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佛教大學大學院紀要 27号(19990301) 001曽和義宏「迦才『浄土論』における教判」

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Academic year: 2021

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﹃浄

︹抄 録 ︺ 迦 才 の ﹃浄 土 論 ﹄ は 、 そ の 自 序 に よ る と 、 道 綽 の ﹃安 楽 集 ﹄ の 組 織 、 内 容 が 共 に 乱 雑 、 難 解 で あ る の で 、 そ れ を 整 理 し て 再 構 成 し 、 容 易 に 理 解 で き る よ う に し よ う と い う 意 図 の も と に 作 ら れ た も の で あ る の で 、 ﹃ 安 楽 集 ﹄ と 密 接 な 関 係 を 持 っ て い る こ と は 言 う ま で も な い 。 し か し な が ら 、 そ れ は 道 綽 の 素 意 を 顕 彰 す る た め で は な く 、 ﹃安 楽 集 ﹄ を 基 調 と し て 、 そ の 上 に 自 ら の 論 を 展 開 し よ う と し て い る も の と 思 わ れ る 。 迦 才 は 、 道 綽 と 同 じ く 時 機 教 三 者 の 一 致 の 必 要 性 を 説 き な が ら 、 聖 浄 二 門 判 を 全 く 取 り 上 げ て い な い 。 こ こ で は 迦 才 の 教 判 は ど の よ う な も の か 、 そ れ は 道 綽 と ど の よ う な 相 違 が 存 在 す る の か に つ い て 考 察 す る 。 キ ー ワ ー ド " 迦 才 ﹃ 浄 土 論 ﹄ 、 教 判 、 道 綽 、 理 事 二 門 判 は じ め に 迦 才 ( 1 六 四 八 1 ) の ﹃浄 土 論 ﹄ は 、 そ の 自 序 に 近 代 有 二 綽 禅 師 一 、 撰 二 安 楽 集 一 巻 一 。 雖 下 広 引 二 衆 経 一 略 申 中 道 理 上 、 其 文 義 参 雑 章 品 混 淆 、 後 之 読 レ 之 者 、 亦 躊 躇 未 レ 決 。 今 乃 捜 二 検 群 籍 一 備 引 二 道 理 一 、 勒 為 二 九 章 一 、 令 二 文 義 区 分 品 目 殊 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 )     り 位 一 、 使 下 覧 レ 之 者 宛 如 中 掌 中 上 耳 と あ る よ う に 、 道 綽 ( 五 六 ニ ー 六 四 五 ) の ﹃安 楽 集 ﹄ の 組 織 、 内 容 が 共 に 乱 雑 、 難 解 で あ る の で 、 そ れ を 整 理 し て 再 構 成 し 容 易 に 理 解 で き る よ う に し よ う と い う 意 図 の も と に 作 ら れ た も の で あ る 。 で あ る の で 、 ﹃安 楽 集 ﹄ と 密 接 な 関 係 を 持 つ こ と は 言 う ま で も な い 。 迦 才 の 意 図 は 、 道 綽 の 教 学 の 顕 彰 に あ っ た の だ ろ う か 。 名 畑 應 順 氏 一

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 ) は 、 ﹁ さ れ ば 迦 才 は 道 綽 の 淨 土 教 を 傳 承 し 、 安 樂 集 の 教 義 を 明 示 し よ       う と 企 て た も の と い う て も 、 過 言 で は あ る ま い ﹂ と さ れ て い る 。 し か し 、 そ の 中 に は 迦 才 独 自 の 立 場 が あ る こ と も 指 摘 さ れ て い る 。 こ れ に 対 し 山 本 佛 骨 氏 は 、 ﹁ 迦 才 が ﹃安 樂 集 ﹄ を 評 し て 、 文 義 參 雑 し 章 品 混 淆 す る が 故 に 補 正 す る と 云 つ て 居 る 事 も 、 内 容 を 檢 す れ ば 單 に 文 義 や 章 品 の 問 題 で 無 く て 、 實 は 教 義 思 想 の 更 改 な の で あ る 。 そ こ に 彼 は 道 綽 の 影 響 を 受 け た と 見 ら れ つ ・ 、 却 つ て 道 綽 に 遠 ざ か つ て 居 る と 考 え   ヨ   ら れ る ﹂ と さ れ て い る 。 こ の よ う に 、 迦 才 の 評 価 、 中 国 浄 土 教 理 史 上 マ   の 位 置 付 け に つ い て は 揺 れ が あ る の が 実 状 で あ る 。 い ず れ に せ よ 、 迦 才 は ﹃安 楽 集 ﹄ を 土 台 と し て 、 そ の 上 に 自 ら の 論 を 展 開 し て い る 。 し か し 迦 才 は 道 綽 の 教 学 を 顕 彰 す る 意 図 は な か っ た と 思 わ れ る 。 た と え ば 迦 才 は 道 綽 と 同 様 に 時 機 教 三 者 の 相 応 の 必 要 性 を 説 き 浄 土 教 を 勧 進 し な が ら 、 道 綽 の 教 判 で あ る 聖 浄 二 門 判 を 全 く 取 り 上 げ て い な い 。 そ こ で 迦 才 の 教 判 と は ど の よ う な も の か 、 迦 才 に お け る 浄 土 教 の 位 置 付 け に つ い て 検 討 し 、 そ れ に 関 わ る 諸 問 題 を 解 明 し て い き た い 。

教 判 、 す な わ ち 教 相 判 釈 と は 、 す べ て の 経 典 を 釈 尊 一 代 の 説 法 と み な し 、 そ れ を 時 間 的 に 、 あ る い は 教 化 方 法 、 内 容 な ど に よ っ て 分 類 し 、 整 理 し て 体 系 づ け る こ と に よ っ て 自 宗 の 優 位 性 を 表 そ う と す る も の で あ る 。 し か し 道 綽 に お い て は 、 時 期 と 機 根 と 教 法 と の 三 者 の 相 応 二 ハ う り と い う こ と に 基 準 を 置 い て 判 定 し よ う と す る も の で あ っ た 。 道 綽 は ﹃安 楽 集 ﹄ 第 一 大 門 に お い て 明 二 教 興 所 レ 由 、 約 レ 時 被 ワ 機 勧 帰 二 浄 土 一 者 、 若 教 赴 二 時 機 一 易 レ 修 易 レ 悟 、 若 機 教 時 乖 難 レ 修 難 レ 入 。 是 故 正 法 念 経 云 、 行 者 一 心 求 レ 道 時 常 当 レ 観 二 察 時 方 便 一 。 若 不 レ 得 レ 時 無 二 方 便 一 、 是 名 為 レ 失 、 不 レ 名 レ 利 。 何 者 如 攅 二 湿 木 一 以 求 レ 火 火 不 レ 可 レ 得 、 非 レ 時 故 。 若 折 二 乾 薪 一 以 覓 レ 火 、 火 不 レ 可 レ 得 、 無 レ 智 故 。 是 故 大 集 月 蔵 経 云 、 仏 滅 度 後 、 第 一 五 百 年 我 諸 弟 子 、 学 レ 慧 得 二 堅 固 一 。 第 二 五 百 年 学 レ 定 得 二 堅 固 [ 。 第 三 五 百 年 学 二 多 聞 読 誦 一 得 二 堅 固 一 。 第 四 五 百 年 造 二 立 塔 寺 一 修 レ 福 懺 悔 得 二 堅 固 一 。 第 五 五 百 年 白 法 隠 滞 多 有 二 諍 訟 一 。 微 有 二 善 法 一 得 二 堅 固 一 覧 と し 、 時 機 教 の 相 応 の 必 要 性 を 説 い て い る 。 そ の 典 拠 と し て ﹃正 法 念 ア   経 ﹄ を 引 き 、 そ し て ﹃ 大 集 月 蔵 経 ﹄ の 五 五 百 年 説 を 引 用 し て い る 。 そ し て 現 在 は ど の よ う な 時 代 か 、 と い う こ と を 計 今 時 衆 生 即 当 二 仏 去 レ 世 後 第 四 五 百 年 一 。 正 是 懺 悔 修 福 応 レ 称 二 仏 名 号 一 時 者 。 若 一 念 称 二 阿 弥 陀 仏 一 、 即 能 除 二 却 八 十 億 劫 生 死 之     レ 罪 一 。 一 念 既 爾 、 況 修 二 常 念 一 、 即 是 恒 懺 悔 人 也 。 と し て 、 今 は 仏 滅 後 千 五 百 年 を 経 た 第 四 の 五 百 年 で あ る と し 、 修 福 懺 悔 す べ き 時 で あ る と し て い る 。 一 方 、 迦 才 は ﹃ 浄 土 論 ﹄ 第 八 章 に お い て ﹁教 興 の 時 節 を 明 か す ﹂ と し て 、 行 者 修 レ 道 要 須 レ 観 レ 時 。 若 時 教 符 契 則 仏 道 易 レ 証 、 若 時 教 乖 錯 則 菩 提 匠 レ 証 。 故 正 法 念 経 云 、 行 者 一 心 求 レ 道 時 常 当 レ 観 二 察 時 方

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便 一 。 若 不 レ 得 レ 時 無 二 方 便 一 是 名 為 レ 失 、 不 レ 名 レ 利 。 五 時 者 、 如 大 集 月 蔵 分 云 仏 滅 度 後 第 一 五 百 年 、 我 諸 弟 子 学 レ 恵 得 二 堅 固 一 、 兼 修 二 余 行 一 。 第 二 五 百 年 学 レ 定 得 二 堅 固 一 、 兼 修 二 余 行 一 。 第 三 五 百 年 学 二 多 聞 読 誦 一 得 二 堅 固 一 、 兼 修 二 余 行 一 。 第 四 五 百 年 造 二 立 塔 寺 一 、 修 レ 福 懺 悔 得 二 堅 固 一 、 兼 修 二 余 行 一 。 第 五 五 百 年 白 法 隠 滞 多 有 二 諍 訟 一 。 微 有 二 善 法 一 得 二 堅 固 一 也 。 若 拠 二 此 経 一 、 今 是 第 四 五 百 年 余 、 既 無 二 定 恵 之 分 一 唯 須 二 修 福 懺 悔 一 。 修 福 懺 悔 最       為 レ 要 者 、 観 二 諸 経 論 一 礼 レ 仏 念 レ 仏 観 二 仏 相 好 一 、 此 最 為 レ 勝 也 。 と し て い る 。 時 機 教 の 相 応 の 必 要 性 を 説 き 、 そ し て ﹃ 正 法 念 経 ﹄ を そ の 典 拠 と し 、 ﹃大 集 月 蔵 経 ﹄ の 五 五 百 年 説 を 引 い て 、 い ま 現 在 は 第 四 の 五 百 年 で あ り 、 修 福 懴 悔 す べ き 時 で あ る 、 と 認 識 し て い る 。 こ こ で 道 綽 、 迦 才 の 両 者 が 引 用 す る ﹃大 集 月 蔵 経 ﹄ の 本 文 は 、 於 我 滅 後 五 百 年 中 、 諸 比 丘 等 猶 於 我 法 解 脱 堅 固 。 次 五 百 年 我 之 正 法 禅 定 三 昧 得 住 堅 固 。 次 五 百 年 読 誦 多 聞 得 住 堅 固 。 次 五 百 年 於 我 法 中 多 造 塔 寺 得 住 堅 固 。 次 五 百 年 於 我 法 中 闘 諍 定 言 頌 白 法 隱 沒 損 お   減 堅 固 。 で あ る 。 道 綽 は 、 第 一 の 五 百 年 を ﹁ 解 脱 堅 固 ﹂ か ら ﹁ 学 慧 堅 固 ﹂ に 改 め 、 第 四 の 五 百 年 に ﹁修 福 懺 悔 ﹂ を 、 第 五 の 五 百 年 に ﹁ 微 有 善 法 得 堅 固 ﹂ を 付 加 し て い る が 、 迦 才 も 全 く 同 様 で あ る 。 こ の よ う に 、 時 機 教 三 者 の 相 応 の 必 要 性 、 時 の 経 過 に 伴 う 法 の 衰 退 、 そ し て 現 在 は 第 四 の 五 百 年 で あ る と 認 識 し て い る と い う 点 で 道 綽 と 迦 才 は 一 致 し て い る 。 こ こ で 迦 才 が 道 綽 と 相 違 す る 点 は 、 修 福 懺 悔 の 具 体 的 な 内 容 で あ る 。 道 綽 は 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) 又 彼 経 云 、 諸 仏 出 レ 世 有 二 四 種 法 一 度 二 衆 生 一 。 何 等 為 レ 四 。 一 者 口 説 二 十 二 部 経 一 、 即 是 法 施 度 衆 生 。 二 者 諸 仏 如 来 有 二 無 量 光 明 相 好 一 、 一 切 衆 生 但 能 繋 レ 心 観 察 無 レ 不 レ 獲 レ 益 、 是 即 身 業 度 衆 生 。 三 者 有 二 無 量 徳 用 神 通 道 力 種 種 変 化 一 、 即 是 神 通 力 度 衆 生 。 四 者 諸 仏 如 来 有 二 無 量 名 号 一 、 若 総 若 別 、 其 有 二 衆 生 一 繋 レ 心 称     ソ 念 、 莫 レ 不 三 除 レ 障 獲 レ 益 皆 生 二 仏 前 一 。 即 是 名 号 度 衆 生 。 と し て 四 種 度 生 法 を 挙 げ 、 そ れ を 先 の 五 五 百 年 説 と 関 連 さ せ 、 修 福 懺 悔 す べ き 時 と い う の は 仏 の 名 号 を 称 す べ き 時 で あ る と し て い る 。 そ れ に 対 し 迦 才 は 、 ﹃ 浄 土 論 ﹄ 第 八 章 に お い て 、 道 綽 と 同 じ よ う に 又 仏 度 二 衆 生 一 、 自 有 二 四 種 [ 。 如 二 正 法 念 経 説 一 、 一 以 二 説 法 一 度 二 衆 生 一 。 二 以 二 光 明 相 好 一 度 二 衆 生 一 。 三 以 二 神 通 道 力 一 度 二 衆 生 一 。 四 以 二 名 号 一 度 二 衆 生 一 。 此 四 之 中 相 好 名 号 、 正 当 二 今 時 一 。   ほ   観 二 察 阿 弥 陀 仏 相 好 一 、 及 称 二 仏 名 号 一 也 。 と 、 四 種 度 生 法 を 挙 げ て い る が 、 そ の 中 の 第 二 の 光 明 相 好 、 第 四 の 名 号 に よ っ て 衆 生 を 度 す と し て い る 。 衆 生 の 側 か ら 言 え ば 、 仏 の 名 号 、 光 明 相 好 に 働 き か け る こ と 、 す な わ ち ﹁ 仏 を 礼 し 、 仏 を 念 じ 、 相 好 を 観 察 す る ﹂ こ と が 、 修 福 懺 悔 の 具 体 的 な 行 業 で あ る と す る の で あ る 。 こ の 迦 才 の 往 生 因 、 実 践 論 に つ い て は 後 述 す る が 、 い ず れ に せ よ 、 迦 才 は 道 綽 と 同 じ よ う に 、 時 機 教 の 三 者 が 相 応 す る こ と が 必 要 で あ る と し て い る と い え よ う 。 三

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 )

道 綽 は ﹃安 楽 集 ﹄ 第 三 大 門 に お い て 、 ﹁ 聖 浄 二 門 判 ﹂ に よ っ て 仏 教 を 分 け て い る 。 す な わ ち 問 日 、 一 切 衆 生 皆 有 仏 性 、 遠 劫 以 来 応 値 二 多 仏 一 。 何 因 至 レ 今 仍 自 輪 二 廻 生 死 一 不 レ 出 二 火 宅 一 。 答 日 、 依 二 大 乗 聖 教 一 良 由 レ 不 下 得 二 二 種 勝 法 一 以 排 中 生 死 上 。 是 以 不 レ 出 二 火 宅 一 。 何 者 為 レ ニ 、 一 謂 聖 道 、 二 謂 往 生 浄 土 。 其 聖 道 一 種 今 時 難 レ 証 、 一 由 下 去 二 大 聖 一 遙 遠 上 。 二 由 二 理 深 解 微 一 。 是 故 大 集 月 蔵 経 云 、 我 末 法 時 中 億 億 衆 生 、 起 レ 行 修 レ 道 未 レ 有 二 一 人 得  ヨ 者 一 。 当 今 末 法 、 現 是 五 濁 悪 世 。 唯 有 二 浄 土 一 門 一 可 二 通 入 一 路 。 と し て 、 繰 り 返 さ れ る 輪 廻 か ら 脱 す る 法 に 、 聖 道 門 、 浄 土 門 の 二 門 が あ り 、 と く に 末 法 で あ る 現 在 に お い て は 、 た だ 浄 土 門 だ け が さ と り へ と 通 入 す る 道 で あ る 、 と し て い る 。 ハ い   こ れ に 対 し 迦 才 は 、 ﹃浄 土 論 ﹄ の 第 一 番 の 問 答 、 発 起 序 に お い て 、 滞 俗 公 子 に よ る 然 域 内 非 レ 穢 。 浄 二 自 是 心 一 注 二 想 西 方 一 、 暁 レ 所 レ 未 レ 暁 、 十 方 咸 浄 、 偏 鴃 二 一 隅 [ 、 用 二 此 纏 情 ㌔ 願 為 二 開 決 一 鴨 v と い う 問 い を 立 て て 、 そ れ に 対 し て 、 但 聖 教 弘 規 、 位 階 八 万 。 要 而 論 レ 之 無 レ 過 二 理 事 一 。 此 之 二 門 其 猶 下 車 有 二 両 輪 一 、 鳥 有 中 二 翼 上 。 若 闕 二 其 一 一 則 不 レ 能 二 沖 虚 遠 逝 一 。 如 二 起 信 論 一 有 二 止 観 二 門 一 。 止 則 縁 レ 理 、 観 則 縁 レ 事 。 如 未 レ 達 二 此 二 一 、 則 構 二 虚 生 滞 一 耳 。 而 語 断 心 滅 者 理 也 。 期 レ 西 四 念 レ 仏 者 事 也 。 然 三 界 唯 心 、 域 内 非 レ 穢 。 若 未 レ 階 二 十 地 一 、 且 将 レ 境 浄 レ 心 。 雖 二 十 方 咸 浄 一 而 境 界 普 散 。 欲 レ 令 二 専 レ 想 往 生 一 、 お り 所 以 偏 鴃 二 一 隅 一 矣 。 と 答 え て い る 。 つ ま り な ぜ 西 だ け に 執 着 す る よ う な 教 え を 用 い る の か 、 と い う 質 問 に 対 し て 、 仏 教 に は 数 多 く の 教 え が あ る が 、 そ れ ら は す べ て 理 と 事 の 二 門 に お さ ま る 。 そ し て 浄 土 教 は 事 の 法 門 で あ り 、 十 方 す べ て が 浄 で あ る と い っ て も 、 凡 夫 は 散 乱 し て し ま う の で 、 西 方 の 一 方 の み を の ぞ む の で あ る 、 と し て い る の で あ る 。 つ ま り 迦 才 は 聖 浄 二 門 判 で は な く 、 仏 教 を 理 と 事 に 分 類 す る 、 ﹁ 理 事 二 門 判 ﹂ を も っ て 教 判 と し て い る の で あ る 。 ま た 、 第 九 章 に お い て も 同 様 に 、 問 日 、 如 二 大 乗 経 論 一 皆 説 二 無 相 無 生 一 。 何 故 此 経 勧 令 下 衆 生 観 二   コ 於 相 生 一 求 中 乎 浄 土 上 。 と 、 大 乗 の 諸 経 論 は す べ て 無 相 無 生 を 説 く の に 、 な ぜ 衆 生 に 有 相 有 生 を 観 じ さ せ 、 浄 土 に 生 ず る こ と を 求 め さ せ る の か 、 と い う 問 い を 立 て 、 そ れ に 対 し 、 ・ 答 日 、 此 問 並 是 不 レ 順 レ 理 問 。 応 二 用 置 ワ 答 。 若 欲 レ 答 者 応 二 反 問 云 一 。 諸 仏 有 二 八 万 四 千 法 門 一 、 汝 問 二 何 者 [ 。 西 方 浄 土 是 何 収 、 無 相 無 生 是 何 門 摂 。 彼 若 答 云 、 但 是 一 門 。 此 即 是 愚 痴 人 、 不 レ 可 二 与 語 一 也 。 彼 答 云 、 無 相 無 生 是 理 、 有 相 有 生 是 事 者 、 即 応 レ 答 レ 我 。 汝 自 解 竟 、 何 須 レ 問 レ 我 。 故 欲 レ 令 二 我 答 一 者 、 応 レ 云 、 諸 仏 有 二 八 万 四 千 法 門 一 、 各 各 差 別 不 二 相 雑 乱 一 。 若 忽 摂 レ 之 即 為 二 真 俗 二 諦 一 。 此 之 二 諦 有 仏 無 仏 性 相 常 住 非 二 人 造 一 也 。 故 中 論

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云 、 諸 仏 説 法 常 依 二 二 諦 } 。 又 云 、 若 人 不 レ 能 レ 知 レ 分 二 別 於 二 諦 一 、 即 於 二 深 仏 法 一 不 レ 得 二 真 実 義 一 驢 ) と 答 え て い る 。 つ ま り 仏 教 全 体 を 、 真 諦 11 無 相 無 生 11 理 と 、 俗 諦 11 有 相 有 生 H 事 と に 分 け て い る 。 そ し て 、 ﹃ 中 論 ﹄ の 諸 仏 依 二 諦 為 衆 生 説 法 一 以 世 俗 諦 二 第 一 義 諦 若 人 不 能 知 分 別 於 二 諦 則 於 深 仏 法 不 知 真 実 義   ね   若 不 依 俗 諦 不 得 第 一 義 不 得 第 一 義 則 不 得 涅 槃 と い う 偈 、 す な わ ち 諸 仏 の 説 法 は 、 必 ず 世 俗 諦 (俗 諦 ) と 第 一 義 諦 (真 諦 ) に 依 っ て お り 、 そ し て 俗 諦 に 依 ら な け れ ば 真 諦 を 得 ら れ ず 、 涅 槃 を 得 る こ と も で き な い と い う こ と を 証 と し 、 理 、 事 と も に 欠 い て は な ら な い と し て い る 。 つ ま り 迦 才 が ﹃浄 土 論 ﹄ で 問 題 と し て い る 浄 土 教 は 、 有 相 有 生 で あ り 、 事 で あ る と い う こ と を 明 ら か に し て い る 。 こ の よ う に 迦 才 は 、 仏 教 全 体 を 理 と 事 と に わ け る ﹁ 理 事 二 門 判 ﹂ を も っ て 教 判 と し て い る の で あ る 。 三 ﹁ 理 事 二 門 判 ﹂ 設 定 の 背 景 ﹃安 楽 集 ﹄ 第 四 大 門 に は 、 曇 鸞 (四 七 六 ー 五 四 二 ) の 存 命 中 の 出 来 事 と し て 、 次 の よ う な こ と を 伝 え て い る 。 如 二 曇 鸞 法 師 一 康 存 之 日 常 修 二 浄 土 一 。 亦 毎 有 二 世 俗 君 子 一 来 呵 二 法 師 一 日 、 十 方 仏 国 皆 為 二 浄 土 一 、 法 師 何 乃 独 意 注 レ 西 。 豈 非 二 偏 見 生 一 也 。 法 師 対 日 、 吾 既 凡 夫 智 慧 浅 短 。 未 レ 入 二 地 位 一 念 力 須 レ 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) 均 。 如 三 似 置 レ 艸 引 レ 牛 恒 須 レ 繋 二 心 槽 櫪 一 。 豈 得 三 縦 放 全 無 二 所

こ こ で は 、 世 俗 の 君 子 が 曇 鸞 に ﹁ 西 方 の み に 心 を 繋 け る の は 偏 見 で あ る ﹂ と 誹 っ た の に 対 し 、 曇 鸞 は ﹁ 十 方 す べ て が 浄 土 で あ っ て も 、 凡 夫 で あ る 我 々 は 心 が 散 乱 す る だ け で あ り 、 西 に 想 い を 繋 け る の は 、 ち ょ う ど 草 を お い て 牛 を 引 き 、 そ の 心 を 飼 葉 桶 に か け さ せ る よ う な も の で あ る ﹂ と 答 え て い る 。 こ の 世 俗 の 君 子 と 曇 鸞 の 問 答 と 、 ﹃浄 土 論 ﹄ 発 起 序 と は 、 体 裁 、 内 容 も 同 一 で あ る こ と が 認 め ら れ る 。 迦 才 は こ の 問 答 の 記 述 か ら か ら 影 響 を 受 け て い る こ と は 明 ら か で あ る 。 こ の よ う な 浄 土 教 に 対 す る 批 難 は さ ま ざ ま な 形 で 存 在 し て い る 。 道 宣 ( 五 九 六 ー 六 六 七 ) 撰 の ﹃続 高 僧 伝 ﹄ に は 、 道 綽 が 実 際 に 受 け た 批 ハ の り 難 と し て 、 二 つ の 事 例 を 載 せ て い る 。 ま ず 第 一 は 、 巻 第 十 九 の 智 満 伝 で あ る 。 そ こ に は 有 二 沙 門 道 綽 者 一 。 夙 有 二 弘 誓 一 、 友 而 敬 奉 。 因 喩 レ 満 日 、 法 有 二 生 滅 一 、 道 在 二 機 縁 一 。 観 レ 相 易 レ 入 二 其 門 一 、 渉 レ 空 頗 限 二 其 位 一 。 願 随 二 所 説 一 進 道 有 レ 期 。 満 乃 肝 衡 而 告 日 、 積 年 誠 業 冀 此 弘 持 。 縁 虚 無 レ 相 可 レ 縁 引 レ 実 、 有 二 何 所 τ 引 、 豈 以 二 一 期 要 法 一 累 劫 埋   お り 乎 。 幸 早 相 辞 、 勿 レ 塵 二 妄 識 一 。 綽 乃 退 焉 。 と あ る 。 第 二 は 巻 第 二 十 四 の 曇 選 伝 で あ る 。 そ こ に は 吾 命 将 尽 、 何 処 生 乎 。 名 行 僧 道 綽 日 、 阿 闍 黎 、 西 方 楽 土 名 為 二 安 ハ お り 養 一 可 レ 願 レ 生 レ 彼 。 選 日 、 咄 為 レ 身 求 レ 楽 、 吾 非 二 爾 儔 一 。 と あ る 。 道 綽 と 智 満 ( 五 五 一 ー 六 二 八 ) は 、 慧 瑣 (五 三 六 -六 〇 七 ) 五

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 )   が け の 教 団 で の 同 門 で あ り 、 曇 選 ( 五 三 一 ー 六 二 五 ) は 智 満 の 名 声 を 聞 き   タ そ の 室 に 参 じ た こ と が 、 ﹃ 続 高 僧 伝 ﹄ の 記 事 か ら う か が え る 。 智 満 伝 に 見 ら れ る 批 難 と い う の は 、 貞 観 二 年 (六 二 八 ) 、 道 綽 が 病 に 倒 れ た 智 満 に 対 し 、 ﹁ 相 を 観 ず る 行 は 入 り 易 く 、 空 に よ る な ら ば 、 そ れ が 出 来 る 人 は 限 ら れ る ﹂ と 言 っ て 浄 土 教 へ の 帰 入 を 勧 め た と こ ろ 、 智 満 は 目 を つ り 上 げ て 反 論 し 、 道 綽 は や む な く そ の 場 を 辞 し た 、 と い う も の で あ る 。 い っ ぽ う 曇 選 伝 に お い て は 、 武 徳 八 年 (六 二 五 ) 、 曇 選 が 命 終 ら ん と す る 時 、 ﹁ 我 が 命 は ま さ に 尽 き よ う と し て い る 。 一 体 ど こ に 生 ま れ る の だ ろ う か ﹂ と 訊 ね た 。 そ れ に 対 し 道 綽 が ﹁ 西 方 に 安 養 と 名 づ け る 楽 土 が あ る 。 そ こ に 生 ま れ る こ と を 願 う べ き で あ る ﹂ と 答 え た と こ ろ 、 曇 選 は ﹁ 咄 、 我 が 身 の た め に 楽 を 求 め る な ど 、 私 は お ま え ら の 仲 間 で は な い ﹂ と 答 え た 、 と あ る 。 こ の よ う に 道 綽 在 世 中 に お い て も 、 智 満 伝 に 見 ら れ る よ う に 、 無 相 空 理 を 勝 れ た も の と し 有 相 の 浄 土 へ の 願 生 を 軽 視 し た り 、 曇 選 伝 に 見 ら れ る よ う に 、 浄 土 へ の 往 生 を 求 め る こ と は 自 分 一 人 だ け 楽 を 求 め る も の で あ る 、 と 考 え ら れ て い た 。 こ の よ う に 、 西 方 極 楽 浄 土 へ の 往 生 を 願 う 浄 土 教 は 仏 教 の 主 流 で は な か っ た こ と を 知 る こ と が で き る 。 こ れ ら の 批 難 に つ い て 、 道 綽 は 第 二 大 門 第 二 に お い て ﹁ 異 見 邪 執 を 破 す ﹂ と し て 、 第 二 明 レ 破 二 異 見 邪 執 一 者 、 就 レ 中 有 二 其 九 番 [ 。 第 一 破 下 妄 計 二 大 乗 無 相 一 異 見 偏 執 上 。 第 二 会 二 通 菩 薩 愛 見 大 悲 一 。 第 三 破 二 繋 心 外 無 ワ 法 。 , 六 第 四 破 下 願 レ 生 二 穢 国 一 不 レ 願 7 往 中 生 浄 土 上 。 第 五 破 下 若 生 二 浄 土 一 多 喜 著 占 楽 。 第 六 破 下 求 レ 生 二 浄 土 一 非 中 是 小 乗 上 。 第 七 破 下 求 レ 生 二 兜 率 一 勧 占 不 レ 帰 二 浄 土 一 。 第 八 会 下 通 若 求 レ 生 二 十 方 浄 土 一 不 レ 如 レ 帰 レ 西 上 。 第 九 料 二 簡 別 時 之 意 碯 と 、 九 つ の 批 難 を 挙 げ 、 そ れ に 対 し て 反 論 し て い る 。 こ の う ち 、 第 七 の 兜 率 往 生 勧 帰 の 難 と 第 九 の 別 時 意 説 の 難 以 外 は 、 す べ て ﹃続 高 僧   が り 伝 ﹄ に み ら れ る 二 種 の 批 難 に 収 斂 さ れ る 。 さ ら に は 兜 率 と 極 楽 の 優 劣 や 、 別 時 意 説 の 問 題 も 、 浄 土 教 に と っ て は 無 視 で き な い 重 大 な 問 題 で ま   あ り 、 ﹃浄 土 論 ﹄ に お い て も 重 要 な 問 題 と し て 取 り 上 げ ら れ て い る 。 さ て 、 こ こ で は ﹃浄 土 論 ﹄ 発 起 序 で も 取 り 上 げ ら れ て い る 、 西 方 浄 土 へ の 往 生 を 求 め る こ と は 執 着 で は な い か 、 と い う 批 難 に 対 す る 道 綽 の 反 論 に つ い て 検 討 し て み よ う 。 ま ず 先 の 九 つ の 批 難 の う ち 、 第 一 番 目 の 批 難 に つ い で あ る が 、 第 一 、 破 三 妄 計 二 大 乗 無 相 一 者 、 問 日 、 或 有 レ 人 言 、 大 乗 無 相 勿 レ 念 二 彼 此 一 。 若 願 レ 生 二 浄 土 一 、 便 是 取 相 転 増 二 漏 縛 一 。 何 用 求 レ   お   之 。 と い う 批 難 を 挙 げ て い る 。 つ ま り ﹁ 浄 土 願 生 は 取 相 に と ら わ れ た も の で あ り 漏 縛 を 増 す も の で あ る ﹂ と い う こ と で あ る 。 そ れ に 対 し て 道 綽 は 、 答 日 、 如 レ 此 計 者 将 謂 不 レ 然 、 何 者 。 一 切 諸 仏 説 法 、 要 具 二 二 縁 一 、 一 依 二 法 性 実 理 一 、 二 須 レ 順 二 其 二 諦 一 。 彼 計 大 乗 無 念 、 但

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依 二 法 性 一 然 謗 二 無 縁 求 一 。 即 是 不 レ 順 二 二 諦 一 。 如 レ 此 見 者 堕 二 滅

と 答 え て い る 。 つ ま り 、 一 切 諸 仏 の 説 法 は 、 第 一 に 法 性 の 実 理 に 依 り 、 第 二 に そ の 二 諦 の 真 理 に 順 ず る と い う 二 縁 を 具 し て い る こ と を 明 か し て い る 。 そ し て 、 大 乗 無 相 と い う こ と を も っ て 浄 土 願 生 を 批 難 す る 者 は 、 そ の 法 性 の 実 理 に の み 偏 執 し て い る の で あ り 、 そ れ は 二 諦 の 真 理 に 順 じ な い こ と と な り 、 空 見 に 堕 す 者 で あ る と し て い る 。 そ し て 今 勧 二 行 者 一 。 理 雖 二 無 生 [ 、 然 二 諦 道 理 非 レ 無 二 縁 求 一 、 一 切 得 二   れ   往 生 一 也 。 と し て 、 浄 土 教 が 否 定 さ れ る べ き も の で な い こ と を 示 し て い る 。 こ の 反 論 は 、 先 に 挙 げ た ﹃中 論 ﹄ の 二 諦 説 が 根 底 と な っ て お り 、 二 諦 に 順 ず る な ら ば 、 西 方 浄 土 へ の 往 生 は 単 な る 取 相 、 執 着 で は な い と 反 論 し て い る の で あ る 。 次 に 第 二 番 目 の 批 難 に 対 す る 反 論 、 ﹁ 菩 薩 愛 見 の 大 悲 な り と い う を 会 通 す ﹂ と い う 中 で 、 問 日 、 依 二 大 乗 聖 教 一 、 菩 薩 於 二 諸 衆 生 一 、 若 起 二 愛 見 大 悲 一 、 即 応 二 捨 離 一 。 今 勧 二 衆 生 一 共 生 二 浄 土 [ 、 豈 非 二 愛 染 取 相 一 。 若 為 免 二 其 塵 累 一 也 。 答 日 、 菩 薩 行 法 功 用 有 レ ニ 。 何 者 。 一 証 二 空 慧 般 若 一 、 二 具 二 大 悲 一 。 一 以 下 修 二 空 慧 般 若 一 力 上 故 、 雖 レ 入 二 六 道 生 死 一 、 不 下 為 二 塵 染 一 所 占 繋 。 二 以 三 大 悲 念 二 衆 生 一 故 、 不 レ 住 二 涅 槃 一 。 菩 薩 雖 レ 処 二 二 諦 一 、 常 能 妙 捨 二 有 無 [ 、 取 捨 得 レ 中 不 レ 違 二 大 道 理 一 也 。 是 故 維 摩 経 云 、 譬 如 乙 有 レ 人 欲 下 於 二 空 地 一 造 中 立 宮 舎 上 随 レ 意 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) 無 碍 。 若 於 二 虚 空 一 終 不 甲 レ 能 レ 成 。 菩 薩 亦 如 レ 是 。 為 レ 欲 三 成 二 就   タ 衆 生 一 故 、 願 二 取 仏 国 一 。 願 取 二 仏 国 一 者 、 非 レ 於 レ 空 也 。 と 、 菩 薩 に は 空 を さ と る こ と 、 大 悲 を 具 え る こ と の 二 種 の 行 法 が あ り 、 こ れ ら に よ っ て 六 道 の 汚 れ に は 繋 が れ ず 、 大 悲 を も っ て 衆 生 済 度 し よ う と し て 、 有 相 の 浄 土 を 立 て る の で あ る と し て 、 有 相 と い う こ と は 取 相 で は な い と す る の で あ る 。 ま た 第 三 の 批 難 に 対 す る 反 論 、 ﹁心 の 外 に 法 無 し と い う こ と に 繋 す る を 破 す ﹂ と い う 中 に お い て も 問 日 、 或 有 レ 人 言 、 所 観 浄 境 約 二 就 内 心 一 、 浄 土 融 通 。 心 浄 即 是 。 是 心 外 無 レ 法 。 何 須 二 西 入 一 。 答 日 、 但 法 性 浄 土 理 処 二 虚 融 一 、 体 無 二 偏 局 一 。 此 乃 無 生 之 生 、 上 士 堪 レ 入 。 (中 略 ) 自 有 二 中 下 之 輩 一 、 未 レ 能 レ 破 レ 相 、 要 依 二 信 仏 因 縁 一 、 求 レ 生 二 浄 土 一 。 雖 レ 至 二 彼 国 一 、 還 居 二 相 土 一 。 又 云 、 若 摂 レ 縁 従 レ 本 、 即 是 心 外 無 レ 法 。 若 分 二 二 諦 } 義 レ 明 、 浄 土 、 無 レ   お   妨 二 是 心 外 法 一 也 。 と し て い る 。 す な わ ち 無 生 の 生 で あ る 法 性 の 浄 土 は 上 士 の み が 入 る こ と が で き 、 中 ・ 下 の 輩 は 相 を 破 す こ と は で き な い が 、 信 仏 の 因 縁 に よ っ て 浄 土 に 生 ま れ る こ と を 求 め 、 浄 土 に 往 生 す る こ と は で き る が 相 土 に 往 生 す る の で あ る 、 と し て い る 。 つ ま り 無 相 の 土 は 上 輩 が 生 ず る と こ ろ で あ り 、 中 下 輩 は 相 土 に 往 生 す る と い う こ と で あ る 。 こ の 菩 薩 の 階 位 と 無 相 、 有 相 の 関 係 に つ い て で あ る が 、 第 七 大 門 に お い て 問 日 、 依 二 大 乗 諸 経 一 、 皆 云 一二 無 相 乃 是 出 離 要 道 。 執 相 拘 碍 不 レ 七

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 ) ハま 免 二 塵 累 一 。 今 勧 二 衆 生 一 捨 レ 穢 忻 レ 浄 、 是 義 云 何 。 と 、 先 の ﹁ 浄 土 願 生 は 取 相 に と ら わ れ た も の で あ り 漏 縛 を 増 す も の で あ る ﹂ と い う 批 難 と 同 様 の 問 を 挙 げ て い る 。 そ れ に 対 し て 答 日 、 此 義 不 レ 類 、 何 者 。 凡 相 有 二 二 種 一 、 一 者 於 二 五 塵 欲 境 一 妄 愛 貪 染 、 随 レ 境 執 着 。 此 等 是 相 、 名 レ 之 為 レ 縛 。 二 者 愛 二 仏 功 徳 一 、 願 レ 生 二 浄 土 一 。 雖 レ 言 二 是 相 一 名 為 二 解 脱 一 。 何 以 得 レ 知 。 如 二 十 地 経 云 一 、 初 地 菩 薩 尚 自 別 二 観 二 諦 一 励 心 作 意 。 先 依 レ 相 求 終 則 無 相 。 以 漸 増 進 体 二 大 菩 提 一 。 尽 二 七 地 終 心 一 、 相 心 始 息 。 入 二 其 八 地 一 絶 二 於 相 求 一 方 名 二 無 功 用 一 也 。 是 故 論 云 、 七 地 已 還 悪 貪 為 レ 障 善 貪 為 レ 治 。 八 地 已 上 善 貪 為 レ 障 無 貪 為 レ 治 。 況 今 願 レ   ま 生 二 浄 土 一 現 是 外 凡 、 所 修 善 根 皆 従 二 愛 仏 功 徳 一 生 。 豈 是 縛 也 。 と 答 え て い る 。 初 地 の 菩 薩 は 最 初 は 有 相 を 修 し て 菩 提 を 求 め る が 、 七 地 に 至 っ て は 相 を 求 め る 心 が な く な り 、 八 地 に 入 れ ば 相 を 求 め る こ と も 絶 つ 。 そ れ を 無 功 用 と す る 。 七 地 ま で は 悪 貪 が 障 害 と な り 、 善 貪 が 治 と な る 。 八 地 以 上 は む し ろ 善 貪 も 障 害 と な り 、 無 貪 を 治 と す る 。 外 凡 の 所 修 の 善 根 は み な 仏 の 功 徳 を 愛 す る こ と よ り 生 ず る の で あ り 、 相 を 取 る こ と も 決 し て 縛 と は な ら な い 、 と し て い る 。 つ ま り 階 位 の 低 い も の が 有 相 土 に 往 生 す る と し て い る の で あ る 。 こ れ ら の よ う に 道 綽 は 、 相 ・ 無 相 二 諦 論 に 立 っ て 有 相 願 生 浄 土 の 妥 当 性 を 主 張 す る の で あ る 。 迦 才 の 場 合 も 、 先 に 見 た よ う に 、 ﹃ 中 論 ﹄ の 真 俗 二 諦 論 に 立 脚 し た 理 事 二 門 判 に よ っ て 浄 土 教 の 妥 当 性 を 主 張 し て い る こ と は 道 綽 と 同 様 で あ る 。 さ て こ こ で い う 無 相 ・ 有 相 の 問 題 は 所 求 、 す な わ ち 仏 身 仏 土 、 特 に 八 仏 土 の 性 格 と い う 点 に お い て 論 じ ら れ て い る と い う こ と が わ か る 。 で あ る の で 、 こ の 無 相 土 と 有 相 土 は 本 質 的 に 同 じ で あ る の か 、 別 で あ る か 、 と い う こ と が 問 題 と な ろ う 。 次 に 両 者 の 解 釈 を 検 討 し て み た い と 思 う 。

ま ず 道 綽 の 解 釈 で あ る 。 道 綽 は 、 現 在 の 阿 弥 陀 仏 は 報 身 で あ り 、 極   あ   楽 浄 土 は 報 土 で あ る と い う こ と を 明 確 に 主 張 し て い る 。 そ し て 第 一 大 門 第 八 に お い て 、 第 八 明 下 弥 陀 浄 国 位 該 二 上 下 一 凡 聖 通 往 上 者 、 今 此 無 量 寿 国 是 其 報 浄 土 。 由 二 仏 願 一 故 乃 該 二 通 上 下 一 。 致 レ 令 三 凡 夫 之 善 並 得 二 往   れ   生 一 。 由 レ 該 レ 上 故 、 天 親 龍 樹 及 上 地 菩 薩 亦 皆 生 也 。 と 、 阿 弥 陀 仏 の 浄 土 は 本 願 に よ る ﹁ 凡 聖 通 往 ﹂ の 報 土 で あ り 、 凡 夫 で も 天 親 、 龍 樹 な ど の 上 地 の 菩 薩 も み な 同 じ く 往 生 で き る と し て い る 。 し か し こ こ に お い て も 問 日 、 弥 陀 浄 国 既 云 下 位 該 二 上 下 一 、 無 レ 問 二 凡 聖 一 皆 通 往 上 者 、 未 レ 知 、 唯 修 二 無 相 一 得 レ 生 、 為 当 凡 夫 有 相 亦 得 レ 生 也 。 答 日 、 凡 夫 智 浅 、 多 依 レ 相 求 決 得 二 往 生 一 。 然 以 二 相 善 力 微 一 、 但 ハ が ね 生 二 相 土 一 唯 覩 二 報 化 仏 一 也 。 と 、 無 相 土 、 有 相 土 が 分 立 せ ら れ て い る 。 こ れ ら の こ と と ﹁ 凡 聖 通 往 ﹂ と い う こ と は 、 矛 盾 し て い る の で は な い か 、 と の 問 題 が 生 じ て く る 。 こ れ に つ い て 道 綽 は 、 同 じ く 第 一 大 門 第 八 に

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是 故 天 親 菩 薩 論 云 、 若 能 観 二 二 十 九 種 荘 厳 清 浄 一 、 即 略 入 二 一 法 句 一 。 一 法 句 者 謂 清 浄 句 、 清 浄 句 者 即 是 智 慧 無 為 法 身 故 。 何 故 須 二 広 略 相 入 一 者 、 但 諸 仏 菩 薩 有 二 二 種 法 身 一 、 一 者 法 性 法 身 、 二 者 方 便 法 身 。 由 二 法 性 法 身 一 故 生 二 方 便 法 身 一 、 由 二 方 便 法 身 一 故 顕 二 出 法 性 法 身 一 。 此 二 種 法 身 、 異 而 不 レ 可 レ 分 、 一 而 不 レ 可 レ 同 。 是 故 広 略 相 入 。 菩 薩 若 不 レ 知 二 広 略 相 入 一 、 則 不 レ 能 二 自 利 利 他 一 。 無 為 法 身 者 即 法 性 身 也 。 法 性 寂 滅 故 即 法 身 無 相 也 。 法 身 無 相 故 則 能 無 レ 不 レ 相 。 是 故 相 好 荘 厳 即 是 法 身 也 。 法 身 無 知 故 則 能 無 レ 不 レ 知 。 是 故 一 切 種 智 即 是 真 実 智 慧 也 。 雖 レ 知 三 就 レ 縁 観 二 総 別 二 句 一 、 莫 レ 非 二 実 相 [ 也 。 以 レ 知 二 実 相 一 故 即 知 三 二 界 衆 生 虚 妄 相 一 也 。 以 レ 知 三 二 界 衆 生 虚 妄 一 故 即 起 二 真 実 慈 悲 一 也 。 以 レ 知 二 真 実   み   慈 悲 一 故 即 起 二 真 実 帰 依 一 也 。 と 、 曇 鸞 の ﹃往 生 論 註 ﹄ の ﹁ 広 略 相 入 ﹂ ﹁ 二 種 法 身 ﹂ の 説 を 引 い て い る 。 ﹁ 広 ﹂ で あ る 二 十 九 種 荘 厳 、 方 便 法 身 す な わ ち 有 相 と 、 ﹁ 略 ﹂ で あ る 一 法 句 、 清 浄 句 、 智 慧 無 為 法 身 、 法 性 法 身 す な わ ち 無 相 と の 関 係 は 、 ﹁ 異 に し て 分 か つ べ か ら ず 、 一 に し て 同 ず べ か ら ず ﹂ 、 ﹁ 法 身 無 相 な る が 故 に 、 す な わ ち 能 く 相 な ら ざ る こ と 無 し ﹂ 、 ﹁ 法 身 は 無 知 な る が 故 に す な わ ち 能 く 知 ら ず と い う こ と 無 し ﹂ と い う こ と で あ る 。 つ ま り 有 相 土 と 無 相 土 は ﹁ 相 土 即 無 相 土 ﹂ と い う こ と で あ り 、 本 質 的 に は 本 あ   願 成 就 の ﹁ 凡 聖 通 往 ﹂ の 報 土 で あ る 、 と い う こ と が で き る 。 こ れ は 無 相 ・ 有 相 に 価 値 的 差 異 は な く 、 さ ら に は 聖 道 門 ・ 浄 土 門 の 相 違 は 、 時 機 に 相 応 す る か 否 か と い う 点 の み で あ っ て 、 何 れ が 価 値 的 に 優 れ て い る か を 明 か す も の で は な い と い え よ う 。 そ れ を 支 え る の は 阿 弥 陀 仏 の 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) 本 願 力 で あ る こ と は 言 う ま で も な い 。 こ れ に 対 し 迦 才 は 、 第 一 章 に お い て 如 二 龍 樹 等 菩 薩 往 生 一 、 具 見 二 法 報 化 三 種 浄 土 一 。 由 レ 上 得 レ 見 レ 下 故 。 由 二 此 義 一 故 、 諸 経 論 中 或 判 為 レ 報 、 或 判 為 レ 化 、 皆 不 レ   れ   失 レ 旨 也 。 と し て い る 。 つ ま り 、 龍 樹 等 の 上 地 の 菩 薩 は 、 そ の 機 根 が 上 で あ る 、 つ ま り 優 れ て い る の で 、 下 で あ る 所 、 す な わ ち 化 土 も 見 る こ と が で き る と し て い る 。 そ れ に 対 し て 凡 夫 は い か な る 浄 土 に 往 生 す る の か と い う と 、 同 じ く 第 一 章 に お い て 、 問 日 、 已 知 三 西 方 具 有 三 二 土 一 。 未 レ 知 即 今 凡 夫 念 仏 願 レ 生 得 二 何 土 一 也 。   れ ソ 答 日 、 依 レ 如 二 摂 論 } 、 唯 生 二 化 土 一 、 不 レ 見 二 法 報 土 一 也 。 と 、 化 土 に 往 生 す る と し て い る の で あ る 。 ま た 第 九 章 に お い て も 今 西 方 浄 土 者 、 通 有 三 二 種 一 。 一 是 法 身 浄 土 、 此 即 無 相 無 生 。 二 是 報 身 浄 土 、 拠 レ 実 亦 無 相 無 生 、 就 レ 事 即 有 相 有 生 。 三 是 化 身 浄 土 、 亦 是 有 相 有 生 。 故 摂 論 云 、 化 身 新 新 出 世 、 数 数 涅 槃 。 即 王 宮 生 、 双 林 滅 也 。 而 今 勧 二 衆 生 一 生 者 、 謂 生 二 化 身 土 中 一 。 若 衆 生 欲 二 往 生 一 者 、 唯 須 レ 作 二 相 生 観 一 鴨 v と い う よ う に 、 西 方 浄 土 は 法 身 、 報 身 、 化 身 の 三 土 を 具 え る が 、 今 の 衆 生 に 生 ま れ る こ と を 勧 め て い る の は 、 有 相 有 生 の 化 身 浄 土 で あ る と し て い る 。 さ ら に 迦 才 は 、 化 土 の 中 に お い て も 種 々 の 差 別 が あ る と し て い る 。 第 一 章 に お い て 、 九

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 ) 化 生 土 者 、 依 レ 如 二 経 論 一 、 具 有 二 三 種 一 。 一 者 純 是 大 乗 土 。 二 者 純 是 小 乗 土 。 三 者 大 小 乗 雑 土 。 (中 略 ) 麁 論 有 二 此 三 土 一 。 若 委 曲   ぜ 分 別 者 、 衆 生 起 レ 行 既 有 二 千 殊 一 、 往 生 見 レ 土 亦 有 二 万 別 一 也 。 と し 、 ま ず ﹃ 観 経 ﹄ の 九 品 に 該 当 さ せ て 、 そ れ ぞ れ の 往 生 の 土 に 、 純 大 乗 土 、 純 小 乗 土 、 大 小 乗 雑 土 の 三 種 が あ る と す る 。 し か し こ れ は 大 ま か な 分 類 で あ っ て 、 詳 し く 論 ず れ ば 衆 生 の 行 業 に そ れ ぞ れ 違 い が あ る の で 、 往 生 の 土 も ま た そ れ に よ っ て 種 種 あ る と い う の で あ る 。 つ ま り 、 衆 生 の 機 根 、 行 に よ っ て 決 定 さ れ る と す る の で あ る 。 ま た そ の 化 土 は 、 三 界 に 摂 せ ら れ る の か 否 か 、 と い う と 、 問 日 、 報 土 淳 浄 妙 絶 三 二 有 [ 、 所 化 衆 生 已 超 二 分 段 一 。 此 土 出 二 乎 三 界 一 。 理 亦 易 レ 信 。 而 化 土 雖 レ 浄 、 其 浄 未 レ 妙 。 所 化 衆 生 復 在 二 地 前 一 。 此 土 為 三 当 在 三 二 界 摂 一 、 為 二 当 不 摂 一 耶 。 答 日 、 若 就 レ 仏 論 、 即 妙 絶 三 二 界 一 。 若 従 二 衆 生 一 、 具 有 二 二 義 一 。 或 摂 不 摂 。 初 明 レ 摂 者 、 若 拠 二 凡 夫 及 三 果 学 人 往 生 一 者 、 此 即 在 ニ ハ き 三 界 摂 一 。 以 三 此 等 衆 生 未 レ 出 三 二 界 一 故 。 と い う よ う に 、 三 界 の 摂 で あ る と し て い る 。 こ れ は 道 綽 が ﹁浄 土 は 三   ぜ 界 の 摂 に は 非 ず ﹂ と し て い る の と 明 ら か に 相 違 す る 。 以 上 の よ う に 、 道 綽 は 無 相 土 と 有 相 土 は 本 質 的 に 同 じ で あ り 、 凡 夫 も 聖 人 も 同 じ く 往 生 す る 、 阿 弥 陀 仏 の 本 願 成 就 の 報 土 と と ら え て い る 。 し か し 迦 才 は 、 無 相 土 は 聖 人 の 往 生 す る と こ ろ で あ り 、 有 相 土 は 凡 夫 の 往 生 す る と こ ろ で あ り 、 さ ら に 衆 生 の 行 に よ っ て 往 生 す る 土 は 異 な る と し て い る の で あ る 。 そ し て 有 相 土 は 化 身 浄 土 で あ り 、 そ こ は 三 一 〇 界 の 摂 で あ っ て 分 断 生 死 の 土 で あ る と す る よ う に 、 極 め て 低 位 に 判 定 し て い る と い う こ と が 言 え よ う 。 こ れ は 低 位 の 凡 夫 が 行 う 、 低 位 な 行 で 得 る 果 で あ る か ら 、 当 然 低 位 の 浄 土 に し か 往 生 で き な い 、 と い う も の で あ ろ う 。 つ ま り 、 迦 才 は 浄 土 を 判 定 す る の に 、 阿 弥 陀 仏 の 本 願 の 特 殊 性 を 見 落 と し て い る の で あ る 。 こ れ は 、 浄 土 往 生 の た め の 実 践 論 に つ い て も 言 え る こ と で あ る 。 次 に そ の 点 に つ い て 検 討 し て み よ う 。

迦 才 は ﹃ 浄 土 論 ﹄ 第 三 章 で 諸 経 論 に 説 か れ る 往 生 の 行 業 を 列 挙 す   ガ ソ る 。 そ し て 問 日 、 如 二 上 所 レ 引 経 論 一 、 其 文 浩 博 、 難 二 以 究 尋 一 。 今 請 、 撮 二 其 機 要 一 、 略 明 二 其 因 一 、 令 二 諸 行 者 易 レ 修 易 ワ 学 。 答 日 、 実 然 。 如 二 上 所 レ 引 経 論 一 、 対 レ 機 設 レ 教 、 難 レ 可 二 究 尋 一 。 今 削 レ 煩 執 レ 約 、 略 出 二 其 因 一 自 在 二 二 種 一 。 一 是 通 因 、 二 是 別 因 。 通 因 者 、 如 二 無 量 寿 経 中 三 輩 生 人 一 、 皆 須 レ 発 二 菩 提 心 一 。 及 観 経 中 、 具 修 三 二 福 浄 業 一 、 始 得 二 往 生 一 。 此 等 並 是 通 因 。 ( 中 略 ) 別 因 者 、 乃 有 二 無 量 一 、 要 唯 有 レ ニ 。 一 是 所 求 、 二 是 能 求 。 所 求 者 、 復 有 二 二 種 一 。 一 須 下 別 挙 二 一 方 一 、 標 レ 心 有 占 在 。 如 下 別 標 二 西 方 極 楽 世 界 一 、 求 中 彼 往 生 上 、 即 是 器 世 間 浄 也 。 二 別 念 二 一 仏 一 、 以 為 二 師 範 一 、 求 為 二 弟 子 一 親 承 供 養 、 即 是 衆 生 世 間 浄 也 。 二 能 求 者 、 正 是 其 因 。 復 有 二 六 種 一 、 一 須 三 別 念 二 阿 弥 陀 仏 名 号 一 。 二

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須 二 礼 拝 一 。 三 須 二 讃 歎 一 。 四 須 二 発 願 一 。 五 須 二 観 察 一 、 六 須 二 回

と し て 、 そ れ を 行 者 の 為 に 統 一 し て 上 根 者 に 通 別 二 因 を 示 す 。 通 因 と は 菩 提 心 と 三 福 、 別 因 と は 念 仏 ・ 礼 拝 ・ 讃 歎 ・ 発 願 ・ 観 察 ・ 回 向 で あ る 。 ま た 中 下 根 者 の た め に 、 さ ら に 略 し た 五 種 の 因 を 示 す 。 そ れ は 懺   タ 悔 ・ 菩 提 心 ・ 念 仏 ・ 観 察 ・ 回 向 で あ る 。 こ の 中 下 根 の 因 は 、 上 根 の 通 別 二 因 よ り 選 び 取 っ た の で は な く 、 簡 略 化 し た も の と 見 る こ と が で き る 。 中 下 根 に な い 因 の う ち 、 ま ず 礼 拝 に は 二 礼 拝 者 、 須 下 正 面 二 西 方 一 、 想 二 阿 弥 陀 仏 一 、 如 レ 対 中 目 前 上 、 厳 二 持 香 花 一 、 口 称 二 仏 名 一 、 五 体 投 地 、 再 三 扣 レ 頭 、 願 レ 生 二 彼 土 ㌔ 可 レ 誦 二 取 龍 樹 菩 薩 十 二 礼 一 瑜 ) と あ り 、 ま た 讃 歎 に は 三 讃 歎 者 、 須 二 別 讃 二 阿 弥 陀 仏 一 。 或 色 或 心 、 或 依 報 或 正 報 、 或 立 或 坐 、 直 視 二 西 方 一 如 レ 対 二 目 前 一 。 一 心 讃 歎 願 レ 生 二 浄 土 一 。 可 レ 誦 二 取 大 乗 十 住 毘 婆 沙 中 龍 樹 菩 薩 偈 頌 、 及 往 生 論 中 讃 文

と あ る よ う に 、 そ の 内 容 は 念 仏 ・ 観 察 を す る こ と で あ る 。 ま た 発 願 は ヨ   回 向 の 中 に 摂 せ ら れ て い る 。 そ し て 中 下 根 の 凡 夫 で あ る か ら 懺 悔 を 加   お ソ え た も の と 思 わ れ る 。 そ れ で は 中 下 根 の 五 種 の 因 の 内 容 と 、 そ れ ら 相 互 の 関 係 は ど の よ う な も の で あ ろ う か 。 ま ず 懺 悔 の 具 体 的 な 行 業 に つ い て は 、 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) 若 拠 二 此 経 一 今 是 第 四 五 百 年 余 、 既 無 二 定 慧 之 分 一 。 唯 須 二 修 福 懺 悔 一 。 修 福 懺 悔 最 為 レ 要 者 、 観 二 諸 経 論 一 、 礼 レ 仏 、 念 レ 仏 、 観 二       仏 相 好 一 、 此 最 為 レ 勝 也 。 と し て 礼 仏 ・ 念 仏 ・ 観 仏 相 好 が 最 も 勝 れ て い る と し て い る 。 つ ま り 懺 悔 の 具 体 的 行 業 は 念 仏 ・ 観 察 で あ る と い え る 。 こ れ は 先 に 指 摘 し た よ   ヨ う に 道 綽 が 末 法 時 に お け る 度 生 法 を 、 四 種 度 生 法 の う ち 、 名 号 に よ る も の と す る の と 相 違 す る 。 こ の 懺 悔 の 必 要 性 に つ い て は 若 不 下 発 二 菩 提 心 一 慚 愧 懺 悔 上 、 一 入 二 悪 道 一 無 有 レ 出 期 一 遍 と し た り 、 あ る い は 若 有 二 衆 生 一 、 聞 レ 説 二 阿 弥 陀 仏 一 仍 故 造 レ 罪 、 雖 レ 念 二 仏 名 一 心 縁 二 五 欲 一 、 此 是 雑 結 使 念 、 臨 二 命 終 時 一 心 即 顛 倒 仏 不 二 来 迎 一 篭 と す る 。 ま た 菩 提 心 に つ い て も 言 二 凡 夫 念 一 者 、 若 不 下 発 二 菩 提 心 [ 求 中 出 三 二 界 一 作 レ 仏 、 直 爾 念 仏 求 レ 生 二 西 方 一 、 独 善 二 一 身 一 避 レ 苦 逐 レ 楽 者 、 此 是 凡 夫 念 、 亦 不 レ 得 二 往 生 一 糧 と す る 。 こ の よ う に 懺 悔 ・ 菩 提 心 は 念 仏 ・ 観 察 を 行 う 時 、 必 ず 同 時 に   お り 発 さ な け れ ば な ら な い も の と し て い る 。 そ し て 迦 才 は こ の 五 種 の 因 を 説 い た 後 、 あ ね 若 能 具 二 前 五 種 行 一 者 、 必 得 二 往 生 一 。 と し て い る 。 ま た 別 時 意 説 に 対 し て 若 唯 空 発 願 即 是 別 時 、 若 行 願 兼 修 非 二 是 別 時 一 輸 ) と 会 通 す る 。 つ ま り 念 仏 ・ 観 察 が 行 に 相 当 し 、 懺 悔 ・ 菩 提 心 が 願 に 相 一

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 ) 当 す る と い え る 。 懺 悔 は 行 と い う よ り も む し ろ 懺 悔 心 で あ る と い え よ う 。 そ れ で は 念 仏 は 具 体 的 に は ど の よ う な も の と さ れ て い る の だ ろ う か 。 上 根 者 の 別 因 六 種 を 説 く 箇 所 に お い て 、 念 仏 者 復 有 二 二 種 一 。 一 是 心 念 、 二 是 口 念 。 心 念 者 復 有 二 二 種 ﹂ 。 一 念 二 仏 色 身 一 、 謂 阿 弥 陀 仏 身 有 二 八 万 四 千 相 一 、 相 有 二 八 万 四 千 好 一 、 好 有 二 八 万 四 千 光 明 等 一 。 二 念 二 仏 智 身 一 、 謂 阿 弥 陀 仏 有 二 五 分 法 身 、 大 慈 大 悲 力 無 畏 等 一 也 。 二 口 念 者 、 若 心 無 レ カ 、 須 二 将 レ ロ 来 扶 ㌔ 将 レ ロ 引 レ 心 令 レ 不 二 散 乱 一 踵 と し 、 念 仏 を 口 念 と 心 念 の 二 つ に 分 け る 。 心 念 は さ ら に 色 身 と 智 身 の そ れ ぞ れ を 念 ず る こ と に 分 け ら れ る が 、 阿 弥 陀 仏 を 念 ず る と い う こ と に 違 い は な い 。 こ の こ と か ら 、 迦 才 は 心 念 を 重 視 し て い る の で あ り 、 口 念 、 口 称 の 念 仏 は 補 助 的 な も の で あ る と い え る 。 中 下 根 者 の た め に 説 く 箇 所 に お い て は 、 三 者 、 須 三 専 念 二 阿 弥 陀 仏 名 号 一 。 須 下 別 荘 二 厳 一 道 場 一 、 焼 香 散 花 幡 灯 具 足 上 、 請 二 一 阿 弥 陀 仏 一 安 二 道 場 内 一 、 像 面 向 レ 東 人 面 向 レ 西 。 或 七 日 或 十 日 、 咸 省 二 睡 眠 一 除 二 去 散 乱 一 、 唯 除 三 大 小 便 利 及 与 二 食 事 一 。 一 レ 心 専 レ 念 悶 即 立 念 。 不 レ 須 二 礼 拝 旋 遶 一 、 但   お   唯 念 レ 仏 七 日 満 。 出 二 道 場 後 一 、 行 住 坐 臥 閑 時 即 念 。 と 、 別 時 の 念 仏 と 、 さ ら に 平 生 の 念 仏 を 説 い て い る 。 別 時 念 仏 の 期 間 を 定 め る こ と に つ い て 、 若 人 念 二 阿 弥 陀 仏 一 得 二 百 万 遍 已 去 一 、 決 定 得 レ 生 二 極 楽 世 界 一 。 綽 禅 師 検 二 得 此 経 一 。 若 能 七 日 専 心 念 仏 、 即 得 二 百 万 遍 一 也 。 由 二 一 二   あ り 此 義 一 故 、 経 中 多 道 二 七 日 念 仏 一 也 。 と す る 。 別 時 念 仏 は 中 下 根 者 に 対 し て 説 か れ て い る の で 、 口 念 で あ る と も 考 え ら れ る が 、 口 念 は 心 念 に 対 す る 補 助 で あ る の で 、 口 念 だ け に 限 ら ず 、 心 念 口 念 の 区 別 無 く 念 仏 す る も の で あ ろ う 。 む し ろ 回 数 を 定 め て い る こ と 、 そ し て 別 に 道 場 を 定 め 阿 弥 陀 仏 の 像 を 安 置 し て 念 仏 す る こ と に 特 徴 が あ る 。 す な わ ち 、 百 万 遍 と い う 具 体 的 な 数 値 目 標 を 定 め る こ と も 含 め て 精 神 を 集 中 し や す い 環 境 を 作 り 、 そ こ で 念 仏 す る こ と を 説 い て い る の で あ る 。 ま た ﹃観 経 ﹄ に 説 か れ る 十 念 に つ い て は 、   ヨ 観 経 中 十 念 、 臨 二 命 終 時 一 作 也 。 と 、 臨 終 の 時 の 十 念 で あ る と す る の で あ る 。 こ の よ う に 迦 才 は 念 仏 の 方 法 、 行 儀 に つ い て 細 か く 説 い て い る の で あ る が 、 こ れ ら は 阿 弥 陀 仏 の 本 願 力 を 背 景 に し て 説 か れ て い る も の と 見 る こ と は で き な い 。 第 四 章 に 倶 具 二 二 義 一 、 即 得 二 往 生 一 。 一 一 切 衆 生 修 行 以 為 二 因 縁 一 。 二 弥 陀 本 願 為 二 増 上 縁 一 。 二 義 若 具 即 得 二 往 生 一 蹴 ) と あ る よ う に 、 迦 才 は 衆 生 の 修 行 と 本 願 の 二 義 が 具 わ る こ と で 往 生 で き る と し て い る 。 し か し そ の 本 願 が 仏 身 仏 土 論 、 実 践 論 と ど の よ う に 関 わ る か に つ い て 一 切 説 い て お ら ず 、 阿 弥 陀 仏 の 本 願 力 に 乗 じ て 往 生   お ソ す る 、 と い う こ と を 前 面 に 押 し 出 し て い る と は 言 い 難 い 。 そ れ で は 迦 才 の 説 く 念 仏 は 、 い か な る 意 義 の も と に 説 か れ る の で あ ろ う か 。 第 四 章 に お い て 問 日 、 衆 生 悪 業 其 猶 レ 積 レ 山 。 此 諸 悪 業 障 二 乎 浄 土 一 非 二 小 善 能

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除 一 。 何 故 観 経 、 云 下 臨 二 命 終 一 十 念 即 得 中 往 生 上 。 答 日 、 心 是 業 主 牽 レ 生 之 本 。 臨 終 之 心 猶 如 二 眼 目 一 、 能 遵 二 一 切 諸 業 一 。 若 臨 終 心 悪 、 能 引 二 一 切 悪 業 一 生 二 悪 道 中 一 。 若 臨 終 心 善 、 能 引 二 一 切 善 業 一 生 二 善 道 中 一 。 譬 如 二 龍 行 雲 則 随 レ 之 。 心 若 西 逝 あ   業 亦 随 ワ 之 也 。 と 、 衆 生 の 悪 業 と 十 念 を 較 べ 、 そ し て な ぜ 十 念 だ け で 往 生 で き る の か と い う 問 い を 立 て 、 そ し て も し 心 が 西 に ゆ け ば 、 す べ て そ れ に 随 っ て 往 生 す る と 答 え て い る 。 つ ま り 迦 才 の 念 仏 は 、 衆 生 の 心 を 西 へ 向 け 続 け さ せ る た め の 行 な の で あ る 。 凡 夫 は 一 つ の 方 を 取 っ て 思 い を 留 め る 事 の 法 門 を 修 す べ き で あ り 、 他 の 想 い を 雑 え る こ と な く 一 心 に 阿 弥 陀 仏 と 極 楽 を 念 ず る こ と が 迦 才 の 念 仏 な の で あ る 。 そ こ に は 観 察 、 観 念 、 口 称 の 明 確 な 区 別 は も は や 存 在 し な い 。 迦 才 の 念 仏 は 、 一 つ の 方 向 を 定 め そ こ に 想 い を 繋 け る 方 法 の 一 つ で あ り 、 衆 生 の 心 を 阿 弥 陀 仏 と 極 楽 に 繋 け 続 け る 為 の 方 法 で し か な い と い え よ う 。 お わ り に 迦 才 が ﹁ 理 事 二 門 判 ﹂ を 展 開 し 有 相 俗 諦 的 な 実 践 で あ る 浄 土 教 を   ヨ ﹁事 ﹂ と し 、 そ の 妥 当 性 を 主 張 す る こ と は 、 道 綽 と 同 様 の 主 張 で あ る 。 し か し こ の こ と を も っ て 、 迦 才 が 道 綽 の 教 義 を 全 面 的 に 継 承 し て い る と は 言 う こ と は で き な い 。 迦 才 に と っ て 浄 土 教 は 、 末 法 時 の 凡 夫 に 相 応 す る 、 有 相 の 行 を 修 し て 有 相 の 浄 土 へ と 往 生 す る も の で あ る が 、 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) そ の 浄 土 は 三 界 摂 、 分 断 生 死 の 化 土 で あ り 、 極 め て 低 位 な も の で あ る 。 ﹁ 理 ﹂ と 同 じ く 必 要 不 可 欠 な も の で あ る と し た ﹁事 ﹂ が 、 低 く 押 さ え ら れ て い る と い う こ と は 、 ﹁ 理 ﹂ す な わ ち 無 相 の み を 重 要 視 す る   れ ね 者 た ち と 何 ら 変 わ り が な い 、 と い わ ね ば な る ま い 。 つ ま り 第 四 章 に お  れ   い て ﹁ 本 為 二 凡 夫 一 兼 為 二 聖 人 匸 と 言 っ て い る が 、 こ れ は 上 地 の 菩 薩 、 聖 人 は 必 ず し も 低 級 な 教 え で あ る 浄 土 教 を 必 要 と し な い 、 と い う れ む こ と に な る と い え よ う 。 道 綽 が 、 相 土 即 無 相 土 と し て ﹁ 凡 聖 通 往 ﹂ の 弥 陀 報 土 で あ る と す る の は 阿 弥 陀 仏 の 本 願 に よ る も の で あ り 、 そ れ は 聖 道 門 ・ 浄 土 門 に 価 値 的 相 違 は 存 在 し な い 、 と い う こ と に な ろ う 。 そ し て そ れ は 時 機 相 応 の 教 え と し て 、 浄 土 教 を 確 立 さ せ る こ と に な る の で あ る 。 迦 才 は 、 ﹁ 理 事 二 門 判 ﹂ に よ っ て 浄 土 教 へ の 大 乗 仏 教 的 理 念 づ け を 果 た し な が ら 、 そ こ に 価 値 の 相 違 が あ る と し た 。 こ れ は 阿 弥 陀 仏 の 本 願 を 見 落 と し て い る た め で あ る 。 そ も そ も 、 阿 弥 陀 仏 を 仏 た ら し め て い る の は 本 願 と そ の 成 就 で あ る 。 そ れ を 基 底 と し て い な い 迦 才 は 、 道 綽 の 浄 土 教 を 継 承 し 、 顕 彰 し た と み る こ と は で き な い の で あ る 。 註 (1 ) ﹃浄 土 宗 全 書 ﹄ (以 下 、 浄 全 ) 六 、 六 二 七 上 (2 ) 名 畑 應 順 ﹃迦 才 浄 土 論 の 研 究 ﹄ 論 攷 篇 二 七 頁 (3 ) 山 本 佛 骨 ﹃道 綽 教 學 の 研 究 ﹄ 一 四 六 頁 (4 ) 管 見 で は 道 綽 の 教 学 を 顕 彰 す る 意 図 が あ っ た と す る の は 、 藤 原 凌 雪 ﹃念 仏 思 想 の 研 究 ﹄ 一 八 七 頁 、 藤 堂 恭 俊 ﹁ 震 旦 諸 師 の 浄 土 教 に 関 す る 著 二 二

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 ) 四 作 解 題 ﹂ (﹃ 浄 全 ﹄ 六 、 解 説 一 四 頁 、 の ち 浅 地 康 平 編 ﹃浄 土 宗 典 籍 研 究 ﹄ 一 二 九 頁 。) た だ し 藤 堂 氏 は そ の 意 図 に 反 し て 結 果 的 に は 道 綽 教 学 の 進 展 す る 方 向 と は 違 っ た 方 向 を た ど ら ざ る を 得 な か っ た 、 と す る 。 道 綽 か ら 遠 ざ か っ て い る と す る 説 は 、 迦 才 の 実 践 法 を 易 行 と は 言 え な い と す る 説 (木 村 清 孝 ﹃ 中 国 仏 教 思 想 史 ﹄ 一 五 九 ∼ 一 六 〇 頁 ) 、 あ る い は ﹃安 楽 集 ﹄ を ﹃往 生 論 註 ﹄ に も と つ く ﹃観 経 ﹄ 領 解 の 要 門 集 と と ら え 、 迦 才 が ﹃安 楽 集 ﹄ を 批 難 す る の は 、 ﹃論 註 ﹄ を 見 落 と し 、 無 視 し た 結 果 と す る 説 (藤 原 幸 章 ﹁善 導 浄 土 教 と 曇 鸞 の 教 学 ﹂ ﹃大 谷 大 学 研 究 年 報 ﹄ 二 〇 、 一 九 六 七 年 十 一 月 、 の ち 同 ﹃善 導 浄 土 教 の 研 究 ﹄ 六 七 ∼ 六 八 頁 ) 等 が 挙 げ ら れ る 。 (5 ) 藤 堂 恭 俊 ﹁浄 土 宗 教 判 論 ﹂ (総 本 山 知 恩 院 ﹃安 居 講 録 ﹄ 一 、 一 九 五 六 年 十 二 月 、 の ち 同 ﹃法 然 上 人 研 究 ﹄ 一 に 所 収 ) を 参 照 。 (6 ) 浄 全 一 、 六 七 三 下 ∼ 六 七 四 上 (7 ) 実 際 は ﹃坐 禅 三 昧 経 ﹄ (﹃ 大 正 新 修 大 蔵 経 ﹄ (以 下 大 正 蔵 ) 一 五 、 二 八 五 c ) で あ る 。 (8 ) 浄 全 一 、 六 七 四 上 (9 ) 浄 全 六 、 六 六 四 上 ∼ 下 ( 10 ) 大 正 蔵 = 二 、 三 六 三 b ( 11 ) 浄 全 一 、 六 七 三 下 ー 六 七 四 上 ( 12 ) 浄 全 六 、 六 六 四 下 ( 13 ) 浄 全 一 、 六 九 二 下 ∼ 六 九 三 上 ( 14 ) こ の 部 分 を 発 起 序 と す る の は 知 俊 ﹃迦 才 浄 土 論 餘 暉 鈔 ﹄ 第 一 に よ る 。 浄 全 続 七 、 六 八 ( 15 ) 浄 全 六 、 六 二 八 上 ∼ 下 ( 16 ) 浄 全 六 、 六 二 八 下 ( 17 ) 浄 全 六 、 六 六 九 上 ( 18 ) 浄 全 六 、 六 六 九 上 ( 19 ) 大 正 蔵 三 〇 、 三 二 c ∼ 三 三 a ( 20 ) 浄 全 一 、 六 九 五 上 ( 21 ) こ の こ と は 多 く の 先 学 が 指 摘 す る と こ ろ で あ る 。 高 雄 義 堅 ﹁道 綽 禪 師 と そ の 時 代 ﹂ ( ﹃宗 學 院 論 輯 ﹄ 三 一 、 一 九 三 九 年 十 二 月 ) 、 小 笠 原 宣 秀 ﹁道 綽 禪 師 傳 に 於 け る 二 三 の 問 題 ﹂ ( ﹃中 國 淨 土 教 家 の 研 究 ﹄ 四 九 ∼ 五 一 頁 ) 、 山 本 前 掲 書 二 五 ∼ 二 七 頁 、 野 上 俊 静 ﹃中 國 淨 土 三 祖 傳 ﹄ 九 五 ∼ 九 頁 、 牧 田 諦 亮 ﹃浄 土 仏 教 の 思 想 ー 道 綽 ﹄ 三 九 九 ∼ 四 〇 〇 頁 (22 ) 大 正 蔵 五 〇 、 五 八 三 b ∼ c (23 ) 大 正 蔵 五 〇 、 六 四 一 c (24 ) 慧 瑣 及 び そ の 教 団 に つ い て は 、 塚 本 善 隆 ﹁ 道 綽 の 迴 心 ﹂ (総 本 山 知 恩 院 ﹃安 居 講 録 ﹄ 一 、 一 九 五 六 年 ) 、 野 上 前 掲 書 九 六 ∼ 一 〇 二 頁 、 佐 藤 成 順 ﹁并 州 に お け る 慧 瓊 禅 師 と そ の 門 下 ﹂ (壬 生 台 舜 博 士 頌 寿 記 念 ﹃仏 教 の 歴 史 と 思 想 ﹄ 、 の ち 同 ﹃中 国 仏 教 思 想 史 ﹄ 所 収 ) (25 ) 大 正 蔵 五 〇 、 六 四 一 b (26 ) 浄 全 一 、 六 八 一 下 (27 ) 一 か ら 三 は 有 相 浄 土 願 生 の 軽 視 。 四 か ら 六 は 自 分 の み 楽 を 求 め る こ と 。 八 は 十 方 浄 土 と 西 方 浄 土 の 比 較 で あ る が 、 西 方 の 一 方 だ け を 求 め る こ と が 問 題 と な っ て い る の で 、 有 相 願 生 の 軽 視 の 問 題 に 通 ず る 面 も あ ろ う 。 (28 ) 別 時 意 の 問 題 は 第 四 章 、 第 六 章 の 方 啓 法 師 伝 な ど で 、 極 楽 と 兜 率 の 優 劣 の 問 題 は 七 章 に お い て 論 じ ら れ て い る 。 (29 ) 浄 全 一 、 六 八 一 下 (30 ) 浄 全 一 、 六 八 一 下 ∼ 六 八 二 上 (31 ) 浄 全 一 、 六 八 二 上 (32 ) 浄 全 一 、 六 八 二 下 (33 ) 浄 全 一 、 六 八 二 下 ∼ 六 八 三 上 (34 ) 浄 全 一 、 七 〇 三 下 (35 ) 浄 全 一 、 七 〇 三 下 (36 ) ﹃安 楽 集 ﹄ 第 一 大 門 第 七 (浄 全 一 、 六 七 六 上 ∼ 六 七 八 上 ) (37 ) 浄 全 一 、 六 七 八 上 (38 ) 浄 全 一 、 六 七 八 上

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(39 ) 浄 全 一 、 六 七 九 上 ( 40 ) 以 上 の 記 述 に つ い て は 渡 辺 了 生 氏 の 次 の 研 究 に 負 う 所 が 多 い 。 渡 辺 了 生 ﹁ ﹃浄 土 論 註 ﹄ 広 略 相 入 の 論 理 と 道 綽 の 相 土 ・ 無 相 土 論 ﹂ (﹃ 真 宗 研 究 会 紀 要 ﹄ 二 四 、 一 九 九 二 年 九 月 ) ( 41 ) 浄 全 六 、 六 三 〇 上 ( 42 ) 浄 全 六 、 六 三 〇 上 ( 43 ) 浄 全 六 、 六 六 九 上 ∼ 下 ( 44 ) 浄 全 六 、 六 三 〇 上 ∼ 下 ( 45 ) 浄 全 六 、 六 三 一 下 ∼ 六 三 二 上 ( 46 ) ﹃安 楽 集 ﹄ 第 一 大 門 第 九 (浄 全 一 、 六 七 九 下 ) ( 47 ) 浄 全 六 、 六 三 八 上 ∼ 六 三 九 下 。 ( 48 ) 浄 全 六 、 六 三 九 下 ∼ 六 四 〇 上 ( 49 ) 浄 全 六 、 六 四 〇 下 ∼ 六 四 一 下 ( 50 ) 浄 全 六 、 六 四 〇 上 ( 51 ) 浄 全 六 、 六 四 〇 下 ( 52 ) 名 畑 前 掲 書 一 〇 九 頁 、 山 田 行 雄 ﹁ ﹃迦 才 浄 土 論 ﹄ と 曇 鸞 教 学 ﹂ ( ﹃龍 谷 大 学 仏 教 文 化 研 究 所 紀 要 ﹄ 三 、 一 九 六 四 年 六 月 ) 、 同 ﹁ 迦 才 教 学 に お け る 行 論 の 一 考 察 ﹂ ( ﹃印 仏 研 ﹄ 一 三 -二 、 一 九 六 五 年 三 月 ) 。 名 畑 氏 は 礼 拝 ・ 讃 歎 が 念 仏 に 、 上 根 者 念 仏 の 内 の 口 念 が 観 察 に 摂 せ ら れ る と さ れ 、 山 田 氏 は 中 下 根 の 因 は 上 根 者 の 通 別 二 因 よ り 摘 出 し た と さ れ る 。 ( 53 ) 名 畑 前 掲 書 一 〇 九 頁 ( 54 ) 前 掲 註 (8 ) ( 55 ) 第 一 章 参 照 ( 56 ) 浄 全 六 、 六 六 五 下 ( 57 ) 浄 全 六 、 六 六 八 上 ( 58 ) 浄 全 六 、 六 四 五 上 ( 59 ) 名 畑 前 掲 書 一 = 二 頁 ( 60 ) 浄 全 六 、 六 四 一 下 ( 61 ) 浄 全 六 、 六 四 二 下 (62 ) 浄 全 六 、 六 四 〇 上 (63 ) 浄 全 六 、 六 四 一 上 (64 ) 浄 全 六 、 六 四 〇 上 (65 ) 浄 全 六 、 六 四 九 下 (66 ) 浄 全 六 、 六 四 三 下 (67 ) 名 畑 應 順 氏 は 絶 対 的 な 他 力 で は な い と す る 。 (名 畑 前 掲 書 一 〇 五 頁 ) 柴 田 泰 山 氏 は 迦 才 の 生 因 論 は ﹁自 業 往 生 ﹂ で あ る 、 と す る 。 (柴 田 泰 山 ﹁迦 才 ﹃ 浄 土 論 ﹄ に お け る 生 因 論 ﹂ ﹃宗 教 研 究 ﹄ 七 一 i 四 、 一 九 九 八 年 三 月 ) (68 ) 浄 全 六 、 六 四 四 下 (69 ) 石 田 充 之 氏 は ﹁ 中 国 浄 土 教 思 想 の 研 究 ﹂ (﹃ 龍 谷 大 学 論 集 ﹄ 三 四 九 、 一 九 五 五 年 九 月 ) 、 ﹁ 日 ・ 中 両 国 浄 土 教 思 想 の 相 違 性 ﹂ ( ﹃結 城 教 授 頌 寿 記 念 仏 教 思 想 史 論 集 ﹄ 、 い ず れ も の ち ﹃親 鸞 教 学 の 基 礎 的 研 究 ﹄ に 所 収 ) や ﹃鎌 倉 浄 土 教 成 立 の 基 礎 研 究 ﹄ 五 八 ∼ 六 六 頁 等 に お い て 、 道 綽 ・ 迦 才 に よ る 、 無 相 有 相 ・ 理 事 ・ 真 俗 二 諦 論 を 用 い て な さ れ る 、 浄 土 教 へ の 大 乗 仏 教 的 な 理 念 づ け の 立 論 傾 向 は 、 き わ め て 同 致 で あ る と さ れ て い る 。 ま た 石 田 氏 が 同 ﹁ 日 ・ 中 両 国 浄 土 教 の 相 違 生 ﹂ で 指 摘 す る よ う に 、 こ の よ う な 大 乗 仏 教 的 な 基 本 理 念 の 基 礎 づ け の 問 題 を 考 え つ つ 、 そ の 浄 土 教 の 実 践 理 念 の あ り 方 を 方 向 付 け て 行 く こ と は 、 中 国 浄 土 教 の 性 格 で あ り 、 後 の 禅 浄 一 致 的 な 浄 土 教 の 傾 向 を 育 て た も の と も 考 え ら れ る 。 (70 ) た と え ば 浄 影 寺 慧 遠 (五 二 三 -五 九 二 ) は ﹃観 経 義 疏 ﹄ に お い て 、 ﹃観 経 ﹄ を 凡 夫 の た め の 経 と し 、 観 仏 を 真 身 観 と 応 身 観 に 分 け 、 ﹃観 経 ﹄ に 説 く 観 仏 は 応 身 観 の さ ら に 始 で あ る と す る 。 ま た 慧 遠 は 阿 弥 陀 仏 の 浄 土 を 応 土 (迦 才 の 化 土 に 当 た る ) と 判 定 す る 。 (71 ) 浄 全 六 、 六 四 三 上 (72 ) 稲 岡 了 順 ﹁迦 才 の 本 為 凡 美 兼 為 聖 人 説 に つ い て ﹂ (﹃ 印 仏 研 ﹄ 二 六 -一 、 一 九 七 七 年 十 二 月 ) 、 同 ﹁ 道 綽 ・ 迦 才 ・ 善 導 の 往 生 思 想 -特 に 仏 身 仏 土 説 を 中 心 に l ﹂ ( ﹃仏 教 文 化 研 究 ﹄ 二 六 、 一 九 八 〇 年 十 一 月 ) 佛 教 大 学 大 学 院 紀 要 第 二 七 号 ( 一 九 九 九 年 三 月 ) 一 五

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迦 才 ﹃浄 土 論 ﹄ に お け る 教 判 (曽 和 義 宏 ) 一 六 (そ わ よ し ひ ろ 文 学 研 究 科 仏 教 学 専 攻 博 士 後 期 課 程 ) 一 九 九 八 年 一 〇 月 一 四 日 受 理

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