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福島昌則福島昌則

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(1)

信用状取引論考

福島昌則

(2)

はじめに

1

大戦間期間の信用状取引

2

信用状統一規則制定への動き

3

信用状統一規則の創設

1 9 3 3

4

1 9 5 1

年規則一第一次改訂

5

1 9 6 2

年規則一第二次改訂

6

1 9 7 4

年規則一第三次改訂

7

1 9 8 3

年規則一第四次改訂 おわりに

は じ め に

1 9 8 4

1 0

月以後,本邦貿易業者が入手する輸出信用状には次の文言がある。

まず印刷文言として

"THISCREDIT I S   SUBJECT TO UNIFORM  CUSTOMS AND PRACTICE FOR DOCUMENT  ARY CREDITS ( 1 9 7 4   REVISION). INTERNATIONAL CHAMBER OF COMMERCE PUB‑

LICATION NO. 2 9 0 . "

と信用状欄外に明記されている。

次いで欄内余白にラノ〈ースタンプで

"N  o t w i t h s t a n d i n g   t h e   p r i n t e d  

c1

a u s e   h e r e i n

, 

t h i s   c r e d i t   i s   s u b j e c t   t o   Uniform Customs and  P r a c t i c e   f o r   Documentary  C r e d i t s

, 

1 9 8 3   R e v i ‑ s i o n

, 1. 

C .  C .   P u b l i c a t i o n  N o .  4 0 0 . "

という文言が押捺されている。

このほか次のような例もある。

" E x c e p t  s o  f a r  a s   o t h e r w i s e  e x p r e s s l y  s t a t e d

, 

t h i s   documentary c r e d i t   i s   s u b j e c t  t o   t h e   Uniform Customs 

P r a c t i c e  f o r  Documentary C r e d i t s  

(1

9 8 3  R e v i s i o n )

, 

I n t e r n a t i o n a l   Chamber o f   Commerce ( P u b l i c a t i o n   No. 

4 0 0 ) . "

という文言が信用状面にタイプされている。

いづれも信用状統一規則採択国所在地にある為替銀行が発行した荷為替信 用状であるが,前者は信用状統一規則

1 9 7 4

年改訂版の実施期間に既に印刷済

(3)

342 

の信用状フォームを使用した例であり,後者は信用状統一規則適用文言の印 刷がなされていない信用状フォームを使用した例である。

わが国においては,国際商業会議所

( I C

C.

The I n t e r n a t i o n a l   Chamber  o f   Commerce)

日本国内委員会の要請により,全国銀行協会連合会(全銀 協)が

1 9 8 4

3月1 3

日開催の理事会において,信用状統一規則

1 9 8 3

年改訂版 そ採択し同年

1 0

1日から実施することを承認,即時加盟銀行に対しこの旨

を通告した。

これにより本邦各為替銀行は,

1 9 8 4

1 0

1日以降に発行する輸入信用状

において,

1983

年改訂信用状統一規則を遵守する旨の文言を記載することと し,実施されているものである。

過去1

0

年 間 , 信 用 状 取 引 に お い て は , 国 際 商 業 会 議 所 (1 

C C)

制 定 の

「信用状統一規 ~1J1 974年改訂版」が採択実施されてきたが,此聞の経済環境,

社 会 環 境 の 変 化 は す さ ま じ し こ れ に 対 応 す る た め

i 1 9 7 4

年改訂版」の見直 し作業が進められ,

1 9 8 3

6月 に 漸 く こ の 作 業 が 完 了 し 「 信 用 状 統 一 規 則 1 9 8 3

年改訂版」として

1C C

理事会が採択するに至った。と同時にこれを公 表するとともに世界各地の銀行協会等に対し

i 1 9 8 3

年改訂版」の採択・実施

を要請したものである。

この要請に応えて,わが国の全銀協が採択し各銀行に対し

1 9 8 4

1 0

1日

からの実施を通知したが各国においてもほぼ同様の措置がなされた結果,目 頭に述べた信用状が巷間に使用されることとなった。

本稿においては,

1 9 8 3

年規則実施の機会を捉え,現在世界的ルールとして の地位を確立したとされている信用状統一規則が,いつ,いかなる事情のも とに国際貿易関係者の間でその必要性が痛感されたのか,また当時の国際貿 易に従事していた当事者の苦衷はいずれにあったのかをさぐり,混乱から秩 序化への道程を明らかにした上で,信用状統一規則創設後の経過を概観し,

今回の

1 9 8 3

年規則の位置づけを試みるものである。

(4)

1

大戦間期間の信用状取引

旅行或は商取引面において,信用状は古くから用いられていたが,

1 8 0 5

1 0

2 1

日,ネルソン提督率いるイギリス艦隊が, トラファルカールにおいてフ ランス・スペイン連合艦隊を撃滅した結果イギリスが海上覇権を確立し

( 1 )

後七つの海を支配した大英帝国の商船隊は,当時の乗組員の献身的な努力あ

(2) 

るいはその犠牲に支えられて産業革命後の工業製品の輸出,植民地産品の輸 (3) 

入を軸とした貿易業務を飛躍的に発展させた。

同時にロンドン金融市場もマーチャント・パンカーの活躍により,世界の 金融市場としての地歩を固めてきたが,商業信用状に基づいて振出される手 形の引受業務がその牽引力となっていた。

商業信用状取引において,文言解釈の相違等による紛争も生じ,このため 商業信用状関係の判例は,イギリスにおいて最も多く現出したが,

1 9

世紀ま での貿易の主体は,伝統ある大商人であり,彼等は紛争を外部に知られるこ とは信用失墜につながるという考え方を信じていたことから,紛争発生の場 合は,当事者聞の話し合いによる解決策を最善とし,これを実行していた。

したがって,

1 9

世紀までは信用状問題が大問題として話題にのぼることは

(4) 

なかったと云われている。

信用状取引の混乱として,世界的に問題化する契機となったのが,

2 0

世 紀 初頭の第一次世界大戦である。

1 9 1 4

8

月,第一次大戦勃発とともに, ヨーロッパ各国からの物資の供給 を断たれた各国はアメリカにこれを求めることとなり,さらにイギリス,フ ランス, ドイツ等の交戦各国もアメリカからの物資購入に狂奔することとな った。

ここにおいて,従来信用状取引に馴染んでいなかったアメリカの輸出業者 の問でドル貨による輸出代金の早期かっ確実な回収をはかる手段としてのド ル貨信用状の利用が急速に進展することとなった。

4

3

か月にわたった第一次大戦は,

1 9 1 8

1 1

月に至りイギリスを中心と する連合国側の勝利をもって漸く終結するに至った。

(5)

3 4 4  

第一次大戦後,不況到来とともに商業信用状関係の係争が続発し,アメリ カの裁判所はこれに忙殺されることとなった。

按ずるに,大戦中においては物資に対する希求度が極めて高く,少々の品 質不良や数量不足等の売買契約違反の事実があっても,買主はこれを受忍し 係争化することは殆んどなく,平穏無事に推移していたものと思われる。し かるに戦後の不況に際会して物価下落により買主は売買契約の履行を拒絶す るため,商業信用状面の文言の暇庇を盾に裁判所の手を煩らわすという挙に 出ることとなった。

この事態に対処して,アメリカの裁判所は多大の努力を傾注した。初期の 段階では判断の根拠を先例に求め,旅行信用状の理論によって律していたが,

その後の研鈴により商業信用状に妥当な法律原則を樹立するまでに漕着けた。

法律原則樹立までの混乱状況が,商業信用状に関する世間の注目を浴びる 契機となり,学者・実務家等の関係者が商業信用状制度の研究に乗出すこと となった。これらの研究成果が信用状統一規則制定運動に発展して行くこと となる。

繰ってわが国の状況はどうなっていたのであろうか。

明治開国後なお日が浅いわが国で商業信用状関係の争訟事件のはじめての 例と考えられるケースをここに紹介してみたい。

1 9 2 1

年(大正1

0

年)

3

3日,横浜正金銀行頭取席は各庖に対し書信をも

って次のように注意を促している。

他行開設の信用状を取次屈として受益者に通知する場合に

'We s h a l l   be  p l e a s e d  t o   pay y o u '

の文言を使っと,本来の信用状とは別個の支払義務を 負うことになる, という説をなす者があった。これを理由に神戸支屈に対し て訴訟が提起され,結果的には正金(横浜正金銀行・筆者註)の勝訴となっ たが,このような文言は取次銀行にとって法律上すこぶる不利な解釈を受け ることから通知書に同種または同意味の文言を使用しないこととされた

(6) 

ここにいう神戸支屈に対しての訴訟について,

1 9 2 1

年(大正1

0

年)

1

1 1

(6)

日,神戸地方裁判所が判決を下している。

商業信用状関連の訴訟事件について,全世界的に混乱の渦中にあった当時 において,わが国の裁判所がどのように解釈し判断を下したのか,考察のこ

( 7 )  

ととしたい。なお,参考文献は文語体であるが,これを現代文に書替えて紹

(7) 

介のこととする。

1 . 発 端

1 9 1 7

年(大正

6

年)

6

2 2

London S o u t h  Western Bank

Banca I t a l i a n a   D i s c o n t o

, 

Rome

の依頼に基づいて,横浜正金銀行を通じ神戸市

O t t a v i a n o  Z u l i a n i

宛に信用状を発行し,横浜正金銀行は次の文言によって

これを名宛人に通知した。

"We beg  t o   i n f o r m   you  t h a t   we have  r e c e i v e d   a c a b l e   from  o u r   London O f f i c e   s t a t i n g   t h e   London S o u t h  Western Bank h a s  opened a  c o n f i r m e d   c r e d i t   f o r   a / c   o f   Banca I t a l i a n a   D i s c o n t o

, 

Rome

, 

i n   y o u r   f a v o u r  o r   t h e   f i r m   i n d i c a t e d  by you and we s h a l l   b e   p l e a s e d   t o   pay  you f r a n c s   1 2

3 0 0

000.‑ a t   o u r   t e l e g r a p h i c   b u y i n g   r a t e   on  P a r i s   a ‑ g a i n s t  y o u r  r e c e i p t s   and f u l l   s e t s   o f  S h i p p i n g  documents f o r   3 0 0 0   t o n s   B r a s s  g u a r a n t e e d  60% Copper 40% Z i n c   a t   f r a n c s   4

.1

0  p e r  k i l o g r a m ‑ me

, 

c o s t  b o t h  i n s u r a n c e   and  f r e i g h t   t o   G e n o a .   The  Shipment  w i l l   commence i n   J  u l y   and minimum monthly s h i p m e n t  w i l l  be  5 0 0   t o n s . "  

信用状名宛人

Z u l i a n i

は,信用状条件に基づいて神戸市ラザラ, ホ ン ベ ール商会を名宛人に指名し,同商会は信用状条件に従って数次の

Shipment

を行なった。ところが

1 9 1 7

年(大正

6

年)

1 2

月に通知銀行は信用状取消の通 知があったことを理由に同月以後の積荷に対し支払いを行なわないこととし たため,名宛人は通知銀行に対して損害賠償の訴えを起したものである。

2 .  

原告の主張

( 1 )

,信用状名宛人

Z u l i a n i

は信用状発行依頼人

Banca I t a l i a n a  D i s c o n t o  

の代理人であって,原告商会はこれと信用状面記哉の約款に基づいて売買契

(7)

346 

約を締結したもので,この契約成立と同時に信用状名宛人は原告商会に対し 信用状条件に合致した船積書類と引換えに支払いをなすことを被告銀行に通 達し,原告商会は被告銀行の代金支払引受の利益を受ける意思を被告銀行に 表示した。

(2)  すなわち被告銀行は

Z u l i a n i

を買主とみなして,同人に対し重畳的に 代金支払の義務を引受けたのであって,原告商会が

Z u l i a n i

の指定で同人と 同ーの地位に立ったうえは被告銀行はまた原告に対し(重畳的)債務者であ ると云い得る。

(3)  ところが,大正612月中に信用状条件の書類を被告銀行に提出した が,銀行はその支払いを拒絶した。したがって原告商会は買主および被告銀 行に対し期間を定めてその代金の支払いを要求し,もし支払いが行なわれない 場合には原告は貨物を処分し,このことから生ずる一切の損害賠償を要求する 旨予告したが,買主および被告銀行はその支払いを行なわないため, 12月以 降積出分に対する売買契約を解除し,不履行によって生じた損害の賠償を請 求するものである

3 .  

被告銀行の抗弁

( 1 )  

信用状発行銀行から被告銀行ロンドン支庖経由信用状発行の旨の電報 を受けたので,慣習にしたがって名宛人にこの旨を通告し,その末尾に一般 得意先への挨拶として信用状条件にしたがって一定金額を支払う旨付記した が,これは被告が単独で、その金額支払義務を負担するとしたものではない。

(2)  また信用状名宛人が信用状条件にしたがい原告商会を受信者(筆者註

・受益者)と指定したのて1 この旨発行銀行に伝えたがこれは単なる通知で あって金銭支払いを応諾したことはない。

(3) 十二月中,原告会社の契約不履行を理由とし,発行銀行は当該信用状 を取消す旨被告銀行へ通知した。被告銀行は原告の依頼に基づいて好意をも って数回にわたり発行銀行と交渉を行ない信用状の取消を撤回して貰うよう 努力を重ねたが発行銀行の同意を得るに至らなかった。

(4),すなわち,被告銀行は単なる仲継銀行の地位に過ぎず信用状が開設さ

(8)

れた旨を通達しただけであり,その通知した約款に基づいて名宛人と取引を するかどうかは別個の問題であり,被告は名宛人に対し信用状通知書の文面 からは何らの義務を負うものではない。

(5)  かりに,右通知書により一定金額の支払いを約諾したものとしても,

それは信用状が有効であることを前提条件とするものであって,信用状が取 消された場合はその理由の当否を問うことなく支払いを拒絶することが出来 るとするのが一般の商慣習である。

(6),被告銀行の金円支払いは単に買主の為に金融の便益を与うるのみであ り,その性質上売主に代金を支払うものではないことは明らかであり, した がって原告の主張である重畳的債務引受があったということは無意義で、ある。

故に被告銀行が支払わないからただちに売買代金の不履行であるとして契約 を解除しようとする原告の主張もまた無意義で、ある。

(7)  但し,原告の意思が被告負担の代金支払義務の不履行を理由としたも のではなく,直接買主の代金支払義務不履行を原因として契約解除を主張す るものであれば,それはまったく被告銀行にとっては関係のないことである。

(8)  かりに被告銀行が重畳的債務の引受をなしたとしても,この引受契約 によって生じる債務は売買契約の内容を構成するものではないから,この引 受義務の不履行がただちに売買契約を解除する理由とはならず,同時に当事 者間で売買契約解除の事実があったとしても,これによって生じた損害は,

前記引受義務者である被告銀行が負担すべき性質のものではない。

4 .  

裁判所の判断

原告・被告の主張に対し裁判所は原告の請求を棄却し被告の勝訴とした。

判決理由の要旨は次のとおりである。

( 1 )

・被告銀行は・・・・・・…

andwe s h a l l  b e  p l e a s e d  t o   pay y o u . . . . . . . . .

云 々 を 一般得意先に対する営業上の辞令であって,名宛人と取引を行なうかどうか はすべて被告銀行の任意で、あると主張する。しかしながら本部(裁判所民事

00

部の意味・筆者詰)においてはこれを一片の辞令に過ぎないものとは理 解し難く,被告銀行は信用状記載の約款により前記金額の支払いを約束した

(9)

3 4 8  

ものと理解するのが相当である。

その理由は, もし被告が主張するような信用状名宛人に対してなんら金銭 の支払いを約束したものでないとすれば,発行銀行が信用状を取消すかどう かは,被告銀行の利益には影響しない筈であるから,被告銀行としてその取 消しに対しなんらの異議をさしはさむ必要はないといっ理屈にならざるを得 ない。

ところが被告銀行は,前記発行銀行が信用状名宛人のために信用を開始し たことを知り,受信者に対して所定の金額を支払つことを約束し債務を負担 したことから,発行銀行の理由のない取消しは被告に損害を与える結果を生 ずるため,被告は自己の利益を保護するために,信用状取消しは日本所在の 関係者の承認がなければ被告銀行として認めることができない旨を発行銀行 に通知したものと判断せざるを得ない。

被告は,この取消しに対する抗議はすべて原告に対する好意から発した行 為であると主張するが,このよっに認める証左は何もない。

(2)  被告は,かりに金銭支払いの債務を負ったと仮定してもこれは信用状の 存続を前提条件としたものであって,その取消しがあった以上被告は当然に 支払いを拒絶することができるといっ商慣習があると抗弁するが,被告はこ のような商慣習の存在について,なんら立証をせず,信用状面記載の文言か らはその債務がこのょっな条件付債務であると認めることができないからこ の抗弁は失当である。

(3)  原告は,被告銀行が買主の代金支払義務を重畳的に引受けたものである と主張するが,思つに重畳的債務の引受は引受人が直接に債権者と,または 債権者のために債務者と,債務者が従来負担する債務と同一内容の債務を負 担することを契約することによって成立するものであるから,このような引 受があるとするためには引受人が債務者の従来負担したものと同一内容の債 務を負担する意思が表示される必要がある。ところが当該信用状によれば被 告銀行は名宛人に対し単に或条件のもとに一定の金額を支払う旨を結束した のみで,買主が売主である原告に対して負担する代金支払義務を引受けたも のであるという趣旨はいささかも認められない。すなはち被告は抽象的にー

(10)

定の金額の支払いを約束したに過ぎない。

( 4 )  

したがって,この支払約束によって相手方に対し債務を負担したとして も,この債務と売買代金とは別個のものとして存在する独立のものである。

( 5 )  

よって原告が信用状原名宛人からこれを承継し被告に対してその履行を 求め,被告がこれに応じなかったからといって原告はこれと別個の関係に立 つ売買契約を解除するいわれはない。

(6)  また買主の義務不履行を原因として売買契約を解除したからといって,

売買契約にはなんら関係がない被告に対し損害倍償を請求することができる わけがないことから原告の請求はこの点において失当であることは明らかで ある。

裁判所はこのように判断を下したわけであるが,本件において原告,被告 がともに売買契約と信用状を別個のものと見ないで混同したことに対して,

裁判所が両者を明確に区別したことは卓見と評されている。本邦初の信用状 関係訴訟においてこのよつな判断が下されたことは,此時期以前の段階にお いて英米各国において多発していた此種の紛争のわが国での発生を未然に防 止することができたといっ点で高く評価されたわけである。

本件訴訟が提起された

1 9 1 7

年(大正

6

年)

1 2

月という時期は第一次大戦の 末期であり(翌年11月大戦終結),本取引の商品需要も下降期にさしかかっ ていたと推察されることから,信用状発行依頼人は信用状取消しの挙に出た ということも十分考えられる。本件信用状が

CONFIRMEDCREDIT

であ ることから被告としては関係者の承認なくしては取消不能の筈と発行銀行に 申し出たものであろう。しかしながらこのことは争点となっておらず, した がって裁判所も判断を下していない。

CONFIRMEDCREDIT

に つ い て も 種々の解釈が行なわれていた時代であった。

次に訴訟事件ではないが,船荷証券関係の事例を紹介しておく。

1 9 2 1

年(大正

1 0

年)

1

2 6

日,横浜正金銀行リヨン支屈は同行頭取席に対

(11)

350 

し次のとおり発電した。

「輸出手形の付属書類である船荷証券については,つねに

" S h i p p e d "

式を 要求してきたが他銀行には一般に同一態度をとるものがないため成功しない。

よって,振出人から念書を徴して

" R e c e i v e d "

式 を 受 入 れ て い る 実 情 に つ き,内地各屈の指図書発行にあたり該条件に注意せしめられたいd

同月 2

1 5

日,同行ニューヨーク支屈は頭取席に対し次の旨を発電した。

「ニューヨークの本邦船会社支屈においては

R e c e i v e dB  /L

のみを発行し,

特に出荷人から依頼があったときに限り

"onboard e n d o r s e m e n t "

をする 方針とのことゆえ,

S h i p p e d  B/L

を必要条件とする信用状・指図書には変更 手続をとるよう内地各庖へ通知されたいり

これらの要請電報を受けた頭取席はこれが前年

1 2

月の大谷居長との取決め めに相違するものとして日本郵船本社と交渉したが同社はこれに応ぜず,頭 取席は225日ニューヨーク支屈に対し次のように発電した。

「日本郵船本社は,

S h i p p e d

式の発行は出来がたい由である。ついては,今 後信用状発行に際し, 日本郵船条件承認書を依頼人から徴収するよう内地各 居へ指図した。」

これにより一応

R e c e i v e dB/L

の問題に終止符が打たれている。

このあと間もなく

3

月にはいってから,それまで

S h i p p e d

式を固守し てきたイギリスにおいても,枢密顧問室

Ph i 1 1 i m o r e

卿 が

i R e c e i v e d B/L 

は有効で、ある」との新判決を下したと報じられた。その判決論旨は次の如く であった。

「本来

" R e c e i v e dB i 1 1   o f  L a d i n g "

とはそそ

R e c e i v e di n   a p p a r e n t  good o r ‑ d e r  and c o n d i t i o n  f r o m . . .

H

. . f o rs h i p m e n t  t o . . .

…"の文言形式を称する

ものであり,その有効性につき,極東方面において過去

1 0

年以上にわたり,

とかくの議論が絶えない。なかでも商業上においては上掲文言によるものを

" B i l l   o f   Lading"

と称しているけれども,それは

1 8 8 5

年の

"The B i 1 1   o f   Lading Act"

にいうところの

" B i l lo f   L a d i n g ' ¥

すなわち,貨物の船積を 完了したことを意味する引

s h i p p e d "

のみを認める本来の

" B i l lo f   L a d i n g "  

ではなししたがって,

1 8 6 1

年の

"TheAdmiralty C o u r t  Act"

にもとづく

(12)

" B i l l  o f  L a d i n g "

とすることは出来ないとの主張が行なわれた。これにより,

前年

9

月に銀行間においては,

R e c e i v e d

式を

B/L

とは認めないことに取 決めたが,

R e c e i v e d  B/L

は有効で、ある。その理由は,①商業証券について は,かくまで、狭義に解する必要はなく,新旧両形式とも有効と解してよいこ と,②全貨物が一括引渡され,かつ,積込まれる場合には,旧式の

s h i p p e d

文言が依然として適当な語法であるけれども,

" R e c e i v e d  f o r  s h i p m e n t "

文言は,通常埠頭に横付けの船舶目当の貨物が数回に分割して積込まれると いう,実際上の取扱いに照らして適切な表現であること,③当事者双方がこ れを

B/L

と呼称するについて合意していることなどにある。よって,いわ ゆる

R e c e i v e dB/L

1 8 6 1

年海事裁判所条例にいうところの

B/L

であ d

この新判例を機会に,横浜正金銀行ロンドン支庖は同行頭取席に対し

3月 26

日付電報で次の申入れを行なった。

「今後とくに電報のない限り,信用状に対する当!古取扱いの手形買取は,船 荷証券には

" R e c e i v e d

ぺ保険証券には

" C e n t i f i c a t e "

でも受入れ,別段に 念書を徴しないこととする。至急承認ありたい。従来当行独得の取扱振りに 対しては苦情続発し,得意先を失なうおそれがあるり

頭取席はこれに承認を与えたが,上記判例に照らして当然の措置であった。

しかしながら実際上は社外船の場合において

" S h i p p e d "

としながら当該 船に積載せず他の船で輸送した事例があり,ましてその

" R e c e i v e dB/L" 

に至っては,銀行にとって危険極まるものに変りはなかった。そこで,社外

B/L

についての取扱いを統一しようという議がおこり,横浜正金銀行と しては,差当りその発行者・船主などを桁査したつえで採否を決めることに

(お)

した由である。

船荷証券についてもこのように解釈論争が行なわれ,信用状面での使用文 言について,発行銀行の立場,買取銀行の立場,あるいは船会社は船会社の 立場から杭々の申出がなされていた時代であった。

(13)

3 5 2  

2

節 信用状統一規則制定への動き

1 9 2 0

年代において,前述したアメリカと同様の動きは, ドイツ,フランス,

イタリーをはじめヨーロッパ各国においても行なわれ,それぞ、れの国ごとに 商業信用状制度統一方式が採択されることとなった。

まずアメリカであるが輸出業者の代表者はアメリカの銀行が発行する商業 信用状は,形式,内容ともに個々バラバラであり統一性がなくこの為無用の 混乱を招いているとして標準方式を定めて欲しいと要請した。

The C o n s o l i d a t e d  S t e e l  C o r p .

の会計課長

MarkM. M i c h a e l

氏は

1 9 2 0

年開催の連邦外国貿易会議

(TheN a t i o n a l  F o r e i g n  Trade C o n v e n t i o n )  

に商業信用状統一試案を提出した。これが銀行商業信用会議

(TheB a n k e r s '   Commercial C r e d i t  C o n f e r e n c e )

で審議され,信用状の統一的な取扱いな

らびに用語の解釈を定めた規約

" R e g u l a t i o h sA f f e c t i n g  Export Commer‑

c i a l   C r e d i t s "

として採用となり実務上或程度の統ーがなされた。その後さ らに努力が重ねられ

AmericanA c c e p t a n c e  C o u n c i l

は 解 釈 の 精 密 化 と 信 用状関係標準方式を定め,

1 9 2 2

7

1

日を期限として全国一斉にこれを採 用するよう銀行業者に怒沼しアメリカ国内の統一化にほぼ成功した。

次にドイツであるが,ベルリンの銀行業者が組織する印税組合間で統一運 動が進められ,

1 9 2 3

1

1

DasR e g u l a t i v  d e s  A k k r e d i t i v g e s c h a f t s

採択され,

1 9 3 0

年にこれを改正している。

フランスでもノfリおよび地方銀行組合によって,

1 9 2 4

年から

C l a u s e s   e t   m o d a l i t e s   a p p l i c a b l e s  aux o u v e r t u r e  de c r e d i t s   document a i r e s

が採用 された。

イタリー,スウェーデン,オーストリア,ノルウェーの諸国においても同

(9) 

様の状態であった。

伊藤和雄氏は

1 9 2 4

年(大正

1 3

年)に出版された荷為替信用状論の緒論

7

に次のように述べておられる。(原文のまま)

国際貿易発達ニ伴ヒ各国間二信用状関係漸次頻繁タラムトスル今日猶信用

(14)

状解緯取扱ニ世界的統一ヲ欠クハ国際取引発展上ニ遺憾少ナカラズ,彼ノ燭 伊二図政府ノ創意ニ係ル海牙(オランダのへーグ・筆者注)ノ手形法統一合 議(千九百十年)海商法統一ニ関スル

York‑AntwerpR u l e s  

(千八百九十年) 及船荷詮券統一ヲ目的トセル

"HagueR u l e s  o f   1 9 2 1 "

ノ如キハ何レモ信用 状取扱統一ニ間接ノ援助ヲ為スモノト看得可キモ更ニ一歩ヲ進ミ信用状統一 ノミヲ目的トスル世界的合議ヲ開催シ其形式解拝ヲ統一シ車純化スルノ必要

( 10) 

緊急ナルヲ感ゼズンバアラズ。"

第 3

信用状統一規則の創設

‑1933

信用状取引の国際的統ーを要望する動きが高まり遂に国際商業会議所が信 用状関係業務の調査研究を実施することとなった。数年の研究と併行しなが

1 9 2 6

3

5

日に委員会を開催してアメリカ委員が提出した各国の商業信 用状規則の統一勧告案を審議した。

1 9 2 6

1 0

2 0

日開催の国際商業会議所会 議もアメリカ委員の見解を支持し常設委員会に商業信用状研究を委託するに 至った。

前述の伊藤和雄氏の主張されたことが2年後に国際商業会議所の場におい て活動をはじめたことになる。

以後

7

年間にわたり討議が重ねられ,

1 9 3 3

6

3

日国際商業会議所ウィ ーン会議において信用状統一規則が採択されるに至った。

正式名称は「商業荷為替信用状に関する統一規則及び慣例J

( U n i f o r m  c u s ‑

(1]) 

toms and p r a c t i c e  f o r  c o m m e r c i a l  d o c u m e n t a r y  c r e d i t )

である。

本節では伊深孝平氏のフランス語原文からの統訳文により

1 9 3 3

年規則を概 観のこととする。

商業信用状に関する統一規則及び'慣例

W J

( a )  

以下の各条中に包含せられたる規定,定義,解釈その他は,商業信用状 に関する統一的規準と了解せらるべきものとす。しかしてこれ等は,当事者

(15)

3 5 4  

間にあらかじめ確定せられたるこれに具る明示の協定の存せざる場合および かかる相抵触すべき協定が信用状または商業信用状の文言および条件より生 ぜざる場合にかぎり適用せらるべきものとす。

( b )  

要求せらるべき証券に関する指図は,完全かつ桔密なることを要す。た だ し か く の 如 き 指 図 な し か っ 証 券 を 特 に 定 む る こ と な し こ れ が 決 定 を 銀 行に一任したるときは,銀行は本規則

C

章に準拠すべし。専門用語の使用は,

その解釈の相異より生ずる紛治をかもさざらしむることを同じく必要とす。

( C )  

信用状受益者は,いかなる場合に於ても,銀行間に存する法律関係また は依頼者(買主)の銀行と依頼者間の法律関係を援用することを得ず。

総則

( a )

項において本規則は国際的統一基準であるべきことを明示している。

しかしながら当事者向の特約ある場合,あるいは信用状文言上別段の協定が あることが明らかな場合まで拘束するものではないとしている。

( b )

項は買主が要求する証券類について完全かつ精密なる指図が必要で、あると 原則を示し,指図を行なわず銀行へ一任したときは銀行は本規則

C

章による こととしている。さらに専門用語の使用について紛争防止の心得を必要とす る旨明言している。

( c )

項は信用状受益者の権利について述べたもので発行銀行と受益者間以外の 当事者間の法律関係を援用してはならないとしている。信用状の性質を明示

したものである。

信用状の性質

第 1 信用状の開設は,その性質上,その基礎をなし,かっこれについて は銀行の全く関知せざるところの契約とは別個独立の取引を構成するものと

信用状開設によって生ずる法律関係は,買主,売主の間の売買契約とは別 個独立のものであることを明らかにした条項である。前述したわが国におけ る信用状関係のはじめての判決で神戸地方裁判所が示した判断がこの条項に

(16)

反映したものと云い得ょう。もちろんイギリス,アメリカ, ドイ、ソ,フラン スの各国において同趣旨の判例,国内規則があったという実情が後循となっ たことは云つまでもない。

2 信用条は次のいづれかの形式となすことを得。

( a )  

取消可能の信用状または

( b )  

取消不能の信用状

本条項で従来多く使用されていた信用状の呼び名を,取消可能と取消不能 の二種類に統ーしたものである。

従来のものを例示すれば次のとおりであった。

( 1 )   I r r e v o c a b l e

で発行銀行の引受文句がある信用状 (2) 

l r r e v o c a b l e

でその引受文句がない信用状

( 3 )   R e v o c a b l e

で引受文句がある信用状 (4) 

R e v o c a b l e

で引受文句がない信用状

このなかで(1)はいわゆる

C o n f i r m e dC r e d i t

(4)

UnconfirmedC r e d i t  

と称されていた。 (2)は極めて稀で(3)は第一次大戦中しばしば使用された由で

(11) 

ある。

3条

特に取消不能と明示せられざるかぎり,すべての信用状は取消可能 のものとす。有効期間の指定あるときといえどもまた同じ。

取消不能と明示していない信用状はすべて取消可能で、あると規定したもの である。本来取消可能信用状は信用状としての機能を呆し得ないとするのが 原則であるが,

1 9 3 3

年当時は国際金融状態が極めて不安定で、あったことから 依頼者(買主),発行銀行に対する配慮が先行し取消可能信用状の条項を第

3条第4条に盛りこんだ模様である。

4条

取消可能の信用状は,銀行,受益者間に法律上の義務を生ぜしめざ るものとす。この結果,この院の信用状は,銀行に於て受益者に対する通知

(17)

3 5 6  

義務さへも負うことなくして,変更または取消すことを得。この極の信用状 が取引先または支庖に対して通達せられたるときは,その変更または取消は,

そこに於て信用状の利用せらるべき該取引先または該支屈が,変更または取 消の通知を受領したる時よりその効力を生ず。

本条後段は,信用状の変更,取消を知らずに信用状金額の支払をなす被通 知者の利益を擁護するため設けられたものである。

5

取消不能の信用状は,受益者に対して一定の信用を開設する旨の銀 行の確定的約定とす。この極の信用状は,利害関係人全員の同意を得るにあ

らざれば,これを変更または取消すことを得ず。

本条において,統一規則は信用状制度のあるべき姿を│判明に打出している。

即ち取消不能信用状は発行銀行の確定的約定である旨と,その変更・取消に ついては利害関係人全員の同意を要すとしたことである。信用状学説中の契 約の申込説が主張した確定的約定を生じさせることができないという法律構 成を明確に排除したものである。

6

取消不能の信用状は,他の銀行を介してこれを受益者に通知するこ とを得るも,この取次銀行が単純に受益者に通知すべきことのみを委託せら れたるときは, この通知をなすも自ら何らの保証義務をも負うことなし。

単に通知のみを委託された取次(通知)銀行は何ら保証義務を負うもので はないと明言している。

7

取 次 銀 行 は , 信 用 状 開 設 銀 行 よ り 取 消 不 能 信 用 状 の 認 確 (con

f i r m e r )

をなすべき旨を要請せらるることあるべし。この場合に於ては取次 銀行は,確認をなしたる日以後受益者に対して自ら責任を負うべきものとす。

(18)

アメリカでは,発行銀行が取消不能の債務を負う

i r r e v o c a b l e   c r e d i t

取次銀行が受益者に対して確定的債務を負う

c o n f i r m e dc r e d i t

を明確に区 分していたが,この慣行を本条に明文化したものである。本条に基づく信用 状は,いわゆる

" C o n f i r m e dl r r e v o c a b l e  C r e d i t "

となり受益者にとっては 極めて望ましい信用状と云えよう。

8

取消不能の信用状の開設,その通知またはその確認をなすべきこと の依頼中に,有効期間の指定なきときは,信用状は単なる通知として受益者 に通達せらるべしこの通知により取引先または取次銀行に何等の責任をも 生ずることなし。信用状は取引先または取次銀行が,その有効期間に関する 補充的指定を受けたるときは,これを取消不能のものとして開設もしくは通 知しまたは確認せらるることを得。

本条は,有効期間の定めがない取消不能信用状は単なる通知に過ぎない。

有効期間が補充されてはじめて取消不能信用状としての効力を備えるとし ている。 ドイ、ソ,フランスの国内規則は取消不能信用状には有効期間を定め ることが規定されておりこの精神を受けたものとされている。

9

取消不能の信用状が

l e t t e rd e   c r e d i t   commerciale 

(商業信用状) の形式にて開設せられたるときは,この信用状は取消不能の信用状を開設し たることの通知と理解すべく,かつ,この証券は受益者ならぴに善意の手形 所持人たる者に対する,この信用状証券所定の約款ならびに条件に基づき,

かつ,これを遵守して振出したる手形を支払つべき旨の発行銀行の路定的約 束を構成するものとす。この証券は他の銀行により,その銀行をして自らは 何等の保証をもなすことなく,あるいはこれを取次がしめ,あるいはこれを 通知せしむることを得。

電信により取引先に右の如き信用状を発行したることを通知すべき旨を委 託したる場合に於て, もし該証券自体を流通せしめんとするときは,発行銀 行はその信用状原本をその取引先に送付することを要す。しからざる場合に

(19)

358 

於ては発行銀行はこれにより生じ得べき一切の結果につき責任を負う。

~j 付信用状 (crédit

d o c u m e n t a i r e )

に関する他の総ての規定は商業信用

( l al e t t r e   de c r e d i t   c o m m e r c i a l e )

にも同じく適用せらるべし。

本条は当時貿易業界に於て広く知られていた商業信用状の効力について明 記したものである。取消不能商業信用状の発行銀行は,信用状条件を遵守し て振出された手形に対しては確実に支払う旨の約束を受益者および善意の手 形所持人に対して行なうというのが根幹である。

次に取次銀行についても,従来紛争の極になった例もあり,単なる取次で あって受益者に対し何等の債務をも負うものではないことを明確にしている。

さらに電信通知の場合にも触れ,発行銀行は信用状原本を使用させる意思 を有する場合は,電信通知を委託するとともに当該信用状原本自体を取引先 に送付することを求め,もしこれを行なわなかったがために生ずるであろう 一切の結果について責任を負うとしている。航空便が未発達の当時に於て,

信用状原本の郵送は船便によらざるを得ず相当の日数がかかることから,電 信通知状と信用状原本の条件不一致,あるいは両者を別個の信用状と誤判断 する等の不

i

JllJの事態を未然に防止しようとする意図が窺われる。

1933

年創設の信用状統一規則のっち

A

信用状の性質としてこのように

1

条から第

9

条まで明記されている。

次に

B‑

責 任 の章を設け発行銀行,取次銀行,依頼人等の注意義務の程 度,負担すべき責任内容等について規定している。(第

1 0

条 第1

4

条)

さらに

c‑

証券,の章においては,銀行が受益者から受領し得る証券の種 類内容について依頼者から指定されない場合に限定して詳述している。小項 目は「船荷証券Jr鉄道荷物受領証,内水運送荷物受領証,運送状複本, 便物受領証Jr保 険Jr送状Jrその他の証券」で構成されている。(第

1 5

3 4

条)

ついで

D

一文言の解釈 の章においては

" E n v i r o n "

約」もしくはこれ と類似の文言,分割発送,期限または効力,呈示,延期,時日文言について

(20)

規定している。(第3

5

条 第4

8

条)

最後に

E ‑

譲 渡 として第4

9

条を設けている。

1 9 3 3

年に創設された信用状統一規則は,概略上述の如き内容のものであっ たが,各国における採択状況は期待に比して多くはなく約4

0

カ国と云われて いる。アメリカは採択したものの留保条件付であり,アメリカの信用状慣習 を示す参照規定が同規則に添付される状況であった。イギリスは採択しなか ったうえ,さらに自国の慣行と異なる点について留保を行なった。よって当 時イギリスの慣行にしたがっていたスターリング・ボンド地域の諸国(日本

もこれに含まれていた。)はイギリスに追随したのは当然で、あった。

主要国の銀行で採択したのは欧州大陸諸国であり,欧州大陸的ルールであ

( 13) 

ったと云われている。

4

1951

年規則一第

1

次 改 訂

2

次大戦後

1C C

委員会においてアメリカ委員から,ヨーロッパの国際 商取引に占める荷為替信用状の比率が急上昇したことを背景にして,現存す る慣行およびアメリカの「参照規程」を勘案した

1 9 3 3

年規則改定意見が委員 会に提出された。

これを受けて

1C C

委員会が第一次改訂案を作成し,

1 9 5 1

年のリスボンに おける

1C C第1 3

回総会にかけてその採択決議となり,

1  C C Brochure  No. 1 5 1

として

1 9 5 2

1

1日から実施された。

この

1 9 5 1

年規則は7

7

の国および属領地により採択され

( 1 9 6 2

3月 1日現

)

1 9 3 3

年創設規則の約4

0

か国に比し

2

倍弱に増加した。増加した国の主な るものはイギリス連邦中カナダほか数か国,共産図のソ連ほか数か国,第2 次大戦後増加した米ドル国の各国等でわが国もこの

1 9 5 1

年規則を採択した。

しかしながらイギリスは,自国に信用状の判例がありかつロンドン慣行を 持つことから,採択決議への投票を差控えるという挙に出たため,

1 9 5 1

年 規 則も不採択という結果に終った。

(21)

360 

ここにおいて,

1 9 5 1

年規則は, ヨーロッパ大陸諸国と米ドル圏諸国に適用 範囲を限定され,世界の信用状取引は信用状統一規則グループとロンドン慣 行グループの二つに大別されたことから信用状取引の担当者が解釈や取扱い

( J4) 

について慎重な配慮を要求される時代となった。

今回の政訂趣旨については,

1 9 5 1

年規則前文に簡潔に記されているのでこ こに紹介しておく。

改訂商業荷為替信用状に関する統一規則および慣例 国際商業会議所第

1 3

回会議において可決

(1

9 5 1

6

月11‑16 リスボンにて)

商業荷為替信用状に関する統一規則および慣例は,

1 9 3 3

年国際商業会議所 第七回会議により規範として定められ

( B r o c h u r eN  o .   8 2 )

, し か も 多 数 の 国の正式な採用をみた。

しかしながらその後現在に至るまで,多くの新しい発展があって,若干の 新規な慣例,あるいは旧慣例の変型が現われてきた。

よって国際商業会議所はここに改訂文

( B r o c h u r eNo. 1 5 1 )  

を作成した のである。

この統一規則および慣例の改訂の目的は,現在における慣例を規範化する ことにある。

国際商業会議所は,この改訂文が採用されるよう,これを各国の銀行協会 へ送り,かつできるだけ統一的に

1 9 5 2

1

1

日より,これが各銀行により

( 15) 

実施されることを勧告する。

5

1 9 6 2

年 規 則 一 第 二 次 改 訂

信用状統一規則の第二次改訂版である

1 9 6 2

年規則において,従来の信用状 統一規則とロンドン慣行との統一化に成功し,これによって信用状統一規則 が世界的に認められたルール

( u n i v e r s a l l ya c c e p t e d  r u l e s )

となったと云わ れている。

(22)

当初の改訂方針は,

1 9 5 1

年規則の基本方針を踏襲しつつ不備と考えられる 点を改訂するという考え方であったが,従来の非協力ぶりを非難されたイギ リスがロンドン慣行を盛りこんだ改訂案を提出するという事態が生じ,これ をもとに精力的な作業が続けられ,遂に記念すべき最終案が

1 9 6 2

1 1

月の

I CC

理事会の承認するところとなり,

1 9 6 3

4

月メキシコにおける

1C  C

1 9

回総会において確認,同年

7

1

日から実施された。イギリスおよびイギ リス連邦の諸国の採択により世界的なルールとなり,

1 9 7 1

3

月現在で

1 7 5

( J6) 

の国・属領地のほとんどの銀行がこれを採択するに至った。

1 9 3 3

年創設以来,第

2

次大戦の

6

年間を含む

3 0

年の歳月を閲してここによ うやく世界的ルールの座を確保したわけである。

なお,従来,原文はフランス語であったが,今回の改訂を機に英語が原文 となったことも特筆に値しよう。

さらに注目すべきことは,国連国際商取引法委員会

( U n i t e d   N a t i o n s   Commission on I n t e r n a t i o n a l  Trade Law

, 

UNCITRAL)

がこの統一規則 に高評価を与え,これを検討対象としようとしたことがあげられる。

もう一点付け加えれば,

1 9 6 2

年規則の採択時点から「信用状統一規則適用 文言」が関係書類に挿入されるよつになったことである。

1 9 5 1

年規則の実施 後この文言を挿入した信用状が散見された由であるが,小峯 登氏は各国の 銀行がこの文言を挿入する慣行を樹立すべきことを強調してこられた。幸い にして

1C  C

本部が

1 9 6 2

年規則実施の機会を捉え,次の適用文言をそれぞれ の書類に挿入することを要請しかっこの表現以外は使用しないようとの勧告 を行なった。

" S u b j e c t  t o   Uniform Customs and P r a c t i c e  f o r   Documentary  C r e d i t s   ( 1 9 6 2   R e v i s i o n )

, 

I n t e r n a t i o n a l   Chamber  o f   Commerce

, 

B r o c h u r e   N  o .   2 2 2 . "  

この文言を挿入する書状は

(1)信用状発行依頼人により書きこまれる諸フォーム

( 2 )

受益者あての信用状の通知書

(3)信用状の発行,確認または通知を行なうよう依頼する仲介銀行あての諸書

(23)

3 6 2  

とされた。

信用状統一規則適用文言挿入が広く行なわれるよつになったことは,銀行 聞のルールである信用状統一規則が貿易業者をも拘束することとなり,この ことは貿易業者にとっても信用状統一規則についての知識と理解が必要不可 欠となったことを意味するものである。

1 9 5 1

年規則において,銀行聞の世界的ルールとなった信用状統一規則は,

1962

年規則においては貿易業者をも包含した世界的ルールとなったと云い得

第 6 節 1 9 7 4 年規則一第三次改訂

第三次改訂の特色は「コンテナ船荷証券と複合運送書類の規定の導入」お よび「銀行間関係と銀行・商取引者関係の明確化」にあったと云われている。

前者は輸送革新に対応した規程の導入であり,後者は,信用状発行依頼人→

発行銀行→仲介銀行→受益者といっ当事者関係をより明確にしたものである。

若干の具体例をあげょっ。

( 1 )   C a b l e  C r e d i t

の電文と

C o n f i r m a t i o n

電信開設の信用状の場合,電信通知状を原本とする場合とコンブアメーシ ヨンを原本とする場合の取扱いを明らかにしたこと。

(2)条件不一致の場合の書類の取扱規程に違反した場合の発行銀行に対する罰 則の明確化

(3) 

L/G Nego

等は発行銀行とは無関係で、あることの明示 (4)条件一致証明作成・送付の負担軽減措置

(5)受理可能の船荷証券として

" S h o r tForm B/L"

が一定の条件のもとに許 容となり,

" P o r t "

または

" C u s t o d y "B  /L

が削除された。

(6)有効期限は取消可能信用状でも必要不可欠となった。(従来は取消不能信 用状のみ必要不可欠とされていた。)

( 7 )

書類発行後の呈示期間の明示が義務ずけられ,明示なき場合は

2 1

日間とさ

(24)

れた。呈示期間後に呈示された書類は一律に拒絶される。

なお,統一規則全体の構成は

1 9 6 2

年規則のそれと不変で、あり,総則と定義,

1

章信用状の形式と通知,第

2

章義務と責任,第

3

章書類,第

4

章雑則,

( 1

)   7

5

章譲渡, となっていた。

1974

年規則は,

1 9 7 4

年1

2

月の

1C C

理事会で採択され,

1 9 7 5

1 0

月から

" P u b l i c a t i o n  No. 2 9 0 "

として実施された。

7

1 9 8 3

年規則一第四次改訂

目頭に述べた

1 9 8 3

年規則は,信用状統一規則の第四次改訂にあたり,

1984 

1 0

1日から実施されているが,過去1 0

年間の社会・経済状況の変化に対 応した改訂がなされている。コンテナ輸送・複合運送が先進国聞のみならず 全世界的規模に拡大してきたことや電子通信技術の進展による情報伝達手段 の多様性,文書作成手段の開発等により実情にマッチした規則の改訂がなさ れたわけである。

改訂事項は多岐にわたるが主要事項を列挙すれば次のとおりとなる。

①可能な範囲におけるスタンドパイ信用状への適用

②信用状の外観上の真正性についての通知銀行のチェック義務の明示

③後日払信用状の規定の新設

④確認要請に対する通知義務の明示

⑤複写器等による書類受理の明文化

⑥信用状発行日以前に発行された書類の受理

⑦積換えの定義の新設

お わ り に

大戦間期間における貿易関係紛争事件の多発に伴ない各国裁判所はその処 理に忙殺されながら商業信用状関係の原理の確立に多大の寄与をなした。

参照

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①:固定ボルト確認(4本) ②:濃縮器加熱バスケット吊下げ ③:吊下げ後、固定ボルト取外し(4本)

髙原 一嘉 福島復興本社代表兼福島本部 長兼原子力・立地本部副本部長 橘田 昌哉 新潟本社代表兼新潟本部長兼.