研究資料 画伝幼学 絵具彩色独稽古(天保五年)
著者 染谷 香理
雑誌名 美術研究
号 414
ページ 35‑57
発行年 2015‑02‑20
URL http://id.nii.ac.jp/1440/00006051/
画伝幼学 絵具彩色独稽古(天保五年 ( 三五 研 究 資 料 画伝幼学 絵具彩色独稽古(天保五年)
染 谷 香 理 最初にこの『絵具彩色独稽古』を読んだ印象は、実にバランスが悪く不自然な技 法書だということだった。本文の記されている二十三丁のうち、最初の四丁で絵具 の使用法を説き、残りの実に十九丁を使って四十七種類もの素材やその種類にわけ て、 礬
どう水
さの 割 合 を 記 し て い る の で あ る。 同 じ「 独 稽 古 」 と 題 し 年 代 の 近 い も の に、 宮 本 君 山 の『 漢 画 独 稽 古 』 ( 一 八 〇 七 年 ( が あ る が、 こ ち ら は 画 論 や 筆 法、 絵 手 本、 画材やその使い方について、およそ絵を描くために必要であるとおぼしき知識を網 羅している。これならこの本を初学の者が手に取って 「独稽古」 ができそうである。 と こ ろ が、 『 絵 具 彩 色 独 稽 古 』 の ほ う は、 こ れ を 一 冊 手 に 取 っ た だ け で は、 な に を 稽古したらよいのか迷いそうである。素材や紙の厚みなどによって礬水の製法を変 えることは、絵を描く者にとって一般的なことである。しかしながら、これほどま でに細かく、膠や明礬の割合を使い分けるようなことはあまりしないのである。む しろ初学のものにとっては、混乱を招きかねない。それなのにもかかわらず、この 頃の技法書に必ずといっていいほど記されている、 絵を描くための心構えや、 筆法、 絵手本や画譜といったたぐいが全くないのである。礬水が絵を描く前の準備段階で あるはずなのに、礬水へのこだわりと、絵を描くことへのこだわりのバランスが非 常に悪いのである。またこの他にも、不自然な箇所がある。それは、絵具の使用法 を 記 し た 最 後 ( 七 丁 ( に、 「 此 外 い ろ 〳〵 の 繪
ゑのぐ具 彩
さいしき色 方
かた多
おゝけ れ バ 即
そくせき席 の 事 を し る し 其
そのよ餘 の 秘
ひでん傳 ハ 第
だい二
に編
へんにくわしく 記
しるす」とあるものの、それにあたる第二編が出てこ ないのである。執筆予定だったものの何らかの形で出版できなくなったとも考えら れるが、この文献の調査を進めるうちに、稿者の感じたこれらの違和感の原因が明 らかになってきた。
見いだした。東京藝術大学本の書誌情報は次の通りである。 法書を収集し分析する中、東京藝術大学大学図書館所蔵の文献を調べていく過程で 『 絵 具 彩 色 独 稽 古 』 は 稿 者 が 科 学 研 究 費 補 助 金 を 得 て、 多 量 の 日 本 画 に 関 す る 技
『画伝幼学絵具彩色独稽古 全』 板本 袋綴二十六丁 水色紙表紙 布目型押 中 本 ( 縦 十 八・ 八 横 十 二・ 七 セ ン チ ( 東 京 藝 術 大 学 大 学 図 書 館 蔵 ( 元 東 京 藝 術 大 学 教 授脇本十九郎氏旧蔵図書 ( 題 簽
見返し 「 [画伝/幼学]絵具彩色独稽古 全」
「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(彩色独稽古は入木 ( 引札広告=出版案内 江戸繁昌記[静軒先生著]初編/江戸繁昌記[同上]弐篇/ 江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 奥 書 日比野氏 備 考 見 返 し、 序 文、 凡 例 は 藍 刷。 丁 付 は、 口 ノ 一 ( 序 文 ( ・ ナ シ ( 凡 例 ( ・ 口 ノ 二 ~ 口 ノ 五・ 六・ 三 ~ 二 十・ ナ シ ( 広 告 ( 。 東 京 藝 術 大 学 大 学 図 書 館 の 書 誌 情 報 に は二十丁と掲載されているが、それはこの丁付の混乱によるもので、実際は二十六 丁である。十九ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は桃二画。
著者の桓斎と凡例に名前がある鹿田孝清については、桓斎が江戸の絵師で、鹿田孝 清が京都の人であること以外は、共に不詳。鹿田孝清は日本古典籍総合目録データ ベ ー ス で 検 索 す る と、 他 に『 彩 色 童 喩 』 と い う 著 書 が あ る。 『 彩 色 童 喩 』 の 書 誌 情 報は次の通り。
『 彩 色 童 喩 』 写 本 袋 綴 二 十 丁 深 緑 紙 表 紙 半 紙 本 ( 縦 二 十 四・ 〇 横 十 五・ 九 セ
ンチ ( 国立国会図書館蔵 題 簽 欠 (左肩に剝落痕 ( 内 題 彩色童喩 蔵書印
「帝国図書館蔵」朱文方印・
「大正三・一一・五購求」朱文丸印
美 術 研 究 四 一 四 号 三六
備 考 挿画なし。
本文に数カ所藝大本の『絵具彩色独稽古』と記述に些少の違いがあるが、 ほぼ同一。 な ぜ 内 題 が『 彩 色 童 喩 』 と な っ た の か は わ か ら な い が、 『 絵 具 彩 色 独 稽 古 』 の 写 し と思われる。
藝大本の題簽には「 [画伝/幼学]絵具彩色独稽古」とあり、見返しには「 [画伝 / 幼 学 ] 絵 具 分 量 考 」 と あ る の で、 「 絵 具 彩 色 独 稽 古 」 と「 絵 具 分 量 考 」 で 日 本 古 典 籍 総 合 目 録 デ ー タ ベ ー ス を 検 索 す る と、 国 立 国 会 図 書 館、 東 北 大 学 大 学 図 書 館、 日 比 谷 図 書 館 ( 日 比 谷 図 書 館 の 加 賀 文 庫 は 現 在 東 京 都 立 中 央 図 書 館 の 所 蔵 ( 、 西 尾 市 岩 瀬文庫、九州大学大学図書館、紙の博物館、富山市立中央図書館にそれぞれ所蔵さ れていることがわかる。このうち、国立国会図書館所蔵のものは、昭和二十年代か ら所在が不明ということだった。また、西尾市岩瀬文庫は書誌情報が書誌データベ ースでホームページに詳細に公開されていたため、それを引用した。その他所在の 確認できたものを掲載順に列挙する。
東北大学本 『 絵 具 分 量 考 完 』 板 本 袋 綴 二 十 六 丁 水 色 紙 表 紙 布 目 型 押 中 本 ( 縦 十 八・
七 横十二・八センチ ( 東北大学大学図書館所蔵 (狩野亨吉氏旧蔵図書 ( 題 簽 欠( 『絵具分量考 完』の墨書あり ( 見返し
「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(「彩色独稽古」は入木 ( 引札広告=出版案内 江戸繁昌記[静軒先生著]初編/江戸繁昌記[同上]弐篇/ 江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 備 考 見返し、序文、凡例は藍刷。十九ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は 桃二画。最終丁ウに「愛知県尾張国名古屋」等書き込みあり。狩野亨吉氏によるも のか。 東京都立中央図書館本 『 絵 具 分 量 考 』 板 本 袋 綴 二 十 六 丁 水 色 紙 表 紙 布 目 型 押 中 本 ( 縦 十 八・ 六 横十二・五センチ ( 東京都立中央図書館蔵 (加賀豊三郎氏旧蔵図書 ( 題 簽
「絵具分量考」
見返し
「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(「彩色独稽古」は入木 ( 引札広告=出版案内 江戸繁昌記[静軒先生著]初編/江戸繁昌記[同上]弐篇/ 江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 備 考 題 簽 の「 絵 具 分 量 考 」 は 後 補。 題 簽 の 周 囲 に 剥 落 痕 あ り。 見 返 し、 序 文、 凡例は藍刷。十九ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は桃二画。
西尾市岩瀬文庫本 『 絵 具 分 量 考 』 板 本 袋 綴 二 十 六 丁 水 色 紙 表 紙 布 目 型 押 中 本 ( 縦 十 八・ 九 横十二・八センチ ( 西尾市岩瀬文庫蔵 題 簽 欠 (剝落痕あり ( 見返し 「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(「彩色独稽古」は入木 ( 引札広告=出版案内 江戸繁昌記[静軒先生著]初編/江戸繁昌記[同上]弐篇/ 江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 備 考 見返し、序文、凡例は藍刷。十四ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は 桃二画。最終丁左側の空欄に銅版精刻 (青刷 ( の印紙紙片を貼付 (四隅に 「不」 「許」 「翻」 「刻」 、右左に「版権免許」 「検定既済」 、版面寸法二 ・ 九/三 ・ 〇 ( 、同丁裏は空白。 ※右は西尾市岩瀬文庫による公開情報だが、挿画は十四ウではなく、十九ウか。
九州大学本 『画伝幼学絵具彩色独稽古 全』 板本 袋綴二十六丁 水色紙表紙 布目型押 中 本 (縦十八・八 横十二・七センチ ( 九州大学大学図書館蔵 (相見香雨氏旧蔵図書 ( 題 簽
「 [画伝/幼学]絵具彩色独稽古 全」
画伝幼学 絵具彩色独稽古(天保五年 ( 三七 見返し 「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(「彩色独稽古」は入木 ( 引札広告=出版案内 江戸繁昌記[静軒先生著]初編/江戸繁昌記[同上]弐篇/ 江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 備 考 見返し、序文、凡例は藍刷。十九ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は 桃二画。
紙の博物館本 『[ 画 伝 / 幼 学 ] 絵 具 彩 色 独 稽 古 全 』 板 本 袋 綴 二 十 五 丁 水 色 紙 表 紙 布 目 型 押 中本 (縦十八・八 横十二・六センチ ( 紙の図書館蔵 題 簽
見返し 「 [画伝/幼学]絵具彩色独稽古 全」
「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(「彩色独稽古」は入木 ( 引札広告=出版案内 江戸繁昌記[静軒先生著]初編/江戸繁昌記[同上]弐篇/ 江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 備 考 見返し、序文、凡例は藍刷。紙の図書館本は広告のある丁が裏表紙に貼付 されている。十九ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は桃二画。
富山市立図書館本 『画伝幼学絵具彩色独稽古 全』 板本 袋綴二十六丁 水色紙表紙 布目型押 中 本 (縦十八・七 横十二・七センチ ( 富山市立図書館 (山田孝雄氏旧蔵図書 ( 題 簽
見返し 「 [画伝/幼学]絵具彩色独稽古 全」
「桓斉先生著/[画伝/幼学]絵具分量考/東都
文刻堂蔵版」 内 題
[画伝/幼学]絵具彩色独稽古
(「彩色独稽古」は入木 ( 引札広告=出版案内 江 戸 繁 昌 記[ 静 軒 先 生 著 ] 初 編 / 江 戸 繁 昌 記[ 同 上 ] 弐 篇/江戸繁昌記[同上]参編[近日出版] 備 考 見返し、序文、凡例は藍刷。十九ウに礬水を引く童子の挿画あり、落款は 桃二画。最終丁ウに書き込みあり。山田孝雄氏によるものか。 調査した結果、 題簽に 「絵具彩色独稽古」 と 「絵具分量考」 の違いがあったが、 「絵 具 分 量 考 」 と あ る も の は い ず れ も 題 簽 欠 に よ る 後 補 で あ っ た た め、 「 絵 具 彩 色 独 稽 古」が原題であろう。見返しにある版元の文刻堂は、江戸通本町三丁目にあった西 村源六の地本屋か (井上隆明著 『改訂増補 近世書林板元総覧』 青喪堂書店、 上里春生 『江 戸 書 籍 商 史 』 名 著 刊 行 会 ( 。 桓 齋 に よ る 序 文 に 天 保 五 年 と あ り、 広 告 の『 江 戸 繁 昌 記
弐篇』 と近日出版となっている 『江戸繁昌記 参篇』 がともに天保五年出版なので、 矛 盾 は な い。 『 江 戸 繁 昌 記 』 は「 克 己 塾 蔵 板 」 で 著 者 の 寺 門 静 軒 の 私 塾 が 版 元 で あ るが、文刻堂との関連性は不明。丁付は、他館所蔵のすべての冊子においても藝大 本と同一の混乱がみられた。内題の「 [画伝/幼学]絵具彩色独稽古」のうち、 「彩 色独稽古」が入木であること、丁付の混乱、本来有るべき刊記がない、七ウより前 と八オより後で本文の文字の太さが異なる印象をうけることなどから、何らかの改 変 が 加 わ っ て 出 版 さ れ た も の で 間 違 い な い だ ろ う。 序 文 の ロ ノ 一 ( 一 丁 ( と 本 文 前 半 の 口 ノ 二 ~ 口 ノ 五・ 六 ( 三 ~ 七 丁 ( が 桓 齋 著『 絵 具 分 量 考 』 の 一 部、 凡 例 ( 二 丁 ( と 後 半 の 三 ~ 二 十 ( 八 ~ 二 十 五 丁 ( ま で が 鹿 田 孝 清 著 で あ る と 考 え ら れ る。 ま た 前 半 部 分 の 桓 齋 著 と 思 わ れ る 部 分 の 最 後 で あ る 六 ( 七 丁 ( は 最 初 に あ げ た「 此 外 い ろ 〳〵 の 繪
ゑのぐ具 彩
さいしき色 方
かた多
おゝけ れ バ 即
そくせき席 の 事 を し る し 其
そのよ餘 の 秘
ひでん傳 ハ 第
だい二
に編
へんに く わ し く 記
しるす 」 ではじまり、その後すぐに、礬水の話になっていることから、作為的に次の礬水の 割 合 を 記 し た 鹿 田 孝 清 著 の 後 半 部 分 に つ な が る よ う、 入 れ ら れ た の だ ろ う。 ま た、 本 文 開 始 の ロ ノ 二 ( 三 丁 ( が「 ○ 彩 色 繪
ゑのぐ具 つ か ひ や う の 秘
ひでん傳 こ ゝ に 記
しるす 」 で は じ ま り、 丁付が「ロノ一」ではじまるのは不自然であることから、 後ろにある六 (七丁 ( の ほ う が 第 一 編 の 一 部 で、 ロ ノ 二 か ら ロ ノ 五 ( 三 ~ 六 丁 ( ま で が 先 ほ ど 指 摘 し た と ころの第二編にあたるのかもしれない。鹿田孝清と桓齋があたかも共著となるよう に桓齋著の『絵具分量考』の内題に入木をして出版されたのが、 『絵具彩色独稽古』 なのだろう。桓齋著の前半と鹿田孝清著の後半が、それぞれ独立した形で出版され たことがあったのかは現時点ではわからない。この 『[画伝/幼学] 絵具彩色独稽古』 の前半のみ、後半のみの冊子をご存じの方がおられれば、お教えいただきたい。
(そめや かおり・東京藝術大学大学院教育研究助手 (
美 術 研 究 四 一 四 号 三八
〔付記〕 本研究は、平成二十六年度 科学研究費補助金 基盤
C「経験と感性の継承―技
法書データベースの構築」 (研究代表者 染谷香理 ( の一環として行ったものである。
な お、 翻 字 は 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員 ( 東 京 大 学 史 料 編 纂 所
D( P
の 綱 川 歩 美 氏にお願いした。
〔凡例〕 ・改行位置を「/」で記した。 ・虫損等により判読できなかった箇所は「■」で記した。 ・丁番号と丁付は、 (丁番号「丁付」 ( の順で付した。
画傳幼学繪具彩色獨稽古 全
桓斎先生著/畫傳幼学繪具分量考/東都 文刻堂蔵版
そ れ 書
しよぐハ畫 は 一
いつたい體 の 要
えうな り と い へ ど も、 / 文
もんもうぐハ盲 畫 を 見 て 事
じせき蹟 を 知
しる は / 書
しよも ま た 及
およば ざ る 事 遠
とふし、 す で に 會
あいづ津 の 盲
めくらこよミ暦 、 畫
ぐハな く ハ 何
なにを 冩
うつ/ さ む や、 そ れ は 童
どう蒙
まうの 玩
もてあそび、 / 画
ぐハに 如
しくものなかるべし、 故
ゆへに 師
し」(一オ ( なくして、 彩
さいしき色 の一 助
ぢよともなれ/かしと、 繪
ゑのぐ具 の 製
せいさく作 を 普
あまねく/ 輯
あつめ、 小
しやうさつ冊 となす事 しかり
于時天保五甲午春/垣斎老人誌 」(一ウ (
凡例 夫
それゑ畫 に 礬
どふさ水 を 用
もちゆる こ と、 普
あまねく 和
わかん漢 と も に 古
ふるく 用
もちひ 来
きたり し / な り、 雖
しかりといへどもいまだそのたし然 未 其 慥 か な る 發
おこりも き か ず、 亦
また分
ぶんりやう量 の 定
さだまり も な か / り し に 何 れ の 時
ときよ り か、 膠
にかハ十 匁、 明
みやうばん礬 五 匁 を 以 て 煮
にる、 是
これを / 十 五 の 割
わりと 名
なづけて、 此
この分
ぶんりやう量 に て 事
こと足
たれ り、 然
しかり と い へ ど も、 /
予惟
おもふ に、 數 年 画 の 為
ために た め し 見 る に、 紙 の 品 々、 絹
きぬの / 地
ぢあい合 に よ り、 ま た 金 銀 地
ぢ杉
すぎと戸 の 類
たぐひ、 大
おほいに 相
さうゐ違 すること/あり、 或
あるひハ 古
こぐわ画 を 模
うつすに 必
かならず二 遍
へんを用ゆ、 又
また水
すみさいしき墨着色 / 倶
ともにどうさの 分
ぶんりやう量 に 依
よつて 光
つや澤 あり、 年
ねんぢう中 寒
かん暑
しよ風
ふう」(二オ ( 雨
うに 差
しやべつ別 あ り、 是
これ分
ぶんりやう量 を 辨
わきまへ ざ る 時
ときハ、 か な ら ず 損
そこなふ望 / こ と あ り、 此
このしよ書 は 諸
しよにん人 の 需
もとめに 應
おうじ て 初
しよしんようがく心 幼 学 の 助
たすけ/ に、 小
せうさつ冊 に 編
つらね諸
しよくんしあらた君 子 改 め 是
これを 正
たゞし て、 試
こころミに 用 ひ 給 ハ ヾ / 是
これ予が 幸
さいハひなり
平安 鹿田孝清【花押】 」(二ウ (
画
ぐわ傳
でん幼 学
がく繪
ゑのぐさいしきひとりけいこ具彩色獨稽古
東都繪師 桓斎先生著
○ 彩
さいしきゑのぐ色繪具 つかひやうの 秘
ひでん傳 こゝに 記
しるす ○ 胡
ごふん粉 ハ ま づ か く す り に よ く 摺
すりて ぬ る ま 湯
ゆを 少
すこし 入
いれこ ね て 能
よく々 / と ろ り と し て う す 膠
にかハを 湯 に ひ た し 薄
うすく と き 少 し つ ゝ 入 て 筆
ふでの / あ た り 和
やハら か に な る 程
ほどに 水
ミづと 膠
にかハを 等
とうぶん分 に 加
くハへ 遠
とほび火 にて 温
あたゝめ 」(三オ「ロノ二」 ( 用
もちゆなり 何
いづれも 胡
ごふん粉 の 加
くハへ 方
かたと 似
にたるものなり。 ○ 唐
とうの 土
つちハ水に 膠
にかハ少
せう々水にして 交
まぜつかふべし
これハ胡 ごふん粉に/類 るいしたるものなり
○ 朱
しゆハ 少
すこしかくすりにして 薄
うすにかハ膠 を 少
すこし交てとろりとときて/少々 火
ひにあたヽめ用べ し
但し丹 たんにてうへゑもやうをかく事/ありよくわかるなり。╱ ○ 丹
たんハ 水
すいひ干 し て 用 ゆ べ し
但水 すいひ干なしに用 もちゆるときハうす膠 にかハをまぜて/水少々入すりてとろりとして少し油を筆のさきへ/付てもちゆ/是 これひ秘傳也。○ 黄
きハ 雌
しわう黄 也 墨
すみのごとくすりてつかふなり 」(三ウ「ロノ二」 ( ○せウヱンジハあつき 湯
ゆへしぼり出して 美
ミのがミ濃紙 にてこし 滓
かすを 取
とり/ 遠
とほび火 にてあたヽめ よく〳〵つめて 用
もちゆべし○ 作
つくり 黄
わうど土 ハ 丹
たんと/ 雌
しわう黄 を 目
めぶんりやう分量 に 入
いれ薄
うすくして 胡
ごふん粉 を 少
すこし い れ つ か ふ べ し / ○ 土
つち黄
わうど土 ハ よ く つ ぶ し 膠
にかハと 水
ミづと 等
とうぶん分 に 交
まぜて つ か ふ 也 ○ 香
こう/ 色
いろハ 弁
べんがら柄 と 雌
しわうとうぶん黄 等 分 に 交
まぜて つ か ふ 也。 ○ タ イ シ ヤ ハ 弁
べんがら柄 へ 硯
すゞり/ 墨
ずミ入
いれ目
めぶんりやう分 量 に し て 遣 ふ べし○ 薄
うすくさ草 ハ
雌 しわう黄、藍 あい蝋 ろうまぜて/つかふべし画伝幼学 絵具彩色独稽古(天保五年 ( 三九 」(四オ「ロノ三」 ( ○ 奈
なら良 緑
ろくせう青 ハ 水
ミづすこ少 し 入 火
ひに て あ た ゝ め よ く 練
ねりて 水
ミづを く わ へ / と ろ り と 解
といて 膠
にかハ少
せう〳〵々 ヅ ヽ 交
まぜ油
あぶらを 少
すこし 加
くハへ 遣
つかふ べ し ○ 白
びやくろく六
これハ/よく摺 すり/水 ミづ膠 にかハ少 せう〳〵々まぜ是 これハ/緑 ろくせう青うすき色 いろなり○ 肉
にく色
いろハ 弁
べんがら柄 の 上
うハ水
みづへ 胡
ごふん粉 を 少
すこし 加
くハ摺
すり入
いれ用 ゆ / ○ ま た 丹
たんの 上
うハミづ水 に て も 用 る こ と あ り ○ 浅
あさぎ黄 ハ 胡
ごふん粉 に 藍
あいろう蝋 を / 加
くハへ 用 ゆ る ○ 紫
むらさきハ ヱ ン ジ を か く 摺
すりに て 藍
あい蝋
ろうを 加
くハへ 膠
にかハを / 少
せう々 加
くハへ 用 へ し ○ 紺
こんハ 藍
あい蝋
ろうへ 胡
ごふん粉 を 少
せう〳〵々 入
いれ膠
にかハを 交
まぜつかふべし 」(四ウ「ロノ三」 ( ○ 柿
かき色
いろハ 弁
べんがら柄 へ 膠
にかハを 交
まぜ遣
つかふ べ し ○ ヱ ン ジ ノ グ ○ 白
びやくろく六 ○ 黄
わうど土 グ / ○ セ ウ ヱ ン ジ ノ グ ○ 肉
にく色
いろい づ れ も 胡
ごふん粉 を 加
かげん減 し て 用
もちゆる 也 ○ 花
はな紺
こん/ 青
ぜうハ 水
ミづひ た 〳〵 に 入
いレ 後
のちに う す 膠
にかハと ろ り と し て 少
すこし 入
いれ火
ひに あ た ゝ め / 用 ゆ べ し
但にかハ上へ/うくものなり○ 岩
いわ緑
ろくせう青 の 製
せいほう法 紺
こんぜう青 と 同
どうぜん前 也 こ れ ハ / 油
あぶらを 少 々 加
くハへ れ バ 上
うへへ 模
もやう様 が 書
かける 秘
ひでん伝 也 ○ 墨
すミハ か る め と い ふ 墨 / をよくすり 膠
にかハと水を 入
いれもち用 ゆ
但上へ硯 すゞり墨 すミにてもやうを/かくときよくわかるものなり○ 金
きんの 遣
つかひ 」(五オ「ロノ四」 ( や う 箔
はくを と き 水
ミづを 加
くハへ 膠
にかハを 入 べ し ○ 銀
ぎんも 同 前 な り ○ 下
げの / 金 銀 ハ 青
あおの
壱印下弐印中╱三印上銀 ぎん泥 でい粉何
いづれも水 膠
にかハにてつかふべし。
○ 水
ミづゑのぐ繪具 の 製
せいほう法
これハ下の字の墨 すミがき書のきえぬ/やうにつかふゑのぐなり○ 赤
あかハ
セウ/ヱンジ○ 紅
べに○ 朱
しゆハ 上 水 に て も よ く ○ 藍
あいハ 紙
かミの あ い / を も ち ゆ ○ 草
くさハ
あい紙の水と雌 しわう黄地/等 とうぶん分にまぜてつかふべし○ 黄
きハ
雌 しわう黄をすりて/つかふなり/ ○ 紫
むらさきハ
あい紙と/紅をませる也○ 又 紫 水 を も 用 ゆ ○ 又 地
づくち口 行
あんどん燈 な どに用ハ 」(五ウ「ロノ四」 ( ○ 赤
あかハ
せんじ/すわり○ 黄
きハ
スミをせんじ/用るなり○ 金 の か ハ り ハ
生 きろうを火にてとかし/油 あぶらを少々入火のそば/にて遣 つかふ也先 さきへ蝋 ろうにてもやうをかき/上に繪 ゑのぐ具をねれバよくはぢきてわかる也○ 其
そのほか外 ハ 丹・ 弁
べんがら柄 ・ 朱
しゆ・ い づ れ も / 上
うハミづ水 を つ か ふ 也 ○ 緑
ろくせう青 右
みぎの ご と くすり水を入れ 膠
にかハを少々入 藍
あいを水にてしぼり出しまぜ上水をつかふ
これハ/草いろなり○ 達
だる磨その外人形の 彩
さいしきゑのぐ色繪具 ○ 赤
あかハ
下に胡 ごふん粉を水と膠 にかハと等 とうぶん分にいれてねるべしその上へ長吉/丹へ上すきにかハをつよくいれてねりその上へせんじすわうを」(六オ「ロノ五」 (
ひく/なり○ 小 人 形 ハ 丹
たんへ 膠
にかハを つ よ く し て 上 に 朱
しゆを
これもにかハを/多く加へるなり/ ね り 又 其
そのう へ に 三 千 本
ぼん膠
にかハを と ろ り と し て 引
ひくこれハつやを/出すため也○ 緑
ろくせう青 ハ /
膠 にかハを少 すこし/いれる也○ 墨 胡
ごふん粉
同○ 紺
こんハ あ い ろ う に 膠 を ま ぜ 用 ゆ る / な り そ の 外
ほかハ 右
ミぎに 記
しるす 処
ところと 用 ひ 方 同 断 な り ○ 墨
すミハ / 膠
にかハを と か し 硯
すゞり墨
すミを ま ぜ 茶
ちやわん碗 に て 火 に か け 煮
に詰
つめて / つ か ふ な り 是
これを 煮
にぐ る ミ と い ふ 漆
うるしの ご と く つや 出
いづるなり 」(六ウ「ロノ五」 ( 此 外 い ろ 〳〵 の 繪
ゑのぐ具 彩
さいしき色 方
かた多
おゝけ れ バ 即
そくせき席 の 事 を し る し / 其
そのよ餘 の 秘
ひでん傳 ハ 第
だい二
にへん編 に く わしく 記
しるす。
○ 礬
どうさ水 を 煮
にる製
せいほう法
どうさハ繪 ゑさいしき彩色の秘 ひでん傳なり/よくこゝろえべし先
まづにかハ膠 を 水
ミつに ひ や し 能
よく 洗
あろう事
ことを 第
だい一 と す / 仮
たとへ令 ハ 赤
あか鍋
なべに 水
ミづを 入
いれ湯
ゆす こ し 温
ぬるミし 所
ところへ 膠
にかハを/入能々 煮
にるなり。 件
くたんの 膠
にかハもよくとけ湯の 弗
にへたつる 」(七オ「六」 ( 所
ところ明
ミうばん礬 を 細
さいまつ末 に し て 入 能 く か き 廻
まハし / た と へ ハ 煙
たばこ草 二 三 ぶ く も 呑
のむほと程 の 内
うち明 ば ん / 煮
にるものなり 夫
それより能さまして 引
ひきもち用 ゆへし
但 たゞし湯 ゆの余 あまりにゐる所へ膠 にかハを入る時ハかならず/にかわなべの底 そこに焼 やきつき付て分 ぶんりやう量よろし/からず故 ゆへによくこゝろへてにるべし/○又夏 なつハいかにもさましてのち引べし/冬 ふゆハすこしぬるミしを用ゆべし是 これ要 かん/用なり」(七ウ「六」 (
○ 膠
にかハに 二
にひん品 あり
晒 さらしにかわ/珍 すきにかわ△ 明
ミうばん礬 ニ 二
にひん品 あり
生 き明 ミうばん/焼 やき明 ミうばん○△ 二
ふたしなかミ品紙 の 品
しな〳〵々 により、 晒
さらしを 用
もちゆ、 又
また珍
すきと 当
とうぶん分 /もあり、また 焼
やき明
ミうばん礬 と 生
き明
みうばん を、 四 分 六 分 に / 加
くわふ る も あ り 或
あるひハ 四
しき季
ねんちうの 分
ぶんりうあう量 昼
ちうや夜 晴
せいう雨
てんきあめの / 差
しやべつ別
かけんあ り く わ し き ハ 下
しもに
すへ巨
こさい細 にしるす。 」(八オ「三」 (
○ 晒
さらし膠
にかハ廣 ひろはゞ巾にかわといふ/又極 ごくさらしともいふ○ 玲
すき膠
にかわ千本にかわともいふ△ 生
き明
ミうばん礬
つねの明ばん/をいふ△ 焼
やき明
ミうばん礬
火にかけ焼たる/をいふ焼
やきミうばんハ 生
きミうばんよりハ、あくなきゆへに 功
かうのふ 薄
うすし/まつ此、二しなにて こと足るゆへにはあらましをしるす
但 たゞし唐の阿 あきやう膠ハ分 ぶんりやう量知れかたき故 ゆへに唐 とうの品/ハ用ゆることなかれ都 すへて礬 どうさ水にハ我くにの/廣さらしを上品とす○我国明 ミうばん礬の始めハ四十二代文武天皇二年戊戌六月を江/国より初てこれを奉る。文政十三寅まで/一千百三十三年になる也」(八ウ「三」 (
美 術 研 究 四 一 四 号 四〇 ○ 分
ぶんりやう量 水
ミづ一 升
せうの 割
わり○印膠/△印明ばん末
すえ皆
みな見
みあワセ合 知るべし 金
きんぢ地 屏
びやうぶ風 襖
ふすまの 類
るい一編 へんおし押○又ハ一編/箔 はくともいふ通例也さらし○壱匁/焼△五分金地同
二編押/三編押分量同しさらし○壱匁二分/焼△五分金地同
絹 きぬはり張の上或 あるひハ布も芭 はセうふ蕉布の/類に画 ゑハ箔 はくおさえ押にてたる也さらし○八分/やき△四分金地 桐
きりいた板 の 上
うへに押
さらし○六分/やき△三分金地 堅
かたき木 の上に押
さらし○九分/やき△五分」(九オ「四」 ( 金地屏風 襖
ふすまの類さび押へ
油 あぶらぬき/ともいふ さらし○八分/やき△四分但鳥 とりの子かミ其外薄 うすよう葉等 とうに金箔 はくを押す上に/引時ハどふさの分 ふんりやう量さび押へと同じ○八分△四分也
○ 無
むじきん地金 に 礬
どふさ水 を 引
ひくこと 俗
ぞくに 錆
さびおさ押 へといふ是ハ/ 屏
びやうぶ風 に 画
ゑもなく用ゆるに 押
おし箔
はくの 侭
まゝな れ は / 箔
はくの 合
あわセめ 或
あるひハ 繕
つくろひ の 所
ところ/\々 箔
はくお ち つ か ぬ / 故
ゆへに 薄
うすく 礬
どうさ水 を 引
ひくこ と を 錆
さび押 へ とハいふなり。 」(九ウ「四」 ( ○ 按
あんするに 我
わか朝
てうの 昔
むかし屏
びやうぶ風 の 發
おこり 四 十 代 天
てんむ武 /
三十五代 舒明帝第三皇子/天智帝ノ御弟号浄見原天皇皇
くわうてい帝 の 御
ぎよう宇 朱 鳥 / 元 丙
ひのへいぬ戌
大唐武后朝重拱/二、中宗嗣聖三ニ当ル年
としの 春
はる新
しんら羅 国
こくよ り / 始
はじめて こ れ を 貢
ミつき是 屏
びやうぶ風 の 始
はじめめ な る
也
礼記 きに/天子斧 ふ/扆 いを負 おうて/立とハ是也