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特別養護老人ホームにおける

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(1)

Chlamydia pneumoniae(C. pneumoniae)は 1989

年に 3 つめのクラミジア種として確認された新し い病原体である

1)

.欧米では全人口の 50% が感染 を受けており, 市中肺炎の約 10% を占めることが

判明し

2)

,さらに最近, 冠動脈疾患

3)

,気管支喘息

4)

との関連が示唆され,その臨床的意義は高い.欧 米では地域での流行状況の血清学的検討が大規模 に行われ

5)

,学校

6)

,軍隊

7)

,老人施設

8)

などの特殊 設備内での集団発生も確認されている.

わが国でも,血清疫学調査が行われ

9)

,学校

10)

, 家庭内

11)

での集団発生が確認された.しかし欧米 に比べて調査規模は小さく,報告事例数も少ない

特別養護老人ホームにおける Chlamydia pneumoniae 感染症 集団発生事例の実地臨床疫学的研究

―日本で初めて確認された特老での事例―

1)国立感染症研究所感染症情報センター実地疫学専門家養成コース(FETP),2)国立感染症研究所感染症情報センター,

3)国立感染症研究所ウイルス第 1 部リケッチア・クラミジア室,4)戸嶋医院,5)久留米大学医学部小児科,

6)済生会下関総合病院小児科,7)山口県長門健康福祉センター

田中 毅

1)2)

中島 一敏

1)2)

岸本 寿男

3)

高橋 央

2)

大山 卓昭

2)

戸嶋 裕徳

4)

津村 直幹

5)

尾内 一信

6)

三輪 茂之

7)

岡部 信彦

2)

(平成 13 年 5 月 18 日受付)

(平成 13 年 6 月 26 日受理)

Chlamydia pneumoniae(C. pneumoniae)は 1989 年に確認された高い浸淫率を持つ新しい病原体である.

1999 年 12 月末から 2000 年 3 月の間,山口県の特別養護老人ホームで入所者,職員の間に呼吸器感染症 の集団発生が見られ,C. pneumoniae感染症が疑われた.臨床疫学的研究の結果,入所者 59 名中,31 名(確定診断例 15 名),職員 41 名中,9 名(確定例 2 名)がC. pneumoniaeに感染したと判断され,特別 養護老人ホームでのC. pneumoniae集団発生事例が我が国で初めて確認された.入所者の感染者の内,15 名が重症化し,1 名が肺炎で死亡した.疫学的に入所者の発症,重症化の危険因子を検討したが,有意な 結果は得られなかった.一方,職員では入所者との接触が有意な発症の危険因子として認められ,C. pneu-

moniaeが人−人の間の飛沫感染で緩徐に拡大することが示された.今回の研究から,C. pneumoniae感染

症の診断と治療方法の確立と本感染症の認識を高める必要性が認められた.

〔感染症誌 75:876〜882,2001〕

別刷請求先:(〒162―8640)東京都新宿区戸山 1―23―1 国立感染症研究所感染症情報センター

田中 毅

Key words: Chlamydia pneumoniae, nursing home, respiratory infection, outbreak, epidemiology

(2)

ため,わが国における

C. pneumoniae

感染症の実 態は不明な点が多い.その中で山口県の特別養護 老人ホームで,1999 年から 2000 年にかけての集 団発生事例が 報 告 さ れ

12)

,我 々 は

C. pneumoniae

感染症の疫学を解明するため,当施設内において 実地疫学の立場から,研究と解析を行った.

対象と方法

1)対象施設,および対象集団

今回の疫学調査の対象になった特別養護老人 ホーム A(特老 A)は山口県北部の半農半漁の人 口 8,700 人の町に所在する.Fig. 1 に示すように平 屋建てで管理部門の奥に食堂,看護,介護職員の 詰め所が,その左右に長期入所者の居室があり,

一部屋に 1〜4 名が居住している. 長期入所者用の ベッドは 50 床で,41 名の職員が勤務している.特 老 A での事例の報告

12)

によると,1999 年の 12 月 頃から長期入所者と職員に呼吸器感染症の症状が 多発し,血清抗体の検査と培養により

C. pneumo- niae

感染症の集団発生が疑われた.

2)情報の入手方法

我々は 1999 年 12 月 1 日から 2000 年 4 月 30 日 の間を観察期間とした.この間,30 日間以上,入 所, 勤務していた入所者と職員を調査対象にした.

入所者については診療録,看護,介護記録を閲覧,

胸部レントゲン撮影を読影し,また職員には聴き 取りを行って,

C. pneumoniae

感染症に罹患し,重 症化すると想定される危険因子の情報を入手し た.また観察期間内に容態が変化し,基幹病院へ 転送された入所者に関しては,各病院で診療録閲 覧,レントゲン読影,主治医への聞き取りを行い,

同様の情報を収集した.また特老の職員全員に,

同様の情報と,入所者との接触状況,同一世帯の 家族の健康状態に関して聞き取りした.また特老 A の平面図,空調の配置図を入手した上で,施設 における入所者,職員の日常生活,業務を観察し た.

3)症例定義

特老 A では今回の事例以来,入所者,職員から 不定期に血清と咽頭拭い液を採取し,血清はヒタ ザイム C.ニューモニエ

TM 13)

により抗

C. pneumo- niae

IgG,IgA 抗体を測定し,拭い液から Roblin

らの方法

14)

により

C. pneumoniae

の培養分離を試 みていた.以上から調査期間内に咳,喘鳴,咽頭 痛,声嗄れ,鼻水,鼻づまりの内,いずれか一つ 以上の症状を示し,

C. pneumoniae

分離陽性,また は 血 清 抗 体 に よ る

C. pneumoniae

感 染 の 診 断 基 準

15)

を満たしたものを

C. pneumoniae

感染症確定 例,分離陰性で抗体の診断基準も満たさないもの を疑い例とする症例定義を規定して,症例の同定 を行った.

4)統計解析

症例を同定した上で前述の想定される危険因子 の統計解析を,EpiInfo ver. 6 を用いて行った.上 記の症例定義で同定された入所者の症例群に対し て,同時期に症例定義に合致しないもの,または 調査期間以降に発症した入所者を対照群とし,発 症の危険因子に関する症例対照研究を行った.一 方,入所者が

C. pneumoniae

感染に引き続いて肺

Fig. 1 Floor plan of the nursing home A:5-meter

scale was plotted into the figure and each round-dot represents bed for residents.

(3)

炎,気管支炎を合併したり,症状に対して酸素が 投与されたり,感染に起因して死亡した場合を,

本感染症による重症化と定義して,重症化しな かった症例との間で,後ろ向きコホート研究を 行った.また職員についても,症例以外の職員を 対照群にする,後ろ向きコホート研究を行った.

症例対照研究については,発症の危険因子に関し てオッズ比を,コホート研究では発症の危険因子 の相対危険率を解析した. 統計学的有意差は, オッ ズ比,相対危険率の 95% 信頼区間,

P

値により決 定した.

1)特老 A における

C. pneumoniae

感染症の発 症状況

特老 A では 1999 年 12 月 1 月から 2000 年 4 月 30 日の観察期間中,計 59 名の入所者の内,31 名

(発 症 率 53%)が 症 例 定 義 に 合 致 し た.特 老 A では血清は一回だけ採取され,ペアではなかった ため,血清の診断基準を満たすものはなく,確定 診断は全て分離陽性によった.

C. pneumoniae

感染 症 の 流 行 曲 線 を Fig. 2 に 示 す.1999 年 12 月 28 日から 2000 年 3 月 30 日の間に発症が見られ,15 例が確定例,16 例が疑い例だった.2 月中旬に発 症のピークが見られるが,比較的長期にわたるな だらかな曲線で,明確に一峰性とは判断し難かっ た.職員は 41 名中,2 例が確定例で,7 例が疑い

例だった.入所者の発症日確定がカルテ閲覧であ るのに対して,職員の発症日は自己申告によるた め特定困難で,流行曲線は作成できなかった.し かし,少なくとも以上の結果から,上記の時期に 特老 A において

C. pneumoniae

感染症の集団発生 が確認された.

2)入所者の症例と症状

症例 31 例の男女比は 8:23, 平均年齢は 86±8 才だった.症状としては咳が最も多く(24 例,77

%) ,他に発熱(37 度以上,20 例,65%) ,喘 鳴

(13 例,42%) が多く認められた症状だった.また 培養陽性だが調査期間中,全く無症状だったもの が 10 名見つかり無症候の感染者と思われた.

3)入所者にお け る

C. pneumoniae

感 染 症 の 重 症化

観察期間中,入所者のうち,疑い例 5 名,無症 状で培養陰性の非症例 4 名が死亡した.その内,

8 名は

C. pneumoniae

感染症以外の病因で死亡し ており,疑い例の 1 名のみが胸部レントゲン上,

異型肺炎像を呈した後,死亡しており,C. pneu-

moniae

肺炎による死亡と判断された.その他に肺

炎と診断されたもの 3 名,気管支炎と診断された もの 9 名,症状に対し酸素が投与されたものが 7 名で,延べ 15 名に

C. pneumoniae

感染症の重症化 が見られた.

4)入所者での

C. pneumoniae

感 染 症 発 症 の 危

Fig. 2 Epidemic curve ofC. pneumoniaeinfection cases in the nursing home A during

December 1, 1999 and April 30, 2000;the cases were plotted every 3 days. Black column(■)stands for confirmed case and brown column(□)for suspected case.

(4)

Table  1 Analysis  of  factors  inducing C. pneumoniae  infection  among  residents.

Control Case

P value 95%C.I.

O.R.

(−)

(+)

(−)

(+)

Factor

0.54  0.36―6.01 

1.47 11

10   9 12 Age(> 85)

0.26  0.41―17.04 2.35

18   3 15   6 Sex(Male)

Favorite place

0.61    0.24―183.57 3.24

20   1 18   3 Laundry

0.056   0.8―16.64

3.41 16

  5 10 11 Play room

0.19  0.54―11.46 2.35

16   5 12   9 Walk by oneself

0.095 0.67―2.87 

3.1    9 12   4 17 Eat by oneself Underlying disease

0.66 0.27―27.16 2.19

19   2 17   4 DM

1   0.07―15.13

1   19

  2 19   2 COPD

1   0.05―6.27 

0.64 18

  3 19   2 BA

0.21 0.53―9.15 

2.17 13

  8   9 12 HT

O.R. : odds ratio, 95%C.I. : 95% confidence interval, DM : diabetes mellitus, COPD :  chronic obstructive pulmonary disease, BA : bronchial asthma, HT : hypertension

Table 2 Analysis of factors inducing severe illness among residents.

P value 95%C.I.

Not  R.R.

severe Severe Not  severe Severe Disease

(−)

(+)

Factor

0.095 0.81―4.86 1.99

  9   4   7 11 Age(> 85)

0.43  0.71―2.93 1.44

13 10   3   5 Sex(Male)

ADL

0.08  0.16―1.27 0.45

  8 12   8   3 Walk by oneself

1   0.42―2.16 0.96

  4   4 12 11 Eat by oneself Underlying disease

0.65  0.57―2.97 1.3 

14 12   2   3 DM

0.23    

16 13   0   2 COPD

0.23  2.23

16 13   0   2 BA

0.21  0.31―1.30 0.63

  5   8 11   7 HT

ADL : activity of daily life, R.R. : relative risk, 95%C.I. : 95% confidence interval, DM :  diabetes  mellitus,  COPD  :  chronic  obstructive  pulmonary  disease,  BA  :  bronchial  asthma, HT : hypertension

険因子

特老 A では今回の集団発生に対し,居室,食堂 の座席移動,職員のマスク着用など様々な介入が 2000 年 2 月 14 日から行われていた.従って,介入 による影響を防ぐため,想定されている

C. pneu- moniae

感染症の最短の潜伏期を 7 日間として

7)

, 調査期間を 1999 年 12 月 1 日から 2000 年 2 月 20 日の間に設定して,症例対照研究を行った.対照 は上記の研究期間に入所していた者を選択し, 1:

1 対応とし,その結果,症例と対照の各 21 名,計 42 名の解析になった.

想定した危険因子のうち,年齢,性別,頻回に 利用する設備,活動度など日常生活の指標,糖尿 病などの基礎疾患のオッズ比を示す (Table 1) .95

%信頼区間,P 値が統計学的有意差を示したもの はなく,発症の危険因子は認められなかった.

5)入所者の

C. pneumoniae

感染 症 重 症 化 の 危

険因子

(5)

Table  3 Analysis  of  factors  which  induced  C.

pneumoniae infection among employees.

(−)

(+)

(−)

(+)

Disease

P value 95%C.I.

R.R.

(−)

(+)

Factor

0.25 0.12―1.50 0.43

13 6 19 3 Age(> 44)

0.41 0.05―2.50 0.39

23 8   9 1 Sex(Male)

0.04

13 0 19 9 Contact

with residents

R.R. : relative risk, 95%C.I. : 95% confidence interval, DM :  diabetes  mellitus,  COPD  :  chronic  obstructive  pulmonary  disease, BA : brochial asthma, HT : hypertension

上記の研究期間の重症例, 非重症例 21 名で重症 化の危険因子を検討したコホート研究では,有意 な結果は得られなかった.2 月 21 日以降発症の症 例を除外して症例数が過少なため有意な結果が得 られなかった可能性も考え,観察期間中の重症例 と非重症例の 31 例でも解析した(Table 2).この 解析でも前項と同様の想定危険因子について検討 したが,有意な相対危険率は得られなかった.

6)職員の

C. pneumoniae

感染症 発 症 の 危 険 因 子

職員の

C. pneumoniae

感染症発症の危険因子と

して,職員の年齢,性別,入所者との接触につい てのコホート研究の結果を Table 3 に示す.入所 者と接触のある職員は有意に

C. pneumoniae

感染 症を発症していた(RR=∞,P 値 0.04) .職員の 9 症例の内訳は看護 2 名,介護 4 名,調理・栄養士 3 名だった.特老 A においては調理・栄養士も食 事の介助などで入所者と接触していることが施設 の観察により認められた.

7)2000 年 4 月 以 降

C. pneumoniae

感 染 症 の 状 況

2000 年 4 月から 10 月までの入所者の医療記録 を閲覧し,職員には同時期の症状の有無を聴き取 りしたが,3 月 30 日の発症例を最後に,今回の症 例定義に合致する入所者と職員は認められなかっ た.

今回の事例はわが国で初めて確認された老人施

設での

C. pneumoniae

感染症の集団発生事例(ア

ウトブレイク)であり,C. pneumoniae が老人施設 においてもアウトブレイクを生じ得ることを確認 した Troy らの報告

8)

に次ぐものである.また

C.

pneumoniae

の感染により,肺炎,気管支炎,上気

道炎など幅広い病態が生じ,無症状だった入所者 が 10 名認められたことも, 無症候性感染が存在す るという欧米の報告に一致している

16)

.また本事 例では入所者の発症,重症化に関与する有意な危 険因子は認められなかった. このことも学校

6)

,軍 隊

7)

での集団発生事例の報告と同様だった.Gray- ston

17)

C. pneumoniae

は伝播効率が低いことと,

人−人の間の飛沫感染で緩徐に拡大するため,集 団事例における感染源となった症例を特定するこ とは困難であると述べているが,本事例でも感染 源を特定することは難しかった.

本事例で唯一,有意差が認められたのは,入所 者との接触が職員の発症の危険因子であること だった.この場合の接触とは直接の接触のみでな く,入所者の近傍で日常的に勤務することを意味 する.Fig. 1 に示された空間で

C. pneumoniae

が拡 大することに有意差が認められたことは意義があ る.欧米での集団発生事例

7)16)

では

C. pneumoniae

感染症は数カ月に渡って,緩徐に拡大したと報告 されているが,Troy ら

8)

による老人施設のアウト ブレイクの報告では比較的急速に拡大し,これは 高齢者には基礎疾患をもつ者が多いためと考察し ている.Troy らが基礎疾患としてあげた糖尿病,

慢性閉塞性肺疾患と気管支喘息に罹患していた入 所者の割合を Troy らの報告と特老 A の間で比 較したところ,Troy の報告で 34 133(26%),特 老 A 13 59(22%)で大差はなかった.拡大の速さ の違いに,入所者の活動度など基礎疾患以外の要 因も関与している可能性がある.

今回の調査でも認識された問題点の一つとし

て,

C. pneumoniae

感染症の迅速診断が困難なこと

がある.咽頭スワブからの分離培養により感染の

確定は可能だが,分離同定には最低でも 1 週間と

時間を要し, また検出率も 50〜75% と高率ではな

14)

.これに対して PCR 法

18)

はより短時間で結果

が得られる感度の高い検査として注目されている

が,分離検査と同様に,無症候性保菌,急性・慢

(6)

性感染,再感染の鑑別は困難である.今回も利用 された ELISA ヒタザイムは他のクラミジア感染 との鑑別が容易で,感度と特異性に優れていると して期待されている

15)

.しかし感染の臨床的状態 を鑑別し得る診断基準は確立されていない. 培養,

PCR を併用して,単血清でも応用できる迅速な診 断システムや診断基準の確立が望まれる.

もう一つの問題は,

C. pneumoniae

感染症の治療 法はエリスロマイシン,テトラサイクリンを比較 的長期使用することで確立しているが

17)

,慢性感 染,保菌者の除菌の必要性,具体方法が確定して いないことである.特老 A でも症例にクラリスロ マイシン(CAM)を 3 週間投与して治療を行った が,投与された 11 名中,投与後も

C. pneumoniae

が分離された者が少なくとも 2 名確認された.こ の陽性は再感染の可能性も否定できないものの,

CAM の有効性に疑問が持たれた.逆に欧米の報 告では無治療で陰性化する症例の存在も指摘され ており

16)

,この問題は最近

C. pneumoniae

への有 効性が認められたアジスロマイシン

17)

の使用方法 の確立も含め,是非明らかにするべきである.

C. pneumoniae

は人口の半数に感染を生じ,市中

肺炎の約 1 割の原因になるなど公衆衛生学的にも 臨床上も重要性が高い病原体である.1999 年に施 行された感染症法では,4 類感染症の一つとして 病院定点からの届け出疾患に指定された. しかし,

わが国での血清疫学も含めた疫学的検討や集団発 生事例の報告は少数で,疾患として高い認識を得 ているとは未だ言い難い.

C. pneumoniae

感染症を 早期発見するため,医療関係者に

C. pneumoniae

感染症の知識を普及させ,疑い例には健康保険適 応となっている抗

C. pneumoniae

IgG と IgA 抗体 で積極的に検査したい.

C. pneumoniae

感染症の適 正な診断,治療法を確立するため,患者・病原体 サーベイランスを充実させることで本感染症の認 知度を高め,更に集団発生が疑われた場合は,速 やかに実地疫学調査を施行して,わが国における

C. pneumoniae

感染症の全体像を把握する努力を

続ける必要があろう.

謝辞:今回の疫学研究に当たって,御協力頂いた山口 県,特別養護老人ホームの職員の皆様に深く感謝致しま

す.

1)Grayston JT, Kuo CC, Campbell LA, Wang SP:

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2)Grayston JT, Kuo CC, Wang SP, Altman J:A newChlamydia psittacistrain, TWAR, isolated in acute respiratory tract infections. N Eng J Med 1986;315:161―8.

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10)荘田恭聖,岸本寿男,窪田好史,松島敏春,井筒

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(7)

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Field Epidemiological Investigation on an Outbreak of

Chlamydia pneumoniae

Infection

―First Recognized Incidence in a Nursing Home for Elderly in Japan―

Takeshi TANAKA

1)2)

, Kazutoshi NAKASHIMA

1)2)

, Hisao KISHIMOTO

3)

, Hiroshi TAKAHASHI

2)

, Takaaki OHYAMA

2)

, Hironori TOSHIMA

4)

, Naoki TSUMURA

5)

, Kazunobu OUTI

6)

,

Shigeyuki MIWA

7)

& Nobuhiko OKABE

2)

1)Field Epidemiology Training Program(FETP), Infectious Disease Surveillance Center, National Institute for Infectious Diseases,2)Infectious Disease Surveillance Center,

National Institute for Infectious Diseases,3)Laboratory of Rikettsia & Chlamydia, Department of Virology I, National Institute for Infectious Diseases,4)Toshima Clinic,

5)Departmrent of Pediatrics, Kurume University,6)Department of Pediatrics, Saisei-kai Shimonoseki General Hospital,7)Nagato Health & Welfare Center

Chlamydia pneumoniae

(C. pneumoniae)is an emerging pathogen recognized in 1989. Althogh

C.

pneumoniae

infection is known to give a great impact on public health in western countries, many as- pects remain unclarified in Japan. During December 1999 and March 2000, respiratory symptoms among residents and employees in a nursing home for elderly implicated an outbreak of

C. pneumo- niae

infection. Field epidemiological investigation confirmed that this is the first outbreak recognized in a nursing home setting in Japan, involving 31 59(15 confirmed)residents and 9 41(2 confirmed)

employees. Fifteen residents developed severe

C. pneumoniae

infections including one fatal outcome with pneumonia. Epidemiological analysis did not identify risk factors which induce infection or se- vere illness by

C. pneumoniae

for the residents. However, for the employees, frequent contact with the residents was demonstrated as a significant risk factor for the infection. None of 13 employees who had no contact with the residents presented

C. pneumoniae

infection, while nine out of 28 employ- ees who had frequent contact developed

C. pneumoniae

infections (RR infinite,

P

=0.04) . These results indicated that

C. pneumoniae

infection spread gradually by human-to-human droplet transmission without specific risk factors. This study raised current problems in diagnosing and treating the

C.

pneumoniae

infection and the need to enhance the awareness of this disease.

Table  1 Analysis  of  factors  inducing  C. pneumoniae  infection  among  residents. ControlCase P value95%C.I.O.R.(−)(+)(−)(+)Factor 0.54 0.36―6.01 1.471110  912Age(> 85) 0.26 0.41―17.042.3518  315  6Sex(Male) Favorite place 0.61   0.24―183.573.2420  118
Table  3 Analysis  of  factors  which  induced  C.  pneumoniae infection among employees

参照

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