厚生労働科学研究費補助金
医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業 ワクチンの品質確保のための国家検定に関する研究
分担研究報告書
不活化ポリオワクチンの試験法に関する検討
研究分担者 石井 孝司 国立感染症研究所 ウイルス第二部 室長 研究協力者 染谷 雄一 国立感染症研究所 ウイルス第二部 主任研究官 脇田 隆字 国立感染症研究所 副所長
研究要旨:セービン株由来不活化ポリオワクチンの力価試験をラット免疫原性試験から in
vitro試験であるD抗原含量試験へ移行させるために、D抗原含量試験法を検討し、確立し
た。ワクチンメーカーは2012年の導入以来最初のロットから両試験を行っており、5年分 のデータが蓄積している。ウイルス第二部でも2017年9月以降のロットからD抗原含量試 験を実施しており、セービン株由来不活化ポリオワクチンの生物学的製剤基準への「D抗 原含量試験」の追記が達成された後、速やかな試験法移行が可能となる。
A. 研究目的
セービン株由来不活化ポリオワクチン の国家検定では、力価試験としてラット免 疫原性試験が行われている。実験動物の削 減、試験期間の短縮などの観点から、in
vitro試験であるD抗原含量試験への移行
を検討している。本研究では、両試験成績 の間に齟齬がないことを示すべく、ウイル ス第二部で行われた試験成績とワクチン メーカーで行われた自家試験成績を比較 すると共に、D抗原含量試験法の検討を行 った。
B. 研究方法
4 種混合ワクチンに対して実施された ワクチンメーカー(阪大微研会、および、
化血研)の自家試験(ラット免疫原性試験、
および、D抗原含量試験)の成績はそれぞ
れの製剤のSLPを参照した。ラット免疫 原性試験成績については、ウイルス第二部 により実施された検定試験成績とワクチ ンメーカーによる自家試験成績を比較し た。
D 抗原含量試験は阪大微研会より技術 移転され、ウイルス第二部においてソーク ワクチンに対して実施される D 抗原含量 試験法と比較し、試薬、機器等共通化を図 り、確立した。本研究では、阪大微研会(旧 日本ポリオ研究所)製造の抗ポリオウイル ス抗体(マウスモノクローナル抗体、およ び、ウサギポリクローナル抗体)、および、
サノフィ社製造の抗体(ウシポリクローナ ル抗体、および、ウサギポリクローナル抗 体)を用い、試験ワクチン(阪大微研会「テ トラビック」、化血研「クアトロバック」、 サノフィ「イモバックスポリオ」、北里第
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一三共「スクエアキッズ」、GSK「Poliorix」
および「Infanrix DTPa-IPV」)のD抗原 含量を測定した。
(倫理面への配慮)
本研究では、実験動物を用いた試験を行 っていない。試験成績のみを参照した。ま た、D抗原含量試験はin vitro試験であり、
倫理面の問題は生じない。
C. 研究結果
阪大微研会と化血研の 4 種混合ワクチ ンは2012年に導入され、最初のロットか らラット免疫原性試験に加えて、D抗原含 量試験が為されている。いずれの試験にお いても試験成績は各メーカーが設定する 規格値範囲内にあり、問題は認められない。
また、ウイルス第二部で実施されたラット 免疫原性試験の成績とも大きな差はなか った。
セービン株由来不活化ポリオワクチン を含む4種混合ワクチン 2製剤(阪大微 研会「テトラビック」、化血研「クアトロ バック」)については、2017年9月以降に 出検されるロットについて、それぞれのメ ーカーより検体の提供を受けて、ウイルス 第二部でも阪大微研製抗ポリオウイルス 抗体を用いたD抗原含量試験を実施して いる。
阪大微研会製抗体の有用性を示すため に、ソークワクチン2製剤(サノフィ「イ モバックスポリオ」、GSK「Poliorix」)、
ソークワクチンを含む4種混合ワクチン2 製剤(北里第一三共「スクエアキッズ」、 GSK「Infanrix DTPa-IPV」)のD抗原含 量を、阪大微研会製抗体、あるいは、サノ
フィ社製抗体を用いて測定したところ、い ずれの製剤においても抗体による測定値 の違いは認められなかった。
D. 考察
阪大微研会と化血研はそれぞれの 4 種 混合ワクチン製剤に対して、2012年以来 最初のロットからラット免疫原性試験と D抗原含量試験を行い、5年分のデータが 蓄積している。両試験成績を比較すると、
大きな齟齬がないことが認められた。ラッ ト免疫原性試験はラット血清中の中和抗 体の力価を測定するので、より直接的なワ クチンの評価が可能であるという利点が あるが、今回の比較により、中和抗体を誘 導するD抗原の含量を測定することで、ワ クチンの有効性の評価が可能であること が示唆された。今後、適用な温度で処理し てD抗原含量が低下、若しくは、消失した 劣化ワクチンを調製し、ラットに対してD 抗原量に応じた中和抗体産生能が認めら れるか、検証する必要がある。
ウイルス第二部はすでに阪大微研会よ り技術移転を受けて、セービン株由来不活 化ポリオワクチンのD抗原含量試験を実 施することができる。ソークワクチンの国 家検定試験はD抗原含量試験であること から、試薬、機器等の共通化も既に図られ ている。また、阪大微研会製抗ポリオウイ ルス抗体はソークワクチンのD抗原含量 試験でも有効であり、これらの国家検定試 験においても使用可能である。
セービン株由来不活化ポリオワクチン を含む 4 種混合ワクチンの生物学的製剤 基準には、不活化ポリオワクチンの[力価 試験として、現在はラット免疫原性試験の
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み記載されている。このままでは、国家検 定試験としてD抗原含量試験を実施する ことができないので、D抗原含量試験に関 する項目を追記する必要がある。
現在、セービン株由来不活化ポリオワク チンの国際標準品制定に向けたWHO国 際共同研究が行われている。国内メーカー も国際標準品候補品を提供しており、日本 製製剤が国際標準品に採択される可能性 は高い。
E. 結論
ワクチンメーカーの自家試験成績、ウ イルス第二部での国家検定試験成績を比 較し、ラット免疫原性試験とD抗原含量 試験の成績間に大きな齟齬がないことが 明らかとなった。これは、中和抗体を誘 導するD抗原量が保証されていれば、中 和抗体を誘導できることを示しており、
生物学的製剤基準の改定が必要であるが、
近い将来、ラット免疫原性試験からD抗
原含量試験への移行が速やかに行われる ことが期待される。
F. 研究発表 1. 論文発表
1) Yuichi Someya, Yasushi Ami, Reiko Takai-Todaka, Akira Fujimoto, Kei Haga, Kosuke Murakami, Yoshiki Fujii, Haruko Shirato, Tomoichiro Oka, Takashi Shimoike, Kazuhiko Katayama, and Takaji Wakita
“Evaluation of the use of various rat strains for immunogenic potency tests of Sabin-derived inactivated polio vaccines”
Biologicals 2018 (in press).
2. 学会発表 なし
G. 知的財産権の出願・登録状況 なし
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