標章等の譲受会社に会社法22条の責任が認められた事案
高 木 康 衣 東京地判平成27年10月2日(判時2292号92頁・金判1480号44頁)
1.事案の概要
本件は,銀行業務等を営むXが,内装工事 の設計等を主な事業とし,Qを代表取締役と す る 株 式 会 社 Y 元 の 商 号 は 株 式 会 社 B , 以 下においては「Y」という。)に対して,x の債務者たる株式会社A'(旧商号・株式会 社A・以下,平成27年3月1日になされた商 号変更の前後を通じて以下では「A」という。
事業内容は内装工事の設計等であり,代表取 締役はPである。)の事業を譲り受け,その 標章を続用しているとして,Y社に対し,会 社法22条1項の類推適用に基づき,xのAに 対する貸付金の残元金合計2501万円並びにこ れに対する約定の利息合計17万1032円及び年 14パーセントの割合による遅延損害金の支払 を求めたところ,Y社はA社からの事業譲渡・
事業の包括的な賃貸借はなく,また標章の続 用もないと主張して争った事案である。
2.判決要旨
(1)争点1(AはYに対して事業の譲 渡又は包括的な賃貸借をしたか)
に つ い て
会社法22条1項は,事業を譲り受けた会社 が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合に は,その譲受会社も,譲渡会社の事業によっ て生じた債務を弁済する責任を負う旨を規定 しているところ,ここにいう事業の譲渡とは,
一定の営業目的のために組織化され,有機的 一体として機能する財産(得意先関係等の経 済的価値のある事実関係を含む。)の全部又 は重要な一部を譲渡し,これによって,譲渡 会社がその財産によって営んでいた営業的活 動の全部又は重要な一部を譲受人に受け継が
せ る も の を い う も の と 解 さ れ る ( 最 高 裁 昭 和 40年9月22日大法廷判決・民集19巻6号1600 頁参照)。
Yは,Aが同社の商号を英語で表記した場 合の頭文字であり自己の略称としてホームペー ジ等で使用していた「Y」という名称が業界 において浸透しており,ブランドカがあるこ とから,休眠会社Bの商号を「株式会社Y」
に変更して,これをYの商号として利用する とともに,Aが使用しており,同社のブラン
ドカを象徴する本件標章を同社の許諾を得て 利用することとなったものである。このよう に,「Y」との名称及び本件標章にはブラン ドカがあったのであるから,これをYが利用 するようになったことは,AからYに対して 財産的価値を有するブランドの承継がされた
と評価することができる。
Yは,内装工事の設計,監理の事業を開始 した時点でAにおいて継続中であった案件を 引き継いでおり…Yが設計,監理の事業を開 始した当初の時期において,Yは,Aの仕掛 かり工事を引き継ぎ,売上げを獲得していた ものである。
Y の 取 締 役 は Q l 名 の み で あ る と こ ろ , Q はAの取締役でもあり,また,Yの従業員は,
いずれも,Aに在籍していた者のみから構成 され,Yにおいて勤務することを希望した者 が雇用された。したがって,人的組織の面か らも,Yは,Aから承継したものと評価する ことができる。
Aは,Yが設計,監理の業務を開始した平 成24年7月頃以降,ホームページの会社概要 において,Yを「マネジメント会社」として 表示し,Yが担当した業務(施工事例)を紹 介するとともに,Yは,ウェブサイトの中の デザイン会社を検索するページにおいて,会 社のホームページのURLとして,Aの上記
熊本ロージヤーナル第12号(2016.12)59