000],岡 本[2008]な どが そ の例 と して見 ら れ る で あ ろ う3.
この よ うに 近 年 中 国 の 地 域 経 済 に 関 す る先 行 研 究 は急 速 に 蓄 積 さ れ て お り,多 くの研 究 者 間 に お い て,地 域 経 済 の理 解 は大 幅 に 進 ん だ と い っ て よ いだ ろ う.地 域経 済の理解 が進む ことによっ て今 後 の 中 国 経 済 の課 題 や 展 望 が 以 前 よ りも見 通 せ る よ うに な っ た.
しか し,問 題 が 二 つ あ る.一 つ は 細 分 化 され て きた研 究 テ ー マ は,「 木 を見 て 森 を見 ず 」と い う こ とに 陥 りや す い.論 文 執 筆 上 極 力Specificな テー マ に 絞 り込 ん で深 く研 究 せ ざ る を得 な い とい う事 情 は あ る が,今 後 の研 究 方 向 を考 え る上 で,こ の あ た りで 「森 」 は どの よ うな外 観 に な っ て い る の か,包 括 的 に 検 討 す る必 要 が あ ろ う.そ れ に よって森 の細 部,詰 めの甘 い分 野が は っき り す る の で,さ らな る研 究 の 発 展 が期 待 で き るの で あ る.
も う一 つ は,内 陸 部 の砂 漠 化 や 出稼 ぎ に よ る留 守 児童 の 問 題 都 市 農 村 の格 差,沿 海 部 の工 場 に つ とめ る農 民 工 の 問 題 な ど ミ クロ の 問 題 に 目移 り しや す い ため,中 国 で仕 事 をす る ビ ジ ネ ス マ ンや 中 国 を理 解 し よ う と して い る学 生 な ど に と って,中 国 の 地 域 経 済 の 全 体 像 をつ か め な い と い う欠 点 が あ る.あ る程 度 の 細部 の 議 論 の 矛 盾 は さて お い て も,地 域 経 済 全 体 を理 解 す る フ レー ム ワ ー ク を提 示 す る こ と は,中 国 研 究 者 の使 命 で あ る とい っ て よ い だ ろ う.
以 上 二 点 の 問 題 点 を解 決 す る ため,本 稿 は,現 時 点 で地 域 経 済 の研 究 成 果 に も とづ き,統 一 さ れ た分 か りや す い フ レー ム ワー ク で 中 国 の 地 域 経 済 を説 明 して み た い.
言 い 換 え る と,本 稿 の 目的 は,中 国 の 地域 経 済 を包 括 的 に どの よ うに理 解 す るか,包 括 的 に理 解 す る フ レ ー ム ワー ク を提 示 す る こ とで あ る.そ の フ レー ム ワ ー ク は 「「政 府 」,「市 場 」,「空 間 コ
ス ト」 の 三 つ 要 因が 中 国 の 地 域 経 済 を形 成 して い る 」 と い う もの で あ る.現 在 中 国 で 起 きて い る 様 々 な 出 来 事 を,政 府 が どの よ うに 地 域 経 済 に 関 与 して い る の か,地 域 に お い て 市 場 メ カ ニ ズ ム が どの よ うに発 揮 さ れ,国 有 企 業 の 改 革 が どれ だ け進 ん で い るか,地 域 間 の 空 間 コス トが どの よ う に変 化 して い るの か,こ の3つ の角 度 か ら考 察 す る こ とに よっ て,地 域 経 済 の理 解 が や さ し く 進 む こ と を示 した い と思 う..
中 国 経 済 を理 解 す る フ レー ム ワー ク を各 要 因 ご とに説 明 して い くた め,本 稿 は以 下 の構 成 を と る.
まず 第 一 節 で は,政 府 に よ る地 域 経 済 の 形 成 過 程 を過 去 と現 在 の 地 域 開発 戦 略 か らふ り返 る.
計 画 経 済期 に展 開 され た 第一 次 五 ヶ年 計 画 と三 線 建 設 を,ヌ ル クセ の 均 整 成 長 論 か ら説 明 し,改 革 開 放 以 降 の 地 域 開 発 政 策 をハ ー シ ュ マ ンの 不 均 整 成 長 論 か ら理 解 す る.現 在 実 施 さ れ て い る西 部 大 開 発 や 東 北 振 興 は,均 整 不 均 整 とい う従 来 の 開 発 戦 略 か ら枠 組 み で は な く,市 場 機 能 発 揮 型 の 開 発 戦 略 で あ る こ と を主 張 す る.そ して全 体 を通 して,「政 府 」が 現 在 の 中 国 の 地 域 経 済 を形 作 っ
3そ の他,中 国 の地 域 経 済 に関 す る先 行 研 究 の 整理 は,岡 本[2003]に 詳 しい.
March2010岡 本信 広:中 国の地域 経 済 を ど う説明 す るか?・g て き た こ と を確 認 す る.
第 二 節 で は,市 場 メ カ ニ ズム に よ る地 域 経 済格 差 の縮 小 拡 大 過 程 を見 て い く.最 初 に,地 域格 差 の動 向 を ウ ィ リア ム ソ ンの 逆U字 仮 説 か ら考 察 す るが,仮 説 通 りの 変 化 は 見 ら れ ず,中 国全 体 の 市 場 経 済 化 の進 展 が1990年 代 か ら本 格 化 した こ と を考 え る と,現 在 は格 差 が 全 体 に 拡 大 して い る過 程 で あ る こ と を述 べ る.次 に地 域 格 差 の 要 因 に つ い て の議 論 をふ り返 り,各 要 因が市場 メカ ニ ズ ム と強 く関 わ って い る こ と を確 認 す る.そ して経済成長論 におけ る格 差の収 束仮 説 を検討 し, 市 場 メ カ ニ ズ ムが 進 展 しな が ら格 差 が 長 期 的 に 縮 小 して い くこ と を主 張 す る.
地 域 と地 域 の 関 係 を考 え る上 で 空 間 とい う概 念 が 重 要 で あ る.空 間 を規定 す る要 因 と して輸送 コス トを代 表 とす る空 間 コ ス トとい う概 念 を導 入 す る.こ こでの空間 コス トは,移 動 の しに くさ や しや す さ を コス トして考 え,厳 密 な意 味 で は な く広 くと ら え て い る.第 三 節で は,集 積 と労働 移 動 と い うテ ー マ か ら産 業 と人 の 空 間 移 動 を取 り上 げ,最 後 に 「中心 一 周 辺 」 の概 念 か ら経 済 的 恩 恵 の 波 及 につ い て 考 え る.ま ず,産 業 の 立 地 が 沿 海 部 に集 中 して い る こ と を紹 介 し,企 業 取 引 に お け る財 の輸 送 コ ス ト,市 場 へ の ア ク セサ ビ リテ ィの とい う空 間 コス トが 集 積 を形 成 して い る こ と を確 認 す る.労 働 移 動 に お い て も戸 籍 とい う空 間 コ ス トが移 動 を決 定 して い る こ とを見 た 後 , 出 稼 ぎが農 村 の 所 得 上 昇 を もた ら して い る こ とを 主 張 す る.最 後 に,沿 海 か ら内陸へ経済的恩 恵 が 波 及 して い る の か(浸 透 効 果),そ れ と も内 陸 か ら沿 海 へ 経 済 資 源 が 吸 い 取 られ て い って い る の か(分 極 効 果),を 産 業 連 関 モ デ ル を用 い て 分 析 す る.
以 上 の 議 論 を経 て,政 府 と市 場 と輸 送 コス トの3つ 視 点 か ら中 国 の 地 域 経 済 を と らえ る こ とに よ って,一 層 の 理 解 が進 む こ と を確 認 し,今 後 議 論 を 詰 め るべ き分 野 や 課 題 に つ い て整 理 した い.
1.地 域 の 経 済政 策 一政 府 に よ る地 域 経 済 の 形成
1.1計 画経 済 期 の 地 域 開 発 戦 略 1.1.1貧 困 の 罠 と均 整 成 長 論
ヌル クセ は 途 上 国 の 開 発 を考 え る に あ た っ て,「 貧 困 の悪 循 環 」と い う低 開 発 均 衡 か ら抜 け 出 す た め に 「均 整 成 長 論 」 を提 案 した.貧 困 の悪 循 環 とは 以 下 の よ うに な る.
図1貧 困 の悪循 環
︽需要側︾ ︽共給倶︾
(出 所)絵 所[1991]p.4,図1‑2よ り一 部 修 正.
20季 刊 創 価 経 済 論 集Vo1.XXXIX,No.1・2・3・4
低 生 産 力 で あ る途 上 地 域 で は,当 然 所 得 が 少 な くな る.所 得 が 少 な い ため,購 買 力 が な く,貯 蓄 も出 来 ず,結 果 投 資 誘 因 が 働 か な い.そ の た め,資 本 形 成 が さ れ ず,低 所 得 の ま ま とな る.ヌ ル ク セ は と くに,需 要 面 で の 「購 買 能 力 の 低 さ 」 に 着 目 し,貧 困 の悪 循 環 を 断 ち切 る 方 法 は市 場 の 総 体 的 大 き さ を拡 大 し,投 資 誘 因 を全 面 的 に 増 大 す る こ と で あ る と主 張 した.
具 体 的 に は,一 度 に 多数 の 補 完 的 産 業 に 同 時 に 投 資 を行 っ て,市 場 の 規 模 を拡 大 させ る.そ し て,多 数 の 産 業 が その 地 域 に 設 立 され た結 果,産 業 間取 引 の 拡 大,市 場 の 拡 大 が お こ る こ と を期 待 した の で あ る.こ の 戦 略 は ビ ッ グプ ッ シ ュ理 論 と も関係 が あ る.経 済 が 発 展 す る に は,最 低 限 の あ る程 度 の ま と ま っ た 投 資 が 必要 だ とい う考 え方 で あ る.
こ の 均 整 成 長 論 と近 い 開 発 戦 略 が 中 国 で も採 用 さ れ た.そ の例 と して 第一 次 五 ヵ年 計 画 と三 線 建 設 を挙 げ て,そ の 政 策 を評 価 した い.
1.1.2第 一 次 五 ヵ年 計 画 と三 線 建 設 第 一 次 五 ヵ年 計 画(1953年 〜1957年)
1949年 に新 中国 が社 会 主i義国 と して 成 立 した.当 時 の 工 業 化 モ デ ル は 旧 ソ=連で あ り,旧 ソ連 か ら援 助 を も らい な が ら経 済 建 設 が 始 ま っ た.旧 ソ連 の 重 工 業 化 モ デ ル の成 功 事 例,国 防 上 の 理 由 に よ る兵 器 産 業 の 育 成 と い う二 っ の 理 由 か ら重 化 学 工 業 化 が 進 め られ た.こ の 計 画 で は 沿 海 地 域 の 工 業 の 集 中 とい う不 均 衡 な状 態 を是 正 し,国 防 の 観 点 か ら2/3の 大 中 型建 設 プ ロ ジ ェ ク トが 内 陸 地 に配 置 され る こ と と な っ た李[1997].ま た 旧 ソ連 か らの 援 助 プ ロ ジ ェ ク ト156項 目の う ち48 項 目が 遼 寧省 の 鞍 山鋼 鉄 につ ぎ込 まれ る こ とに な っ た[小 島,1997,p.17].ま た 東 北 地 域 に は58 項 目 の プ ロ ジ ェ ク トが 実 施 さ れ た.
こ れ らは 大 型 プ ロ ジ ェ ク トで あ っ た.大 型 プ ロ ジ ェ ク トの 特 徴 は,主 要 工 場 を建 設 す るの み な らず,主 要 工 場 へ の部 品等 を生 産 す る工 場,従 業 員 の 社 宅,従 業 貝 の生 活 関 連 設備(ス ー パ ー, 理 髪 店 等 々),道 路 建 設,鉄 道 建 設,上 下 水 道 設備,電 気 設 備 な ど さ ま ざ ま な関 連 部 門 と一 緒 に な っ
て ワ ン セ ッ トで建 設 さ れ る と い うこ とで あ る.し た が っ て一 つ の 経 済社 会 単 位 を何 もな い とこ ろ に 建 設 す る とい う こ と と同義 で あ る.
三 線 建 設(1964年 〜10年 代)
三 線建 設 とは,国 防 上 の 理 由 か ら全 国 を沿 海(一 線),西 部(と くに 四 川,貴 州,雲 南,陳 西, 甘 粛,寧 夏,青 海)4を 三 線,そ の 間 を 二 線 と して,三 線 地 域 に 軍 事 ・重 工 業 を移 転 す る政 策 で あ る.立 地 の 観 点 は,国 防 で あ り,「 山 間 に,分 散 して,地 下 に 潜 る」 方 針 で あ った(罪 山,分 散, 進 洞).産 業 で は,兵 器 産 業 とそ れ を支 え る重 工 業 で あ っ た.具 体 的 に は,石 炭,電 力 な どの エ ネ ル ギ ー 産 業,鉄 鋼 ・非 鉄 金 属 な どの素 材 産 業,素 材 を加 工 した特 殊 鋼,工 業 用 設 備 な どの 機 械 産 業,化 学 産 業 で あ る.兵 器 産 業 で は,核 兵 器,航 空機,軍 用 車 両,通 常 兵 器,船 舶,ミ サ イ ル や ロケ ッ ト,そ れ に装 備 す る電 子 製 品 が 含 まれ る[丸 川,1993].つ ま り資 源 か ら加 工 して 各 種 軍 事 製 品 を生 産 す る一 大 産 業体 系 を,こ れ まで何 もな か っ た 内 陸部 に 立 地 させ る戦 略 で あ る.し か も
4湖 北 等 も 入 る[丸 川,1993].
March2010岡 本 信 広:中 国 の 地 域 経 済 を ど う 説 明 す る か?
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立 地 が 山 間 部 で あ る ため,平 野 で の立 地 よ り も コス トが か か っ た(代 表 プ ロ ジ ェ ク ト:塞 枝 花 鋼 鉄).
1.1.3評 価
第 一 次 五 ヵ年 計 画 に せ よ,三 線 建 設 にせ よ,ど ち ら も重 工 業 を 中心 とす る一 大 産 業 体 系 を 立 地 す る とい う面 で は 同 じ で あ る.し か し内 陸部 の もっ て い た軽 工 業 な ど と産 業 連 関 の な い「飛 び地 」 経 済 で あ っ た とい う見 方 が 多 い(小 島[1997],久 保[1993]).そ の 一 方 で 内 陸 部 の工 業 化 の基 礎
に な っ た とい う見 方 もあ る[呉,2002] .ま た 国 防 上 の観 点 か ら実 施 され た三 線 建 設 を地 域 開発 の 観 点 の み か らみ るの は 問題 で あ る とす る.丸 川[2002]は,現 在 も 多 くの三 線 企 業 が 苦 況 に 置 か れ て い る とこ ろか ら,過 度 の 楽 観 的 な 三 線 建 設 「成 功 論 」 を牽 制 す る.三 線建 設 を中心 とす る内 陸 開発 戦 略 は成 功 した か ど うか,現 時 点 で は 国 防 上 の立 地 の 観 点 か ら費 用 対 効 果 で は あ ま りよ く
な い とい う試 算 結 果 も出 て い る[丸 川,1993].
ど ち らの 見 方 を と る にせ よ,政 府 の 地 域 開 発 戦 略 が 現 在 の 中国 の西 部,東 北 地 域 の 地 域 経 済 構 造 を作 り上 げ た とい え,そ の特 徴 は全 産 業 が そ ろ って い るこ と と大 型 国 有 企 業 主 体 で あ る と い う
こ と で あ る.
1.2改 革 開 放 期 の 地 域 開 発 戦 略
1978年 以 降,中 国 は 改 革 開 放 政 策 を実 行 す る.計 画 経 済 時 代 に は,自 力 更 生 路 線(外 国 との 貿 易 に依 存 しな い)を 採 用 し,国 家 の 計 画 で経 済 の 資 源 配分 を行 う計 画 経 済 シス テ ム に て 経 済 を運 営 して い た.こ の 時 代,政 府 は重 点 的 に 内 陸部 に 資 源 を配分 す る こ と に よ っ て ,沿 海部 とバ ラ ン ス の とれ た地 域 発 展 を 目指 した の で あ る.
1980年 代 の改 革 開 放 路 線 は,① 市 場 メ カ ニ ズ ム を導 入 し(改 革),② 一 部 地 域 を外 国 に 開放 す る (開放)す る とい う二 つ の 転 換 を はか る もの で あ っ た.と くに 「開放 」政 策 の 展 開 が 地 域 ご とに 違 っ た ため,中 国 の 地 域 経 済 は発 展 が 異 な る こ とに な る.
1.2。1不 均 整 成 長 論 と段 階 的 発 展 論
ヌル クセ が均 整 成 長論 を打 ち 出 した の に対 し て,ハ ー シュ マ ン は不 均 整 成 長 論 を提 案 す る[ハ ー シ ュ マ ン,1961].ハ ー シ ュ マ ンは,均 整 成 長 論 は コス トが か か る こ と,多 くの産業 を経営す る企 業 家 が い な い こ とか ら不 可 能 だ と断 じた.
不 均 整 成 長 論 は 一 部 の 地 域 や 産 業 を先 に発 展 させ る とい う考 え 方 で あ る.そ の発展 が周 りの地 域 や 産 業 の 成 長 を促 す と考 え た.彼 は,経 済 成 長 は,一 部 の 主 要 産 業 が 発 展 し,そ の後,生 産 に 必 要 な投 入 財 を生 産 す る補 完 産 業 の 投 資 を誘 発 す る後 方 連 関効 果 ,あ るいは他 の産 業が 主要 産業 に 投 入 財 を供 給 させ よ う とす る前 方 連 関効 果 が 働 き,他 の産業 へ発展 が伝 播す る過程 だ ととらえ た の で あ る.地 域 に お い て も同 じこ とが 言 え,一 部 の 地 域 を成 長 の 極(GrowthPole)と して 発 展 す れ ば,そ の 発 展 が他 地 域 へ 伝 播 す る.し たが っ て,彼 は本 来 地 域 開発 は 不 均 整 な も の と して
と ら え て い る.
また 中国 で も同 じ議 論 が 改 革 開放 以 降 展 開 され る.そ れが 「悌度 理論」(は しご理論)で あ る.
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季 刊 創 価 経 済 論 集 Vol.XXXIX,No.1.2.3.4 図2は しご 理 論 の イ メ ー ジ技術水準
伝 統 技 中 間 技 先 進 技 術 地 帯 術 地 帯 術 地 帯
(西部)(中 部)(東 部)
(出所)加 藤[2003]p.31,図1‑3.
中 国 は 広 大 で あ る ため,地 理 的,歴 史 的 要 因 の た め に経 済 発 展 に は 大 き な地 域 不 均 衡 が 存 在 す る こ と を議 論 の 前 提 とす る.そ こ で相 対 的 に技 術 水 準 の 高 い 沿 海 地 域,中 間 的 な 水 準 の 技 術 を もつ 中部 地 域,伝 統 技 術 しか な い西 部 地 域 に分 け,そ れ ぞ れ が 技 術 水 準 の 階 段 状 に な っ て い る と考 え る.こ の よ うな 状 況 で は,沿 海 地域 が 先 に 国 外 の 先 進 技 術 を導 入 し,そ れ を階 段 の 段 差 に した が っ て 中 間 技 術 地 帯,伝 統 技 術 地 帯 に 技 術 移 転 を進 め るの が,中 国 の 経 済 発 展 に 適 合 した 発 展 戦 略 で あ る と して い る[加 藤,2003].
この 理 論 を支 え る精 神 的 依 拠 と して,郡 小 平 の 「先 富 論 」5(先に 豊 か に な る もの(地 域)が あ っ て も よ い.)と す る方 針 が あ った と もい え る で あ ろ う.社 会 主 義 に は個 人 に せ よ地 域 にせ よ平 等 の 考 え が 強 いが,都 小 平 は社 会 主 義 の な か で も先 に 豊 か な個 人 や 地 域 が い て もか ま わ な い と した.
こ れ に よ り,豊 か に な るた め の 思 想 的 くび きが放 た れ た とい っ て よい.
1.2.2改 革 開 放 以 降 の 地 域 開 発
1978年 に改 革 ・開 放 政 策 に転 じた 中 国 は,1979年7月 に,広 東 と福 建 に特 殊 政 策 を与 え る と同 時 に1980年 に 四 つ の経 済 特 区(深"ll,珠 海,厘 門,ス ワ トウ)を 設 置 した.1983年 に は海 南 島 を 特 別 行 政 区 に 指 定(87年 に 省 に 昇 格)し,全 島 を開放 した.ま た1984年 に は 沿 海14都 市 を開 放 都 市 に 指 定 す る と と もに,1985年 に は珠 江 デ ル タ,閾 江 デ ル タ,長 江 デ ル タ地 帯 を対 外 開放 地 域 に 指 定 し,外 国 資 本 に 開 放 した[岡 本,2003].
第 六 次 五 ヵ年 計 画期(1981‑1985)に は,計 画 自体 に 「地 区 経 済発 展 計 画 」 とい う独 立 し た章 が 入 れ られ た.沿 海 地 域 で は 技 術 や 管 理 の 水 準 の 向 上,エ ネ ル ギー 効 率 の 向上,港 や 鉄 道 の 充 実 が うた わ れ て い る.そ して 内 陸 地 域 は エ ネ ル ギ ー,交 通,原 材 料 工 業 を発 展 させ,沿 海 地 域 の発 展 51980年 に,毛 沢 東 の平 均 主 義 を払拭 す るた め に,豊 か に な る条 件 を もっ た一部 の者 や 地 方 が他 に先 ん じて豊
か に な るこ とを郡 小 平 が容 認 した.
March2010岡 本 信広:中 国 の地域 経 済 を どう説 明す るか?23
を支 え る こ と も記 され て い る.こ れ 以 来,三 線建 設 に 代 表 され る よ うな 内 陸 地 域 編 重 の政 策 で は な く,東 部 沿 海 地 域 に あ る も と も との 技 術 的 な優 位 性,地 理 的 な優 位 性 を活 用 して,と もに発 展 して い く方 向 に転 換 した.実 際 に は,広 東,福 建 を 中心 に,軽 工 業 の外 資 が 流 入 しは じめ,そ れ が 加 工 貿 易 を行 う こ とで発 展 して い くよ う に な った.
第七 次 五 ヵ年 計 画 期(1986‑1990)に は い る と,郷 鎮 企 業 が 勃 興 し,紡 績,食 品加 工 等 の 消 費 財 産 業 に参 入 し,そ して 労 働 力 コ ス トの安 さか ら労 働 集 約 型産 業 が 沿 海 地域 を 中 心 に 発 展 して い っ た。 政 府 の 重 点 も東 部 開発 に 移 っ て い る.1987年 の 共 産 党 第13回 党 大 会 よ り 「沿 海 地 域 経 済 発 展 戦 略 」 が 打 ち 出 され た.沿 海 地 域 を国 際 市 場 と リン ケー ジ させ,積 極 的 に 外 資 を導 入 す る こ と に よ り,中 国 の余 剰 労 働 力 を利 用 し,そ し て大 い に 輸 出 を振 興 させ た の で あ る(両 頭 在 外).結 果, 労 働 集 約 型 で あ る軽 工 業 の 輸 出産 業 が 成 長 した.こ の 時 期 は,経 済 特 区,沿 海 地域 開 放 都 市,沿 海 地 域 経 済 開放 区 の 三 つ を 中心 と して,対 外 開放 を はか り,交 通,通 信 の イ ン フ ラの 整備,既 存 産 業 の 技 術 改 造 が行 わ れ た.な お,計 画 期 最 終 年 の1990年 に 上 海 市 の 開放 及 び 浦 東 新 区 の 開放 が 国 務 院 に 正 式 に 批 准 さ れ て い る.七 五 計 画 に は,「 東 部 沿 海 地 域 の発 展 を加 速 し,エ ネ ル ギ ー,原 材 料 建 設 の 重 点 は 中部 に 置 き,西 部 開 発 の 準 備 を す る.」 とい う段 階 的 発 展 論 が で た([大 西, 2001],[委 鬼,2000,p.12]).
こ の期 間 の地 域 政 策 の特 徴 は,① 経 済 開 発 区 を沿 海 地 域 に 設 置 し,外 国 資 本 を導 入 す る,② 余 剰 労 働 力 を活 用 し た沿 海 部 の 郷 鎮 企 業 の 発 展 を奨 励 す る,③ イ ン フ ラ 等 の 設 置 に お い て融 資 面 で 優 遇 す る,④ 財 政 請 負 制 に よ り沿 海 部 の 財 政 の 自由 度 を増 す,⑤ 外 貨 の 留 保 権 を大 幅 に認 め,沿 海 地 域 の 自 由裁 量 を増 大 させ る,と い う こ とが あ げ られ る.そ の 他 間接 的 で あ るが,こ の 間 の 価 格 の双 軌 制 が もた ら した ゆ が み も見 逃 せ な い.中 西 部 地 域 は エ ネ ル ギ ー や 原 材 料 が 豊 富 で あ るが, こ れ が 計 画 に よ っ て 低 価 格 に 抑 え られ,そ れ を 沿 海 地 域 の製 造 業 に安 価 に 供 給 さ れ,沿 海 地 域 は そ れ を利 用 す るこ とに よ っ て,大 幅 な 利 潤 を得 る こ とが で きた[王 ・李,2000,p.17].
90年 代 の 地 域 政 策 の 展 開
第 八 次 五 ヵ年 計 画 期(1991‑1995)の 最 初 は,1990年 の 天 安 門事 件 よ り経 済 全 体 が 収 縮 した.し か し1992年 の郡 小 平 の 南 巡 講 話,第13回 党 大 会 で の 「社 会 主 義 市 場 経 済論 」 の登 場 以 降,中 国 経 済 は本 格 的 に市 場 経 済 化 の 道 を進 む こ とに な る.
そ の 中 で 入 五 計 画 期 に は,沿 海 地 域 の 既 存 産 業 の 技 術 水 準 向 上 が うた わ れ,エ ネ ル ギー や 原 料 投 入 が 大 き く,輸 送 費 用 の大 き い製 品 に つ い て は エ ネ ル ギー や 資 源 が 豊 富 な 内 陸地 域 に 移 転 して い く方 針 が 打 ち 出 され て い る.一 方 内 陸 地 域 で は,山 西 を 中 心 に 内 モ ン ゴル,寧 夏,河 南 の石 炭 基 地 を 強化 し,そ して そ の付 近 での 発 電 所 建 設 が 進 ん だ.軍 転 民 の 流 れ で,三 線 建 設 時 代 の 軍事 工 場 の 民 需 へ の 転 換 が 示 唆 され て い る.80年 代 後 半 よ り,各 省 ・自治 区 ・直 轄 市 の 封 鎖 経 済 が 指 摘 され は じめ,入 五 計 画 の 中 で も地 域 間 の横 断 的 結 合,全 国統 一 市 場 の 形 成,有 機 的 な経 済 リン
ケ ー ジ の形 成 が うた わ れ た.
第 九 次 五 ヵ年 計 画 期(1996‑2000)で は,五 ヵ年 計 画 と と もに2010年 まで の 長 期 的 な 計 画 が発 表 され た.こ こで の特 徴 は,封 鎖 経 済 に対 す る打 破 が 目標 とな っ た こ とで あ る.行 政 区 を越 えた七
i4季 刊 創 価 経 済 論 集Vol.XXXIX,No.1・2・3・4
大 経 済 圏 が 指 定 さ れ,各 地 域 の 比 較 優 位 を活 か しな が ら,地 域 経 済 の協 調 発 展 が う た わ れ て い る.
そ して 各 地 域 の 重 点 産 業 が 指 定 され て お り,西 部 対 象 地 域 で は,農 業 と資 源 産 業 及 び 交 通 通 信 の イ ン フ ラ整 備 が 中心 で あ る.ま た今 後15年 の 長 期 に わ た っ て,財 政 移 転 支 給 制 度 を実 施 し,徐 々 に 中 西 部 地 域 の 発 展 を支 援 す る方 針 とな って い る.
1.2.3評 価
1980年 代 の 地 域 開発 戦 略 は,① 沿 海 地 域 の 外 国 資本 へ の 開放,② 沿 海 地 域 経 済発 展 戦 略,に よ り外 国 資 本 を導 入 し,国 内 の安 い 労 働 力 を用 い て,輸 出 して外 貨 を獲 得 す る とい う い い経 済 成 長 の循 環 が 始 ま っ た.し か しこ の 好循 環 は あ くま で 沿 海 地 域 で の み 機 能 した の で あ る.政 府 の 五 力 年 計 画 で も内 陸 部 は 沿 海 部 の発 展 を支 え る原 材 料 供 給 基 地 と して 位 置 づ け ら れ た.1990年 後 半 ま
で 政 府 の方 針 は,沿 海 地 域 を中 心 と した 開 発 で あ っ た の で あ る.
この 戦 略 の 正 当性 を示 す もの と して,先 富 論 や 段 階 的 発 展 論(あ るい は ハ ー シ ュマ ン の 言 う不 均 整 成 長 論)が 存 在 す る.
社 会 主 義 は 平 等 とい う思 想 的 な足 かせ を外 した 中 国 政 府 は,沿 海 地 域 の 経 済発 展 を もた ら した の で あ る.
1.321世 紀 の 地 域 開発 戦 略
90年 代 後 半 か ら,格 差 拡 大 を懸 念 して 中 国政 府 は 地 域 均 衡 の 方 向性 を探 る よ う に な った.1999 年 に江 沢 民 総 書 記(当 時)に よ り 「西部 大 開 発 」 が 提 唱 され,2002年 の 胡 錦 濤 体 制 の確 立 以 降,
2003年 に は 「東 北 振 興 」 が うた わ れ る よ う に な った.2006年 か ら始 ま っ た 第11次 五 ヵ 年 計 画 で は, 沿 海 地 域 に お い て も珠 江 デ ル タ,長 江 デ ル タ とい う南 偏 重 の 開 発 か ら,天 津 の 濱 海 新 区 開 発 へ 重 点 開 発 地域 が 北 上 す る こ とに な っ た.
本 節 で は,西 部 大 開 発 と東 北 振 興 を政 府 主 導 の 開 発 とい う観 点 か ら見 て い く.
1.3.1市 場 と政 府
経 済 学 の 教 科 書 に は,市 場 機 能 が働 か な い ケ ー ス(市 場 の 失 敗),例 えば 規 模 の 経 済,外 部 性, 公 共 財,不 完 全 情 報 な どの 時 に,政 府 が 経 済 に 介 入 す る妥 当性 を もつ と され る.一 方,政 府 も う ま く行 か な い ケ ー ス(政 府 の 失 敗)が あ り,例 えば 政 府 の 情 報 収 集 能 力,将 来 予 測 能 力,管 理 ・ 運 営 能 力 に は 限 界 が あ り,そ の 時 に は市 場 機 能 を活 用 す る方 が よ い とさ れ る.
中 国 は建 国 以 降,政 府 で 経 済 全 体 を管 理 す る計 画 経 済 制 度 を導 入 した.た しか に 労 働 者 の 所 得 の 平 等,地 域 の 平 等 を も た ら した が,技 術 革 新 とい う経 済 の 成 長 に は つ まつ い た の で あ る.こ れ が1978年 以 降 の 市 場 メ カニ ズ ム の 導 入 に つ な が っ た.
完全 な る市 場 が 存 在 す れ ば,地 域 格 差 は起 こ らな い が,規 模 の 経 済,外 部 性,不 完 全 情 報 に よ り沿 海 地 域 へ の 経 済 の 一 極 集 中 が 起 きた.こ こ か ら,格 差 縮 小 の た め の 政 府 介 入 の 余 地 が 発 生 し た の で あ る.
市 場 で は 資 源 配 分 が 傾 斜 的 に 地 域 に 配分 され て い る以 上,市 場 を補 完 す る た め に政 府 は 一 定 の 介 入 を行 う必 要 が あ る とい え る だ ろ う.
March2010岡 本信 広:中 国の 地域 経済 をど う説 明す るか?25
市 場 が 不 完 全 な と こ ろ に は政 府 が 介 入 し,市 場 が 完 全 な と こ ろ に は市 場 に まか せ る とい う 「市 場 友 好 的 ア プ ロ ー チ 」 か,コ ー デ ィ ネ ー シ ョン が う ま くいか な い と きに 民 間 秩 序 に よ る コー デ ィ ネ ー シ ョ ン の補 完 ・促 進 を図 る 「市 場 拡 張 的 ア プ ロー チ 」か,政 府 介 入 に もア プ ロー チ が違 う[大 野,2000].以 下,西 部 大 開 発 と東 北 振 興 を検 討 して み よ う.
1.3.2西 部 大 開 発 と東 北 振 興 西 部 大 開 発 の 展 開
1999年 に 西 部 大 開 発 が うた わ れ,2000年 の 一 年 間 は,国 務 院 西 部 開発 弁 公 室 に よ っ て政 策 の 研 究 が行 われ て きた6.そ の 間 に,共 産 党 に よ る 第 十 次 五 ヵ年 計 画7,十 大 プ ロ ジ ェ ク ト8,中 西部 地 区外 商 投 資 優 勢 目録9等 が 発 表 さ れ て い き,そ の 集 大 成 の 結 果,2000年12月27日 に 国 務 院 よ り《 西 部 大 開 発 の 若 干 の 政 策 ・措 置 に 関 す る通 達 》(以 下 通 達)が 発 表 さ れ た.通 達 の 中 で は,西 部 大 開 発 の 重 点 任 務 と して,① イ ン フ ラ建 設,② 生 態 環 境 保 護,③ 農 業 の 基礎 固め,④ 工 業 構 造 の 調 整,⑤ 観 光 業 の 発 展,⑥ 科 学 技 術 教 育 と文 化 衛 生 事 業 の発 展 が あ げ られ て い る.具 体 的 な政 策 と
して 以 下 の4点 に ま とめ られ る.
(1)資 金 投 入 の 増 加.中 央 財 政 の積 極 的 な西 部 へ の 投 入 と国 家 政 策 金 融 機 関,国 際 金 融 機 関,外 国 政 府 の借 款 等 を西 部 地 区の イ ン フ ラ設 備 投 資 に 導 入 す る.そ の 中 で も特 に水 利,交 通,エ ネ ル ギー に 力 を入 れ る.中 央 の 西 部 地 区 へ の財 政 トラ ン ス フ ァー の規 模 を拡 大 し,社 会 保 障,衛 生,教 育 等 に 資 金 分 配 に あ て る.一 方 で金 融 面 で も西 部 の 基 礎 産 業 に 対 して,鉄 道,道 路,電 力,石 油,天 然 ガ ス 等 に 融 資 支 援 を行 っ て い く.具 体 的 に は「三 つ の70%」(国 家 財 政 援 助,国 債 発 行 で得 た 資 金,外 国 政 府 ・国 際 組 織 に よ る借 款 の70%を 西 部 に配 分 す る.)政 策 で あ るio.
(2)投 資 環 境 の 改 善.投 資 環 境 を改 善 す る た め に,国 有 企 業 改 革 を進 め る と と もに,非 国 有 企 業 の 発 展 を積 極 的 に促 して い く.外 資 に も投 資領 域 を 開放 して い く11.一 方 で 中小 企 業 の信 用保 証 制 度,中 小 企 業 サ ポ ー トサ ー ビス 体 系 を整 備 して い く.ま た 国 家 の 産 業 目録 や 外 商 投 資 目録 の 産 業 で あ れ ば,税 収 面 で は,一 定 期 間 内15%の 企 業 所 得 税 を認 め る.省 政 府 が 認 め れ ば,企 業 所 得 税 の 減 免 を行 う こ とが で き る.交 通,電 力,水 利,郵 政,テ レ ビ放 送 な どの 企 業 に は 所 得 税 を二 年 免 除 し三 年 半額 とす る.耕 地 か ら林,草 地 に戻 した と こ ろ で の農 産 品 につ い て は10年
の 農 業 特 産 品 税 を免 除 す る.そ の 他 に も国 家 や 外 商 投 資 目録 の産 業 は優 遇 政 策 が 受 け られ る と
62000年12月18日 国務 院 西部 開 発弁 公 室 で の イ ン タ ビュー.
72000年9月 に提 案 され,2001年3月15日 に全 人代 で 可決 され る.内 容 は 通達 の要 約 で あ る.
8十 大 プ ロジ ェ ク トは,① 西 安 一 南 京鉄 道 の 西安 一 合 肥 区 間,② 重 慶 一 懐化 鉄 道,③ 西部 地 区の 道路 建 設,④ 西部 地 区 の 空港 建 設 ・拡 充 と航 路 整 備(西 安,成 都,昆 明,蘭 州,ウ ル ム チ),⑤ 重 慶 高 架 軽 軌 道 鉄 道1期 工 事,⑥ チ ャイ ダ ム盆 地 一 西寧 一 蘭州 天 然 ガ ス ・パ イプ ライ ン,⑦ 四 川紫 坪舗 と寧 夏 黄 河砂 岐 頭 水 利 セ ン ター,
⑧ 中西 部 の耕 地 を林 ・草 地 に戻 す事 業 と生 態 系整備,育 苗 事 業,⑨ 青 海 の カ リ肥 料,⑩ 西 部 地 区 の大 学 の イ ン フ ラ整 備.な お,こ れ 以外 に今 年 に な って か ら も国 家 プ ロ ジ ェ ク トが指 定 され て きて い る.
92000年6月 に,国 家発 展 計 画 委員 会,国 家 経 済貿 易 委員 会,対 外 経 済 合 作部 に よ って制 定,国 務 院が 批 准 し た.こ の 目録 に あ る産 業 で は,国 家 の優 遇 政 策 が受 け られ る こ とに な って い る.
102000年10月27日 国務 院発 展 研 究 中心 林 家彬 氏 へ の イ ン タ ビュー.
11WTO加 盟 を に らみ,保 険業 な どのサ ー ビス分 野 にお い て東 部 地 区 よ りも積 極 的に 開放 して い く(2000年12月 18日 国務 院西 部 開 発弁 公室 での イン タ ビュ ー.).
26季 刊 創 価 経 済 論 集Vo1.XXXIX,No .1・2・3・4 と もに,外 資,内 資 が 先 進 的 な設 備 を導 入 す るの に は 関税 を免 除 して も よ い こ とに な っ て い る.
(3)対 外 対 内開 放 の 政 策 この 中 で は,外 資 の投 資領 域 を拡 大 す る こ とが う た わ れ て い る.② と も関 連 す るが,農 業,水 利,交 通,エ ネ ル ギー,環 境 保 護,鉱 業,観 光 業 な どに お い て外 資 導 入 を奨 励 す る.そ の 他 に も,外 資 投 資 の 試 点 と して 直 轄 市 や 省 都 に お い て,外 国 銀 行 の 人 民 元 取 り扱 い を徐 々 に 認 め て い き,電 信,保 険,観 光,会 計 士 や 法 律 事 務 所,鉄 道 ・道 路 の運 輸 業 な どに も領 域 を拡 大 して い く.BOTの 方 式 で 外 資 を取 り込 み,そ の 他 に も 国有 企 業 改 革 と同 時 に 外 資 が 入 っ て くるの を認 め る.在 中 国合 資 企 業 が 西 部 に 投 資 す る場 合,外 資 比 率 が25%以 上 の 場 合,そ れ は外 資 企 業 と同 等 と認 め,外 資 企 業 へ の 優 遇 政 策 を享 受 で き る.国 境 貿 易 に 関 す る さ ま ざ ま な政 府 関 与(入 境 手 続 き等)を 減 ら して い く と と も に,多 くの 企 業 に 輸 出入 自主 権 を認 め て い く.ま た 東 部 地 区 の 企 業 が 西 部 に投 資 す る の も奨励 して い く.
(4)人 材 吸 収 と科 学 技 術 教 育 を発 展 させ る政 策.基 本 給 や 僻 地 へ の 特 別 手 当 を増 加 させ て,全 国 平 均 水 準 に 徐 々 に 引 き上 げ,優 秀 な 人 材 を確 保 して い く.戸 籍 制 度 を改 革 し,過 剰 に存 在 す る 農 民 の 流 動 や 西 部 地 域 で経 営 を行 う住 民 の 生 活 を保 障 させ て い く.東 部 地 域 と西 部 地 域 の科 学 技 術 面 で の 交 流 を増 加 させ て い く と同 時 に,軍 事 技 術 の 民 用 化,高 等教 育,基 礎研 究 を支 持 し て い く.教 育 に つ い て も貧 困 地 域 の義 務 教 育 を充実 させ て い く.
これ らの 政 策 は2001年1月1日 よ り実 施 され,適 用 期 間 は10年 を見 込 ん で い る.こ れ ら地 域 開 発 政 策 の対 象 地 域 は,西 部10省 及 び広 西 チ ワ ン族 自治 区 と内 モ ン ゴ ル 自治 区 で あ る.西 部 大 開 発 の 実 施 に あ た っ て は,ユ ー ラ シア ラ ン ドプ リッ ジ(新 彊 か ら蘭州 を経 由 し,連 雲 港 あ た りま で), 長 江 沿 い,西 南 の 海 に 通 ず る交 通 幹 線(南 寧,貴 陽,昆 明)の 中 心 都 市 を発 展 させ る.そ して 中 心 都 市 の発 展 か ら周 辺 地 域 開発 を引 っ 張 って い く と して い る.
こ こ で経 済 政 策 と して の 西 部 大 開 発 を整 理 して お き た い.西 部 大 開 発 の 重 点 は,① 財 政 資 金 や 国 際 機 関,外 資 な どに よ る イ ン フ ラ建 設 の 強 化,② 産 業 目録 を中 心 と した 外 資 ・内 資 へ の優 遇 政 策,③ 上 記 二 つ を側 面 支 援 す る ため の環 境 整 備 と言 え る.そ して 開 発 の 重 点 地 域 は 西 部10省 プ ラ
ス2で あ るが,基 本 的 に 三 つ の 幹 線 沿 い の 中 心 都 市 開 発 が 中 心 と な っ て く る で あ ろ う[岡 本, 2003].
東 北 振 興 の 展 開
東 北 振 興 で は,2002年 の 第 十 六 回党 大 会 に お い て 東 北 な どの 旧工 業 基 地 の改 革 と改 造 を急 ぐこ とが うた わ れ,東 北 振 興 政 策 の 研 究 が 開 始 さ れ た.そ の 後2003年10月 に 《 東 北 地 区 等 旧工 業 基 地 の 振 興 戦 略 に関 す る若 干 の 意 見 》 が 発 表 され た12.そ して 同年12月 に 国 務 院 東 北 振 興 弁 公 室 が 設 置 さ れ た.意 見 に よれ ば 主 要 な 内容 は 以 下 の 通 りと な る.
(1)国 有 企 業 の 改 革:国 民 経 済 に 重 要 な 業 種 以 外 の 国 有 企 業 は 市 場 で 淘 汰 させ て い く戦 略 的 調 整 を行 って い く.鉄 鋼,自 動 車,石 油 化 学 な どの 大 設 備 型 企 業 で も外 資 も含 む 投 資 主 体 の 多元 化 を行 う.競 争 力 が な くな った 企 業 は破 産 させ,国 有 資 産 の 再 編 を図 る.そ の 一 方 で 国有 企 業 が
12非 公 開 で あ る よ う だ が[大 西 靖,2004],地 方 政 府 で ネ ッ ト上 で 公 開 さ れ て い る と こ ろ が あ る.
March2010岡 本 信広:中 国 の地域 経 済 を どう説 明 す るか?27
担 って い た失 業,疾 病 等 の 保 険 シ ス テ ム を社 会 化 し,社 会 保 障 シ ス テ ム を構 築 して い く.2004 年 に は遼 寧 を社 会 保 障 改 革 の試 験 的 地 域 と し,吉 林,黒 竜 江 と広 げ て い く.ま た企 業 の社 会 的 職 能 を分 離 す る.国 有 企 業 の 改 革 と共 に 非 国 有 経 済 の発 展 を支 持 し て い く.
(2)工 業 構 造 の 高 度 化:積 極 的 に 技 術 改 造 を行 い,グ ル ー プ 化,専 門 化 の方 式 で再 編,分 業 な ど を発 展 させ,「 大 而 全,小 而 全 」 の 問 題 を解 決 す る.旧 油 田 の 探 査 能 力 を上 げ,新 た な石 炭 基 地,大 型 石 油化 学 工 場 の建 設 等 を推 進 す る.鉄 鋼 業 の 再 編 をは か り,NC旋 盤,変 電 発 電 設 備 な どの重 装 備 製 品 の 国 際 競 争 力 を高 め,船 舶 技 術 の水 準 の 向上,自 動 車 産 業 及 び部 品 産 業 の再 編 を行 う.ま た 技術 向上 の た め の 新 設備 の 購 入 に は 減 免 税 政 策 を実 行 して い く.
(3)資 源 型 都 市 経 済 の 転 換:資 源 が 枯 渇 して い るあ る い は枯 渇 しそ うな都 市 で は 次 の 産 業 を発 展 させ なけ れ ば な ら な い.環 境 保 護 を考 え な が ら,資 源 型都 市 で は,石 油,石 炭,森 林 資 源 な ど の加 工 を深 化 させ,ま た 次 代 の産 業 を発 展 させ る.鉱 山 が 閉 じた と こ ろ で は 中 央 政 府 が50%の 補 助 金 を 出 して,整 理 して い く.
(4)そ の 他 の 政 策:電 力 ネ ッ トワ ー クや 東 北 東 部 に 出 るた め の 鉄 道 建 設,ロ シア との 貿 易 に 必 要 な鉄 道 ・港 湾 設 備 等 イ ン フ ラ を建 設 して い く.よ り一 層 対 外 開放 を行 い,金 融,保 険,物 流, 観 光 等 の サ ー ビ ス分 野 に も外 資 を導 入 して い く.そ の他,産 官 学 の 推 進,人 材 の育 成 な ど.
経 済 政 策 と して東 北 振 興 を整 理 す れ ば,① 大 型 国有 企 業 の 改 革,② 重 化 学 工 業 偏 重 の 産 業 構 造 の 転 換,③ 資 源 依 存 して い る都 市 経 済 の再 生 とい う こ とが い え る.東 北 地 域 は 計 画 経 済 時 代,中 国 経 済 の 牽 引 役 で あ っ たが,環 境 の 変 化 に つ い て い け ず,経 済 は 衰 退 した.し か しな が ら工 業 化 の 基 礎 は も っ て お り,経 済 構 造 の 転 換,産 業 の再 編 が 急 務 とい え る.
1.3.3評 価
西 部 大 開 発 で は,① 交 通 イ ン フ ラ(道 路,空 港,鉄 道 な ど)の 改 善,② 投 資環 境(税 制,人 材 育 成,開 放 の優 遇 政 策 な ど)の 改 善 が柱 と言 え る.ど ち ら も空 間 的特 性 の 不 利 な 要 素 を排 除 し, 投 資 地 と して の 魅 力 を増 加 させ,生 産 要 素(労 働 と資 本)の 可 動 性 を高 め て,地 域 間 均 衡 を求 め て い る とい え る.
東 北 振 興 で は,な ん とい っ て も国 有 企 業 の 改 革 が 柱 で あ る.経 済 の 中 に お け る所 有 制 の 多元 化 (郷鎮 企 業,外 資 企 業)を は か り,競 争 原 理 を持 ち込 む.あ る い は 国 有 企 業 の 中 に,外 資 な どを 入 れ て 経 営 効 率 の 改 善 を 目指 して い る.こ れ らは,市 場 原 理 の 導 入 で あ る.
その 他 に も,各 地 の 産 業(西 部 の 資 源 加 工 型 産 業,東 北 の 重 化 学 工 業)の 比 較 優 位 を増 大 させ, 市 場 を利 用 させ る要 素 を含 ん で い る.し た が っ て こ れ らの 政 策 は,中 国全 体 の 市 場 経 済 化 の 流 れ の 中 で市 場 メ カ ニ ズ ム を機 能 させ て 格 差 を是 正 し よ う とす る 「政 府 の 市 場 機 能 発 揮 型 開 発 戦 略 」 で あ る と もい え る し,あ る い は,市 場 機 能 を活 用 させ て 投 資 を誘 導 す る 「市 場 誘 導 型 開 発 戦 略 」
と定 義 づ け る こ とが で きよ う[岡 本,2008].
以 上 の よ うに政 府 の 地 域 開発 政 策 が現 在 の 地 域 経 済 を作 り上 げ て い る こ とは 間違 い な い.た だ し地 域 経 済 形 成 へ の 貢 献 の仕 方 は変 わ って きて い る とい え るで あ ろ う.つ ま り政 府 が 直 接 開 発 す る の で は な く,市 場 機 能 を発 揮,利 用 させ る 間接 的 な開 発 戦 略 に 変 化 させ て きた の とい え るの で
z8 季刊 創 価 経 済 論 集
Vol.XXXIX,No.1.2.3.4あ る.
2.地 域 格 差 の動 向一 市 場 に よ る地域 経 済 の 形成
第 二 節 で は,市 場 メ カ ニ ズ ム に よ る地 域 経 済 格 差 の縮 小 拡 大 過 程 を見 て い く.最 初 に,市 場 メ カ ニ ズ ム の 働 きに よ っ て,地 域 格 差 の 動 向 は 逆U字 に な る とい う ウ イ リア ム ソ ン の仮 説 か ら考 察 し,格 差 の 要 因 が 市 場 メカ ニ ズ ム と強 く関 わ って い る こ とを確 認 す る.そ して 経 済成 長 論 に お け る格 差 の 収 束 仮 説 を検 討 し,市 場 メ カニ ズ ム が 進 展 しな が ら格 差 が 長 期 的 に縮 小 して い く こ と を 主 張 す る.
2.1地 域 格 差 の 動 向
2.1.1ウ ィ リア ム ソ ンの 逆U字 仮 脱
国 内 の 地 域 格 差 が 経 済 発 展 に 伴 っ て どの よ うな 変 化 が 起 こ るか,ウ ィ リア ム ソ ン は実 証 分 析 か ら以 下 の よ う な仮 説 を提 示 して い る[石 井,2002].そ れ に よれ ば,経 済 発 展 の初 期 段 階 で は,労 働 力 や 資本 が 低 所 得 地 域 よ りも高 所 得 の 地 域 に集 中 す る の で,地 域 間格 差 は拡 大 す る が,経 済 発 展 が 進 行 す れ ば,市 場 メ カ ニ ズ ム の 働 きや 政 策 等 に よ っ て地 域 間 格 差 は 縮 小 す る,と い う もの で
あ る.こ こ で格 差 を縮 小 させ る メ カ ニ ズ ム は 何 か と い うこ とが 重 要 で あ る.
経 済 発 展 して い る地 域 で は す でに 収 益 性 の 低 い事 業 しか 残 って い な い.あ る い は 都 市 化 の 外 部 不 経 済(渋 滞 等)に よ って 労 働 者 も 田舎 に移 動 した い と考 え るか も しれ な い.そ う な る と市 場 経 済 の働 きで,労 働 や 資 本 が 発 展 して い な い 地 域 に移 動 し,格 差 が 縮 小 す る可 能 性 が あ る.
一 方 で
,政 府 自体 も格 差 拡 大 は 見 逃 せ な い 問 題 に な る.と くに 広 大 な 面 積 を も ち 多数 の 少 数 民 族 を もつ 中 国 で は統 一 と い う観 点 か ら も格 差 の 拡 大 は 治 安 の悪 化 を招 くお それ が あ る.多 くの 途 上 国 に お い て も地 域 間 の 所 得 の再 配 分 を考 慮 す る よ うに な り,公 共 投 資 をは じめ と して地 域 間 の バ ラ ン ス を と る地 域 開発 戦 略 を と る こ とが あ ろ う.
前 節 でみ た よ う に政 府 の 役 割 は 市 場 機 能 を発 揮 させ る こ とで あ るの で,市 場 の働 き に よ って 地
図3ウ ィ リア ム ソ ンの 逆U字 仮 脱 格 差 の 度 合 い
大
小
時 間=経 済 発展 (出所)筆 者 作 成.
March2010岡 本 信 広:中 国 の 地 域 経 済 を ど う説 明 す るか?
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域 格 差 に影 響 を及 ぼ す と考 え られ る の で あ る.2.1.2地 域 格 差 の 動 向
地 域 格 差 を考 え る上 で,全 国 を沿 海,東 北,中 部,西 北,西 南 の5地 域 に分 割 す る13.そ して 改 革 開 放 以 降 の 中 国 の 地 域 格 差 を,変 動 係 数 を利 用 して 示 した もの が 以 下 の 図 で あ る.
中 国全 体 でみ る と,1980年 代 は 格 差 が縮 小 して い るが,1990年 代 以 降格 差 は拡 大 して い る.2005 年 に格 差 縮 小 の 傾 向 が 出 て い るが,こ れ が今 後 ど う な るか は も う少 し見 守 る必 要 が あ ろ う.1980 年 代 に なぜ 格 差 が縮 小 した の か.岡 本[2004]が 述 べ る よ うに,沿 海 地 域 で発 展 して い た上 海, 北 京 な どの 地 域 に 比 較 して相 対 的 に遅 れ て い た広 東,福 建 な どが 急 速 に 経 済 発 展 し,そ れ らの 旧 発 展 地 域 に キ ャ ッチ ア ップ した か らで あ る.こ れ は 沿 海 地 域 の 格 差 縮 小 の 度 合 い と全 国 の格 差 縮 小 の度 合 い が 似 て い る こ とか ら もわ か る.1990年 代 の 格 差 拡 大 は,広 東 や 江 蘇 な ど新 興 発 展 地 域 が 引 き続 き発 展 し,沿 海 地 域 間 の 格 差 を拡 大 させ,そ れ が全 国 の 地 域 格 差 拡 大 に つ なが っ た.ま た地 域 間(沿 海,東 北,中 部,西 北,西 南)の 格 差 も同 時 に 拡 大 して お り,広 東,江 蘇 に お け る 持 続 す る経 済 成 長 とそ れ に伴 う産 業 集積,そ して そ れ か ら取 り残 され て い く内 陸 部 とい う構 図 が 見 て取 れ る の で あ る.そ して2005年 以 降 は,西 部 大 開 発 の効 果 もあ り地 域 格 差 は 縮 小 して い っ た.
2.1.3評 価
現 実 の 地 域 間格 差 とウ ィ リア ム ソ ンの 逆U字 仮 説 は,い つ か ら市 場 経 済化 が 進 み,経 済 発 展 が 始 ま っ たか とい う時 点 の取 り方 に も問 題 が あ るが,少 な くと も手 放 し で あ て ま る こ とは な い.た だ し,1992年 の 鄙 小 平 の 南 巡 講 話 に よ り本 格 的 な 市 場 経 済化 が 始 ま って 経 済成 長 が 軌 道 に の っ た
図4中 国の 地域 格差
1.2
1
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塁 塁 塁 塁 塁 塁 塁 塁 塁a舅 塁OT塁 塁 塁 藝 塗 塁 塁 塁 曇 塁00§ 塁 蓉0塁 § 塁
一◎一金 国 一〇一地城 間 一白一沿海 →← 東 北 一崩一中部 蝋=〉 一西 北 中 西南
(出 所)中 国 統 計 年 鑑 各 年 版 よ り筆 者 作 成.
13本 稿 で い う 沿 海 地 域 は 河 北,北 京,天 津 か ら広 東,海 南 ま で の10省 市 で あ る.内 陸 地 域 は 東 北(遼 寧,吉 林,
黒 竜 江),中 部(山 西,河 南,安 徽,湖 北,湖 南,江 西),西 部(そ の 他 省 市 自 治 区)を 指 す が,西 部 の 分 析 で
は 西 北(内 モ ン ゴ ル,陳 西,寧 夏,甘 粛,青 海,新 彊),西 南(広 西,貴 州,雲 南,四 川,重 慶,チ ベ ッ ト)に
分 け る.
3・ 季 刊 創 価 経 済 論 集VoLXXXIX,No.1・2・3・4 と考 え るな らば,1990年 代 以 降 逆U字 仮 説 は 中 国 に あ て は ま りそ うで あ る.
こ こ で検 討 す べ きは,2005年 以 降 の格 差 縮 小 は何 が もた ら し たか で あ る.2000年 以 降の西部大 開発 政 策 が 功 を奏 した と もい え るが,前 節 で もみ た よ うに西 部 大 開 発 は 市 場 機 能 を発 揮 ・誘 導 す る政 策 な の で,市 場 が 中国 の地 域 経 済 構 造 に イ ン パ ク トを与 え始 め た よ う で あ る.
広 東 や 上 海 で は依 然 多 くの企 業 が 進 出 し続 け,経 済 発 展 の好 循 環 に 入 っ た よ うに 見 え る し,内 陸部 は 財 政 が 少 な く,所 得 が 低 い が ため に,企 業 進 出 が 少 な い.ま た 沿 海 部 は 海外 との取 引 を主 体 とす る外 資 系 企 業 で あ り,内 陸 部 に進 出 す るか ど うか は予 断 が 許 さ な い.と は い え,中 国 の 市 場 ポ テ ン シ ャ ル(需 要)を 期 待 す る外 資 企 業 も あ る こ とか ら,企 業 の 市 場 シ グ ナ ル に 沿 っ た 内 陸 へ の 投 資 行 動 が 格 差 を縮 小 させ る可 能 性 が あ る とい え るだ ろ う.
2.2地 域 格 差 を も た ら す要 因
何 が 地 域 の経 済 発 展 に 影 響 を与 え て き た の だ ろ うか.当 然,地 形 や 自然 条 件 お よび 歴 史 が 地 域 経 済 の 違 い を も た ら した こ とは 間違 い な い.自 然 条 件 や 地 形 は 第3節 の 空 間 コ ス トで考 え るの で,
そ の他 の 要 因 に つ い て経 済 学 の 観 点 か ら定 性 的事 実 を把 握 しよ う と思 う.
2.2.1格 差 要 因 の 議 論
中 国 の 地 域 格 差 の 問題 は1990年 代 よ り多 くの 議 論 が な され て きた[岡 本,2003].と くに格 差 を も た ら し た要 因 は何 か とい う議 論 が 非 常 に盛 ん だ っ た とい っ て よ い し,成 果 と して 金[2008]が あ げ られ るが,要 因 の特 定 に い た っ て い な い の が 実 情 で あ る.
中兼[1996]で は クー プ マ ン ス=モ ン テ ィ ア ス の モ デ ル を参 照 しな が ら,① 環 境 的 要 因 な い し は 初 期 条 件,② 体 制 的,制 度 的 要 因,③ 政 策 的要 因 の3つ を格 差 の要 因 と して 指 摘 して い る.日 置[2004]は 格 差 を も た らす 要 因 を① 初 期 ・環 境 要 因,② 政 策 要 因,③ 市 場 化 要 因,④ 集 積 要 因 に 集 約 した.市 場 化 に よ っ て 外 部 経 済 が 機 能 し,一 部 の地 域 に産 業 集 積 が 起 こ る こ と を考 え れ ば,
③ と④ は 中 兼 の い う② に 包摂 され る とい え る か も しれ な い.そ こ で,こ こ で は 中兼 の3つ の要 因 を も う少 し詳 し くみ てみ よ う.
環 境 的要 因や 初 期 条 件 で は,経 済 発 展 が お こ る か ど うか の 前 提 条 件 と な る.自 然 地 理 的 要 因(地 形 や 気 候 な ど)で は,内 陸部 か 沿 海 部 か,山 地 か 高 原 か平 野 か とい っ た こ とが 関 係 す る.気 候 は 温暖 で水 は 豊 か で あ るか,あ る い は発 展 の 出発 時 点 の 経 済 水 準,労 働 の 資 質 や 技 術 水 準 な どが 後 の 発 展 に影 響 す る.ま た西 南 地 域 で 多数 の 少 数 民 族 が 居 住 して い る こ と も,経 済 の 発 展 ス ピー ド に 違 い が 出 る で あ ろ う.中 兼 の 分 析 で は 地 理 的 な 不 利 よ りも最 初 の教 育 水 準 や 技 術 水 準 が 重 要 で あ る こ とが 示 唆 され て い る.こ の 自然 条 件 につ い て は 第3節 で輸 送 コ ス トの一 つ と して 述 べ た い.
体 制 的,制 度 的 要 因 で は,市 場 経 済 化 や 国 有 企 業 改 革 の 進 展 状 況 が 発 展 ス ピー ドを決 め る.リ ー [Lee,1996]や ル ー ・トム ソン[LuandThomson,2004]な ど の計 測 に よっ て も国有 企 業 改 革 の 善 し悪 しが 発 展 パ フ ォー マ ン ス に影 響 を与 え る こ とを示 して い る.
政 策 的要 因 で は,地 域 の 開放 政 策 が重 要 とな るが,そ の他 の 投 資政 策 や 価 格 政 策 も経 済 発 展 の 程 度 に 影 響 を与 え る.中 兼 は初 期 条 件 と政 策 要 因 が 格 差 を決 め る主 た る要 因 で は な い か と暗 示 し
March2010岡 本 信 広:中 国の地域 経 済 を ど う説明 す るか?3・
て い る.そ の 他 デ ィ マ ー ガ ー ら[Demurger,et.aL,2004]で は,地 域 の外 資 優 遇 政 策 と地 理 条 件 が 外 資 を呼 び 込 ん で い る こ と を指 摘 して お り,政 策 要 因 の重 要 性 が 読 み 取 れ る.
2.2。2初 歩 的 な定 性 的 事 実
ま ず省 別 にGDPの 大 き さ と1人 あ た りGDPの 大 き さ を見 て み よ う.
中 国 のGDP規 模 で見 て み れ ば,広 東 省,江 蘇 省,山 東 省 のGDPが 大 き い.続 い て 漸 江省 が 続 く.1人 あ た りGDPで 見 て み れ ば,直 轄 市 で あ る上 海,北 京,天 津 が トップ3位 を しめ,そ の後 翫 江,江 蘇,広 東 と続 く.い ず れ にせ よ,経 済 が 発 展 して い る地 域 は 沿 海 部 に あ る とい え る.
さて,こ の よ う な経 済 成 長 の違 い は ど の よ うな 要 因 か ら起 こ る の で あ ろ うか.以 下,よ く指 摘 さ れ る項 目 を見 て い こ う.
経 済 成 長 論
まず 経 済 成 長 論 か ら考 え て み よ う.経 済成 長 は,労 働 と資本 の 増 加 に よ って 起 こ る とす る の が 古典 的 な経 済 成 長 論 で あ る.発 展 し て い る地 域 で は ビル や 空港 な ど社 会 資 本 が 充 実 して い る し,
表1省 別1人 あ た りGDP(2005年)
順位 省 元
1 9 臼 3 ﹂ 4 ピ 0 ρ 0 7 0 0 0 ﹂ 0 ー ワ 自 り 盈 9 白 3 3
上北天漸江広広安雲甘貴 海京津江蘇東西徽南粛州51474 45444 35783 27702 24560 24435
8788 8675 7835 7477 5052
(出所)中 国統 計 年鑑2006年.図5省 別GDP
(億元)
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(出所)中 国統 計年 鑑2006年.図6省 別1人 あ た りGDP
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