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(1)

第XI報 1958年より1959年における西部北赤道海流 域の海水,プランクトン及び魚類の放射能汚染に関 する研究

著者 斎藤 要, 鮫島 宗雄, 辺見 富雄

雑誌名 鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of

Fisheries Kagoshima University

巻 8

ページ 181‑193

別言語のタイトル XI. Studies on the Radiological Contamination of Sea Water, Planktons and Fishes in the

Western Region of the North Equatorial Current during the Period from 1958 to 1959

URL http://hdl.handle.net/10232/13475

(2)

鹿児島大学水産学部放射能研究委員会報告第xl報

1958年より1959年における西部北赤道海流域の海水,

プランクトン及び魚類の放射能汚染に関する研究*

斎 藤 要 。 鮫 島 宗 雄 。 辺 見 富 雄

XIStudiesontheRadiologicalContaminationofSeaWater,

PlanktnnsandFishesintheWesternRegionoftheNorth EquatorialCurrentduringthePeriodfroml958tol959

KanameSAIT5,MuneoSAMEsHIMAandTomioHEMMI

R6sume

1

Inthispaper,wedealtwiththeinspectionofradioactivityontheseawater,

planktonandfishes,obtainedfromtheNorthEqUatorialCurrentandKuroshioCurrent regio、(Fig.1),duringtheperiodfromJnlyl958toAugustl959.Theresultsobtained

weresummarizedasfollows、

1)Theradiologicalcontaminationofseawaterandplanktons,collectedatthe regionfromlongtitudesl27、Etol42oBandfromlatitudes6、Ntol8.N,hasbeenrecog nizedfromJulytoSeptemberl958(Tableland3).

2)DuringtheperiodfromSeptemberl958toAugustl959,mosttheinspected fish,caughtatthesouthemsearegionofKagoshimaPrefecture,werecontaminatedby radioactivity(Table4and5).

3)Theradioactivityinthekidneyof恥"。p〃or"sorje"rα"swasmainlyattributable totheradioelementsofGroupll・Groupll,separateddirectlyfromtherawashesof thekidney,orfromtheradioactivefractionobtainedbyionexchangeresin,wasfraction‐

atedfurtherintoeachmember(Table6).RadioactiveelementscontainedinGroup llwereprovedtobemostlycomposedofCdfraction・Fromtheresultsofaluminium absomtioncurveanddecaycurve(Fig.7and8),thenuclideinquestionwasidentified asll3mCd(115mCd).Inthekidney,59Fe(55Fe)and65Znwerecomfrmedtogetherwith lL3mCd(115mCd).

4)ThequantityofradioactivenuclidesinlOOg、ofthekidneywascalculatedas follows; 13mCd(L15mCd)0.09浬c,59Fe(55Fe)0.09 and65ZnO、006戸c、

緒 言

著者等は1954年に米国がマーシャル近海で行った核爆発実験の影響により生じた放射 能汚染魚の放射能強度,各組織における放射能分布及び放射性元素の定性的性質等につい て検討した結果を第1報')として報告した.その後1958年10月31日に米英共同声明を

*本報は日本水産学会の33年度九州支部大会(11月,鹿児島)と34年度秋期大会(10月,大阪)に おいて発表した.

なお本誌第6巻の高田幸二,斎藤要,日高富男:魚肉に対するα36の挙動及び斎藤要,鮫島宗 雄,田中剛gS35の海藻への転移に関する研究(1)を,それぞれ本委員会報告第Ⅸ報及び第X報と する.

(3)

1

lstVoyage

V 凧 廻 f

以て核爆発実験を中止するに至るまで両国は各禽エニウエトック環礁とクリスマス島にお いて大小の実験を行っているが,その方法と汚染範囲に変化があったためか,我国におけ る放射能汚染に関する研究は主として大気汚染及びfalloutについてなされ,2)直接海洋 及び水産生物を対象とした研究は最近殆んど行われていないようである.しかし著者等は 実験地に比較的近い北赤道海流域とそれより派生する黒潮の流域は我国の主要な南方漁場 であることより両海域と,そこに棲息する水産生物の放射能汚染度の消長並びに同生物の 体内に存在する放射性元素の核種と量について深い関心を持ち現在もなお調査と研究を続 けている.

本報では1958年7月から1959年8月までに得た,前記海域の海水,プランクトン及び 魚類(腎臓)の放射能による汚染状況を述べると共に汚染魚の腎臓を試料としイオン交換 樹脂を用いるカラムクロマト法及び担体を用いる分属法を併用して放射性元素の核種の検 索を行ったところ現在もなお多くの試料で人工放射能が明らかに検出されることと,その 放射能の大部分は''3 uCd(115mCd)の存在に基づくことを明らかにし得たので,これらの 結果を従来の結果と比較検討・して報告する.

Fi9,1.Collectingstationsofseawaterandplanktonsand Hshinggrounds.

○:Seawater

●:Seawaterandplanktons 念gCauselineoftheKcitenMaru

実 験 の 部 実験材料

海水及びプランクトン:

実験に供した試料は鹿児島 大学練習船敬天丸(265.09

30°N屯,500馬力)が1958年

7月(第一次航海)と8月 から9月(第二次航海)の 間に南太平洋において採脹 したものである.なおプラ 20ンクトンの採集は航海中に 1arvanet(口径1.5m)を 時速約2浬で15分間曳航 して行ったが試料の採集位 置と敬天丸の航跡を示すと Fig.1の如くである.

魚類(腎臓):供試魚Iま 958年9月から1959年8 月までの間に鹿児島県沿岸 及 び 台 湾 と 鹿 児 島 の 南 端 を 結ぶ線を対角線とするほぼ 0四方形の海面内(Fig.1参 照)で漁獲されたものであ

3る.この海域は1954年の

︸且

F

ー ノ

・ '

grolmdinl959

些塊

@F

鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻

dVoyage m1958

歪で.F;へ

140

120 130 15『E

(4)

鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 放 射 能 研 究 委 員 公 報 告 蛎 亙 報 1

調査')によると最も多く放射能汚染魚の漁獲されたところである.供試した魚種はバシヨ ウカジキな"Qpノior"sor花"/α"s(CuvIER&VALENcIENNEs),マカジキMzノtα/rα〃7"s""γが (JoRDAN&SNYDER),クロカワカジキMzノヒαかα師αz、、a(JoRDAN&SNYDER),キワグマグ pZV ZAZ '"sα/6acora(LowE),クロマグロTル''""邸srAy"""s(LINNE)であるが本実験 では腎臓について放射能測定及び分析を行った.ここで腎臓を試料としたのは,これが汚 染魚の組織中で汚染度の最も高い臓器で放射能が体表に検出されない個体でも腎臓には明 確に検出される場合の多いことを確認しているからである.更にこれらの大型魚は通常鮮 度保持の見地から漁獲後直ちに船上で内臓除去を行うが腎臓は脊椎骨に沿って腹腔の奥深 くに存在するため市場に水揚げされた魚体でもこれが残存することが多く,肝臓とか幽門

垂 等 よ り 採 集 の 容 易 な こ と も 試 料 と し た 理 由 の 一 つ で あ る .

実 験 方 法 試料の調製

海水:1Jの海水より鉄明バンー塩化バリウム沈澱法によって得た沈澱をステンレス製試 料皿にとり乾燥後放射能を測定した.3)

プランクトン:採集瓶中の試料を吸引施過により猫紙上に集め,海水及び水道水で数回 洗潅し赤外線ランプで乾燥後ルツボに入れ約600℃の電気炉で灰化し,灰分100mgをステ

ンレス製試料皿にとり放射能を測定した.

腎臓:乾燥後ルツボに入れ約600℃の電気炉で灰化し,灰分100mgをステンレス製試 料皿.にとり測定に供した.

放射性元素の分属

腎臓の灰化試料について前報')と同様の担体を用いる分析法を行ったが,第Ⅱ属元素に

対してはFig.2に示す方法により再区分した.

Fig.2.SeparationmethodofGroupll・

Groupll

l D i s s o l v e d i n 6 N ( N H 4 ) 2 S ベ

Ppt SuPematant

lR淵柵濫LM9fb帯撫,S剛

andCd++)Asfrac.)

Ppt

(Hgfrac.)

Supematant

l柵s9卿柵.。u,

Ppt

(Pbfrac.)

Supernatant

l N w 柵N N H。

Bifrac.

(Cufrac.)

Ppt

Cdfrac.

Supematant

l柵撫。2NH…

Supematant

lN珊瑚d柵。

Supematant

(5)

184 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻

放 射 性 元 素 の イ オ ン 交 換 樹 脂 に よ る 分 離

腎臓の灰化試料を0.2N塩酸溶液とし,予めHR型としな陽イオン交換樹脂(Amberlite lR‑120,100〜200mesh)に塩酸溶液を吸着させた後木村氏等の方法4)に従って0.2N塩酸,

0.5%シユウ酸,5%クエン酸アンモニウム(pH3.0,3.5,4.1,4.6,5.1,5.6,6.4)の各種溶離 液で順次溶離を行い,得られた溶出液を各為濃縮してステンレス製試料皿に移し乾燥後放 射能を測定した.

以上の如くして分属叉は分離した区分の放射分析として常法のアルミニウム吸収板によ るβ線エネルギーの決定及び減衰曲線よりの物理的半減期の算出を行った.

放射能強度表示法及び測定装置

Countは何れもnetcountで海水はcpm/jI,プランクトン及び腎臓試料はcpm/100mg 灰分で表示した.測定には科研製ModellOO型Counter(GM管は科研B2N型,マイカ 窓の厚さ1.4mg/cm2)を使用した.なお測定距離1.5cmで計測したがβ線吸収曲線の作成 に当っては2.5cmの距離とした.

実 験 結 果 及 び 考 察 1.1958年,敬天丸第一次航海における試料 i海水の汚染

国際地球観測年に当り,南太平洋観測のため南下中の敬天丸は当時実施されていた核爆 発実験による放射能汚染の危険を避けるため7月17日(16.07'N,141.58'E)の位置で南下 を中止し,直ちに北上帰港のやむなきに至ったが,この航海5)において採集した海水につ いて放射能強度を測定した結果はTablelの如くである.

Table1.RadioactivityofseawatercollectedbytheKeitenMaru onthelstvoyagel958(Dateofcounting:July30)

Dateofcollection

Julyl7

Collectingstation Lat.Long,

16.47'N 16.07'N 17.48'N 21.11'N

142.035 E 141.58'E 141.00'E 136.13'E

Radioactivity cpm〃.

traCe

Thecpmwasestimatedfbrprecipitatio、,obtaindfroml/、ofseawater.

この結果は7月30日(採水後10〜13日後)に実験室で測定したものであるが,折返点 附近から採水した海水に放射能が検出された.最も強い放射能を検出した位置は航路の最 南端に当る16。07N,141.58'Eで27cpm/Iを示し,これより北上するに従い弱まる傾向が

窺われた.

次に汚染海水について放射能の減衰曲線を求めた結果はFig.3の如くで,試料・の放射能 は計測当初より25日前後を以て半減した.この事実より検出された放射能は明らかに人 工放射能であって試料中には半減期の短い放射性元素の混在することが諒解される.叉こ の曲線より推測すれば折返点附近の海水は採水当時25〜50cpm.'ノであったと思われる.

ところで,同年国際地球観測を実施中の さつま 及び 拓洋,,の二船は7月14日,ビ キニ西方約1,300kmの位置(14霞N,153.E)で大気中に19,000cpm,船体に23,000cpm海

(6)

【4

鹿児脇大学水産学部放射能研究委員会報告第X報

皇■甲

Fig.3.Decaycurveofradioactivematterialsinseawater

○:Collectedatl6cO7'N,141.58E

、:Collectedatl6o47'N142.03'E

⑬:Collectedatl7°48'N141.00'E

80day目

1︲トー︲卜︲111111:I

Ofcollection cpm/1 、ate

︑︑︑︑︑︑︑︑

︑︑︑

︑︑︑卜︲いへ︲︲︲︲︲︲l︲

2

,BegiImmgdateofcountin宮

釦釦

1

81配血

185

Bulwark20〜30cpm

るが,船首部よりのl00cpmをはじめ数佃所で20〜60cpmを検出し,前述の さつま''及 び 拓洋,,の場合と比較し軽度ではあるが本船も汚染を受けたことは確かである.しかし 5日後の7月30日,著者等が再度行った検査では充分洗樵されたためか放射能は殆んど検

出 さ れ な か っ た .

皿.1958年,敬天丸第二次航海における試料

この航海は8月から9月にわたりインド洋での漁業実習を目的として行われた.その往 路及び復路は121。〜129'Eの北赤道海流及び黒潮流域に航路(Fig.1参照)をとり海水を 緯度10・毎に,ブ.ランクトンを復路のみ、2.毎に採.蝶した.

i 海 水 の 汚 染

海水の放射能測定結果を示すとTable2の如くである:

ソノ0 q HIi

水に150cpm/ノの放射能を検出しているが,この位置より更に西方約1,200kmの海域にお いても前述の如く人工放射能が明らかに検出されたのである.この事実は1958年の核爆 発実験により北赤道海流域が広範囲にわたり放射能汚染を受けたことを示している.

ii・船体の汚染

敬天丸は7月25日帰港後,鹿児島県衛生部により直ちに船体及び甲板上の器具の放射 能強度が測定された.Fig.4はサーペイメーターにより距離10cmで計測された数値であ

Fig.4.RadioactivityondeckoftheKeitenMaruonJuly25,1958.

Radioactivitywasdetectedbysurveymeterwitha distanceoflOcm・frommicawindowofG−Mtube.

吋 睡 : 蕊 " )

( 蝿

m i W i i 艦

Topofstem

lOOcpHTV?−

JOE,、上、、魁堪、‐

(7)

鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻

1

Table2.RadioactivityofseawatercollectedbytheKeitenMaruonthe2nd voyageinl958.(Dateofcounting:Sept、30toOct、2)

Ontheoutwardvoyage 186

126.47'E 127・26'E 127。31'E 127.38'E 127。47'E 128・03'E 128.12'E 128.28'E 128.36'E 128.45'E 129oI7'E I29o30'E 129。40,E

NNNNNNNNNNNNN〃fJひ〃ノノfD0Fjf70002010090005000000005000r半げげぴ聾半げげ少牟仔汗111111222

Sept・10 211121 1116311081514︒U■︒■■●■︒■●●■0062050700605

ニンンン

23456781111111

Dateofcollection

髄融lCWngf雛n吋綴iVity

collectionDateof Collectingstation Lat.Long.

Radioactivity cpm//

Onthehomewardvoyage

1

ThecpmwasestimatedforlOOmg,oftheashwithadistanceof1.5cm,

frommicawindowofG‑Mtube.

Aug、521.00'N127.41'E 20.00'N127弓37'E 619°00,N127.31'E 17.58'Nl27o22'E 17.00'N127.21'E 16.00'N127.21'E 715.00′N127.20'E 14。00'N127。l7E 13°00.N127oI6E 12.00'N127o18ノE 811。00'N127ol9E 10。00'Nl27o20'E 9.03'NI27o20E 98.00'N127.23'E

6.54'N127.21'E 5.00'N127.19'E 103.55'N127.13'E

ンンンンニンンンンンンンンン0502000000000000010131112111111111

Sept,

NNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNFf#〃〃fjofJ〃J1〃I〃0jffJO200200410010290010310000000000000000500000000︒○回︒︒○口︒○ロロ固り︒︒︒︒︒︒回回︒⑨678901234567899123456891111111111122222222

127.31'E I27o38,E I27o40'E 127.43'E 127.47'E 127・54'E 128.03'E 128olO'E 128.12'E 128。19'E I28o22'E 128o31E 128o35'E 128.39'E 128o46E I28m'53'E 129。00E 129.13′E I29o17'E 129.28,E 129.30'E 129.40'E 129.57,

3.01114311111211111111111巳④■●●■■●●︒●■■旬◆●●●●●0■0000400000400000000000 ンニンニンンンンンンンンンンンンンンン

1

126.31'E l26o45'E 127・00'E I27o26'E 127.24'E

Radioactivity

c p m

この結果は9月30日より10月2日の問に実験室で測定したものであるが,試料の採水 点が位置的に核爆発実験地よりかなり遠いためか北赤道海流域においても放射能は殆んど 検出されなかった.更にこの結果より,同海域における海水の汚染を論ずる場合は本試料 の採水が核爆発時よりかなり日数を経てから行われたことと 第一次航海で採集した汚染 海水では放射能半減期が;極めて短かかった事実とを考慮しなければならない

iiプランクトンの汚染

プランクトンの放射能測定結果を示すとTable3の如くである.

Table3.RadioactivityofplanktonscollectedbytheKeitenMaruonthe2nd voyageinl958.(Dateofcounting:Sept、29)

Collectingstation L a t . L o n g .

1

1

ンニンンン0000011111

Sept,10 02345口回︒ロ︒10000 20202ffff〃 NNNNN

(8)

。、§へ。

鹿児島大学水産学部放射能研究委員会報告第X報

llIll1lIl1IIllllll

この結果によると6.Nから9Nの北赤道海流域で採嬢したプランクトンに多く10〜20

cpmの放射能を検出したが,それ以外の各点で採娠したものには殆んど放射能が認められ

なかった.

次 に 汚 染 試 料 に つ い て 放 射 F i g . 5 . D e c a y c u r v e o f r a d i o a c t i v e m a t t e r i a l s i n p l a n k t o n s .

○:Collectedat6。00'N,127.31'E 能の減衰曲線を求めた結果は

⑫:Collectedatl8o00'N,128.36'E Fig.5の如くで,放射能は短

."−−.、↑、一噸一、、‑,−,‐‐…,̲,ニー一一DateofcoiIection

期間に減衰する傾向が明らかCpm

1こ認められるから,この放射 能 の 多 く は 植 物 性 プ ラ ン ク ト 2 0

ン中に多く含むと予測される 天然性40K(半減期1.3×109 年)によるものではなく人工

放射性元素の混在に起因する10

ことが諒解される.

ところで,著者等は1954年 1 1 月 に 敬 天 丸 が 北 赤 道 海 流 域 0

Iヨ、、

I 塁I 、

│ ト ー 。

'

1 1

Begnmingdateofcounti

187

5

鵠jloc lN。 |Dcoll953鍾叫。

lOOdays

(0。〜8,N,147,〜152.E)で採

集した海水,プランクトン及び漂流物についても放射能強度を測定した.6)その結果による と海水には放射能が殆んど検出されないのに対しプランクトンと漂流物(榔子の実,軽石)

には明らかに放射能汚染が認められた.即ち本実験の結果と同様,同海域で同時期に採娠 した場合でも海水とプランクトンとでは汚染の趣を異にしていたのであるが,この現象は プランクトンが放射性元素を吸収,蓄積し易い状態にあるためと解すべきであろうか,何 れにしても核爆発実験後かなりの日数を経過した時期に,実験地より遠く離れた海域(ビ キニ西方約3,000km,クリスマス島西方約9,300km)で採集したプランクトンに人工放 射能が検出されたことは,これが魚類の重要な餌料となる点からも注目すべきことと思わ

れる.

皿1.カジキ,マグロ類の腎臓汚染 i1958年の試料

1954年には多数の魚が放射能汚染のため廃棄されたが,鹿児島県の場合はその大部分が バシヨウカジキであった.')この結果を考慮し1958年の9月から12月の間に鹿児島市中央 市場に水揚げされたバシヨウカジキを中心に数種の魚類について腎臓の放射能強度を測定

した.その結果はTable4の如くである.

即ち11月4日に漁獲された一例が著しく汚染され約1,300cpmを示したが他ば10〜30 cpm程度で時期的変化も少ない結果となっている.なお,バシヨウカジキ以外にキワグマ グロ,マカジキ及びクロカワカジキの腎臓についても放射能を測定したが,これらにも同 程度の放射能が検出された.

iil959年の試料

本試料は同年5月下旬より8月下旬にいたる間に採集したものであるが,その測定結果 はTable5の如くである.

(9)

2

鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻

2

Table4.Radioactivityinkidneyoffishescaughtatthesouthemsea regionofKagoshimaPrefectureinl958・

Z,"opAoノ・ oノ・花"rα肱ZV1gorh""" α必αCOノ・a

13.7 18.7 12.1 25.0 18.3 18.1 188

047536●●︒■や■094345

Dec、4

221

Dateof landing

Dateof

counting Radioactivity

c p m

Dateof landing

Dateof counting

Radioactivity

c p m

Mfzノtaim /皿ノモz"・〃

1 Dec,3

Sept,181Sept、18 11111 32905969●●■●●■3240003

Nov諾lN。vつ

8153311311712203049660768●■●■■G●①●①■●■●凸009500070738880

Estimatingconditionofcpmwassameinthecaseofplanktons(Table3).

即ち本年.度の試料は10〜130cpmを示し,全体的にゑて昨年より幾分汚染度の高いもの が多いようである.昨年度調査した試料は鹿児島県沿岸で漁獲されたものが多いのに対し 本年度のものはそれより南方の海域(Fig.1参照)で漁獲されたものが多かった.なお,こ の結果より汚染はバシヨウカジキに限らず他の供試魚にも認められることが諒解される.

ところで,前述の如く試料魚の漁獲された海域は1954年に汚染魚が最も多く水揚げされ たところである.当時の結果と本実験の結果を比較すると最近の汚染度は確かに低くなっ ているが多くの試料に人工放射能が明らかに検出されることは注目に値する.

1V.汚染腎臓の放射性物質

著者等は第1報において1954年に漁獲された汚染バシヨウカジキの腎臓を試料とし通 常の無機分析法に準じて分属を行い,この腎臓中には第m属に属する放射性元素がかなり 存在することを明らかにした.本報では最近漁獲された汚染魚中最も放射能強度の大きい バシヨウカジキ(1958年11月4日水揚げ)の腎臓について放射性元素の核種の検索を行 った結果を述べる,

3 3

D e c , 1 0 D e c ・ 1 0

0ct、24 0ct,25 16.0

10.6 36.0 12.9 12.0

1 1

2

4654040■■9■●■巳629015512

Dec,10・IDec、10

1 1

MZz化αjノ α班azaF・a 17.7

22.5 19.4 2

Nov,4

Dec、3

Nov,5 Dec、4

598270●■■●■●216420

Nov、4 Nov、4

i

(10)

ハ ノヒαかα〃zか皿ノヒz〃〃

1

0ct、19541305.0120.0

Table5.Radioactivitymkidneyofiishescaughtatthesouthem seareglonKagoshimaPre企ctureinl959.

な〃 んoノ・ o〃e"rα"s ノV 伽"z" α/bacoノ"a 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 放 射 能 研 究 委 員 会 報 告 第 Ⅲ 報

1

Feb、1959

SampleB 57634.811916.2151 1.21441.0'1.512.312711910.5

柵淵826」l301LOlll611410Sl6970

Fe

制I患

frac 5S

Table6.Groupseparationofradioactiveelementsinkldnev "OpAoノ o"/α"1s

R蝿|蹄匙lRadi謡ivity

Dateoflanding Dateofcounting Radioactivity

c p m

lVlVlanalysis M a y 3 0 J u n e 2

Junel

9 1 0 1 2 l 3 J u l y 2 J u l y 4

8688466●■●吟●●凸49160792741321

May30 Junel July2

June2 July5

135.6

landingltotalcpmll I

IVeo " / ,α必αCOノ海・…・・・・・young

Dateof

DateofOrigina] RadioactivityofeachGroups(cpm)

July4

1958年の前記腎臓(試料A)と1954年に採集したバシヨウカジキの腎臓(試料B)を

乾物として現在まで保存していたものとについて担体を用いる分属法(Fig.2参照)で分析

した結果に試料Bの採集直後に行った分析結果を併記して示すとTable6の如くである.

ハ ノtαかα〃zαノ α

Estimatingconditionofcpmwassameinthecaseofplanktons(Table3).

July4

July5

626388538■●■■●■●■●4760840043126121 61004522●■巳︒□●□●2442241383234213

July5 A119.25 July4

Aug,22 June4

June4

3.5 7.0

Zソzz"z""'ノ"z

440283958675ゅ④■巳■■●■●●●8003464143091114112313

Au9.27Aug、3I

馳睡一m一面

鑑」蛙」愚」患」i艶

17.412.311.81 July5

試料Bの1954年と1959年に行った分属結果を比較すると採;唯当時,第m属に圧倒的に 多く放射能が検出されたものが約5年後では第m属に殆んど検出されず第1I属特にCd

470.09.015.01Nov、1954

(11)

190 鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻

区分に強く認められる結果となっている一方1958年に採集した試料Aでは放射能の大 部分が第1I属Cd区分に,その一部が第111属Fe区分に検出されている.

次に試料Aをイオン交換樹脂によって分析した溶離曲線はFig.6−Aの如くである.

即ち本試料ではF,,F2,

Fig.6.Fractionationofradioactivematterialsinkidneyof

な〃qP〃oノwsafe"/α"sbycolumnofanionexchange・ F3及びF4の4個所にピ

Resin:AmberlitelR‑120(100〜200mesh)ークが認められるが放射

ColUmn:10×200mm・

能強度の最も大きな区分 Velocity:0.5m1./min

Dateofanalysis:Aug,1958 はF4(pH4.1クエン酸ア

SampleA:Originaltotalcpmwasl,380

ンモニウム溶離部分)で SampleB:Originaltotalcpmwasl,003

cpm300卜 PH4,1にピークが{過る

SampleA 戸 阿 こ と は ' 5 m C d 標 準 品 を

2 0 0 1 1 卜 ! 用 い た 場 合 の 溶 出 位 置 と

全く一致するからFig.6

l o o l F I F 2 F 3 1 1 1 の 溶 離 曲 線 は T a b l e 6 の

『rJ‑'‑,JIILいい〜蕊雷驚亨篭

淵I州↓林│邸│蕊鴬

n − I 殆 ん ど 第 2 属 c d 区 分 に

l 0 0 1 S a m p l e B | Ⅱ 移 る こ と も 確 め て い る

次にこの区分のアルミ

0#ーロー…;…rFllll■画一 ニウム吸収曲線はFig.7

0 1 . 0 0 0 2 . 0 0 0 3 . 0 0 0 m l

に 示 す 如 く で , こ れ よ り 算出したβ線のエネルギーは0.6Mevである(u3mCd,β線:o57Mev).一方この区分の 放射能減衰曲線はFig.8に示す如くで半減期はl15mCd(半減期43日)よりかなり長く,

1'3mCd(半減期5.1年)よりは短い結果となっているが270mg/cm2のアルミニウム吸収 板を挿入しβ線の軟成分をさえぎっての測定では半減期は約45日であった.

以上の如き化学的及び物理的性質よりみてF4区分には113mCdとl15mCdとの混在して いることは明らかで,前者が主成分をなしていると推定される.

F製区分に次いで放射能強度の大きな区分はF2(0.5%シユウ酸溶離部分)で,これは放 射性鉄の標準品を用いた場合の溶出位置と一致し,Table6の分属結果の妥当なことを裏 付けしている.叉この区分のアルミニウム吸収曲線はFig.7に示した如く55Feにほぼ一 致しているが減衰曲線をみると減衰は弱Fe(半減期26年)よりかなり急激(半減期約50 日)であるから59Fe(半減期47日)が主成分をなしていると考えられる(Fig.8参照).

次にF8区分(pH3.5クエン酸アンモニウム溶離部分)は65Zn標準品を用いた場合の溶 出位置と一致し,Fig.7に示した如くアルミニウム吸収曲線及び放射能減衰曲線(半減 期約250日)は65Znとほぼ一致するから同区分には65Znの存在することは確かである.

F1区分(0.2N塩酸溶離部分)については放射能強度が弱いため種友な測定を行うこと が出来なかった.

(12)

102

1

柵蝿耐鵬州鵬棚州州州州州州州惟いぃいいいいいい●111︾吟唱帽やいトー11111恥

孜に1954年に採集した 試料Bを同時にイオン交換 樹脂によって分析した溶離 曲線はFig.6‑Bの如くで,

試料.Aと同様にF4のCd区 分に強い放射能が認められ る . し か し 同 区 分 の減衰 曲 線(Fig.8参照)よりゑ て そ の 放 射 能 の 殆 ん ど が 113llCdの存在に起因するこ とは明らかである.叉本試 料のFe及びZn両区分の Cd区分に対する放射能比 が試料Aの場合より小さい 結果となっている.

と こ ろ で , 試 料 A と 試 料 B は 漁 獲 年 を 異 に す る が 共に同一海域で採集したバ シヨウカジキの腎臓であっ て , 同 時 に 行 っ た 分 析 結 果 に よ る と 放 射 能 の 大 部 分 が Cd区分に検出される点は 類似しているのに対し両者 の減衰曲線に明らかな差が 認 め ら れ る 。 こ の 事 実 よ り

Fig.7.Aluminiumabsorptioncurveofeachfractionsm kidneyofZF"Qpノio〃!so"e"/α"j,(SampleA)

Dateofanalysis:Feb,1959

⑬:F2fraction

⑥:F8fraCtion

○:F4fraction

cpml lO3

1

︻且

鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 放 射 能 研 究 委 員 会 報 告 第 X 報

噺、

、 ク

11140

認 め ら れ る 。 こ の 事 実 よ り 0 1 0 0 2 0 0

A1uminiummg./cm2 試料Aは比較的最近汚染を

受けた可能性も一応考えられる.しかしこの考察に関しては試料Bが全く物理的減衰を 経たものであるのに対し試料Aでは更に生物学的減衰を経ている点も考慮しなければなら

ない.

各放射性元素の量:前記の如くして検出した核種の放射能を標準品と比較計測し,試料 Aの生組織lOOg中に含有される量の概算を求めた結果はTable7の如くである.

前述の如く本試料の放射能は大部分放射性Cdの存在に起因するが量的にみると同元素 は放射性Feと同程度存在し,放射性Znは両者よりかなり少ない結果となっている.白 井7)及び佐伯8,9)氏等は1956年に漁獲されたカツオ及びメバチの内臓から放射性Cdを検 出しているが,その分析値を本実験の結果と比較すると他の放射性元素に対する同元素の 量的割合は後者の方がかなり多くなっている.最近採推した多くの試料でもこの傾向は明

らかに認められた.

ところで,放射線防禦国際委員会勧告'0)によりアメリカNBSの数値の1/10が我国でも 人体に対する許容量とされているが,若し試料Aを毎日200g摂食すると仮定すれば許容 量に対し放射性Feは20%,他の元素は更に低い値となる.勿論腎臓は通常食用に供しな

(13)

192

Cpm 1.300

1.000

500

− b e f o r e − 膳

'fractioI1ation

1958 1959

IYov・lDec・lJaII,

鹿 児 島 大 学 水 産 学 部 紀 要 第 8 巻

afterfractionatiOn 丑王

Fe 140

120

I h 1 I

50daysO 100 200days

Fig.8.Decaycurveofradioactivefractionsinkidneyof 耐rjQp加ノ・ o〃e"raIな

○:SamPleA

⑭:SampleB

Table7,QuantityofmdioactiveelementsinlOOg,offreshkidney ofIhm"〃oノ・"SOI・ie"rα伽(SampleA)

Nuclides

ll31Cd(1151nCd 59Fe(55Fe)

65Zn

Radioactivity(Feb、1959)

0.094浬c 0.090浬c 0.006浬c

Cpm

い上に本試料は最近採雄した試料中で最も汚染度の高い特例であるから,前記の許容量を 信頼するとすれば検出された放射性元素に関する限り試料魚の汚染は問題にならないこと になる.しかしこれらの放射性元素を体内に保持している魚類自体に対する影響について は別に考慮すべき問題と思われる.

以上述べた如く最近の汚染試料では放射能の大部分が放射性Cdの存在に起因するので あるが,Cdが生元素であることは未だ確認されておらず,'1)又第5福竜丸の降灰からも検 出されていない珍らしい元素である.4)これが現在においてもなお汚染魚の体内に撰択吸収 叉は蓄積されていることは極めて興味深い事実で,同元素の生体内における生理的機能の 一端を示唆している現象とも考えられる.

要 約

本報では1958年7月から1959年8月までの間に北赤道海流域及び黒潮流域(Fig.1参 照)で採集した海水,プランクトン及び魚類(腎臓)の放射能による汚染状況と汚染腎臓 に含まれる放射性元素の核種について検討した結果を述べたが,それを要約すれば次の如

くである.

(14)

終りに本研究に対.し御援助御指導を賜った本学部高田幸二教授,三重県立大学水産学部

岡田弥一郎教授,東京大学農学部桧山義夫教授,日本大学農獣医学部森高次郎教授及び白 井和雄氏並びに実験に協力を賜った本学練習船敬天丸の乗組員各位に謝意を表する.

尚本研究は文部省科学研究費(綜合)により行われた研究の一部である.

1

1)1958年7月から9月までの間に北赤道海流域で採集した海水(採水点 6。〜'7動N,

,4,。〜,42。E)及びプランクトン(採:脹点6°〜18.N,127°〜128.E)には 0〜30cpmの人 工放射能が検出され,これらの測定当時における放射能の減衰はかなり急激で,半減期は

30〜70日であった.

2)1958年9月から1959年8月までの間に鹿児島県沿岸及びその南方海域で漁獲され たバシヨウカジキ,クロカワカジキ及びクロマグロの腎臓からは10〜11300cpmの人工放 射能が検出され,これらの測定当時における放射能の半減期は100〜150日であった.

3)バシヨウカジキの汚染腎臓について担体を用いる分属法とイオン交換樹脂法を併用 して分析した結果,第1I属Cd区分に最も強い放射能が検出された.更に同区分の減衰 曲線及びアルミニウム吸収曲線を求めて113mCd(115mCd)の存在を確認し,他に本試料 からは51Fe(55Fe)及び65Znも検出された.

4)汚染度の最も高いバシヨウカジキの腎臓1009中の各放射性元素の概算量は''3mCd

(1,5mCd)0.09 ,59Fe(55Fe)0.09,ac.,65Zn0.006 ucで,最近の汚染試料では特に他の

放射性元素に対する放射性Cdの量的割合が多くなる傾向のあることを認めた.

以上述べた如く,核爆発実験の中止された今日でも多くの試料に人工放射能が明らかに

検出されるのである.この事実は同実験による海洋及び水産生物の放射能汚染が予想以上

に甚大であることを示している.

鹿児島大学水産学部放射能研究委員会報告第X報

文 献

斎藤要。鮫局宗雄:鹿大水産学部紀要,4,124(1955).

山県登等:分析化学,7,433(1958).

三宅泰雄・杉木吉雄。亀田和久§科学,24,601(1954).

木村健二郎等旨分析化学,3,335(1954).

CHAEN,M,,T・HEMMIandT・TAKAHASHI,1960;Mem・Fac、Fish,KagoshimaUniv.,

Vol、8.

盛田友弐・斎藤要・源河朝之:鹿大水産学部紀要,4,151(1955).

白井和雄:F1水誌.,23,723,735(1958).

佐伯誠道言分析化学,6,444(1957).

同上:日水試.,23,729(1958).

RecomendationofthelntemationalComissiononRadiologicalProtection,BJ.R・

SuppLNo、6.(1955).

江上不二夫: 生化学講座''2,共立出版,(東京).(1958),p、2,

jjjjjl2345

jjjj167890

参照

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