判例の意義と民事判例の読み方

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3 何が判例か(判例の判断)

「判例」が判決によって示された法的判断,法理論(法命題)であるといっても, 判決文のどの部分,どのような内容を指して「判例」というかが問題となる。それ を判断するにあたって問題となるいくつかのポイントをあげておこう。 (1)先例拘束性の有無 一般に,判例というときには,後の裁判が先例としてそれに従うような力がある 判断でなければならないといわれる。この先例として後の裁判を拘束するというこ とから,こうした性質を「先例拘束性」という。判決文に述べられていることすべ てに先例拘束性があるわけではないので,先例拘束性がある部分はどこかを検討し それを発見抽出する必要がある。 もっとも,そもそもわが国は,英米法のような判例法主義(過去の判決そのもの を法として扱う主義)の国ではないので,後の裁判で過去の判例と矛盾する判断を することができないわけではない。イギリスやアメリカでは,原則として後の裁判 では,必ず先の判例に従わなくてはいけないということに制度上なっているので(14), 何が判例かを確定することが極めて重要なことになる。 そこでは,判決文(判決理由)の中の判断において,①「先例として拘束力のあ る部分」をレイシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)といい,②判決文の中の判 断であっても,こうした先例としての拘束力がない部分をオビター・ディクタム (obiter dictum)といって区別している。日本語に直せば,前者①の拘束力がある 部分が「主論ないし正論」であり(レイシオ・デシデンダイを訳せば「判決理由」 である),そうでない部分②が「傍論」である。一般に,傍論とは「当該の裁判の 結論を導き出すための論理的前提として表明されているのでない規範命題ないし法 律論,すなわち当該の事件で争点となっているのでない仮定の問題について一定の 結論を導き出すために,その論理的前提として表明されている規範命題ないし法律 論」と定義されている(15)。簡単にいえば,傍論とは,その裁判が結論を導くのに必ず しも必要ではない理由ということである(ついでの理由という意味なので,英語で はincidental or supplementary opinionといわれている)。

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