5 4
第 巻
第 巻
第 巻
第 巻
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[ 編 集 室 か ら ] 当 初 、「 忍 者 」 と 「 剣 客 」 の 2 巻 に 分 か れ て い た が 、 1 巻 に ま と め ざ る を え な か っ た 。 と な る と 、 編 集 委 員 の 方 々 も 気 合 い が 入 る 。 ど の 作 品 も 落 と し た く な い 。 し か し 半 分 に せ ね ば な ら な い 。 豊 穣 な 日 本 の 忍 者 ・ 剣 豪 小 説 か ら 1 5 0 0 枚 を 選 ぶ 、 と い う 暴 挙 を 敢 行 し て こ の 10編 が 残 っ た 。 佳 作 傑 作 名 作 が 他 に も た く さ ん あ る こ と は 、 承 知 の う え で あ る 。 幸 い 、 は ず さ ざ る を え な か っ た 作 品 の 一 部 を 他 の 巻 に 散 ら せ る こ と は で き た 。 [ 編 集 室 か ら ] 劈 頭 の 巻 で あ る 。 こ こ に 収 録 す る 長 編 2 編 で こ の 叢 書 に 収 録 さ れ る 作 品 の 幅 を 提 示 す る こ と に な る 。 編 集 委 員 は 悩 ん だ 。 結 局 、大 衆 小 説 の 枢 ・ 江 戸 川 乱 歩 の 本 作 が 選 ば れ た 。 財 宝 。 復 讐 。 大 海 原 。「 冒 険 」 物 語 の あ ら ゆ る 要 素 が 入 っ て い る 。 そ の 対 極 は 井 上 靖 で あ る 。 砂 漠 。 騎 馬 の 民 。 宝 石 の 首 飾 り 。 さ ら に 短 掌 編 で は 文 豪 と 言 わ れ る 作 家 の 作 品 と 「 空 想 科 学 小 説 」 の 作 品 を か み 合 わ せ た 。 奇 を て ら っ た わ け で は な い 。 必 然 、 だ っ た よ う な 気 が す る 。3
4
解 題 = 大 森 望 解 説 = 夢 枕 獏 解 題 = 池 上 冬 樹 解 説 = 逢 坂 剛 [ 編 集 室 か ら ] 黒 岩 重 吾 と 大 藪 春 彦 を 並 べ る こ と は 、 無 謀 で あ る 。 し か し 、 元 来 こ う い う 叢 書 を 編 む こ と 自 体 が 無 謀 な の で あ っ て 、 誰 が 選 ん で も こ う な る 、 と い う の で は 面 白 く な い で は な い か 。 短 編 は す さ ま じ い 背 徳 者 た ち が 並 ん だ 。 も と よ り 、小 説 と は 道 徳 の 教 科 書 で は な い 。 ピ カ レ ス ク( 悪 漢 )小 説 と い う ジ ャ ン ル も あ る よ う に 、 奇 人 悪 人 変 人 が 主 人 公 で あ っ て も い っ こ う に か ま わ な い 。 問 題 は 、 そ の 奇 人 悪 人 変 人 が 魅 力 的 か つ 印 象 的 で あ る か ど う か で あ る 。 [ 編 集 室 か ら ] 「 S F の 時 代 」 は 遠 く な っ た 。 し か し 、 当 時 の 興 奮 は 忘 れ ら れ る べ き で は な い 。 と は い え 網 羅 す る の は 無 理 で あ る 。 こ こ に 収 録 し た 作 品 群 は 、 S F の テ ー マ の ひ と つ 「 エ ス パ ー 」 と そ の 変 遷 で あ る 。 異 形 で あ る か ら 、 逃 げ る 。 隠 れ る 。 闘 う 。 彼 ら そ れ ぞ れ の 人 間 た ち と の 対 応 を 味 わ っ て い た だ き た い 。 連 作 の 一 編 を 無 理 に 収 録 し た 短 編 も あ る が 、 そ れ も こ の 際 、 い い こ と に さ せ て い た だ き た い 。 傑 作 は 、 永 遠 な の だ か ら 。超
常
能
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解 題 = 縄 田 一 男 解 説 = 夢 枕 獏忍
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小川未明
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「寒山拾得」
中島敦
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吉川英治
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「異聞浪人記」
五味康祐
「柳生連也斎」
江國香織
「草之丞
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清水義範
「猿取佐助」
逢坂剛
「決闘」
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【長編】 【長編】 【長編】 【長編】 【掌編】 【短編】 【掌編】 【短編】 【掌編 ・ シ ョ ー ト シ ョ ー ト 】 【短編】 【掌編】 【短編】第 巻
第 巻
第 巻
第 巻
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[ 編 集 室 か ら ] ふ た た び S F 、 そ し て フ ァ ン タ ジ ー の 巻 で あ る 。 今 度 は 「 時 間 テ ー マ 」 で ま と め て み た 。 タ イ ム マ シ ン 、タ イ ム ス リ ッ プ 、コ ー ル ド ス リ ー プ 。 こ れ が 「 時 間 」 を 歪 め る 三 種 の 神 器 で あ ろ う が 、 タ イ ム ス リ ッ プ の み が 現 在 の 読 者 に も 受 け 入 れ ら れ て い る よ う だ 。 掌 短 編 の 中 に は 「 な ぜ こ の 作 品 が 時 間 テ ー マ な の で あ ろ う か ? 」 と 思 わ れ る で あ ろ う 作 品 も 含 ま れ て い る 。 我 慢 し て 読 ん で い た だ き た い 。 最 後 ま で 読 め ば わ か り ま す 。 [ 編 集 室 か ら ] 動 物 小 説 の 巻 で あ る 。 一 貫 し て 「 動 物 」 に こ だ わ り 続 け た 作 家 は 戸 川 幸 夫 と 椋 鳩 十 の 二 人 く ら い か 。 こ こ に パ ニ ッ ク 小 説 に く く ら れ て い た 「 滅 び の 笛 」 を 投 入 さ せ て い た だ い た 。 西 村 寿 行 は 常 に 変 わ り 続 け た 作 家 で あ り 、 ど の 作 品 を 選 ぶ か 最 も 悩 ん だ 作 家 の 一 人 で あ る 。 編 集 委 員 の 方 々 に 解 説 の 希 望 巻 を つ の っ た と こ ろ 、 全 員 が こ の 巻 を 挙 げ て こ ら れ た こ と を 是 非 申 し 添 え て お き た い 。 [ 編 集 室 か ら ] 生 島 治 郎 作 品 は 愛 弟 子 だ っ た 大 沢 在 昌 委 員 の 鶴 の 一 声 で こ の 長 編 と な っ た 。 も う 一 編 の 長 編 は 五 木 寛 之 の ハ ー ド ボ イ ル ド か ら 「 裸 の 町 」 が 選 ば れ た 。 す る と 「 追 跡 」 が こ の 巻 の キ ー ワ ー ド と な る 。 短 掌 編 11編 は 、 剛 速 球 と 変 化 球 を 織 り 交 ぜ る こ と が で き た 。 中 薗 英 助 は 埋 も れ て 忘 れ ら れ て し ま っ て い い 作 家 で は な い 。 ま た 、 あ の 吉 行 淳 之 介 が 掌 編 の 名 手 で あ っ た こ と を ご 存 知 か ? 実 は そ う な の だ 。 [ 編 集 室 か ら ] 「 極 限 」 と は 何 か 。 人 に よ っ て 状 況 に よ っ て 、 さ ま ざ ま な 極 限 が あ ろ う 。 牙 を 剝 く 嵐 の 峻 山 で の 雪 中 行 軍 。 な ぜ 追 わ れ 続 け る の か わ か ら ぬ 恐 怖 。 武 士 の 矜 持 を 示 す 食 卓 。 地 球 の 予 期 せ ぬ 危 機 。 編 集 者 の 怒 り 。 逃 げ ら れ ぬ 私 刑 の 刻 。 閉 鎖 空 間 で の 追 跡 者 と の 遭 遇 。 こ こ に 収 録 さ れ た 12編 は 人 が 経 験 で き る 「 極 限 」 の ご く 一 部 に し か す ぎ な い 。 ま だ 名 作 が あ る は ず な の に 、 追 い き れ な か っ た の が 残 念 で あ る 。広津和郎
「狸」
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第 巻
第 巻
第 巻
第 巻
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[ 編 集 室 か ら ] こ の 巻 は 警 察 小 説 が 中 心 で あ る 。 と は い え 、 な に も 法 律 を 代 行 す る の が 警 察 官 だ け で い い は ず も な い 。 裁 判 官 、 検 事 、 岡 っ 引 き 、 弁 護 士 、 死 刑 執 行 人 、 と い ろ い ろ な 職 種 の 主 人 公 を 並 べ る つ も り で あ っ た が 、 力 お よ ば ず 、 や は り 警 察 官 が 多 く な っ て し ま っ た 。 警 官 も の に 傑 作 が 多 い の だ か ら 、 こ れ は 仕 方 が な い の で あ る 。 21世 紀 の 作 家 だ と 思 っ て い た 横 山 作 品 に 20世 紀 の も の が あ っ た の は 、 僥 倖 と い う し か な い 。 [ 編 集 室 か ら ] ハ メ ッ ト 、 チ ャ ン ド ラ ー が ハ ー ド ボ イ ル ド の 嚆 矢 と さ れ て い る 。 が 、 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 文 体 こ そ が 始 ま り で あ る 、 と い う 説 も あ る 。 こ こ に 収 録 さ せ て い た だ い た 2 長 編 は 、 と も に す べ て の 無 駄 を 削 ぎ 落 と し た 、 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 文 体 を 想 起 さ せ る も の で あ る 。 ま た 、「 男 の 復 活 」物 語 と は ビ ル ド ゥ ン グ ス ロ マ ン ( 成 長 物 語 ) の 変 型 の ひ と つ で あ り 、 そ の テ ー マ に 沿 っ た 傑 作 群 を 集 め ら れ た こ と は 幸 甚 で あ る 。 [ 編 集 室 か ら ] 「 道 中 も の 」 と い う テ ー マ が あ る 。 日 本 の 小 説 で は 「 東 海 道 中 膝 栗 毛 」 あ た り が 最 初 だ ろ う か 。 要 す る に 、 主 人 公 が 移 動 し な が ら 冒 険 を 続 け て い く 、 と い う も の で あ る 。 膨 大 な 数 の こ の 種 の 傑 作 が あ る わ け で 、 全 部 読 ん で こ の 14編 を 選 び ま し た 、 と い う 噓 は 言 い ま せ ん 。 と こ ろ で 、 泰 斗 ・ 都 筑 道 夫 が 「 ほ ん と う に ハ ー ド ボ イ ル ド 小 説 を 書 け る 作 家 は 石 川 淳 ひ と り 」 と 書 い て い る の を ご 存 知 か 。 こ れ は 、 逢 坂 剛 委 員 の 鋭 い 指 摘 で あ る 。 [ 編 集 室 か ら ] こ の 巻 に は 、困 っ た 。ど う し て も「 戦 争 」に 関 わ ら な い と 、こ の テ ー マ の 作 品 選 定 は 苦 し い 。 と こ ろ が 弊 社 に は 、「 戦 争 と 文 学 」 と い う 85周 年 記 念 企 画 が あ り 、 予 測 さ れ た と お り 、 野 坂 昭 如 「 火 垂 る の 墓 」 と 結 城 昌 治 「 従 軍 免 脱 」 の 2 作 品 が 、「 戦 争 と 文 学 」 と か ぶ っ て し ま っ た 。 誰 が 選 ん で も 傑 作 は 傑 作 、 と い う こ と で あ ろ う か 。 編 集 委 員 の 方 々 と 相 談 し て 作 品 を 変 更 し た 。 他 の 巻 で は 武 田 泰 淳 「 ひ か り ご け 」 が か ぶ っ た 。 憮 然 た る 想 い で あ る 。 解 題 = 西 上 心 太 解 説 = 真 保 裕 一谷
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【長編】 【長編】 【長編】 【長編】 【掌編】 【短編】 【短編】 【短編】 【掌編】 【短編】 【掌編 ・ シ ョ ー ト シ ョ ー ト 】 【掌編 ・ シ ョ ー ト シ ョ ー ト 】第 巻
第 巻
第 巻
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[ 編 集 室 か ら ] 少 年 小 説 の 主 人 公 に は さ し た る 過 去 が な い 。 し か し 、 あ ら ゆ る 物 語 の 主 人 公 に は 語 る べ き 過 去 が あ る 。 記 憶 喪 失 者 に だ っ て 立 派 な 過 去 が あ り 、 単 に 本 人 が 忘 れ て い る だ け で あ る 。 過 去 。 そ れ は 、 物 語 を つ む い で い く う え で 最 重 要 の 要 素 で あ る 「 主 人 公 の 性 格 造 型 」 に か か わ る 問 題 で あ る 。 そ し て 、 過 去 が 囁 き 始 め る と 物 語 が 躍 動 し て い く の だ 。 そ の 鮮 や か な 成 功 例 を 長 短 掌 12編 、 提 示 で き た こ と は 、 本 集 に と っ て の 幸 運 で あ る 。 [ 編 集 室 か ら ] 海 の 巻 で あ る 。 そ も そ も 「 冒 険 」 物 語 は 大 航 海 時 代 の イ ギ リ ス に 始 ま っ た 。「 冒 険 」 イ コ ー ル 「 大 海 」 だ っ た 時 代 が あ っ た の で あ る 。 鎖 国 と 呼 ば れ た 時 代 が あ っ た せ い か 、 日 本 に は こ の 種 の 小 説 の 伝 統 が な い 。 な け れ ば 詭 弁 を 弄 し て も 作 っ て し ま お う 。 編 集 委 員 諸 氏 も そ う 言 っ て お ら れ る 。 海 が 舞 台 の 椎 名 S F 長 編 と 景 山 恐 竜 長 編 を 核 に す え た 。 や は り 、「 冒 険 」 に 「 海 」 が な い と 、 画 龍 に 点 睛 を 欠 く の で あ る 。 [ 編 集 室 か ら ] 男 の 子 は 強 く な り た か っ た 。 チ ャ ン ピ ォ ン ・ ベ ル ト か 金 色 の メ ダ ル か 黒 い 帯 か 。 と も か く 強 い 自 分 を 夢 見 て い た 。 し か し 、 成 長 と は 、 自 分 の 可 能 性 が 、 実 は た だ の 不 可 能 性 で あ っ た こ と を 確 か め る 長 い 旅 路 だ っ た の か も し れ な い 。 ベ ル ト や メ ダ ル が ど ん ど ん 遠 く な り 、 か つ て 強 く な り た い と 願 っ て い た こ と を 、 時 々 、 思 い 出 す だ け に な っ て い く か も し れ な い 。 こ れ は 、 そ う い う か つ て の 「 男 の 子 」 す べ て に 捧 げ る 巻 で あ る 。 [ 編 集 室 か ら ] 人 は む か し む か し 、 鳥 だ っ た の か も し れ な い 。 と い う の は 、 た ぶ ん 間 違 い だ ろ う 。 し か し 、 飛 ぶ 夢 は 人 間 な ら 誰 で も 見 た こ と が あ る は ず だ 。 イ カ ロ ス か ら ラ イ ト 兄 弟 ま で の 夢 だ っ た の で あ る 。 が 、 な に も 飛 ぶ の は 飛 行 機 ば か り で は な い 。 凧 も 飛 べ ば 鷹 も 飛 ぶ 。 気 球 も 飛 ぶ 。 人 間 も タ ヌ キ も 飛 ぶ か も し れ な い 。 し か し 最 大 の 興 味 は 、 い ち ど 飛 翔 し た も の が ど こ に ど う い う ふ う に 着 地 す る か 、 あ る い は し な い か 、 で あ る 。15
16
波浪
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解 題 = 池 上 冬 樹 解 説 = 高 野 秀 行椎
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解 題 = 新 保 博 久 解 説 = 馳 星 周過
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解 題 = 吉 田 伸 子 解 説 = 北 方 謙 三格
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解 題 = 吉 野 仁 解 説 = 逢 坂 剛飛
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