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自 生

大学生 の 自殺事例 を通 して 中村  剛 ,西 村優紀美

Tsuyoshi Nakamura,Yukilrll Nishimura:

Suicide corrlrrlitted by the Students of Toyama University

< 索 引用語 : 自殺, 大 学生, 富 山大学 >

<Keywords:suicide,university student,Toyama University>

は じめ に

昭和 50年 (1975)4月 に保 健 管理 セ ンター (以 下 ,セ ンター)が 設 置 され て か ら平 成 12年(2000)

3月 を もって満 25年が経過 した。 この25年の間 に 69名 (年平 均 約 2.8名)の 学 生 が所 期 の 目的 を達 成 す る ことな く修学 なか ばで死亡 して い る。 69例 中,死 因順位 の 1位 は 「不慮 の事故」 で27例 (39。

1%)を 数 え,つ いで 「自殺 」 25例 (36.2%),「病 死 」 15例 (21.7%),「急性 アル コール中毒」 1例 ,

「不 明」 1例 とな って い る。 以前 に著者 の ひ と り が 1972年度 か ら1981年度 まで の10年間 につ いて同 様 の調 査 を した ときは,全 死 亡学 生 22名中 の死 因 順 位 の 1位 が 「自殺 」 9例 で,「 不 慮 の事 故 」 が 2位 で あ ったが8),今回 の調 査 で は両 者 の順 位 が 逆転 して い る。 この ことは,不 慮 の事故 死27例の うちの22例が交通 事 故 死 とい う事実 が示 唆 す るよ うに,自 家用車 を所有 す る学 生 の増加 と密接 に関 係 して い る。 な お,「 急 性 ア ル コー ル中毒」 1例 はほん らい 「事 故 (「不慮 の」 とは言 いが たいが)」

に分類 すべ き性質 の もので あ ろ うが,当 該事 例 で は飲酒 と死亡 との間 に直接 的 な因果 関係 が証 明 さ れ て いな いので,一 応,別 の分類 と した。

いずれ に して も,学 生 自身 の 自己管理能 力 と周

囲 の人 び との適 切 な支援 の あ りよ うによ って は, 交 通事故 死 や 自殺 な どの不幸 な事 例 の大半 はその 発生 を未然 に防止 で きた可 能 性 が あ る。 特 に 自殺 は自 らの手で前途有為の命 を断つ とい う行為であ っ て,そ の損失 の大 きさは量 り しれ ない ものが あ る。

したが って こ う した不幸 の くり返 しを防 ぐため に は,既 遂事例 25件に関す る情報 の蓄積 とその分析 が必 須 の課題 とな るで あろ う。

調 査 方 法

学 生 が死亡 した と きは,原 則 と して保護 者 に死 亡 診断書 を添 えて大学 に届 け出 る義務 が あ るが, 死 因が 自殺 の場 合,事 実 が隠 され る ことが少 な く な く,当 該事例 に関 して詳細 を知 る ことは しば し ば困難 で あ る。 したが って,事 例 によ って は自殺 学生 の指導教官 や友人 の陳述 内容 か ら自殺 の動機, 原 因 な どを推 定 す る こ とに した。 しか しそ う した 情 報 す ら得 られ な い場 合 が あ り,平 生 ,学 生 の教 育 指 導 に直接 タ ッチ して いな い セ ンターが行 う自 殺 学 生 の調 査 に は,お のず か ら限 界 が あ る といわ ぎ るをえ な い。 なお,自 殺学生 が生前 にセ ンタ を受診 す る ことはまれで, こ の調査 で も対象者25 人 の うち 1例 が 「うつ病 」 の ため に定 期 的 な ケ ア

著者所属 :富 山大学保健管理 セ ンタ ー,The Department of Health Services,Toyama University

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を受 けて いた に過 ぎな い。 彼 は 「自殺 の恐 れが大 きい」 と考 え られ たので,郷 里 での入 院加療 を勧 め られ たので あ ったが,入 院 して一 時帰宅 中 に 自 殺 を決 行 した もので あ る (事例 2参 照)。

結 果 と考 察 1)自 殺率

昭和 50(1975)年 度 か ら平 成 H(1999)年 度 の 25年間 にお け る自殺者数 は25で,年 間 1件 の事 例 が 発生 した こ とにな る (表 1)。 この間,在 学学 生 総 数 は133,621(男子90,571,女 子43,057)で あ

るので,自 殺率 (人口10万対)は 18.4とな る。

自殺学 生 25の内訳 は男子22人,女 子 3人 であ り, 性 別 の 自殺 率 を算 出す る と,男 子学生 24.2(男 子 学 生 の中 に は,経 済学部夜 間主 コー スに在 籍 す る 45歳の地方公務員 が 含 まれ て い るが, この 1例 を 除 けば 自殺 率 は23.2とな る),女 子学生 7.0であ る。

大学生 の 自殺 に関す る最近 の資料 と して は,富 山大 学 を含 む全 国63大学 の昭和60(1985)〜 平成

7(1995)年 度 まで の11年間 にわ た る死亡学生 の 実 態 調 査 の結 果 が あ る6)(表 2)。 全 学 生 の 自殺 率 は平 成 元 (1989)年 を最 低値 と して U字 形 を示

表 1。 年度 ごとの自殺件数

して い るが, これ らの 自殺率 に比 べ る と富 山大学 生 の 自殺率18.4のほ うが高率 にみえ る。 また,我 々 の資料 (表 1)の うち,全 国63大学 の調査 に時期 (1985〜1995年度 )を 合 わせ た部 分 につ いて み る と,富 山大学学生 の 自殺者 は11人で 自殺率 は15,9, うち男子 は 9人 で20.3,女 子 は 2人 で8.0とな り, 自殺 率 は全 国大学 よ りも男子 がやや高 く,女 子 が やや低 い傾 向が うかが え る。

従来 ,国 立 大 規模大学 で は 自殺率 が高 い ことが 指 摘 され て お り1)。

少 し古 い資料 で はあ るが H大 学 で は1974〜1977年度 の間 で,22.8〜 74.0,N大 学 で は1969〜1981年度 の13年間 の 自殺 率 は11.6〜

81.3,平 均 33。9で あ った とい う5)。富 山大 学 は国 立 中規模 大学 に相 当す るとい う (学生部述)が , 前 回 の調査 (1972〜1981年度 の10年間 で,H,N 大学 とほぼ同時期)で は,学 生 の 自殺件数 は 9で ,

自殺率 は20。7で あ った。

以上 を総合す ると,富 山大学 の学生 の 自殺率 は, 国立 大 規 模大学 よ り低 いが,全 国立大学 の中で は や や高 い部類 に属 す る といえ よ う。

2)学 部別 ・性別

学 部 別 の 自殺者数 は表 3に 示 した。経 済学部,

( )は 女子で内数

1975  1976

0     0

1977  1978  1979  1980  1981 1     1     4     0     1

1982  1983  1984  1985  1986 1 ( 1 )   0       2   2 ( 1 )   0

1987 1

1988  1989 2     1

1990  1991  1992  1993  1994 0   2 ( 1 )   O       o       l

1995  1996  1997  1998  1999 2     0     1     1     2

計 25(3)

表 2.1985〜 1995年度の自殺率の推移  (国 立63大学の集計)

1985  1986  1987  1988  1989  1990  1991  1992  1993  1994  1995

全 弓= 」ヒ    20.1   16.5   14.9  13.5   9.3   10.4  11.7  12.2  13.9  17.4  12.3

男子学生  21.3 16.8 14.8 14.1 女子学生  16.4 15.8 15,0 11.9

11.0   11.8   13.7 4.5    6.6    6.3

13.4   16.0   21.0   13.3

9.1    8.6    9.1    10.3

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表 3.学 部別 自殺件数

工 学部,理 学部 ,人 文学部 の順 に多 く,教 育学部

は 自殺者 が 0で あ る。 文系,理 系 の区別 で は文系 の ほ うが 自殺率 が高 い とい う報告 が あ るが 3),加 藤 ら5)はこの両者間 には差が ないといい,意 見が わか れ て い る。 富 山大学 の場合,人 文 ・教 育 ・経 済 の 3学 部 を文系,理 ・工学部 を理系 とす る と,

この25年間 の 自殺学生数 は文系 12,理 系 13であ る。

一方,在 籍学生総数 につ いてみた文系,理 系 の比 は 6対 5で 文系が やや多 いが,男 子学生数 の比 は 反対 に 3 対 4 と 理 系 が多 い こと,   さらに は対象 と な る資料 の規模 が小 さい ことな どの問題 があ って, 一 概 に文系 と理系の 自殺率 の高低を論 じることは で きない。

ただ一 つ 目につ くの は, この25年の間 に教育学 部 に 自殺者 が でて いな い ことで あ る。 この学部 で は昭和35(1960)年 度 まで調査 を遡 行 して も自殺 者 は見 当 た らず,要 す るに過去40年間,教 育学部 は 自殺 とは完全 に無縁 で あ る。 N大 学 で は,1969

〜 1981年度 の13年間 に学部学生 の 自殺者 は32人を 数 え たが, こ こで も教 育学部 は医学部 とと もに学 生 の 自殺 が発生 して いな い5)。これ らの学部 はそ の性質上 ,ア イデ ンテ ィテ ィが確立 しやす く,そ れ が 自殺 を抑制 す る要素 なのか も しれな い。

なお,富 山大学 生 にお け る自殺率 男女比 は30.2 (ただ し,45歳 の社 会 人 男性 1例 を除 く)と な り, これ はわが国 の1987年 (本調査期 間 の中間 の年 に あ た る)の 19〜24歳 の 自殺 率 男女 比 56.010)に べ て,明 らか に低率 であ る。

3)学 年 別 ・年齢別 ・月別

学年 につ いてみ ると, 3年 生 10人, 4年 生 6人 , 2年 生 4人 の順 に多 く, 1年 生 の 自殺者 はいない。

な お,留 年 生 で は在 籍 5年 が 3人 , 6, 8年 が 各 1人 で あ る。 年 齢 で は,21歳 が 11人 と圧 倒 的 に多 く,次 いで 23歳 4人 ,22歳 3人 ,19,20歳 各 2人 , 24,26,45歳 各 1人 で あ る。 自殺 が も っ と も多 く 決 行 され た 月 は 3月 の 6件 ,つ い で 7月 の 5件 ,

4月 の 4件 , 1月 3件 , 6月 2件 , 5, 8,10, 12月 に各 1件 とな って い る。 特 に 3, 4月 を 合 わ せ る と10件 を数 え,学 年 初 め と終 わ りに 自殺 が 多 発 す る こ とが 分 か る。

こ こで , 「 学 年 」 「年 齢 」 「決 行 の 月 」 の三 要 素 の相 互 関 係 を理 解 す るた め に, 代 表 的 な事 例 を観 察 して み よ う。

事例 1 〕 文系 ・男子   2 1 歳 ,   2 回 生。

東海地方 出身 で 1 浪 して入学 したが,   2 回 生 の年度 末 に相 当す る 3 月 にアパ ー ト自室 で続死 の状 態 で発見

された。死後1 0 日と推定 された。

入学後,   1 年 間 は人並 み に登校 して いたが,   2 回 生 の 5 ,   6 月 頃, 退 学 を ほのめかせた ことがあ る。 この 頃, 金 銭 を持 たず, 死 ぬつ もりで秋 田方面 へ 出掛 けた が, 死 に切 れず, 実 家へ電話 で助 けを求 めた ことがあ る。 その年 の 8 月 には, 父 子 で 3 日 間の山行 きを し, 父親 は本人 が立 ち直 った と思 って いた。 後期 は履修届 けを提 出せず に図書館 で太宰 や三 島の本 な どを読 んで いた らしいが, 正 月 に帰省 した ときは 「一所懸命 に勉 強 して い る」 と言 って いた。

この事 例 は,   1 浪 後 , 気 分 を新 た に勉 学 に取 り 組 ん で は み た が , 時 と と もに入 学 初 期 の 緊 張 が 緩 み ,   2 年 目を迎 え た ころか ら抑 うつ 的 で退 嬰 的 な 生 活 に陥 って い た ら しい。 この 頃 か ら常 に希 死 念 慮 を抱 い て 1 年 間 ほ ど迷 った あ げ く,   3 回 生 に な る直前 に下 宿 で 自殺 を決 行 した の で あ る。

部 員 学

現 人文学部

871(546)

教育学部 899(622)

経 済学部 1868(621)

理学部    工 学部

1089(315) 1950(261)

0      8(1) 6(1)     7

自殺者数 4(1)

学部の下の数字 は1998年度の現員数 ;括 弧内は女子の内数

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4 ) 手 段 別

自殺 手 段 は, 総 死 9 , 入 水 3 , 飛 びお り 3 , 焼 身 2 , 服 毒 2 , 服 薬 1 , 感 電 1 で あ る。 小 さな資 料 なので断定 はで きないが, 最 近 で は服毒 ( 農薬) , 入 水 が減 って い る。綸 死 の減少傾 向 を指摘 す る意 見 もあ るが5 ) , 富山大 学 の事 例 に は当 て は ま らな

な お , 手 段 不 明 の 4 例 は, い ず れ も こ こ数 年 の 事 例 ば か りで あ る。 い ず れ も家 人 に よ って 発 見 さ れ , 大 学 へ 事 実 の届 け出 が な か った もの で あ る。

この あ た りに も, 保 護 者 側 の大 学 に対 す る意 識 の 変 化 が 表 れ て い る よ うに思 わ れ る。

5 ) 精 神 障 害 , 就 学 状 況

平 成 7 ( 1 9 9 5 ) 年 の統 計 で は, 若 者 ( 1 5 2 4 歳 ) の 自殺 原 因 は男 性 の場 合 ,精 神 障 害 25.4%,病 苦 1 5 。7 % , 生 活 0 経 済 問 題 1 2 . 7 , 同 様 に女 性 の 場 合 は, 精 神 障 害 3 3 . 0 % , 男 女 問 題 1 7 . 9 % , 病 苦 1 5 . 4

% の 順 に な って い る7 ) 。した が って 精 神 障 害 学 生 の ケ アが 自殺 予 防 の重 要 な課 題 で あ ろ うが ,実 際 に セ ン タ ー を受 診 した抑 うつ 状 態 の学 生 た ち の う ち で 自殺 既 遂 例 は, 下 記 の 1 例 だ けで あ る ( 事例

2 参 照 ) 。

事例 2 〕 文系 ・男子   2 2 歳 ,   3 回 生.

近畿地方 出身 で 1 浪 して入学。 入学後, 熱 心 に勉学 に励 んで いたが,   3 回 生 の後期 に至 って勉強 に身が入 らず, 不 眠, 不 安, 焦 燥感 に襲 われ るよ うにな った。

希 死念 慮 が 強 くいた た まれ ず にセ ンターを受 診, 「 う つ状態で 自殺 の恐 れが きわめて強 く危険 なので, 自宅 に帰 り, 治 療 に専念 す るよ うに」 とい う説得 を受 けい れ, セ ンターか らの通報 で迎 えに きた家人 と一緒 に帰 省 した。郷里 の某大学病 院 に入院 したが, 学 年末 の 3 月 に 「やや軽快 した」 ので許可 され た一 時帰宅 中,   ビ ルの屋上か ら飛 びお りて 自殺 を遂 げた。

この事例 は自殺 が い ったん は予防 され たのであ った が, わ ずかの隙 をつ いて 自殺が決行 された とい う残念 な結果 に終 わ った ものであ る。 なお, 保 護者 か らの届 けに添 え られ た診 断書 に は 「心 不全」 と記載 されて い たが, 後 日セ ンターを来訪 した家人が真相 を打 ち明 け て くれた ものであ る。

この事 例 を含 み, う つ 病 ま た は そ の疑 いが 濃 い 事 例 は 5例 で ,上 記 の 「事 例 2」 以 外 で は,「 抑 うつ状 態 」 の診 断書 が提 出 され た ものが 1例 あ り, 他 の 3例 で は家 人 に 「身 体 が 疲 れ る,死 に た い」

な ど と訴 え て い る こ とか ら抑 うつ 状 態 が 疑 いが 濃 厚 で あ る。 そ の他 , シ ンナ ー嗜 癖 1例 ,「 事 例 1」

の 1例 ,家 人 や友 人 に 「言 動 が お か しい」 と思 わ れ た もの が 4例 存 在 した。 精 神 障 害 が 自殺 者 の 10

〜 20%,あ る い は 3分 の 1と い う報 告2,3,5)がぁ る が ,そ れ は富 山大 学 の 自殺 学 生 につ いて もほぼ妥 当 す る と い え よ う。

自殺 が 休 学 中 に決 行 され た もの は 2例 ,留 年 中 の もの 3例 ,不 登 校 状 態 の もの が 6例 あ り,ま た 真 面 目 に登 校 して い た が 単 位 が 思 うよ うに取 得 で き な か った 1例 (事例 3参 照 )が あ る。 これ らの 中 に は狭 義 の精 神 疾 患 ,ス チ ューデ ン ト ・アパ シー な どが 含 まれ て い る と思 わ れ るが ,確 証 は得 られ て い な い。

事例 3〕 理 系 ・男子  22歳 , 3回 生.

北陸地方 出身 で現役 で入学。視神経 萎縮 のため左 は 全盲,内 向的で気が弱 い。一般教養 は優秀 な成績で, 専 門過程 に進級 したが, 3回 生 にな ってか らは出席 は

して い るが単位取得が ままな らず,卒 論研究 に入 る資 格 が得 られなか った。 4年 目は出席状況 は不良 で学年 末 の 3月 ,北 アルプスの麓 で眠剤 を服薬 して ビユール 風 呂敷 に横 たわ った状態 で凍死 し,約 7週 間後 に発見 され た。

6)居 住 形 態

25人 の 内訳 は,自 宅 通 学 生 が 10人,下 宿 生 が 15 人 で あ る。 学 生 の 自殺 は孤 立 に な りが ち な下 宿 生 に 多 い と され て い るが2,3),富

山 大 学 生 の 場 合 , 自宅 通 学 生 と下 宿 生 の比 は,男 子 学 生 の場 合 7対 15,女 子 学 生 の場 合 (事例 4参 照 )3対 0で ,男 子 学 生 の 自殺 は下 宿 生 に 多 い と い え る。

事例 4〕 文系 0女 子 21歳 , 3回 生.

現役 で入学 し,自 宅 か ら通学 して いた。性格 は明朗 だが何 か問題が生 じると抑 うつ的 にな るよ うな ところ が あ り,た とえば家庭教師 と して指導 した子 ど もが高

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校 受 験 に失 敗 した と きは,長 い間 沈 み込 ん で い た。 3 回 生 の学 期 末 の 3月 に 自宅 三 階 で統 死 したが ,決 行 の 前 日は特別綺 麗 に化粧 を して登校 し,朗 らか に振 る舞 っ て い た。

一 般 に,青 少年 では自殺傾向が熟す るとわずか な動機 で も決行 へ の引 きが ね とな りやす く,大 人 の 目にはいわ ゆ る 「動機 な き自殺」 とみえやす い といわれ て い るが4 ) , 自宅 にお いて 自殺 を決 行 し た事 例 4の 場 合 も自殺 の動機 は謎 に包 まれ た まま で あ る。

7 ) 予 防対策

この調 査 で対 象 にな った25例の 自殺 決行 の多 く は学期 の変 わ り目,特 に学年末,学 年初 め にな さ れ て い る。一般 に,   自殺 の直接動機 を青少年 の場 合 に限 って み る と, 景 気 の変 動 と失 業 , 働 きに く い環境,進 学競争 ,欠 損 家庭 な どに起 因す る問題 を あ げ る ことが で きる。 そ して, 青 年 層 の 自殺 率 変動 の激 しさか らみ て,   自殺 が社 会 的要 因 に影 響 されやす い もの と推 測 され て い る。 す なわ ち, 自 殺 の月別変 動 指 数 をみ る と, 1 5 〜 1 9 歳の者 で は 4 月 と 9 月 に, 2 0 〜 2 4 歳で は 4 月 に ピー クが あ る。

前者 は大多数 が在学 中の年齢 に相 当 して い るので, 学 期 の変 わ り目に当 た って 自殺 す る ものが多 いの で あ り,   これ は富 山大学 の学生 につ いて も妥 当す る。 この時期 に は過去 の反省,将 来 へ の苦慮 な ど の問題 が顕在化 し,そ れが 自殺 の結実 因子 にな る 可 能性 を示 唆 して い る。

自殺 につ いて もっと も重 要 な意 味 を もつ 「問題 発生 の時期」 は, 大 半 が半 月か ら 1 年 以 内であ り, さ らに 自殺 の決意 は長 くもち続 け られないよ うで, 決意 か ら決 行 まで の最 後 の期 間 は, 京 大 生 で は 7

日以 内 ( 4 5 % ) ,   1 日 以 内 ( 8 % ) で , 計 5 3 % が 一 週 間以 内で あ る とい う4)。schneidman 9)も, 自殺 は一 時 的 な心 の谷 間 か ら生 ず る もので あ り,

そ の時期 を無事 に通過 すれ ば必 ず 「生 きて いて よ か った」 と思 う時期 が くる と主張 して い る。 1953 年 か ら始 ま ったサ マ リタ ンズの活 動 が 1960年代 の イ ギ リスの 自殺 率低下 に寄与 して いた ことが統計 学 的 に も支持 され て お り,わ が 国 の 「いの ちの電 話」が同様 の効果 を挙 げて いる ことは Schneidman の主張 が正 しく,適 切 な助言 が 自殺 防止 の有効 な 手 段 で あ る ことを実 証 す る もので あ る。 したが っ て,平 常気軽 に相談 で きる相手 を用意 して お くこ と (教職 員 にあ つて はその よ うな態度 を保持 す る こと)の 重要 さが知 られ るで あろ う。

自殺 未 遂 例 は既 遂 例 の 7.7倍に達 す る とい う報 告 もあ る9)。自殺 を一 部 の落 伍 者 の問題 と して軽 視 す る ことは許 され な いので あ る。

文     献

1 ) 藤 土 圭 三 : 大 学 生 の 自殺 . か らだ の科 学 , 第 8 6 号, P.53, 1979.

2 ) 稲 村 博 : 自 殺 学 。 東 京 大 学 出版 会 , 東 京 , 1 9 7 7 . 3 ) 石 井 完 一 郎 : 大 学 生 の 自殺 につ い て ( I ) 。 京 都

大 学 学 生 懇 話 室 編 , 京 都 大 学 学 生 懇 話 室 紀 要 , 第 一 輯 , 1 9 7 1 .

4 ) 石 井 完 一 郎 : 自 殺 の心 理 機 制 。 上 里 ( 編) 『 青 少 年 の 自殺 』 所 収 , 同 朋 舎 , 京 都 , 1 9 9 9 .

5 ) 加 藤 雄 一 , 土 川 隆 史 : 大 学 生 の 自殺 につ いて の若 干 の知 見 ― N 大 学 の 自殺 学 生 を通 して み た ―.名 古 屋 大 学 総 合 保 健 体 育 学 科 紀 要 , 6 : 1 2 卜 1 3 6 , 1 9 8 3 . 6 ) 国 立 大 学 等 保 健 管 理 施 設 協 議 会 ( 編) : 学 生 の健

康 白書 1 9 9 5 ‑ 基 本 編 ― , 1 9 9 8 .

7 ) 厚 生 統 計 協 会 : 国 民 衛 生 の動 向 V o l . 4 4 . 1 9 9 7 . 8 ) 中 村 剛 : 富 山大学 学 生 の 自殺 . 全 国大 学 保 健 管 理

協 会 会 誌 , N o . 1 9 : 2 4 ‑ 2 8 , 1 9 8 3 .

9)Schnё idman,S.&Farberow,N.L.:Clues to Suicide.

New York,McGraw Hill,1937.

10)WHO:World Health Statistics,Annual.Geneva,

1988.

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参照

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