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酵母による油脂合成(第3報)
Rhodotorula glutinisの油脂合成に与える無機塩およびビタミンの影響
理学科研究室 我 謝 孟 俊
(昭和47年11月2日受理)
晃)(21、瀦は醐(Rh。d・…ul・gl・ti・i・)の脂質合 Ni…i・ic acid 5・・mg 成について,各種の窒素源を用いて,培養液11あたり ρ一Am三nobenzoic acid O.3mg
0.1〜2.09の窒素濃度における酵母の増殖の模様や Pyridoxine 1・Omg 菌体油脂含量および油脂収量に関する知見を報告した。 Ca−4−pantothenate 1.Omg すなわち酵母の油脂合成が培養液中の窒素源の種類や濃 Inosito1 75. Omg 度によって影響されることを明らかにした。 4−Biotin O・02mg
Rhodotorula属酵母の発育に対する各種の窒素源や炭 を添加し,500m1振麗フラスコに100ml分注・105°C
素源の資化性,あるいはビタミンの影響などについては で5分間殺菌したものを用いた。よく調べられているカチ1)(4)油脂合成に与えるこれらの影 培養方法は,まず基本培地で48時間(28°C)前培養 響についてはそれほど詳しく研究されていないようであ (振盈培養)した菌体を,殺菌水で2回無菌的に洗浄し
る。そこで著者は,Rhodotourula属酵母の油脂合成の 殺菌水に懸濁し・その1ml(乾燥菌体重量5・9mg)を
研究に常用してきている培地の無機成分やビタミンが・ 接種し,28°Cで3日間振盈培養iした。油脂合成や油脂収量にどのように影響するのか予備的実 〔皿〕測定法 (1)
験をおこなったので,その結果を報告する。 乾燥菌体重量および菌体油脂含量の測定は前報同様で
ある。
〔実験方法〕
〔実験結果および考察〕
〔1〕菌株
本実験に使用した菌株は長尾研究所より分譲してもら 〔1〕油脂合成に対する硫酸第二鉄アンモニウム,硫酸 った当研究室保存のRhodotorula 91utinisである。 銅および硫酸亜鉛添加の影響
〔∬〕培地および培養方法 基本培地および基本培地にそれぞれ硫酸第二鉄アンモ 本実験に使用した培地は・Rhodotorula属酵母の油脂 ニウム,硫酸銅,および硫酸亜鉛を添加することによっ
合成の研究に常用してきた純合成培地で・その組成は次 て,菌体の生成,菌体の油脂含量がどのように影響されの通りである。すなわち,蒸留水11中にglucose 50g, るかをみた結果が第1表である。基本培地で培養した場
Urea O.59, K、SO、49, Na2HPO4・12H2049, MgSO4・ 合と基本培地にそれぞれ無機成分を添加して培養した場 7H200.59, CaCl、.2H,00.19を溶解したものを基本 合の菌体生成量,菌体油脂含量および油脂収量について 培地(pH 4.5)とし,無機成分およびビタミン類は上記 比較してみると・無機成分を添加して培養した場合の方基本培地にそれぞれ がよい結果を与えている。すなわち菌体生成量について
硫酸第二鉄アンモニウム は,基本培地で培養した場合よりも無機成分を添加して
(Fe2(SO4)3(NH4),SO、・24H、0) 0.02g 培養した場合の方が約1。3〜1.7倍量の菌体を生成してお 硫酸銅(CuSO、・5H,0) 0.01mg り,菌体油脂含量についても約2.3〜2.4倍量の油脂を蓄
硫酸亜鉛(ZnSO、・7H20) 0.2mg 積していることになる。とくに無機塩の添加は,菌体の
Thiamine hydrochloride O.4mg 生成に対するよりも,油脂の蓄積に対する効果の方がむ
Riboflavin O.2mg しろ大きく,とくに硫酸亜鉛の油脂蓄積に対する影響は
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顕著である。 第1表 基本培地に無機塩を添加した場合の菌体生成および油脂合成に
基本培地に添加した硫酸第二鉄アンモ 与える影響ニウムの量はわずかであるが(0.02g/1),
Aンモニウム塩の1種として考えれば,
菌体生成量
i乾燥菌体重量) (ms/100nze)
菌 体 油 脂生成量(含量) (%)
油 脂 収 量 ォ/100ηの
窒素源として資化されることも考えられ基本培地 (S) 314
24.80 77.9るので菌体の生成量が増加することも当 S十硫酸第二鉄アγモニウム
551
56.14 298.1 然なのかも知れない。硫酸銅,硫酸亜鉛S十硫酸銅 473
56.71 268.2については,RhodotQrula glutinisの
S十硫 酸亜鉛 404 60.59
244.8 生育にとって必須な成分なのかどうか,さらにくわしく検討する必要があろう。また油脂蓄積に Ca−4−pantothenateの影響が大きく,とくにriboflavin
対する硫酸銅および硫酸亜鉛の効果も脂質の生合成の上 の影響が著しい。なお,菌体生威に与える4−biotin から興味がもたれる。 の影響は,その添加量が少ないせいか,ほとんどみら
〔豆〕菌体生成および油脂合成に対するビタミンの影響 れず,基本培地で得られた菌体生成量とほり同じ生成量
基本培地および基本培地にthiamine hydrochloride, であった。このことは本実験に使用したRhodotorula riboflavin, nicotinic acid,ρ一aminobenzoic acid, pyri− glutinisにとって 4−biotin はgrowth factorとし
doxine, Ca−4−pantothenate, inositolおよび4−bioti11 て作用しないのか,あるいは添加量が少ないためにを前述のような量を添加することによって菌体の生成お growth factorとしての効果がないのか,培地組成と
よび菌体の油脂含量がどのように影響されるのか,3日 してのd−biotinの量を検討する必要があろう。間振盈培養した結果を第1図および第2図に示した。 菌体油脂含量に対しては,riboflavin, thiamine hy一
基本培地および基本培地にビタミンを添加した培地で培 drochloride, nicotinic acid, Ca−4・pantothenateの影響
養した場合の菌体生成量を比較してみると,添加したビ がよく,とくにriboflavinの影…響がもっともよく,タミンは4biotin を除いてはいずれも菌体の生成に thiamine hydrochlorideもdboflavin 程度の効果を
は効果的で,なかでもriboflavin, pyridoxineおよび もたらしている。基 本 培 地 Th巳aml ne hydrochlorlde R巳bofIavm
NIcotImc ac」dρ一AmmobenzO I c aOId
Pyrid・x川 1
Ca−6−panto電hena霊e
亙nOS1101
己一BlothIn
0 100 200 500 400 500
菌体生成量(吻〆10昭) ㎡
第1図菌体生成に与えるビタミンの影響
我 謝:酵母による油脂合成(第3報) 151
基 本 培 地 Th聖amne
hydrochlor竃de
R畳bofla層in
Nicotm累C
acld ρ一AminobenzoicaCId
PyndOXina−4−pant。匙henat
InOSItoI・
4−Blothin
0 10 20 50 40 50 60
菌 体 油 脂 含 量 (%)
第2図 油脂合成に与えるビタミンの影響
〔皿〕油脂収量に対する無機塩およびビタミンの影響 脂収量に与える影響は顕著で・基本培地で培養した場合
〔1〕および〔五〕で菌体生成量と油脂合成に与える の油脂収量にくらべて約3〜4倍の収量をうることがで
無機塩およびビタミン添加の影響について考察してきた き,これは基本培地で培養した場合よりも,無機塩を添 が,これらの結果から,油脂収量に対する無機塩,ビタ 加した場合の方が,菌体生成量および菌体油脂含量が高ミン投与の効果をまとめてみると第3図のようになる。 いので当然の結果といえる。
硫酸第二鉄アンモニウム,硫酸銅および硫酸亜鉛の油 また油脂収量におよぼすビタミン添加の効果はribo一
〒
基 本 培 地 Fe2(SO4)3(NH4)2
SO424H20
〔CuSO4・5H20〕
〔ZnSO4・7H20〕
Th置amme
?凾р窒盾モ?hor■de 1
1
RlbofIavm
1
1
NicotmiC
≠モ奄 1
ρ一A出mobenzOlc
1
ac■d
11
Pyndoxln i
a一己一pantothenat
InOS置tol
4−B巳olhm
0 50 100 150 200 250
500 油 脂 収 量 (㎎/100me)
第3図油脂収量に対する無機塩およびビタミンの影響
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flavin, Ca−4−pantothenate, pyridoxineおよびthiam一 りもむしろ油脂合成に対して効果的で,なかでも,硫酸
ine hydrochlorideが良好で,なかでもriboflavinの 亜鉛の効果が最も大きかった。菌体の生成に対しては硫
効果が顕著であった・Riboflavinの添加は菌体の生成 酸第二鉄アンモニウムの添加が効果的であった。のみならず菌体の油脂合成に対する影響がビタミン中で (2)基本培地にビタミンを添加した場合も,菌体生成お 最も効果的であることから,多量の油脂収量を得る結果 よび油脂合成に対して効果的で,菌体生成に対するより
となった。 も油脂合成に対して,より効果的なことは無機塩添加の 以上のように,菌体生成および油脂合成に対する無機 場合と同じである。とくにriboflavinは,菌体生成お
塩,ビタミン添加の効果は確かに認められ,これらの影 よび油脂合成に対しても最も効果的であった。響は,菌体の生成に対する影響よりもむしろ菌体の油脂 (3)無機塩およびビタミンの添加が,菌体生成,油脂合
合成に対する影響の方が大きいようである。 成に効果的であることから,油脂収量が高くなり,基本
培地の場合にくらべて1.7〜38倍の収量をあげることが
〔要 約〕 できた。とくに硫酸第二鉄アンモニウムと・ib・flavin
の影響が顕著であった。以上のように酵母の油脂合成の研究に常用してきた純
合成培地組成のうち,91ucose, urea, K2SO4, Na2HPO4
・12H20, MgSO4・7H20, CaC12・2H20を含む培地を
文 献基本培地とし,この基本培地に硫酸第二鉄アンモニウム
硫酸銅,硫酸亜鉛などの無機塩およびビタミンをそれぞ
れ添加することによって,Rhodotorula glutinisの菌 (1)我謝孟俊:本紀要塑175(1970)
体生成,油脂合成,油脂収量がどのように影響されるか (2)我謝孟俊:本紀要挺149(1971)
考察してきたが,その結果を要約するとつぎのようにな (3)THASEGAWA and I°BANNO:工Gen APPI
る。 MicrobioL皇(3)279(1963)(1)基本培地に無機塩を添加した場合,菌体生成および (4)丁且ASEGAWA:An臨ReP Inst Fe「mentatio馬
Osaka No.2,1(1965)油脂合成に対しても効果的で,菌体生成に対する影響よ
Fat Synthesis by Yeast Cells(Part 3)
Effect of Inorganic Compounds and Vitamins on the 」
eat Synthesis of Rhodotorula glutinis
Some Preliminary ExperimentsTaketoshi GASHA
Ab8tr8ct
The effect of addition of inorganic compounds(ferric ammonium sulfate, copper sulfate