長野工業高等専門学校紀要 ・第20号(1989) 113
開ループ制御リニアパルスモータの動応答特性 山本行雄 山田一
Dynamic Response Analysis of Linear Pulse Motor with Closed Loop Control Yukio YAMAMOTO and Hajime YAMADA
A linearpulsemotorcan translatedigitalsignalsintolinearpositionswithout agearsystem.Itisimportanttopredictadynamicresponseinordertothemotor thathasthegoodperformance.
Inthisreportthemaximum pulserateandthemaximum speedon thelinear pulsemotorareobtainedbyusingthesamplingtheory.
1. ・ま え が き
リニアパルスモータ(LinearPulseMotor以下LPM と略記)はオープンループ制御が 可能であ り,位置決め誤差を累摂 しない等の特長を持 っている.そのため,情報機器や 自動 機器の位置決め用装置 として広 く利用 されている(1)(2).
LPM の使用特性を向上 させるためには, モータの基本特性を明 らかにす る必要があ り, これ までに磁気回路お よび始動特性の解析を行ってきた(3X4).しか しなが ら,動応答の正確 な 解析は困難であ り,LPM の持つ特性を十分利用で きずにいるのが現状である.
本報告では,LPM の可動子の運動方程式を状態方程式で表 し,次いでサンプ リング制御 理論を応用 してディジタル制御回路 と同様の扱いを して動応答の解析をしている.その結果 可動子の応答を簡単に精度良 く求めることができた.
2.LPM の動作 と状態方程式
LPM,は永久磁石 と励磁巻線に よって励磁 され る永久磁石型 とし,各巻線には1方向の電 流が流れるユニポーラ駆動を採用する.励磁電流を1パルス印加す ると,可動子は電流の大 きさに よらず1/4ピッチ移動する. この状態は図1のようにモデル化 され る.
ここでは,分配器の出力は定電流であるとし,各パルス電流を十分短い周期 でサ ンプ リン グし, これを 0次ホール ド回路を通 して励磁回路に供給す る.各相 の電流波形は図2のよ う になると考 えられる.
* 平成元年4月 電気学会全国大会で一部発表
** 電子情報工学科教授
*榊 信州大学工学部
原稿受付 平成元年9月30日
山本行雄 ・山田 ‑
励磁巻線 に次の電流が流れ るとす る.
r
加アSOC▼J≡α.〜 r〟加二・m.sl‑∫二
13
〜‑‑ー
′‑‑lIノ (1)114 .I
S:サ ン.プ.ラ
HO:0次ホール ド回 路
ここに,X,:目標値
iq,'ibに よる推力Fq,Fbは高次の 図1 .)ニ7.ミルスモークのサソプ.)ソグモデル 項 を無祝 して次の ように近似できる (4).
. 2 7 r
Fa‑∑ KJ
f i q s l n 7 X b 2 7 r
Fb‑∑ KfJ
i c c o s 7X b ノ \ ー ′ ‑ ‑ 1
ここに,Kf:推力定数,xb:可動子の変位第)'パルスを入力した場合の可動子の運動方程式は次となる. ‑普・2m摩‑F‑Fa・・Fb
ここに,m:可動子質量,.γ:減衰軍数
式(3)の両辺の変分をとると
i ここに,
(2)
(3)
響 +2,普 十K4‑ K8AI (4)
Ax♪,・‑A(I/4('・‑1)・x)I‑Ax,・K3‑去 憲 ,K+‑去意
. r
l⊃
d J i i(a)入 力 パ ル スVP (b )サ ンプ リング くC ) LPM入 力 VL パ ル スVs
図2 入力のサンプリング
第 )'パルスにおいて,Ax‑x2)I̲i,AI‑u,d(Ax)/di‑x2)・と書 き換えろと次の状態方程式が 袴 られ る.・‑一・‑I‑‑‑I‑1・‑‑'‑‑‑I ‑
[卓]‑[A]lx]+[B]u
ここに,各マ トリクスの成分は次式であ る.
(5)
開ループ制御 リニアパルスモータの動応答特性 115
〔xx;:‑ 1]‑ Lox. .・̲1針 目 xX22,'.I‑ 1回 1 3〕u (6, 1パルスを周期Tでサ ンプ リングす ると,第 k及び第k+1.サ ンプ リソグ信号に対 して, 可動子の位置変化 x(kT),x((A+1)T)は次式 とij:る(5).
x.(k・1,̲T,‑e^Tx(kT,可 .TeArdt・B・u(kT,
ただ し,サ ンプ リソグ信号は 0次ホール ド回路によって一定値に保持 されている.
出力y(i)は 次式で表 され る.
ly]‑lC]lx]+xl.(0)
(7)
(8) ここに,lC]‑[0101・・・], xl(0):初期値
したがって,各パルス毎に前の信号の最終速度を初期条件 として代入 し,計算 された変位 を積算すれば可動子の位置の変化を知 る‑こ・とができる.以下では定電流駆動を行 った場合の
LPMの動応答について式(7),(8)を適用 し解析 している.
3. リニアパルスモータの応答
オープンループで一定周期のパルスを加 えた場合,始動時の可動子変位を図3に示す.減 衰定数 Tによる起動状腰 の変化が見 られる.試料 として用いたLPMの γの大 きさは15程度 であ り(6), 計算値 と榊 空し 致 している.またγ‑250の場合は起動できないことが分か る・
図4の自起動周波数は閉ループ.1 の状態で起動 した場合の最大起動周波数 (pulsepei'sec‑
ond:'lpps])である∴ また位置セ.ソサを用 いてフィー ドバ ック制御系を構成 し,パルス切 り 替 え状憩によって最大速度が変化する状態を同図に示 している.進み角 T/8はLPMの推
丁
[・uu]x坦尉
/
l /
計算 埠 (γ〒 15..) ./
′ // 計 貞 値 (γl=..2 50
/ 計 貞 値 (γl=..2 50
・10 , '2tO 3 0 4 0 時 間t 【m s 】 BI3 始 動 特 性
116 山本行雄 ・山田 ‑
力を最大限に利用できる状態であ り,開ループ制御の4倍程度の速度での走行が可能である.
開ループ制御に よる最高速度は減衰定数の影響を強 く受ける.
10
︻sddq]滋賀ErYq(.V 0l〇
0 0 .5 1
電 流Ⅰ [A l 図4 制御方式によるLPMの最高速度
1.5
4.あ と が き
状態方程式を解 くことに よって リ三アパルスモータの運動時の応答を求めるちとがで きた.
モータの応答をサ ンプ リング理論によってディジタル系 と等価に取 り扱 うことが可能であ り, 計算はルンゲ ・クッグ法 と比較 して,済算回数が少な くてすむため誤差の積算が小 さい利項 がある.
参 考 文 献
(1)山田 ・山本 ・海老原 :リニアアクチ3̲エータとその応用焼津の開発,自動化技術Vol.17,No.2, pp.114‑118(1985)
(2)三輪 ・山田 ・山本 :リニアパルスモータの情報端末機器・OA按器 ・医療機器への応用,電気学会 マグネテ ィックス研究会資料ーMAG‑86‑34(1986)
(3)山本 ・山田 ・水野 :定電流駆動時の平板状 リニアパルスモータの自起動周波数,電気学会論文誌B, Vol.103,No.5,p.374(1983)
(4)山本 ・山田 :乎板状永久磁石形 リニアパルスモータの磁気回路 と始動特性解析,電気学会論文誌B, Vol.104,No.5,pp.265‑272(1984)
(5)西村 :制御工学,pp.112‑116,(1987)森北出版
(6)山本 ・小林 ・山田 :リニアパルそモータの推力 と減衰定数測定,平成元年電気学会全国大会673(19 89)