ライスナー・ノルトシュトレーム解
シュバルツシルト解は質量
M
を持っている物体が作る空間でしたが、ここでは電荷も持っている場合の解を求め ます。シュバルツシルト解と同様に静的で球対称だとしていくので結果を流用します。
「′」は
r
の微分です。物質分布はなく、電磁場だけがいるとします
(真空中に電磁場だけがある空間)。なので、物質分布はないとし
てエネルギー・運動量テンソルをT
µν= 1
c
2(F
µαF
αν+ 1
4 g
µνF
αβF
αβ)
とします。電磁場テンソル
F
µνの対角成分は0
なので、トレースT = T
µµは0
です。よって、このときのアイン シュタイン方程式はR
µν= 8πκ
c
2(T
µν− 1 2 g
µνT ) R
µν= A
c
2(F
µαF
αν+ 1
4 g
µνF
αβF
αβ) (A = 8πκ c
2)
これをアインシュタイン・マクスウェル方程式と言ったりします。これの解を求めます。
計量と電磁場は静的で球対称とします。計量の形はシュバルツシルト解と同じように
ds
2= e
ν(cdt)
2− e
λdr
2− r
2(dθ
2+ sin
2θdφ
2)
ν.λ
はr
の関数です。なので、リーマンテンソルはシュバルツシルト解でのものを流用できてR
00= e
ν−λ2 (ν
′′+ ν
′22 − ν
′λ
′2 + 2ν
′r ) R
11= − ν
′′2 − ν
′24 + ν
′λ
′4 + λ
′r R
22= − e
−λ(1 + ν
′r
2 − λ
′r 2 ) + 1
R
33= R
22sin
2θ
後はアインシュタイン方程式の右辺を求めるだけです。
電磁場も球対称にするために、4元ベクトルポテンシャル
A
µの3
次元空間成分はr
方向に対応するA
1だけが0
でないとします(A
2, A
3= 0)。さらにゲージ変換を利用します。ベクトルポテンシャルのゲージ変換は、任意の
スカラー関数Λ
によってA
µ= A
µ+ ∂
µΛ
と行われます。これを利用して
A
1= 0
になるようにΛ
を選びます。これでA
0だけになります。また、静的なの でA
0は時間独立で、rの関数です。よって、電磁場テンソルは
F
01= (A
0|1− A
1|0) = A
0|1= − F
10のみになるのでF
µν= E(r)
0 − 1 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
とします。添え字が上では
F
µν= g
µαF
αβg
βν= E
e
−ν0 0 0
0 − e
−λ0 0
0 0 − r
−20
0 0 0 − (r
2sin
2θ)
−1
0 − 1 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
e
−ν0 0 0
0 − e
−λ0 0
0 0 − r
−20
0 0 0 − (r
2sin
2θ)
−1
= e
−(ν+λ)E
0 − 1 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
電磁場テンソル密度
f
はf
µν= √
− gF
µν( √
− g = e
(ν+λ)/2r
2sin θ)
今は電荷分布もないとしているので、f|µνν
= 0
です(「マクスウェル方程式」参照)。そうすると、F
µνの成分は(0, 1), (1, 0)
の二つしかなく、静的であるために時間微分は0
になることからf
|011= ( √
− gF
01)
|1= (Ee
−(ν+λ)/2r
2sin θ)
|1= 0
r
で積分してEe
−(ν+λ)/2r
2= ϵ
ϵ
は積分定数です。よって、E = e
(ν+λ)/2ϵ r
2ϵ/r
2から、ϵは今の電場を作る質点の電荷と予想できます。電磁場テンソルに入れれば
F
µν= e
(ν+λ)/2ϵ r
2
0 − 1 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
, F
µν= e
−(ν+λ)/2ϵ r
2
0 1 0 0
− 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
後必要なものとして
F
µνがあるので、これも求めればF
µν= g
µαF
αν= e
(ν+λ)/2ϵ r
2
e
−ν0 0 0
0 − e
−λ0 0
0 0 − r
−20
0 0 0 − (r
2sin
2θ)
−1
0 − 1 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
= − e
(ν+λ)/2ϵ r
2
0 e
−ν0 0 e
−λ0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
これで
T
µν が求められます。FµαF
ανはF
µαF
αν= − ϵ
2r
4e
(ν+λ)
0 − 1 0 0
1 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0 e
−ν0 0 e
−λ0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
= − ϵ
2r
4e
(ν+λ)
− e
−λ0 0 0 0 e
−ν0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
= − ϵ
2r
4
− e
ν0 0 0 0 e
λ0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
F
αβF
αβはF
αβF
αβ= F
01F
01+ F
10F
10= − 2 ϵ
2r
4よって、Tµν は
T
µν= − 1 c
2( ϵ
2r
4
− e
ν0 0 0 0 e
λ0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
+ ϵ
22r
4
e
ν0 0 0
0 − e
λ0 0
0 0 − r
20
0 0 0 − r
2sin
2θ
)
= − 1 c
2ϵ
22r
4
− e
ν0 0 0
0 e
λ0 0
0 0 − r
20
0 0 0 − r
2sin
2θ
= 1 c
2ϵ
22r
4
e
ν0 0 0
0 − e
λ0 0
0 0 r
20
0 0 0 r
2sin
2θ
これで両辺が求まったので成分ごとにまとめます。
アインシュタイン方程式の
00,11,22
成分は• 00
成分e
ν−λ2 (ν
′′+ ν
′22 − ν
′λ
′2 + 2ν
′r ) = A
c
2ϵ
22r
4e
ν• 11
成分ν
′′2 + ν
′24 − ν
′λ
′4 − λ
′r = A
c
2ϵ
22r
4e
λ• 22
成分1 − e
−λ(1 + ν
′r 2 − λ
′r
2 ) = A c
2ϵ
22r
200
成分にe
−ν+λをかけてν
′′2 + ν
′24 − ν
′λ
′4 + ν
′r = A
c
2ϵ
22r
4e
λ これと11
成分を引けばλ
′+ ν
′= 0
これは「シュバルツシルト解〜外部〜」と同じなので
λ = − ν
1 − e
−λ(1 + ν
′r 2 − λ
′r
2 ) = A c
2ϵ
22r
21 − e
ν(1 + ν
′r) = A c
2ϵ
22r
2(re
ν)
′= 1 − A c
2ϵ
22r
2re
ν= r + A c
2ϵ
22r + C e
ν= 1 + A
c
2ϵ
22r
2+ C
r C
は積分定数です。Cはシュバルツシルト解と同じように− 2m
としてe
ν= 1 − 2m r + A
c
2ϵ
22r
2よって、線素は
ds
2= (1 − 2m r + A
c
2ϵ
22r
2)(cdt)
2− (1 − 2m r + A
c
2ϵ
22r
2)
−1dr
2− r
2(dθ
2+ sin
2θdφ
2)
これをライスナー・ノルトシュトレーム
(Reissner-Nordstr¨ om)
解と言います。mはϵ = 0
ならシュバルツシルト解 と一致するので、幾何学的質量m = κM/c
2です。ϵが何に対応するかはすぐに分かります。λ= − ν
なのでE
はE = ϵ r
2となり、電磁気での点電荷が作る電場の式そのものです。なので、ϵを電荷
e
とします。というわけで、ライスナー・ノルトシュトレーム解は電荷
e
を使って表わせばds
2= (1 − 2m r + e
2r
2)(cdt)
2− (1 − 2m r + e
2r
2)
−1dr
2− r
2(dθ
2+ sin
2θdφ
2) (e
2= − Aϵ
22c
2)
となります。このとき電荷
e
は長さの次元を持つので、mが幾何学的質量であることに対応して幾何学的電荷と 言う事ができます。そしてe = 0
でシュバルツシルト解に一致します。ただし、星について考えた場合このように 電荷によるものが存在しているとは考えづらいために、現実に適用されることはあまりないです。ちなみに、ここでの出発点を双対テンソル∗