氏名・(本籍)
学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件 研究科・専攻の名称 学位論文題目
論文審査委員
伊 藤 真 也(岐阜県)
博 士 (工 学)
工博甲第 291 号 平成19年3月23日 学位規程第5条第1項該当
電子科学研究科 ナノビジョン工学
カプセル内視鏡用高機能イメージセンサと電磁結合を用いた 低電力画像伝送に関する研究
(委員長)
教 授 杉 浦 敏 文 教 授 海老津 嘉 伸
教 授 浅 井 秀 樹 教 授 用 人 祥 二
論 文 内 容 の 要 旨
近年、CMOSテクノロジーを利用した医療用埋め込みセンサデバイスへの応用に向け て、センサ信号処理回路と無線通信機能を一体化し、超小型・超低消費電力・低コスト でセンサモジュールを構成する技術の確立が望まれている。
本論文は、機能回路を1つのシリコンチップ上に集積できるCMOSイメージセンサ技 術に着目して、ディジタル無線伝送機能とカメラに必要となる全機能を集積化した超小 型ワンチップカメラデバイスの実現を目指し、医療・バイオ分野へのイメージセンサ技 術応用として期待されるカプセル内視鏡への適用とその高機能化に関する研究を取りま
とめたものである。
第1章では、従来の研究を概観し、本研究の背景と目的を述べている。
第2章では、CMOS撮像素子の高画質化・高機能化を議論していくうえで、撮像され た画像の持つ信号雑音比(S/N比)が重要な性能指標となるが、画素サイズ・低電源電圧 化・無線伝送に伴うそれらの課題と対策について述べている。画像の無線伝送に必要と
される送信電力の最適化について検討を行い、高画質の撮像と低消費電力を両立するた めには、雑音の重畳する前にセンサ出力を高精度に量子化し、ディジタル伝送を用いる
ことが特に有効であることを述べている。
第3章では、内視鏡システムのカラー撮像に関して述べている。従来型の内視鏡で広 く用いられている面順次カラー撮像方式をCMOSイメージセンサで実現するためには、
画素の読み出しがローリングシャツタ方式で行われていることが問題となり、読み出し のタイミングのずれによる色の分離が困難であることから、そのままの適用はできな かった。ローリングシャツタ動作に伴う色ずれを補正するアルゴリズムを提案し、試作
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したイメージセンサにより補正が可能であることを確認した。本検討により、面順次カ ラー撮像方式のCMOSイメージセンサへの適用が可能となり内視鏡のカラー撮像に関す る応用範囲を広げた。
第4章では、電磁結合により低消費電力で画像伝送を行うカプセル内視鏡用のRFト ランスミッタを提案し、これを組み込んだワンチップカメラデバイスの試作と評価につ いて述べている。数Mbpsの高速なデータレート要求に対して、既存のディジタル無線 規格との比較から、近傍界の電磁結合を用いたインダクティブリンクが低消費電力だけ
でなく高速性にも優れた方式であることを述べ、提案手法がカプセル内視鏡の画像通信 に適していることを示した。周波数の低い20MHzのBPSK変調波を、ディジタル領域で の演算により直接変調し、ディジタルⅠ/0バッファで送信コイルを直接駆動する手法を 用いることで、撮像部以外の面積増を押さえながらイメージセンサ上への集積化を可能 にしている。0.25pmCMOSイメージセンサプロセスを用いて、有効画素数320X240とカ
メラに必要とされる全機能をチップサイズ4.84mmx4.34mmに集積化し、10mmx20mmの カメラモジュールに実装して通信・復調システムの実験を行った。キャリア周波数 20MHzにおける、カメラモジュールから受信アンテナ間の距離と平均受信電力の測定結 果から、受信アンテナに40cmのループコイルを用いた場合に、ビットレート2.5Mbpsの 通信速度で48cmのエラーフリー受信距離が得られた。システムの仝消費電力を測定し
た結果、回路の直流的な消費電力は約950pW、フレームレート2frames/secでの消費電力 は2.6mWであり、その優れた低消費電力性が示された。
第5章では、第4章の結果を受け、RFトランスミッタの更なる低消費電力化のための 検討を述べている。通常のRFトランスミッタおいて、パワーアンプの負荷はアンテナ の放射抵抗で表されるのに対し、電磁結合を用いた場合では、弱い結合係数で結ばれた 2次コイル側の受信機の入力インピーダンスで表されることに着目した。電源からの過 剰な信号電流の投入を抑え、スイッチングトランジスタでの損失を抑えることで、トラ
ンスミッタの電力消費を劇的に改善できることがわかった。高効率かつ低消費電力を目 的とし、F級増幅の概念をインダクティブリンクに初めて導入したRFトランスミッタ回 路を提案し、シミュレーションによる結果より単位ビット当たりの電力効率を効果的に 改善できることを明らかにした。また、提案するRFトランスミッタは多倍化による通 信速度の高速化を図ることが可能である。この検討によって、従来の性能を大きく上回
る低消費電力と高速性を兼ねた無線通信が実現できることを示した。通信回路の性能を 表す1ビットあたりの電力消費は、0.2nJ/bit以下であることが見積もられ、今までに報 告された近距離間無線のなかで最も低い値である。また、回路はディジタルロジック素 子を用いて構成されるため集積化が容易であり、小面積で実現可能である。
第6章は、結論であり、本研究のまとめと今後の課題について述べている。
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論 文 審 査 結 果 の 要 旨
次世代の高機能内視鏡として、呑込みカプセルにカメラの機能を内蔵したカプセル内 視鏡が注目されている。米国などでの実用化が進められているものの、その解像度、色 再現、撮像速度の改善が望まれており、そのために高画質の画像を低電力で伝送できる 技術の開発が必要とされている。本論文は、高画質なカプセル内視鏡の実現を日的とし、
新しい面順次による高色解像度撮像方式、電磁結合による低電力無線画像伝送方式及び イメージセンサの試作による性能実証についての研究を取りまとめたものであり、仝6 章よりなる。
第1章は緒言であり、本研究の背景と目的を述べている。第2章では、カプセル内視 鏡において、高画質で低電力の無線画像伝送を実現するための基礎的考察を行っている。
第3章では、高い色解像度をCMOSイメージセンサによって実現する面順次撮像方式と して、CMOSイメージセンサのローリングシャツタ動作によって生じるRGB光源の混合 された信号から、色成分を分離するアルゴリズムを提案し、試作されたイメージセンサ を用いて良好な色再現が行えることを示している。第4章では、カプセル内視鏡として 初めてとなる、電磁結合方式を用いたディジタル画像伝送機能をもつワンチップCMOS カメラの試作と、低電力画像無線伝送実験の結果について述べている。従来の電波によ る複雑なRF無線トランスミッタに代わり、簡単なCMOS駆動回路とキャリア周波数で 共振し、容量結合された送信コイルで構成される電磁結合型トランスミッタが、近距離 での低電力画像伝送において有利であることを実験によって明らかにしている。約50cm の通信距離において2.5Mbpsでの無線画像伝送が1.4mWのトランスミッタ電力で行え、
従来の電波による無線伝送方式と比較して大きく電力削減が行えることを示している。
第5章では、第4章で述べた電磁結合による無線伝送回路を拡張し、電波による無線伝 送で用いられてきたF級増幅の概念を、電磁結合通信に初めて導入した極めて低電力の
トランスミッタを提案し、理論解析とシミュレーションによって、その優れた電力効率 を明らかにしている。得られた1ビット伝送あたり電力消費として、0.2nJ/bitが達成で き、これまで報告された近距離無線伝送方式の中でも最も低い値が得られることを示し
ている。