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自動車等給油メーターの精度試験における測定の不確かさ評価

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(1)

自動車等給油メーターの精度試験における測定の不確かさ評価

戸田邦彦 ,寺尾吉哉 ,神長 亘

(2019 年 9 月 2 日受理)

Evaluation of Measurement Uncertainty in Accuracy Tests for Fuel Dispensers

TODA Kunihiko, TERAO Yoshiya, KAMINAGA Wataru

Abstract:

 The OIML Certification System (OIML-CS) is an international system for the mutual acceptance and utiliza- tion of test results among countries. It follows globally uniform rules for standardizing measuring instruments, which are subject to legal metrological control used in commercial transactions. To participate in the OIML-CS, the National Metrology Institute of Japan evaluated the uncertainty in the accuracy test for fuel dispensers. The uncertainty sources were systematically analyzed and the major sources were quantified experimentally during severe conditions in summer and winter. The results show that the major sources of uncertainty are the tem- perature difference between the liquid at the outlet of the dispenser nozzle and the liquid inside the standard tanks, the error of the standard tanks, and repeatability. It is confirmed that the expanded uncertainty in the ac- curacy test (Calibration and Measurement Capability) is less than 0.1 %, which meets the requirement of the relevant International Recommendation.

1.はじめに

自動車は,今や我々の日常生活や経済活動における交 通手段の主役として,欠かすことが出来ない重要な役割 を担っている.自動車への燃料供給装置である自動車等 給油メーターは,我が国では約 115 000 台設置されてい る.また,計量法の特定計量器に指定され,消費者保護 の観点に基づき,型式承認試験及び検定制度によって技 術基準の適合性を確認することで,信頼性の高い計量器 として社会に提供され,特に正確な測定結果を保証する ことで公正な取引を実現し,国民生活を支えている.

検定は個々の給油メーターを対象にし,有効期間 7 年

と定められ各都道府県の検定所などにより実施される.

一方,型式承認試験は,型式毎に行われ,耐久性能試験 や電子装置に対する電磁環境適合性試験など長期間を要 し, 産 業 技 術 総 合 研 究 所 の 計 量 標 準 総 合 セ ン タ ー

(National Metrology Institute of Japan, NMIJ)によって 実施されている.いずれの試験も,JIS B 8572-1:2008 燃 料 油 メ ー タ ー 1)に 基 づ い て お り, 最 新 のOIML

(International Organization of Legal Metrology)などの 国際規格に整合している.

その一方で,国内の製造事業者は,自動車等給油メー ターの輸出にも力を入れている.国際貿易における技術 的障壁を低減することを目的として,法定計量分野の国 際的な技術基準としてOIML国際勧告((International

Recommendation)が策定されており,NMIJOIML

国際勧告に基づく適合性評価による,OIML適合証明書 や試験報告書の提供も行っている.この国際規格に基づ OIML適合証明書については,国際法定計量機関に より,世界中のどこでもその適合証明書が通用する制度

工学計測標準研究部門流量計試験技術グループ

** 工学計測標準研究部門

*** 執筆当時 工学計測標準研究部門流量計試験技術グ ループ 

現  在 工学計測標準研究部門計量器試験技術グ ループ

(2)

(OIML-CS制度 *1)作りが行われている.この世界的な 相互承認制度に参加することを望む試験所は,計量器に 対する試験技術の能力がISO/IEC 17025 2)の要求事項に 適合していることを示す証拠を提供し,これを第三者が 評価した結果に基づいて参加が承認される 3).

現在,NMIJOIML「R 60 ロードセル」及び「R 76 非自動はかり」のOIML適合証明書の発行機関及び試 験所としてOIML-CS制度に参加しているが,将来的に

OIML「R 117 水以外の液体用動的計量システム」 4)

含まれている,自動車等給油メーターの計量器カテゴ リーにおいても参加を目指している.ISO/IEC 17025 で は試験所の能力に関して,その計量器に対する測定の不 確かさに寄与する要因を特定し,評価することが要求事 項の一つとして示されている.

自動車等給油メーターの試験は,OIML国際勧告であ

OIML R 117 に技術基準等の要求事項が規定されてお

り,このOIML R 117 に基づいた試験方法により,計量

器の型式の適合性が評価される.各種試験の要求事項 は,精度試験の結果として求められる器差が最大許容誤 差(MPE)を満足しているかどうかにより合否判定さ れるため,精度試験の結果に付随する不確かさを評価す ることが最も重要である.過去の例では,ポルトガルの IPQ(Instituto Portugues da Qualidade)が自動車等給油 メーターに対する検定の国内比較を行い,それに付随し た不確かさ解析を行っているが 5),6),充分詳細とは言え ず,その手法をNMIJにおける精度試験に適用できるか は不明である.そこで,本実験では実際に試験で使用す る機器を用い,さらに日本の寒暖差の影響を考慮した夏 季と冬季の実験を含む詳細な評価を行い,NMIJ におけ る精度試験の不確かさを評価した.

本報では精度試験における測定の不確かさの要因と,

*1 OIML-CS(OIML Certification System)制度:各国で の試験データを,一定条件の下で信頼し活用する世界 的な制度であり,適切な品質システムが運用されてい ることを条件として,加盟国間で発行した証明書を 相互承認に基づいて受入れる.計量器の国際貿易が容 易になるだけでなく,異なる国での型式承認試験の重 複が回避でき,時間とコストの節約が可能となる.さ らに,品質が保証された計量器のみが国際市場に投入 されるため,計量器の信頼性が向上する.参加条件で ある技術的な能力の立証には,OIML-CSに登録され ている法定計量専門家を含めた認定審査又は外部審 査の受審が要求され,OIML-CS評価委員会(Review Committee) で の 推 奨, 及 びOIML-CS運 営 委 員 会

(Management Committee)での審査結果に基づいた承 認を経て決定される.

その算出方法を記述し,さらに最終的な評価結果を報告 する.

2.標準タンクを用いた試験の方法

2. 1 試験項目

国内の型式承認試験の試験項目が規定されているJIS

図 1 産業技術総合研究所北サイトの自動車等給油メー ター型式承認試験設備配置図(上:平面図,下:立 面図)

試験液保管用地下タンク群 試験器設置場所

表 1 JIS及びOIMLの対応する項目番号,試験項目及び 許容誤差

JIS B 8572-1 条項

OIML R 117-2

条項 試験項目 許容誤差

8.1.2 5.3.2 精度試験 MPE

5.1.2.1 5.3.2 繰返し器差の試験 MPE×2/5

8.1.2 d) 5.5 最小測定量の精度試験 MPE

8.1.3 5.4 耐久試験 MPE

8.1.2 e) 附属書A.6.2 流れの妨害試験 MPE

8.2 7 空気分離器の試験 MPE

8.3 附属書A.6.3 充満ホースの内部容積変化試験 MSVDまたは

MSVD×2

9.4.1 4.8.5 高温(耐熱性) MPE

9.4.2 4.8.6 低温(耐寒性) MPE

9.4.3 4.8.7 温度湿度サイクル MPE

9.4.4 4.9.2.1 電圧変化 MPE

9.4.5 4.9.3 短時間停電 MPE

9.4.6 4.9.4 バースト MPE

9.4.7 4.9.5 静電気放電 MPE

9.4.8 4.9.11.1 放射電磁界イミュニティ MPE

用語

MPE:最大許容誤差,MSVD:最小許容体積偏差

(3)

B 8572-1 は,OIML R 117 を基本に作成されているため,

このJISで規定される技術基準は国際的な整合性があ る.表 1 にJIS及びOIMLの対応する項目番号,試験項 目及び許容誤差を示す.

精度試験などの実際に燃料油を使用する試験は,産業 技術総合研究所北サイトの流体国家標準施設敷地内にあ る自動車等給油メーター型式承認試験設備場で行う.図 1 に自動車等給油メーター型式承認試験設備配置図を示 す.

2. 2 器差の算出方法

自動車等給油メーターの適合性の評価は表 1 に示す試 験項目に従い行われるが,評価基準である器差は標準条 件下での自動車等給油メーターの指示値から体積の参照  *2を減じた値の体積の参照値に対する割合で表され る.器差の算出は精度試験と呼ばれており,NMIJでは この試験は標準タンクを使用する比較法により行う.こ れは計量器の内部の流量計を通過し,ホースに接続され たノズルから吐出した燃料油を標準タンクに流し込ん で,その時の計量器及び標準タンクの指示値を比較する 方式である.このとき標準タンク内の液温を測定し,標 準タンクの熱膨張の補正を行う必要がある.

精度試験は,使用最大流量Q  maxから使用最小流量 Q  minまでの範囲に一定の間隔で分布する最低 6 流量点 での器差を求めなければならないと規定されている.こ の 6 流量点は,次の式(2.1)及び(2.2)によって算出 する.

Q(n F)=K n F−1×Q max (2.1)

K=[――maxmin ]―――F 1−1 (2.2)

ここで,N Fは試験流量数であり,n Fは試験流量の番号 である.

実際にQ max/Q min=10,N F=6 とすると各設定流量は 次のようになる.

Q (1)=1.00Q  max=Q  max

Q (2)=0.63Q  max

Q (3)=0.40Q  max

Q (4)=0.25Q  max

Q (5)=0.16Q  max

Q (6)=0.10Q  max=Q  min

*2 計量法及びJIS B 8572-1 では真実の値,OIML R 117 で True Valueと呼ばれる.

試験における各設定流量の許容流量範囲(Q calc(1)

Q calc(6):計算流量)は次の通りである.

 0.90Q  max ≦ Q calc(1) ≦ 1.00Q  max

 0.56Q  max ≦ Q calc(2) ≦ 0.70Q  max

 0.36Q  max ≦ Q calc(3) ≦ 0.44Q  max

 0.22Q  max ≦ Q calc(4) ≦ 0.28Q  max

 0.14Q  max ≦ Q calc(5) ≦ 0.18Q  max

 0.10Q  max ≦ Q calc(6) ≦ 0.11Q  max

各流量点における器差は,独立して行う少なくとも 3 回の試験で決定しなければならない.

3.測定の不確かさ

3. 1 記号及び単位

不確かさ解析に用いる記号及び単位を下記に列挙す る.

E Vi 1 回の測定により求められた器差(相対値)

(-)

V i :計量器の指示値(L)

V i,si :計量器の目量(L)

V ref :体積の標準値(L)

R ρ :計量器と標準タンクの試験液の密度比 V n :標準タンクの読み値(L)

V n,si :標準タンクの目量(L)

C V n :校正によって求めた標準タンクの補正値(L)

T tank :標準タンク温度計の指示値(℃)

T tank,si :標準タンク温度計の目量(K)

T base :基準温度.ここでは 15 ℃

T dis 試験液の標準タンク内における平均温度と 標準タンク温度計設置位置での温度の差

(K)

∆T 標準タンク内における試験液の平均温度か ら,計量器のノズル出口(すなわちトラン スファーポイント)における試験液の温度 を差し引いた値(K)

C T 校正によって求めた標準タンク温度計の補 正値(K)

α L 試験液の熱膨張係数 ガソリンでは,

α L=0.001 1(K −1

β 標準タンクを構成する材料の熱膨張係数(体 膨張係数).ステンレス鋼では,

β=0.000 048(K −1

ρ tank, ρ meter標準タンク内の試験液の平均密度及び計量器

のノズル出口(すなわちトランスファーポイ

(4)

ント)における試験液の密度(kg/m 3 u rep :測定の繰返し性に起因する標準不確かさ(L)

3. 2 器差算出のモデル式

測定の不確かさの推定は,測定における不確かさの表 現のガイド 7)に則って行う.器差の試験は 2.2 器差の算 出方法の通り,計量器から吐出した燃料油を標準タンク に注入し,計量器の指示値と標準タンクの指示値を比較 して測定する比較法で行われ,最終結果は 3 回の繰り返 しの平均値として次式(3.1)から(3.4)で求められる.

E= 13

Σ3 j=1

 E Vi,j (3.1)

E Vi――VV ref  i −1 (3.2)

V ref=R ρ [1+β(T tank−C T−T dis−T base)](V n−C V n) (3.3)

R ρρ tank

――ρ meter=(1−α L ∆T) (3.4)

ノズル出口及び標準タンクは大気に開放されているの で,試験液の圧縮性は考慮しない.また,試験時にはノ ズル出口の温度は測定しないので,∆T=0 と仮定し,不 確かさの要因としてのみ扱う.すなわちR ρ=1 である.

また,T disも試験時には測定不可能なのでT dis=0 と仮定 し,不確かさの要因としてのみ扱う.

3. 3 不確かさ解析

報告値E(器差)の不確かさは,EV iを測定する際の 系統効果によるものと,EV iの繰り返し測定に起因する 標準不確かさu repで構成され,報告値の標準不確かさ u(E)は次の式(3.5)で表すことができる.

u 2(E)=u 2(EVi)+(――∂EV i ) 2u rep2  =u 2(E Vi)+( ――1ref) 2u2 rep  (3.5)

3.2 節のモデル式に基づき,器差の繰り返し測定のば らつきに起因する不確かさを除いた要因に基づく器差の 合成標準不確かさは,下記のとおり求められる.

式(3.2)より,式(3.6)から(3.8)が得られる.

u 2(E Vi)=(――VV ii) 2 u 2(V i)+(――VE ref Vi) 2u 2(V ref) (3.6)

――VV ii= 1――ref (3.7)

E Vi

――V ref=−――V refi 2− 1――ref (――refi 1) (3.8)

式(3.3)より,式(3.9)が得られる.

u 2 (V ref)= (――Rref ρ) 2 u 2(R ρ)+(――Vβ ref) 2 u 2(β)

(―――Vtank ref ) 2 u 2 (T tank)+(――V refT) 2 u 2(C T)

(――refdis) 2 u 2(T dis)+(―――baseref ) 2 u 2 (T base)

(――refn) 2 u 2(V n)+(―――refn ) 2 u 2 (C V n) (3.9)

基準温度は定数として定義されているので,不確かさは 式(3.10)に示す通り零である.

u(T base)=0 (3.10)

また,式(3.3)より式(3.11)から(3.16)が与えられる.

――Rref ρVR ref ρV ref (∵R ρ=1) (3.11)

――Vβ ref=R ρ(T tank−C T−T dis−T base)(V n−C V n)(T tank−T base)V ref

  (――――tanktank−C T 1,V――― nCn V n

1) (3.12)

ref

―――T tank=R ρ β(V n−C V n )βV ref (3.13)

――ref

∂C T=∂――Tref dis=−R ρ β(V n−C V n )−βV ref (3.14)

――VV ref n ――V refn 1 (3.15)

――ref

Vn

――VV ref n −1 (3.16)

式(3.4)より,式(3.17)が得られる.

u 2(R ρ)=(――Rα L ρ) 2 u 2 L)+(――∆TR ρ) 2 u 2(∆T) (3.17)

ここで,

ρ

――α L=∆T=0 (3.18)

ρ

――∆T=−α L (3.19)

式(3.17)に式(3.18)及び(3.19)を代入すると,

次式(3.20)を得る.

u 2 (R ρ )=α L 2u 2 (∆T) (3.20)

式(3.9)に式(3.11)から(3.16)及び式(3.20)を 代入すると,次式(3.21)を得る.

(5)

u 2(V ref )[V refα L] 2u 2(∆T)+[(T tank−T base)V ref] 2u 2(β)

+[βV ref] 2 [u 2(T tank)+u 2(C T )+u 2(T dis)]

+u 2(V n)+u 2(C V n) (3.21)

最後に,式(3.6)に式(3.7),(3.8)及び式(3.21)

を代入すると,器差の繰り返し測定のばらつきに起因す る不確かさを除いた要因に基づく器差(E Vi)の不確か u(E Vi)として,次式(3.22)を得る.

u 2(E Vi)= (1ref2 u 2(V i )+α L 2u 2(∆T)+(T tank−T base ) 2u 2 (β)

+β 2{u 2 (T tank )+u 2 (C T )+u 2 (T dis )

[(――1ref 2 u 2 (V n )][(――1ref ) 2 u 2(C V n)]} (3.22)

この器差の不確かさは系統効果によるものであり,繰 り返しにより小さくなることはない.式(3.5)に含ま れているV iの繰り返しに起因する標準不確かさu repは,

別途 3.4.9 で実験的に評価した.

なお,3.4.9 で述べる夏季の実験において,繰返し測 定の測定者によるばらつきを分散分析により判定した結 果,測定者によるばらつきは,繰返し測定の不確かさよ りも十分小さいため,不確かさ要因に含めないこととす る.

3. 4 不確かさの算出

式(3.22)の各項に含まれる標準不確かさ及び感度係 数は,下記の通り求められる.

3. 4. 1 計量器の指示値の分解能(目量)に起因する不 確かさ*3

計量器である自動車用給油メーターの分解能は,0.01 Lと 0.001 Lの 2 種類が存在するが,ここでは,存在す る最良の計量器(BED, Best Existing Device)として,

V i,si=0.001 Lとする.誤差の分布は分解能の±1/2 を範

囲とする矩形分布と考えられるので,標準不確かさは次 式(3.23)で得られる.

u(V i )=――2√i,si3 =0 .000 29 L (3.23)

また,体積の標準値V  refは標準タンクの全量に相当

*3 原理的に繰り返し性の不確かさは計量器の指示値の分 解能の不確かさを含むが,OIML R 117 での要求に従い 指示値の分解能を独立した不確かさ要因とした.

するので,感度係数は「1/標準タンク全量」である.

3. 4. 2 計量器ノズル出口と標準タンク内の試験液の温 度の差に起因する不確かさ

実際の試験では,標準タンクの液体温度のみを測定し 試験結果を求めるが,トランスファーポイントである計 量器のノズル出口と標準タンクの液体との間には温度差 があると想定しその影響を実験的に調べた.自動車等給 油メーターは,外部の環境条件による影響で誤差は変動 するため,最も厳しい環境条件と思われる夏季と冬季に 各 2 日間で実験を実施した.図 2 のように夏季と冬季で 計量器ノズル出口と標準タンクの液体温度を測定し,そ の寄与を推定した.実験は,自動車等給油メーターで一 般的に使用される最大流量である 45 L/minで 200 L 準タンクを使用して行った.測定結果を図 3 に示す.こ の項目及び 3.4.6,3.4.9 において実施した実験に使用し た機器は,3.5 に示されている.

ここで,∆T maxを∆Tの最大値として定義し,実験の結

図 2 計量器ノズル出口と標準タンク内の試験液温度差の 算出実験の概略図

図 3 計量器ノズル出口と標準タンク内の試験液温度の差

(6)

果,0.7 Kであった冬季の最大液温差を∆Tの最大値とし て採用する.∆Tの分布を±0.7 Kを範囲とする矩形分布 と仮定し,標準不確かさは次式(3.24)で求められる.

u(∆T)=―――∆T 2√max3 = ――2√0.73 =0.202 K (3.24)

また,感度係数である試験液の熱膨張係数は,ガソリ ンの値としてα L=0.001 1 K −1とする.

3. 4. 3 標準タンクの材料の熱膨張係数の不確かさ 標準タンクのステンレス鋼の熱膨張係数の標準不確か さは明確ではないが,大きく見積もっても 10 %の相対 不確かさと思われる.したがって,標準不確かさは次式

(3.25)で求められる.標準タンクの材料の熱膨張係数 は,ステンレス鋼の値としてβ=0.000 048 K −1とする.

u(β)=4.8×10 −5×0.1=0.000 004 8 K −1 (3.25)

また,感度係数である基準温度(15 ℃)と標準タン ク温度計指示値の差は,夏季の実験において標準タンク 温度が最大で約 32 ℃と測定されたので,この実験結果 から最大値として 17 Kを見込む.

3. 4. 4 標準タンク用温度計の読み値の不確かさ 標準タンク内の試験液の温度測定に用いられている温 度計は補正して用いるので,読み値の不確かさは分解能 によって決まる.ここで用いている温度計の分解能は 0.1 Kである.誤差の分布は分解能の±1/2 を範囲とす る矩形分布と考えられるので,標準不確かさは次式

(3.26)で求められる.

u(T tank)=―――T2√ tank,si3 =――2√0.13 =0 .029 K (3.26)

感度係数はβ=0.000 048 K −1である.この感度係数は 以下の 3.4.5〜3.4.7 にも共通である.

3. 4. 5 標準タンク用温度計の補正値の不確かさ 標準タンク用温度計の校正は,参照標準温度計との比 較校正により行われ,この校正の標準不確かさと,温度 計の長期安定性とを合成して,補正値の標準不確かさを 求めた.長期安定性はメーカーの仕様から 0.13 K/年と

し,温度計の校正周期は 5 年であることから,半幅 0.13

× 5=±0.65 Kの矩形分布と見なし,この半幅を3 で 除して 0.375 Kを得る.

以上より,標準不確かさは下記の表 2 のとおり見積も られる.

この結果,温度計の補正値の標準不確かさは,次式

(3.27)の通り 0.38 Kとなった.

u(C T )=0.38 K (3.27)

3. 4. 6 標準タンク内の試験液の温度分布に起因する 不確かさ

試験で標準タンクに注入された試験液の温度は,標準 タンクの中間部のみで測定され,この温度を器差計算に 用いる.標準タンク内には温度分布が存在すると想定 し,最も体積が大きく温度分布が大きいと推定される 200 Lの標準タンクにより液温の分布を,図 4〜図 6 の とおり実験により調べた.

実験は 3.4.2 と同じ冬季及び夏季の厳しい環境で,図 4 のとおり標準タンクの上部:A,中間部:B及び下部:

Cの液温を測定した.上部:Aを基準とした温度分布の 冬季の測定結果を図 5 に,夏季の測定結果を図 6 に示す.

標準タンク内の温度分布の最大値は 0.2 Kであった.

T disの分布を±0.2 Kを範囲とする矩形分布と仮定し,

図 4 標準タンク内の試験液の温度分布測定方法 表 2 温度計の不確かさ

不確かさ要因 標準不確かさ 校正の標準不確かさ

温度計の長期安定性による標準不確かさ

0.024 K 0.375 K 温度計の補正値の標準不確かさ 0.38 K

(7)

標準不確かさは次式(3.28)で求められる.

u(T dis)= 0――2√.23 =0.058 K (3.28)

3. 4. 7 標準タンクの読み値の不確かさ

標準タンクのゲージグラスの目量は,0.01 Lであるが,

測定時はその 1/10 まで読むので 0.001 Lを分解能と見 なし,誤差の分布をこの分解能の±1/2 を範囲とする矩 形分布と考えて,標準不確かさは次式(3.29)で得られ る.

u(V n )=――2√V n,si3 =―――0.0012√3 =2.9×10 −4 L (3.29)

また,感度係数は,3.4.1 に示したとおり,標準タン クの全量の逆数である.

3. 4. 8 標準タンクの補正値の不確かさ

標準タンクは産総研の「体積タンク校正マニュアル」

(QMC VM02)に従って衡量法で校正される.この際の 校正測定能力を表 3 に示す.

標準タンクの補正値の不確かさは,上記の校正測定能 力に校正時の繰返し性と校正周期内の長期安定性を合成 して求められるが,後の2者は校正測定能力と比較して,

無視できるほど小さい.ここでは,表 5 の内の最大値で ある 129 ppmを代表値として用いる(5 Lタンクは 10 L タンクと同じ校正設備を使用するため,10 Lの値を採 用する).すなわち,感度係数も含めて,次式(3.30)

となる.

u(C n)

―――V ref =1.29×10 −4 (3.30)

3. 4. 9 繰り返し測定のばらつきに起因する器差の平均 値の不確かさ

実際の器差試験では,繰り返し測定により求めた平均 値を最終的な器差試験結果とするので,繰返し測定のば らつきに起因する不確かさを加味する必要がある.本来 は,器差試験の都度,繰返し測定の標準偏差から不確か さを求めるべきであるが,通常の精度試験で採用してい る繰返し回数は 3 であり,十分な標準偏差の推定精度が 見込めないおそれがあるので,予め実施した繰返し試験 のデータに基づいて繰返し性に起因する不確かさを評価 した.実験は 3.4.2 及び 3.4.6 と同じように,環境条件を 変えるために,冬季及び夏季での厳しい環境で一般的な 計量器に対する繰返し器差測定を行い,次式(3.31)に より実験標準偏差s を求めた.

図 7 冬季の繰返し測定の器差及び実験標準偏差(表 4 に おいて異常値としたデータは除く)

図 5 冬季:標準タンク内の試験液の温度分布測定結果

図 6 夏季:標準タンク内の試験液の温度分布測定結果

表 3 タンクの校正測定能力

タンクの全量 相対合成標準不確かさ 10 L

50 L 100 L 100 L 200 L

129 ppm 57 ppm 51 ppm

(8)

s=―――――――――――

――1

n−1 Σj=1 n(E Vi,j−E) 2 (3.31)

ここで,冬季n=10,夏季n=12 は繰返し回数,E Vi,j

j番目の測定値(器差),Eは算術平均値である.冬 季及び夏季の各 2 日間,最大流量(45 L/min,標準タン ク 200 L),中間流量(18 L/min,標準タンク 50 L)及び 最少流量(3 L/min,標準タンク 5 L)において器差測定 を行った.%表記による冬季の器差測定結果を図 7 に,

夏季の器差測定結果を図 8 に,また,詳細の冬季及び夏 季の%及びL表記による器差測定の結果を表 4 及び表 5 に示し,この繰返し測定から得られたL表記による器 図 8 夏季の繰返し測定の器差及び実験標準偏差

表 5 夏季の器差測定の結果

流量

(L/min) 器差 (%) 器差 (L)

2018/08/02 2018/08/03 2018/08/02 2018/08/03

最大流量45 0.00 0.00 +0.010 −0.003

+0.01 0.00 +0.016 −0.006

+0.01 0.00 +0.013 +0.008

+0.01 0.00 +0.015 +0.009

0.00 +0.01 +0.009 +0.020

0.00 +0.01 +0.004 +0.017

実験標準偏差 0.003 9 0.007 9 中間流量

18 +0.01 +0.01 +0.007 +0.005

+0.01 +0.03 +0.006 +0.015

+0.02 +0.02 +0.010 +0.012

+0.01 +0.03 +0.005 +0.017

+0.01 +0.02 +0.006 +0.011

+0.02 +0.02 +0.011 +0.012

実験標準偏差 0.008 0 0.004 0

最少流量3 −0.05 −0.20 −0.002 −0.010

−0.05 −0.01 −0.002 0.000

+0.05 −0.03 +0.002 −0.002

−0.14 −0.09 −0.007 −0.005

−0.02 0.00 −0.001 0.000

−0.06 −0.14 −0.003 −0.007

実験標準偏差 0.070 3 0.003 5

表 4 冬季の器差測定の結果(統計的な観点から,3 L/minの冬季の一日目 と二日目の標準偏差はばらつきの範囲で一致していないため,太枠 内の二日目の測定結果は異常値と見なし採用しないこととする.)

(L/min) 流量 器差 (%) 器差 (L)

2018/02/13 2018/02/14 2018/02/13 2018/02/14 最大流量

45 +0.04 +0.05 +0.081 +0.109

+0.02 +0.09 +0.049 +0.175

+0.04 +0.03 +0.084 +0.052

+0.03 +0.03 +0.057 +0.064

+0.04 +0.04 +0.078 +0.072

実験標準偏差 0.018 6 0.037 2 中間流量

18 +0.04 +0.03 +0.021 +0.013

+0.07 +0.04 +0.036 +0.020

+0.06 +0.05 +0.028 +0.023

+0.05 +0.02 +0.026 +0.011

+0.06 +0.04 +0.028 +0.021

実験標準偏差 0.015 0 0.007 5

最少流量3 +0.21 +0.13 +0.010 +0.006

+0.29 +0.41 +0.014 +0.020

+0.14 +0.02 +0.007 +0.001

+0.28 +0.42 +0.014 +0.021

+0.18 +0.14 +0.009 +0.007

実験標準偏差 0.063 0 0.179 7 0.003 1 0.009 0

(9)

差の実験標準偏差の結果を表 6 に示す.

表 4 及び表 5 から分かるように,いずれの流量におい ても,冬季の方が実験標準偏差は大きい.これは夏季に 比べ冬季は測定中の液温の変化が大きかったためと思わ れる.特に最小流量については,冬季 2 日目(2018/2/14)

の繰り返しのばらつきは,同じく冬季 1 日目の繰り返し のばらつきと比べても極端に大きい(標準偏差で約 3 倍).冬季の 2 日目の最小流量の試験では,液温に急激 な温度変化があったため,特に測定環境が十分に安定で はなかった可能性があることから,この値を除外して評 価した.

この評価結果により得られた,冬季及び夏季の各流量 の実験標準偏差の内,大きい値(表 6 の下線入りの数値)

を採用し繰返し性に起因する標準不確かさを評価した.

通常の試験では 3 回の繰り返しで行われるため,標準不 確かさは流量毎に次式(3.32),(3.33)及び(3.34)で 求められる.また,感度係数は,3.4.1 に示した標準タ ンクの全量の逆数である.

最大流量:u rep――s3 =0.037 2―――3 =0 .021 5 L (3.32)

中間流量:u rep――s3 = 0.007 5―――3 =0 .004 3 L (3.33)

最小流量:u rep――s3 = 0.003 5―――3 =0 .002 0 L (3.34)

繰り返し測定のばらつきに起因する器差の標準不確か さは,使用する標準タンクの全量によって,表 7 に示す ように一定値として取扱うことが出来る.

3. 5 使用した実験機器

実験に使用した標準タンクの仕様を表 8,計量器の概 要を表 9,使用した標準タンクの写真を図 9,及び実験 風景を図 10 に示す.

4.不確かさのまとめ及び考察

前章までに求めた各不確かさ要因の標準不確かさ,及 び感度係数をまとめて,拡張不確かさを求めた結果を,

不確かさバジェット表として表 10〜表 12 に示す.

自動車等給油メーターで一般的に使用される流量範囲 での最大流量,中間流量及び最少流量での実験の結果,

表 6 実験標準偏差まとめ(下線のある数値は不確かさ評 価にて用いたもの)

流量 (L/min) 冬季 夏季

最大流量 中間流量 最少流量

45 18 3

0.037 2 L 0.007 5 L 0.003 1 L

0.007 9 L 0.004 0 L 0.003 5 L

表 7 繰り返し測定のばらつきに起因する器差の標準不確 かさ

標準タンクの全量 標準不確かさ 200 L

100 L, 50 L 20 L, 10 L, 5 L

0.021 5 L 0.004 3 L 0.002 0 L

表 8 実験に使用した標準タンク

全量 200 L (最大流量) 50 L (中間流量) 5 L (最少流量)

目盛範囲 199.5 L 200.5 L 49.5 L 50.5 L 4.7 L 5.3 L

目量 0.01 L 0.01 L 0.01 L

材質 ステンレス鋼 ステンレス鋼 ステンレス鋼

表 9 実験に使用した計量器

試験日 冬季:2018/02/1314 夏季:2018/08/0203 試験場所 X Y

試験液種 ガソリン 灯油

分解能(目量) 0.01 L 0.001 L 試験流量 最大流量

中間流量 最少流量

45 L/min 18 L/min 3 L/min

最大流量 中間流量 最少流量

45 L/min 18 L/min 3 L/min

(10)

図 9 使用した標準タンク(左から 200 L,50 L,5 L)

図 10 実験風景(実験に使用した自動車給油メーターから 燃料油が標準タンクに注がれている)

表 11 不確かさバジェット表(中間流量,50 Lの標準タンクを使用した場合)

要因 タイプ 標準不確かさ 感度係数

𝑢𝑢×𝑐𝑐

𝑢𝑢 𝑐𝑐

試験器物の目量(分解能) B 0.000 29 L 1 / 𝑉𝑉��� 0.02 L�� 0.000 6 % 計量器ノズル出口と標準タンク内

の試験液の温度差 B 0.202 K 𝛼𝛼 0.001 1 K�� 0.022 2 % 標準タンクの材料の熱膨張係数 B 0.000 004 8 K�� 𝑇𝑇����

− 𝑇𝑇����

17 K 0.008 2 % 標準タンク用温度計の読み値 B 0.029 K β 0.000 048 K�� 0.000 1 % 標準タンク用温度計の補正値 B 0.38 K β 0.000 048 K�� 0.001 8 % 標準タンク内の試験液の温度分布 B 0.058 K β 0.000 048 K�� 0.000 3 % 標準タンクの読み値 B 0.000 29 L 1 / 𝑉𝑉��� 0.02 L�� 0.000 6 %

標準タンクの補正値 B 0.012 9%

繰り返し測定のばらつきに起因す る器差の平均値

A 0.004 3 L 1 / 𝑉𝑉��� 0.02 L�� 0.008 6 % 0.028 4%

2 合成標準不確かさ

包含係数k (95 %)

拡張不確かさ 0.057%

表 10 不確かさバジェット表(最大流量,200 Lの標準タンクを使用した場合)

要因 タイプ 標準不確かさ 感度係数

𝑢𝑢×𝑐𝑐

𝑢𝑢 𝑐𝑐

試験器物の目量(分解能) B 0.000 29 L 1 / 𝑉𝑉��� 0.005 L�� 0.000 1 % 計量器ノズル出口と標準タンク内

の試験液の温度差 B 0.202 K 𝛼𝛼 0.001 1 K�� 0.022 2 % 標準タンクの材料の熱膨張係数 B 0.000 004 8 K�� 𝑇𝑇����

− 𝑇𝑇����

17 K 0.008 2 % 標準タンク用温度計の読み値 B 0.029 K β 0.000 048 K�� 0.000 1 % 標準タンク用温度計の補正値 B 0.38 K β 0.000 048 K�� 0.001 8 % 標準タンク内の試験液の温度分布 B 0.058 K β 0.000 048 K�� 0.000 3 % 標準タンクの読み値 B 0.000 29 L 1 / 𝑉𝑉��� 0.005 L�� 0.000 1 %

標準タンクの補正値 B 0.012 9%

繰り返し測定のばらつきに起因す る器差の平均値

A 0.021 5 L 1 / 𝑉𝑉��� 0.005 L�� 0.010 7 % 0.029 1%

2 合成標準不確かさ

包含係数k (95 %)

拡張不確かさ 0.058%

図 9 使用した標準タンク(左から 200 L,50 L,5 L) 図 10  実験風景(実験に使用した自動車給油メーターから 燃料油が標準タンクに注がれている) 表 11 不確かさバジェット表(中間流量,50 L の標準タンクを使用した場合) 要因 タイプ 標準不確かさ 感度係数

参照

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