2006
年1
月26
日ファッションにおける流行の採用段階に影響を与える 要因
― ファッション関与と性格特性を比較して―
寺尾 朋子
流行 1.流行現象
(1)流行とは(中村
,1997
)特定の行動様式や思考様式が特定の成員に
・
受け入れられ、急速に普及し、やがては 消滅していく社会現象。社会生活のあらゆる面で生じるが、人の服
・
飾・化粧・髪型で顕著に現れる。採用の可決が個人の自由意志に委ねられて
・
いる点・衰弱が急激であるという点で、制度的行動や慣習と異なる。
(2)ファッション
① その時代時代の、最も一般的な普遍的行 動様式をつくりあげる流行。通常は服飾 などの流行に用いられる(川本
,1981
)。
② 単に服装、あるいは服装から髪型・化粧
・アクセサリーまでを含めて用いられる
。
2.流行を採用する理由(中村 ,1997 )
① 新奇ものや変化を求める動機
② 個性化と自己実現の動機
③ 集団や社会への適応動機
④ 自己の価値を高く見せようとする動機
⑤ 自我を防衛する動機
流行を採用するのは、以上の動機のいくつか が、互いに影響を及ぼし合いながら働くためであ る。
3.流行の個人差
ロジャース(
Rogers,1983
)は、個人がどの段階 で流行を採用するかによって、5
つのタイプに分類した。
(
A
)革新的採用者:冒険的な人々最も早く流行を採用し、せっかちで冒険的な性 格。
(
B
)オピニオン・リーダー:尊敬される人々特定の分野に精通し、情報を提供したり、助言を 求められることにより、周囲の人々に影響を
与える。
(
C
)前期多数採用者:慎重な人々社会に是認されてから流行を採用し、慎重な 性格。
(
D
)後期多数採用者:疑い深い人々大多数の人が採用した後に流行を取り入れ、
懐疑的で用心的な性格。
(
E
)採用遅滞者:伝統的な人々 伝統志向が強い性格。図
1
流行の採用段階採 用 遅 滞 者
(A)
(A)
(B)
(B)
(C) (D)
(C)
(E)
(D) (E)
2.5
%13.5
%34.0
%34.0
%16.0
%時 ー
χ σ
+ 間χ σ
-χ
-2σ χ
ー動員 人数
ー ー
初 期 少 数 採 用 者革 新 的 採 用 者 前 期 多 数 採 用 者後 期 多 数 採 用 者
目的
ロジャースは流行の採用段階と性格特性には関
わりがあると述べている。しかし、私は流行の採用 段階と性格特性には関係がなく、むしろファッショ ンへの関与の強さが、流行の採用段階に影響を
与えると考える。
そこで、調査を通じて流行の採用段階と性格特 性・ファッション関与の関わりをみていく。
仮説
(ⅰ)a ファッション関与はファッションにおける流 行の採用段階に影響を与えず、性格特性の
みが流行の採用段階に影響を与える。
b 各採用段階の性格特性別の平均点にお いて、革新的採用者の冒険的な性格の平均 点が最も大きく、その他の採用者には差がな い。その他についても同様である。
c ファッション関与は革新的採用者 > 初期少 数採用者 > 前期多数採用者 > 後期多数採用
者 > 採用遅滞者の順に強いという関係が成係が立 しない。あるいは、上の関係式において 3 つ以上 等号を認める。
(ⅱ)a 性格特性はファッションにおける流行の 採用段階に影響を与える。
b 各採用段階の性格特性別の平均点において、
革新的採用者の冒険的な性格の平均点は唯一大 きくない。その他の採用段階についても同様に、
応する性格特性の平均点が唯一大きくない。この対 関係が 3 つ以上成立すれば、仮説bを認める。
c ファッション関与は革新的採用者 > 初期少数 用者 > 前期多数採用者 > 後期多数採用者 > 採用遅滞採 者の順に強い。なお2つは等号を認める。
調査
・調査時期:
2005
年11
月21
日~2005
年11
月30
日・調査対象:香川大学生
117
人、中国短期大学 生60
人・調査方法:ある授業において質問用紙によっ
・調査内容て実施
ファッション生活の状況 ファッション関与
流行の採用段階 性格特性
結果 仮説
(ⅰ)b 立証されない
c
立証される→ 【a ファッション関与はファッションに おける流行の採用段階に影響を与えず、性 格特性のみ
が流行の採用段階に影響を与える。】は 立証さ
れない。
仮説
(ⅱ)b 立証される
c
立証されない→ 【a 性格特性はファッションにおける 流行の採用段階に影響を与えず、ファッシ ョン関与のみが流行の採用段階に影響を与 える。】は立証されない
考察
1
.
流行の採用段階とファッション関与の関係が認 められなかった理由① 尺度の問題
革新的採用者と後期多数採用者の
α
係が.06
と低い。また、今回の調査はロジャースの定義よ り、今回の調査は革新的採用者が約
9
倍、後期 多数採用者は約2
倍だった。→ 革新的採用者でない人が革新的採用者と、後 期多数採用者でない人が後期多数採用者と判 断されたのではないか。
② 革新的採用者のファッション関与の捉え方の 問題
革新的採用者の一ヶ月の洋服代は
1
~2
万円と 初期少数採用者の次に高く(図2
)、ファッション 雑誌を一ヶ月に一冊以上読んでいる人は最も多い(表
4
)。このことから、革新的採用者のファッ ションに対する興味は高いと言える。図
3
のグラフより、革新的採用者の興味はファッ ションだけにとどまらないことが分かる。→ 革新的採用者は他の採用者と比較すると ファッション関与は高いと考えられるが、
ファッ
ション意外にも興味があることが多いので
、自己
のファッション関与を低く捉えたのではな いか。
0 20 40 60 80 100
服・アクセサリ 外食 レジャ
ー
雑貨 ガソリン代 書籍 化粧品・美容C
・
D V D D
通信費 その他比
(
率)
%革新 初期 前期 後期 遅滞
2.
女子大生はファッション以外に外食やレジャー などにも興味があるので、これを充実させた
ファッション雑誌を作れば、雑誌の売上があがる のでないか。
3.
女子大生の一ヶ月の洋服代は平均