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企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相

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経営と経済第79巻第1号1999年6月

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相

高岡伸行

Abstract

There are two different paradigms in viewing corporate environ- mental behavior : the first is Corporate Environmentalism, and the se- cond is Sustainable Development. The purpose of this paper is to con- sider how to deconstruct the perspectives of environmental issues in business administration and management theories, with showing the varieties of perspectives in terms of corporate environmental behavior in these two paradigms.

First, we consider transformation of corporate environmental

management style in the frame of Corporate Environmentalism from the viewpoint of eco-efficiency as the update style.

In addition, eco-efficiency is also one of a style of sustainability concept in business fields asserted by WBCSD (World Business Council for Sustainable Development ). There are two alternative styles in the frame of Sustainable Development : social-sustainability and ecological-sustainability. We focus on these styles to consider how to deconstruct the perspectives of environmental issues.

目次

Ⅰ.はじめに

Ⅱ.環境マネジメントスタイルの変容

1)汚染管理スタイル

(2)

i i

 )予防管理スタイル iii)環境戦略スタイル

iv)エコエフィシエンシースタイル III. 企業システムとサステナビリティー概念

1.環境マネジメントとサステナピリティー概念 (1)  構造的・制度的側面

(2)  サステナブル・デベロップメントの概念規定と合意 2.企業のSDへのコミット形態・認識モードを照射する3つの準

拠枠

)エコエフィシエンシースタイル:補足と再考 ii)ソーシャルサステナピリティースタイル iii)エコロジカルサステナピリティースタイル N. 環境問題の経営学的理解の脱構築にむけて:まとめと展望

.はじめに

「企業がグリーンになっている

J.

企業の環境対策の盛んぶりを示す表現 である.企業の環境問題への取り組みは,もはや当たり前になっている.例 えばスプレー製品や冷蔵庫の触媒に,オゾン層を破壊するフロンガスを使用 しないというのはお馴染みだし,環境にやさしい車,ハイブリットカーの販 売は,世界の自動車産業に衝撃を与えた.それが,日本企業の環境技術の卓 越性の一端を誇示するとともに,環境問題への取り組みの本気ぶりを知らし めたのは記憶に新しい.

環境にやさしい製品の開発だけではない.製造工程で排出される廃棄物を

削減し,リサイクルしたり,また別の製品の原料や部品として活用できるよ

うに工夫したりして,最終的に工場で発生するゴミをゼロにしようとする試

みもある.いわゆるくゼロエミッション〉構想である.それには当然,生産

工程の最初から廃棄物の発生量やエネルギーの使用量をより少なくなるよう

(3)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相 89 

に,製品や生産プロセスのデザインを再構築しなければならない(カブラニ パウリ編著

1996

参照). 

今,世界中の企業が,原料の選定・調達一製造‑使用‑廃棄に至るまで,

経営活動の全ての段階で環境に心を配り,できるだけ環境への負担の少ない,

つまり環境パフォーマンスの良い製品づくりとそのための経営システムの構 築に取り組んでいる.規模や業種にかかわりなく,こうした企業の経営プロ セス全体の中で環境にやさしくあろうとする企業環境行動はくコーポレート

・グリーニング〉と言われる.

こうした企業環境行動の傾向は,環境への配慮を経営システム全体に統合 する環境マネジメントのあり方を規定したく環境マネジメント制度〉の台頭 をきっけに,さらに加速化された.高まる環境問題への社会的関心,環境に やさしい製品やそれを可能にする企業への変革を求める社会的な批判や期 待,そして環境マネジメント制度への適合が個別企業の環境対策の優劣を判 断する材料になり,環境対策の企業間における比較検討が以前より可能にな ったこともあり,ビジネスコミュニティー全体において,もはや環境問題へ のコミットは企業にとって単なる制約ではなく,競争上の優位の獲得や新た な市場開拓やビジネスチャンスに直結するものとして,戦略的観点から捉え

られるようになった.

確かに,環境への配慮、を経営システムに統合し,環境効率を高めるという 観点や手法は,前向きな問題として,企業や経営学においてもかなり考慮さ れるようになってきた.しかし,そこでは,

I

いかに環境問題に取り組むか」

ということよりも,いかに環境対策や資源の利用可能性の効率を高めるかと いうことに焦点があてられている.こうした考え方の企業環境行動は,企業 環境主義のパラダイムに基づいている.このパラダイムにおける問題設定で は ,

I

いかに環境問題に取り組むか」ということが,

I

環境効率を高めること」

という設問にすりかわり,暗黙の内に両者が同一視されている.そこでは後

者が企業や経営学の課題としてあまりにも安易に自明化しているとは言えな

(4)

いだろうか.もちろん,後者も前者にとって不可欠な要素ではある.しかし,

そうした設問のたて方に終始していれば,環境マネジメント制度の台頭をも たらした社会のうねりやその意味,そしてその中で環境問題に対崎して企業

という存在を根底から再考するという視点は看過されてしまう.

ここで再度問い直さなければならないのは,企業環境行動を構造づける社 会的なコンテクストの変容との兼ね合いを考慮に入れつつ,環境問題に対峠 した場合の企業の社会的役割をより広範な視点から捉え直すことではないだ ろうか.

その際,重要になるのがサステナフル・デベロップメント(持続可能な発 展:以下

SD

と表記)もしくはサステナビリティー概念である.

SD

は多く の環境マネジメント制度の基本目標として掲げられており,環境問題に対峠

しての企業システムのあり方を考える際の重要な拠り所となっている.つま り ,

SD

概念は環境問題にコミットする企業のあり方を考える際の,もう一 つのパラダイムであると言える.

本稿は企業環境主義とサステナブル・デベロップメントという

2

つの企業 環境行動のパラダイムの関係構造の考察から,経営学がどのように環境問題 を捉えてきたのか/捉えて行く必要があるのかを鳥敵的に考えることを課題 とする.

まず次節では,企業の環境問題へのコミットスタンスがどのように変容し てきたのかを,環境マネジメントスタイルの変遷の考察から整理する.具体 的には,く汚染管理>,く予防管理>,く環境戦略>,そしてくエコエフィシエン シー〉という

4

つのスタイルに分類・整理し,それらの特徴を示し,議論の たたき台とする.この環境マネジメントスタイルの変遷は,基本的に,企業 環境主義パラダイムの次元での変容であり,経営学における環境問題の捉え 方,環境問題にコミットする際の企業のあり方などに関する一般的なパース ペクティブを暗意している.

そして 3節では,サステナブル・デベロップメントという概念の経営学に

(5)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相

91 

おける位置づけられ方や合意を,暫定的なものではあるが,くエコエフィシ エンシー),くソーシャルサステナビリティー),くエコロジカルサステナピリ ティー〉という

3

つの準拠枠の整理から考える.

I I .

環境マネジメン卜スタイルの変遷

企業が環境問題を意識化し,環境マネジメントを実施するのには,企業を 取りまく社会環境の変動が多分に関係している.こうした点を照射しようと する企業環境行動の研究は7

0

年代初頭から数多く行われてきた.企業は基本 的に社会との関係を触媒にして,環境問題や自然環境とのかかわりを意識す るという構図である

CG1adwin1977

, 

1992

,高岡

1996

等参照). 

そして,社会的コンテクストの変動との相互作用から,環境マネジメント を通じた企業の環境問題へのコミット・スタンスも緩やかながら変化してき ている.企業の環境問題へのコミットスタンスの推移は,歴史的経緯をたど る形では多くの研究が行われて来た

CSchotFischer 1993; 613

, 

Franke1  1998; Chap.  2

参照).)Greenoe

t al.(1992)

は,歴史的な観点から

80

年代後 半頃までは大多数の企業において環境対策はコスト増の要因として厄介視さ れており,体系的‑組織的な環境マネジメントは皆無に等しかったと指摘し ている.

こうした歴史的な観点での環境マネジメントのあり方の変容を捉えるポイ ントは,①企業が技術的なアプローチに依拠した環境マネジメントに終始し ているのかどうか,②環境要因を戦略的観点から捉えているかどうか,そし て①規制遵守を目的としているか,それを超えた自主的な取り組みを行って いるかどうかなどが分岐点とされている.

しかし,歴史的な経緯を辿る形では,確かに全体的な流れを把握するのに

は適しているが,具体的にどのように企業が環境問題を捉え,何を企業にと

っての環境問題と認識し,どのように環境マネジメントの主要課題を設定し

(6)

てきたのかが,明確にならない.

この点を把握する絶好の手がかりが,くクリーニング技術〉とくクリーン 技術〉という括りで捉えられる際の環境マネジメントにおける焦点の違いに 潜んでいる.どちらも企業の環境対策には欠かせない環境技術(クリーナー 技術と呼ばれる)ではありながら,前者は,発生した汚染や廃棄物の処理・

管理を目的とした環境技術を,後者は汚染や廃棄物そのものの発生をこれま でよりも抑制・削減したり,エネルギー使用量・投入量の効率化・削減化(省 エネ技術)

リサイクルや代替物質の開発などに寄与する環境技術を形容し ている.

クリーニング技術の環境配慮、の焦点は,発生した汚染などの処理というこ とからも,プロセスの遅延段階や最終段階に向けられており,治療的である.

例えば硫黄酸化物の脱硫装置などのように,最終段階で一括して処理するよ うな発想であり,この手の環境技術はくエンド・オブ・パイプ〉テクノロジー と称される.

一方のクリーン技術は,発生そのものを抑制,削減することから,環境配 慮、はプロセスの初期段階に向けられ,かっプロセス全体に渡り,しかも設計 段階から考慮される場合もあり,予防的アプローチである.しかも残留した 廃棄物などを再原料化することをも考慮する点で,循環型とも言える.

この相違が示唆するのは,単に環境配慮、の焦点が環境マネジメントプロセ スの前段階にあるか,後段階にあるかだけではない.この焦点の差異には環 境マネジメントに対する考え方における重大な転換が潜んでいる.そのポイ ントは,環境問題へのコミットをビジネスと無関係な補足的(時には余分な) 行為と捉えるか,ビジネスの本筋と関係づけて捉えるかというところにある.

しかも,ビジネスプロセスの中で考慮するとしても,く環境問題へのコミッ

ト〉とくビジネス〉を二律背反なものとして捉えるかどうかというところに

も重要な意味がある(いわゆる環境と経済のトレードオフ).両者は相いれ

ないトレードオフ関係にあるという前提から環境マネジメントのあり方を考

(7)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相 93 

える場合と,少なくともいかに両立させるかという問題設定からそれを考え る場合とでは,企業における環境問題の位置づけや対応に重大な違いが生じ る:ただし,ここで留意しなければならないのは,環境問題を考慮するとい うことと自然環境を考慮するということは必ずしも同義ではないというこ と,そして企業の環境保護(保全)活動,環境パフォーマンスの改善,そし て環境(自然環境)の配慮という括りで考慮される

3

つの表現のニュアンス

も完全に同義ではない, ということである.

こうした点を重視して,以下では環境マネジメントスタイルをく汚染管理

(pollution controO 

>,く予防管理

(pollutionprevention) 

>,く環境戦略

(en vironmei1tal  strategies) 

>,くエコ・エフィシエンシー

(eco

efficiency)

> の

4

段階に分類して,各スタイルにおける環境マネジメントの考え方を整理して みよう.

i  )汚染管理スタイル

まずは,ぐ汚染管理〉スタイルと言える環境マネジメントである.このス タイルの環境マネジメントの最大の課題は,汚染の管理に伴う環境コストの 効率的管理,もしくは抑制にある.環境配慮、の焦点は後段階にあり,しかも,

汚染の排出量を抑制するというのではなく,生産工程の末端で処理する,す なわちクリーニング思考に終始している.汚染管理装置や技術の導入が主に なる

(Korfiatiset a

l .  

1994

参照). 

環境コストの規定は時代背景や行為者の目的設定によってきわめて流動的 であるが(園部

1998

412)

,ここで考慮される環境コストはもっぱら,環 境関連規制の遵守に伴う支出となる.たとえば汚染除去・浄化の装置の設置

・運営・管理費やそれに伴う追加的な人件費,ペナルティーや訴訟に関する 支出などである.排出された汚染を処理・浄化し,規制を遵守することが企 業の環境保護活動と括られるのである.

ここでの企業環境行動は,事業活動と連動した行為として認識されている

(8)

とは言いがたい.たとえば,企業が初歩的な社会貢献として行う植林事業な どと位置づけとしては大差はないと言えるのかもしれない.しかも,環境問 題へのコミットとビジネスを二律背反的に捉えている.環境規制の基準を媒 介にして,環境要因を私的コストと社会的便益のトレードオフ関係の中で捉 えているからである.環境基準が厳格になると環境の質は向上するという社 会的便益は高まるが,そのためには追加的な支出を要し,それによる私的コ ストの上昇が価格上昇をもたらし,それによって競争力が低下するという理 屈である.

しかもここでは,ビジネスプロセスは動かせない固定的なものと捉えられ ている.末端で汚染を処理するだけなので,余分な支出を強いられるという 認識が働いているのである.すなわち,環境コストは収益に貢献しない原価

としてしか捉えられない傾向が強い.

i i

  )予防管理スタイル

汚染管理スタイルの管理対象が,発生した汚染の処理であり,課題はそれ を規定した規制の遵守コストであり,管理の焦点となる段階は開発・生産プ ロセスの外にあったのは,汚染物質になんの価値も示唆も見いだしていない からではないか,というところから環境マネジメントを考えるのが,予防管 理の基本的な特徴である.

このスタイルの基本モデルとして頻繁に引用されるのが,

3M

3P(Pol

lution Prevention Pay

, 

'75

年)や

3Pplus('89)

,それにダウの

WRAP (Waste Reduction Always Pays

, 

'86

年)である.それらは,汚染の発生は 製造工程に無駄があったり,資源が効率的に活用されていない証拠である,

という認識の基で,汚染が発生するその現場で改善を講じ,生産工程全体に

渡り徹底的に無駄を排除することで,汚染や排出物を抑制し,収益に貢献し

ない付加的な支出を節約することから利益を確保するというのが,このスタ

イルの初期における最も基本な考え方である

(Royston1979

等参照)

(9)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相 95 

単に規制遵守を行うだけで,積極的な環境対策を講じないために発生する 環境コストには,内部損失,つまり資源の浪費や廃棄物処理のコストと外部 損失,すなわち環境の修繕費や罰金,訴訟費などの

2

つがある.この二つの コストと事前に対策を講じることで節約できるコストを比較し,節約の価値 があるという判断の下に実施されるのが予防管理である(ババーリアニス マート

1994;90

参照). 

ここでは,いわゆる入手可能最善技術の設置などが具体策となるため,投 資額が明瞭で投資効果が把握しやすいという背景もあるが,環境コストとし ての支出は,収益に反映しない原価というニュアンスは弱まり,収益に貢献 する費用,もしくは投資という位置づけに発展していると言える.こうした 比較を可能にする会計処理の前提として

TQEM(Total Quality Environmen tal Management)

が用いられる

(Bringer

Benforado1994

参照)

予防管理スタイルは,事前対策のコストと対策を講じない場合の規制遵守 コストの比較から出発しており,基本的には環境コストの管理が環境マネジ メントの課題である点では汚染管理スタイルの発展型と言える.しかし,環 境問題へのコミットと事業活動を弱いながらもリンクさせ,環境要因をビジ ネスプロセスに組み込もうとする考え方がある.そして,単なる環境コスト の管理という側面ではなく,生産工程やもっと広義にビジネスシステム全体 における未活用の資源の利用や廃棄物の再資源化という側面に焦点を移すこ とによって,以下の

2

つのスタイルの発展の萌芽となった.

i i i ) 環境戦略スタイル

前の

2

つのスタイルがもっぱら内部志向であったのに対して,環境戦略ス タイルの環境マネジメントは外部志向,すなわち市場との連動を重視した考 え方に特徴がある.そしてこのスタイルの環境マネジメントの主要課題は競 争優位の獲得にある

(Bhargavaet a

l .  

1996

, 

Hart 1997

等参照). 

環境マネジメントを通じて競争優位を獲得しようとする戦略ポジションに

(10)

は,図

1

のように

4

つの方向性が考えられる.

[1]

は基本的に予防管理スタ イルの徹底によるコストリーダーシップ戦略である.単なる節約を競争優位 の獲得につなげようとする意識が強い. [1I]は「環境にやさしい」をセール スポイントにした差別化戦略を指す.

このスタイルでは,方向性はそれぞれ異なるとはいえ,環境パフォーマン スの改善という要素が重要な鍵となる.環境へのやさしさを競争優位にする 場合,それを担保する環境パフォーマンスの改善度が明示されなければなら ないからである.しかも環境パフォーマンスの改善を第一課題にした場合,

コストの問題は二次的になる.単に環境パフォーマンスを測定,把握し,改 善するだけでなく,環境パフォーマンスと財務的パフォーマンスとの連動,

効果との兼ね合いが重要になるからである.

プロセス

クリーン・

資源の効率性 テクノロジー

[m] 

ダメージ

[I] 

優 位 性

の最小化揺りかごから墓場ま│グリーン・コンシュ の最大化 でマネジメント l  ーマーリズム

[ r r ]  

[N] 

製品

図競争優位を達成するための戦略ポジション

Source : Bhargava et al. [1996] p.20から転載

たとえば,汚染管理や予防管理においては,環境コストは主に一般管理費 等の期間原価として処理される.しかし, [ 1 I ] や[ i l l ]では,既存の期間規定 や環境コストの間接費としての処理では,財務的パフォーマンスとリンクし た環境パフォーマンスは把握されない. [1I]では,ライフサイクルアプロー チが必然、的に必要となり,関係する対象は一企業に止まらない.ここでは,

ライフサイクルアセスメントやコスティングが重要な環境マネジメントツー

ルになる.

(11)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相 97 

[ I I I  ]では,コストや廃棄・排出物の発生を過程毎に把握し,環境コストを 過程や活動毎に割賦し,資源の浪費の原因を過程毎に把握し,コスト・ベネ フイカルな効率的利用の改善が講じられる.ここでは

ABCCActivity Based  Costing)

ABM(Activity Based Management)

が環境マネジメントに応 用される.

そして最終的にはコスト・資源効率の改善のための管理対象は,開発・設 計段階の再考から考慮されるようになる.製品の環境パフォーマンスの向上 や環境コストの削減のために,原価企画活動の中で環境要因が考慮されるの である.ここでは,

DfE (Design for Environment)

が環境マネジメントツー ルとして重要になる

(Epstein1996

, 

Fiksel 1996

,園部

1998;4866

参照). 

環境戦略スタイルでは,企業にとって環境問題へのコミットとは環境パフ ォーマンスの改善であり,それによる競争優位の確保が環境マネジメントの 課題となる.環境配慮はクリーン思考でビジネスプロセスにビルトインされ ている.それに伴って,環境マネジメントツールも高度化している.という

より既存のマネジメントツールが環境配慮のために応用されている.もはや ここでは環境要因は制約でもなく,それをいかに既存のビジネスプロセスに 統合するか,という意識から環境マネジメントが考えられている.

iv)

エコエフィシエンシースタイル

既存のマネジメントツールを環境マネジメントに応用し,それを体系的な 枠組みの中で駆使して,製品やプロセス,そしてビジネスシステム全体で資 源の生産性を向上させるという観点から,環境問題にコミットしようとする のが,くエコ・エフィシエンシー〉スタイルである.

エコ・エフィシエンシーは次節で取り上げるサステナビリティー概念との かかわりが深い.その辺りは後段で詳しく触れるとして,ここでは,エコ・

エフィシエンシースタイルの環境マネジメントの特徴や考え方をまとめてみ

よう.

(12)

このスタイルの基本的なコンセプトはエコロジーとエコノミーの融合にあ り,環境マネジメントの課題として重視されるのが,環境パフォーマンスの く継続的改善〉である.くエコ〉は自然資源,生態系の資源供給能力,汚染 浄化能力,エコシステムの維持・回復能力などのエコロジー資源と資本,人 的資源などのエコノミー資源双方の生産性向上,効率的利用を意味している

(DeSimone Popoff 1997; 2).

したがって,エコ・エフィシエンシーの基 本的原理の説明として,

I

より少ない資源投入量で,より多くを産出するこ と,スループットでの廃棄物・廃熱の熱源や原料への再資源化を可能にする こと」と趣旨を単純化されるが,投下資本効率や労働生産性との兼ね合いが 加味されなければ,エコ・エフィシエンシーのコンセプトは意味をなさない

ことに留意する必要がある.

この資源効率・生産性という考え方を実現するための重要な要因がイノ ベーションである.ポータ一二ヴァン・デル・リンデ(1

994)

は資源生産性

という考え方には,品質管理のあり方の転換に見られたような,思考パター ンにおけるブレークスルーが必要であると主張する.予防管理の考えのよう に,廃棄物や排出物の発生を工程における無駄と捉え,それを発生箇所もし くは前工程で改善する,しかも,コストを基準に環境改善策を考えるのでは なく,環境パフォーマンスの改善に伴うコスト増を相殺するようなイノベー ションをひねりだすことが必要であると.それにはビジネスプロセスを固定 的に捉えるのではなく,目的にそって柔軟に再構築し,システムコストを低 減する必要があると.すなわち,ここでのイノベーションは,一定の環境パ フォーマンスの製品をこれまでよりも安いコストで産出するのを可能にする ような適応的なイノベーションではなく,創造的なイノベーションがエコ・

エフィシエンシーの成功の鍵となる.いかに少ないコストで環境パフォーマ

ンスを向上させるかという問題設定が前提であり,そこでは,向上した環境

パフォーマンスを既存の水準に戻したとしても,既存の水準値を達成するの

にかかっていたコストが以前よりさがるというようなことが不可能であるよ

(13)

企業環境行動におけるサステナピリティー概念の位相 99 

うなイノベーションを達成しなければならないのである.

もう一つの発想の転換としては,モノやサービスの利用価値(サービス性) を強調する点があげられよう

(WBCSDNEWS 1996

, 

DeSimone

Popoff 1997; 4651

参照).モノやサービスそのものを提供するのではなく,それら が提供する価値そのものに焦点を置くことで,それの提供の仕方,作り方が 大きくかわり,考慮対象がかわるという.たとえば化学会社が化学物質の販 売ではなしその利用価値を販売していると発想を転換した場合,その製品 を安全に利用・処理するという知識を提供することに力を入れるようになる と言ったことが指摘される.またライフ・スタイル全体の環境パフォーマン スを改善しようとした場合,製品を販売するのではなく,リースするという 発想に立てば,ビジネスの行い方はかわるだろうし,今まで気づかなかった 改善やイノベーションの余地が見えてくるというのである.

エコ・エフィシエンシースタイルの環境マネジメントでは,具体的に以下 の点が目標として考慮される.①モノ,サービスの物質及びエネルギー集約 度(キ投入量)の削減,②有害物質の拡散及び使用頻度の削減,③製品・材 料のリサイクル可能性や耐久性の向上,④再生可能資源の活用の最大化や代 用品の開発,⑤モノ,サービスの利用密度の向上(キ多機能化・汎用性の向 上)である

(DeSimone

Popoff1997; 5678

参照).こうした目標を体系的 に実施するための枠組みとして環境マネジメントシステムが構築されるので ある.環境マネジメントシステムは基本的に個別企業を単位に設定されるが,

プロダクトスチュワードシップやインダストリアル・エコロジーシステムに よって企業間関係におよぶビジネスシステム全体の資源効率の向上による環 境パフォーマンスの改善が考慮対象となる.

エコ・エフィシエンシーの支持者は,資源効率や再原料化・脱物質化によ

って排出物をゼロにするという目標は非常に野心的であり,それは現実とし

ては不可能かもしれないが,目標を常に高めに設定することが,イノベーシ

ョンへのチャレンジ精神と環境改善への取り組みを持続させるインセンティ

(14)

ブになると指摘する

CFuss1er

James1996

, 

DeSimone

Popoff1997; 12 3

参照). 

このエコ・エフィシエンシーはその考え方の特徴として,ゼロエミッショ ンという概念と同様,くエコロジーとエコノミーの融合〉が謡われるように,

環境要因とビジネスをいかに両立させるか,という問題設定から環境マネジ メントが考えられているのである.

さて,汚染管理,予防管理,環境戦略,そしてエコエフィシエンシーとい う各スタイルを,環境問題へのコミットとビジネスを分離的に捉えているか,

包含的に捉えているか,また二律背反的に捉えているか,両者をいかに両立 させるかという問題設定から捉えているのかを拠り所にして,環境マネジメ ントスタイルの変容を考察してきた.これは経営学における環境問題の捉え 方,環境マネジメントのあり方の捉え方を端的に示しているが,そこには環 境問題に対峠した際の企業のあり方についての見解が暗意されている.

次節では,こうした点をサステナブル・デベロップメントという概念との かかわりから考えてみよう.それは,より広範な視点から企業の環境マネジ メントのあり方や環境問題に対峠した際の企業のあり方に関する見解を考察 するとともに,環境マネジメントを通じた企業の環境問題へのコミットがど のような効果をもっているのか,その整合性や各環境マネジメントの質を評 価することになる.

I I I .

企業システムとサステナビリティー概念

1.環境マネジメン卜とサステナビリティー概念 ( 1 )   構造的・制度的側面

企業環境行動において

SD

概念が指針となった背景には,アジエンダ2

1

環境マネジメント制度の存在をあげることができる.

(15)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相

101 

アジェンダ

21

は ,

1992

年の地球サミットにおいて,グローパルパートナー シップという理念の下に採択された

SD

実現のための行動計画である(環境 庁・外務省監訳

1997

,国連広報センター

1997

参照).そこでは

SD

達成に 向けて,産業界をはじめ社会経済活動にかかわるあらゆる主体の役割やコミ ットのあり方が誕われている.

アジェンダ

21

の制定には,世界的なリーディングカンパニーの

CEO

から 構成された

WBCSDCw orld Business Council for Sustainable Development

,  当時は

BCSD)

が産業界の代表として参画している.それ以後も,アジェ ンダ

21

の合意を推進し,産業界への

SD

概念の浸透とそれへのコミットの促 進に尽力している.その一環が近年最も注目されており,汎用性のある環境 マネジメント制度の一つである

IS014000

シリーズのたち上げである:

一方,環境マネジメント制度は,

ICC CInternational Chamber of Com‑

merce)

や経団連のような経済団体の制定した自主的ルールである企業環境 憲章やレスポンシブルケアーのような業界団体の制定した行動基準というレ ベルから,まさにグランドデザインとして企業の環境マネジメントのあり方 やルールを一定範囲で体系的に規定する機能を担うものまでに発展してきて いる.

その代表が

EMAS(EU Eco‑Management 

Audit Scheme)

ISO 14000

シリーズ,それにそれらとは発展経緯や性質は若干異なるが

CERES

原則や

SMASCSustainability Management Audit Scheme)

である.

環境マネジメント制度は,多様な組織のネットワークに基づく環境パート ナーシップによって形成されている.企業環境行動の制度やルールを規定し ようとする環境パートナーシップは無数に上るが

(SustainAbility

Ltd. and  Tomorrow 1994

参照),主要な環境マネジメント制度の発展経緯,制定機関 の特徴や関係を概略化したのが,図

2

と表

l

である.

これらの制度が環境マネジメントの目的や基本課題として掲げているの

が ,

SD

の実現への企業のコミットである.すなわち,企業の環境問題への

(16)

コミットの必須課題としての

SD

の実現へのコミットという図式は,アジェ ンダ

21

によって政治的ルールとして,そして環境マネジメント制度によって ビジネスルールとして,ある種社会的にフォーマット化,プログラム化され ているのである.しかもこの双方に

WBCSD

が,というよりエコエフィシ

ζ二二二二〉制度 ・一一一一+対抗関係 一一一一+闘技的影響

E二二二二コ\tiJ 定機関ーーー"ーー+間抜的 ~J聖子 無印 その他の制度・行動基準等を制定している機関 ():制定及び設立年 日 行動基準及び基準案(宣言)発行年

2:主要環境マネジメント制度の鳥廠図

表 環 境 マ ネ ジ メ ン ト 制 度 及 び 制 定 機 関 の 特 徴

環境マネ

ジメン卜

IS014001  EMAS  S

1AS CERES

原則 制度名

各環境マ

EMS

の体系的な手順 命令一管理型,環境パ 環 境 パ フ ォ ー マ ン ス + 経営陣の環境マネジメ ネジメン 仕様の国際規格.環境 フォーマンスの継続的 社会的リレーションの ントへのコミットや生 卜制度の パフォーマンスの達成 改善,一般情報公開の 改善項目の環境マネジ 物園の保護,廃物の発 特徴 目標値や監査範囲の自 義務,サイトベース, メントシステムへの合 生抑制やエネルギ一保 己決定,

TQEM

志向の 利害関係者の事後的参 有,利害関係者の基準 全,環境情報の一般公 システムの継続的改善, 加. 設定への参画.

EU

社 開など

10

原則から構成,

第三者承認と情報の部 会憲章の重視傾向.

NPO

主 導 の ル ー ル 規

分的公開. 定.

制定機関

ISO

( l

4000TC)  EU  EPE (European Par

CERES  tners for Environment) 

制定機関

SAGE

の協議を引き継

EU

5

次環境行動計 欧 州 最 大 規 模 の セ ク 全米最大の異種組織混 の特徴及 いだテクニカルコミッ 画

(TOWARDSUS‑

ター横断的環境パート 合型の社会的責任投資 び制度と ティーを

ISO

内に制定

AIN ABILITY)

に基 ナーシップ.

EPE

の企 団体.

のかかわ し,始動.ビジネスコ づき

EU

加盟国の行政 業 メ ン バ ー の 要 件 は 企業との環境マネジメ り ミュニティーや先進国 的主導の下で制定.

ICC

の企業憲章又はレ ント協議のパックグラ

の影響が強い. スポシブルケアーの批 ンド的な役割を果たし

准. ている.

(17)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相 103 

エンシーの考え方が深く関わっている.

確かに,

IS014000

シリーズは,その他の環境マネジメント制度と異なり,

SD

へのコミットを環境マネジメントの必須課題として明言はしていない.

しかし,エコエフィシエンシーは

IS014000

シリーズの環境マネジメントシ ステムの基本原理になっている.後段に詳しくみるように,

WBCSD

はエ コエフィシエンシーを企業の最も適した

SD

へのコミットのあり方と位置づ けている.エコエフィシエンシースタイルは,企業にとって最も取り組み易 い

SD

概念へのコミット形態なのである.

しかし,一方でエコエフィシエンシーは企業環境主義のパラダイムであり,

それは

SD

とは合い入れないという捉え方がある.こうした点を指摘して,

Viederman (1996)

は,エコエフィシエンシーが

SD

の別名であるかのよう な誤解を産んでいるが,それは単なる撞着語法でしかないと批判している.

このように,ビジネスフィールドにおける

SD

概念の理解ーコミットは,

一様ではない.しかし,これが広範な視点からの環境マネジメントや企業の あり方に関する見解の考察を展開するポイントとなる.

そこでまず,

SD

概念そのものの内容と合意を検討し,ビジネスフィール ドにおけるその理解・コミットのあり方,そしてその合意をまとめてみよう.

( 2 )   サステナブル・デベロップメントの概念規定と合意

SD

の概念規定は多様であり,それに近似した概念は以前から存在するが (森田他

1992;1245)

,今日の

SD

概念規定の骨子で,体系的な政策的合意 をもったものとしては,

WCED (W orld Commission on Environment and  Development)

によって

1987

年の国連総会に提出された報告書,

['Our Com mon 

Future(邦題「地球の未来を守るために J)~ の規定であろう.そこでは,

SD

とは, 1"将来世代がかれらのニーズや要望を満たすための能力を損なう

ことなく,現代世代の能力を満たすような経済発展」のあり方と定義されて

いる

(WCED1987; 66

他).そしてそのために,資源の利用の仕方,投資・

(18)

技術開発の方向性,様々な組織を含めた社会制度のあり方など,社会システ ムを変革するためのビジョンを示している.

SD

が喚起しているのは,く自然環境の無秩序な利用や破壊),く貧困を産 み出す社会構造の放置),くあらゆる生命体ゃまだ生まれていない将来世代に 対する公共道徳義務〉を無視することが,健全な経済発展の根本的な制約要 因になるということに留意する必要がある,ということである

(Throop 1993 ; 647).

そして賢明な資源の利用と,それをある種担保する前提とし て,社会経済活動や社会制度における社会的公平性やヒューマニティーの実 現の必要性を訴えている

(WCED1987

参照).こうした基本的理念を継承

し,それを体系的に実践に移す枠組みこそが,アジェンダ

21

である.

WCED

やアジェンダ

21

をはじめ,様々な視点・立場から提起される

SD

概念には以下のような合意がある.それは,

SD

の実現には健全かっ持続可 能な社会経済システムを構築する必要があり,それには①経済の持続性,② 社会関係の持続性,そして①環境の持続性という考慮すべき 3つの側面があ るということである.しかし,その前提として,健全で持続可能な経済発展 にはまず,その限界要因として,②と①に特に留意する必要がある.それを 市場経済システムの中で実践するためには,④未来に対する責任や公共善に

経済の持続性

‑ 1 惨

社会関係の持続性 環境の持続性

3‑1 : D

の構成要素と様相

J

/  経済の持続性 ト

4

ベ 之

. : u   、

J

A

i

ー 一 ー 一 一 社会関係の持続性

¥

〉 、 与

、丸

、 て 入

¥L 

¥ 

環境の持続性 エコロジカルサステナビリティー

3‑2 

:企業の

SD

へのコミット側面と

3

つの準拠枠

3: SD概念の構成要素と様相

(19)

企業環境行動におけるサステナピリティー概念の位相 105 

対するコミットを引き受けることが不可欠で,それには高度な公共性を必要 とするというものである

(WCED1987

,森田他

1992

,環境庁・外務省監訳

1997

他参照). 

森田他(1

992;12532)

は,様々な論者の

SD

概念の定義において,②③

①のどれかに力点を置いた三者の関係性から

SD

を理解する傾向を指摘して いる.ビジネスフィールド

(WBCSD

のような経済団体や産業界,経営者,

それに経営学者など)でも,図

3 (3‑1)

のように④を中心に包含し,①

②③の 3つの側面から

SD

概念を理解する傾向がある.こうした点の一端を 諸論者の

SD

概念の定義から簡単にまとめたのが,表

2

である.

Barbier 

( 1

987 ;  103)  Stead Stead 

( 1

992;  167) 

ホーケン ( 1

995; 220

1 )  

Viederman 

( 1

994; 5) 

Shrivastava

Hart (

1

995 ;  155) 

2:ビジネスフォールドにおけるSD概念の一般的理解

「生物学的システムの目標(遺伝学的な多様性,回復力,生物学的な生産性),経済的システム の目標(基本的ニーズの充足,公正の向上,有益な財やサービスを消加すること),そして社会 的システムの目標(文化的多様性,制度的持続性,社会正義,参画)を同時に最大化すること」

「労働と経済的ジャスティスを充たすことを含めて,グットライフに不可欠な財やサービスを 人間に提供する可能性を維持すると同時にエコシステムを保持することを可能にすること」

「将来世代に提供される環境のキャパシティーを減じることなく,人間や商業の環境に対する 要求を満たし得る経済状態である.その経済状態は,われわれが今見ている以上のよりよい世 界を(後世)に残す,必要以上のモノを取り込まない,生命や環境を傷っけないように心がけ る,そしてもし傷つけたのなら,あなたが償いをする,というふうにも表現できる」

「天然資源,人的資源,人聞が創り出した資源,社会的資源,文化的資源,科学的資源等々あ らゆる資源を尊重し,それらを賢明に使用するコミュニティーのビジョンを作りだし,追求す る一つの参画のプロセスである.サステナピリティーは,あらゆる生命と生産物が依存するエ コロジカルシステムの完全状態を維持し,かつ,将来世代の人々が過去から提供されたものを 適切な方法で利用する賢明さと知性をもっていることを望みつつ,将来世代のビジョンに対す る責任を引き受けると同時に,できる限りにおいて,現在世代が高度な経済セキュリティーを 達成し,かっかれらのコミュニティーの統制において民主主義と人民の参画を実現しえるよう に努めること」

「地球資源の有限性,もろさを認識し,将来世代の資源の利用可能性をも考慮した,思慮深い 資源利用の下での経済活動で,生態学的に持続可能で社会的に公平な経済開発・発展のあり方 であり,人口安定化,食料問題,生態系の保全,経済・産業システムの再構築を要する変革の プロセスである」

2  .企業の

SD

へのコミッ卜形態・認識モードを照射する 3つの準拠枠

この 3側面にコミットすることが企業レベルにおける

SD

へのアプローチ

の具体的課題となるわけであるが,企業環境行動の実践レベルでは,く経済

的・財務的パフォーマンス日経済的繁栄),く社会的パフォーマンス日社会的

公平性),く環境パフォーマンス

ω

環境の質〉という目標に置き換えられる.

(20)

こうしたコミットはトリプルボトムラインアプローチと呼ばれる.この 3側 面もしくは3 つのパフォーマンスを同時に考慮して

SDにコミットしようと

する企業は,くサステェナブル・コーポレーション〉と言われる

CFrankel 1998

, 

Willums 1998;  2631

参照).)しかし,そこでは

3

側面が均等に重視さ れた企業環境行動になるわけではなく

3

側面もしくはトリプルボトムライ ンの各要素の優先順位や編成は異なっている.

こうした

3

側面のバリエーションとその合意を考慮して,企業の

SD

への コミットの形態やそれを基礎づける

SD

の認識モードを見てみよう.そのた めに

3

つの準拠枠を整理・設定する.それらはくエコ・エフィシエンシー),

くソーシャルサステナビリティー),そしてくエコロジカルサステナビリテ ィー〉である.それらは経済・社会関係・環境という 3つの持続可能性のど れか一つを起点にした

SD

へのコミットではなく,エコエフィシエンシーは 経済と環境の持続性を,ソーシャルサステナビリティーは社会関係と経済の 持続性を,エコロジカルサステナビリティーは社会関係と環境の持続性をそ れぞれ重視する底辺としている(図

3

2

参照). 

i  )エコ・エフィシエンシースタイル:補足と再考

まずはエコ・エフィシエンシーである.エコ・エフィシエンシーについて は,環境マネジメントスタイルのところで,環境問題へのコミット形態や考 え方を考察した.基本的に環境問題へのコミットと

SD

へのコミットは現在 のコンテクストでは,企業環境行動における意味としては同義である.しか し,ここでは

3

側面とのかかわりを重視し,エコ・エフィシエンシーの

SD

へのコミット形態と認識モードを検討してみる.

繰り返しになるが,エコ・エフィシエンシーというスタイルの規定や普及

に努めているのは羽

TBCSD

である.

WBCSDはエコ・エフィシエンシーを SDにコミットする企業環境行動として以下のように位置づけている.SD 

の実現へのコミットは産業界にとって,

I

われら共有の未来」を守る,

I

われ

(21)

企業環境行動におけるサステナビリティー概念の位相 107 

ら共有の事業

(OurCommon Enterprise) J

である,としている

(Schmied‑

heir1371994;68).)

ただ,

SDという概念の社会的ビジョンとしての合意の

望ましさと企業にとってできることの境界を再定義する必要があると指摘す る(シュミットハイニー他

1992;99).

そしてくできること),く共有の事業〉

としての

SD

へのビジネスレスポンスがエコ・エフィシエンシーという考え 方(スタイル)である.

WBCSD

はエコ・エフィシエンシーを以下のように定義している.

「資源の使用量や汚染を最小化すると同時に付加価値を増大するという企業 目標を,少なくとも算定された地球のキャリングキャパシティーに沿って,

企業活動の全ライフサイクルを通じて,環境負荷や資源使用量を劇的に削減 すると同時に人間のニーズを満たし生活の質を高める,競争によって値づけ された,財やサービスの普及・提供することによって,達成することJ(BCSD  NEWS 1994; 38, Desimone

Popoff1997; 47) 

WBCSD

の創設者で初代議長のシュミットハイニーは企業の

SD

へのコミ ットは,単なる事業活動とは分離した社会貢献活動のような類ではなく,

21 

世紀の企業の経営戦略の重要なテーマであり,企業の正統性を担保するのに 積極的に考慮すべき社会的役割であるとの認識を示している.これはエコロ ジーとエコノミーの統合の必要性を暗意しており,この両面をいかに深く,

速やかに統合できるかが

SD

の合意をどこまで実現できるかを決定するとい う(シュミットハイニー他

1992:vxiv

他).それにはもちろん社会経済シス テムの諸制度の変革との兼ね合いが必要であることも指摘されている.

要するに,エコエフィシエンシーが念頭に置いているコミット対象は,経

済の持続可能性と環境の持続可能性にある.これが考慮すべきトリプルボト

ムラインのトライアングルの底辺となる(図

3‑2

参照) .もっと正確に言え

ば経済の持続可能性への環境の持続可能性要因の統合である.それを可能に

する,もしくは両者をつなぐ触媒が,エコエフィシエンシーの本質的原理で

あるく投入資源の価値創造効率〉というく機能〉である.したがって,エコ

参照

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