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Marketing Case マーケティングケース シリーズ 129 A New Business Model Approach to the Retail Industry and the Importance of Customer Engagement: from a case study o

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Importance of Customer Engagement:

from a case study of the Sapporo Drug Store

これからの小売業における企業経営の進化と

カスタマーエンゲージメントの重要性の考察

― 株式会社サッポロドラッグストアー ―

Takashi Okutani

 *1 一橋大学大学院 商学研究科 博士後期課程

奥谷 孝司

*1 Doctoral Student, Graduate School of Commerce, Hitotsubashi University, cd171005@g-hit-u.ac.jp

サツドラホールディングス株式会社

出所:サツドラホールディングス提供 図 1  

Abstract : In the Japanese retail industry, the Drug store business is one of the most growing retail formats. Major drug

store chains are conducting M&A, expanding merchandizing from cosmetics and health & beauty products to include food categories, producing private brands and providing loyalty programs in order to meet customer’s various shopping needs and are attracting many customers. Under such competitive circumstances, SATUDORA HOLDINGS, which runs

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the Sapporo Drug stores mainly in Hokkaido, takes a unique business approach and has reconstructed their brand strategy. Unlike major Japanese drug store companies, their main focus on business strategies has been to establish a strong regional chain store format, thus creating a strong and engaged community with loyal customers and acquiring inbound needs. Furthermore, they invest and consider the effective use of AI in the retail format.Through an in-depth interview with the CEO and analysis of the business model, this case study advocates the following meaningful points to support a new business model approach to retail; 1) construction of regionally-circulating Customer Relationship Management, 2) the new role of the regional retailer in regional marketing, 3) new role of the sales channel in the creation of community value, 4) the importance of creating customer engagement and 5) sharing the emerging concept of collaborative consumption as a new relationship between the retailer and the customer.

Keyword : CRM, Customer Engagement, Collaborative Consumption, Regional Marketing

要約:近年ドラッグストアの市場拡大が顕著である。活発な M&A(企業の合併・買収),食品の取り扱いに見られる品揃えの強 化,調剤薬局市場の取り込み,PB 商品開発,ロイヤルティプログラムの充実,消費者のワンストップショッピングニーズへの 迅速な対応で,高齢者や幅広い女性顧客層を他業界から取り込んでいる。そのような中,自社のリブランディングとリージョナ ルマーケティング,積極的なインバウンドニーズの取り込み,AI, IT 活用によって独自の顧客基盤運営と新規事業開発で全国か ら注目を集める北海道を基盤とするドラッグストア(株)サッポロドラッグストアー(以下,サツドラ)の取材を行った。本 ケーススタディにより小売業における新しいビジネスモデル構築とマーケティング戦略において以下 5 点の示唆が見出された。 1)地域循環型顧客関係管理プラットフォーム構築の重要性,2)地域小売業がリージョナルマーケティングにおいて果たすべき 役割,3)販売チャネル「場」の新しい価値創造,4)Customer Engagement 構築の重要性,5)地域コミュニティ・マーケッ トにおける Collaborative Consumption(共創消費)構築の可能性 キーワード:CRM,カスタマーエンゲージメント,共創消費,リージョナルマーケティング

I. はじめに

近年ドラッグストアの市場拡大が顕著である。2017 年 度の主要ドラッグストア上期決算によると上位 13 社の うち 12 社が増収増益とある(Hanbai Kakushin, 2017)。 通信販売・EC,百均ストアに次ぐ営業総収入伸び率を示 し,2016 年上期営業総収入に対して 106.8%の成長と, 市場拡大が続いている。他の小売フォーマットが苦戦す る中,日本チェーンドラッグストア協会の調査によると, その市場規模は 6 兆 4916 億円に上り,遂に百貨店市場 を超えた(Hanbai Kakushin, 2017)。活発な M&A(企業 の合併・買収),食品の取り扱いに見られる品揃えの強 化,調剤薬局市場の取り込み,PB 商品開発,ロイヤル ティプログラムの充実,消費者のワンストップショッピ ングニーズへの迅速な対応で,高齢者や幅広い女性顧客 層を他業界から取り込んでいる。一方でドラッグストア 業界は,拡大の一途をたどっている反面,厳しい競争に もさらされている。2009 年の薬事法改正により医薬品販 売の規制が緩和され,医師の処方箋が要らない大衆薬は コンビニ,スーパーでも購入できるようになった。市場 拡大と業界再編が止まらない背景には,M&A や品揃え の拡大による店舗の大型化・集約化を進めていくことで, ドラッグ業界以上の市場伸び率を示す通信販売・EC 業 界,コンビニやスーパーとの競争に勝ち抜き,今後の人 口減少,超高齢化社会,インターネットの進展に伴う消 費者の買物行動の変化に備えなくては生き残れないとい う切実な事情もある。規模の拡大と他業界からのシェア 争奪で同質化する市場でいかに新しい価値創造と進化を 遂げるのか?現状では規模の拡大以外に差別化の道は無 いようにも思える。 そのような中,北海道という地方市場において,自社 のリブランディングとリージョナルマーケティング,積 極的なインバウンドニーズの取り込み,独自の顧客基盤 運営で全国から注目を集めるドラッグストアがある。そ のドラッグストアとは,2016 年の春にドラッグストア事

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業のストアブランドを「サッポロドラッグストアー」か ら「サツドラ」に変更したサツドラホールディングス株 式会社傘下,(株)サッポロドラッグストアー(以下,サ ツドラ)である。北海道手稲で 1972 年に創業,北海道 を中心にドラッグストア「サツドラ」を約 200 店舗展開 する。また,サツドラホールディングス株式会社では, 地域マーケティング事業,エネルギー事業,POS システ ム開発事業,インバウンド事業に加えて,さらに AI ソ リューション開発事業など,従来のドラッグストアとは 異なる多角化事業を展開している。2017 年 5 月期(15 ヶ 月決算)の連結売上高約 878 億円,従業員数約 2300 名 超の東証一部上場企業である。現代表取締役社長は,創 業者で現会長の富山睦浩氏のあとを継承した富山浩樹氏 で同社としては 2 代目の社長である。 同社は,一見ファミリー色の強い地方小売企業のよう である。Gekiryu(2018)より,2016 年度決算をまとめ た有力ドラッグストアチェーンの売上高ランキングの抜 粋を表 1 に掲載する。このデータによると業界 TOP3 と の比較では,売上高も 7 分の 1 程度,利益率も現状は決 して高くはない。しかし,サツドラは現在のドラッグ業 界の価値創造と差別化とは全く異なる戦略を有している。 AI会社,北海道という地の利を生かしたリージョナル マーケティング事業,インバウンド事業と多様な事業ポー トフォリオを有しながら,ドラッグストアを経営してい る。その戦略意図はどのようなものなのか?その真意を 以下で富山社長への取材から解説を試みたい。

II. サッポロドラッグストアーの概要,沿革

「楽しくなければドラッグストアではない」創業者で現 会長富山睦浩氏が創業以来繰り返し言い続けてきたこの メッセージと共に創業から 46 年。サツドラは北海道内 を中心に 200 を超える店舗を運営している。2017 年 12 月末現在,本社のある北海道に 183 店舗(うちインバウ ンドフォーマット 16 店舗),道外においては上野/福岡 /沖縄などに 6 店舗(うちインバウンドフォーマット 5 店舗),台湾に 1 店舗,調剤薬局数は 10 店舗を構える。 「北海道の『いつも』を楽しく」をテーマに,化粧品や, 医薬品を扱うヘルス・アンド・ビューティーを核とした 「生活便利ストア」として以下の 3 点の店舗コンセプト を掲げている 1)小商圏における収益モデル店舗の確立 2)品揃えの強化(冷凍食品・アパレル・日用消耗品) 3)核商品作り(自社開発商品) 現在の経営戦略のコンセプトは「リテール×マーケティ ング」であり,2017 年から 4 年間の中期経営計画におい ては,「北海道の深掘りと次の成長への基盤づくり」を掲 げ,成長戦略として①強固なリージョナル・チェーンス トアづくり,②リージョナル・プラットフォームづくり, ③アジアン・グローバルへの発信と,地元北海道の市場 を意識しつつも日本のその先を見据えたインバウンド強 化及び国際展開を視野に入れている。そのための組織戦 略として,①活躍し続ける人材育成,②多様性のある組 織づくりに注力しており,地元北海道だけでなく,日本 全国から多様な人材を集めている。さらに「サツドラリ ブランディング」と称し,「北海道の『いつも』を楽し く」を体現するためにデザインを武器に企業変革を進め ている。冒頭ページにある新店舗や,自社 PB 商品への デザイン投資は従来のドラッグストアには珍しく,むし ろファッション,ライフスタイルブランドを彷彿とさせ る。このようにドラッグストア業界の潮流とは差別化さ 有力ドラッグチェーンストア業績一覧 出所:Gekiryu(2018)より筆者作成 表 1  

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れた企業戦略を推進しているのがサツドラなのである。 サツドラの現在までの歩みは図 2 の通りで,現社長の 富山浩樹氏は企業の成長においいて大きく 4 つのフェー ズが存在し,現在を「第 2 創業期~第 2 成長期」と位置 付けている。現富山社長が経営のバトンを引き継いだ「組 織停滞期~変革期」から,サツドラは従来のドラッグス トアにはない戦略をベースに進化を遂げている。 ここからは,富山社長へのインタビューをもとに,企 業改革の変遷のポイントを解説したい。 1. サッポロドラッグストアー成長期から第 2 創業まで の道のり 組織停滞期―変革期での戦い(2007 年–2013 年) 「北海道から出なかった,出られなかったサツドラ」富 山社長はサツドラをこう表現する。地元には言わずと知 れた全国 Top3 に名を連ねるツルハドラッグの存在があっ た。また北海道には業界は異なるが「コープさっぽろ」 のように地域密着型で地元顧客からの信頼を獲得してい る小売業との激しい戦いが存在していた。素晴らしい強 豪の存在が今の戦略に影響していると富山社長は言う。 特に何度も耳にした言葉は「差別化」と「ポジションが 空いている」というフレーズであった。 富山社長が家業であるサツドラの事業に参画したのは 2007年。当時の組織は停滞期にあった。個店主義の蔓延 と軍隊型組織での成長の限界を感じはじめていたと言う。 先代の「1 店舗ずつ違う方が良い」いう考え方もあり, 組織は常に混乱していたという。そこから,組織改革を 始める。当時の番頭的キーマンは去り,一時は出店もス トップする。 この改革期に富山社長が行ったことが,まさに店舗コ ンセプトにも掲げている「店舗の基本収益フォーマット の完成」,「マーケティング思考の導入」,「組織を支える 人材の若返り」であった。富山氏は小売業の基本として 特に「チェーンオペレーションの重要性」を力説してい る。このようにまずは小売業としての基本であるチェー ンオペレーションの徹底と,儲かる仕組み作りに注力し サツドラホールディングスのあゆみ 出所:サツドラホールディングス事業概要説明資料より筆者作成 図 2  

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た約 5 年間を経て,現在の第 2 創業期,独自の企業戦略 のフェーズへと移行していく。 第 2 創業期―4 つの軸の構築 第 2 創業期に入り富山社長は,第 2 成長期を実現すべ く,4 つの戦略でサツドラの進化を進めている。その 4 つとは,(1)顧客関係マネジメントとリージョナルマー ケティングの展開,(2)デザイン力を活用したリブラン ディング戦略,(3)永続的なインバウンド需要対応の推 進と北海道ブランドの更なる拡大,(4)強固なリージョ ナル・チェーンストア構築とその未来を支えるシステム 開発である。ここからはこの 4 点について解説を加えた い。 (1)顧客関係マネジメントとリージョナルマーケティン グの展開―EZOCA 店舗基本収益フォーマットを完成させ,出店ペースを 上げ始めた 2013 年を経て,富山社長は 2014 年に地域 マーケティング事業として株式会社リージョナルマーケ ティングを立ち上げる。この企業は地域共通ポイントカー ド EZOCA を運営している。多くの企業が大手ポイント プラットフォームへの参入や,独自にロイヤルティプロ グラムを展開する中,「地域が輝くプラットフォーム作 り」を目標に地域共通ポイントカードとして EZOCA を 同年 6 月に開始する(注 1)。2018 年 1 月末現在で 150 万人以上の利用者,提携先企業は 100 社を超え 600 店以 上の店舗をつなぐプラットフォームに成長している。同 社によると,北海道の世帯普及率 50%を達成し,都心で 見かける大手ポイントプラットフォームを凌ぐアクティ ブユーザーを有している。また,会員の女性比率は 70% を超え,特にサツドラの主要顧客である 20 代から 40 代 の女性子育て世帯が女性会員の約半数を占めるという。 地域でも有数のポイントカードプラットフォームを立 ち上げた理由として富山社長は,「小売業の資産はお客 様」であり EZOCA 導入前からあった自社ポイントカー ドから学ぶことで,顧客データの可能性と価値に気づい たという。EZOCA 導入前からアクティブユーザーの多 いロイヤルティプログラムを有し,女性顧客も多かった。 ただ,現状のポイントカードでは規模も中途半端であり, 差別化にはならない。一方で,大手ポイントプラット フォームの世界に入ってしまうことでその資産を手放す ことに危機感を感じていた。 「小売が本来マーケティングをやらなくてはいけない」 富山社長は,「単純に売買している小売」ではここから先 の競争には勝てないという。「自社の強み」を徹底して考 える必要があり,そこで出てきたサツドラにとってのキー ワードが「地域」であった。小売業であり,地元ドラッ グストアであったからこそお客様という資産がある。そ してそれは顧客情報として手元にある。さらに,規模の 経済で圧倒する競合のツルハドラッグとの差別化として 「リージョナルマーケティング」,地域密着型をアピール することが地元顧客に対する訴求ポイントになると判断 した。「『北海道を唄える企業はうちだけ』この『ポジショ ン』を取りに行くことで,ツルハドラッグのような規模 の経済を追求したナショナルチェーンには唄えない『北 海道』というブランディングを活用する」ことを決意する。 富山社長はリテールビジネスを営むに際し,地域の視 点,お客様の目線が重要であること,またそこにある顧 客関係の強化に活路を見出している。また小売から地域 課題を解決していくことは可能であるという。富山社長 は「ローカルでは小さすぎるが,リージョナルなら戦え る(商売になる)」と考えている。自社だけ,北海道だけ では難しいが,地域顧客,地域小売業との連携でリージョ ナルに成長を目指す。ポイントカードの名前を EZOCA にした理由もリージョナルマーケティングへの想いから 生まれている。サッポロドラッグストアーのカード名で はなく,地域への発信と地域のためのポイントカードと して「EZOCA」というカード名でサービスを開始したのだ。 サツドラは 150 万人以上の利用者を有するポイント カード EZOCA を活用して,様々なマーケティング活動, 地域,自治体との取り組み,お客様とのタッチポイント の形成を行っている。 まず第 1 にマーケティング活動事例を紹介したい。「北 海道のマーケティング」,「北海道でのマーケティング」 の実践として,NB メーカーとの共同企画を EZOCA 会 員,サツドラ店舗を活用して行っている。メーカーとの 店頭販売実験,北海道限定のマーケティング施策に積極 的な小売業として認知してもらうことで,お客様にもメー

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カーにも還元していきたいという。このような顧客基盤 と店舗基盤を持つサツドラの新しい取り組みは P&G 社 にも注目され,昨年は Amazon と並んで,P&G のベスト パートナーに選出されている。 また,地域スポーツとのマーケティング連動として, 地域サッカークラブである北海道コンサドーレ札幌,バ スケットボールクラブのレバンガ北海道を応援する取り 組みを行っている。応援したい地域スポーツ団体の EZOCAを持ってポイントを貯めると,お買物金額の 0.5%がお客様の応援するクラブチームの支援にまわる仕 組みを構築し,サポーターと共にクラブチームを応援す るカードの提供を行っている。この取り組みによって地 域スポーツを応援する顧客の取り込みや,サツドラの認 知向上を行い,地元ビール会社とのオリジナル商品の開 発などによって,単なる日用品の買物行動に,地域との 繋がり,買物の社会的意義を構築することでサツドラと の繋がりを形成している。さらにそのような EZOCA 会 員の買物データを分析し,加盟店との共有も行っている。 次に,道民参加型ソーシャル・コミュニティ「EZO CLUB」の運営を紹介したい。このコミュニティの顧客 ベネフィットは「楽しい,つながる」である。お客様の 日々の地域活動を応援する目的で設立され,現在コミュ ニティ数は「ママ・子育て」コミュニティを中心に 200 を超える。また,最近ではこのコミュニティと企業との コミュニティマッチングを行い,企業のマーケティング 活動というニーズを満たすことでコミュニティ運営をサ ポートする仕組みも作っている。昨年 11 月には札幌ドー ムでイベント「サツドラ FES」を開催。多くのスポン サー企業を集め,また多くの EZO CLUB 会員が来場し, 2日間で 29,000 名もの集客をしている。 EZO CLUBにおいては,会員が集まれる場所の提供と して EZO CLUB コミュニティスペースの開設や,会員活 動レポートの掲載メディアとして道民参加型のフリー ペーパー「エゾクラブマガジンコミュ」の隔月発行まで おこなう。発行部数は 13 万部を超え,EZOCA 提携店, 約 230 の保育園,幼稚園,託児所,さらに約 40 の市町 村への配布を行っている。多くのコストがかかる事業で はあるが,子育て世代にとって有益なコンテンツの提供 と,主要顧客へのアプローチ先,タッチポイントとして この紙メディアを重要視している。最近では企業とコミュ ニティのマッチングも増加傾向しており,先述のテスト マーケティングの場としてもコミュニティ活用が実践さ れている。 最後に地域自治体との取り組みとして利尻・礼文での EZOCAサービスを開始している。利尻島に 3 店舗,礼 文島に 7 店舗を導入し,狭小商圏,地元商店街店舗の EZOCA加盟を推進,その手数料の一部を地元に還元す る EZOCA 商店街活性化還元モデルを実現している。こ の取り組みにリージョナルマーケティング株式会社が運 営管理として入り込むことで,町内の活性化,資金難で 中止に追い込まれていた島民イベントを復活させている。 小売事業としてのメリットよりも,リージョナルマーケ ティング社がこの取り組みによって得られる地域活性化 ノウハウ,自治体との取り組みによる北海道への貢献, その他地方におけるリージョナルマーケティング事業の 受注と実績の蓄積を見込んでいる。サツドラは北海道, 札幌市と「包括連携協定」や「さっぽろまちづくりパー トナー協定」を結んでいるため,このような取り組みを 強化していくと思われる。 (2)デザインの力を活用したリブランディング戦略 サツドラのリブランディングは「北海道の『いつも』 を楽しく」というコンセプトを,デザインを武器に表現 することに重点を置いている。「楽しいをコンセプトとし て言い切る,表現することが普通の化粧品や,医薬品を 扱うヘルス・アンド・ビューティー企業という存在より も差別化になる」と富山社長は言う。デザイン活用にお いてサツドラが重点をおく領域は 2 つある。それは PB 商品と店舗である。特に注目すべき PB 商品開発につい て解説を行いたい。 PB商品開発においてサツドラは現在 2 つの商品カテ ゴリーに注力している(図 3 参照)。1 つは飲料・食品 +日用品の領域だ。「わたしの『いつも』にちょうどい い」をコンセプトに PB50 品目を目標に開発を進めてい る。単品売上 No. 1 商品である「超炭酸水」はアルコー ル飲料メーカーとの共同マーケティング企画で売上を大 幅に伸ばすなど,圧倒的な価格と品質でお客様の人気を 集めている。

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さらに今後の消費者の高齢化と健康へのニーズを取り 込むべく医薬品・健康食品の領域においても PB 商品開 発を行っている。現在は健康食品領域においてドリンク 剤,サプリメントを「Wellness Navi」というブランド名 で展開している。またこれらの商品を積極的に他店舗へ 卸売する事業も関連会社を通じて行うことで,ブランド 認知向上と PB 開発に伴う生産ロットの問題解消に努め ている。 PB開発および新店舗のデザインには一貫性と優れた デザインコンセプトを感じる。富山社長は外部企業との 長期間に渡るデザイン,ブランディングプロジェクトを 推進しており,会社案内においても「楽しい」店づくり のパートナーとしては,SUPPOSE DESIGN OFFICE Co., Ltd.,「楽しい」商品づくりのパートナーとして,エイト ブランディングデザインを紹介している。エイトブラン ディングデザインは「ブランディングデザインで日本を 元気にする」というコンセプトのもと,企業ブランド開 発,商品開発,店舗開発など幅広い領域でデザイン活動 を行う企業である。サツドラにおいては企業ブランディ ング,商品パッケージデザインを実行している。これら 外部デザイン企業と部内デザインチームとの協業によっ て,「デザインで差別化する企業」を目指している。組織 改革期から,デザイン経営の重要性に気づき,これらの デザイン関係者へ社長自らアプローチを行ってきたと いう。 この領域においても富山社長は「デザイン経営はオー プンスペース」だと言う。確かにライフスタイルブラン ドやファッションブランドにおいて特定のデザイナー, デザイン企業との短期的提携は多く見かけるが,ドラッ グストア業界においては稀有と言える。また経営者自ら デザイン企業やデザイナーとの長期的な取り組みを行い, 会社案内に掲載している企業は少ない。小売業界では無 印良品を運営する株式会社良品計画のアドバイザリー ボードメンバーが有名だ(注 2)。これらのデザインを活 用したリブランディングの成果について富山社長は,サ ツドラのブランドイメージはブランドイメージ調査にお いても上がってきているという。外部リサーチ会社によ るブランドイメージ調査において「3 年前はツルハドラッ グが一番であったが,今はサツドラが 1 番になった」と いう。彼は「外に出すものと内に出すものをブランディ ングによって統一することで,社内における経営戦略の 方向性が明確になり,お客様へのブランドアピールが明 確になることが外的効果として存在し,やるべきこと, やるべきでないことが社内で明確になることがリブラン ディングの内的効果」であると解説する。「ブランド戦略 や多くの事業への資金投資,マーケティング施策,新店 舗への投資で若干経営的にはしゃがんでいる状態」では あるが,やる意義があると言う。「小売業は基本ブランド サツドラ PB 商品 出所:サツドラホールディングス事業概要説明資料より筆者作成 図 3  

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に投資できない。特に日常商品領域においては難しい。 しかし,海外企業や日本の優れた小売業はブランド力形 成にお金をかけている」。このようなデザイン領域への進 出によって長く愛されるブランドであり続ける。これも 富山社長のドラッグストア業界における差別化であり, 「空いているポジションを埋める」戦略のひとつなのだ。 (3)永続的なインバウンド需要対応の推進と北海道ブラ ンドの更なる拡大 サツドラ独自の店舗出店戦略としてインバウンド フォーマットの出店加速が挙げられる。北海道内に 16 店舗,道外に 5 店舗,海外(台湾)に 1 店舗展開してい る。日本政府観光局(JNTO)によると 1~11 月の訪日外 国人(インバウンド)客数は 2616 万人と前年同期から 19%増え,2017 年通年では「2800 万人台の半ばに迫る」 見通しであり,百貨店の高島屋の 17 年 3~11 月期の連 結決算は,訪日客などの消費が追い風となり純利益が 9%増えたという(Oishi, 2017)一方でインバウンド需要 をうまく取り込めず,苦戦する小売企業はインバウンド 需要を一過性のものとみなす関係者も多い。しかし,富 山社長は「永続的なインバウンドマーケティング」の推 進を行なっていくという。その理由として彼は「観光資 源のある北海道においてインバウンド需要は一過性のも のではなく,また広く日本を見渡せば,日本そのものに 観光資源は沢山存在している。北海道で今蓄積している インバウンドマーケティングのノウハウは,日本全体に 沢山存在する観光資源を活用した永続的なインバウンド 需要の掘り起こしに使える」と言う。さらに,富山社長 は沖縄への出店に関して「沖縄はオープンスペース。イ ンバウンド需要を取り込む小売業は他にも存在するが, ドラッグストア×インバウンドはない。都心出店よりも 地方(観光資源のあるところ)にいったほうが良い。自 社のノウハウも活かせる」と自社のインバウンド戦略を 解説する。 サツドラでは積極的にインバウンド需要を取り込むべ く,店舗フォーマット改善以外にも,訪日外国人向けの サービス拡充を進めている。特に中国人観光客向けの対 応として,WeChat Pay の導入をリージョナルマーケティ ング社が推進している。WeChat Pay とは,中国のテンセ ント(騰訊)が WeChat(約 9 億人の中国人が毎日利用 する巨大ソーシャルネットワークサービス= SNS)内で 提供する電子決済サービスである。日本でいえば LINE に相当する中国最大の SNS,コミュニケーションプラッ トフォームが提供する決済機能の日本利用を 2017 年 2 月より代理店営業を開始し 26 社 370 ヶ所に導入を完了 している。また WeChat Pay 対応型自販機の開発を自販 機メーカーと行い,WeChat Pay のタッチポイント向上に も努めている。 モバイル決済の急速な進展が進む中国において今や当 たり前になりつつあるモバイル決済機能の迅速な小売店 舗への導入を関連会社が行い,中国人観光客の満足度向 上に努めている。日本の小売業界において自ら海外のモ バイル決済機能導入を進めている企業は少ない。さらに サツドラにおいては WeChat Pay を利用した顧客の買い 物情報もわかるため,データ分析を行うことも可能だ。 決済機能を自ら開発し,導入することで外国人顧客のカ スタマージャーニーの把握もできる。このノウハウを持 つ小売業が地方に存在することが驚きである。 さらに,中国において独自の IoT 自転車によるシェア バイクを展開する Mobile(モバイク)とパートナーシッ プ協定を締結し,日本初のスマートバイクシェアサービ スを札幌で開始している。 このようなインバウンド需要への対応の加速化を目指 し,サツドラホールディングス(株)はインバウンドマー ケティング事業を手がける子会社 VISIT MARKETING 株 式会社を設立している。インバウンド店舗で培ったマー ケティング手法をサツドラ以外の企業に提供していくと いう。実際に具体的な取り組みが動き出している。イン バウンド用店舗の開発に伴う沖縄出店によって沖縄県と 北海道ブランドとの共同企画がスタートする予定だ。両 県における沖縄,北海道ブランドの認知向上,また観光 客も含めた地方から地方への需要移管,と両地方の経済 活性化に繋げるという。 また新業態店舗として北海道くらし百貨店という北海 道をテーマにしたライフスタイルショップの運営も開始 している(注 3)。昨年 11 月には沖縄国際通り店が 2 号 店としてオープンしている。北海道くらし百貨店につい て富山社長は「北海道を道外に売り込む仕組みで,ひと

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つの小売業態だが,プラットフォームに仕立て上げたい」 という。彼自身が自ら道外,アジア,都内に出て改めて 実感するのが北海道ブランドの強さ。この強さを広める ために,商品開発力はあるが,マーケティング能力に欠 ける北海道のメーカーのプロデュースを行い,各県がやっ ている都内の名産品販売以上に魅力的な店舗運営を目指 している。 この店舗コンセプトとしてベンチマークしたのが,元 伊勢丹のカリスマバイヤーの目利きを通して商品を販売 する藤巻百貨店(注 4)であった。昨年 6 月には EC サ イトもオープンしており,「北海道にまつわる目利き,イ ンフルエンサー」から商品を紹介してもらう仕組みを構 築した。実際に店舗においても,インフルエンサーによ るコメントが書かれた POP が用意され,その商品への愛 着や素晴らしさが表現されている。まさに地方名産店の 進化とブランド化に挑戦しているのだ。 富山社長は地方の名産品店との違いとして,「北海道く らし百貨店はあくまでビジネスとして行うことで,売れ る商品のみを取り扱い,その良さをマーケティングの力 で伸ばすことに挑戦するのがこの事業の目的」であると いう。現状はまだ事業としては小規模ではあるが,「北海 道を唄える企業」として今後の事業拡大が期待されて いる。 このような新しい事業展開に対し,富山社長は「事業 会社だからこそ PDCA が回せる」「B to C のビジネス(小 売)を持つ意味を自社のビジネスに閉じるだけでなく, それを to B(ノウハウやシステムの外販)へと活用す る。自社小売業のノウハウを自ら開発,発展させて共有 する」これもサツドラホールディングスの重要な企業戦 略なのである。 (4)強固なリージョナル・チェーンストア構築とその未 来を支えるシステム開発 サツドラのデータドリブンな経営姿勢や,独自のリー ジョナルチェーンおよびマーケティング,そして積極的 なインバウンドマーケティングを支えている IT 関連子会 社は 2 つある。一つは GRIT WORKS という主に小売向 け POS システム開発事業を行う会社だ。EZOCA のよう な独自地域共通ポイントカード運営に独自のシステム開 発は不可避である。また,他店舗へのポイントカード展 開を推進できる体制が必要となるが,それを下支えして いるのが GRIT WORKS である。 彼らのシステム開発思考も旧来のレジ開発ベンダーと は一線を画している。チェーンオペレーションを重視し た飲食チェーン向け POS と上位クラウドサービス(注 5)の提供から,クラウド技術コンサルティング,そし て,AI(人工知能=人間の知的営みをコンピュータに行 わせるための技術,または人間の知的営みを行うことが できるコンピュータプログラム)テクノロジーの小売・ 飲食業への適用研究までも視野に入れているのだ。 さらに新たな IT 分野での多角化を進めている。それ が,まさに先述の AI への挑戦である。2016 年に AI TOKYO LAB & Co.を設立,AI を活用した生産性向上, 業務効率化のソリューション提供,AI 人材育成,新規事 業開発を支援している。クライアントには大手メーカー, 金融保険業,大手メディアも名を連ねる。さらに,名誉 技術顧問に松原 仁氏(はこだて未来大学教授),上級技 術顧問には川村秀憲(北海道大学教授・「Sapporo AI Lab」 ラボ長),技術顧問には鳥海不二夫(東京大学准教授)と AIの最先端の研究者がこの企業に携わっている。 AI会社を設立した理由を富山社長は以下のように解説 する。EZOCA 会員のデータ活用の可能性,すでに始まっ ている小売の現場における人手不足に伴うオペレーショ ン課題を考えると「IT を活用しないとライフコンシェル ジュ企業にはなれない」という。ライフコンシェルジュ 企業として富山社長が目指しているものは,厚生労働省 が平成 27 年 10 月発行した「患者のための薬局ビジョ ン 概要」(注 6)に掲載されている「地域包括ケア」の 実現である(図 4 参照)。この資料において厚生労働省 は「医薬分業に対する厚生労働省の基本的な考え方」を 示し,薬局の薬剤師が専門性を発揮して,ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)も活用し, 患者の服薬情報の一元的・継続的な把握と薬学的管理・ 指導を実施し,多剤・重複投薬の防止,残薬解消などを 実現し,患者の薬物療法の安全性・有効性向上と医療費 の適正化を目指すとある。このように厚生労働省も ICT の活用を提唱している中,いち早くこの構想の実現に向 かうには IT, AI の力が必要になってくると言う。

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サツドラは今後 IT,AI を活用した接客ツールの開発 や,その実証研究をサツドラで行い知見を蓄積していく 予定である。富山社長は「AI はあくまでも道具,強力な 道具であり,どこにでも使うものになる」と言う。医療 分野における AI, IT 活用だけでなく,小売オペレーショ ンにおける AI 導入を自らの実業で実験を行い,その知見 をもとに,B to B ビジネスとして他の小売業への外販を 狙う。 デジタルトランスフォーメーションが近年の小売業の 課題として挙げられる中,サツドラは「労働集約型の小 売業における AI の重要性,活用の可能性の開拓」に注力 している。 富山社長は「小売における IT の重要なポイントとし て,顧客とのデジタルを活用した繋がりと同時に店鋪オ ペレーションの省力化がある。リアルとテクノロジーの 融合でこの課題解決に取り組む。AI TOKYO LAB & Co. があれば実現可能」と話す。サツドラでは店舗スタッフ のシフト管理マネジメントに AI 活用し,短時間で働くス タッフの効率的オペレーション,スタッフ間の相性や得 意業務を AI に学習させることで,従来店長や社員の属人 的スキルであったシフト管理を仕組み化させていく予定 であるという。 2つの IT 関連企業で培った受託実績,大手との接点, これらの経験とネットワークを活用し,IT でも差別化す る。これもサツドラの強みといえるであろう。 サツドラの IT,AI 活用は先述の歩みで終わりではな い。富山社長は既に次の手を打っている。2017 年の 10 月チェーンストアと地域の未来を作る,オープン・イノ ベーション・プラットフォームとして Satudora Innovation Initiative(以下 SII)を始動させている。富山社長は「こ の取り組みは,サツドラが有する地域共通ポイントカー ド EZOCA などを保有するサツドラグループのデータ・ ノウハウ・リソースをオープン化し,その活用を望むス タートアップや研究機関と,共創的イノベーションに取 り組むプロジェクト」という位置付けと話す。「地域・個 人間の情報格差を解消し,年齢や環境の別なく,同じ情 報を同一の価値で届ける。そのために『チェーンストア』 と『地域』という単位を軸に,次の社会に必要な新しい 価値やアイデアを社会に提供していく」ことを目的に掲 げている。 富山社長は今までのチェーンストアの役割は「同じ商 品を同じ価格で」であったが,これからは情報格差の解 消にも注力し「同じ情報を同じ価値で」提供し,地域の 経済格差の解消から情報格差の解消に向かうべきである としている。情報ネットワークの重要性を提唱するイン ターネット企業やソーシャルメディア運営企業は多く存 健康プラットフォーム化構想 出所:厚労省平成 27 年 10 月発行「患者のための薬局ビジョン概要」より筆者作成 図 4  

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在するが,小売業においてリアル店舗も活用しながら, 情報格差の解消に挑戦しようとしている企業や思想は稀 有である。 富山社長は「北海道は課題先進エリア。医療費拡大, 少子高齢化,過疎化という課題。働き方改革の推進も求 められている。一方で観光という資源がある。これらの 課題はマクロ的にみれば日本の課題であり,チャンスで もある。課題先進地域の課題を解決するための研究・実 験を北海道から行えば,北海道から日本を,世界を,変 えることができる。北海道からイノベーションの創出が できる」と言う。 現在 SII は図 5 にあるような研究・実行領域を掲げて いる。図 5 にある「買物」,「健康」の領域おいては,先 述の地域包括ケアや小売業におけるオペレーション改革 を行うことは自明ともいえるであろう。さらに今後の構 想として掲げている「働き方」,「金融・通貨」,「移動」 に関する SII の計画を解説したい。 まず働き方改革として,ライフステージ/スキル/稼 動可能時間に応じた,生活者が望む最適な働き方ができ る環境整備を AI を活用して行いたいという。先述のス タッフのシフト管理における AI 活用,人材ネットワー ク,データベースを構築し,遠隔での就労環境整備や, 時短勤務,シェアワークによる専門性発揮の場を提供し たいという。サツドラでは兼業副業が認められており, フレンド社員制度(1 日 2–3 時間働く人)を導入してい る。富山社長は「地域全体,地域の小売業全体でワーク シェアリングを行うことで,たとえば従業員による宅配, 買い物代行のマッチングシステムの構築や,地域の一次 産業を手伝える環境を構築したい」という。このような 取り組みから「お客様と小売業の関係を変える」,「お客 様は神様というような崇める対象」ではなく,「共創する 関係性」をつくり「お互い心地よい,評価しあう」社会, コミュニティ作りを目指しているのだ。 次に,金融・通貨の領域において地域通貨構想を EZOCAの基盤を活用して実現したいという。「リアルも ネットも,一つの ID でどこでも使える通貨。口座連携 SII の研究・実行領域 出所:サツドラホールディングス事業概要説明資料より筆者作成 図 5  

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でお財布要らずの世界」の構築が目標である。富山社長 は「今後の消費トレンドとして,商品販売手法はサブス クリプション(定期購買)かダイナミックプライシング (個客に応じた価格設定)に収斂していくのではないか」 と話す。現在の EZOCA のポイントプラットフォームを 活用して,地域通貨の運用,定期的にサツドラで買物し てもらうインフラ,顧客に応じたベストオファーの提供 環境を作ることが,これからの小売業の未来になると いう。 最後に移動,モビリティ領域である。ここではお客様 の好みにカスタマイズされたお得な情報が,お客様の位 置情報や最適なタイミングに応じて配信できるプラット フォームを構築し,移動時間,移動前の時間を最適化す ることを視野に入れている。実証実験ではあるが, TOYOTAとの「地域活性化アプリの実証実験」開始を 2018年春以降に予定しており,EZOCA×TOYOTA「おね がいナビ」の提供を計画中だ。クルマ以外も含めた生活 で移動するときの楽しさや発見を軸とした新しい生活体 験を演出し,「移動」を通じて地域の暮らしを活性化した いという。アプリの主な機能は①生活者の願い事の達成 を支援する「おねがいナビ」機能,②目的地・アクショ ンのオススメ機能,③現在地周辺のオススメ情報表示機 能,④クーポン,ポイントの提供機能となっている。 このように小売の未来を見据えた IT,AI 活用のさらな る進化に挑戦するサツドラはドラッグストア業界だけで なく,小売業全体に影響を与える存在へと成長するかも しれない。地方から生まれる最先端小売業へと進化する 可能性は十分にあると言えるであろう。 最後に,サツドラホールディングスが目指す方向性を 1枚にまとめた図 6 を以下に示す。サツドラという小売 業(B to C)ビジネスの周りに存在する B to B 企業が有 機的につながることで企業発展を目指していることが端 的に理解できると思う。

III. 考察

1. リージョナルマーケティングに有効な地域循環型顧客 関係管理プラットフォーム 先述の通りサツドラは地域共通ポイントカードを運営 している。多くの小売業におけるロイヤルティプログラ ムは自社最適化され「閉じた」プラットフォームを構築 サツドラグループが目指す方向性 出所:サツドラホールディングス事業概要説明資料より筆者作成 図 6  

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するか,大手のポイントプラットフォーム傘下に加入す ることで消費者の利便性を向上させ,来店頻度を高めて いるケースが大半であろう。しかし,サツドラは自社の プラットフォームを「解放する」形でオープン・プラッ トフォーム化し,リージョナルマーケティングの主導権 とリーダーシップを持ち,大手ドラッグストアチェーン との差別化を図っている。この点について富山社長は図 7のような EZOCA 構想時に考えていた CRM(顧客関係 管理)の概念を提示された。 富山社長は第 1 に「楽しく,つながる」コミュニティ が先にあり,その次にお客様視点での「お得で,便利」 なポイントプラットフォーム,最後に自社の果たすべき 役割があるという。図 7 の外円から内円につながる関係 性構築をイメージしていたという。この発想からもサツ ドラという企業自身が,最初から「地域循環型 CRM」を 志向していることがわかる。多くの企業において顧客関 係管理の目的は,自社における顧客満足度と顧客ロイヤ ルティの向上を通して,売上の拡大と収益性の向上を目 指す自社循環型 CRM である。しかし,サツドラは「小 売業の資産はお客様」と言いながらも,お客様を囲い込 むことなく,オープン・プラットフォーム型 CRM を実 践した。このような手法は小売業における新しいロイヤ ルティプログラム,顧客関係マネジメントに対する大き な示唆があると思われる。 2. リージョナルマーケティングの進化と発展―地域小売 業の果たす役割 地域マーケティング論を紐解くと,Shimizu(2007)は 「地域主体のマーケティングとは,住民,行政,地域企 業,通勤,通学者,観光客など地域のステークホルダー に利益を提供し,インタラクティブで良好な関係を維持 管理していくこと」と解説している。地域活性化におい て必要な地域主体のマーケティングをチェーンオペレー ション化している小売業も実践できることを示す事例と してサツドラの取り組みには価値があると思われる。さ らに,マーケティング論におけるエリア・マーケティン サツドラが考える CRM 出所:富山社長インタビュー時作成図を筆者が加筆 図 7  

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グの考え方からも,サツドラのケースは示唆を与えてい る。地域は市場細分化基準の重要な変数の 1 つであり, 地理的変数や,地域によるニーズ差を認識することが重 要である。(Sasaki, Ishikawa & Ishihara, 2016)また,Kotler and Armstrong(1983)は地域を外部環境要因とせず,地 域自体の「場」をマーケティング対象とする考えを示し ている。さらに,Kotler, Kartajaya, and Setiawan(2016) はデジタル化の進展により,接続された世界において, マーケティング・ミックスの概念は顧客参加の増大に対 応できるように 4P から,4C(co-creation =共創,currency =通貨,communal activation =共同活性化,conversation =カンバセーション)に改められるべきであるとする。 サツドラが目指している世界をまさに表現しているフ レーズである。新しいマーケティング・ミックスの体現 のさらなる進化に期待したい。 3. 小売業という「場」の重要性 また地域マーケティング論において Sasaki et al. (2016)よると,地域は製品と同様にブランドの対象と なるという。また地域ブランドの対象地域の範囲は一定 ではなく,Place Branding や Place Brand Management の ように Place が用いられ,地域という場を包括的に示し ている(Inada, 2012)。サツドラが北海道という Place に 対してマーケティング,ブランディングを提供しようと していることは自然なことと言える。また先ほどの P.コ トラーの最新の議論や,筆者の実務的視点からも Place の重要性が増している傾向がみて取れる。Kotler et al. (2016)はマーケティング 4.0 とは,企業と顧客のオンラ イン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティン グ・アプローチであり,デジタル交流だけでは不十分で あり,むしろオンライン化している世界で,オフライン のふれあいは強力な差別化要因となるという。この論点 を従来のマーケティング・ミックスを活用して筆者なり に解釈すると,Place はまさに小売業そのものであり, 店鋪だけでなく,ネット上におけるコミュニティ,EC サイトと行ったオンライン上の「場」も含むということ になる。この場,Place を活用した,P.コトラーの 4C(co-creation=共創,currency =通貨,communal activation = 共同活性化,conversation =カンバセーション)の創造 が求められている。 サツドラの実践している顧客との繋がりは現状大きく デジタルコミュニケーションに依存しているわけではな いが,EZO CLUB の運営や,顧客とのイベント開催, EZOCAを活用したデータ分析による顧客理解,今後実 施される IT,AI を活用したサツドラグループのマーケ ティング施策はまさに P.コトラーのマーケティング 4.0 のアプローチ,デジタル化を前提としたマーケティング と言える。マーケティング 4.0 は,企業と顧客のオンラ イン交流とオフライン交流を結合し,ブランド構築にお けるスタイルと内容を融合させ,最終的にマシン・ツー・ マシンの接続性を人間と人間の触れ合いで補完すること で,顧客エンゲージメントを強化するマーケティング・ アプローチである(Kotler et al., 2016)。サツドラはマー ケティング 4.0 を実行する準備体制が整いつつあると言 えるだろう。 さらに消費者のカスタマージャーニーにおける顧客経 験の重要性を考慮するに,顧客経験が形成される場, Placeにおける顧客経験が重要になってくる。顧客経験

の重要性は Lemon and Verhoef(2016)による Journal of

Marketingでのレビュー研究においても指摘されており,

Okutani and Iwai(2018)は消費者との繋がりや買物体験 がオンライン,オフラインを問わず形成される今日にお いて,良質な顧客経験をオンライン,オフラインを問わ ず提供すること,インターネットを活用した顧客との繋が り,エンゲージメント形成の重要性を提唱している。 Okutani and Iwai(2018)は良質な体験を提供する「場」 が顧客とのエンゲージメントを高め,その影響が,商品 開発(Product)や企業に有利な価格戦略(Price),顧客 の共感を得やすいマーケティング施策(Promotion)につ ながるのではないかという考察を行っている。サツドラ は紙媒体から,店鋪まで顧客とのタッチポイント,「場」 の形成と育成に尽力している企業である。またコミュニ ティ運営やイベントを通して,「購買」以外のタッチポイ ント形成にも尽力している。今後のさらなるデジタル化 の進化と,今まで培ってきたデータ活用による顧客理解, オフラインにおける購買の有無に関係なく提供されてき た良質な体験の「場」の提供を維持発展させることが最 先端のマーケティング企業への近道になるのではないか

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と考える。 4. Customer Engagement 研究からの示唆 先述の消費者によるエンゲージメント行動の学術的定 義に関しては未だ多様な見解が散見されるが,消費者に よる購買行動を超えた企業との繋がりや行動が,企業に 購買以外の価値を提供しており,その測定と可視化が課 題として挙げられる。Yamamoto and Matsumura(2017) はエンゲージメント行動を「顧客と企業,顧客と顧客, 顧客と潜在顧客との間の積極的なインタラクション行動 を指す」としている。Ono(2012)はロイヤルティから エンゲージメント行動への成果変数の拡張と見直しが必 要であると指摘している。 顧客のエンゲージメント価値の測定に関して Yamamoto and Matsumura( 2017 ) は , Kumar, Aksoy, Donkers, Venkatesan, Wiesel and Tillmanns(2010)の提唱する顧客 エンゲージメント価値を援用して,オンラインゲーム上 のエンゲージメント価値の定量化を試みている。このエ ンゲージメント価値は,1)Customer Lifetime Value (CLV):お客様の購買行動から得られる「顧客生涯価値」,

2)Customer Referral Value(CRV):お客様がクチコミを

してくれることによる新規顧客獲得につながる「顧客紹 介価値」,3)Customer Influencer Value(CIV):見込み顧 客や既存顧客に対して購買行動やブランド態度に影響を 及ぼすような行為をお客様が行うことによって,購買増 加や利用拡大に貢献する「顧客影響価値」,4)Customer Knowledge Value(CKV):企業がお客様との知識交換や フィードバックによって,サービス改善や商品開発に貢 献する「顧客知識価値」の 4 点で構成されている。 このエンゲージメント価値をサツドラの顧客関係マネ ジメントから分析することが可能ではないかと考える。 多くの小売業やドラッグストア業界は主に購買行動から 生まれる金銭的顧客価値や顧客生涯価値(CLV)に注力 している。一方でサツドラのコミュニティ運営やリブラ ンディング活動,リージョナルマーケティングは Kumar et al.(2010)の提唱する顧客生涯価値(CLV)の向上だ けでなく,他 3 つのエンゲージメント価値(顧客知識価 値,顧客紹介価値,顧客影響価値)も同時に高めている であろう。筆者は購買行動と購買行動を超えたエンゲー ジメント価値は Kumar et al.(2010)が提唱する価値の重 層化で成立しているのではないかと考える。サツドラの 企業活動が売上と Customer Engagement の関係性を高め Engagement 4P 概念図

出所:Okutani and Iwai(2018)より筆者加筆 図 8  

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ているという仮説を証明できるのではないかと考えて いる。

5. Satudora Innovation Initiative が描く未来と Collaborative Consumption(共創消費) 地域マーケティングにおいては,Shimizu(2007)の解 説にある通り,多くのステークホルダーとの連携が必要 になる。現代社会においてこの地域内外の人と人との繋 がりに ICT やインターネットの活用は不可欠といえる。 Sasaki et al.(2016)はソーシャル・キャピタルという考 え方から生まれるコミュニティ形成の重要性を説いてい る。ソーシャル・キャピタル(Social Capital)とは,特 定の目的のために参加する人々の間での「信頼」を基軸 として,相互の個人能力を認め合いながら,連携する社 会的関係性のことである(Sasaki, 2006)。また,ソーシャ ル・キャピタルにおける個人間の繋がりを社会的ネット ワーク(Putman, 2006)と呼ぶ。地域マーケティングに おいてはもちろん,今後のデジタル化の進展において, ソーシャル・キャピタルという考え方の中にある「信頼」 を維持しながら,社会的ネットワークがもたらす様々な 情報へのアクセスの容易性の向上と拡散の危険性を管理 していかなくてはいけない。Satudora Innovation Initiative (以下 SII)が描く未来にはこのような地域におけるソー シャル・キャピタル形成プロセスをデジタル化する可能 性がある。富山社長が提唱する情報格差の解消,SII が構 想するワークシェアリングや,地域貨幣には,ソーシャ ル・キャピタルの形成,信頼の醸成は不可欠と言えるで あろう。また,SII が志向する世界はシェアリング・エコ ノミーの構築に近く,国内外のシェリング・エコノミー 企業はやはり IT,AI を活用して「マッチング」の最適化 を行なっている。「シェアリング・エコノミー」とは,典 型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形 のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり,貸 主は遊休資産の活用による収入,借主は所有することな く利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立 するためには信頼関係の担保が必要であるが,そのため に情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用 することが必要である。(Ministry of Internal Affairs and Communications, 2017) シェアリング・エコノミーの世界はまさに富山社長が 言う「お客様と店員,店舗との垣根も無くしていく」こ とになる。なぜなら,シェアリング・エコノミーの世界 においては,消費者は生産者となりうる双方向性が存在 するからだ。 シェアリング・エコノミーの研究において Huber (2017)は共創消費(Collaborative Consumption)という 考え方を提唱している。直訳すると「共に消費する行為」 となるが,UBER のような一般人が自分の空き時間と自 家用車を使って他人を運ぶ仕組みを提供するシェアリン グ・エコノミーは「Access-Based Consumption」(必要な 時に利用できる消費)とし,共創消費にはユーザーとサー ビス提供者の人的交流が「Access-Based Consumption」 より多く求められるとしている。 このような考え方を考慮していくと,今後の SII の活 動の成功には,IT,AI を活用したデジタル環境の整備だ けでなく,地域マーケティングに必要なソーシャル・キャ ピタルの醸成と,将来的には共創的消費を視野に入れた ヒューマンネットワーク,地域運営手法の構築も不可欠 であることがわかる。EZOCA と EZO CLUB の融合で目 指す地域貨幣構想も同様だ。富山社長は地域貨幣構想に おいて「お金に感情が,色が乗るようになる」,「地域へ の想いと買物が融合したインフラ構築」を行いたいと話 す。地銀との協業も視野に,サツドラが持つ顧客情報活 用して行う場合,ブロックチェーン(注 7)の技術も必 要であるが,ソーシャル・キャピタルの醸成,共創消費 の概念を取り込んだアナログとデジタルの融合が求めら れることであろう。 謝辞 本稿の執筆にあたり,サツドラホールディングス株式 会社代表取締役社長 富山浩樹氏には,ご多忙中の中イ ンタビューや資料提供などにご協力いただきました。こ こに記して,謝意を表する次第です。 最後に,学術面での研究指導を頂いている現武蔵野大 学経済学部(執筆当時一橋大学大学院商学研究科)古川 一郎教授に心より感謝申し上げたい。

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1) EZOCA の詳細は以下の URL を参照のこと。https://ezoca.jp また,最新利用者状況に関しては以下 URL にある 2018 年 1月に行われた同社第二四半期決算説明会資料を参照のこ と。http://www1.daiwair.jp/qlviewer/e-cast/1801193544d6k3519r/ index.html 2) 株式会社良品計画のアドバイザリーボードとは,ブランド コンセプトを維持するために外部のデザイナーで構成され た組織である。現在はグラフィックデザイナーの原研哉氏, クリエーティブディレクターの小池一子氏,プロダクトデ ザイナーの深澤直人氏,インテリアデザイナーの杉本貴志 氏に加え 2017 年 7 月,テキスタイルデザイナーの須藤玲子 氏を「アドバイザリーボード」のメンバーに迎えている。 3) 北海道くらし百貨店の詳細に関しては以下 URL を参照のこ と。https://www.kurashistore-hokkaido.jp 4) 元伊勢丹の名物バイヤーとして知られる藤巻幸大によるプ ロデュースで立ち上がった E コマースサイト。運営は株式 会社 caramo。「“もの”を語る。そんな,極上の“ものがた り”に出会う場所」として商品それぞれが持つストーリーを 大切に,生活が豊かになる逸品を紹介している。藤巻百貨 店 の 概 要 は 下 記 URL を 参 照 の こ と 。 http://fujimaki-select.com 5) クラウドサービスとは,利用者が手元のコンピュータで利 用していたデータやソフトウェアを,ネットワーク経由で サービスとして利用者に提供するもの。利用者側が最低限 の環境(パーソナルコンピュータや携帯情報端末などのク ライアント,その上で動く Web ブラウザ,インターネット 接続環境など)を用意することで,どの端末からでも,さ まざまなサービスを利用することが可能になる。クラウド サービスを利用することで,これまで機材の購入やシステ ムの構築,管理などにかかるとされていたさまざまな手間 や時間の削減,業務の効率化やコストダウンを図れるとい うメリットがある。GRIT WORKS の事業に関する詳細は下 記 URL を参照のこと。https://www.gritworks.jp 6) 厚生労働省 平成 27 年 10 月発行「患者のための薬局 ビ ジ ョ ン   概 要 」 は 下 記 URL を 参 照 の こ と 。 http:// www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/gaiyou_1.pdf 7) ブロックチェーン技術は従来の高いセキュリティに守られ た中央管理型データベースとは異なり,ネットワーク上に 置かれた複数のサーバーに電子署名やハッシュ関数等の技 術を組み合わせることで,安価で安心なテデータベース構 築が可能であることから,金融分野を皮切りに電子マネー 分野での活用が期待されている。日本政府もマイナンバー 制度にブロックチェーンを活用する実証実験を総務省を中 心に行っている。詳しくは下記 URL を参照のこと。http:// www.soumu.go.jp/main_content/000493855.pdf#search=%27 ブロックチェーン+総務省%27 References

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参照

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